JP3762688B2 - 汚水処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、生物反応槽内を嫌気状態と好気状態とに交互に切り換えることによって脱窒や脱リンを行うようにした汚水処理装置に係る。特に、本発明は、汚水処理動作の信頼性の向上を図るための対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、汚水や排水を処理するシステムとして、例えば特開2000−84585号公報に開示されているように、生物反応槽内部に曝気装置を備えさせ、この曝気装置を停止状態にする嫌気工程とこの曝気装置を駆動状態にする好気工程とを交互に切り換えて汚水の脱窒や脱リンを行うものが知られている。つまり、汚水中に含まれる窒素化合物が好気工程において活性汚泥により酸化されて硝酸性窒素になり、その後、嫌気工程に切り換えられることによって硝酸性窒素から酸素を奪って窒素ガスを発生させ、これによって脱窒を行うようにしている。また、嫌気工程において活性汚泥からリンが一旦放出され、その後、好気工程に切り換えられることによって活性汚泥にリンを過剰採取させることにより脱リンを行うようにしている。
【0003】
これまで、一般的な嫌気工程と好気工程との切り換え手法としては、生物反応槽内部に溶存酸素計を設けておき、その計測値に基づいて各工程を切り換えるといったDO(Dissolved Oxygen)制御運転を行っていた。つまり、生物反応槽内部の溶存酸素値に上限値(目標好気溶存酸素値)及び下限値(目標嫌気溶存酸素値)を予め設定しておき、嫌気工程中に溶存酸素値が下限値に達した時点で好気工程に切り換える一方、この好気工程中に溶存酸素値が上限値に達した時点で嫌気工程に切り換えるようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したように生物反応槽内部の溶存酸素値のみによって嫌気工程と好気工程とを切り換えるようにした場合には、生物反応槽内部の溶存酸素値を溶存酸素計によって常時計測しておく必要があり、且つ溶存酸素計の計測精度として高い精度が常に維持されていることが必要である。
【0005】
しかしながら、実際には、溶存酸素計の表面に活性汚泥などが付着し、実際の生物反応槽内部の溶存酸素値よりも検出された溶存酸素値が低くなってしまうことが多い。この場合、好気工程中の溶存酸素の計測値が上限値に達しないことになり、好気工程が長期間に亘って継続して行われてしまい(嫌気工程への切り換えが行われず)、所定の汚水処理動作を行うことができなくなってしまう。
【0006】
このような状況を回避するためには、定期的に溶存酸素計の洗浄作業が必要である。つまり、DO制御運転を一旦中断して溶存酸素計を生物反応槽から取り出し、計測部の水洗いなどの洗浄を行った後に、この溶存酸素計を生物反応槽内に沈めてDO制御運転を再開させるといった作業が必要である。
【0007】
しかし、このような溶存酸素計の洗浄作業が必要である場合、この洗浄作業中には生物反応槽内での有効な酸素供給が行われなくなり、汚水処理の効率の悪化を招いてしまう。
【0008】
このような状況は、生物反応槽内部の溶存酸素値に基づいて嫌気工程と好気工程とを切り換える場合に限らず、酸化還元電位値によって嫌気工程と好気工程とを切り換える場合も同様に生ずる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶存酸素値や酸化還元電位値を常時計測しておく必要をなくし、且つその値を計測する計測器の精度として高い精度が常に維持されていなければならないといった制約をなくしながらも生物反応槽内での生物反応処理を効率良く行えるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明は、生物反応槽内部を嫌気状態と好気状態とに交互に切り換えることによって汚水の浄化を行うに際し、嫌気工程とその後の好気工程とによって汚水処理の1サイクルを構成し、この1サイクルの時間を固定した状態で、各工程の時間配分を適切に設定するようにしている。つまり、1サイクルの終了時間を固定することで、計測手段(溶存酸素値や酸化還元電位値の計測手段)による計測動作を不要とする時間帯を予め決定しておき、この時間帯での計測手段のメンテナンスを、DO制御運転を停止させることなく実行可能とするようにしている。
