JP3761270B2 - β−フラクトフラノシダーゼとその製造方法並びに用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術的分野】
本発明は、フラクトシル転移能の高い新規なβ−フラクトフラノシダーゼと、その製造方法及び用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
蔗糖と他の糖質とを原料として、β−フラクトフラノシダーゼ(別名フルクトシルトランスフェラーゼ)の糖転移作用により生成されるフラクトシル転移糖、例えば、キシロシルフラクトシド、ラクトスクロースなどは、抗う蝕性、あるいはビフィズス菌増殖促進性などの性質を有することから、食品、医薬品分野において注目されているオリゴ糖である。
【0003】
これらのフラクトシル転移糖を生成するβ−フラクトフラノシダーゼとして、微生物起源のアルスロバクター・スピーシーズ K−1(Arthrobacter sp. K−1)、及びバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium) IFO 13498の産生する酵素が知られている。
【0004】
アルスロバクター・スピーシーズ K−1のβ−フラクトフラノシダーゼは、『アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)』、第54巻、第4号、913乃至919頁、(1990年)によれば、その反応至適pHが6.5乃至6.8とされている。このpH領域では、工業的な酵素反応の温度条件において、糖質の褐変が起こりやすく、とくにフラクトースが生成する反応においてその傾向が顕著であり、反応糖液の精製過程における脱色操作に多大の負荷をかけることが懸念される。また、バチルス・メガテリウム IFO 13498のβ−フラクトフラノシダーゼは、特開平4−200386号公報に示されているように、その反応至適pHは6.0であり、その条件下での酵素反応液の褐変の程度は低いものと思われる。しかしながら、この酵素の至適温度が40乃至45℃と低く、この付近の温度での酵素反応においては、微生物汚染の心配がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フラクトシル転移能が高く、工業的実施に有利なβ−フラクトフラノシダーゼと、該酵素を利用したフラクトシル転移糖の製造方法,並びにその用途を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、反応の至適温度が高く、至適pHが糖質の安定な弱酸性域にあり、しかも糖転移能の高い新規なβ−フラクトフラノシダーゼを求めて、その酵素を産生する微生物を広く検索した。その結果、岡山市の土壌から分離したバチルス(Bacillus)属に属する新規な微生物V230が、目的とするβ−フラクトフラノシダーゼを産生することを見いだし、更に、本酵素を、蔗糖とそれ以外の糖質とを含有する溶液に作用させることにより、フラクトシル転移糖含有糖質の製造方法を確立し、併せてこの糖質を含有せしめた組成物を確立して本発明を完成した。
【0007】
以下、本発明における新規微生物バチルス属に属する微生物V230の同定試験結果を示す。なお、同定試験は、『微生物の分類と同定』(長谷川武治編、学会出版センター、1985年)に準拠して行った。
【0008】
〈A 細胞形態〉
(1)肉汁寒天培養、27℃、培養1日
:1.0乃至1.5×3.0乃至7.5μmの桿菌。単独、希に対をなし、連鎖した細胞も観察される。周鞭毛による運動性あり。非抗酸性。グラム染色不定。ポリ−β−ヒドロキシブチレートを蓄積しない。培養4日で内生胞子を極希に認める。
(2)ポテトエキス・ペプトン・グルコース寒天培地、27℃、培養1日:0.9乃至1.5×2.7乃至6.0μmの桿菌。単独、希に対をなし、連鎖した細胞も観察される。運動性あり。グラム染色不定。内生胞子形成。胞子着生位置は細胞の末端で、胞子のうの膨らみ無し。胞子は0.8乃至1.0×1.0乃至1.6μmの楕円。土壌エキス培地を用いた培養でも胞子形成を認める。
【0009】
【0010】
【0011】
以上の菌学的性質に基づいて、『バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Volume 2)』、第2巻、(1986年)を参考にして公知菌との異同を検討した。その結果、本菌は、グラム染色は不定であったが、好気性で、内生胞子を形成したことから、バチルス属に属する微生物であることが判明した。さらに、本菌は、上記の菌学的諸性質からバチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)に近いことがわかるが、内生胞子は細胞の末端に形成されること、カゼインの分解性陰性、クエン酸の利用性陰性、10℃での生育陰性などの点でバチルス・メガテリウムとは明らかに異なることが判明した。
【0012】
これらの結果から、本発明者等は、本微生物をバチルス・スピーシーズ(Bacillus sp.)V230と命名し、平成7年3月24日付で、茨城県つくば市にある通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託し、受託番号FERM BP−5054として受託された。
【0013】
本発明では、本菌株のみならず、その変異株なども使用することができる。
【0014】
本発明の微生物の培養に用いる培地は、本微生物が生育でき、本発明の酵素を産生するものであればよく、合成培地および天然培地のいずれでもよい。炭素源としては、本微生物が資化できる物であればよく、例えば、蔗糖、乳糖、マルトース、デキストリン、澱粉などの糖質、糖蜜および酵母エキスなどの糖含有物などを使用することができる。培地におけるこれらの炭素源の濃度は炭素源の種類により適宜選択される。例えば、培養液の蔗糖の濃度は、20w/v%以下が望ましく、菌の生育および増殖からは、通常、5w/v%以下が好ましい。窒素源としては、例えば、アンモニウム塩、硝酸塩などの無機窒素化合物、及び、例えば、尿素、コーン・スティープ・リカー、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、肉エキスなどの有機窒素含有物が用いられる。また、無機成分としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、モリブデン塩、コバルト塩などが、必要に応じて適宜用いられる。
【0015】
培養は、通常、温度15乃至45℃、好ましくは25乃至37℃、pH5乃至8、好ましくはpH5.5乃至7.5から選ばれる条件で、好気的に行われる。培養時間は、本微生物が増殖し得る時間であればよく、好ましくは5乃至100時間である。また、培養液の溶存酸素濃度には特に制限はないが、通常は、0.5乃至20ppmが好ましい。そのために、通気量を調節したり、攪拌したり、酸素を使用したり、また、培養槽内の圧力を高めるなどの手段が採用される。また、培養方式は、回分培養または連続培養のいずれでもよい。
【0016】
このようにして、微生物を培養した後、得られる培養物から本発明の酵素を回収する。本酵素活性は、培養物の菌体外培養液に認められ、菌体外培養液を粗酵素として回収すればよく、また、培養物全体を粗酵素として用いることもできる。菌体外培養液と菌体との分離には、通常の固液分離手段が採用される。例えば、培養物そのものをそのまま遠心分離する手段、培養物に濾過助剤を加えたり、あるいは、濾過助剤をプレコートしたプレコートフィルターにより濾過分離する手段、平膜、中空糸膜などを用いる膜濾過分離する手段などが採用される。菌体外培養液をそのまま粗酵素液として用いることもできるが、好ましくは濃縮して用いる。例えば、硫安塩析法、アセトン及びアルコール沈澱法、平膜、中空糸膜などを用いる膜濃縮法などが採用される。
【0017】
