JP3760280B2 - 直流機器及びこれを用いた車両 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直流機器に係り、特に、架線電流に含まれる交流成分の障害電流を抑制できる直流機器およびこれを用いた車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、鉄道車両の分野では、架線の直流電圧を電力変換器を用いて可変周波数・可変電圧の交流電圧に変換し、電力変換器の出力により誘導機を制御し、誘導機により、電気車を駆動する方式が広く普及している。
【0003】
この種の方式を採用した鉄道車両では、架線から電力変換器に供給された直流電圧の帰線電流を、電気車が走行する軌道に流すようになっており、軌道は、地上に設置される保安装置などが電気車の在線を検知する軌道回路として利用されている。このため、電力変換器の帰線電流に、軌道回路が利用する交流信号と同一の周波数成分である障害電流が含まれていると、軌道回路が誤動作する可能性がある。したがって、軌道を走行する電気車を誘導機によって駆動するに際しては、帰線電流に含まれる障害電流を除去する必要がある。なお、軌道に流れる帰線電流とフィルタリアクトルに流れる架線電流は同じ値であるため、以下では、特に区別が必要な場合を除いて架線電流で統一する。
【0004】
架線電流に含まれる障害電流は、架線と電力変換器との間に設けられたフィルタリアクトルやフィルタコンデンサにより除去することはできるが、分倍周軌道回路のように、低い周波数、例えば、25Hzまたは30Hzを用いる軌道回路に対応させるためには、フィルタリアトルのインダクタンスやフィルタコンデンサの容量を大きくする必要がある。しかし、これらの素子の容量を大きくすると重量が増加し、加減速性能が低下したり消費電力が増加したりするなどの問題が発生する。
【0005】
そこで、特開昭57−145503号公報に記載されているように、フィルタコンデンサの両端電圧に含まれる障害電流成分を検出し、この検出出力を基に誘導機の周波数を操作することにより、障害電流を減少させる方式が提案されている。
【0006】
また、フィルタコンデンサと並列に、直列接続された抵抗器とスイッチング素子を接続し、抵抗器と並列にダイオードを接続し、フィルタコンデンサの両端電圧を電圧検出器により検出し、電圧検出器の出力を関数発生器に入力し、この関数発生器から、フィルタコンデンサの電圧Ecfが第1の基準電圧E1未満の場合は0を出力し、第2の基準電圧E2以上の場合は1を出力し、E1以上E2未満の場合にはフィルタコンデンサの電圧Ecfと第1の基準電圧E1との差に比例した電圧を出力し、関数発生器の出力を比較器に入力するとともに、比較器に三角波発生器から、0〜1までの振幅を有する三角波を入力し、比較器で三角波と関数発生器の出力とを比較し、関数発生器の出力が三角波よりも大きいときにスイッチング素子を導通し、小さいときにはスイッチング素子を開放状態とし、比較器の出力によってスイッチング素子をオンオフ制御して、電力変換器をバイパスして流れる電流を制御するようにしたものが提案されている。
【0007】
この方式によれば、誘導機を減速する場合などにおいては、回転方向と逆方向のトルクを発生させることにより、誘導機の運動エネルギーが電気エネルギーに変換され、さらに電力変換器に入力された交流が直流に変換される。すなわち誘導機を回生運転するときには、電気エネルギーが電力変換器を介して架線に回生される。しかし、電気エネルギーを架線を介して直流電源に回生できないときには、フィルタコンデンサの電圧Ecfは増加する。フィルタコンデンサEcfが過大になると、電力変換器やフィルタコンデンサが破損することがある。
【0008】
そこで、このようなことを防止するために、関数発生器の出力が大きくなるように設定するとともに、スイッチング素子の導通期間を増やすことにより、抵抗器に流れる電流を増加させる制御が行われるようになっている。抵抗器に流れる電流が増加すると電気エネルギーが抵抗器によって消費されるため、フィルタコンデンサの電圧Ecfが高くなるのを抑制することができる。なお、ダイオードはスイッチング素子がオフする際に、抵抗器の誘導成分により流れる電流を還流させる働きを備えている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術のうち前者によれば、障害電流を減衰させることはできるが、誘導機の周波数を操作して架線電流を制御しているため、操作量である周波数と制御量である架線電流との間に制御遅れが存在し、また誘導機の動作状態によって特性が変化するため、障害電流を効果的に抑制することができず、しかも減衰量は限られたものとなる。
【0010】
一方、従来技術のうち後者のものには、フィルタコンデンサの電圧Ecfが高くなると、スイッチング素子がスイッチング動作している場合、すなわち、回生動作時には、架線電流に含まれる障害電流を抑制することはできるが、フィルタコンデンサの電圧Ecfが低くなる誘導機の力行動作中には、スイッチング素子がオフになるので障害電流を抑制することができない。
【0011】
本発明の課題は、架線電流に含まれる交流成分の障害電流を抑制できる直流機器およびこれを用いた車両を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、直流電源から集電器を介して導入した直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、前記集電器と前記電力変換器との間に設置したフィルタリアクトルと、前記フィルタリアクトルと前記電力変換器との間に設置され前記電力変換器に並列に接続されたフィルタコンデンサとを有する直流機器において、前記フィルタコンデンサと並列に接続された抵抗器とスイッチング素子の直列回路と、前記電力変換器の直流側の電流に重畳した交流成分を検出し、検出した該交流成分を前記抵抗器及び前記スイッチング素子に流れる電流で相殺するスイッチング信号を生成して前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御器とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、直流電源から集電器を介して導入した直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、前記集電器と前記電力変換器との間に設置したフィルタリアクトルと、前記フィルタリアクトルと前記電力変換器との間に設置され前記電力変換器に並列に接続されたフィルタコンデンサとを有する直流機器において、前記フィルタコンデンサと並列に接続された抵抗器とスイッチング素子の直列回路を有し、前記スイッチング素子は、前記フィルタコンデンサの電圧の大きさ又は力行回生状態によらず常にスイッチング動作されることを特徴とする。
