JP3760778B2 - ウェルドナットのセット不良検出装置およびその方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークと、ワークにセットされたウェルドナットとを相対向する電極で挟み、加圧した状態で両電極間に溶接電流を流すことにより、ワークにプロジェクション溶接されるウェルドナットのセット不良検出装置およびその方法に関するものである。なお、ウェルドナットとは、ワークにプロジェクション溶接されるナットのことである。
【0002】
【従来の技術】
図5(A) に示すように、ウェルドナットW1は、一端側の四隅にプロジェクションと呼ばれる突起部Pjが形成されていることから、この突起部Pjを利用して溶接電流および加圧力の集中を図る抵抗溶接、つまりプロジェクション溶接を可能にしている。したがって、図5(B) に示すように、溶接後のウェルドナットW1には、主に突起部Pjが溶融して出来たナゲットNaがワークW2との間に形成されている。なお、図5(A) には、ワークW2に形成されたナット溶接用の下孔hを下方から上方に向けて貫通し、ウェルドナットW1を位置決めする位置決めピンPnが示されている。
【0003】
ところで、自動化されたウェルドナットの溶接工程では、このようなウェルドナットW1をワークW2にセットする際に、図略のナットフィーダから供給ヘッドへ送り出されるウェルドナットW1を、下孔hから突出した位置決めピンPnに引っ掛けるようにしてウェルドナットW1の位置決め、つまりウェルドナットW1のセットを行っている。即ち、位置決めピンPnに対し輪投げをする要領でウェルドナットW1のセットを行っている。
【0004】
このため、ウェルドナットW1の供給ヘッドと位置決めピンPnとが近接した位置関係にあれば、ウェルドナットW1をほぼ確実に位置決めピンPnに引っ掛けることも可能であるものと考えられる。しかし現実には、セットされたウェルドナットW1の上下方向およびその周囲の空間は、溶接電流を供給する電極の可動範囲であるため、位置決めピンPnに近接した位置に供給ヘッドを配置することができない。したがって、供給ヘッドから供給されるウェルドナットW1が、位置決めピンPnに適正に引っ掛かった状態、即ちワークW2上にウェルドナットW1が正しくセットされているか否かを検出する検出装置が必要になる。
【0005】
そこで、従来より、図6に示すようなウェルドナットのセット不良検出装置が用いられている。即ち、図6(A) に示すように、上側電極91とともに上下動し得る可動部93の外周壁に凸部93aを設け、可動部93のストローク位置がウェルドナットW1の厚みに相当するところに達したときに、この凸部93aによりリミットスイッチ94の先端部94aを押圧して、リミットスイッチ94をオン状態にするように構成されている。
【0006】
このように構成することにより、ワークW2上にウェルドナットW1が正しくセットされていれば、可動部93の凸部93aにより先端部94aが押され、リミットスイッチ94がオフ状態からオン状態に移行するため、ウェルドナットW1の「有」を検出することができる。一方、図6(B) に示すように、ワークW2上にウェルドナットW1がセットされていなければ、可動部93の凸部93aはリミットスイッチ94の先端部94a位置を通過する。そのため、凸部93aに一旦押されたリミットスイッチ94も再度解除されるので、リミットスイッチ94はオン状態からオフ状態に戻ってしまい、これによりウェルドナットW1の「無」を検出する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6に示すような従来のウェルドナットのセット不良検出装置によると、溶接装置ごとに、このような可動部93の凸部93a、リミットスイッチ94、リミットスイッチ94の取付ブラケット等を設ける必要がある。そのため、装置、保守、管理等の設備コストが増大するという問題がある。
【0008】
また、溶接電流を供給する上側電極91は、溶接を繰り返す間にその先端が徐々に摩耗する。そのため、上側電極91自体の長さがこのような摩耗により短くなると、可動部93に設けられた凸部93aの設定位置も徐々に変動するため、ワークW2上にウェルドナットW1が正しくセットされていても、可動部93の凸部93aによりリミットスイッチ94の先端部94aを押すことができなくなる。つまり、ウェルドナットW1の有無を正確に検出することができないという問題が生じ得る。このような問題は、上側電極91の摩耗状況に合わせて凸部93aやリミットスイッチ94の設定位置を変更すれば解決できるが、溶接数量の多い製造現場ではそのような変更を頻繁に行うことは現実的ではない。
【0009】
