JP3761791B2 - 曲がり管内面の磁気援用研磨方法およびその装置 - Google Patents

曲がり管内面の磁気援用研磨方法およびその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造産業、航空宇宙産業、原子力関連産業、化学成分分析機器におけるクリーンパイプ(ステンレス鋼)やビール・牛乳等の食品輸送用のクリーンパイプ、そして各種のセラミックパイプ等、特に曲がり部を有するパイプ等の複雑な形状あるいは微細径のパイプやクリーンガスボンベ等、入口が狭く従来の加工工具が挿入不可能な容器等非磁性体ワークの内面を精密に鏡面仕上げする磁気研磨方法およびその装置に関する。なお、磁性の研磨材に代えてあるいは加えて洗浄剤を用いることにより、パイプ等ワークの内面洗浄技術としても転用が可能である。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造産業や航空宇宙産業で用いられる高純度ガスや超純水には、極めて高い清浄度が求められており、輸送中の汚染や汚濁を極度に嫌う。したがって、高純度ガスや超純水の輸送用クリーンパイプ内面には、汚染物の付着や滞留を防止するために超精密表面が要求される。当然ながら、パイプにおける継手部分も極力少なくすることが望まれ、しかもクリーンパイプの形状は必然的に複雑化しており、これらの社会的要求に対応できる新しいパイプ内面研磨技術の開発が切望されている。そのようなことから、本件発明者らは新規な内面加工技術として「磁気援用内面研磨方法」を鋭意研究しているところである。
【0003】
図8は、本件発明者の提案した(特願平10−215455号)磁気援用研磨方法におけるパイプ等ワーク内面の研磨の加工原理を示すもので、図8(A)に示すように、ヨーク3により連結された複数(図示の例では2個一対のものが4個)の磁極間に配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなるパイプ等ワーク4の内面に研磨粒子である磁性砥粒5(比較的大径の鉄粉と小径の磁性砥粒とを混ぜたもの)を配置し、前記磁極間に形成された磁界内において、前記ワーク4と磁界とを相対回転するように構成したものである。図示の例では、静止したワーク4に対して磁界すなわちヨーク3により連結された複数の磁極側2S、2Nを回転させることによって、一対の磁極S、Nが2個配置された磁極間に形成された不均一集中磁場により発生した多数の磁性砥粒5のワーク4内面への加工圧力と、ワーク4と磁界との間の相対回転により生ずる磁性砥粒5の遠心力によって発生するワーク4内面への研磨圧力により、ワーク4の内面が精密に鏡面仕上げされる。
【0004】
このような基本的な磁気援用内面研磨方法では、ワーク4の内面に配置された研磨材としての磁性砥粒5は、図8(B)に示すように、パイプ等のワーク4の内面加工面への加工圧力の確保と、磁性砥粒5の回転磁場への追従を効果的に行うために、磁性砥粒5がワーク4の内面加工面の回転方向に向かうような不均一磁場を形成させる必要があった。そして、該不均一磁場の形成は、磁極の寸法形状とその配置に依存するものであるが、その最適値を求めることは非常に困難であった。加工圧力および球形磁性粒子の磁気追従回転磁気力について、磁性粒子に作用する磁気力Fは、一般に次式にて表される(磁気力の基本式)。
F=kVχH(∂H/∂x) 式(1)
ここで、k:定数、V:粒子容量、χ:粒子の磁化率、H:磁場強度、(∂H/∂x):磁場強度の変化率である。すなわち、粒子に作用する磁気力は、粒子の容積と磁化率に比例して大きくなり、磁場強度Hとその変化率の積に比例して大きくなる。変化率がゼロの場合には磁気力もゼロとなる。
【0005】
しかしながら、上述したように、磁極設定はかなり面倒であり、最適化も困難であった。わが国の磁気研磨の黎明期には研磨すら実用できなかった。つまり、磁性粒子は、加工状態によっては研磨抵抗に負けてワークと共回りして、磁極とともに回転してくれずに研磨不能に陥り、加工が非常に不安定となり、実用に適さない多くの問題点を有していた。このようなことから、磁性粒子を回転磁極に追従して回転させるには研磨抵抗に充分打ち勝つ不均一磁場形成が必要であり、そのための磁極設計、磁極配置等の最適化には多くの解決しなければならない問題がある。そのようなことから、本件発明者は、一様な磁界の均一磁場であっても、回転磁極に追従して磁性粒子が容易に回転して、ワーク表面を研磨および加工硬化することを可能にした図9に示したような、磁気異方性工具を用いた表面処理方法およびその装置(特願平11−211609)を提案した。