更に、菌体外培養液およびその濃縮物は、固定化することもできる。例えば、イオン交換体への結合法、樹脂及び膜などとの共有結合・吸着法、高分子物質を用いた包括法などが採用される。
【0018】
粗酵素は、そのまま用いてもよいが、精製して使用することもできる。例えば、菌体外培養液を硫安塩析して濃縮した粗酵素標品を透析後、DEAE−トヨパール樹脂を用いる陰イオン交換カラムクロマトグラフィー、続いて、ブチルトヨパール樹脂を用いる疎水カラムクロマトグラフィー、再度DEAE−トヨパール樹脂を用いる陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製することによって、電気泳動的に単一な酵素を得ることができる。
【0019】
このようにして得られる本発明のβ−フラクトフラノシダーゼは、下記の理化学的性質を有する。
(1) 作用
蔗糖、ラフィノース及びエルロースのβ−フラクトフラノシド結合を加水分解して、フラクトースを遊離する。また、これらβ−フラクトフラノシド結合を有する糖質を糖供与体として、他の糖質、糖アルコール及びアルコール類から選ばれる受容体にβ−フラクトフラノシル基の転移を触媒する。
(2) 分子量
SDS−ゲル電気泳動法で、49,000±5,000ダルトン
(3) 等電点
アンフォライン含有電気泳動法で、4.6±0.5
(4) 至適pH
温度40℃、10分間反応で、約5.5乃至6.0
(5) 至適温度
pH6.0、10分間反応で、カルシウムイオン非存在下で45℃付近,カルシウムイオン存在下で50℃付近
(6) pH安定性
温度4℃、24時間保持の条件で、pH約5.0乃至8.0の範囲で安定
(7) 温度安定性
pH6.0、1時間保持の条件で、45℃付近まで安定
(8) 阻害
1mMのCu++、Pb++、Fe++、Fe+++ 、Hg++で阻害を受ける。
【0020】
本発明のβ−フラクトフラノシダーゼの活性は、次のようにして測定する。基質として蔗糖1.0w/v%を含む水溶液(20mM酢酸緩衝液、pH6.0、5mM塩化カルシウムを含む)5mlに酵素液0.2mlを加え、40℃で10分間反応させた後、ソモギー銅液を加え反応を停止させ、還元力をソモギー・ネルソン法により測定する。対照として、あらかじめ100℃で10分間加熱することにより失活させた酵素液を用いて、同様に測定する。酵素活性1単位は、上記の測定方法で、1分間に2マイクロモルのグルコースに相当する還元力を増加させる酵素量、と定義する。
【0021】
本発明のβ−フラクトフラノシダーゼは、蔗糖に作用して、グルコースとフラクトースを生成するが、蔗糖濃度を高めても、蔗糖分子間の転移反応は起こりにくく、蔗糖よりも分子量の大きいオリゴ糖の生成は極めて少ない。しかし、蔗糖を糖供与体とし、他の適切な糖質、例えば、キシロース、ガラクトース、乳糖、マルトース、イソマルトースなどの還元性糖質を受容体として本酵素を作用させた場合、それぞれの還元性糖質にフラクトシル基を転移して、キシロシルフラクトシド、ガラクトシルフラクトシド、ラクトスクロース(別名、ラクトシルフラクトシド)、エルロース(別名、マルトシルフラクトシド)、イソマルトシルフラクトシドを生成する。また、他の糖質として、トレハロース、ネオトレハロースなどのグルコースからなる非還元性二糖類を受容体として、同様に本酵素を作用させた場合、フラクトシルトレハロース、フラクトシルネオトレハロースを生成する。単糖類、二糖類のみならず、それ以上の重合度のキシロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などのオリゴ糖類、また、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール類も受容体となりうる。受容体としては2種以上を同時に用いることも有利に実施できる。また、供与体としては、蔗糖以外に、例えば、ラフィノース、エルロースなどβ−フラクトフラノシド結合を有するオリゴ糖を用いることもできる。
【0022】
本発明のβ−フラクトフラノシダーゼを用いたフラクトシル転移糖生成反応における基質濃度は、特に限定されないが、工業的には10w/w%(以下、本明細書では、特にことわらない限り、w/w%を%と略称する。)以上、望ましくは20乃至60%が好適である。反応温度は、基質存在下で酵素が失活しない温度、すなわち60℃付近までで行えばよいが、好ましくは約50乃至55℃の範囲を用いる。反応pHは、通常、約3.5乃至8.0の範囲に調整すればよいが、好ましくはpH約4.5乃至6.5の範囲に調整すればよい。反応時間は、酵素反応の進行具合により適宜選択すればよく、通常、基質固形物1グラム当たり約0.1乃至50単位の使用量で、0.1乃至100時間程度である。
【0023】
フラクトシル転移糖の生成率は、酵素反応液の基質濃度、用いる受容体の種類、反応条件などによって異なる。例えば、20%蔗糖と20%乳糖を基質として用いた場合、ラクトスクロースの生成率は、最大約40%である。
【0024】
反応液は、常法により、濾過、遠心分離などして不溶物を除去した後、活性炭による脱色、H型、OH型イオン交換樹脂による脱塩などの精製工程を経た後、濃縮し、シラップ状製品にする。必要ならば、更に乾燥して粉末状製品にすることも随意である。
【0025】
また、転移糖含量を高めるために、酵素反応液から目的とする転移糖を分離、精製して、フラクトシル転移糖高含有物にすることもできる。その方法としては、例えば、インベルターゼ欠損酵母を用いた発酵法により単糖類を除去する方法(酵母発酵法)、アルカリ性溶液にして加熱処理することにより還元性糖質を分解する方法(アルカリ処理法)、膜濾過法、カラムクロマトグラフィーなどにより、夾雑糖類を分離除去する方法が、適宜採用できる。とりわけ、特開昭58−23799号公報、特開昭58−72598号公報などに開示されている塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより、夾雑糖類を除去して目的とするフラクトシル転移糖高含有画分を採取する方法は、工業的規模で有利に実施できる。この際、公知の固定床方式、移動床方式、疑似移動床方式のいずれの方法を採用することも随意である。
【0026】
夾雑糖質を分離した液は、常法により、瀘過、遠心分離などして不溶物を除去した後、活性炭による脱色、H型、OH型イオン交換樹脂による脱塩などの精製工程を経て、濃縮し、シラップ状製品にする。必要ならば、更に、噴霧乾燥などの方法で乾燥して、粉末状製品にすることも随意である。
【0027】
このようにして得られる本発明のβ−フラクトフラノシダーゼにより生成されるフラクトシル転移糖含有糖質は、通常フラクトシル転移糖を固形物当たり5%以上、望ましくは10%以上含有している。
【0028】
以上述べた方法で製造されるフラクトシル転移糖含有糖質は、味質良好な甘味を有し、また、浸透圧調節性、保湿性、照付与性、結晶防止性、澱粉老化防止性などの性質を有し、また、抗う蝕性、ビフィズス菌増殖促進性、ミネラル吸収促進性などの機能をも有し、広く飲食物、嗜好物、飼料、餌料、化粧品、医薬品、成形物など、更には、生活用品、農林水産用品、試薬、化学工業用品などの各種組成物に有利に利用される。
【0029】
フラクトシル転移糖含有糖質は、甘味付けのための調味料としてそのまま使用することができるが、必要ならば、例えば、粉飴、ブドウ糖、マルトース、トレハロース、蔗糖、異性化糖、蜂蜜、メイプルシュガー、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、レバウディオシド、グリチルリチン、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、サッカリン、グリシン、アラニンなどのような他の甘味料の一種または二種以上の適量と混合して使用してもよく、また必要ならば、デキストリン、澱粉、乳糖などのような増量剤と混合して使用することもできる。
【0030】