さらに、図6に示すような従来のウェルドナットのセット不良検出装置では、ウェルドナットW1の有無を検出することはできても、それ以外の検出、例えば図7(A) 〜図7(C) に示すようなものは検出することができないという問題がある。即ち、図7(A) に示すような位置決めピンPnに掛かることなく、位置決めピンPnの横にずれてセットされているもの、図7(B) に示すような縦向きにセットされているもの、図7(C) に示すような裏向きにセットされているもの、等にあっては、従来のセット不良検出装置ではセット不良を検出することができない。したがって、目視検査を余儀なくされるほか、このようなセット不良のウェルドナットW1をワークW2に溶接した場合には、後工程でそれを修正する必要があった。
【0010】
また、図6に示すようなウェルドナットのセット不良検出装置によることなく、磁気や電磁波等を利用したいわゆる近接スイッチにより、ウェルドナットW1の有無を判定する方法もある。ところが、このような方法では、近接スイッチによりウェルドナットW1の有無を判定する後工程を別に設ける必要があるほか、近接スイッチであっても、図7(A) 〜図7(C) に示すようなウェルドナットW1のセット不良を確実には検出することができない。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、別工程を設けることなく、ウェルドナットのセット不良を確実に検出し得るウェルドナットのセット不良検出装置およびその方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1のウェルドナットのセット不良検出装置では、ワークと、該ワークにセットされたウェルドナットとを相対向する電極で挟み、加圧した状態で両電極間に溶接電流を流すことにより、前記ワークにプロジェクション溶接されるウェルドナットのセット不良検出装置であって、
前記電極間に予備通電し、そのときの電極間電圧から電極間の抵抗を検出する電極間抵抗検出手段と、
前記電極間抵抗検出手段により検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
を備えることを技術的特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、請求項2のウェルドナットのセット不良検出方法では、
ワークと、該ワークにセットされたウェルドナットとを相対向する電極で挟み、加圧した状態で両電極間に溶接電流を流すことにより、前記ワークにプロジェクション溶接されるウェルドナットのセット不良検出方法であって、
前記電極間に予備通電する第1ステップと、
前記第1ステップの予備通電時における電極間電圧から電極間の抵抗を検出する第2ステップと、
前記第2ステップにより検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にあるか否かを判定する第3ステップと、
を含むことを技術的特徴とする。
【0014】
請求項1の発明では、電極間に予備通電し、電極間抵抗検出手段によりそのときの電極間電圧から電極間の抵抗を検出し、判定手段により、電極間抵抗検出手段により検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にあるか否かを判定する。これにより、電極間抵抗検出手段により検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にある場合には、ウェルドナットは適正にセットされたものと判定手段により判定することができ、当該範囲内にない場合には、ウェルドナットは適正にセットされたものではないと判定手段により判定することができる。
【0015】
請求項2の発明では、第1ステップで電極間に予備通電し、第2ステップで第1ステップの予備通電時における電極間電圧から電極間の抵抗を検出し、第3ステップでは、第2ステップで検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にあるか否かを判定する。これにより、第2ステップで検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にある場合には、ウェルドナットは適正にセットされたものと第3ステップで判定することができ、当該範囲内にない場合には、ウェルドナットは適正にセットされたものではないと第3ステップで判定できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のウェルドナットのセット不良検出装置およびその方法の実施形態について図を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係るウェルドナットのセット不良検出装置20は、ウェルドナット溶接装置をベースに構成されるものであるため、まずウェルドナット溶接装置の構成を図1に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、ウェルドナット溶接装置は、主に、上側電極21、下側電極22、電圧検出器24、溶接トランスT、サイリスタSCR1、SCR2、制御装置30等から構成されている。なお、電圧検出器24、サイリスタSCR1、SCR2および制御装置30からなる装置をタイマコンタクタと称する場合もある。
