JP3763056B2 - 鳥獣防護電線の保持具及びその張設具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高圧電流が通電される鳥獣防護電線であって、必要長さに亘って架設される電線を、均等条件で張設架設する為に、電線を所定区間毎に保持すると共に、緊張状態を保たせることを目的とした鳥獣防護電線の保持具及び張設具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、雀、椋鳥、烏、鳩、ヒヨドリといった鳥が、水田、畑、果樹園に侵入し、農作物を食い荒らす鳥害を防御する目的で鳥獣防護用の電線に関する発明、考案の提案がある(特開2000−106811公報、実用新案登録第3012207号)。
【0003】
この鳥獣防護用の電線は、鳥が作物を啄むときに、一旦付近の高い止まり木に降り立つという鳥の習性を利用して、鳥が留まったときに、鳥に高電圧の電気ショックを与える鳥の撃退方法に使用するものである。
【0004】
【発明により解決しようとする課題】
前記鳥獣防護用の電線を架設すべき水田や畑、果樹園は、広大な面積であり、電線は、緊張状態で均一の態様にあることが好ましいが、電線が長くなる程、緊張状態を保つことが難しいという問題点があった。
【0005】
また、鳥獣防護用の電線は、前記のように、当該電線に鳥が留まった際に、高電圧による電気ショックを与えて鳥を撃退するものであるから、鳥が電線に留まっても電線を直線状態に保つ必要がある。鳥が留まった際の電線の弛みを少なくするには、電線の保持点を増やす必要があり、電線の保持点を増やすために、支柱の数を増やす必要がある。
【0006】
しかし、電線の保持点が増えるということは、それだけ、電線架設の労力及び資材が増えることにもなり、形状によっては、支柱が鳥の止まり木ともなる問題点があった。
【0007】
さらに、鳥が留まっていない状態のときであっても、適度な張り具合を保っていることが好ましい。すなわち、鳥の習性を利用していることを考えれば、電線があまりに弛んでいることは、鳥を電線に留まらせる上からも好ましくない。電線を弛みなく架設するためには、電線を架設する場所の両端の支柱へ電線をしっかりと引き寄せながら、電線の端部を夫々の支柱へ固定し、かつ常時一定の張力を付与する必要がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、電線を挟着保持すると共に、コイルスプリングを介して支柱へ張設架設することにより、弛みが少なく、かつ、常時張力を保つようにして、前記の問題点を解決したものである。
すなわち、保持具の発明は、筒体の端部に電線を嵌入するスリットを設け、前記筒体端に電線の脱抜を防止するキャップ又はリングを嵌装すると共に、前記筒体の側壁へ支柱に嵌着できるU字状挟着具を取付けたことを特徴とする鳥獣防護電線の保持具である。
また他の発明は、板体の上部に設けた側片と中央片とにより電線挟持部を設け、該挟持部にカバーを装着し、前記板体の下部にスペーサーを介して支柱装着するU字状挟着具を取付けたことを特徴とする鳥獣防護電線の保持具である。
また張設具の発明は、請求項1又は2記載の保持具により保持された電線の一端に電線固定用の碍子を連結し、該碍子を接続金具に固定し、該接続金具にコイルスプリングの一端を固定し、該コイルスプリングの他端に金具を介して支柱固定用のU字状挟着具を連結したことを特徴とする鳥獣防護電線の張設具である。
【0009】
【発明の実施の形態】
鳥獣電線保持具の本体部の材質は、電線には、数千ボルトの電圧が印加されるため、これに耐え得る樹脂等の絶縁材料を採用している。
【0010】
本体部は、一端に電線を挟持するスリットを設けた筒体とすることができる。このスリットは、電線を挿通し、保持できる幅及び深さを有していればよい。スリットの深さは、キャップ側にもスリットを設ければ、本体部のスリットとキャップのスリットとが重なるのでその分だけ浅くすることができる。
【0011】
前記キャップは、本体部のスリットの幅を狭めるように本体部に被冠し、スリットで電線を加圧挟着し、電線が動かないように、装着することが好ましい。また、キャップにより、本体部内部へ雨水、ごみ等が浸入することを防止し、スリット部の電線が濡れないようにすることが好ましいが、キャップに替えて、単なるリングを本体部のスリットが設けられている周囲へ装着することもできる。
【0012】