【0006】
これは、磁界中に配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなるパイプ等ワーク4の内面に磁性砥粒5を配置するとともに、前記ワーク4と磁界とを相対回転させることによって、ワーク4の内面を研磨する磁気研磨方法において、前記磁性砥粒5に加えて磁気的異方性を有する形状のピン等の磁性粒子6を混入させたことによって、一様な均一磁場分布を採用せざるを得ないパイプ等のワーク4の径がきわめて小さくものの内表面の精密仕上げにおいても、磁性粒子6の磁気的異方性によって、ワーク4と磁界とが相対回転した場合に、磁性粒子が研磨抵抗に打ち勝って回転磁極に追従して容易に回転するので、磁性砥粒5を研磨材とした研磨加工を効果的に行うことができることとなった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特に、近年のように微細で複雑な形状の部品における内表面の精密仕上げが要求されるようになってくると、曲がり部を有するいわゆるエルボ管の曲がり部の内面研磨についても、高い精度での研磨が要求されている。一般に、管の曲がり形状のために、加工箇所によって磁場分布が変化し、磁性砥粒の加工面に対する磁力(加工力)を変動させる。したがって、磁性砥粒の加工挙動にも大きく影響を及ぼし、仕上げ面にばらつきを生ずる要因となっていた。
【0008】
そこで、本発明では、曲がり部を有するいわゆるエルボ管の内面の全ての面において、均一で高い精度での研磨を可能にした曲がり管内面の磁気援用研磨方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0009】
このため、本発明が採用した技術手段は、
磁界中に配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなる曲がり部を有するパイプ等ワークの内面に磁性砥粒を配置するとともに、前記ワークと磁界とを相対回転させることによって、ワークの内面を研磨する磁気援用研磨方法において、前記パイプ等ワークの直管部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切角度だけ傾斜させ、曲がり部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切量だけ外側に移動させてワークの内面を研磨することを特徴とする曲がり管内面の磁気援用研磨方法である。
また、上記に記載の曲がり管内面の磁気援用研磨方法に使用する磁気援用研磨装置であって、同装置は、ロボットあるいは機械的手段により姿勢制御および移動制御がなされ磁極間にて磁界を発生させる研磨ユニットと、前記磁界内に配置され内部に磁性砥粒が配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなる曲がり部を有するパイプ等ワークとを備え、前記パイプ等ワークの直管部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切角度だけ傾斜させ、曲がり部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切量だけ外側に移動させてワークの内面を研磨すべく、ワークの軸心に対する研磨ユニットにおける磁界の回転軸を傾斜可能および移動制御可能に構成したことを特徴とする曲がり管内面の磁気援用研磨装置である。
【0010】
【実施の形態】
以下、本発明の曲がり管内面の磁気援用研磨方法およびその装置の1実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の曲がり管内面の磁気援用研磨方法の概念図、図2は曲がり部での比較実験例図、図3はその実験結果図、図4は曲がり部での本発明の磁気援用研磨方法の実験概念図、図5はその実験結果図、図6は既発表の直管部での実験条件図、図7はその実験結果図である。
