JP3760783B2 - 導電性架橋体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性架橋体に関し、より詳細には、特定の繰り返し構造単位を含み、イオン導電性および環境安定性が改善された導電性架橋体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアルキレンオキサイド、特にポリエチレンオキサイドおよびポリプロピレンオキサイドは、その高いイオン導電性のために、単独で、またはさらに導電性を向上させるべくアルカリ金属塩といった、いわゆるドーパントと混合されて、帯電防止剤、高分子電解質といった用途に使用されている。
【0003】
上述したようなポリアルキレンオキサイドのイオン導電性は、ポリアルキレンオキサイドの構造が実質的に無定型である場合には、下記Williams-Ladel-Ferry(WLF)式
【0004】
【数1】
または、Vogel-Tamman-Flucher式
【0005】
【数2】
により示されることが知られている。
【0006】
上式中、σ(T)は、温度Tにおけるイオン導電率(Scm−1)であり、C1、C2、A、Bは定数、T0は、重合体のガラス転移温度(Tg)である。上述したWLF式などにより予測されるように、イオン導電率は、一般には温度の逆数に対して指数関数的に減少、すなわち温度が高くなると指数関数的に増加する傾向にあることが示される。
【0007】
このため、ポリオキシアルキレン重合体を特にリチウムイオン電池や、電解コンデンサの電解質といった電気/電子材料として使用する場合には、電気特性の環境に対する安定性が重要な特性とされる。特に、電気/電子材料に対して安定な特性を与えるためには、高温高湿環境から、低温低湿環境にまでイオン導電率が安定していることが要求される。このような環境安定性を高めるためには、ポリアルキレンオキサイドを架橋構造体とすることにより、例えばWLF式における各定数を、温度依存性が小さくなるように設計することも有効な方法であり、これまで種々の検討が行われてきている。
【0008】
架橋構造を形成させることでポリアルキレンオキサイドセグメントを架橋体中に固定すれば、温度に対するイオン導電率は安定化できる。しかしながら、ポリアルキレンオキサイドのイオン導電性は、水を媒介として種々のイオンにより与えられるので、低湿環境から高湿環境までの湿度安定性を改善するためには、単にポリアルキレンオキサイドに対して架橋構造を付与して固定することに加え、ある程度フレキシブルな構造部分を残すことでポリアルキレンオキサイドをバランスよく架橋構造内に取り込むことが望ましい。
【0009】
このために良好な特性の、例えば高分子電解質を提供するためには、ポリアルキレンオキサイドのイオン導電性に悪影響を与えることなく、架橋構造内にポリアルキレンオキサイドを固定するとともに、フレキシブルなポリアルキレンオキサイドセグメントを形成することが望ましい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、イオン導電性を維持させつつ、低温低湿から高温高湿にわたる広い環境において、安定したイオン導電性を与えることが可能な導電性架橋体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を加えた結果、ポリアルキレンオキサイドセグメントといったイオン導電性重合体を、架橋構造とする際に、フレキシブルなポリアルキレンオキサイドセグメントを残留させることにより、イオン導電性に悪影響を与えることなく、低温低湿から、高温高湿に至るまで安定したイオン導電性を提供することができることを見出し、本発明に至ったものである。すなわち、本発明者らは、イオン導電性を本質的に付与するポリアルキレンオキサイドセグメントを固定した構造と、フレキシブルな構造とを同時に付与した導電性架橋体を提供することにより、高いイオン導電性を付与しつつ、上述した環境安定性を付与することができることを見出したものである。
【0012】
本発明によれば、下記式(1)
【0013】
【化3】
で示されるアルコール化合物と、下記式(2)
【0014】
【化4】
で示されるポリカーボネートジオールとを、エステル交換させることにより生成される構造単位を含む化合物と、複数の重合可能な官能基を含む重合性化合物または重合性組成物とから製造される導電性架橋体であって、上記式(1)および(2)中、R 1 は、メチル基またはエチル基であり、R 2 は、エチレン基、プロピレン基であり、R 3 は、直鎖または分岐鎖または環状のアルキル基であり、mおよびnは、正の整数を表す、導電性架橋体が提供される。
【0015】
本発明においては、前記構造単位を、アクリロイル基またはメタクリロイル基に結合させることができる。
【0016】
本発明においては、前記構造単位を、カルバメート基に結合させることができる。
【0017】
本発明においては、前記重合性化合物は、アクリレートまたはメタクリレートとされる。
【0018】
本発明においては、前記重合性組成物は、ポリオールとポリイソシアネートとを含んでいてもよい。
【0019】
本発明においては、前記R1は、メチル基であり、前記R2は、エチレン基であり、前記R3は、へキシレン基、または3−メチルペンチレン基とすることが好ましい。
【0020】
本発明においては、さらにドーパントを含むことが好ましい。
【0021】
本発明においては、導電性架橋体は、イオン導電率が10−5Scm−1〜10−2Scm−1であることが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は後述する実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
本発明の導電性架橋体は、下記式(1)
【0024】
【化5】
で示されるアルコール化合物と、下記式(2)
【0025】
【化6】
