JP3762535B2 - 光電陰極及び電子管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検出光を吸収して光電子を励起し、真空中へ放出する光電陰極及びこの光電陰極を備えた電子管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ダイヤモンドを材料とする光電陰極では、Bドープされた天然単結晶ダイヤモンドの(111)面において、原始的に清浄な表面では電子親和力が負となり、光子エネルギーが5.5eVから9eVの範囲で光電子放出の量子効率が20%程度、13eVから35eVの範囲では40〜70%と比較的高い量子効率が得られることが知られている(Physical Review B,20,2,(1979)624)。
【0003】
また、マイクロ波プラズマCVDにより、高圧合成された単結晶ダイヤモンド(100)基板上に単結晶ダイヤモンド膜を合成し、表面を水素終端することにより、単結晶ダイヤモンド膜の(111)面だけでなく(100)面においても、電子親和力が負になることも知られている(Diamond and Related Material 4(1995)806,Jpn.J.Appl.Phys.33,(1994)6312)。
【0004】
更に、単結晶ダイヤモンドのみならず多結晶ダイヤモンドにおいても、表面を水素終端することにより、比較的高い光電子放出の量子効率が得られることが知られている(Diamond Films and Technology 6(1996)359)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のダイヤモンド光電陰極の光電子放出特性には、被検出光の吸収がダイヤモンドのエネルギーギャップ、即ち伝導帯と価電子帯との間で行われるので、ダイヤモンドのエネルギーギャップである5.5eVより小さい光子エネルギーの被検出光、即ち225nm以上の波長領域に感度を有することができないという本質的な欠点があり、応用面で非常に大きな制約を受けることになる。
【0006】
そこで、本発明は、225nmよりも長い波長の被検出光を吸収し、真空中へ放出する光電陰極とこの光電陰極を備えた電子管とを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、請求項1記載の発明に係る光電陰極は、被検出光を吸収して光電子を励起し、当該光電子を真空中へ放出する光電陰極において、被検出光を吸収することにより光電子を生成する半導体光吸収層と、エネルギーギャップが半導体光吸収層よりも大きく、光電子が透過すると共に、半導体光吸収層上に形成される半導体電子放出層と、半導体電子放出層の表面の一部に形成された第一の電極と、半導体電子放出層の第一の電極が形成されていない露出表面上に形成された半導体電子放出層の仕事関数を低下させるための活性層と、半導体光吸収層に電気的に接続された第二の電極とを備え、半導体電子放出層は、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン又はダイヤモンドを主成分とする材料からなることを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、半導体光吸収層のエネルギーギャップは半導体電子放出層のエネルギーギャップよりも小さいので、半導体電子放出層のみで構成された光電陰極よりも小さなエネルギーの被検出光、即ち、半導体電子放出層のみで構成された光電陰極が吸収できる光の波長よりも長い波長の被検出光に対して感度を有することが可能となる。
【0009】
また、第一の電極と第二の電極の間にバイアス電圧を印加することにより、半導体光吸収層と半導体電子放出層内に電界が形成され、この電界により半導体光吸収層で励起された光電子を半導体電子放出層へ移送し、半導体電子放出層の第一の電極が形成されていない露出表面上に形成された仕事関数を低下させるための活性層を通して真空中へ効率良く光電子を放出させることができる。特に、半導体電子放出層は、電子親和力が負又は非常に小さな値となるダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン又はダイヤモンドを主成分とする材料からなるため、光電子は一層放出されやすくなる。
【0010】
また、請求項1記載の光電陰極において、半導体電子放出層をp型の導電型としたり、第一の電極と半導体電子放出層とをショットキ接合させることが望ましい。
【0011】
請求項4記載の発明に係る光電陰極は、第一の電極が、半導体電子放出層がほぼ均一に分布して露出する所定のパターン状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、光電陰極内に均一に電界が形成されるため、効率良く光電子の放出を行うことができる。
【0013】
