JP3761369B2 - 道路及び軌道の兼用車両 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道軌道保線作業用の道路及び軌道の兼用車両(以下「兼用車両」という)において、特に、緊急事態時に素早く軌道から脱出できるようにする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道軌道の保線作業は、夜間の終電から始発までの限られた時間内で行なわなければならない。保線作業を迅速かつ効率的に行なうためには、資材の運搬から廃材の積み出しなどをできるだけ早く、しかも大量に運ぶことが必須条件である。このため、レール上では鉄輪で走行し、道路上ではタイヤで走行する兼用車両が開発された。
【0003】
従来の兼用車両の1つとして、例えば、特開平9−11718号公報に開示されるように、レール上を走行するときには、道路走行用のタイヤをレールに押し付けて駆動走行する形式のものがある。この形式のものにおいては、レール走行用のモータ等の駆動源が不要であり、車両重量を軽減できるという利点がある。しかし、レール周りには各種機器が配置されているため、タイヤと各種機器とが接触し、各種機器に影響を及ぼすおそれがある。この不具合を解消するために、特開平11−91323号公報に開示されるように、道路走行用タイヤに円筒形状の鉄輪を嵌装する技術が提案されたが、軌道走行用鉄輪の着脱に手間がかかるものであった。
【0004】
一方、タイヤ駆動は道路上のみで、レール上では鉄輪により駆動走行する形式の兼用車両もある。この形式のものにおいては、鉄輪を駆動するためのモータ等の駆動源が必要となるため、車両重量が増加するという欠点があるが、レール周りの各種機器に影響を及ぼすおそれがないという利点がある。近年では、レール周りの各種機器に影響を及ぼすおそれのある形式の兼用車両は敬遠され、鉄輪によりレール上を駆動走行する形式の兼用車両が主となる方向にある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、鉄輪によりレール上を駆動走行する形式の兼用車両は、図9に示すように、レール1上に後輪2が配置される構成であった。このため、鉄輪3の故障等により、鉄輪3での走行が不可能になった緊急事態時には、駆動輪たる後輪2により軌道から脱出しようとしても、レール1と後輪2とが干渉してしまい、脱出が困難であった。この場合、無理に脱出しようとして後輪2がレール1間に落ちてしまうと、レール1間に配置されている各種機器を損傷するおそれがあり、鉄道車両の運行に支障を来してしまう。
【0006】
レールを跨ぐように車輪が配設される構成は、特開昭54−55908号公報及び特開平10−250326号公報等に開示されているが、複輪方式の車輪を前提とした技術ではない。また、後輪が複輪方式のものは、例えば、特公昭60−18562号公報に開示されているが、後輪がレール上に位置しているため、レールを跨いでいない。このものにおいては、緊急脱出時には、後輪がレール上に乗って振られ、走行が不安定になってしまう。
【0007】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、道路走行用車輪が軌道レールを跨ぐように車輪レイアウトを見直すことによって、緊急事態時に素早く軌道外に脱出できる道路及び軌道の兼用車両を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の発明は、後輪が複輪方式の道路走行用車輪と、軌道走行用車輪と、該軌道走行用車輪を上下動させる上下機構と、を含んで構成される車両総重量が8トン以下の道路及び軌道の兼用車両であって、軌道走行時には、車両最外側が在来線の車両限界内に納まるようにすると共に、前記道路走行用車輪外側寸法<キャブ幅+2×100mm、かつ、前記道路走行用車輪の後輪において、トレッド寸法−2×ディスクオフセット−後輪幅>軌道レール外側寸法、とすることで、前記道路走行用車輪は、その内側寸法が軌道レールの外側寸法より大になるように構成したことを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、道路及び軌道の兼用車両が軌道上を走行する場合には、道路走行用車輪により軌道上まで走行した後、上下機構を作動させて軌道走行用車輪を軌道レール上に載置させる。そして、この状態で、軌道走行用車輪での走行が不能となった緊急事態時には、上下機構を作動させて車両を降下させれば、道路走行用車輪の内側寸法が軌道レールの外側寸法より大になっているため、道路走行用車輪が軌道レールを跨いだ状態となる。このため、道路走行用車輪により自力走行が可能となる。
【0010】
また、軌道走行時には、車両最外側が在来線の車両限界内に納まると共に、道路走行用車輪外側寸法<キャブ幅+2×100mm、となっているため、軌道周囲に設置された各種機器の損傷を防止しつつ、現行法規を遵守することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1は、本発明に係る兼用車両をダンプ型車両に適用した一実施形態の全体構成を示す。