で示されるポリカーボネートジオールとを、エステル交換させることにより生成される構造単位を含む化合物と、複数の重合可能な官能基を含む重合性化合物または重合性組成物とから製造される(上記式(1)および(2)中、R1、R2、R3、mおよびnは、前述に同じ)。
【0026】
本発明において使用される上述した構造単位は、下記式(3)で示される反応により製造される化合物により与えられる。
【0027】
【化7】
上式中、R1、R2は、上述したと同一であり、PCは、R3を含む下記一般式で示されるポリカーボネート構造単位を示す。
【0028】
【化8】
(上式中、R3およびmは、前述と同一である)。
【0029】
本発明においては、R1は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基とすることができ、式(1)で示した構造単位の製造の点からは、R1は、特にメチル基またはエチル基であることが好ましい。
【0030】
また、本発明においてR2は、炭素数が2〜10の直鎖または分岐鎖の脂肪族基とすることができるが、本発明においては、炭素数2〜10のアルキレン基とすることが好ましく、さらには、上述した構造単位を与える化合物の製造といった点から、エチレン基またはプロピレン基であることが好ましい。本発明において用いられるポリカーボネート(PC)セグメントの繰り返しの数については特に制限はなく、イオン導電性および環境安定性を改善できる範囲であれば、適宜設定することができる。
【0031】
本発明において、好適なR3を提供することができる化合物としては、低分子量の多価アルコールを挙げることができ、具体的には、例えばエチレングリコール、1,1’−オキシビス−2−プロパノール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,6−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサン−1,2,4−トリメタノール、シクロヘキサン−1,3,5−トリメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2,6−ヘキサントリオールトリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンなどをあげることができる。また、本発明においては、上述した多価アルコールを適宜に混合して用いることができる。
【0032】
本発明においては、特にR3として、1,6−へキシレン基または3−メチル1,5−ペンチレン基を使用することが、イオン導電性と、イオン導電性の環境安定性とを共に改善することができるので好ましい。
【0033】
本発明において、上記式(3)で示される反応は、下記一般式(1)
【0034】
【化9】
で示されるアルコール化合物と、HO−PC−OHで示されるポリカーボネートジオールとを、エステル交換させることにより製造することができる(上記式(1)中、R1、R2およびnは前述したと同じ)。
【0035】
本発明において使用することができる上記式(1)の化合物は、本発明においては、例えばメタノールといったアルコールと、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドといったアルキレンオキサイドを開環重合させることにより製造することができる。このときに使用することができる条件は、これまで知られたアルキレンオキサイドの開環重合についてのいかなる条件でも用いることができ、アルコールと、アルキレンオキサイドの割合を変更することにより、適宜重合度を変化させることができる。上記式(1)中のnは、本発明においては5〜100の範囲とすることができ、5〜50の範囲であることがイオン導電性の環境安定性を向上させる点では好ましい。
【0036】
上述した式(1)の化合物は、具体的には、メタノールと、エチレングリコールとを使用して開環付加反応により製造される下記式(5)で示される化合物、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)を挙げることができる。
【0037】
【化10】
上記式(5)中、nは、正の整数である。また、本発明においては、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルも同様に有効な化合物として用いることができる。
【0038】
さらに、本発明のHO−PC−OHで示されるポリカーボネートジオールは、下記式(6)で示されるように、低分子量カーボネート、例えばジエチルカーボネートを使用するエステル交換反応により製造することができる。
【0039】
【化11】
(上式中、R3、mは、前述したと同じ)。
【0040】
本発明の上述したポリカーボネートジオールを製造するためのエステル交換反応のために使用することができる低分子量カーボネートとしては、具体的には例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート類、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート類を挙げることができる。
【0041】
本発明においては、上述した構造単位を導電性架橋体に導入するためには、該構造単位の構造を、アクリル酸またはメタクリル酸により下記構造式(7)または(8)に示すようにアクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステルとすることができる。
【0042】
【化12】
上式中、nおよびPCは、前述したと同じである
【0043】
【化13】
上記式中、本発明において式(7)および式(8)で示したアクリレート、メタクリレートは、例えば式(6)で示されるポリエチレングリコールモノメチルエステルに対して、アクリル酸クロリドまたはメタクリル酸クロリドを作用させて、特開2000−67643号公報に記載の方法により製造することができる。
