JP3761792B2 - 校正装置付きロードセル式はかり - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内蔵分銅の荷重を増力てこを用いて増力してロードセルに作用させて校正を行ったり風袋荷重を消去する校正装置付きロードセル式はかりに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、分銅を内蔵し、この分銅の荷重をロードセルに負荷させてはかりのスパン(感度)を調整するようにした校正装置付きのロードセル式はかりがある。これにより、使用される地域ごとの重力加速度の違いによる測定値のばらつきを補正したり、ロードセルを構成する起歪体の時効硬化などの経時的変化によるスパンドリフトを補正する。
【0003】
しかし、ロードセル式はかりでは、ひょう量(はかりで安全に正しく測定できる最大質量)の大きなはかりも多い。この場合、内蔵分銅をひょう量に合わせて大重量化させるとはかり全体の重量が大きくなってしまう。このため、特開平11−108740号公報では、てこを用いて分銅の実際の荷重よりも大きな荷重をロードセルに負荷させることで、大重量の校正用分銅が必要なひょう量の大きなはかりにおける分銅の軽量化を図っている。
【0004】
図21は、そのはかりの構成を示し、てこ2の一端ははかり本体などに接続して支点P1となっており、他端は内蔵分銅3が負荷される内蔵分銅負荷部(重点)P2となっている。支点P1と重点P2との間の増力点P3には、一端がロードセル1に取り付けられた板ばね等の接続部材4の他端が接続している。てこ2は、重点P2に作用した力が増力されて増力点P3に作用する増力てこである。
【0005】
P1〜P3間の距離をa、P1〜P2間の距離をbとすると、校正時に重点P2に分銅3の荷重が負荷されると、増力点P3に、分銅重量×(b/a)の力が作用する。この力が接続部材4を介してロードセル1に負荷される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特開平11−108740号公報では、てこ2は常に増力点P3で接続部材4を介してロードセル1と連結された構成となっている。従って、載台1aに載せられた被計量物の荷重をロードセル1で測定している計量時に、てこ2が振動して、増力点P3に作用する力が変動したり、その振動が接続部材4を介してロードセル1に伝わったりすると、ロードセル1に被計量物以外からの荷重を作用させることになり、被計量物の正確な計量が行えない。
【0007】
また、校正時、非校正時におけるロードセル1に対する力の加除は、てこ2に対して分銅3を載せたり、持ち上げたりすることで行っているので、てこ2に対して分銅3が載せられる位置のずれ(偏置誤差)によって、重点P2がずれて、てこ比(b/a)が不安定になる。よって、校正時、ロードセル1に負荷される荷重が、校正を行うごとに一定とはならず正確な校正を行えない。これに対処するべく、上記公報では、分銅3が負荷される部分に偏置誤差吸収手段(ロバーバル部材)を設けている。しかし、このような偏置誤差吸収手段を設けることは、コスト高を招き、また、その取付やロバーバル部材の歪量の調整などの手間がかかる。
【0008】
また、従来より風袋引き処理というのは行われているが、これはロードセルに負荷されている風袋荷重そのものを取り除くのではなく、風袋荷重が負荷されたままの状態で、ロードセルの検出値をゼロにリセットするものである。そのため、風袋荷重がロードセルの有効荷重検出能力に対してかなりの割合を占める場合には、そのロードセルによって検出できる被計量物の荷重範囲が狭くなり、ロードセルの能力を十分に発揮することができなくなってしまう。
【0009】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、簡単な構成で増力てこのてこ比を安定化させて正確な校正が行えると共に計量時にはロードセルが増力てこから干渉を受けないようにして正確な計量が行え、また、ロードセルの有効荷重検出範囲を狭めることなく風袋荷重を消去できる校正装置付きロードセル式はかりを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するにあたり、本発明の請求項1では、校正用の分銅は増力てこの一端側に一体的に固定され、校正時は、増力てこで増力された荷重が作用する荷重作用部と、ロードセルに固定された荷重受け部材の荷重受け部とを係合させて、増力てことロードセルを連結すると共に、分銅荷重の重力方向への作用により、増力てこの他端側を支点として、この支点と分銅との間に形成された荷重作用部と荷重受け部との係合点に分銅の荷重を増力させた力を発生させてロードセルに伝達し、非校正時には、荷重作用部と荷重受け部との係合を解除して、増力てことロードセルとの連結を解除することにより、ロードセルに増力てこ側からの振動などによる荷重変動が負荷されないようにする。
【0011】
このような構成により、計量時、ロードセルには被計量物側からの荷重のみが作用するので正確な計量が行える。また、分銅は増力てこに一体的に固定されているので校正時に重点は変動せず安定したてこ比が得られる。
【0012】
本発明の請求項2または請求項3によれば、荷重作用部と荷重受け部との係合/解除を、鋭利な先端部を有する刃部材と、その先端部を受けるV字溝が形成された刃受け部材との係合/解除により行うので、荷重作用部と荷重受け部との係合点におけるずれを防ぐことができる。
【0013】
本発明の請求項4によれば、校正荷重の負荷を受けたときの荷重受け部の上下の変位が極小となるため、荷重作用部と荷重受け部との係合点の移動がないのでずれを防いで常に安定した校正を行える。
【0014】
また、1つのロードセルと、校正用の分銅と、ロードセルに重力方向の反対方向に分銅の荷重を増力させた力を作用させて風袋荷重を打ち消す増力てことを備えることにより、その増力てこでもってロードセルに負荷される風袋荷重そのものを消去できる。
【0015】
本発明の請求項は、1つのロードセルと、校正用の分銅と、ロードセルに重力方向の反対方向に分銅の荷重を増力させた力を作用させて風袋荷重を打ち消す増力てこと、前記増力てこの支点を中心に前記増力てこを傾動させる傾動手段を設け、この傾動手段による前記増力てこの傾動により、前記増力てこから前記ロードセルに作用する前記重力方向の反対方向の力の大きさを調整可能とし、校正時には、前記重力方向の反対方向の力を減じて又はゼロにして、前記風袋荷重を校正荷重として前記ロードセルに作用させて校正を行う。すなわち、1つの分銅及び増力てこでもって、ロードセルに負荷される風袋荷重の打ち消し量を調整して、風袋荷重消去と校正荷重負荷とを切り換えて兼用できるようにしている。