【0012】
兼用車両10には、道路走行用の前・後輪タイヤ12,14(道路走行用車輪)に加え、レール走行用の鉄輪16,18(軌道走行用車輪)が備え付けられている。鉄輪16,18は、車両の前部及び後部に夫々一対設けられ、後部の鉄輪(以下「後部鉄輪」という。以下同様)18は、図示しない油圧モータにより回転駆動される。また、車両の前部及び後部の鉄輪16,18は、レール20上を走行する際に、図示しない上下機構により車両下方に移動され、図示するようにレール20上に載置される。一方、道路上を走行する際には、鉄輪16,18は、上下機構により図中の1点鎖線で示す位置に収納される。
【0013】
なお、図示する兼用車両10は、車両後部に保線用部材等を積載するダンプ型車両であるので、後輪タイヤ14に作用する荷重を考慮し、後輪タイヤ14には複輪方式が採用されている。また、兼用車両10には、軌道走行用車輪として鉄輪(鉄製の車輪)が使用されているが、軌道走行用車輪は他の材質から形成されていてもよい。
【0014】
図2は、狭軌(在来線)に適用した4トン級(車両総重量8トン以下)の兼用車両10の後輪レイアウトを示す。ここで、狭軌とは、山手線等の在来線で使用されるレール幅であって、レール外側寸法が1197mmのものをいう。
【0015】
狭軌に対応した4トン級の兼用車両10では、図示するように、キャブ幅1995mmのキャブ22において、後輪タイヤ14のトレッドを1725mmに設定する一方、複輪のディスクオフセットを127mmに設定する。すると、4トン級トラックの標準的な後輪タイヤ幅211mmを考慮すると、後輪タイヤ14の内側寸法は、
寸法=(トレッド)−(ディスクオフセット)×2−(タイヤ幅)
=1725−127×2−211
=1260[mm]
となる。これは、狭軌レール20の外側寸法1197mmより63mm広く、後輪タイヤ14内側とレール20との間に63/2=31.5mmの隙間ができることとなる。
【0016】
ここで、4トン級車両において、後輪タイヤ14がレール20を跨ぐようにするには、ディスクオフセットを標準の135mmではなく127mmにすることが必須である。兼用車両では、鉄輪16,18によるバネ下重量が大きいため、最大積載量が減少する。このため、図3に示すように、輪荷重が2〜3トンを想定した積み荷の負荷倍数考慮時における後輪タイヤ14のタイヤ幅を採用することができ、後輪タイヤ14が最大にたわんでも干渉しないという条件を確保しつつ、ディスクオフセットを従来の135mmから127mmにすることができる。
【0017】
また、鉄道軌道においては、軌道上を車両が走行したとき(緊急時を除く)、車両が各種機器と接触しないようにするため、図4に示すように、その許容限界を定める車両限界線24が規定されている。車両限界線24の下部は、図示するように、レール20上方にあり、かつ、いわゆる面取りがなされた形状であるため、車両を出来るだけ低くするには、後輪タイヤ14の外側寸法Lを小さくする必要がある。この観点からも、ディスクオフセットを従来よりも小さくする必要がある。車両を低くするとその重心も下降するため、レール20走行時の走行安定性を向上することができる。
【0018】
なお、後輪タイヤ14がレール20を跨いだときの余裕代は、少なくとも、30mm必要である。これは、図5に示すように、レール20の連結部であって、レール20の側面かつ外側には、導電体からなる電気線26が取り付けられているからである。即ち、電気線26に後輪タイヤ14が激しく接触しないようにするためには、後輪タイヤ14とレール20とのには、少なくとも30mm程度の間隔が必要である。
【0019】
従って、鉄輪16,18での走行が不能となったとき等の緊急事態時には、上下機構により車両を降下させれば、後輪タイヤ14とレール20との干渉がなくかつ後輪タイヤ14が地面に接触するため、後輪タイヤ14がレール20に乗り上げることなく、自力で軌道外に素早く脱出することができる。
【0020】
一方、上記構成においては、タイヤ外側寸法は、
寸法=(トレッド)+(ディスクオフセット)×2+(タイヤ幅)
=1725+127×2+211
=2190[mm]
となり、車両横方向に対して片側あたり
(2190−1995)/2=97.5[mm]
ほど後輪タイヤ14がキャブ22より飛び出すが、現行法令による規制100mm以下であるので問題はない。
【0021】
なお、前輪タイヤ12に関しては、前輪タイヤ12には後輪タイヤ14ほど重量が作用しないことを考慮し単輪で構成されているため、レール20と前輪タイヤ12との干渉が問題となりにくい。また、本発明は、後輪タイヤ14が単輪で構成されるものであっても適用可能であることは言うまでもない。
【0022】
次に、走行安定性を向上させる構成について説明する。