また、フラクトシル転移糖含有糖質の呈味は、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味などの他の呈味を有する各種物質とよく調和するので、一般の飲食物の甘味付け、呈味改良に、また品質改良などに有利に利用できる。
【0031】
例えば、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、ふりかけ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、たくあん漬の素、白菜漬の素、焼肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなど、各種調味料として有利に使用できる。
【0032】
また、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羮、水羊羮、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子、パン、ビスケット、クラッカー、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンデーなどの洋菓子、アイスクリーム、シャーベット、などの氷菓、果実のシロップ漬、氷蜜などのシロップ類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、スプレッドなどのペースト類、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖果などの果実、野菜の加工食品類、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬などの漬物類、ハム、ソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、天ぷらなどの魚肉製品、ウニ、イカの塩辛、酢こんぶ、さきするめ、ふぐみりん干しなどの各種珍味類、のり、山菜、するめ、小魚、貝などで製造されるつくだ煮類、煮豆、ポテトサラダ、こんぶ巻などの惣菜食品、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜のビン詰、缶詰類、清酒、合成酒、リキュール、洋酒などの酒類、紅茶、コーヒー、ココア、ジュース、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックス、即席しるこ、即席スープなどの即席食品、更には、離乳食、治療食、ドリンク剤などの各種飲食物への甘味付に、呈味改良に、また、物性改良などに有利に利用できる。
【0033】
また、家畜、家禽、魚などの飼育動物のために、飼料、餌料などの嗜好性の向上、あるいは、肥育向上の目的で使用することもできる。その他、タバコ、練歯磨、口紅、リップクリーム、内服液、錠剤、トローチ、肝油ドロップ、口中清涼剤、口中香剤、うがい剤などの各種固形物にも使用できるし、ペースト状、液状などにして嗜好物、化粧品、医薬品など、各種組成物への甘味剤として、または呈味改良剤、矯味剤として、更には、品質改良剤として有利に利用できる。
【0034】
品質改良剤、安定剤としては、有効成分、活性などを失い易い各種生理活性物質、またはこれを含む健康食品、医薬品などに有利に適応できる。例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ツモア・ネクロシス・ファクター−α、ツモア・ネクロシス・ファクター−β、マクロファージ遊走阻止因子、コロニー刺激因子、トランスファーファクター、インターロイキン2などのリンホカイン含有液、インシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、エリトロポエチン、卵細胞刺激ホルモン、胎盤ホルモンなどのホルモン含有液、BCGワクチン、日本脳炎ワクチン、はしかワクチン、ポリオ生ワクチン、痘苗、破傷風トキソイド、ハブ抗毒素、ヒト免疫グロブリンなどの生物製剤含有液、ペニシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、硫酸カナマイシンなどの抗生物質含有液、チアミン、リボフラビン、L−アスコルビン酸、肝油、カロチノイド、エルゴステロール、トコフェロールなどのビタミン含有液、リパーゼ、エラスターゼ、ウロキナーゼ、プロテアーゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ、グルカナーゼ、ラクターゼなどの酵素含有液、薬用人参エキス、スッポンエキス、クロレラエキス、アロエエキス、プロポリスエキスなどのエキス類、ウイルス、乳酸菌、酵母などの生菌、ロイヤルゼリーなどの各種生理活性物質も、本発明のフラクトシル転移糖含有糖質を使用することによって、その有効成分、活性を失うことなく、品質改良および/または安定化でき、安定で高品質の健康食品や医薬品などを容易に製造できる。
【0035】
以上述べたように、本発明でいう組成物は、経口的または非経口的に利用する飲食物、医薬品のみならず、それ以外にも、例えば、化粧品、生活用品、農林水産用品、試薬、化学工業用品など広範な用途を有する。
【0036】
また、これら組成物に、本発明のフラクトシル転移糖含有糖質を含有せしめる方法は、その製品が完成するまでの工程で含有せしめればよく、例えば、混和、溶解、浸漬、浸透、散布、塗布、噴霧、注入、固化などの公知の方法が適宜選ばれる。その含有せしめる量は、組成物によっても異なるが、一般的には、フラクトシル転移糖として、0.1%以上、望ましくは0.5%以上の量が好適である。
【0037】
次に、実験により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0038】
〈実験1 酵素の生産〉
蔗糖1.0w/v%、ポリペプトン0.5w/v%、酵母エキス0.1w/v%、リン酸二カリウム0.1w/v%、リン酸一ナトリウム・2水塩0.06w/v%、硫酸マグネシウム・7水塩0.05w/v%、炭酸カルシウム0.3w/v%及び水からなる液体培地を、500ml容三角フラスコに100mlずつ入れ、オートクレーブで121℃、15分間滅菌し、冷却して、バチルス・スピーシーズ V230(FERM BP−5054)を接種し、30℃、200rpmで20時間回転振盪培養したものを、種培養とした。
【0039】
容量10lのファーメンターに種培養の場合と同組成の培地を約7l入れて、加熱滅菌、冷却して温度30℃とした後、種培養液1v/v%を接種し、温度30℃で、約20時間通気攪拌培養した。
【0040】
培養液約6.5lを遠心分離(15,000G,20分間)して、培養液上清約6.3lを得た。この培養液上清のβ−フラクトフラノシダーゼの活性は、3.6単位/mlであった。
【0041】
〈実験2 酵素の精製〉
実験1で得た培養液上清に、飽和度0.8になるように硫安を加えて溶解させ、4℃、一夜放置した後、遠心分離機にかけ、硫安塩析物を回収した。
【0042】
得られた硫安塩析物を、5mM塩化カルシウムを含む10mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解させた後、同じ緩衝液に対して一昼夜透析し、遠心分離(15,000G,20分間)して不溶物を除いた。その透析液上清(210ml)を、DEAE−トヨパールゲル 650ゲル(東ソー株式会社製)を用いたイオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル量380ml)にかけた。
【0043】
本発明のβ−フラクトフラノシダーゼは、上記DEAE−トヨパールゲルに吸着し、0.1M食塩で溶出される画分に回収される。回収画分を1M硫安を含む10mM酢酸緩衝液(pH6.0)に対して透析し、その透析液を遠心分離(15,000G,20分間)して不溶物を除き、次に、ブチルトヨパール 650ゲル(東ソー株式会社製)を用いた疎水カラムクロマトグラフィー(ゲル量100ml)を行った。吸着したβ−フラクトフラノシダーゼを硫安1Mから0Mへのリニアグラジエントにより、カラムより溶出させ、酵素活性画分を回収した。