【0016】
本発明の請求項は、ロードセルは載台からの荷重を複数の一段階の減力てこを介して受けており、載台面積が大きく、ロードセル自体の有効荷重検出能力を越える大きな重量の被計量物を計量できるはかりに、本発明に係る校正装置を組み付けたものである。すなわち、コストのかかる複数のロードセルを用いなくとも、1つのロードセルで大きな重量の測定が行える。更に、精度の調整も1つのロードセルのみに専念して行えばよいのできめ細かな調整が行え、はかりの精度の向上にもつながる。
【0017】
本発明の請求項は、スパン調整を行った場所でロードセルに校正荷重を負荷させて得られるロードセルの検出値と、はかりの設置後、その設置場所でロードセルに校正荷重を負荷させて得られるロードセルの検出値との差を求めてこの差が重力加速度の変化のみによるものかどうかを判定する判定手段を備えている。前記差が重力加速度の変化を原因とすること以上に生じた場合には、校正装置自体に何らかの異常があるとみなせる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図7に、本発明の第1の実施の形態による校正装置付きロードセル式はかり10を模式的に示す。起歪体に複数のストレインゲージを貼り付けてなるロードセル11の固定部側はブラケット12を介してベース13上に固定されている。ロードセル11の可動部側にはブラケット14を介して荷重受け板15が固定されている。荷重受け板15上には、取付アーム16を介して載台17が固定されている。
【0020】
後述する校正装置からの校正荷重は、載台17を経由せず、直接荷重受け板15に校正時に負荷される。
【0021】
次に、図1〜図6を用いて校正装置について説明する。図1は校正装置20の平面図を、図2、図3はその縦断面図を示し、図2は校正時、図3は非校正時を示す。図4は図2における[4]−[4]線方向の断面図を、図5は図2における[5]−[5]線方向の断面図を、図6は図2における[6]−[6]線方向の断面図を示す。
【0022】
図1に示すように、ロードセル11の側方には、増力てこ21がロードセル11の長手方向と直角方向に延びて配設されている。増力てこ21は、平行に延びる2本の板材21a、21bを備え、これら板材21a、21bの一端側には校正用分銅22が固定されている。校正用分銅22は、板材21aを挟む第1分銅22a、第2分銅22bと、第2分銅22bとともに板材21bを挟む第3分銅22cとから成り、これら第1〜第3分銅22a〜22cは、板材21a、21bの長手方向と直角な方向からねじ込まれた2本のボルト23、24によって、板材21a、21bに一体的に固定されている。
【0023】
更に図2も参照して、増力てこ21の他端側には、断面菱形形状の刃部材25が両端を2本の板材21a、21bに圧入されて固定されており、その上側先端部25aは、中間ベース26に固定された刃受け部材27のV字溝に当接している。
【0024】
増力てこ21の他端側の上方には、増力てこ21と平行な方向に延びる2本の荷重受けレバー28a、28bが配設されており、これら荷重受けレバー28a、28bの一端部は荷重受け板15に固定されている。荷重受けレバー28a、28bの他端部には、断面菱形形状の刃部材(第2力点刃)30が両端を圧入されて固定されている。これら、荷重受け板15、荷重受けレバー28a、28b、第2力点刃30とから荷重受け部材が構成される。
【0025】
図2に示す校正状態においては、力伝達部材29が、その上部に形成された上部刃受け部材29aのV字溝を第2力点刃30の上側先端部30aに当接させて、第2力点刃30を下方に押圧している。
【0026】
増力てこ21の、上記第2力点刃30の下方に対応する部分には、両端を圧入されて断面菱形形状の第1力点刃31が固定されている。第1力点刃31は、第2力点刃30と垂直方向の対角線を一致させている。
【0027】
第1力点刃31の下側先端部31aは、力伝達部材29の下部に形成された下部刃受け部材29bのV字溝と当接し、図2に示す校正状態では、力伝達部材29を下方に押圧している。
【0028】
力伝達部材29の、分銅22側の側方には軸受け部材32が中間ベース26に立設されており、この上端部にはピン33が貫通して軸受け部材32に支持されている。図1に示されるように、軸受け部材32から突出したピン33の両端は、回動レバー34の2つの水平アーム部34aを貫通し、回動レバー34はピン33を回動軸として回動可能となっている。
【0029】
図6に示すように、回動レバー34の垂直アーム部34bの下端にはU字切欠き35が形成されており、このU字切欠き35に、送りねじ36の一端側に螺合されたナット部材37が係合している。ナット部材37は、小径部37aとこの軸方向の両端に形成されたフランジ部37bとから成る。ナット部材37は、小径部37a外周をU字切欠き35の内壁部に当接させて嵌まり込んでおり、その小径部外周の当接部はU字切欠き内壁部に沿って垂直に形成され、送りねじ36の回転に伴うナット部材37のまわり止めをしている。ナット部材37のフランジ部37bの直径はU字切欠き35の幅より大きく形成されている。
【0030】
図1、2に示すように、送りねじ36は、ベース13に固定された軸受け部材38に回転可能に支持され、他端部にはプーリ39が取り付けられている。また、ベース13にはモータ40が配設され、その回転軸40aにはプーリ41が取り付けられ、このプーリ41と送りねじ側のプーリ39間にはベルト42が掛け渡されている。
【0031】
本実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりは以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0032】