【0012】
−解決手段−
具体的には、生物反応槽内部を嫌気状態にする嫌気工程と好気状態にする好気工程とを交互に切り換え可能とするように生物反応槽内部に設置された曝気手段と、生物反応槽内部の溶存酸素値または酸化還元電位値を計測する計測手段とを備えた汚水処理装置を前提とする。この汚水処理装置に対し、上記嫌気工程を行う予定時間及びその後に好気工程を行う予定時間をそれぞれ設定する。そして、嫌気工程の終了予定時刻に、計測手段によって生物反応槽内部の溶存酸素値または酸化還元電位値を計測させ、この計測値が目標値に達していない場合には嫌気工程を上記予定時間よりも延長させる嫌気工程延長手段と、この嫌気工程延長手段の出力を受け、嫌気工程が延長された時間だけ、この嫌気工程の後に行われる好気工程の予定時間を短縮させる好気工程短縮手段と、嫌気工程時、この嫌気工程の終了予定時刻においてのみ、生物反応槽内部の溶存酸素値または酸化還元電位値を計測するべく計測手段を生物反応槽内部に浸漬させる動作を行わせる計測制御手段とを備えさせている。
【0013】
この特定事項により、嫌気工程とその後に行われる好気工程とによって汚水処理の1サイクルを構成させ、この1サイクルのトータル時間を固定した状態で、各工程の時間配分を設定することになる。例えば、この1サイクルの時間を1時間とし、嫌気工程及び好気工程の予定時間をそれぞれ30分とした場合において、嫌気工程を5分延長して35分間行った場合には、好気工程を5分短縮して25分間行うことになる。つまり、毎サイクルの嫌気工程の開始時刻が一定時間(1時間)毎に決定されることになる。嫌気工程の開始時刻を毎時0分とした場合、嫌気工程の終了予定時刻は毎時30分となる。つまり、この毎時30分のタイミングで生物反応槽内部の溶存酸素値または酸化還元電位値を計測することによって嫌気工程を延長させるべきか否かを判定することができる。言い換えると、毎時0分から30分の直前までの間の時間は、生物反応槽内部の溶存酸素値または酸化還元電位値を計測する必要がない。このため、この時間帯に計測手段を生物反応槽内部から引き上げてメンテナンスを行うことができる。つまり、DO制御運転を停止させることなしに計測手段のメンテナンスが可能になり、このメンテナンスにより、常に計測手段の計測精度を高く維持することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本形態では、連続流入間欠曝気法により汚水処理を行う汚水処理システムに本発明を適用した場合について説明する。本発明はこれに限らず、回分式活性汚泥法やオキシデーションディッチ法などの汚水処理を行う汚水処理システムにも適用可能である。
【0019】
図1は、本実施形態に係る汚水処理システムの概略構成を示す図である。この図に示すように、本汚水処理システムは、原水槽1、流量調整槽2、生物反応槽3、沈殿槽4、消毒槽5、汚泥濃縮槽6及び汚泥貯留槽7を備えている。
【0020】
上記原水槽1は、導入された原水(汚水)から砂を分離するための沈砂槽11及びこの沈砂槽11において砂が分離除去された後の原水が導入される原水ポンプ槽12を備えている。上記沈砂槽11には分離除去された砂を排出する沈砂排出ポンプ13が、原水ポンプ槽12には原水を流量調整槽2へ供給する原水ポンプ14がそれぞれ備えられている。
【0021】
流量調整槽2の内部には、この流量調整槽2内を撹拌するための撹拌ポンプ21及びこの流量調整槽2から生物反応槽3へ向けて原水を供給するための流量調整ポンプ22が備えられている。
【0022】
生物反応槽3は、内部に曝気撹拌装置31を備えた槽であって、活性汚泥による生物反応処理によって原水が浄化され、この処理水が汚泥と共に沈殿槽4へ流出されるようになっている。この生物反応処理としては、曝気撹拌装置31を停止状態にする嫌気工程とこの曝気撹拌装置31を駆動状態にする好気工程とを交互に切り換えて汚水の脱窒や脱リンが行われる。つまり、汚水中に含まれる窒素化合物が好気工程において活性汚泥により酸化されて硝酸性窒素になり、その後、嫌気工程に切り換えられることによって硝酸性窒素から酸素を奪って窒素ガスを発生させ、これによって脱窒が行われる。また、嫌気工程において活性汚泥からリンが一旦放出され、その後、好気工程に切り換えられることによって活性汚泥にリンを過剰採取させることにより脱リンが行われる。