【0018】
相対向する上側電極21および下側電極22は、銅等の導電抵抗の低い金属からなる先端平面状の円柱状に形成されている。そして、これら両電極21、22は、図略の加圧装置により、両電極間に挟まれたワークを加圧し得るように構成されている。これにより、ワークW2と、ワークW2にセットされたウェルドナットW1とを両電極21、22で挟み、加圧した状態で両電極21、22間に溶接電流を流すことを可能にしている。なお、上側電極21の側方には、既に説明したナットフィーダから送り出されるウェルドナットW1を供給する供給ヘッドFが設けられている。
【0019】
電圧検出器24は、上記両電極21、22間の電圧を検出するものである。即ち、両電極21、22間の電位差を測定するもので、溶接電流の供給時等に測定した電圧値を電圧データとして制御装置30に送出し得るように構成されている。
【0020】
溶接トランスTは、上記両電極21、22間に、溶接電流を流すためものである。そのため、溶接トランスTの一次側には溶接電源PSが、また溶接トランスTの二次側には上側電極21および下側電極22が、それぞれ溶接ケーブル等を介して電気的に接続されている。
【0021】
サイリスタSCR1、SCR2は、溶接トランスTの一次側に供給する溶接電流の通電・遮断および位相制御を行うものである。そのため、溶接トランスTと溶接電源PSとの間に介在し、ゲート端子に制御装置30からのトリガ信号を受け得るように構成されている。
【0022】
図2に示すように、制御装置30は、主に、表示部32、操作部34、本体部36等を備えており、前述の電圧検出器24から送られてくる電圧データに基づいて所定のトリガ信号をSCR1、SCR2に与えて溶接電流を制御し得るように構成されている。
【0023】
本体部36は、主に、CPU36a、メモリ36b、外部記憶装置36c、インタフェース36d、36e等から構成されている。メモリ36bには、溶接電流制御の処理を行うプログラムや後述するウェルドナットW1のセット状態を判定する判定処理プログラム等が記憶されている。またインタフェース36dには、表示部32、操作部34や外部記憶装置36cが接続されており、CPU36aとそれぞれの間とのデータのやり取りを制御している。一方、インタフェース36eには電圧検出器24が接続されており、電圧検出器24から送出された電圧データをCPU36aに順次転送している。
【0024】
このように構成されたウェルドナット溶接装置をベースに、本実施形態に係るウェルドナットのセット不良検出装置20は次のように構成されている。
即ち、ウェルドナットのセット不良検出装置20は、上側電極21と下側電極22間に予備通電し、そのときの電極間電圧から両電極21、22間の抵抗を検出する電極間抵抗検出手段と、この電極間抵抗検出手段により検出された電極間抵抗が所定範囲内にあるか否かを判定する判定手段とから構成されている。前述したウェルドナット溶接装置を構成する電圧検出器24および制御装置30が電極間抵抗検出手段に相当し、また制御装置30が判定手段に相当する。
そして、次に説明するウェルドナットセット不良判定処理が制御装置30により実行されることによって、ウェルドナットW1のセット不良が検出される。
【0025】
このように本実施形態に係るウェルドナットのセット不良検出装置20は、既存のウェルドナット溶接装置に用いられる設備を利用して実現することができるので、別段の機器設備等を設ける必要がない。また、以下説明するように、一連の溶接処理の中でウェルドナットのセット不良の検出も行うため、溶接工程の前または後に別工程を設ける必要もない。
【0026】
図3に示すように、ウェルドナットセット不良判定処理は、例えば一連の溶接処理の中で実行される。本実施形態では、ステップS10、S12、S14による第1の判定処理、および、ステップS22、S24、S26、S28による第2の判定処理が、ウェルドナットセット不良判定処理に相当する。
【0027】
以下、図3および図4に基づいてウェルドナットの溶接処理を交えながら第1、第2のウェルドナットセット不良判定処理を説明する。なお、図4は、制御装置30による電極間抵抗の特性例および電極間電流の波形例を示す説明図で、実線(○印)による電極間抵抗の特性例は適正にセットされたウェルドナットによるもの、破線(▲印)による電極間抵抗の特性例は裏向きにセットされたウェルドナットによるものである。
【0028】
(第1のウェルドナットセット不良判定処理)
図3に示すように、まずステップS10により、溶接時供給する溶接電流よりも低い電流を予備通電し、そのときの電極間電圧を電圧検出器24により測定する。本実施形態では、図4に示すように予備通電を2サイクルに亘って行い、0.5サイクル毎に3回測定を行う(図4に示すA点、B点、C点)。ここで予備通電時に供給する電流を、溶接時供給する溶接電流よりも低い値に設定しているのは、溶接時と同じまたはそれ以上の電流を電極間に供給すると、セット不良のウェルドナットW1をワークW2に抵抗溶接することとなり、そのような事態を回避するためである。本実施形態では、図4に示すように例えば溶接電流(10kA)の半分に相当する電流(5kA)により予備通電を行っている。