本体部は、電線を挟着できるものであればよいので、筒体に替えて、板体とすることもできる。板体には、2以上のスリットを設けて、そこに、電線を互い違いに挟持させることによって、電線を保持することができる。
【0013】
取付手段は、支柱への取り付け、取り外しがワンタッチで完了するようにU字状の挟着具とすることができる。U字状の挟着具は、U字の開口側が外側に向かって滑らかに湾曲させておけば、支柱への装着時は、当該湾曲部を支柱に当接させ、押し込むことによって、挟着具の弾性によって開口側が開き、支柱に装着できる。支柱から取り外すときも、開口部が挟着具の弾性によって開いて、容易に取り外すことができる。また、取付手段としては、本体部の筒体を、直接支柱の上端部へ被せることもできる。
【0014】
張設具のコイルスプリングは、架設後の電線が大きく弛まない程度の張力を付与できる弾力を有していればよい。
【0015】
また、張設具の支柱への固定手段は、前記鳥獣防護電線保持具の取り付けられた取付手段と同様のU字状挟着具を採用することができる。
【0016】
【実施例1】
以下、図面を用いてこの発明の実施例を説明する。
【0017】
図1から図3に示すように、この発明の鳥獣防護用の公知の電線2(絶縁テープの長縁に導電線を埋設し、前記導電線を所定間隔毎に露出させてある)の保持具1は、筒体3からなる本体部の上側にスリット4a、4bが直径方向に縦に設けられると共に、支柱への取付手段であるU字状挟着具5が筒体3とほぼ直角をなす方向に向かって取り付けられ、さらに、筒体3の上側には、前記スリット4a、4bの幅を狭め電線2を挟着固定できるようにキャップ6が被冠されて構成されている。
【0018】
前記電線2は、絶縁テープの両側縁に夫々ステンレス捩り線よりなる導電線が埋設され、その外側を所定間隔で露出させたものである。その幅W(図1)は、12mm程度、厚さT(図1)は、2mm程度である。
【0019】
前記筒体3は、外径22mm、内径16mm、厚さ3mmの樹脂製のパイプであり、スリット4a、スリット4bは、筒体3の上端から切り込まれており、その深さは、前記電線2の幅Wに、キャップ6の深さを加えた深さにしてある。前記スリット4a、4bの幅は、前記電線2の厚さTより僅かに広くし、スリット4aとスリット4bとは、直線的に設けられている。
【0020】
U字状挟着具5は、筒体3にスペーサ7を介してボルト8とナット9によって取り付けられている。U字状挟着具5は、筒体3が田畑等に直立設置された支柱に装着できるように、前記筒体3とスペーサ7とはほぼ直角をなしている。
【0021】
またU字状挟着具5の開口部5a、5bはそれぞれ矢示10a、10bの方向に開くように滑らかに湾曲させてあり、このように湾曲させることによって、矢示11(図2)に方向に保持具1を押し込むときに、開口部5a、5bはそれぞれ、矢示10a、10bのように開き、保持具1を容易に支柱に装着することができる。
【0022】
前記キャップ6は、図3(a)のような、前記スリット4a、4bに電線2を差し込み、挟持させた後、筒体3に被冠させてスリット4a、4bの幅を狭め電線2を加圧挟着する。同様の作用を有する図3(b)に示すような、リング14を使用することもできる。このリング14は、図3(b)に示すように切れ目14aを設けておけば、筒体3への装着が容易になる。
【0023】
以上のように構成された、保持具1の、支柱への取り付け方法を、図2、図8を用いて説明する。
【0024】
まず、本体部である筒体3を、保持具1を設置すべき支柱へ取り付けていく。このとき、U字状挟着部5を支柱へ矢示11の向きに当接後、押し込んで、支柱へ装着、固定するが、U字状挟着具の弾性によって、開口部5a、5bが開くので、ワンタッチで支柱に装着することができる。なお、筒体3を装着すべき位置、すなわち、支柱の間隔や、支柱における上下方向の高さは、撃退の対象とする鳥の大きさ、習性等を考慮して決定する。なお、支柱の間隔については、電線2の重量等を考慮すると、5m程度の間隔が好ましい。
【0025】
全ての支柱に筒体3を取り付けた後は、矢示12の方向に電線2をスリット4a、4bに差し込んで挟持させ、ついで、キャップ6を矢示13の向きに筒体3の上端に被冠させれば、図8に示す状態となり、電線2の架設が完了する。その後は、電線2を電源に接続すれば、使用可能となる。なお、図8中、32は、鳥害から防護すべき、作物である。
【0026】
以上の過程で、架設現場において、一切工具を用いることがないので、電線架設に要する、時間労力を軽減することができる。
【0027】
【実施例2】