図1に示すように、本発明による曲がり管内面の磁気援用研磨方法は、磁界中に配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなる曲がり部を有するパイプ等ワーク4の内面に磁性砥粒5を配置するとともに、前記ワーク4と磁界とを相対回転させることによって、ワーク4の内面を研磨する磁気援用研磨方法において、前記ワーク4と磁界との間の相対回転軸の設定条件により、ワーク4の内部の磁場分布と磁性砥粒の加工挙動を制御することを特徴とする。
【0011】
図示しての詳述はしないが、ロボットあるいは機械的手段により姿勢制御および移動制御(オフセットおよび軸方向移動)がなされ磁石1からなる磁極N、S間にて磁界を発生させる研磨ユニットと、前記磁界内に配置され内部に磁性砥粒5が配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなる曲がり部4B、4Cを有するパイプ等ワーク4とから構成される曲がり管内面の磁気援用研磨装置において、前記ワーク4の軸心4Dに対する研磨ユニットにおける磁界の回転軸(磁石1N、1Sの回転軸)1Dを傾斜(θ)およびオフセット(δ)制御可能に構成したことを特徴とするものである。磁界を発生させるところの磁石1は、図示省略(図8や図9の前提技術と同様なので、これらを参照)のヨーク3により連結された複数(図8の例では対峙する2個一対によって均一磁場による磁界が形成されたものであるが、図8のような不均一磁場による磁界構成を妨げるものではない。)の希土類永久磁石1S、1Nを対向設置した磁極間に配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなるパイプ等ワーク4の内面に鉄粉等の磁性砥粒5を配置するとともに、該磁性砥粒5に加えて適宜、図示省略の磁気的異方性を有する形状の磁性粒子6(図9参照)をパイプ等ワーク4の内面に混入させ、前記ワーク4と磁界とを相対回転するように構成される。
【0012】
具体的には、後述する実験結果によって裏付けられる以下のような研磨方法が採用される。前記パイプ等ワーク4の直管部4Aではワーク4の軸心4Dに対して(磁石1N、1Sによる)磁界の回転軸1Dを適切角度θだけ傾斜させ、曲がり部(内側4B、外側4C)ではワーク4の軸心4Dに対して磁界の回転軸1Dを適切量δだけ外側にオフセットさせてワーク4の内面を研磨することを特徴とするものである。曲がり部4B、4Cを有することから、好適には、ワーク4側を静止させて磁界側すなわちヨークを含めた磁石1N、1S側を回転させるものであるが、曲がり管4を回転させる装置が設計できるなら、磁界側を静止させてワーク4を回転制御してもよいことは言うまでもない。その際の磁界とワークとの相対回転軸の傾斜およびオフセット制御は好適には磁界側で行われる。
【0013】
本実施の形態では、均一磁場の構成を採らざるを得ない微細径の内面研磨加工をする場合にても、ワーク4と磁界との相対回転の際に回転磁極に追従して磁性粒子が容易に回転して、ワーク表面を研磨することを可能にする、前記磁気的異方性を有する形状の磁性粒子として、磁性砥粒5に加えて所定径と所定長さを有する磁性ピン工具がワーク4の内面に混入されてもよい。磁気的異方性を有する形状であれば、所定径と所定長さを有する磁性ピン工具の他に適宜の形状が採用され得る。磁性ピン工具の比透磁率は、好適には、動的挙動を得たいときは2〜100程度とし、高い加工圧力による安定した静的挙動を得たいときは100〜1000程度に選定される。このような構成により、ワーク4と磁界との相対回転の際に、例えば、静止したワーク4に対して磁極側を回転させていくことで、均一磁場中であっても、磁気的異方性を有する形状に構成された所定径と所定長さを有する磁性ピン工具は、研磨抵抗に打ち勝って回転磁極に追従して容易に回転して、磁性砥粒5を研磨材としてワーク表面を研磨することが可能となる。
【0014】
磁性ピン工具は典型的にはピン工具形状のものであるが、磁性ピン工具の両端面にシャープなエッジ切り刃が形成されたり、端面を球面等のなだらかな形状としたり、円形断面の磁性ピン工具全体が螺旋状に形成されてもよい。また、磁性ピン工具とともにワーク4の内面に混入された磁性砥粒5等のスラリー(軽油等の液体も含む)がポンプ等により強制循環されるように構成して、常に研磨材を新しいものに代えて研磨能力を維持し、かつ研磨面の冷却によって研磨時の焼付きを効果的に防止することもできる。
【0015】