【0023】
また、この生物反応槽3の内部には活性汚泥濃度を測定するための濃度センサ32が設けられている。この濃度センサ32は、生物反応槽3内に設置した図示しないストレーナから吸い込んだサンプリング液より汚泥濃度を測定するものであって、その測定信号を後述するコントローラ9に送信するようになっている。
【0024】
更に、この生物反応槽3には、生物反応槽3内の溶存酸素値を計測するための溶存酸素計33が取り付けられている。この溶存酸素計33は、生物反応槽3の上面に固定されたリール33aと、このリール33aによって巻き取り可能とされたケーブル33bと、このケーブル33bの先端に取り付けられた溶存酸素検出器33cとを備えている。そして、生物反応槽3内の溶存酸素値を計測する際には、図中実線で示すようにリール33aの回転駆動によってケーブル33bを繰り出して溶存酸素検出器33cを生物反応槽3内の汚水中に沈める。逆に、生物反応槽3内の溶存酸素値を計測する必要がないときには、図中破線で示すようにリール33aの回転駆動によってケーブル33bを巻き取って溶存酸素検出器33cを生物反応槽3内の汚水の水面よりも上方に位置させる。このようにして溶存酸素検出器33cを生物反応槽3内の汚水の水面よりも上方に位置させた状態では、この溶存酸素検出器33cのメンテナンスを行うことが可能となる。このメンテナンスとしては例えば酸素検出面の水洗いによる洗浄などである。
【0025】
沈殿槽4は、その内部において汚泥が沈殿し、これによって処理水と汚泥とを分離するものである。この分離によって上澄み水となった処理水は、消毒槽5へ供給され、この消毒槽5内で塩素消毒器などによって消毒されて排出されるようになっている。一方、沈殿槽4内に沈殿した汚泥の一部は、返送汚泥ポンプ8によって沈殿槽4から引き抜かれて上記生物反応槽3へ返送されるようになっている。この沈殿槽4と生物反応槽3とを連結する返送通路81の途中には返送汚泥バルブ81aが設けられており、このバルブ81aの開閉動作を制御することによって生物反応槽3への汚泥の返送量を調整できるようになっている。
【0026】
また、上記返送汚泥ポンプ8の下流側より分岐した分岐通路82によって、返送用汚泥を生物反応槽3へ返送することなく汚泥濃縮槽6へ溜めることができるように構成されている。この分岐通路82の途中には余剰汚泥バルブ82aが設けられており、このバルブ82aの開閉制御によって沈殿槽4からの汚泥引き抜き量を調整できるようになっている。
【0027】
また、汚泥濃縮槽6は、更に汚泥と上澄み水とを分離するものであって、この分離の後、沈殿した濃縮汚泥は、汚泥引抜ポンプ61によって汚泥貯留槽7へ送り出され、上澄み水となった脱離液は、通路62によって原水ポンプ槽12へ戻されるようになっている。この通路62には脱離液返送バルブ62aが設けられている。
【0028】
本汚水処理システムは、各バルブ62a,81a,82aの開閉制御やポンプ13,14,21,22,8の駆動制御などを行うためのコントローラ9を備えている。このコントローラ9の特徴としては、工程予定時間設定手段91、嫌気工程延長手段92、好気工程短縮手段93、好気制御手段94、計測制御手段95を備えていることにある。以下、各手段について説明する。
【0029】
工程予定時間設定手段91は、嫌気工程を行う予定時間及びその後に好気工程を行う予定時間を予め設定し、これら予定時間を記憶するものである。例えば、システム管理者による操作パネルの操作によって各予定時間が設定され、嫌気工程時間を30分間、好気工程時間を30分間とし、嫌気工程とその後に行われる好気工程を合わせて1サイクルとして1時間に設定するといったように各予定時間が設定されている。尚、これら予定時間としては上述したものに限らず、システム管理者によって任意の値に設定可能である。
【0030】