【0044】
本発明の導電性架橋体を、アクリル重合を使用して製造する場合には、式(7)または式(8)で示される化合物と、重合性化合物と、ラジカル開始剤とを混合し、溶剤中で重合させた後、成形することもできるし、塗布、流し込みといった方法により重合性の組成物を成形し、溶媒を乾燥させた後、加熱して重合させることにより形成することができる。
【0045】
本発明において使用することができる重合性化合物としては種々のエチレン性2重結合を有する化合物を挙げることができ、例えば、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、グリセリンのアルキレンオキサイド付加体、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリールメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、パーフロロアルキルアクリレート、パーフロロアルキルメタクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、グリセリンのモノ、ジ、トリポリオキシアルキレングリコールエステルを、モノ、ジ、トリアクリレートとした化合物、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートといった化合物を挙げることができ、これらは適宜混合して用いることができる。
【0046】
上述した重合性化合物の中でも特にイオン導電性を付与するためには、ポリエチレングリコールジアクリレートまたはポリプロピレングリコールジアクリレート、グリセリンのアルキレンオキサイド付加体を、モノ、ジ、トリアクリレートとした化合物が本発明の導電性架橋体に含まれていることが好ましい。
【0047】
また、本発明においては、イオン導電性を付与するためのセグメントとして、ポリアルキレングリコール以外にも、例えば、ポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンスルフィドなどをポリアルキレングリコールの代わりに用いることもできるし、ポリアルキレングリコールと混合して用いることもできる。さらには、これらに適切な方法によりアクリロイル基またはメタクリロイル基を結合させた重合性化合物を使用することもできる。
【0048】
また、本発明において、上述したポリカーボネートポリオール、ポリアルキレングリコールを、アクリロイル化、またはメタクリロイル化することにより、アクリレートまたはメタクリレート誘導体として重合を行う場合に使用することができるアクリレートまたはメタクリレートとしては、ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、グリセリンのアルキレンオキサイド付加体など、ポリアルキレングリコールの末端の水酸基に対してアクリロイル基またはメタクリロイル基を結合させた化合物を使用することができる。
【0049】
また、この際のアクリル重合に使用することができるラジカル開始剤としては、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスシアノ吉草酸、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリルといったアゾ系開始剤、を適宜混合して用いることもできる。
【0050】
また、本発明においては、開始剤としてメチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドからなる群から選択される化合物又はこれらの混合物とすることもできる。
【0051】
さらに本発明においては、上述のラジカル開始剤としてイソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイドからなる群から選択される化合物又はこれらの混合物とすることもできる。
【0052】
さらに本発明においては、上述のラジカル開始剤としてジターシャルブチルパーオキサイド、t-ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t-ブチルパーオキシ)−3−ヘキシンからなる群から選択される化合物又はこれらの混合物とすることも可能である。
【0053】
さらに本発明においては、上述のラジカル開始剤としてt−ブチルヒドロパーオキサイド、キュメンヒドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイドからなる群から選択される化合物又はこれらの混合物とすることも可能である。
【0054】
さらに本発明においては、上述のラジカル開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル=4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンからなる群から選択される化合物又はこれらの混合物とすることも可能である。
【0055】
さらに本発明においては、上述のラジカル開始剤としてt−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)へキサンからなる群から選択される化合物又はこれらの混合物とすることも可能である。
【0056】
さらに本発明においては、上述のラジカル開始剤としてビス−(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス(3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ビス(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、OO−t−ブチル−O−イソプロピルパーオキシカーボネートからなる群から選択される化合物又はこれらの混合物とすることもできる。
【0057】