【0044】
続いて、DEAE−トヨパールゲル 650ゲルを用いたイオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル量10ml)を行い、溶出した酵素活性画分を回収した。
【0045】
以上の精製手段により得られた精製酵素標品における酵素活性の回収率は、培養液上清のそれに対して約13%であった。また、精製酵素標品の比活性は、蛋白質mg当たり205単位であった。なお、蛋白質は、ローリー法に従って牛血清アルブミンを標準にして定量した。
【0046】
精製したβ−フラクトフラノシダーゼ標品を、7.5w/v%濃度ポリアクリルアミドを含むゲル電気泳動により酵素標品の純度を検定したところ、蛋白バンドは単一で、純度の高い標品であった。
【0047】
〈実験3 酵素の性質〉
実験2の方法で得た精製β−フラクトフラノシダーゼ標品を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(ゲル濃度10w/v%)に供し、同時に泳動した分子量マーカー(日本バイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社製)と比較して、本酵素の分子量を測定したところ、分子量は49,000±5,000ダルトンであった。また、TSKgel G3000SWカラム(φ7.8mm×300mm,東ソー株式会社製)を用いたゲル濾過法により、分子量を測定した結果、37,000±3,000ダルトンであった。
【0048】
上記と同じ精製β−フラクトフラノシダーゼ標品を、2w/v%アンフォライン(スウェーデン国、ファルマシア・エルケイビー社製)含有等電点ポリアクリルアミドゲル電気泳動法に供し、泳動後、蛋白染色およびゲルのpHを測定して、本酵素の等電点を求めたところ、4.6±0.5であった。
【0049】
本発明のβ−フラクトフラノシダーゼ活性に及ぼすpH、温度の影響を、5mM塩化カルシウム存在下又は非存在下で、活性測定の方法に準じて調べた。結果を、図1(pHの影響)及び図2(温度の影響)に示した。本酵素の至適pHは、温度40℃、10分間反応で、カルシウムイオン存在下、非存在下にかかわらずpH約5.5乃至6.0、また、本酵素の至適温度は、pH6.0、10分間反応で、カルシウムイオン存在下で50℃付近、カルシウムイオン非存在下で45℃付近であった。本酵素のpH安定性は、本酵素を各pHの50mM緩衝液中で4℃、24時間保持した後、pH6に調整し、残存する酵素活性を測定することにより求めた。また、熱安定性は、酵素溶液(20mM酢酸緩衝液、pH6.0)を、各温度に1時間保持し、水冷した後、残存する酵素活性を測定することにより求めた。結果は、図3(pH安定性)及び図4(熱安定性)に示した。本酵素はpH約5.0乃至8.0の範囲で、また45℃付近まで安定であった。なお、本酵素のpH安定性及び熱安定性は、カルシウムイオン存在下でも非存在下と全く変わらなかった。また、本酵素活性は、1mMのCu++、Pb++、Fe++、Fe+++およびHg++で阻害された。
【0050】
〈実験4 基質特異性〉
最終濃度2w/v%の蔗糖、ラフィノース、エルロース、スタキオース、ラクトスクロース、キシロシルフラクトシド、マルトース、セロビオース、乳糖、イヌリンあるいはレバンに、実験2の方法で得た精製β−フラクトフラノシダーゼを基質固形物1グラム当たり2単位ずつ加え、40℃、pH5.5で24時間作用させた。酵素反応前後の反応液をキーゼルゲル60(メルク社製;アルミプレート,20×20cm)を用いた薄層クロマトグラフィー(以下、「TLC」と略称する。)を行い、それぞれの糖質に対する酵素作用の有無を確認した。TLCは、展開溶媒に1−ブタノール:ピリジン:水=7:3:1(容積比)を用い、室温で1回展開した。発色は、フラクトースを構成糖として含む基質の場合は、0.2w/v%ナフトレゾルシノール−0.5Nリン酸溶液を噴霧し、110℃で約5分間加熱して行い、それ以外の基質の場合は、20w/v%硫酸−メタノール溶液を噴霧し、110℃で約10分間加熱して行った。
【0051】
その結果、本発明のβ−フラクトフラノシダーゼは、蔗糖、ラフィノース、エルロース、スタキオース、ラクトスクロース、キシロシルフラクトシドに作用して、フラクトースを特異的に遊離し、マルトース、セロビオース、乳糖、イヌリン、レバンには、作用しないことが判明した。
【0052】
〈実験5 受容体特異性〉
受容体として表1に示す各種単糖類、オリゴ糖類及びアルコール類と、供与体として蔗糖とを、重量比で等量混合した最終濃度10%の糖液に、実験2の方法で得た精製β−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖1グラム当たり2単位ずつ加え、40℃、pH5.5で24時間作用させた。酵素反応前後の反応液を、実験4と同様にTLCを行い、0.2w/v%ナフトレゾルシノール−0.5Nリン酸溶液を噴霧し、110℃で約5分間加熱して発色させ、転移糖を生成しているかどうかを判定した。結果を、表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示されるように、本発明のβ−フラクトフラノシダーゼは、蔗糖を糖供与体として、D−キシロース、D−ガラクトース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、マルトトリオース、パノース、乳糖、メリビオースなどの還元性糖質、トレハロースなどの非還元性糖質にフラクトシル基を良く転移することが判明した。また、D−キシリトール、D−ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール類及びグリセロール、エチレングリコールなどのアルコール類にも良く転移し、フラクトシル転移糖を生成することが判った。
【0055】
〈実験6 蔗糖と還元性糖質とからのフラクトシル転移糖〉
本発明のβ−フラクトフラノシダーゼによる糖転移反応で生成するフラクトシル転移糖を同定するために、確認試験を行った。実験5で得た蔗糖と乳糖とを基質とした酵素反応液の一部を、糖濃度2%になるよう20mM酢酸緩衝液(pH4.5)で希釈し、この0.5mlにインベルターゼ(生化学工業株式会社製)0.1単位、又はβ−ガラクトシダーゼ(生化学工業株式会社製)0.1単位を加え、40℃で20時間反応させた。本発明のβ−フラクトフラノシダーゼによる反応液、そのインベルターゼ処理液及びβ−ガラクトシダーゼ処理液の糖成分をガスクロマトグラフィー(以下、「GLC」と略称する。)で分析した。酵素反応液の一部を乾固し、ピリジンに溶解した後、トリメチルシリル化したものをGLCの分析試料とした。GLCカラムは、2%シリコンOV−17/クロモゾルブW(ジー・エル・サイエンス株式会社製)を充填したステンレスカラム(3mmφ×2m)、キャリアーガスは、窒素ガスを流量40ml/分で、カラムオーブン温度は、160℃から320℃まで7.5℃/分の昇温速度で分析した。検出は、水素炎イオン化検出器を用いた。
【0056】
その結果、本発明のβ−フラクトフラノシダーゼによる蔗糖と乳糖とからのフラクトシル転移糖のピークの保持時間は、既知糖質ラクトスクロース(ラクトシルフラクトシド)のそれと一致し、インベルターゼ処理、あるいはβ−ガラクトシダーゼ処理により、そのピークは消失し、それぞれフラクトースと乳糖、ガラクトースと蔗糖に分解されることが判った。インベルターゼ及びβ−ガラクトシダーゼの反応特性を考慮すると、本発明のβ−フラクトフラノシダーゼによる蔗糖と乳糖とからのフラクトシル転移生成物は、ラクトスクロースであると判断される。
【0057】