図2は校正時の状態を示すが、このとき、増力てこ21は、分銅22の重みで、刃部材25と刃受け部材27との当接点を支点P4として、図において反時計まわりに回動する力が作用し、第1力点刃31と下部刃受け部材29bとの当接点P5に、分銅22の荷重を増力させた力を下向きに作用させる。これにより、力伝達部材29は下方に押し下げられ、上部刃受け部材29aに形成された荷重作用部としてのV字溝を、第2力点刃30の荷重受け部としての上側先端部30aに当接係合させる。従って、この係合点P6に、P5に作用した力と同じ力が伝達される。これにより、荷重受けレバー28a、28bと荷重受け15を介してロードセル11に、分銅22の荷重が増力されて負荷される。このとき、増力てこ21の重点は、このてこ21の一端側に固定された分銅22の重心P7であるので、重点位置は安定しており、安定したてこ比でもって正確な校正を行える。また、P5とP6を同一垂直線上に位置させていることで、P5からP6への力の伝達が正確に行われる。
【0033】
非校正時は、図3に示す状態をとる。図2の状態から図3の状態への移行は、先ず、上述したモータ40を回転させ、この回転力をプーリ41、ベルト42、プーリ39を介して送りねじ36に伝達して、送りねじ36を回転させナット部材37を、図2において右方へ移動させる。
【0034】
このナット部材37の移動によりその左端側のフランジ部37bが、回動レバー34の垂直アーム部34bの下端に当接して、この下端を右方へ押し、図3に示すように回動レバー34は、ピン33まわりに回動する。この回動により、回動レバー34の水平アーム部34aが、力伝達部材29の上部刃受け部材29aに取り付けられたピン43に当接して、このピン43を上方に持ち上げる。
【0035】
これにより、力伝達部材29が上方に持ち上げられ、上部刃受け部材29aが第2力点刃30から離間して、ロードセル11側と増力てこ21との連結が解除され、ロードセル11側には増力てこ21から何ら荷重が作用しないので、載台の被計量物の正確な計量を行うことができる。このとき、力伝達部材29の上昇に伴って、増力てこ21は、その第1力点刃31が力伝達部材29の下部刃受け部材29bに支えられて持ち上げられ、P4を支点に上方に傾動される。
【0036】
なお、ナット部材37が送りねじ36の回転により右方に送られて、図3に示す位置に至ると、例えばベース13に設けられたリミットスイッチ(図示せず)にフランジ部37bが当接して、リミットスイッチを作動させ、この作動信号を受けてモータ40の回転を停止させる。これにより、ナット部材37はその位置で送りねじ36に対して固定された状態となり、回動レバー34はナット部材37のフランジ部37bにより時計まわりの回動が規制されて、力伝達部材29の図示するような上昇位置を保持する。
【0037】
校正時、図3から図2の状態に移行するときも同様に、ナット部材37が送りねじ36の非校正時とは逆の回転により左方に送られて、図2に示す位置に至ると、リミットスイッチを作動させてモータ40の回転を停止させる。これにより、ナット部材37は図2の位置で送りねじ36に対して固定された状態となり、回動レバー34はナット部材37のフランジ部37bにより図示の姿勢を保持され、力伝達部材29の下方への移動を妨げない。
【0038】
また、校正装置20はカバー67で覆われているので、分銅22に水分やほこり等が付着するのを、また上記刃部材と刃受け部材にほこりなどが詰まるのを防いでいる。
【0039】
はかりは、工場などで製造後その製造された場所でスパン調整などの各種調整が行われて使用地へと出荷される。そして、使用地では、先ず据え付け時に校正装置を作動させて校正が行われる。据え付け後も、はかりの精度を保つため定期的に、あるいは不定期に校正装置を作動させて校正が行われる。次に、その具体的な手順を図17〜19のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
先ず、ステップS1として、はかりの製造地(工場)にてスパン調整が行われる。例えば秤量1000kgのはかりの場合には、1000kgの分銅を載台の上に載せて、このとき、ロードセルの検出値(デジタル値)が1000kgに相当する定格値として例えば”100000”となるようにする。具体的には、ロードセルの検出値×S=100000となるべきスパン係数Sを求める。このスパン係数Sはメモリに記憶される。
【0041】
次いで、ステップS2として、そのスパン調整を行った製造地にて、上述した校正装置20を作動させ、ロードセルに例えば秤量1000kgの約1/3の校正荷重が負荷される。このときのロードセルの検出値が例えば”35005”であるとするとこの値が基準値としてメモリに記憶される。なお、ここでの製造地は旧計量法による区分で10区にあるとし、基準値35005は10区での校正結果の値として対応付けられて記憶される。
【0042】
次いで、ステップS3として、はかりを工場から出荷し、使用地(設置場所)に据え付ける。そして、据え付け後、その設置場所における最初の校正を行う。
【0043】
先ず、載台上が無負荷であり、且つ指示計に表示される質量指示値が0を示していることを目視で確認後(ステップS4)、ゼロリセットボタンを押す。ゼロリセットボタンを押すことにより、図20に示すスイッチ91がONとなり、このときのロードセルの検出値W1がメモリ92に取り込まれ記憶される。そして、比較器93にて、W1−(メモリに記憶されたW1)が演算され、結局、ロードセルの検出値としてはW2=0となる(ステップS5)。また、ゼロリセットボタンを押すことによって、指示計に表示された質量指示値(0.0kg表示)は消去され「校正中」表示に切り換わる。
【0044】
次いで、しばらくすると、指示計の表示部には現在の年月日が表示される(はかりはオートカレンダーを内蔵している)。その表示が正しければ校正開始ボタンを押す。異なっている場合には設定ボタンで年月日を修正してから校正開始ボタンを押す。そして、表示部は再度「校正中」表示に切り換わる。
【0045】
校正開始ボタンを押すことによって、上述した校正装置20のモータ40が起動し、増力てこ21がゆっくり傾斜し始めロードセル11に校正荷重がかかる。校正荷重が完全に負荷された位置で上述したリミットスイッチの作動によりモータ40は停止する。そして、安定時間を待ってこのときのロードセルの検出値Bを年月日と共にメモリに記憶する(ステップS6)。
【0046】
次いで、自動的にモータ40が再起動して、ロードセル11にかかっていた校正荷重が取り除かれる。そして、リミットスイッチの作動により完全に校正荷重が取り除かれた位置でモータ40は停止する(ステップS7)。
【0047】