さらに本発明においては、上述のラジカル開始剤としてアゾビスシアノ吉草酸、ビス(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムからなる水溶性の化合物又はこれらの混合物とすることも可能である。上述したラジカル開始剤は、さらに上述したラジカル開始剤のいかなる組合せの複数種を混合して用いることも可能である。
【0058】
また、本発明の導電性架橋体は、上述した構造単位を含む化合物と、ポリアルキレングリコールと、ポリイソシアネートとを重縮合させて形成されるポリウレタンの形態で導電性架橋体とすることができる。
【0059】
上述した本発明に使用することができるポリアルキレングリコールとしては、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、下記式で示されるグリセリン−エチレンオキサイド付加体、
【0060】
【化14】
(上式中、p、q、rは、同じでも異なっていてもよい正の整数である。)を挙げることができる。
【0061】
重縮合反応を行わせるために使用することができるポリイソシアネートとしては、具体的には例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリジンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)などを挙げることができる。
【0062】
上述したように本発明の導電性架橋体をポリウレタンにより形成した場合には、上述した構造単位は、カルバメート基に結合した形態で高分子鎖の中間に含まれるのではなく、導電性架橋体の末端に結合されることになる。また、アクリル重合を使用した場合には、上述した構造単位は、アクリロイル基にペンダントされた状態で高分子鎖の中間にペンダント状に結合することになる。いずれの場合でも上述した構造単位は、両末端が同時に拘束されずにフレキシビリティを有することになるので、架橋構造に対してフレキシビリティのあるポリアルキレンセグメントを提供することになり、イオン導電性を調節することを可能とする。
【0063】
本発明の導電性架橋体には、アクリル重合で形成される場合およびポリウレタンとして重縮合により形成する場合でも、さらにイオン導電性を向上させるためにイオンを与えるいわゆるドーパントとして機能する化合物を適宜混合して用いることができる。これらのドーパントとしては、具体的には例えば、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、チオシアン酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフロロメチルリチウムスルホネート、テトラフロロリチウムボレート、テトラフェニルリチウムボレート、LiPF6、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硝酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、トリフロロメチルナトリウムスルホネート、テトラフロロナトリウムボレート、テトラフェニルナトリウムボレート、NaPF6、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム、チオシアン酸カリウム、過塩素酸カリウム、トリフロロメチルカリウムスルホネート、テトラフロロカリウムボレート、テトラフェニルカリウムボレート、KPF6、といった化合物、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3SO2)2といったパーフロロアルカンスルホン酸化合物などを挙げることができる。
【0064】
さらに本発明においては陽イオンとして、Rb+、Cs+、アンモニウムイオン、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Cu2+、Rb2+といったカチオンと上述した陰イオンとの化合物をドーパントとして使用することができる。
【0065】
本発明の導電性架橋体は、重縮合によりポリウレタンとされる場合であっても、アクリル重合により形成される場合と同様に、架橋体とした後にドーパントをドープして成形、加工して用いることもできる。さらに、本発明の導電性架橋体は、式(8)で示される化合物と、イオン導電性セグメントを有する重合性化合物と、ドーパントとを混合して、適切な溶媒により希釈して被膜とした後、重合させて、導電性架橋体とすることができる。
【0066】
この際に本発明においては、溶媒としては種々の溶媒を用いることができる。これらの溶媒としては、例えばアミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキセン、シクロペンタン、ジペンテン、ジメチルナフタレン、シメン類、樟脳油、石油エーテル、石油ベンジン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、テレピン油、灯油、ドデカン、ドデシルベンゼン、トルエン、ナフタレン、ノナン、パインオイル、ピネン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、リグロインといった炭化水素系溶媒を挙げることができる。
【0067】