従来の兼用車両における第1の問題点として、レール走行用の前部鉄輪16の支持構造に問題があった。即ち、従来の兼用車両においては、図6に示すように、前部鉄輪16は、左右独立したブラケット28を介して片持構造で上下機構に夫々固定されており、左右輪が車軸(シャフト)により連結されていなかった。このような構成を採らざるを得なかった第1の理由は、図示するように、トランスミッション30の側方に設けられたPTO(Power Take Off;動力取出口)32からプロペラシャフト34を介して油圧ポンプ(油圧駆動装置)36へ動力が伝達されていたため、プロペラシャフト34と車軸とが干渉してしまうことが挙げられる。また、第2の理由としては、従来の兼用車両は6気筒エンジン38を使用していたためその全長が長く、トランスミッション30が車両後方に位置していたため、トランスミッション30の構成部品と車軸とが干渉してしまうことが挙げられる。このようなことから、前部鉄輪16が車軸により連結されておらず、ブラケット28を補強しなければ、強度不足に陥り易く、走行安定性が低下するおそれがあった。また、ブラケット28の補強により車両重量が増加し、特に、ダンプ型車両においては、積載重量が低下してしまった。なお、図6において、符号40は、油圧ポンプ36から供給されるオイルを駆動源として前部鉄輪16を駆動する油圧モータである。
【0023】
第1の問題点を解決するために、本実施形態では、前述した後輪タイヤ14のレイアウトの見直しに加えて、図7に示すような工夫を施した。即ち、前部鉄輪16を車軸42で連結可能にすべく、PTO32をエンジン38の後方かつ上方に設け、かつ、全長が短い4気筒エンジンを採用し、トランスミッション30の位置を前方に移動した。このような構成を採用することで、油圧ポンプ36の動力を伝達するプロペラシャフト34と車軸42との干渉が避けられ、前部鉄輪16間を車軸42で連結することが可能となった。
【0024】
従って、前部鉄輪16の支持構造が軽量かつ強固になり、走行安定性の向上及び積載重量の増加が実現された。また、前部鉄輪16が車軸42により連結されたため、この車軸42にディスクブレーキ(図示せず)を一体的に取り付けることで、制動力及び信頼性を向上させた。さらに、前部鉄輪16が車軸42で連結されたため、前部鉄輪16を1つの油圧モータ40で駆動することが可能となり、部品点数の削減等が行われた。
【0025】
また、第2の問題点として、図8(A)に示すように、車幅方向に設定される鉄道施設の建築限界に対して兼用車両のキャブ22が幅広であったため、ドア22aの開口角度θ1が小さく、乗降性が余り良くないという問題があった。
【0026】
第2の問題点を解決するために、本実施形態では、図8(B)に示すように、車幅方向に設定される鉄道施設の建築限界に対して、充分なドア22aの開口角度θ2が得られるようなキャブ幅を採用した。
【0027】
従って、ドア22aの開口角度が大となる(θ1<θ2)ことで、限られた建築限界という制約の範囲内で乗降性を向上することができる。
また、以上説明した実施形態におけるキャブ幅,ディスクオフセット等は、一般的に流通しているものを使用した一例であり、本発明はかかる寸法に限定されるものではない。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、道路走行用車輪が軌道レールを跨ぐこととなるので、緊急事態時には、自力で軌道外に素早く脱出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る兼用車両の全体構成を示し、(A)は側面図、(B)は背面図
【図2】 狭軌に適用した場合の後輪レイアウト図
【図3】 輪荷重とタイヤ幅との関係を示す線図
【図4】 車両限界線の説明図
【図5】 レールと車輪との間に必要な間隔を示し、(A)は上面図、(B)は(A)中のX−X断面図
【図6】 走行安定性に関する従来の兼用車両の問題点を示し、(A)は側面図、(B)は上面図
【図7】 走行安定性を向上させるための兼用車両の構成を示し、(A)は側面図、(B)は上面図
【図8】 乗降性を向上させるための構成を示し、(A)は従来の兼用車両の上面図、(B)は本実施形態の兼用車両の上面図
【図9】 従来の兼用車両の後輪レイアウト図
【符号の説明】
10 兼用車両
12 前輪タイヤ
14 後輪タイヤ
16 前部鉄輪
18 後部鉄輪
20 レール
24 車両限界線

Claims (1)

  1. 後輪が複輪方式の道路走行用車輪と、
    軌道走行用車輪と、
    該軌道走行用車輪を上下動させる上下機構と、
    を含んで構成される車両総重量が8トン以下の道路及び軌道の兼用車両であって、
    軌道走行時には、車両最外側が在来線の車両限界内に納まるようにすると共に、
    前記道路走行用車輪外側寸法<キャブ幅+2×100mm、かつ、前記道路走行用車輪の後輪において、トレッド寸法−2×ディスクオフセット−後輪幅>軌道レール外側寸法、とすることで、前記道路走行用車輪は、その内側寸法が軌道レールの外側寸法より大になるように構成した
    ことを特徴とする道路及び軌道の兼用車両。
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