次に、ステップS8の判断において、この校正用荷重が取り除かれた状態でのロードセルの検出値が0、あるいは+1、−1であるならステップS6で記憶した検出値Bをその設置場所における校正時の正常検出値と認識して再記憶する。0、+1、−1以外であった場合にはゼロ点変化があったものとして、ステップS5〜S8を繰り返す。この繰り返しを例えば3回行っても校正荷重が取り除かれた状態でのロードセルの検出値が0、+1、−1にならない場合には、校正装置自体に何らかの異常がある可能性が考えられるので、指示計の表示部に「エラー」を表示して何らかの処置が必要であるとの警告を発する。
【0048】
ステップS8でYesであった場合には、ステップS2においてスパン調整地で校正を行って得た検出値Aと、ステップS6において設置場所で校正を行って得た検出値Bとの差に基づいて、設置場所を特定する設置場所特定情報を設置場所特定手段にて求める(図18のステップS9)。設置場所特定情報は具体的には旧計量法における日本を16区に区分した区であり、例えば10区は重力加速度が9.797m/s2 の区であるというように定義付けられている。
【0049】
本実施の形態では、1区変わると、検出値が例えば1/10000変わるロードセルを用いており、10区で校正を行って得られた検出値Aに対しての、設置場所で校正を行って得られた検出値Bの差をみることで設置場所の区が特定できる。例えば検出値Aが35005であった場合、検出値Bが35005±4(検出値Aに対して±約1/10000)であれば、設置場所特定手段(CPU)では設置場所特定情報として9区、10区、11区を算出する。
【0050】
そして、その設置場所特定情報は指示計の表示部に例えば「9−11」というように表示される(ステップS10)。次にステップS11として、その表示を、使用者、販売者、据え付け者などが見て、確かにこの設置場所が9〜11区に該当するのであれば確認ボタンを押す。
【0051】
この確認ボタンが押されると、次のステップS12として、ステップS1において工場で求められメモリに記憶されているスパン係数Sを書き換える。すなわち、スパン係数Sを、S’=S×(検出値A/検出値B)にて求められるスパン係数S’に書き換える。以後、その設置場所で計量を行って得られるロードセルの検出値にはスパン係数S’がかけられてスパン補正される。更に、検出値Bもその設置場所における今後の校正時の基準値として年月日と共にメモリに記憶される。また、検出値Aと検出値Bとの差が重力加速度の違いのみによって生じたものとして、検出値Aと検出値Bとの比から求まる設置場所の重力加速度もメモリに記憶される。なお、検出値Aは消去せずにそれを求めた年月日と共に記憶し続け、はかりをまた別の場所に移動して設置する場合には、そこでの設置場所特定情報を求める際の基準値として用いる。しかし、将来、載台上に分銅を載せてスパン調整を再度行った場合には、このスパン調整地で校正装置を作動させて得られる検出値に書き換え、このスパン調整地の設置場所特定情報と共に記憶し、以後、設置場所を移動した場合には、その書き換えられた検出値が、移動したその場所での設置場所特定情報を求める際の基準値となる。
【0052】
ステップS11の確認において、実際の設置場所が表示部に表示された区「9−11」に該当しない場合にはエラーと判断する(ステップS13)。すなわち、この場合には重力加速度の変化以外、例えば校正装置の異常などを原因として検出値Aと検出値Bとの間に差が生じたと判断し校正装置の点検や修理などの何らかの処置を行う。
【0053】
上述した校正装置20は増力てこ21を用いているので、てこの刃と刃受けの接触状況などによっては校正装置自体を原因として校正が不正確となってしまう可能性がある。この不正確な校正結果に基づいてスパン係数を書き直すと正常なはかりを狂ったはかりにしてしまうことになるので、上述したように工場から出荷後、設置場所で使用するにあたり、出荷前校正時の検出値Aと設置後校正時の検出値Bとが重力加速度の違いのみによる差かどうかをみることで、校正装置自体に異常がないかどうかを確かめる。ここで、校正装置の正常が確認できれば、それを認識した上で設置場所におけるスパン係数を求める。
【0054】
次に、図19を参照して、設置場所における校正時の基準値Bが定まった以後の校正について説明する。すなわち、はかりの設置後も、ロードセルを構成する起歪体の時効硬化(ヤング率の変化)などによるはかりの狂いを補正するために必要に応じて校正を行って、その校正結果に基づいてスパン係数の書き換えが行われる。
【0055】
図19のフローチャートにおいて、ステップS21〜S25は、図17に示すはかり設置時のステップS4〜S8と同じ処理手順である。ただし、ステップS23にて、このときの校正時に得られメモリに記憶されるロードセル検出値はCとする。
【0056】
ステップS25でYesとなると、設置時に求めた検出値(基準値)Bと、今校正を行って得られた検出値Cとを比較する(ステップS26)。
【0057】
検出値BとCとの比較により、両者の差がある定まった差ΔW以内なら、はかりとしての精度にとっては無視できるばらつきの範囲内であるとみなしてスパン係数S’の書き換えは行わない。
【0058】
両者の差がΔWより大きく且つΔVより小さい場合には、ロードセルを構成する起歪体のヤング率の経時的変化などが考えられ、今校正を行って得られた検出値Cを用いてスパン係数S’を書き換える。すなわち、新たなスパン係数S”=S×(検出値A/検出値C)を求めメモリに記憶する。なお、検出値Cも、以後の校正時の基準値としてBに代わってメモリに記憶される。
【0059】
両者の差がΔVより大きい場合には、校正装置側に何らかの異常があった可能性があり、再度ステップS23〜S26を繰り返す。それでも、両者の差がΔVより大きい場合にはエラーを表示して警告する。
【0060】
以上述べたように、はかりの設置後においても、日常使用時のスパン係数の書き換えを、校正装置が正常であることを確認した上でスパン係数を書き換えして良いかどうかを判定するようにしている。
【0061】
また、ロードセルを構成する起歪体の材質としては例えばアルミ合金が用いられ、この場合、時間経過と共に起歪体のヤング率が大きくなる傾向、すなわちロードセルの定格出力が小さくなる傾向にあり、上述したΔW、ΔVの決定は基準値Bを求めた年月日からの経過期間に応じて決定するようにする。更に、温度感度特性によってもロードセルの定格出力は変化するのでこのことも考慮に入れてΔW、ΔVを決定するようにする。これにより、ステップS26における判定を正確に行える。
【0062】