キシロース、マルトース、イソマルトースを受容体として生成したフラクトシル転移糖の場合も、インベルターゼ処理前後の反応液のGLC分析の結果、及び既知糖質のGLC分析との比較結果から、それぞれキシロシルフラクトシド、エルロース(マルトシルフラクトシド)、イソマルトシルフラクトシドであることが判った。本発明のβ−フラクトフラノシダーゼによる糖転移反応において、これら還元性糖質を受容体とした場合のフラクトシル転移糖は、受容体としての還元性糖質残基における1位炭素原子にβ−フラクトフラノシド結合しているものと判断される。
【0058】
〈実験7 フラクトシルトレハロース〉
一方、トレハロースへのフラクトシル転移糖の構造を調べるため、フラクトシルトレハロースを単離し、構造を調べた。蔗糖及びトレハロースをそれぞれ20%含む糖液をpH6.0に調整し、これに実験2の方法で得た精製β−フラクトフラノシダーゼを蔗糖1グラム当たり4単位加え、55℃で20時間反応させ、次いで100℃で10分間加熱して酵素を失活させた。本溶液には、フラクトシルトレハロースを約23%含有していた。本溶液を活性炭で脱色、濾過し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、濃度約50%まで濃縮して、カラムクロマトグラフィーを行ない、フラクトシルトレハロース高含有画分を採取した。
【0059】
分画用樹脂は、アルカリ金属型強酸性カチオン交換樹脂(東京有機化学工業株式会社製、商品名『XT−1016』、Na型、架橋度4%)を使用し、内径3cm、長さ1mのジャケット付きステンレス製カラム2本に水懸濁状で充填し、直列につなぎ、樹脂層全長を約2mになるようにした。カラム内温度を40℃に維持しつつ、糖液を樹脂に対して5v/v%加え、これに40℃の温水をSV0.15の流速で流して分画し、フラクトシルトレハロース高含有画分を採取した。
【0060】
フラクトシルトレハロース高含有画分を脱塩、精製し、濃度約40%に濃縮してオクタデシルシリカゲルを充填したカラム(株式会社ワイエムシー、商品名『YMC−Pack ODS』)を用いたクロマトグラフィーを行ない、フラクトシルトレハロース高含有画分を採取した。この方法を繰り返して採取されたフラクトシルトレハロース高含有液を脱塩、精製、濃縮、真空乾燥して、フラクトシルトレハロース高含有粉末を固形物収率約10%で得た。本粉末標品は、フラクトシルトレハロースを固形物当たり約98%含有していた。
【0061】
フラクトシルトレハロース高含有粉末標品を用いて、酵素法及び部分メチルヘキシトールアセテートのGLC分析により構造を確認した。その結果、本発明のβ−フラクトフラノシダーゼの作用により生成するフラクトシルトレハロースは、インベルターゼ処理により1対1のモル比でフラクトースとトレハロースとに分解されること、及び、本糖質をメチル化した後、酸により加水分解し、続いて還元、アセチル化して得られた部分メチルヘキシトールアセテートをGLCで分析すると、1,5,6−トリ−O−アセチル−2,3,4−トリ−O−メチルグルシトールと1,5−ジ−O−アセチル−2,3,4,6−テトラ−O−メチルグルシトールが等モル比で検出されることから、トレハロースにフラクトシル基がβ−2,6結合した3糖であることが判明した。
【0062】
〈実験8 急性毒性〉
7週齢のdd系マウスを使用して、後述する実施例A−4の方法で調製したラクトスクロース高含有粉末を、経口投与して急性毒性テストをしたところ、体重1kg当たり15gまで死亡例は見られず、これ以上の投与は困難であった。従って、本糖質の毒性は極めて低い。また、同様に、7週齢のdd系マウスを使用して、それぞれ後述する実施例A−6の方法で得たエルロース高含有粉末、実施例A−8の方法で得たキシロシルフラクトシド高含有シラップ、実施例A−11の方法で得たフラクトシルトレハロース高含有粉末及び実施例A−12の方法で得たイソマルトシルフラクトシド含有シラップを用いて、経口投与により急性毒性テストをしたところ、いずれも、体重1kg当たり15gまで死亡例は見られず、これ以上の投与は困難であった。従って、これら糖質の毒性は極めて低い。
【0063】
以下、本発明のβ−フラクトフラノシダーゼと、それを利用したフラクトシル転移糖含有糖質の製造方法を実施例Aで、このフラクトシル転移糖含有糖質を含有せしめた組成物を実施例Bで示す。
【0064】
〈実施例A−1〉
バチルス・スピーシーズ V230(FERM BP−5054)を、培地組成中の蔗糖濃度を2w/v%とし、容量30lのファーメンターを用いて、培地液量を約20lとした以外は、実験1と同じ方法で約24時間、通気攪拌培養した。この培養上清のβ−フラクトフラノシダーゼ活性は、培養液1ml当たり7.3単位であった。培養液をMF膜濾過し、その透過液をUF膜濃縮して、ml当たりβ−フラクトフラノシダーゼ活性約130単位を有する酵素液を、もとの培養液の総活性に対して約80%の収率で得た。
【0065】
〈実施例A−2〉
蔗糖及び乳糖をそれぞれ20%含む水溶液をpH5.5に調整し、これに実施例A−1の方法で調製したβ−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖1グラム当たり1単位の割合になるように加え、55℃で16時間反応させた。その反応液を90℃で30分間加熱し、酵素を失活させた後、冷却し、常法に従って活性炭で脱色、濾過し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して、濃度約75%のシラップを固形物収率約95%で得た。
【0066】
本品は、固形物当たりラクトスクロースを約37%含有しており、味質良好な甘味、適度の粘度、保湿性を有し、甘味剤、呈味改良剤、安定剤、賦形剤、ビフィズス菌増殖促進剤、ミネラル吸収促進剤などとして飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0067】
〈実施例A−3〉
蔗糖を22%及び乳糖を18%含む水溶液をpH6.0に調整し、これに実施例A−1で調製したβ−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖1グラム当たり1単位、及びインベルターゼ欠損酵母を固形物重量当たり湿重量で5%になるように加えて、1規定の水酸化ナトリウム溶液を用いて該反応液をpH6乃至7に制御しながら、35℃で20時間反応させた。その反応液を90℃で30分間加熱し、酵素を失活させた後、冷却し、常法に従って活性炭で脱色、濾過し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度約75%のシラップを固形物収率約70%で得た。
【0068】
本品は、固形物当たりラクトスクロースを約65%含有しており、味質良好な甘味、適度の粘度、保湿性を有し、甘味剤、呈味改良剤、安定剤、ビフィズス菌増殖促進剤、ミネラル吸収促進剤などとして飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0069】
〈実施例A−4〉
実施例A−2の方法で反応、精製した固形物当たり約37%のラクトスクロース含有溶液を原料糖液とし、これを濃縮して濃度約45%にした。本糖液のラクトスクロース含量を高めるため、アルカリ金属型強酸性カチオン交換樹脂(東京有機化学工業株式会社製、商品名『XT−1016』、Na型、架橋度4%)を用いたカラムクロマトグラフィーを行った。樹脂を内径5.4cmのジャケット付きステンレス製カラム4本に充填し、直列につなぎ、樹脂層全長20mとした。カラム内温度を40℃に維持しつつ、糖液を樹脂に対して5v/v%加え、これに40℃の温水をSV0.2の流速で流して分画し、ラクトスクロース高含有画分を採取した。更に、精製、濃縮し、真空乾燥し、粉砕して、ラクトスクロース高含有粉末を固形物収率約30%で得た。
【0070】