次に、この発明の他の実施例を、図4を用いて説明する。
【0028】
この実施例の保持具15が、前記実施例1の保持具1と異なる点は、図4(a)に示すように、キャップ16に、キャップ6と異なり、スリット16a、16b(不図示)が設けられている点である。
【0029】
図4(b)は、キャップ16を用いた保持具15に電線2を保持させた状態の説明図であるが、筒体17のスリット17aの位置と、キャップ16のスリットの位置は組み立てによって重なるため、筒体17の高さも、実施例1の筒体3と比較して低くすることができる。また、電線2は、キャップ16のスリットと筒体17のスリットとで挟持されるため、実施例1の保持具と比較して、安定して保持される。さらに、キャップ16の下端部16cは、保持された電線2の下縁2aよりも下側に位置することになり、雨水等は前記下端部16cから流れ落ちるので、キャップ16上にかかった雨水等が、スリット17a、17bに溜まることが軽減される。
【0030】
【実施例3】
さらに他に実施例について、図5を用いて説明する。
【0031】
図5に示した、保持具18が、実施例1の保持具1と異なる点は、U字状挟着具5の筒体3への取り付け方法である。すなわち、実施例1の保持具1では、筒体3と支柱とが平行となるようにU字状挟着具5が取り付けられていたが、この実施例では、筒体3が支柱とほぼ直角をなすようにU字状挟着具5が取り付けられている。
【0032】
すなわち、U字状挟着具5は、筒体3の下端の開口部に取り付けられている。このようにU字状挟着具5を筒体3に取り付けると、電線2は、実施例1の場合(図1)とは異なり、幅広い面が地面と平行となるように架設されることとなる。
【0033】
前記電線2は、幅広い面が地面と垂直となるように、すなわち、図1図示のように設置される方が、鳥が留まったときの撓みに対する強度の点から有利である。しかし、撃退の対象とする鳥の習性等によって、図5図示のように幅広い面が地面と平行となるように架設した方が、鳥を留まらせる点で有利な場合には、図5図示のような保持具18を用いて架設することができる。
【0034】
【実施例4】
更に他の実施例を、図6を用いて説明する。
【0035】
この実施例の保持具19が、前記実施例と異なる点は、本体部の筒体3に替えて、板体20を採用している点である。また、キャップ6の役割を果たすものとしてカバー21が取り付けられている。
【0036】
絶縁材よりなる板体20には、図6(b)に示すように、スリット22a、22bが設けられている。このスリット22a、22bによって、板体20の上部は、側片20a、20b及び中央片20cとに分割されている。電線2は、この両側片20a、20b、中央片20cと互い違いになるように挟持され、スリット22a、22bに装着される。
【0037】
また、この板体20には、前記実施例1の保持具1と同様に、スペーサ7を介してU字状挟着具5が取り付けられている。
【0038】
カバー21は、板状の材料を折り返して作製したものであり、板体20へ上側から被せ、電線2の挟持部を覆って、雨水、ごみ等の付着を防止するものである。
【0039】
このように構成された保持具19は、前記実施例と同様に使用されるので、その使用方法についての説明は省略する。
【0040】
【実施例5】
次に、電線2の張設具の実施例について、図7を用いて説明する。
【0041】
張設具33は、コイルスプリング23の一端に支柱への固定手段が取り付けられている共に、他端に碍子25が取り付けられて構成されている。
【0042】
固定手段は、前記の実施の保持具1等に用いられたものと同一形状のU字状挟着具24であり、コイルスプリング23とは、八の字状の金具26を介して取り付けられている。金具26を介して取り付けていることによって、固定手段の回転の自由度が上がっており、支柱27への取り付けの作業性が向上している。
【0043】
碍子25は、コイルスプリング23の、前記固定手段24が取り付けられているのとは反対側に取り付けられた接続金具28に固定されている。碍子25には、前記電線2が巻き付けられており、該電線2の一端は、電源に接続され、他端側は、鳥から防護すべき田畑側へ架設されている。
【0044】
このように構成された張設具33は、電線2の端部の設置に用いられる。電線2の架設時は、コイルスプリング23を矢示30の方へ伸ばしてU字状挟着具24を支柱27側へ引き寄せて、U字状挟着具24を支柱27へワンタッチで取り付ける。U字状挟着具24が支柱27に取り付けられた後は、コイルスプリング23の弾性によって、前記電線2は、適度な張力が保たれて架設されることになる。また、電線2に鳥が留まっても、コイルスプリング23が矢示31の方向に引っ張られることによって、電線2に加わる応力が緩和される。