【0029】
続くステップS12では、電圧検出器24により測定した電極間電圧データに基づいて電極間抵抗を算出する。つまり、制御装置30では、SCR1、SCR2に加えるトリガ信号を決定するうえで、電極間に供給している電流値を把握しているので、電極間電圧を電圧検出器24から送られてくる電圧データとして得ることができればオームの法則から電極間抵抗を算出することができる。本実施形態では、図4に示すA点、B点、C点のそれぞれにおける電極間抵抗を算出する。
【0030】
ステップS14では、ステップS12により算出した電極間抵抗が所定範囲内にあるか否かを判断する。つまり、予め設定されているウェルドナットW1が適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内に算出した抵抗が入っているか否かを判断する。本実施形態では、図4に示すA点、B点、C点のそれぞれにおいて設定されている範囲内(A点では上限a1、下限a2、B点では上限b1、下限b2、C点では上限c1、下限c2)に電極間抵抗が全て入っているか否かを判断する。
【0031】
ステップS14により、電極間抵抗が所定範囲内にあると判断できなければ、ウェルドナットW1は適正にセットされたものではないため、ステップS16に処理を移行する。そして、ステップS16により、異常を表示して溶接を中止する(S18)。
【0032】
ここで、ステップS12により算出した抵抗値が前記所定範囲よりも低いか高いか、また高いとすればどの程度高いか等をより詳細に解析することによって、ワークW2上にウェルドナットW1がセットされていないか、セットされていてもウェルドナットW1が位置決めピンPnの横にずれてセットされているか、また縦向きにセットされているか、等を判定することができる。
【0033】
即ち、ステップS12により算出した電極間抵抗が前記所定範囲よりも低い場合には、ワークW2上にセットされるべきウェルドナットW1が存在しないため、その抵抗分が減少し当該抵抗が低下しているものと判断することができる。つまり、ワークW2上にウェルドナットW1がセットされていないために、上側電極21とワークW2とが直接接触しているものと判定することができる(図6(B) 参照)。
【0034】
一方、ステップS12により算出した抵抗値が前記所定範囲よりも高い場合には、上側電極21とウェルドナットW1との接触面積が小さい状態や、通電距離が長い状態が想定される。つまり、前者は、ウェルドナットW1が位置決めピンPnの横にずれてセットされている場合であり(図7(A) 参照)、後者は、ウェルドナットW1が縦向きにセットされている場合である(図7(B) 参照)。
【0035】
なお、ウェルドナットW1が縦向きにセットされている場合の方が、位置決めピンPnの横にずれてセットされている場合に比較して、電極間抵抗が高くなる傾向にあることから、両者を判別することもできる。
【0036】
また、図4に示す破線(▲印)による特性のように、算出した抵抗値が、最初のA点で下限a2を下回り、続くB点、C点では所定の範囲内に入るようなS字カーブを描く場合には、ウェルドナットW1が、裏向きにセットされている可能性が高い(図7(C) 参照)。そのため、このような場合もステップS14により異常を判定するが、A点による電圧データに誤りがあると他のB点、C点では異常を判定することができない。そこで、ステップS22、S24、S26、S28による第2のウェルドナットセット不良判定処理によってウェルドナットが裏向きにセットされていないかを正確に判定する。
【0037】
他方、ステップS14により、電極間抵抗が所定範囲内にあると判断できれば、ウェルドナットW1は適正にセットされているものとして、ステップS20に処理を移行する。そして、ステップS20により、所定の冷却時間を待つ。予備通電後にこのような冷却時間を設けてあるのは、次のステップS22による本通電時の熱量計算に、予備通電時の熱量を含めないためである。
【0038】
(第2のウェルドナットセット不良判定処理)
ステップS22ではプロジェクション溶接を行うための本通電を行う。このステップS22による本通電では、図4に示すように、10kAの溶接電流が電極間に流れるように制御装置30により溶接電流が制御される。そして、このときも前述したステップS10による予備通電時と同様、電極間電圧を電圧検出器24により測定する。
【0039】
本実施形態では、図4に示すように本通電の2サイクル目以降から0.5サイクル毎に6回の電圧測定を行う(図4に示すD点、E点、F点、G点、H点、I点)。ここで、電圧検出器24による電極間電圧の測定を本通電の2サイクル目以降から始めるのは、図4に示すように、通電開始直後は、ウェルドナットW1が適正にセットされた場合の抵抗値(図4に示す実線によるカーブ)と裏向きにセットされた場合の抵抗値(図4に示す破線によるカーブ)とに顕著な差がなく、両者の区別がつき難いためである。