従って、ロードセルの定格出力の経時的変化、すなわちスパンの経時的変化に対応するためには定期的に校正を行うことが望ましい。そこで、本実施の形態のはかりにはオートカレンダーが内蔵されているので、校正時期を自動的に知らせるようにする。例えば、1年間校正を行っていなかったら表示部に「校正して下さい」というメッセージを表示して知らせるようにする。
【0063】
次に、図8、9を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりは、本出願人が先に出願した特願平11−074649号に示されるロードセル式はかりに、上記の校正装置20を組み込んだものである。図8は、本実施の形態による校正装置付きロードセル式はかり50の部分破断平面図、図9は減力てこ配置個所の縦断面図を示す。
【0064】
本実施の形態による校正装置付きロードセル式はかり50は、ベース51と載台52とで囲まれた空間内部に、起歪体に複数のストレインゲージを貼り付けて成る1つのロードセル53と、互いに連結し合ったり係合したりすることなく、それぞれが独立している4本の単一減力てこ54と、上記校正装置20とを備えている。1本の減力てこ54は平行に延びる2本の板材54a、54bから成る。
【0065】
ロードセル53の固定部側はベース51に固定され、ロードセル53の可動部側には、荷重受け板55が固定されている。荷重受け板55には、前記減力てこ54に向かってそれぞれ延出する4本の荷重受けレバー56が固定されている。
【0066】
ベース51の四隅にはV字溝を有する刃受け部材57が立設されている。それぞれの刃受け部材57には、それぞれの減力てこ54の一端に圧入された断面菱形形状の刃部材58の下側先端部58aが上方から係合されて支点P8を構成している。
【0067】
また、減力てこ54における支点P8のすぐ側方にも断面菱形形状の刃部材59が圧入されており、この刃部材59の上側先端部59aに、V字溝を有する刃受け部材60が上方から係合して重点P9を構成している。刃受け部材60は、球を球面受け座で挟んで成る横荷重逃がし装置61を介して載台52と連結しており、載台52に作用する横荷重は、横荷重逃がし装置61により逃がされて、重点P9に横荷重が作用しないように構成されている。
【0068】
減力てこ54の他端にも断面菱形形状の刃部材62が圧入されており、この上方の荷重受けレバー56にも断面菱形形状の刃部材63が圧入され、これら刃部材62、63は互いの垂直方向の対角線を一致させて上下に整列している。また、刃部材63の上側先端部63aには力伝達部材64が、その上部刃受け部材64aを当接させて第2減力点P11を構成して吊り下げられており、力伝達部材64の下部刃受け部材64bは刃部材62の下側先端部62aと当接して第1減力点P10を構成している。
【0069】
上記構成において、載台52に荷重が負荷されると、この荷重が重点P9に作用し、P8を支点として、第1減力点P10に、重点P9への荷重にてこ比(P8〜P9間距離/P8〜P10間距離)をかけた力が作用する。すなわち、重点P9に作用した力は減力されて第1減力点P10に作用する。そしてこの力は、力伝達部材64を押し下げることによって第2減力点P11に伝達され、更に荷重受けレバー56を介してロードセル53に作用する。
【0070】
この構成のロードセル式はかりに、上記した校正装置20が組み込まれている。すなわち、図1、2に示される、第2力点刃30が圧入された荷重受けレバー28a、28bが、第2の実施の形態における荷重受け板55にも取り付けられて荷重受け部材を構成し、校正時にはその第2力点刃30に校正装置20の力伝達部材29が係合して増力てこ21から分銅22の増力された力がロードセル53に作用する。非校正時には、第2力点刃30と力伝達部材29の係合が解除され、ロードセル53に増力てこ21側からの力は作用しない。
【0071】
次に、図10、11を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図10は、第3の実施の形態による校正装置付きロードセル式はかり70の縦断面図、図11は図10における[11]−[11]線方向の断面図である。
【0072】
ロードセル71の固定部側は、ブラケット72を介してベース73と固定されている。ロードセル71の可動部側は、ブラケット74を介して荷重受け部材75の底面と固定されている。荷重受け部材75の上面は載台76に固定されている。
【0073】
平行に延びる2本の板材77a、77bから成る増力てこ77の一端側には、校正用分銅78がボルト79で一体的に固定されている。
【0074】
増力てこ77の他端側には、断面菱形形状の刃部材80が、その両端を2本の板材77a、77bに圧入されて固定されている。刃部材80の上側先端部80aは、ベース73に立設された一対の支持部材89a、89bの上部に取り付けられた刃受け部材81に形成されたV字溝と係合し、増力てこ77の支点P12を形成している。刃受け部材81は、両支持部材89a、89bに挟まれて、支持部材89a、89b及び刃受け部材81を貫通するピンにより取り付けられている。
【0075】
増力てこ77において、分銅78と支点P12との間には、断面菱形形状の刃部材82が、その両端を2本の板材77a、77bに圧入されて固定されている。刃部材82の下側先端部82aは、荷重受け部材75に立設された一対の支持部材88a、88bに取り付けられた刃受け部材83に形成されたV字溝と係合可能に配置されている。刃受け部材83は、両支持部材88a、88bに挟まれて、支持部材88a、88b及び刃受け部材83を貫通するピンにより取り付けられている。
【0076】
支点P12と刃受け部材83との間には、モータ84がベース73上に配設され、その出力軸84aにはねじが形成され、ナット部材85が螺着している。ナット部材85はまわり止め部材86の一端と固定され、まわり止め部材86の他端には貫通孔が形成され、この貫通孔を、ベース73に立設されたガイド棒87が貫通している。これにより、出力軸84aの回動に伴うナット部材85のまわり止めがなされ、ナット部材85は図示しないマイクロスイッチによって上下方向の一定間隔の移動のみ許容される。
【0077】