嫌気工程延長手段92は、上記工程予定時間設定手段91に記憶されている嫌気工程の終了予定時刻に、溶存酸素計33による生物反応槽3内部の溶存酸素値の計測を実行させるものである。つまり、図中実線で示すようにリール33aの回転駆動によってケーブル33bを繰り出して溶存酸素検出器33cを生物反応槽3内の汚水中に沈めて溶存酸素値を計測可能な状態にする。この際、溶存酸素の計測値が目標値(目標嫌気溶存酸素値、以下目標嫌気DOと呼ぶ)に達していない場合には嫌気工程を上記予定時間よりも延長させるようにしている。また、この嫌気工程延長手段92では、嫌気工程の最大延長時間が予め設定されており(例えば10分間)、嫌気工程の延長時間中に溶存酸素計33からの計測信号を受け、生物反応槽3内部の溶存酸素値が目標値に達した時点で嫌気工程を停止させるようにしている。尚、この最大延長時間についてもシステム管理者によって任意の値に設定可能である。
【0031】
好気工程短縮手段93は、上記嫌気工程延長手段92の出力を受け、嫌気工程が延長された時間だけ、この嫌気工程の後に行われる好気工程の予定時間を短縮させるものである。つまり、嫌気工程が行われた時間に拘わらず、この嫌気工程の実行時間とその後に行われる好気工程の実行時間との総和(上記1サイクルの時間)を不変とするようにしている。
【0032】
好気制御手段94は、好気工程時に溶存酸素計33からの計測信号を受け、それに応じて曝気撹拌装置31による生物反応槽3内部の曝気量を制御するようになっている。具体的には、曝気撹拌装置31はインバータ制御されるように構成されており、好気工程の開始後における溶存酸素値が極端に低い場合には、曝気撹拌装置31の出力を大きくする一方、好気工程の開始後における溶存酸素値が比較的高い場合には、曝気撹拌装置31の出力を小さくするようにインバータ制御が行われる。また、好気工程中においても生物反応槽3内部の溶存酸素値が目標値(目標好気溶存酸素値、以下目標好気DOと呼ぶ)程度の値に維持されるように曝気撹拌装置31をインバータ制御するようになっている。
【0033】
計測制御手段95は、嫌気工程時にあっては、この嫌気工程の終了予定時刻においてのみ生物反応槽3内部の溶存酸素値を計測するべく溶存酸素計33を生物反応槽3内部に浸漬させるものである。具体的には、嫌気工程の開始時から嫌気工程の終了予定時刻の直前までは、溶存酸素計33のケーブル33bをリール33aに巻き取って溶存酸素検出器33cを生物反応槽3内の汚水の水面よりも上方に位置させておく。そして、嫌気工程の終了予定時刻から好気工程の終了時刻まではケーブル33bをリール33aから繰り出して溶存酸素検出器33cを生物反応槽3内の汚水中に沈める。つまり、嫌気工程の終了予定時刻及び好気工程中にのみ生物反応槽3内部の溶存酸素値を計測するように溶存酸素計33を制御する。
【0034】
次に、上述の如く構成された汚水処理システムの嫌気工程時及び好気工程時における生物反応槽3内部の溶存酸素値の変化状態について図2及び図3を用いて説明する。図2は、嫌気工程終了予定時刻前に、溶存酸素値が目標嫌気DO以下まで低下した状況における溶存酸素値の変化状態を示している。一方、図3は、嫌気工程終了予定時刻において未だ溶存酸素値が目標嫌気DOに達していない状況における溶存酸素値の変化状態を示している。
【0035】
先ず、図2に示す溶存酸素値の変化状態について説明する。先ず、前工程(好気工程)において溶存酸素値が目標好気DO程度まで高くなっている状況で、曝気撹拌装置31が停止されて嫌気工程が開始される(図2におけるタイミングA)。この嫌気工程の開始に伴って、活性汚泥による汚水処理により溶存酸素値が徐々に低下していく。この間、溶存酸素計33による溶存酸素値の計測は必要ないので、図1中に破線で示すようにリール33aの回転駆動によってケーブル33bを巻き取って溶存酸素検出器33cを生物反応槽3内の汚水の水面よりも上方に位置させ、溶存酸素検出器33cのメンテナンスを行う。
【0036】
そして、嫌気工程の終了予定時刻(嫌気工程が開始されてから30分経過時点であって、図2におけるタイミングB)の直前に、リール33aの回転駆動によってケーブル33bを繰り出して溶存酸素検出器33cを生物反応槽3内の汚水中に沈める。これにより、生物反応槽3内の溶存酸素値の計測が可能な状態となる。
【0037】
嫌気工程の終了予定時刻になった時点で、生物反応槽3内の溶存酸素値の計測を行い、この計測値が目標嫌気DOに達しているか否かを判定する。図2に示すように、この時点での計測値が目標嫌気DOに達している場合には、この時点で嫌気工程を停止し、曝気撹拌装置31を駆動させて好気工程に切り換える。