【0040】
続くステップS24では、前述したステップS12と同様、電圧検出器24により測定した電極間電圧データに基づいて電極間の抵抗値を算出する。本実施形態では、図4に示すD点、E点、F点、G点、H点、I点の6点における電極間抵抗を算出する。
【0041】
さらにステップS26では、ステップS24により算出した6点における電極間抵抗の平均値を算出する。このようにD点、E点、F点、G点、H点、I点の6点における抵抗の平均値を求めるのは、ウェルドナットW1が裏向きにセットされていないかを正確に判別するためである。
【0042】
即ち、図4に示すように、本通電において適正にウェルドナットW1がセットされている場合の電極間抵抗の特性(○印)はΛ字状のカーブを示し、裏向きにウェルドナットW1がセットされている場合の同抵抗の特性(▲印)はV字状のカーブを示すことが、本出願の発明者らによる実験により確認されている。そのため、例えば図4に示すD点およびH点における当該抵抗の傾きを判定する方法や、屈曲点前後における当該抵抗の増減を判定する方法等により、それぞれの特有のカーブを的確に捉えることができれば、ウェルドナットW1が適正にあるいは裏向きにセットされていることを判定できる。
【0043】
しかし、実際には、ウェルドナットW1のばらつき、溶接電流の条件等によりこのようなそれぞれの特有のカーブが時間軸方向に変動するため、それらを的確に捉えるためにはアルゴリズムが複雑になるという問題がある。そこで、本実施形態では、ステップS26により、D点、E点、F点、G点、H点、I点の6点における抵抗の平均値を求め、その平均値が所定範囲内にあるか否かをステップS28により判断している。
【0044】
なお、ウェルドナットW1が適正にセットされている場合、電極間抵抗の特性(○印)がΛ字状のカーブを示すのは、ウェルドナットW1の突起部Pjが溶融するまでは発熱により徐々に抵抗が増加し、その後、突起部Pjが溶融するとウェルドナットW1とワークW2とが密着するので両者間の抵抗が減少するためであると考えられる。
また、ウェルドナットW1が裏向きにセットされている場合、電極間抵抗の特性(▲印)がV字状のカーブを示すのは、裏向きにセットされることによりワークW2にほぼ面接触するウェルドナットW1の平坦側表面の微細な凹凸が、本通電の初期段階に溶融してワークW2に馴染むため、一旦は抵抗が減少するものの、その後のウェルドナットW1全体の発熱により徐々に抵抗が増加するためであると考えられる。
【0045】
ステップS28では、ステップS26により算出した電極間抵抗の平均値が所定範囲内にあるか否かを判断する。本実施形態では、例えば図4に示すように、ウェルドナットW1が適正にセットされた場合の平均値Mを中心に上限m1、下限m2が設定されている。そのため、図4に示す破線によるカーブの平均値Nのように、適正にセットされたときの上限m1、下限m2の範囲内にあると判断できない場合には、ウェルドナットW1は裏向きにセットされたものであるため、ステップS30に処理を移行する。そして、ステップS30により、異常を表示して溶接を中止する(S32)。
【0046】
他方、ステップS28により、電極間抵抗の平均が所定範囲内にあると判断できれば、ウェルドナットW1は適正にセットされたものであるから、ステップS34により本通電を続行し、所定の通電サイクル後にウェルドナットの溶接処理を終了する。
【0047】
以上説明したように本実施形態に係るウェルドナットのセット不良検出装置20によると、ウェルドナット溶接装置に用いられる電圧検出器24および制御装置30により、電極21、22間に予備通電したときの電極間電圧から電極間抵抗を検出し、制御装置30により、電極間抵抗が所定範囲内にあるか否かを判定する。これにより、電極間抵抗が所定範囲内、即ちウェルドナットW2が適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にある場合には、ウェルドナットW2は適正にセットされたものと制御装置30により判定することができ、当該所定範囲内にない場合には、ウェルドナットW2は適正にセットされたものではないと制御装置30により判定することができる。したがって、別工程を設けることなく、ウェルドナットW2のセット不良を確実に検出し得る効果がある。
【0048】
また、本実施形態に係るウェルドナットのセット不良検出方法によると、ウェルドナットの溶接工程中で、ステップS10で電極21、22間に予備通電し、ステップ12で予備通電時における電極間電圧から電極間抵抗を検出し、ステップ14で、電極間抵抗が所定範囲内にあるか否かを判定する。これにより、ステップ12で検出された電極間抵抗が所定範囲内、即ちウェルドナットW2が適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にある場合には、ウェルドナットW2は適正にセットされたものとステップ14で判定することができ、当該所定範囲内にない場合には、ウェルドナットW2は適正にセットされたものではないとステップ14で判定することができる。したがって、別工程を設けることなく、ウェルドナットW2のセット不良を確実に検出し得る効果がある。