本品は、固形物当たり約90%のラクトスクロースを含有しており、低い還元性、味質良好な甘味、保湿性、低う蝕性を有し、甘味剤、呈味改良剤、安定剤、賦形剤、ビフィズス菌増殖促進剤、ミネラル吸収促進剤などとして飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0071】
〈実施例A−5〉
蔗糖及びマルトースをそれぞれ20%含む糖液をpH5.5に調整し、これに実施例A−1の方法で調製したβ−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖1グラム当たり1単位の割合になるように加え、50℃で24時間反応させた。その反応液を90℃で30分間加熱し、酵素を失活させた後、冷却し、常法に従って活性炭で脱色、濾過し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度約75%のシラップを固形物収率約95%で得た。
【0072】
本品は、固形物当たりエルロースを約28%含有しており、味質良好な甘味、適度な粘度、保湿性を有し、飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0073】
〈実施例A−6〉
実施例A−5の方法で反応、精製した固形物当たり約28%のエルロース含有溶液を原料糖液とし、これを濃縮して濃度約45%にした。本糖液のエルロース含量を高めるため、分画用樹脂として、アルカリ金属型強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社販売、商品名『ダウエックス50W×4』、Ca型)を用いた以外は、実施例A−4の方法に従ってカラムクロマトグラフィーを行ない、エルロース高含有画分を採集した。更に、精製、濃縮し、真空乾燥し、粉砕して、エルロース高含有粉末を固形物収率約25%で得た。
【0074】
本品は、固形物当たり約84%のエルロースを含有しており、低い還元性、味質良好な甘味、保湿性、低う蝕性を有し、飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0075】
〈実施例A−7〉
蔗糖を30%及びキシロースを15%含む糖液をpH5.5に調整し、これに実施例A−1の方法で調製したβ−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖1グラム当たり0.5単位の割合になるように加え、50℃で40時間反応させた。その反応液を90℃で30分間加熱し、酵素を失活させた後、冷却し、常法に従って活性炭で脱色、濾過し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度約75%のシラップを固形物収率約95%で得た。
【0076】
本品は、固形物当たりキシロシルフラクトシドを約35%含有しており、味質良好な甘味、適度な粘度、保湿性、低う蝕性を有し、甘味剤、呈味改良剤、安定剤、ビフィズス菌増殖促進剤、ミネラル吸収促進剤などとして飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0077】
〈実施例A−8〉
蔗糖を30%及びキシロースを15%含む糖液をpH6.0に調整し、これに実施例A−1で調製したβ−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖1グラム当たり0.5単位の割合になるように加え、50℃で40時間反応させた。その反応液に水酸化ナトリウムを加えてpH10以上のアルカリ性に保ちながら100℃で加熱した後、冷却し、常法に従って活性炭で脱色、濾過し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度約75%のシラップを固形物収率約55%で得た。
【0078】
本品は、固形物当たりキシロシルフラクトシドを約60%含有しており、味質良好な甘味、適度な粘度、保湿性を有し、甘味剤、呈味改良剤、安定剤、ビフィズス菌増殖促進剤、ミネラル吸収促進剤などとして飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0079】
〈実施例A−9〉
蔗糖及びトレハロースをそれぞれ20%含む糖液をpH5.5に調整し、これに実施例A−1の方法で調製したβ−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖1グラム当たり4単位の割合になるように加え、55℃で16時間反応させた。その反応液を90℃で30分間加熱し、酵素を失活させた後、冷却し、常法に従って活性炭で脱色、濾過し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度約75%のシラップを固形物収率約95%で得た。
【0080】
本品は、固形物当たりフラクトシルトレハロースを約24%含有しており、味質良好な甘味、適度な粘度、保湿性、低う蝕性を有し、甘味剤、呈味改良剤、安定剤、ビフィズス菌増殖促進剤、ミネラル吸収促進剤などとして飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0081】
〈実施例A−10〉
蔗糖及びトレハロースをそれぞれ20%含む糖液をpH5.5に調整し、これに実施例A−1で調製したβ−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖1グラム当たり4単位、及びインベルターゼ欠損酵母を固形物重量当たり湿重量で5%になるように加えて、1規定の水酸化ナトリウム溶液を用いて該反応液をpH6乃至7に制御しながら、35℃で20時間反応させた。その反応液を90℃で30分間加熱し、酵素を失活させた後、冷却し、常法に従って活性炭で脱色、濾過し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して濃度約75%のシラップを固形物収率約70%で得た。
【0082】
本品は、固形物当たりフラクトシルトレハロースを約34%含有しており、味質良好な甘味、適度な粘度、保湿性を有し、甘味剤、呈味改良剤、安定剤、ビフィズス菌増殖促進剤、ミネラル吸収促進剤などとして飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0083】
〈実施例A−11〉
実施例A−9の方法で反応、精製した固形物当たり約24%のフラクトシルトレハロース含有溶液を原料糖液とし、これを濃縮して濃度約45%にした。本糖液のフラクトシルトレハロース含量を高めるため、分画用樹脂として、塩型強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社販売、商品名『ダウエックス50W×4』、Ca型)を用いた以外は、実施例A−4の方法に従ってカラムクロマトグラフィーを行ない、フラクトシルトレハロース高含有画分を採集した。更に、精製、濃縮し、真空乾燥し、粉砕して、フラクトシルトレハロース高含有粉末を固形物収率約20%で得た。
【0084】
本品は、固形物当たり約80%のフラクトシルトレハロースを含有しており、低い還元性、味質良好な甘味、保湿性、低う蝕性を有し、甘味剤、呈味改良剤、安定剤、賦形剤、ビフィズス菌増殖促進剤、ミネラル吸収促進剤などとして飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0085】
〈実施例A−12〉
蔗糖を30%及びイソマルトース15%を含む糖液をpH5.5に調整し、これに実施例A−1の方法で調製したβ−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖1グラム当たり0.5単位の割合になるように加え、50℃で40時間反応させた。この反応液を90℃で30分間加熱し、酵素を失活させた後、冷却し、常法に従って、活性炭で脱色、濾過し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して、濃度75%のシラップを固形物収率約95%で得た。