請求項5記載の発明に係る光電陰極は、活性層が、アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物又はアルカリ金属のフッ化物からなることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、半導体電子放出層の仕事関数を効率よく低下することができ、光電子を真空中へ放出し易くなる。
【0015】
請求項6記載の発明に係る電子管は、請求項1〜請求項5の何れか一項記載の光電陰極、陽極及び真空容器を少なくとも備えることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の電子管によれば、紫外から可視域の被検出光を感度良く検出することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光電陰極及びこの光電陰極を備えた電子管の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1〜図3を用いて、第1実施形態の光電陰極を説明する。図1は、本実施形態の光電陰極2の断面模式図である。図に示すように、光電陰極2は、半導体光吸収層4、半導体電子放出層6、活性層8、第一の電極10,第二の電極12から構成されている。
【0019】
半導体光吸収層4は、SiC単結晶半導体からなり、基板としての役割も有している。この場合、SiCのエネルギーギャップが約3eVであるため、半導体光吸収層4は、波長約410nmまでの被検出光を吸収することができる。尚、本実施形態では、半導体光吸収層4としてSiC単結晶半導体を用いたが、半導体光吸収層はSiCに限られず、他の材料にて形成しても良い。従って、半導体光吸収層4に用いる材料のエネルギーギャップによって、検出可能な被検出光の波長範囲を調整できることも本願発明の特徴の一つである。
【0020】
SiC単結晶半導体からなる半導体光吸収層4の上には半導体電子放出層6が形成されている。本実施形態では、半導体電子放出層6は、厚さ約0.5μmのp型の多結晶ダイヤモンドで形成されている。ダイヤモンドのエネルギーギャップは約5.5eVなので、多結晶ダイヤモンドに外部から入射した被検出光のうち少なくとも波長が225nmより長い光は、多結晶ダイヤモンドからなる半導体電子放出層6を透過して半導体光吸収層4に到達することができる。また、本実施形態では、p型のドーピングを施してあるが、これは必ずしも必要ではない。しかし、実験により、意図的なドーピングを行ってないものと比較して、p型のドーピングを施したものは、約2倍の光電子放出量子効率を示すことが分かった。
【0021】
多結晶ダイヤモンドからなる半導体電子放出層6の上には、半導体電子放出層6とショットキ接合を形成する第一の電極10としてAuが約50〜100オングストローム蒸着されている。この程度の薄い膜厚の場合、Auは半導体電子放出層6上で島状の電極を形成する。従って、半透明の電極となるので、第一の電極10に入射した被検出光は、効率良く当該第一の電極10を透過することができる。ここで、Auの膜厚が100オングストロームよりも厚過ぎる場合は、第一の電極10に入射した被検出光の透過率が減少するだけではなく、光電陰極2内で励起された光電子が真空中へ放出される際に第一の電極10に捕獲される確率が増加し、結果として光電子放出量子効率が大幅に低下する。
【0022】
また、第一の電極10の他、多結晶ダイヤモンドからなる半導体電子放出層6の上には、仕事関数を低下させるためのCsとOからなる活性層8が形成されている。活性層8は、単原子程度の厚さであるため、活性層8に入射した被検出光は、殆ど活性層8を透過することができる。
【0023】
尚、図1は、光電陰極2の概略図であり、実際の構造と厳密には異なる。例えば、実際の半導体電子放出層6、活性層8、第一の電極10及び第二の電極12は、半導体光吸収層4と比較すると非常に薄く形成されているため、これらは拡大して示されている。また、本願の他の図面についても同様である。
【0024】
続いて、本実施形態の光電陰極2の作用を説明する。まず、図1を参照して、被検出光の入射から、光電子の励起までを説明する。光電陰極2に外部から入射した被検出光は、活性層8を透過し、半導体電子放出層6に到達する。波長が225nm以下の被検出光は、多結晶ダイヤモンドからなる半導体電子放出層6で吸収される。一方、波長が225nmより長い被検出光は、半導体電子放出層6を透過して半導体光吸収層4に到達することができる。半導体光吸収層4では、波長約410nm以下の被検出光が吸収され、半導体光吸収層4内の光電子が励起される。
【0025】
次に、図2を参照して、半導体光吸収層4内で励起された光電子を半導体電子放出層6側へ移送する過程を説明する。図2は、図1の第一の電極10と第二の電極12との間に印加するバイアス電圧を変化させたときの分光感度特性を概略的に示したグラフである。