以下、図2〜図7を用いて、本発明の曲がり管内面の磁気援用研磨方法およびその装置による加工試験の結果を説明する。図6および図7は、本件発明者が1999年9月24日、25日日本機械学会関東支部ブロック合同講演会にて「磁気研磨法による曲がり管内面の精密仕上げに関する研究」として発表した論文の中の直管部における加工研磨特性についての実験条件およびその結果を示す図である。図7に示すように、エルボ管ワークの直管部の外表面に対する磁極(磁石)との加工間隙を2.5mmとしたところ、磁性砥粒は充分な磁力を発生できずに内表面の平滑化が滞ってしまった。そこで、磁力を増大させるために、磁極の回転軸をワークの軸心に対して傾斜させて、加工間隙を局所的に縮小することを試みた。最小加工間隙を1.0mmとなるようにし(磁極の回転軸の傾斜角度を9°)、他の加工条件は図6の表と同様として、加工実験を行った。
【0016】
磁極の回転軸をワークの軸心に対して傾斜させることにより、良好な仕上げ面が得られたことが理解される。磁極の回転軸を傾斜させることは加工部の磁場強度とその勾配を局所的に高め、磁性砥粒への磁力を局所的に増大させる。このとき、磁極をワーク軸方向に移動すれば、直線管の内面は一様に高磁力で加工されることになり、良好に仕上げられたものと考えられる。以上により、ワーク内面を一様に仕上げるには、加工間隙すなわち磁場分布の選定が重要になることが分かった。
【0017】
次に、本研究の磁気援用研磨方法によるパイプ等ワークにおける曲がり部内面の仕上げ面のばらつきの解析と、これを解決した本発明による研磨方法とを比較検討した結果について説明する。
<在来法による曲がり部の磁場分布と加工特性>
図2に示すように、磁極とワークとの間には両者の接触を避けるために所定の間隙が設けられている。在来法(図2(a))では、曲がり部内側における磁極の両端部と曲がり部外側における磁極中心部の間隙が等しくなるように、磁極の回転軸が設定されていた。図中に示した値は、各部位における法線方向の磁束密度であり、在来法(図2(a))の場合、曲がり部内側では、外側や側面に比較して低い磁束密度しか得られていない。このため、内側では、磁性砥粒は他の部位よりも低い磁力しか作用できず、表面の平滑化が進行しなかったと推察される。これが曲がり部に生ずる仕上げ面のばらつきの要因と言える。このことは、図2(a)の実験に対応した図3(a)に示した研磨実験結果からも理解できる。したがって、曲がり部内側における仕上げ面のばらつきの問題を解決するには、曲がり部内側に作用する磁性砥粒への磁力を増大させ必要がある。
【0018】
さて、前述した在来法(図7)の研究によると、曲がり管の直管部では、磁極の回転軸を管の軸に対して傾斜させることにより、加工部の磁場分布を変化させて、局所的に増大させた磁性砥粒への磁力を利用することで加工性能が向上することが知見されており、このことから、曲がり部においても、磁極の回転軸の調整により内側に作用する磁性砥粒への磁力を増大させることができれば曲がり部内面の均一仕上げが実現できると期待された。本実験では、磁極の回転軸を調整する手法として、磁極の回転軸をワークの軸心に対して傾斜させる方法と、磁極の回転軸をワークの軸心から僅かに外側に平行移動させてオフセットさせる方法の2種類について検討することとした。
【0019】
図2(b)は、在来法(図2(a))の磁極の回転軸を磁極とワークの曲がり部が接触しない最小間隙1mmとなるまで傾斜させた条件とし、このときの傾斜角度θは2.3°である。また、さらに大きな傾斜角度を得るために、磁極間距離を25mmに広げた条件(図2(C)、θ=8.5°)についても検討した。図2(b)の場合、曲がり部外側では、在来法(図2(a))に比較して磁極とワークとが接近する面積が増大するため、広範囲で磁束密度が増大したと言えるが、一方、内側では、ワークに接近する磁極エッジ部近傍においてのみ磁束密度が増大するものの、他の部位では低下する傾向が見られた。図3に示す研磨実験の結果によると、図2(b)の条件では、在来法(図2(a))に比較して曲がり部の側面においては良好な仕上げ面が得られているが、内側の仕上げ面は悪化しており、結果として仕上げ面のばらつきを拡大する結果を招いた。これは、前述の磁場分布による影響に加え、磁性砥粒がワークに対して楕円軌道を描いて回転しながら加工に関与したために、内側と外側において不安定な加工挙動を示したことによるものと推察される。
【0020】