上記溶媒としてはさらに、2−エチルヘキシルクロリド、塩化アミル、塩化イソプロピル、塩化エチル、塩化ナフタレン、塩化ブチル、塩化ヘキシル、塩化メチル、塩化メチレン、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロベンゼン、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、ジクロロトルエン、ジクロロブタン、ジクロロプロパン、ジクロロベンゼン、ジブロモエタン、ジブロモブタン、ジブロモプロパン、ジブロモベンゼン、ジブロモペンタン、臭化アリル、臭化イソプロピル、臭化エチル、臭化オクチル、臭化ブチル、臭化プロピル、臭化メチル、臭化ラウリル、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、テトラブロモエタン、テトラメチレンクロロブロミド、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、ブロモクロロエタン、1−ブロモ−3−クロロプロパン、ブロモナフタレン、ブロモベンゼン、ヘキサクロロエタン、ペンタメチレンクロロブロミド等のハロゲン化炭化水素系溶媒を用いることが可能である。
【0068】
また、上記溶媒としては、アミルアルコール、アリルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、ウンデカノール、エタノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、n−オクタノール、グリシドール、シクロヘキサノール、3,5,−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、n−デカノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、α−テルピネオール、ネオペンチルアルコール、ノナノール、フーゼル油、ブタノール、フルフリルアルコール、プロパギルアルコール、プロパノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ベンジルアルコール、ペンタノール、メタノール、メチルシクロヘキサノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−1−ペンチン−3−オールといったアルコール類も挙げることができる。
【0069】
上記溶媒としては、さらにアニソール、エチルイソアミルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、エポキシブタン、クラウンエーテル類、クレジルメチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルアセタール、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,8−シネオール、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、トリオキサン、ビス(2−クロロエチル)エーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、フラン、フルフラール、メチラール、メチル−t−ブチルエーテル、メチルフラン、モノクロロジエチルエーテルといったエーテル・アセタール系溶剤も挙げることができる。
【0070】
上述の溶媒としては、アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−へプチルケトンといったケトン・アルデヒド系溶剤も同様に用いることができる。
【0071】
本発明に用いることができる溶媒としては、さらにアジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸メチル、アビエチン酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸プロピル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ベンジル、ギ酸メチル、クエン酸トリブチル、ケイ皮酸エステル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、酢酸アミル、酢酸アリル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、蓚酸ジアミル、蓚酸ジエチル、蓚酸ジブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セパシン酸ジオクチル、セパシン酸ジブチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸メチル、燐酸エステル類といったエステル系溶剤も挙げることができる。
【0072】
上述の溶媒としては、エチレングリコール、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、エチレンクロロヒドリン、1,3−オクチレングリコール、グリセリン、グリセリン1,3−ジアセタート、グリセリンジアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリントリアセタート、グリセリントリラウラート、グリセリンモノアセタート、2−クロロ−1,3−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ポリプロピレングリコールといった多価アルコール及びそれらの誘導体を挙げることができる。
【0073】