【0086】
本品は、固形物当たりイソマルトシルフラクトシドを約25%含有しており、味質良好な甘味、適度な糖度、保湿性、低う蝕性を有し、甘味剤、呈味改良剤、安定剤、ビフィズス菌増殖促進剤、ミネラル吸収促進剤などとして飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物に有利に利用できる。
【0087】
〈実施例B−1 混合甘味剤〉
実施例A−4の方法で得たラクトスクロース高含有粉末1重量部にα−グリコシル ステビオシド(東洋精糖株式会社製造、商品名α−Gスィート)0.05重量部を均一に混合して粉末甘味料を製造した。本品は、上品な甘味を有し、砂糖の約2倍の甘味を有する。また、本品は、ビフィズス菌増殖促進効果を発揮し、美容、健康の維持増進、成人病の予防、病中、病後の回復促進、高アンモニア血症、肝性脳症などの治療、予防などに有利に利用できる。また、家畜、家禽などの飼育動物の感染予防、下痢予防、食欲増進、肥育促進、糞便の臭気抑制などにも有利に利用できる。
【0088】
〈実施例B−2 ハードキャンディー〉
還元麦芽糖水飴(水分25%)80重量部に、実施例A−12の方法で得たイソマルトシルフラクトシド含有シラップ30重量部を加熱溶解し、減圧下で水分が2%未満になるまで濃縮し、これにクエン酸1重量部および適量のレモン香料と着色料とを混和し、次いで、常法に従って成形しハードキャンディーを製造した。
【0089】
本品は、上品な甘味を有する低う蝕性のハードキャンディーである。また、本品は、ビフィズス菌増殖促進効果、ミネラル吸収促進効果を発揮し、美容、健康の維持増進、成人病の予防、病中、病後の回復促進、各種疾病の治療、予防などにも有利に利用できる。
【0090】
〈実施例B−3 チューインガム〉
ガムベース2重量部を柔らかくなる程度に加熱溶融し、これに実施例A−4の方法で得たラクトスクロース高含有粉末4重量部、グルコース3重量部および適量のハッカ香料と着色料とを混合した後、常法に従ってロールにより練り合わせ、成形することによってチューインガムを製造した。
【0091】
本品は、テクスチャー、甘味ともに良好である。また、本品は、ビフィズス菌増殖促進効果を発揮し、美容、健康の維持増進、成人病の予防、病中、病後の回復促進、各種疾病の治療、予防などにも有利に利用できる。
【0092】
〈実施例B−4 チョコレート〉
カカオペースト40重量部、カカオバター10重量部、実施例A−6の方法で得たエルロース高含有粉末15重量部、蔗糖10重量部および全脂粉乳15重量部を混合し、レファイナーを通した。そして粒度を下げた後、コンチェに入れ、レシチン0.5重量部を加えて、50℃で二昼夜練り上げた。次いで、常法に従い成型機に流し込み成型固化して製造した。
【0093】
本品は、ファットブルーム、シュガーブルームの恐れがなく、舌にのせた時の融け具合、風味ともに良好である。
【0094】
〈実施例B−5 乳飲料〉
コーヒー浸出液70重量部、牛乳100重量部、実施例A−3の方法で得たラクトスクロース高含有シラップ24重量部および適量のコーヒー香料、着色料を混合し、均質化した後、常法に従って、殺菌、冷却、充填、包装して乳飲料を製造した。
【0095】
本品は、香り、呈味とも良好なコーヒー牛乳である。また、本品は、ビフィズス菌増殖促進効果、ミネラル吸収促進効果を発揮し、美容、健康の維持増進、成人病の予防、病中、病後の回復促進などに有利に利用できる。
【0096】
〈実施例B−6 カスタードクリーム〉
コーンスターチ500重量部、マルトース(株式会社林原商事販売、登録商標サンマルト)400重量部および食塩5重量部を、篩を通して充分に混合し、鶏卵1400重量部および実施例A−10の方法で得たフラクトシルトレハロース高含有シラップ600重量部を加えて攪拌し、これに沸騰した牛乳5000重量部を徐々に加え、更に、これをとろ火にかけて攪拌を続け、コーンスターチが完全に糊化して全体が半透明になったときに火を止め、これを冷却して適量のバニラ香料を加えることによりカスタードクリームを製造した。
【0097】
本品は、なめらかな光沢を有し、甘味が強すぎず美味である。また、本品は、ビフィズス菌増殖促進効果を発揮し、美容、健康の維持増進、成人病の予防、病中、病後の回復促進などに有利に利用できる。
【0098】
〈実施例B−7 即席コーンポタージュスープ〉
α−化コーン粉末30重量部、α−化澱粉5重量部、α−化ポテトスターチ4重量部、α−化ワキシーコーンスターチ12重量部、実施例A−11の方法で得たフラクトシルトレハロース高含有粉末8重量部、グルタミン酸ナトリウム5重量部、食塩8.5重量部、脱脂粉乳7重量部、オニオンパウダー0.5重量部を摩砕してよく混合した後、これにソルビタン脂肪酸エステル0.5重量部と植物性硬化油9重量部とを加熱融解したものを添加して混合し、更に、乳糖10重量部を加えて混合し、これを流動層造粒機に仕込み、少量の水をスプレーして造粒した後、70℃の熱風で乾燥し、篩分けして即席コーンポタージュスープを製造した。
【0099】
本品は、熱湯を注げば、容易に溶解、分散し、風味の優れたスープとなる。また、本品は、ビフィズス菌増殖促進効果、ミネラル吸収促進効果を発揮し、美容、健康の維持増進、成人病の予防、病中、病後の回復促進などに有利に利用できる。
【0100】
〈実施例B−8 乳液〉
ポリオキシエチレンベヘニルエーテル0.5重量部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール1重量部、親油型モノステアリン酸グルセリン1重量部、ベヘニールアルコール0.5重量部、アボガド油1重量部、実施例A−5の方法で得たエルロース含有シラップ3.5重量部、α−グリコシル ルチン1重量部、ビタミンEおよび防腐剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、これに1,3−ブチレングリコール5重量部、カルボキシビニルポリマー0.1重量部および精製水85.3重量部を加え、ホモゲナイザーにかけ、乳化し、乳液を製造した。
【0101】
本品は、保湿性ある乳液で、日焼け止め、色白剤などとして有利に利用できる。
【0102】
〈実施例B−9 スキンクリーム〉
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2重量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5重量部、α−グリコシル ルチン2重量部、流動パラフィン1重量部、トリオクタン酸グリセリン10重量部、実施例A−9の方法で得たフラクトシルトレハロース含有シラップ4重量部および防腐剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、これに1,3−ブチレングリコール5重量部および精製水66重量部を加え、ホモゲナイザーにかけて乳化し、更に、香料の適量を加えて攪拌混合し、クリームを製造した。
【0103】
本品は、伸びの良いクリームで、日焼け止め、美肌剤、色白剤などとして有利に使用できる。
【0104】
〈実施例B−10 練歯磨〉
第二リン酸カルシウム45重量部、ラウリル硫酸ナトリウム1.5重量部、グリセリン25重量部、ポオキシエチレンソルビタンラウレート0.5重量部、実施例A−8の方法で得たキシロシルフラクトシド高含有シラップ15重量部、サッカリン0.02重量部および防腐剤0.05重量部を水13重量部と混合して練歯磨を得た。
【0105】
本品は、光沢、洗浄力も良好で、練歯磨として好適である。
【0106】
〈実施例B−11 経管栄養剤〉
実施例A−6の方法で得たエルロース高含有粉末20重量部、グリシン1.1重量部、グルタミン酸ナトリウム1重量部、乳酸カルシウム0.4重量部、炭酸マグネシウム0.1重量部、チアミン0.01重量部およびリボフラビン0.01重量部からなる配合物を調製する。この配合物24gずつをラミネートアルミ製小包に充填し、ヒートシールして製品を得た。