図2(c)では、磁極間距離を大きくしたため、磁極の回転軸を大きく傾斜させても、磁極密度は全体的に低い値となり、磁性砥粒への磁力を低下させてしまったと考えられる。在来法(図2(a))と同様の条件で加工実験を行ったところ、磁性砥粒はその低い磁力のために磁極の回転挙動に追従できず、加工不能に陥った。したがって、図3(c)の結果は、加工時間27分までは、混合磁性砥粒の供給量を1gに減量し、磁極の回転数を1500/minに減速して研磨実験を行い、その後、条件を戻して54分間実験を継続した結果である。以上により、磁極の回転軸の傾斜は、曲がり部の内側と外側で局所的に磁性砥粒への磁力を増大させるものの、同時に磁性砥粒の各部位に対する作用形態も変化させるため、各部位における仕上げ面の差を拡大してしまい、本手法は仕上げ面のばらつきを縮小するには得策でないと言える。
【0021】
<磁極の回転軸とワークの軸心とのずれが曲がり部の磁場分布と加工特性に及ぼす影響>
本実験では、磁極の回転軸をワークの曲がり部の平行に0.6mm(図4(b))と1.1mm(図4(c))移動させた条件を設定した。磁極中心部に対応する部位に高い磁束密度による高い加工力が得られることから、磁極中心部の磁束密度に着目し、磁極の回転軸を外側に0.6mmずらすと、曲がり部の内側では側面や外側と同等の磁束密度が得られており、外側に1.1mmずらせた場合では内側が最も高い磁束密度を示している。さらに、内側の磁束密度は、在来法(図4(a)の値よりも高くなっている。この結果より、図4(b)(c)では、磁性砥粒は側面や外側と同等、またはそれ以上に高い磁力を内側に作用して加工に関与すると期待される。
【0022】
図5に、図4に示した3種類の条件による研磨実験の結果を示す。磁極の回転軸とワークの軸心のずれが0.6mmの場合、内側は在来法に比較して良好に仕上げられており、外側や側面とほぼ同等であ。一方、1.1mmでは、内側は良好に仕上げられているものの、外側の仕上げ面は粗くなってなってしまい、仕上げ面のばらつきは縮小されなかった。これらの結果は、前述した加工部の磁場分布の影響によるものと推察される。なお、図4によると、磁極の回転軸のずれ移動は側面の磁束密度には影響していない。このため、加工特性には磁極の回転軸のずれの移動の影響が現れなかったと言える。以上のことにより、磁極の回転軸をワーク外側に移動させて曲がり部の磁場分布を調整し、それぞれの加工部位に等しい磁性砥粒への磁力(加工力)を作用させることができれば、均一な仕上げ面を創成できることが分かった。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、非磁性体からなる曲がり部を有するパイプ等ワークの形状、材質、研磨ユニットを構成するところのロボットあるいは機械的手段による磁極の回転軸の傾斜等の姿勢制御およびオフセットおよび軸方向への移動制御形態、磁界を生ずるところのヨークの形状、磁極の形状、およびこれらの間の関連構成、ワークの内面に配置された磁性砥粒等のスラリーのポンプ等による循環方式、磁性砥粒および磁性ピンの寸法、ワークあるいは磁極の回転駆動方式、ワークの形状および素材、磁性ピンの形状および素材、比透磁率および素材、磁界の強さ、研磨時間等は適宜選定できる。また、磁気異方性工具として、工具内部に磁性材、外部に研磨材等の2種類以上の別部材から構成される工具としてもよい。また、均一磁場における研磨加工中に、磁性砥粒および磁性ピンの動的挙動特性を適宜調整して適宜の研磨力を得るために、前記均一磁場における磁界の強さを変えたり、前記均一磁場を形成するものとは別途の電磁コイルによる変動磁界(例えば数ヘルツ〜数千ヘルツ)を構成して磁性砥粒および磁性ピンの動的挙動特性を適宜調整して内面研磨を実現することもできる。さらには、磁気研磨のための磁界を構成させる永久磁石に代えて電磁石を採用して磁力の大きさおよび方向を刻々変動させることで、見かけ上の磁気的異方性を増長させることもできる。あるいは、永久磁石の高速移動と、電磁石に交流電流を通電することとを組み合わせてもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明では、磁界中に配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなる曲がり部を有するパイプ等ワークの内面に磁性砥粒を配置するとともに、前記ワークと磁界とを相対回転させることによって、ワークの内面を研磨する磁気援用研磨方法において、前記ワークと磁界との間の相対回転軸の設定条件により、ワーク内部の磁場分布と磁性砥粒の加工挙動を制御することにより、曲がり部を有するパイプ等の複雑な形状のワークであっても、その内面を仕上げ面にばらつきを生ずることなく、均一に高精度にて研磨することが可能となった。