さらに上述の溶媒としては、イソ吉草酸、イソ酪酸、イタコン酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチル酢酸、オレイン酸、カプリル酸、カプロン酸、ギ酸、吉草酸、酢酸、乳酸、ピバリン酸、プロピオン酸、といったカルボン酸誘導体、エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、グアヤコール、キシレノール、p−クミルフェノール、クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノールといったフェノール類、アセトニトリル、アセトンシアノヒドリン、アニリン、アリルアミン、アミルアミン、イソキノリン、イソブチルアミン、イソプロパノールアミン類、イソプロピルアミン、イミダゾール、N−エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、カプロラクタム、キノリン、クロロアニリン、シアノ酢酸エチル、ジアミルアミン、イソブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N,N−ジエチルアニリン、ジエチルアミン、ジエチルベンジルアミン、ジエチレントリアミン、ジオクチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、トリオクチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリオクチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリプロピルアミン、トリメチルアミン、トルイジン、ニトロアニソール、ピコリン、ピペラジン、ピラジン、ピリジン、ピロリジン、N−フェニルモルホリン、モルホリン、ブチルアミン、ヘプチルアミン、ルチジン、N−メチルピロリドンといった含窒素化合物、これらの溶媒の他、含イオウ化合物系溶媒、フッ素系溶媒等も挙げることができる。
【0074】
本発明の導電性架橋体のイオン導電性は、イオン導電率が10−5Scm−1〜10−2Scm−1の範囲であることが、適切なイオン導電性を付与することができる点では好ましい。本発明において、イオン導電率は、種々の方法により測定することができる。本発明において特に好ましく、かつ精度も高いイオン導電率の測定方法は、インピーダンス測定により測定されるインピーダンスを使用する方法である。図1には、本発明において使用することができるインピーダンス測定の装置構成および測定原理を示す。図1(a)には、本発明のインピーダンス測定装置の原理的構成を示す。図1(a)に示されるように、本発明の導電性架橋体1を、2枚の対向する電極2a,2bの間に挟み、交流電源から高周波電圧を印加する。
【0075】
ここで、イオン導電体は、図1(b)で示されるように、抵抗Rと、キャパシタンスCを含むモデルで示すことができる。イオン導電体のイオン導電率は、交流電源1から、高周波電圧を加えた場合に、両電極2a,2bを通して流れる電流値を電流計Aにより測定することで測定できる。図1においては、本発明の導電性架橋体3が、電極2a,2bの間に挟まれていて、交流電源1から高周波の交流電圧が印加されているのが示されている。
【0076】
図2は、導電性架橋体が、図1(b)で示されるモデルで近似できる場合に得られる、交流周波数を変化させた場合の複素インピーダンスにおける実部(Z’)を横軸にとり、虚部(Z”)を縦軸としてプロットした複素インピーダンスプロットを示した図である。複素ピーダンスプロットにおける極大値を与える周波数と、導電率およびキャパシタンスとは、以下の関係を有することが知られている(例えば、導電性高分子、緒方直哉編、株式会社講談社、1990年2月10日発行)。
【0077】
【数3】
したがって、複素インピーダンスプロットによるもっとも高い虚部をあたえる交流周波数の値と、別途測定される導電性架橋体のキャパシタンスの値とからイオン導電率を得ることができる。さらに本発明においてはより簡単に、複素インピーダンスプロットからの実部(R’)へと外挿を行い、R’を得て、下記式を使用してイオン導電率を得ることもできる。
【0078】
【数4】
(上式中、σは、イオン導電率(Scm−1)であり、dは、電極間の距離、すなわち導電性架橋体の厚さ(cm)であり、Aは、電極面積(cm2)である。
【0079】
本発明の導電性架橋体の高温高湿から低温低湿までのイオン導電率の変化は、
高温高湿におけるイオン導電率σhと、低温低湿におけるイオン導電率σlとの
比σl/σhが、下記範囲
【0080】
【数5】
であることが、好適な環境安定性を付与することができるので好ましい。なお、本発明においては高温高湿とは、30℃、80%RHの環境をいい、低温低湿とは、5℃、10%RHの環境をいうものとする。さらに、本発明の導電性架橋体は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジフェニルカーボネートといった化合物により膨潤させ、さらに上述したドーパントを添加することにより、導電性を向上させることもできる。
【0081】
さらに、本発明の導電性架橋体には、種々の特性を調節するために、これまで知られたいかなる無機微粒子、有機微粒子、界面活性剤などの添加剤などを、本発明の導電性架橋体の特性に悪影響を与えない範囲で混合して用いることができる。
【0082】
以下本発明を具体的な実施例により説明するが、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0083】
【実施例】
A ポリカーボネートジオール(PCD)の製造
(合成例1)
1,6−ヘキサメチレンジオール(分子量118)579gと、421gのジエチルカーボネートとを、撹拌器、窒素導入管、冷却管を備えた1リットルのセパラブルフラスコに投入し、オイルバス中で180℃〜190℃の温度で常圧下、脱エタノール反応を行わせた。エタノールの留出量が低下してきた時点でテトラブチルチタネートを0.01g仕込んで減圧し、さらに反応を行った。減圧度を徐々に高め、最終的に1kPaの減圧度となるまで反応を行った。反応の終了は、13C−NMRにより反応物を分析し、末端エチル基のピークが確認できなくなった時点を、反応終了時とした。上述した反応により、数平均分子量(Mn)が500、水酸基価(OHv)が、224.4mgKOH/g、平均官能基数(f)が、2のポリカーボネートジオールPCD−1を得た。
【0084】
(合成例2〜5)
合成例1と同様の反応器を使用して、表1に示す原料および仕込量で、ポリカーボネートジオールPCD−2〜PCD−5を製造した。
【0085】
【表1】
【0086】
(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−PCDの合成)