【0107】
本品は、1袋分を約300乃至500mlの水に溶解して栄養補給液とし、経管方法により、鼻腔、胃腸などへ投与して使用する。
【0108】
本品は、ヒトのみならず、家畜などへの非経口的栄養補給液としても有利に利用できる。
【0109】
〈実施例B−12 経管栄養剤〉
実施例A−4の方法で得たラクトスクロース高含有粉末580重量部、乾燥卵黄190重量部、脱脂粉乳209重量部、塩化ナトリウム4.4重量部、塩化カリウム1.85重量部、硫酸マグネシウム4重量部、チアミン0.01重量部、アスコルビン酸ナトリウム0.1重量部、ビタミンEアセテート0.6重量部およびニコチン酸アミド0.04重量部からなる配合物を調製する。この配合物25gずつを、ラミネートアルミ製小袋に充填し、ヒートシールして、個体状経管栄養剤を製造した。
【0110】
本品は、長期間品質が安定して維持され、溶解性、分散性が良好である。本剤は、1袋分を約150乃至300mlの水に溶解して栄養補給液とし、経管方法により、鼻腔、食道、胃などへ投与して利用する。また、本品は、ビフィズス菌増殖促進効果、ミネラル吸収促進効果を発揮し、美容、健康の維持増進、成人病の予防、病中、病後の回復促進、各種疾病の治療、予防、更には、家畜、家禽などの病中、病後の回復促進、肥育促進などに有利に利用できる。
【0111】
〈実施例B−13 錠剤〉
実施例A−11の方法で得たフラクトシルトレハロース高含有粉末40重量部、マルトース10重量部、第三リン酸カルシウム1重量部、シュガーエステル1重量部および適量の粉末香料を均一に混合した後、常法に従って、1錠約350mgになるように打錠機にて打錠し、錠剤を得た。
【0112】
本品は、ひび割れもなく安定性良好な飲みやすい錠剤で、成人1日当たり、約1乃至40錠、望ましくは、約2乃至20錠摂取することにより、ビフィズス菌増殖促進効果、ミネラル吸収促進効果を発揮し、美容、健康の維持増進、成人病の予防、病中、病後の回復促進、各種疾病の治療、予防などに有利に利用できる。
【0113】
〈実施例B−14 インターフェロン錠剤〉
ヒト天然型インターフェロン−α標品(株式会社林原生物化学研究所製造、コスモ・バイオ株式会社販売)を、常法に従って、固定化抗ヒトインターフェロン−α抗体カラムにかけ、該標品に含まれるヒト天然型インターフェロン−αを吸着させ、安定剤である牛血清アルブミンを素通りさせて除去し、次いで、pHを変化させて、ヒト天然型インターフェロン−αを実施例A−4の方法で得たラクトスクロース高含有粉末を5%含有する生理食塩水を用いて溶出した。本液を精密濾過し、約20倍量の無水結晶マルトース粉末(株式会社林原商事販売、商品名『ファイントース(登録商標)』)に加えて脱水、粉末化し、これを打錠機にて打錠し、1錠(約200mg)当たりヒト天然型インターフェロン−αを約150単位含有する錠剤を得た。
【0114】
本品は、舌下錠などとして、1日当たり、大人1乃至10錠程度が経口的に投与され、ウイルス性疾患、アレルギー性疾患、リューマチ、糖尿病、悪性腫瘍などの治療に有利に利用できる。とりわけ、近年、患者数の急増しているエイズ、肝炎などの治療剤として有利に利用できる。本品は、ラクトスクロースと共にマルトースが安定剤として作用し、室温で放置してもその活性を長期間よく維持する。
【0115】
〈実施例B−15 配合飼料〉
粉麩40重量部、脱脂粉乳38重量部、実施例A−11の方法で得たフラクトシルトレハロース高含有粉末12重量部、ビタミン剤10重量部、魚粉5重量部、第二リン酸カルシウム5重量部、液状油脂3重量部、炭酸カルシウム3重量部、食塩2重量部およびミネラル剤2重量部を配合して、配合飼料を製造した。
【0116】
本品は、嗜好性の向上した家畜、家禽などの飼料であって、とりわけ、子豚用飼料として好適である。また、本品はビフィズス菌増殖効果、ミネラル吸収促進効果を発揮し、飼育動物の感染予防、下痢予防、食欲増進、肥育促進、糞便の臭気抑制などに有利に利用できる。更に、本品は、必要に応じて、他の飼料材料、例えば、穀類、小麦粉、澱粉、油粕類、糟糠類などの濃厚飼料材料や、ワラ、乾草、バガス、コーンコブなどの粗飼料材料などと併用して、他の配合飼料にすることもできる。
【0117】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は、工業的実施に有利なフラクトシル転移能の高い微生物由来の新規β−フラクトフラノシダーゼとその製造方法並びに用途に関する。本発明のβ−フラクトフラノシダーゼを、蔗糖を供与体とし、還元性又は非還元性の糖質を受容体として作用させると、受容体にフラクトシル基を転移して非還元性糖質を生成する。新たに生成したフラクトシル転移糖は、味質良好な甘味を有し、また浸透圧調節性、保湿性、照付与性、結晶防止性、澱粉老化防止性などの性質を有し、更には、抗う蝕性、ビフィズス菌増殖促進性、ミネラル吸収促進性などの機能をも有し、広く、飲食物、化粧品、医薬品、成形物など各種組成物に有利に利用される。従って、食品、化粧品、医薬品などの分野における工業的意義はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のβ−フラクトフラノシダーゼ活性に及ぼすpHの影響を示す図である。
【図2】 本発明のβ−フラクトフラノシダーゼ活性に及ぼす温度の影響を示す図である。
【図3】 本発明のβ−フラクトフラノシダーゼのpH安定性を示す図である。
【図4】 本発明のβ−フラクトフラノシダーゼの熱安定性を示す図である。
Claims (6)
- バチルス・スピーシーズV230(工業技術院生命工学工業技術研究所、受託番号 FERM BP−5054)から得ることができ、下記の理化学的性質を有するβ−フラクトフラノシダーゼ。
(1) 作用
少なくとも蔗糖、ラフィノース及びエルロースのβ−フラクトフラノシド結合を加水分解して、フラクトースを遊離する。また、これらβ−フラクトフラノシド結合を有する糖質を糖供与体として、糖供与体以外の他の糖質、糖アルコール及びアルコール類から選ばれる受容体にβ−フラクトフラノシル基の転移を触媒する。
(2) 分子量
SDS−ゲル電気泳動法で、49,000±5,000ダルトン
(3) 等電点
アンフォライン含有電気泳動法で、4.6±0.5
(4) 至適pH
40℃、10分間反応で、5.5乃至6.0
(5) 至適温度
pH6.0、10分間反応で、カルシウムイオン非存在下で45℃、カルシウムイオン存在下で50℃
(6) pH安定性
温度4℃、24時間保持の条件で、pH5.0乃至8.0の範囲で安定
(7) 温度安定性
pH6.0、1時間保持の条件で、45℃まで安定。 - β−フラクトフラノシダーゼ産生能を有するバチルス・スピーシーズV230(工業技術院生命工学工業技術研究所、受託番号 FERM BP−5054)を培養し、培養物から請求項1記載のβ−フラクトフラノシダーゼを採取することを特徴とするβ−フラクトフラノシダーゼの製造方法。
- β−フラクトフラノシダーゼ産生能を有する微生物バチルス・スピーシーズV230(工業技術院生命工学工業技術研究所、受託番号 FERM BP−5054)。
- 蔗糖とそれ以外の糖質とを含有する溶液に、請求項1記載のβ−β−フラクトフラノシダーゼを作用させるフラクトフラノシル転移糖含有糖質の製造方法。
- それ以外の糖質が、乳糖、マルトース、キシロース、トレハロース、イソマルトース、ガラクトース、セロビオース、パノース、メリビオースから選ばれる1種もしくは2種以上である請求項4記載のフラクトフラノシル転移糖含有糖質の製造方法。
- 酵母発酵法、アルカリ処理法及びカラムクロマトグラフィーから選ばれる方法によりフラクトフラノシル転移糖の含量を高める工程を含む請求項4又は5記載のフラクトフラノシル転移糖含有糖質の製造方法。
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