【0025】
また、前記パイプ等ワークの直管部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切角度だけ傾斜させ、曲がり部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切量だけ外側に移動させてワークの内面を研磨する場合は、それぞれの加工部位に対応させた最適の加工条件の選定により、ワークの内面を直管部から曲がり部に至るまで全体的にばらつきを生ずることなくに均一に仕上げることが可能となった。
【0026】
さらに、ロボットあるいは機械的手段により姿勢制御および移動制御がなされ磁極間にて磁界を発生させる研磨ユニットと、前記磁界内に配置され内部に磁性砥粒が配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなる曲がり部を有するパイプ等ワークとから構成される曲がり管内面の磁気援用研磨装置において、前記ワークの軸心に対する研磨ユニットにおける磁界の回転軸を傾斜および移動制御可能に構成した場合は、ワークに対する研磨ユニットの傾斜および移動移動により、簡便に、曲がり部を有するワーク内面を均一に加工する装置を提供できる。
このように本発明によれば、曲がり部を有するいわゆるエルボ管の内面の全ての面において、均一で高い精度での研磨を可能にした曲がり管内面の磁気援用研磨方法およびその装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の曲がり管内面の磁気援用研磨方法の概念図である。
【図2】曲がり部での比較実験例図である。
【図3】図2の比較実験の実験結果図である。
【図4】曲がり部での本発明の磁気援用研磨方法の実験概念図である。
【図5】図4の実験結果図である。
【図6】直管部での実験条件図である。
【図7】図6の実験結果図である。
【図8】磁気援用研磨方法の概念図である。
【図9】磁性工具を付加した磁気援用研磨方法の概念図である。
【符号の説明】
1 永久磁石
1D 磁極(磁石)の回転軸
4 パイプ等ワーク
4A 直管部
4B 曲がり部(内側)
4C 曲がり部(外側)
4D ワークの軸心
5 磁性砥粒
θ 磁極の回転軸傾斜角度
δ 軸心間オフセット量

Claims (2)

  1. 磁界中に配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなる曲がり部を有するパイプ等ワークの内面に磁性砥粒を配置するとともに、前記ワークと磁界とを相対回転させることによって、ワークの内面を研磨する磁気援用研磨方法において、前記パイプ等ワークの直管部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切角度だけ傾斜させ、曲がり部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切量だけ外側に移動させてワークの内面を研磨することを特徴とする曲がり管内面の磁気援用研磨方法。
  2. 請求項1に記載の曲がり管内面の磁気援用研磨方法に使用する磁気援用研磨装置であって、同装置は、ロボットあるいは機械的手段により姿勢制御および移動制御がなされ磁極間にて磁界を発生させる研磨ユニットと、前記磁界内に配置され内部に磁性砥粒が配置されたセラミックス、ステンレス鋼等の非磁性体からなる曲がり部を有するパイプ等ワークとを備え、前記パイプ等ワークの直管部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切角度だけ傾斜させ、曲がり部ではワークの軸心に対して磁界の回転軸を適切量だけ外側に移動させてワークの内面を研磨すべく、ワークの軸心に対する研磨ユニットにおける磁界の回転軸を傾斜可能および移動制御可能に構成したことを特徴とする曲がり管内面の磁気援用研磨装置。
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