【0038】
この好気工程の開始後には、好気工程終了時刻まで溶存酸素計33による溶存酸素値の計測を継続して行い、インバータ制御によって曝気撹拌装置31の出力を制御する。つまり、好気工程の開始後における溶存酸素値が極端に低い場合には、曝気撹拌装置31の出力を大きくして溶存酸素値を目標好気DOまで急速に高める。逆に、好気工程の開始後における溶存酸素値が比較的高い場合には、曝気撹拌装置31の出力を小さくして溶存酸素値の上昇を抑えるようにする。
【0039】
このようにして好気工程を実行し、所定の好気工程終了時刻(図2におけるタイミングD)になった時点で曝気撹拌装置31を停止して好気工程を終了させ、次のサイクルとしての嫌気工程に切り換える。
【0040】
次に、嫌気工程終了予定時刻において未だ溶存酸素値が目標嫌気DOに達していない状況について図3を用いて説明する。ここでは、上述した図2での説明との相違点について説明する。
【0041】
上記と同様にして嫌気工程が行われている状況において、嫌気工程の終了予定時刻になった時点(タイミングB)で、生物反応槽3内の溶存酸素値の計測を行い、この計測値が目標嫌気DOに達しているか否かを判定する。そして、図3に示すように、この時点での計測値が目標嫌気DOに達していない場合には、嫌気工程を延長し、この延長時間の間、溶存酸素検出器33cによる溶存酸素値の計測を継続して行う。この際、嫌気工程の最大延長時間は10分に設定されているので、嫌気工程の延長開始後、10分を経過しても計測値が目標嫌気DOに達しない場合には、強制的に嫌気工程を停止して好気工程に切り換える。一方、図2に示すように、嫌気工程の延長開始後、10分を経過する前に計測値が目標嫌気DOに達した場合(図中タイミングC)には、その時点で嫌気工程を停止し、曝気撹拌装置31を駆動させて好気工程に切り換える。
【0042】
この好気工程の開始後には、好気工程終了時刻まで溶存酸素計33による溶存酸素値の計測を継続して行い、インバータ制御によって曝気撹拌装置31の出力を制御する。つまり、好気工程の開始後における溶存酸素値が極端に低い場合には、曝気撹拌装置31の出力を大きくして溶存酸素値を目標好気DOまで急速に高める。逆に、好気工程の開始後における溶存酸素値が比較的高い場合には、曝気撹拌装置31の出力を小さくして溶存酸素値の上昇を抑えるようにする。
【0043】
このようにして好気工程を実行し、上記嫌気工程が延長された時間だけ、好気工程の予定時間を短縮させ、所定の好気工程終了時刻になった時点で曝気撹拌装置31を停止して好気工程を終了させ、次のサイクルとしての嫌気工程に切り換える。
【0044】
以上説明したように、本形態では、予め設定された嫌気工程終了予定時刻において生物反応槽3内の溶存酸素値を計測し、その溶存酸素値が目標嫌気DOに達していない場合には嫌気工程を延長する。また、この嫌気工程を延長した時間だけ、次工程である好気工程の予定時間を短縮させている。このため、嫌気工程とその後に行われる好気工程とによって構成される汚水処理の1サイクルのトータル時間を固定することができ、毎サイクルの嫌気工程の開始時刻が一定時間(本形態においては1時間)毎に決定されることになる。その結果、嫌気工程の開始時刻から嫌気工程の終了予定時刻の直前までの間であって溶存酸素計33をメンテナンスできる時間帯をシステム管理者は予め把握しておくことが可能になる。つまり、コントローラ9から嫌気工程開始信号を受けて嫌気工程の開始をシステム管理者に報知するといった手段を必要とすることなしに、嫌気工程開始タイミングを把握でき、それによって溶存酸素計33のメンテナンスが可能な時間帯を認識できることになる。そして、この時間帯では溶存酸素計33による計測を行う必要がないので、DO制御運転を停止させることなしに溶存酸素計33のメンテナンスを行うことができて、常に溶存酸素計33の計測精度を高く維持することができる。
【0045】
また、嫌気工程が延長された場合の嫌気工程終了タイミング及び好気工程の終了タイミングは、時間によって強制的に設定されているので、仮に溶存酸素計33に計測不良が発生していたとしても、嫌気工程と好気工程とを所定時間内に繰り返すことができ、汚水処理動作(脱窒、脱リン)を良好に行わせることができる。
【0046】
−その他の実施形態−