以上のように構成される校正装置付きロードセル式はかり70において、校正時、図10に示すように、増力てこ77からナット部材85は離間しており、分銅78の重さで、増力てこ77にはP12を支点として、図において反時計まわりに回動する力が作用し、荷重作用部である刃部材82の下側先端部82aは、荷重受け部である刃受け部材83のV字溝と係合して係合点P13を形成し、刃受け部材83に分銅78の荷重を増力させた力が下向きに作用する。この力は、荷重受け部材75を介してロードセル71に作用する。このとき、分銅78は増力てこ77に対して固定されているので、重点位置は安定しており、ロードセル71に所望の荷重が作用して正確な校正が行える。
【0078】
非校正時には、図10の状態から、モータ84の出力軸84aの回転駆動によりナット部材85を上昇させて、増力てこ77の支点P12と係合点P13との間の下面に当接させ、増力てこ77を、刃部材80と刃受け部材81との当接点P12を支点として持ち上げ、刃部材82を刃受け部材83から離間させる。これにより、ロードセル71と増力てこ77との連結が解除され、ロードセル71は増力てこ77から振動などによる干渉を受けないので、載台76に載せられた被計量物の計量を正確に行える。
【0079】
更に本実施の形態では、ロードセル71の中空部71aの長手方向における長さをLとすると、中空部71aにおいて、ロードセル固定部側端部からの距離がL/3の位置に、上記係合点P13を位置させている。なお、長手方向と直交する方向においては、係合点P13は、図11に示すように中央部に位置している。
【0080】
中空部71aを有するロバーバル機構のロードセル71においては、上記L/3の位置で上下の変位が最小であることが経験的にわかっている(有限要素法で解析すれば正確に求めることができる)。従って、このL/3の位置、あるいはこの近傍の位置で、校正時における刃部材82と刃受け部材83との係合を行えば、両者の位置ずれを防いでロードセル71に正確な校正荷重を作用させることができる。
【0081】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図12は本実施の形態による校正装置101の平面図を、図13はその縦断面図を示す。なお、図12では要部の構成を見やすくするため、載台の図示を省略し、また、ロードセル102の可動部側に固定された荷重受け板103を一点鎖線で示している。
【0082】
上記第1の実施の形態と同様、ロードセル102の側方に増力てこ104が配設されている。増力てこ104は、平行に延びる2本の板材104a、104bを備え、これら板材104a、104bに校正用分銅105が固定されている。校正用分銅105は、板材104aを挟む第1分銅105a、第2分銅105bと、第2分銅105bと共に板材104bを挟む第3分銅105cとから成り、これら第1〜第3分銅105a〜105cは、板材104a、104bの長手方向と直角な方向からねじ込まれた2本のボルト(図せず)によって、板材104a、104bに一体的に固定されている。
【0083】
増力てこ104の、ロードセル102寄りの右端には断面菱形形状の刃部材106が両端を2本の板材104a、104bに圧入されて固定されており、その上側先端部106aは、力伝達部材107の上部刃受け部材108のV字溝に当接している。
【0084】
増力てこ104における、刃部材106と分銅105との間にも、断面菱形形状の刃部材109が両端を2本の板材104a、104bに圧入されて固定されており、その下側先端部109aは、中間ベース110に立設された支持部材111に支持された刃受け部材112のV字溝に当接し、増力てこ104の支点P20を形成している。
【0085】
ロードセル102の可動部側に固定されている荷重受け板103には、板材104a、104bを挟むようにして一対の荷重受けレバー113、113が下方に垂下して固定されている。これら荷重受けレバー113、113の下部には、断面菱形形状の刃部材114が両端を圧入されて固定されている。この刃部材114は、板材104a、104bに固定された刃部材106の下方に位置し、これら刃部材106、114は垂直方向の対角線を一致させている。荷重受けレバー113、113に固定された刃部材114の下側先端部114aは、力伝達部材107の下部刃受け部材115のV字溝に当接している。
【0086】
増力てこ104の、図において左端側の下方にはオイルダンパ116が設けられ、増力てこ104の板材104a、104bの左端にピン117及びロッド118を介して固定された水平板119の上下動、すなわち増力てこ104の振動をオイルダンパ116のオイル室116a内に入れられたオイルの粘性で吸収するようにしている。
【0087】
なお、載台17上に載せられた被計量物の荷重は、上記第2の実施の形態と同様に、4本の単一減力てこ54及び荷重受けレバー56を介して荷重受け板103の四隅に作用してロードセル102に負荷される。
【0088】
本実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりは以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0089】
増力てこ104には、分銅105の重みで刃部材109と刃受け部材112との当接点を支点P20として、図12、13において反時計方向の回動力が作用し、刃部材106と力伝達部材107の上部刃受け部材108との当接点P21に、分銅105の荷重を増力させた力が上向きに作用する。これにより、力伝達部材107は上方に押し上げられ、下部刃受け部材115に当接する荷重受けレバー113の刃部材114に上方向の力が作用する。すなわち、荷重受けレバー113と荷重受け板103に重力方向の反対方向の力が作用し、上述した4本の減力てこ54を介して荷重受け板103及びロードセル102にかかっている風袋荷重(この場合載台荷重)を打ち消す。当接点P22に作用する上向きの力の大きさは、打ち消すべき風袋荷重の大きさに応じて、分銅105の位置を移動させるなどして増力てこ104のてこ比を変えて調整される。
【0090】
以上のような構成により、載台17上が無負荷状態ではロードセル102に作用する荷重も概略無負荷とすることができ、風袋荷重の大きさに関係なく、ロードセル102自体の有効荷重検出能力を最大限に発揮できる。
【0091】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図14は本実施の形態による校正装置120の平面図を、図15、16はその縦断面図を示し、図15は風袋荷重を消去しての通常の計量時の状態を、図16は校正時の状態を示す。なお、上記第4の実施の形態と同じ構成部分には同一の符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0092】