【0045】
以上、この発明の好ましい実施例について説明したが、この発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で、種々の形態に変更可能である。
【0046】
例えば、保持具の発明において、前記実施例では、スリット4aとスリット4bとは、一直線上に設けているが、角度をつけて設けることもできる。保持具は、電線2を架設すべき田畑の角部に取り付ける場合に、電線2を折り曲げる支点とする場合があるが、筒体においてスリットを角度をつけて設けておけば、電線2を緩やかに折り曲げることができ応力を緩和することができる。
【0047】
また、図9(a)に示すように、支柱への取付手段を変更することもできる。図9(a)図示の保持具は、図1図示の保持具1の支柱への取付手段であるU字状挟着具5に代えて、筒体3の下端側に拡径部3aを設けて、当該拡径部3aを、直接支柱27の上端部に被せて取り付けるようにしたものである。
【0048】
図9(b)図示の保持具も、同様に、図5図示の保持具18のU字状挟着具に代えて、筒体3と直角方向へ取付手段としてのパイプ34を取り付け、当該パイプ34を支柱27の上端部に被せるようにしたものである。
【0049】
また、前記各実施例のキャップ、リング、筒体の上端の形状は円形であって鳥が留まれる形状である。キャップ等には通電されていないから、キャップ等に鳥が留まってしまうと、鳥を有効に撃退することができない。このため、支柱の上端を含めて、キャップ、リング、筒体の上端の形状を、例えば、尖形にしておくなどの工夫をすることができる。
【0050】
【発明の効果】
この発明によれば、常時、電線の均一の緊張状態を保つことができ、また、鳥獣防護電線の保持具の取り付け、及び電線の保持、電先端部の取り付けを容易に行えるため、電線架設の時間、労力を緩和することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例の使用状態の斜視図。
【図2】 同じく架設手順の説明図。
【図3】 (a) 同じく実施例に用いるキャップの一部断面した斜視図。
(b) 同じくキャップに替えて装着されるリングの斜視図。
【図4】 (a) 同じく他の実施例のキャップの斜視図。
(b) 同じく(a)のキャップの使用状態の斜視図。
【図5】 更に他の実施例の使用状態の斜視図。
【図6】 (a) 同じく他の実施例の使用状態における一部を断面した概念図。
(b) 同じくカバーを取り外し、板体の上端側を断面した概念図。
【図7】 この発明の、張設具の実施例の斜視図。
【図8】 この発明の実施例の保持具を畑に設置した状態の説明図。
【図9】 (a)同じく支柱への取付手段の他の実施例の使用状態の斜視図。
(b)同じく支柱への取付手段の他の実施例の使用状態の斜視図。
【図10】 この発明の鳥害防止装置の実施例の正面図。
【図11】 同じく平面図。
【符号の説明】
1、15、18、19 保持具
2 鳥獣防護用の電線
3 筒体
3a 拡径部
4a、4b、17a、17b スリット
5、24 U字状挟着具
6 キャップ
7 スペーサ
14 リング
16a、16b スリット
20 板体
21 カバー
22a、22b スリット
23 コイルスプリング
25 碍子
33 張設具
34 鳥害防止装置
35 掴み棒
36 取付具
Claims (3)
- 筒体の端部に電線を嵌入するスリットを設け、前記筒体端に電線の脱抜を防止するキャップ又はリングを嵌装すると共に、前記筒体の側壁へ支柱に嵌着できるU字状挟着具を取付けたことを特徴とする鳥獣防護電線の保持具。
- 板体の上部に設けた側片と中央片とにより電線挟持部を設け、該挟持部にカバーを装着し、前記板体の下部にスペーサーを介して支柱装着するU字状挟着具を取付けたことを特徴とする鳥獣防護電線の保持具。
- 請求項1又は2記載の保持具により保持された電線の一端に電線固定用の碍子を連結し、該碍子を接続金具に固定し、該接続金具にコイルスプリングの一端を固定し、該コイルスプリングの他端に金具を介して支柱固定用のU字状挟着具を連結したことを特徴とする鳥獣防護電線の張設具。
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