【0026】
図2▲1▼の実線は、光電陰極2にバイアス電圧を印加しない場合の分光感度特性を示している。この場合は、光電陰極2内に電界が形成されないため、SiC単結晶半導体からなる半導体光吸収層4で励起された光電子は、半導体光吸収層4と半導体電子放出層6の界面を横切ることができない。そのため、p型の多結晶ダイヤモンドからなる半導体電子放出層6内で励起された光電子のみが真空中へ放出される。従って、図のように、ダイヤモンドのエネルギーギャップ5.5eVに相当する225nm程度までの光電感度しか有さない。
【0027】
図2▲2▼の破線は、光電陰極2にバイアス電圧を印加した場合の分光感度特性を示している。この場合は、バイアス電圧の印加により、空乏層が半導体電子放出層6から半導体光吸収層4側へ延長され光電陰極2内に電界が形成される。そのため、半導体光吸収層4で励起された光電子の一部が、半導体光吸収層4と半導体電子放出層6の界面を横切り真空中へ放出される。従って、図のように、バイアス電圧を光電陰極2に印加しない図2▲1▼のときよりも長波長側の光感度が
増加する。
【0028】
図2▲3▼の破線は、図2▲2▼のときよりも更に高いバイアス電圧を印加した場合の分光感度特性を示している。この場合は、空乏層がさらに延長され、半導体光吸収層4で励起された光電子の殆どが、半導体光吸収層4と半導体電子放出層6の界面を横切り、真空中へ放出される。従って、図のように、SiCのエネルギーギャップ3eVに相当する約410nmまでの光感度を有することができる。
【0029】
以上より、第一の電極10と第二の電極12の間にバイアス電圧を印加することにより、半導体光吸収層4と半導体電子放出層6内に電界が形成され、この電界により半導体光吸収層4で励起された光電子を半導体電子放出層6へ移送できることが分かる。更に、光電子は、半導体電子放出層6の第一の電極10が形成されていない露出表面上に形成された仕事関数を低下させるための活性層8を通して真空中へ効率良く放出される。
【0030】
尚、本実施形態では、SiC単結晶半導体からなる半導体光吸収層4を用いたが、SiC単結晶半導体よりもエネルギーギャップの小さな半導体を用いた場合には、図3に示すように、光電子は、半導体光吸収層4と半導体電子放出層6の界面をトンネル効果で通り抜けることも可能である。
【0031】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、第2実施形態の光電陰極を説明する。図4は、本実施形態の光電陰極22の断面模式図である。図に示すように、光電陰極22は、半導体光吸収層24、半導体電子放出層26、活性層28、第一の電極30、第二の電極32から構成されている。本実施形態の光電陰極22と前述の第1実施形態の光電陰極2との構造上の違いは、第一の電極30の形態の違いにある。従って、第一の電極30以外の構造は第1実施形態と同様であるため、細かな構造の説明は省略する。
【0032】
上述のように、第1実施形態では、半導体電子放出層6とショットキ接合を形成する第1の電極10としてAuが約50〜100オングストローム蒸着されており、このAuは多結晶ダイヤモンド上で島状の電極を形成する。一方、本実施形態では、第一の電極30は、半導体電子放出層26とショットキ接合を形成するが、島状ではなく、いわゆるグリッド状に形成されている。そして、その膜厚は1000オングストローム程度になっている。
【0033】
次に、図5を参照して、本実施形態の光電陰極22の作製方法について説明する。図5(a)〜(g)は、光電陰極22の作製工程図である。
【0034】
まず、図5(a)に示す第1の工程で、半導体光吸収層24となるSiC単結晶半導体基板上に、マイクロ波プラズマCVDによって、半導体電子放出層26となる多結晶ダイヤモンド膜を膜厚約0.5μmで成膜する。原料には、メタン(CH4)と水素(H2)を用い、マイクロ波出力1kW、圧力50Torr、成膜温度800度で成膜した。この際、半導体電子放出層26をp型の導電型とするために、ジボラン(B2H6)を導入してホウ素をドーピングしてある。
【0035】
図5(b)に示す第2の工程では、半導体電子放出層26上に、第一の電極30として厚さ約1000オングストロームのAuを真空蒸着する。本実施形態では第一の電極30としてAuを用いたが、第一の電極30の材料はこれに限られず、半導体電子放出層26と良好なショットキ接合を形成する他の材料でも良い。
【0036】
図5(c)に示す第3の工程では、第一の電極30上に、フォトレジスト34を塗布し、フォトリソグラフィー処理によりグリッド状のパターンを形成する。本実施形態では、線幅2μm、間隔10μm×50μmの格子状のパターンを形成した。続いて、図5(d)に示す第4の工程では、エッチングにより第一の電極30のフォトレジスト34で覆われていない部分を除去し、複数の窓36を形成する。そして、このエッチングにより、Auからなる第一の電極30は、図5(d)のようにグリッド状に形成される。