上述した実施形態では、生物反応槽3内部の溶存酸素値に基づいて嫌気工程の終了タイミングの調節や曝気撹拌装置31のインバータ制御を行うようにしていたが、本発明はこれに限らず、生物反応槽3内部の酸化還元電位値に基づいて嫌気工程の終了タイミングの調節や曝気撹拌装置31のインバータ制御を行うようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、嫌気工程の延長時間中に生物反応槽3内部の溶存酸素値が目標値に達した時点で嫌気工程から好気工程に切り換えるようにしていたが、これに限らず、嫌気工程終了予定時刻において目標嫌気DOに達していない場合には、一律に所定時間(例えば5分間)だけ嫌気工程の延長させるようにしてもよい。これによれば、嫌気工程の延長時間中にも生物反応槽3内部の溶存酸素値を計測する必要がなくなり、この時間帯においても溶存酸素計33のメンテナンスを行うことが可能になる。
【0048】
また、上記実施形態では嫌気工程時には曝気撹拌装置31を停止するようにしていたが、散気のみを停止して嫌気工程時にも撹拌運転を行うシステムに適用した場合にも同様の方法で汚水処理が可能である。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、生物反応槽内部を嫌気状態と好気状態とに交互に切り換えることによって汚水の浄化を行うに際し、嫌気工程とその後の好気工程とによって汚水処理の1サイクルを構成し、この1サイクルの時間を固定した状態で、各工程の時間配分を適切に設定するようにしている。つまり、1サイクルの終了時間を固定することで、計測手段による計測動作を不要とする時間帯を予め決定しておき、この時間帯での計測手段のメンテナンスを、DO制御運転を停止させることなく実行できるようにしている。このため、常に計測手段の計測精度を高く維持することができ、信頼性の高い汚水処理動作を行わせることが可能になる。
【0050】
また、嫌気工程時、この嫌気工程の終了予定時刻においてのみ、生物反応槽内部の溶存酸素値または酸化還元電位値を計測するべく計測手段を生物反応槽内部に浸漬させる動作を行うようにしているので、嫌気工程時、この嫌気工程の終了予定時刻以外の時間帯では計測手段を生物反応槽内部から引き上げておくことができ、この計測手段のメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係る汚水処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】嫌気工程及び好気工程における溶存酸素値の変化状態の一例を示す図である。
【図3】嫌気工程及び好気工程における溶存酸素値の変化状態の他の一例を示す図である。
【符号の説明】
3 生物反応槽
31 曝気撹拌装置(曝気手段)
33 溶存酸素計(計測手段)
92 嫌気工程延長手段
93 好気工程短縮手段
94 好気制御手段
95 計測制御手段
Claims (1)
- 生物反応槽内部を嫌気状態にする嫌気工程と好気状態にする好気工程とを交互に切り換え可能とするように生物反応槽内部に設置された曝気手段と、生物反応槽内部の溶存酸素値または酸化還元電位値を計測する計測手段とを備えた汚水処理装置において、
上記嫌気工程を行う予定時間及びその後に好気工程を行う予定時間がそれぞれ設定されており、
上記嫌気工程の終了予定時刻に、計測手段によって生物反応槽内部の溶存酸素値または酸化還元電位値を計測させ、この計測値が目標値に達していない場合には嫌気工程を上記予定時間よりも延長させる嫌気工程延長手段と、
この嫌気工程延長手段の出力を受け、嫌気工程が延長された時間だけ、この嫌気工程の後に行われる好気工程の予定時間を短縮させる好気工程短縮手段と、
嫌気工程時、この嫌気工程の終了予定時刻においてのみ、生物反応槽内部の溶存酸素値または酸化還元電位値を計測するべく計測手段を生物反応槽内部に浸漬させる動作を行わせる計測制御手段とを備えていることを特徴とする汚水処理装置。
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JP2003136091A (ja) | 2003-05-13 |
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