(合成例6)
300gの上述した合成例1で製造したポリカーボネートジオールPCD−1と、600gの数平均分子量400のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG−400)を、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた1lの4つ口フラスコに投入し、190℃で4時間反応させて、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−PCD(以下EPCと略する。)EPC−1を得た。得られたEPC−1の数平均分子量は430であり、水酸基価(OHv)は、168.3mgKOH/gであり、平均官能基数は、1.76であった。
(合成例7〜15)
合成例2〜5で得られたPCDを使用し、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの数平均分子量、仕込量を変えて、EPC−2〜EPC−10を合成した。表2および表3に使用したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルの数平均分子量、仕込量、および各物性値を示す。なお、表2および表3において、MPEG−400は、数平均分子量400のポリエチレングリコールモノメチルエーテルであり、EPEG−700は、数平均分子量700のポリエチレングリコールモノエチルエーテルであり、MPEG−2000は、数平均分子量2000のポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
B.導電性架橋体の製造
ポリウレタン導電性架橋体の製造
Aで製造したEPC−1と、MDIと、グリセリン−ポリエチレンオキサイド付加物(グリセリン:エチレンオキサイド=1:75(モル比))とを、N−メチルピロリドン中に溶解し、20質量%の溶液とした。上述した溶液にLiCF3SO3をドーパントとして固形分に対し20質量%となるように添加した。
【0090】
上述した溶液を、図1に示した構成のインピーダンス測定装置の電極に塗布し、溶媒を室温で乾燥させた後、180℃で1時間乾燥機中で加熱して硬化させた。上述したように電極上に形成した架橋体を、ジエチルカーボネートにより膨潤させ、導電性架橋体を製造した。
【0091】
C.イオン導電率の測定
Bにおいてインピーダンス測定装置の電極上に形成された導電性架橋体に対して、高周波電圧(0.001Hz〜107Hz)を印加して、イオン導電率を常温常湿(25℃、55%RH)の環境下で測定した。イオン導電率の測定は、図1(b)において説明した複素インピーダンスプロットを行ない、F”−F’プロットをF’(実軸)にまで外挿して求めた。この結果、EPC−1を使用した導電性架橋体について1×10−4Scm−1のイオン導電率が得られた。
【0092】
同様の測定を、それぞれ低温低湿環境(5℃、10%RH)および高温高湿環境(30℃、80%RH)において行い、それぞれイオン導電率が、低温低湿で6×10−5Scm−1、および高温高湿で2×10−3Scm−1と得られた。
【0093】
上述した導電性架橋体の製造および測定を、それぞれEPC−2〜EPC−7について行ったところ、良好なイオン導電性および環境安定性を示す導電性架橋体が得られた。その結果を表4に示す。
【0094】
【表4】
【0095】
D.アクリル架橋体
本発明のポリカーボネートジオールを用い、特開2000−86711号公報に記載された製造方法にしたがってポリカーボネートジアクリレートを製造した。製造されたポリカーボネートジアクリレートを、ポリエチレングリコールジアクリレート、LiCF3SO3、およびベンゾイルパーオキサイドを使用してラジカル重合を行い導電性架橋体を形成した。上述した導電性架橋体についても、ポリウレタン架橋体と同様、良好なイオン導電性および環境安定性が得られた。
【0096】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、良好なイオン導電性を有し、かつイオン導電率の環境安定性も良好な導電性架橋体を得ることができ、本発明の導電性架橋体は、リチウム2次電池用の高分子電解質、固体電解質型燃料電池のための固体電解質、光電池、センサー、エレクトロクロミズム応用デバイス、電解コンデンサ用の電解質、帯電防止用被膜、導電性シール、など種々の用途に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のインピーダンス測定装置を示した図。
【図2】 本発明のインピーダンス測定方法を示した図。
【符号の説明】
1…交流電源
2a,2b…電極
3…導電性架橋体
A…電流計
Claims (8)
- 前記構造単位は、アクリロイル基またはメタクリロイル基に合する、請求項1に記載の導電性架橋体。
- 前記構造単位は、カルバメート基に結合する、請求項1に記載の導電性架橋体。
- 前記重合性化合物は、アクリレートまたはメタクリレートである、請求項2に記載の導電性架橋体。
- 前記重合性組成物は、ポリオールとポリイソシアネートとを含む、請求項3に記載の導電性架橋体。
- 前記R1は、メチル基であり、前記R2は、エチレン基であり、前記R3は、へキシレン基、または3−メチルペンチレン基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性架橋体。
- さらにドーパントを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性架橋体。
- イオン導電率が10−5Scm−1〜10−2Scm−1である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性架橋体。
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