【0037】
尚、第一の電極30は、本実施形態のような格子状のものには限られない。但し、光電陰極22内に均一に電界が形成されるように、また、第一の電極30の各窓36から露出する半導体電子放出層26の面積がほぼ同じになることが望ましい。例えば、各第一の電極30の形状及び寸法を等しくし、当該各第一の電極30の中心位置を、互いに等間隔離隔しても良い。
【0038】
図5(e)に示す第5の工程では、パターニングされたフォトレジスト34を除去し、半導体光吸収層24となるSiC単結晶半導体基板の裏面に、Au/Ge/Ni/Auによるオーミック電極を第二の電極32として蒸着する。本実施形態では、Au/Ge/Ni/Auによるオーミック電極を蒸着したが、電極の材料はこれに限られず、半導体光吸収層24に良好なオーミック接合をする材料であれば良い。また、SiCSiC単結晶半導体基板の裏面全体に電極を形成したが、裏面全体に電極を形成しなくても、裏面の一部又は側面、或いはメサ型にエッチングされた表面に電極を形成しても良い。
【0039】
図5(f)に示す第6の工程では、第一の電極30と第二の電極32に、ワイヤボンディングのためのAlパッド38を蒸着する。尚、ワイヤボンディングにAlパッドを必要としない材料を電極に用いた場合は、この第6の工程を省いても良い。
【0040】
図5(g)に示す最後の第7の工程では、上記の試料を電子管内に配置し、真空排気後、各窓36内にCsとOを塗布し、半導体電子放出層26の仕事関数を低下させるための活性層28を形成する。本実施形態では、活性層28の材料としてCsOを用いたが、活性層28は半導体電子放出層26の表面の仕事関数を低下させ、光電子を真空中へ放出させやすくする材料で形成すればよい。例えば、活性層28として他のアルカリ金属であるRb、K、Na、Liや、これらの酸化物又はフッ化物を用いてもよいし、水素終端させた活性層とすることもできる。
【0041】
次に、図4を参照して、以上のように作製された光電陰極22の作用を説明する。まず、被検出光の入射から、光電子の励起までを説明する。第1実施形態と同様に、光電陰極22に外部から入射した被検出光は、活性層28を透過し、半導体電子放出層26に到達する。波長が225nm以下の被検出光は、多結晶ダイヤモンドからなる半導体電子放出層26で吸収される。そして、波長が225nmより長い被検出光は、半導体電子放出層26を透過して半導体光吸収層24に到達することができる。半導体光吸収層24では、波長約410nm以下の被検出光が吸収され、半導体光吸収層24内の光電子が励起される。
【0042】
さらに、第一の電極30と第二の電極32の間にバイアス電圧を印加することにより、半導体光吸収層24と半導体電子放出層26内に電界が形成され、この電界により半導体光吸収層24で励起された光電子を半導体電子放出層26へ移送することができる。半導体電子放出層26へ移送された光電子は、第一の電極30の各窓36内の半導体電子放出層26上に形成された活性層8を通して真空中へ効率良く放出される。
【0043】
尚、本実施形態では、マイクロ波プラズマCVDによって、半導体電子放出層26となる多結晶ダイヤモンド膜を成膜したが、成膜方法はこれに限られず、熱フィラメント法やレーザーアブレーション法等の他の成膜方法でも同様の効果が得られる。また、半導体電子放出層26として、多結晶ダイヤモンド膜ではなく、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、アモルファスカーボン膜等を用いても同様の効果が得られる。但し、実験により、半導体電子放出層26として多結晶ダイヤモンド膜を形成する場合に、光電子放出効率が最も高くなることが分かった。また、p型のドーピングは必ずしも必要ではないが、実験により、p型のドーピングを行った場合の光電子放出効率は、ドーピングを行わない場合の光電子放出効率の約2倍になることが分かった。
【0044】
(第3実施形態:電子管)
続いて、第3実施形態の電子管について説明する。本実施形態の電子管は、上述した第1実施形態又は第2実施形態の光電陰極を備えた光電子増倍管である。
【0045】
図6は、第1実施形態の光電陰極2を備えた光電子増倍管40の上部断面の模式図である。本実施形態の光電子増倍管40は、MgF2からなる入射窓42、光電陰極2、第1ダイノード44、第2ダイノード46、第nダイノード48、陽極50及びこれらを真空雰囲気に保つための真空容器52から形成される。
【0046】
次に、この光電子増倍管40の動作を説明する。紫外から可視域の被検出光hνは、MgF2からなる入射窓42を透過して、多結晶ダイヤモンド光電陰極2に入射する。光電陰極2では、被検出光により光電子が励起され、真空中に放出される。真空中へ放出された光電子は、光電陰極2に対して正の電圧が印加された第1ダイノード44に入射し、2次電子が生成される。このとき1次電子に対して数倍の2次電子が生成され、再び真空中へ放出される。