【0049】
【発明の効果】
請求項1の発明では、電極間に予備通電し、電極間抵抗検出手段によりそのときの電極間電圧から電極間の抵抗を検出し、判定手段により、電極間抵抗検出手段により検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にあるか否かを判定する。これにより、電極間抵抗検出手段により検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にある場合には、ウェルドナットは適正にセットされたものと判定手段により判定することができ、当該範囲内にない場合には、ウェルドナットは適正にセットされたものではないと判定手段により判定することができる。したがって、別工程を設けることなく、ウェルドナットのセット不良を確実に検出し得る効果がある。
【0050】
請求項2の発明では、第1ステップで電極間に予備通電し、第2ステップで第1ステップの予備通電時における電極間電圧から電極間の抵抗を検出し、第3ステップでは、第2ステップで検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にあるか否かを判定する。これにより、第2ステップで検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にある場合には、ウェルドナットは適正にセットされたものと第3ステップで判定することができ、当該範囲内にない場合には、ウェルドナットは適正にセットされたものではないと第3ステップで判定することができる。したがって、別工程を設けることなく、ウェルドナットのセット不良を確実に検出し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るウェルドナットのセット不良検出装置を示す構成図である。
【図2】本実施形態に係る制御装置を示す構成図である。
【図3】本実施形態に係る制御装置によるウェルドナットの溶接処理およびセット不良判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る制御装置による電極間抵抗の特性例および電極間電流の波形例を示す説明図である。
【図5】ワークにプロジェクション溶接されるウェルドナットを示す説明図で、図5(A) はセット前の状態、図5(B) は適正にセットされて溶接された状態、をそれぞれ示すものである。
【図6】従来例によるウェルドナットのセット不良検出装置の構成、作動を示す説明図で、図6(A) は正常判定時の状態、図6(B) は異常判定時の状態、をそれぞれ示すものである。
【図7】適正にセットされていないウェルドナットを例示する説明図で、図7(A) は位置決めピンの横にずれてセットされている場合、図7(B) は縦向きにセットされている場合、図7(C) は裏向きにセットされている場合、をそれぞれ示すものである。
【符号の説明】
20 ウェルドナットのセット不良検出装置
21、22 電極
24 電圧検出器(電極間抵抗検出手段)
30 制御装置 (電極間抵抗検出手段、判定手段)
W1 ウェルドナット
W2 ワーク
S10 (第1ステップ)
S12 (第2ステップ)
S14 (第3ステップ)
Claims (2)
- ワークと、該ワークにセットされたウェルドナットとを相対向する電極で挟み、加圧した状態で両電極間に溶接電流を流すことにより、前記ワークにプロジェクション溶接されるウェルドナットのセット不良検出装置であって、
前記電極間に予備通電し、そのときの電極間電圧から電極間の抵抗を検出する電極間抵抗検出手段と、
前記電極間抵抗検出手段により検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とするウェルドナットのセット不良検出装置。 - ワークと、該ワークにセットされたウェルドナットとを相対向する電極で挟み、加圧した状態で両電極間に溶接電流を流すことにより、前記ワークにプロジェクション溶接されるウェルドナットのセット不良検出方法であって、
前記電極間に予備通電する第1ステップと、
前記第1ステップの予備通電時における電極間電圧から電極間の抵抗を検出する第2ステップと、
前記第2ステップにより検出された電極間抵抗がウェルドナットが適正にセットされたときの電極間抵抗の範囲内にあるか否かを判定する第3ステップと、
を含むことを特徴とするウェルドナットのセット不良検出方法。
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