本実施の形態では、上記第4の実施の形態の構成に加えて、増力てこ104をその支点P20を中心に傾動させる傾動手段を設けている。その傾動手段の構成について以下に述べる。
【0093】
図14に示すように、両板材104a、104bの外側面側には一対のレバー121、122が配設され、これらレバー121、122の一端にはピン123が取り付けられ、このピン123によって一対のレバー121、122は連結されると共に、他端は、刃受け部材112を支える支持部材111に支持された固定ピン124のまわりに回動自在となっている。
【0094】
一方のレバー121には、図15に示すように下方に延びるアーム部121aが一体的に固定されており、そのアーム部121aの下部側面には係合板125が固定されている。係合板125は、上記第1の実施の形態における垂直アーム部34bに相当するものであり、その下端にU字切欠きが形成されており、このU字切欠きに、送りねじ126の一端側に螺合されたナット部材127が係合している。ナット部材127も上記第1の実施の形態のナット部材37と同様な構成であり、小径部とこの軸方向の両端に形成されたフランジ部127a、127bとから成り、ナット部材127はその小径部外周をU字切欠きの内壁部に当接させて嵌まり込んでいる。
【0095】
送りねじ126は、ベース128に固定された軸受け部材129に回転可能に支持され、他端部にはプーリ130が取り付けられている。また、ベース128にはモータ131が配設され、その回転軸131aにはプーリ132が取り付けられ、このプーリ132と送りねじ126側のプーリ130間にはベルト133が掛け渡されている。
【0096】
本実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりは以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0097】
通常の計量時は、図15に示す状態にあり、上述した第4の実施の形態と同様に、増力てこ104には、分銅105の重みで刃部材109と刃受け部材112との当接点を支点P20として、図において反時計方向の回動力が作用し、刃部材106と力伝達部材107の上部刃受け部材108との当接点P21に、分銅105の荷重を増力させた力が上向きに作用する。これにより、力伝達部材107は上方に押し上げられ、下部刃受け部材115に当接する荷重受けレバー113の刃部材114に上方向の力が作用する。すなわち、荷重受けレバー113と荷重受け板103に重力方向の反対方向の力が作用し、上述した4本の減力てこ54を介して荷重受け板103及びロードセル102にかかっている風袋荷重(この場合載台荷重)を打ち消している。
【0098】
そして、校正時には、モータ131を回転させ、この回転力をプーリ132、ベルト133、プーリ130を介して送りねじ126に伝達して送りねじ126を回転させナット部材127を図15において左方に移動させる。このナット部材127の移動により、その右端側のフランジ部127bが係合板125の下端に当接してこの下端を左方に押し、レバー121、122は固定ピン124のまわりに時計方向に回動する。この回動によりピン123が板材104a、104bの下面に当接して、図16に示すように板材104a、104bを持ち上げる。これにより、増力てこ104は支点P20を中心に時計方向に回動し、刃部材106及びこの刃部材106の上側先端部106aに吊り下がっている力伝達部材107が下降して、当接点P22における刃部材114と下部刃受け部材115との係合が外れる。よって、ロードセル102には風袋荷重を打ち消す方向の力が作用しなくなり、このときロードセル102に負荷される風袋荷重を校正荷重として利用して校正が行われる。なお、この場合は、当接点P22における係合を完全に解除して全風袋荷重を校正荷重として用いたが、増力てこ104の持ち上げ量、すなわち傾き角度を調整することで、当接点P22における上向きの力を単に減じるだけにして風袋荷重の一部を校正荷重として用いてもよい。
【0099】
なお、ナット部材127の送り量は、例えばベース128に設けられたリミットスイッチ(図示せず)によって検出して、それぞれ図15と図16の状態となったらモータ131を停止させる。
【0100】
以上述べたように、本実施の形態では、1つの増力てこを、風袋荷重消去用と校正用とに兼用できるので、部品点数の増加を抑えて低コスト化が図れると共に省スペース化や軽量化が図れ、更にはメンテナンスも容易となる。
【0101】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれらに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0102】
上記第1、第2の実施の形態において、送りねじ36を回転させるのではなく、ナット部材37を手または工具を用いてまわして送りねじ36の軸方向に移動させて、回動レバー34の回動動作を行ってもよい。
【0103】
図17〜図19のフローは第1の実施の形態に限られるものではなく、第2、第3、第5の実施の形態の校正装置による校正時にも適用できる。
【0104】
また、上記第5の実施の形態において、増力てこ104の傾動を、図10に示す第3の実施の形態のように、モータ84の回転によって上下動するナット部材85によって増力てこ104を上げ下げさせることによって行ってもよい。
【0105】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、計量時、ロードセルは増力てことは遮断されているので、増力てこからの影響は一切受けることなく、載台に載せられた被計量物の正確な計量を行える。また、校正用分銅は増力てこに固定され、重点は安定しているので、上述した従来技術における偏置誤差吸収手段を設けなくとも、安定したてこ比でもって正確な校正を行える。更に、ロードセルの有効荷重検出能力を狭めることなく風袋荷重を消去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりの要部の平面図である。
【図2】同縦断面図であり、校正時の状態を示す。
【図3】同縦断面図であり、非校正時の状態を示す。
【図4】図2における[4]−[4]線方向の断面図である。
【図5】図2における[5]−[5]線方向の断面図である。