【0047】
第1ダイノード44から放出された電子は、第1ダイノード44に対して正の電圧が印加された第2ダイノード46に入射し、2次電子が生成され、2次電子は再び真空中へ放出される。この2次電子放出がn回繰り返されて、増幅された光電子が陽極50に到達する。尚、2次電子放出が10回程度繰り返された場合、最終的に陽極50では、光電陰極2から放出された光電子が約100万倍程度にまで増幅されて信号として収集される。
【0048】
本実施形態の光電子増倍管は、光電陰極2が前述のように高い量子効率を有し、また、可視領域にまで感度を有しているので、非常に光感度な紫外から可視域の検出器として利用することができる。尚、本実施形態では、入射光と光電子の放出される面が同じである、いわゆる反射型光電陰極を有するサイドオン型光電子増倍管を電子管の一例としたが、この他の透過型光電陰極を有するヘッドオン型光電子増倍管、画像増強管等の電子管でも同様の効果を得ることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光電陰極によれば、半導体光吸収層のエネルギーギャップは半導体電子放出層のエネルギーギャップよりも小さいので、半導体電子放出層のみで構成された光電陰極よりも小さなエネルギーの被検出光、即ち、半導体電子放出層のみで構成された光電陰極が吸収できる光の波長よりも長い波長の被検出光に対して感度を有することが可能となる。
【0050】
また、第一の電極と第二の電極の間にバイアス電圧を印加することにより、半導体光吸収層と半導体電子放出層内に電界が形成され、この電界により半導体光吸収層で励起された光電子を半導体電子放出層へ移送し、半導体電子放出層の第一の電極が形成されていない露出表面上に形成された仕事関数を低下させるための活性層を通して真空中へ効率良く光電子を放出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の光電陰極の断面模式図である。
【図2】バイアス電圧を変化させたときの分光感度特性を示すグラフである。
【図3】トンネル効果を示す図である。
【図4】第2実施形態の光電陰極の断面模式図である。
【図5】第2実施形態の光電陰極22の作製工程図である。
【図6】第3実施形態の光電子増倍管を示す断面図である。
【符号の説明】
2,22…光電陰極、4,24…半導体光吸収層、6,26…半導体電子放出層、8,28…活性層、10,30…第一の電極、12,32…第二の電極、40…光電子増倍管。
Claims (6)
- 被検出光を吸収して光電子を励起し、当該光電子を真空中へ放出する光電陰極において、
被検出光を吸収することにより光電子を生成する半導体光吸収層と、
エネルギーギャップが前記半導体光吸収層よりも大きく、前記光電子が透過すると共に、前記半導体光吸収層上に形成される半導体電子放出層と、
前記半導体電子放出層の表面の一部に形成された第一の電極と、
前記半導体電子放出層の前記第一の電極が形成されていない露出表面上に形成された前記半導体電子放出層の仕事関数を低下させるための活性層と、
前記半導体光吸収層に電気的に接続された第二の電極とを備え、
前記半導体電子放出層は、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン又はダイヤモンドを主成分とする材料からなることを特徴とする光電陰極。 - 前記半導体電子放出層は、p型の導電型であることを特徴とする請求項1記載の光電陰極。
- 前記第一の電極と前記半導体電子放出層とがショットキ接合していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の光電陰極。
- 前記第一の電極は、前記半導体電子放出層がほぼ均一に分布して露出する所定のパターン状に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項記載の光電陰極。
- 前記活性層は、アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物又はアルカリ金属のフッ化物からなることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項記載の光電陰極。
- 請求項1〜請求項5の何れか一項記載の光電陰極、陽極及び真空容器を少なくとも備えることを特徴とする電子管。
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1998
- 1998-02-16 JP JP03298498A patent/JP3762535B2/ja not_active Expired - Fee Related
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