【図6】図2における[6]−[6]線方向の断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりを模式的に示した図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりの部分破断平面図である。
【図9】同減力てこ配置個所の縦断面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりの縦断面図である。
【図11】図10における[11]−[11]線方向の断面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりの要部の平面図である。
【図13】同縦断面図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態による校正装置付きロードセル式はかりの要部の平面図である。
【図15】同縦断面図であり、風袋荷重消去時の状態である。
【図16】同縦断面図であり、校正時の状態である。
【図17】はかり設置時の校正作業の流れを示すフローチャートである。
【図18】図17に続くフローチャートである。
【図19】はかり設置後の日常使用時における校正作業の流れを示すフローチャートである。
【図20】ロードセル検出値のゼロリセット用の回路図である。
【図21】従来の校正装置付きロードセル式はかりを示す図である。
【符号の説明】
10 校正装置付きロードセル式はかり
11 ロードセル
20 校正装置
21 増力てこ
22 分銅
29a 荷重作用部
30a 荷重受け部
50 校正装置付きロードセル式はかり
53 ロードセル
54 減力てこ
70 校正装置付きロードセル式はかり
71 ロードセル
77 増力てこ
78 分銅
82a 荷重作用部
83 荷重受け部
101 校正装置
102 ロードセル
104 増力てこ
105 分銅
120 校正装置

Claims (8)

  1. 1つのロードセルと、校正用の分銅と、校正時に、前記分銅の荷重を増力させて校正荷重として前記ロードセルに負荷させる増力てことを備えた校正装置付きロードセル式はかりにおいて、前記分銅は前記増力てこの一端側に一体的に固定され、校正時は、前記増力てこで増力された荷重が作用する荷重作用部と、前記ロードセルに固定された荷重受け部材の荷重受け部とを係合させて、前記増力てこと前記ロードセルとを連結すると共に、前記分銅荷重の重力方向への作用により、前記増力てこの他端側を支点として、この支点と前記分銅との間に形成された前記荷重作用部と前記荷重受け部との係合点に前記分銅の荷重を増力させた力を発生させて前記ロードセルに伝達し、非校正時には、前記荷重作用部と前記荷重受け部との係合を解除して、前記増力てこと前記ロードセルとの連結を解除し、前記ロードセルに前記増力てこから荷重が負荷されないようにしたことを特徴とする校正装置付きロードセル式はかり。
  2. 前記荷重作用部と前記荷重受け部との係合/解除を、鋭利な先端部を有する刃部材と、前記先端部を受けるV字溝が形成された刃受け部材との係合/解除で行うことを特徴とする請求項1に記載の校正装置付きロードセル式はかり。
  3. 前記刃部材は、前記増力てこに固定された第1力点刃と、前記荷重受け部材に固定された第2力点刃から成り、これら第1、第2力点刃は、垂直方向に関してそれぞれの先端部を一直線上に位置させて、前記第2力点刃を上方に、前記第1力点刃を下方にして整列されており、前記第1力点刃を受ける下部刃受け部材と、前記第2力点刃の前記先端部と係合可能な上部刃受け部材とを有する力伝達部材が、前記第1、第2力点刃間に架設されており、校正時は、前記第1力点刃から前記下部刃受け部材に、前記分銅の増力された力を作用させて、前記力伝達部材を下方に押し下げることにより、前記上部刃受け部材を前記第2力点刃の前記先端部に係合させて、前記第2力点刃に対して、前記分銅の増力された力を下方に作用させ、非校正時は、前記力伝達部材を上方に上昇させて、前記下部刃受け部材で前記第1力点刃を支えて前記増力てこを前記他端側を支点として傾動させて持ち上げると共に、前記上部刃受け部材を前記第2力点刃から上方に離間させることを特徴とする請求項2に記載の校正装置付きロードセル式はかり。
  4. 前記校正荷重を負荷されたときの前記ロードセルに固定された前記荷重受け部材における前記荷重受け部の上下の変位が最小となる部位、またはこの近傍に前記荷重作用部からの力を負荷することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の校正装置付きロードセル式はかり。
  5. 1つのロードセルと、校正用の分銅と、前記ロードセルに重力方向の反対方向に前記分銅の荷重を増力させた力を作用させて風袋荷重を打ち消す増力てこと、前記増力てこの支点を中心に前記増力てこを傾動させる傾動手段を設け、この傾動手段による前記増力てこの傾動により、前記増力てこから前記ロードセルに作用する前記重力方向の反対方向の力の大きさを調整可能とし、校正時には、前記重力方向の反対方向の力を減じて又はゼロにして、前記風袋荷重を校正荷重として前記ロードセルに作用させて校正を行うことを特徴とする校正装置付きロードセル式はかり。
  6. 載台からの荷重をそれぞれの重点で受け、これを減力してそれぞれの減力点に発生させる複数の単一減力てこを設け、前記ロ−ドセルは前記減力点からの力を複数の異なる力作用点で受けていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の校正装置付きロ−ドセル式はかり。
  7. スパン調整を行った場所で前記ロードセルに前記校正荷重を負荷させて得られる前記ロードセルの検出値と、はかりの設置後、その設置場所で前記ロードセルに前記校正荷重を負荷させて得られる前記ロードセルの検出値との差を求めてこの差が重力加速度の変化のみによるものかどうかを判定する判定手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の校正装置付きロードセル式はかり。
  8. 前記判定手段は、前記差に基づいて得られる設置場所特定情報を求める設置場所特定手段と、前記設置場所特定情報を表示する表示手段とからなることを特徴とする請求項7に記載の校正装置付きロードセル式はかり。
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