【0014】
前記各直流機器において、前記スイッチング素子は、前記フィルタコンデンサの電圧が第1の設定値以下で、かつ前記第1の設定値より小さい第2の設定値以上の場合に、導通状態とされるように構成することができる。
【0015】
前記各直流機器において、前記フィルタコンデンサの両端電圧から、前記直流側の電流に重畳した交流成分を検出する交流分検出器を有して構成できる。
【0016】
前記各直流機器において、前記フィルタリアクトルの両端電圧から、前記直流側の電流に重畳した交流成分を検出する交流分検出器を有して構成できる。
【0017】
また、本発明に係る車両は、車輪に接続された電動機と、前記電動機に接続され、直流電源から集電器を介して導入した直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、前記集電器と前記電力変換器との間に設置したフィルタリアクトルと、前記フィルタリアクトルと前記電力変換器との間に設置され前記電力変換器に並列に接続されたフィルタコンデンサと、前記フィルタコンデンサと並列に接続された抵抗器とスイッチング素子の直列回路と、前記電力変換器の直流側の電流に重畳した交流成分を検出し、検出した該交流成分を前記抵抗器及び前記スイッチング素子に流れる電流で相殺するスイッチング信号を生成して前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御器とを有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る車両は、前記スイッチング制御器に代えて、前記スイッチング素子を、前記フィルタコンデンサの電圧の大きさ又は力行回生状態によらず常にスイッチング動作されることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、電力変換器の直流側の電流に重畳した交流成分を検出し、検出した交流成分をスイッチング素子に流れる電流で相殺するようにしたため、架線電流に含まれる交流成分の障害電流を抑制することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態を示す直流機器のブロック構成図である。図1において、直流電源(1500V)1には架線2と軌道3が接続されており、架線2には、直流電源1からの直流の電気量を導入する集電器4が摺動自在に配置されている。集電器4の出力側にはフィルタリアクトル5が接続されており、フィルタリアクトル5の出力側にはフィルタコンデンサ6、電力変換器8などが接続されている。フィルタコンデンサ6は電力変換器8の直流入力側に並列に接続されており、フィルタコンデンサ6には直流電源1の出力による直流の電気量として直流電圧を検出する電圧検出器7が設置されている。さらにフィルタコンデンサ6と並列に、互いに直列に接続された抵抗器10とスイッチング素子12が並列に接続されており、抵抗器10の両端にはダイオード11が接続されている。スイッチング素子12としては、例えば、IGBTが用いられている。
【0028】
電力変換器8は、複数のスイッチング素子と、各スイッチング素子に逆並列接続されたダイオードなどを備え、スイッチング信号に応答して直流電圧を可変周波数・可変電圧の交流電圧に変換し、変換された交流電圧を4台の誘導機9に出力するようになっている。各誘導機9は車輪に連結されており、誘導機9の駆動により車輪が回転駆動されることで、車両が軌道3に沿って走行するように構成されている。
【0029】
スイッチング素子12、抵抗器10、ダイオード11は、電気機器としての電力変換器8をバイパスして流れる電流を制御するための制御系の1要素として構成されており、本実施形態における制御系には、スイッチング素子12のスイッチング動作を制御するスイッチング制御器として、三角波発生器13、関数発生器14、比較器15、ハイパスフィルタ101、バイアス発生器102、加算器103、104が設けられている。
【0030】
三角波発生器13は、0〜1までの振幅を有する三角波を比較器15に出力するようになっている。関数発生器14は電圧検出器7の検出による電圧に応じた信号を加算器104に出力するようになっている。この関数発生器14は、図2の1点鎖線の特性で示すように、電圧検出器7の検出によるフィルタコンデンサ電圧Ecfの値が第1の基準電圧E1以下のときには0を出力し、第2の基準電圧E2以上のときには1の信号を出力し、フィルタコンデンサ電圧EcfがE1以上E2未満の場合には、フィルタコンデンサ電圧EcfとE1との差に比例する振幅(0〜1)の信号を出力するようになっている。
【0031】
一方、ハイパスフィルタ101は、例えば、遮断周波数として数100Hzの特性を有し、フィルタコンデンサ電圧Ecfに重畳した交流分を検出する交流分検出器として構成されており、ハイパスフィルタ101からは交流成分の信号(25Hz、30Hzの交流信号)が加算器103に出力されるようになっている。バイアス発生器102は、直流のバイアス電圧Ebを加算器103に出力するようになっている。加算器103は、ハイパスフィルタ101の出力による交流分とバイアス電圧Ebとを加算した信号を加算器104に出力するようになっている。加算器104は関数発生器14の出力と加算器103の出力とを加算した信号を比較器15に出力するようになっている。比較器15においては、加算器104の出力電圧と三角波発生器13の出力による三角波とが比較され、この比較結果に応じてパルス幅が変化するスイッチング信号がスイッチング素子12に出力されるようになっている。
【0032】
この場合、比較器15においては、電力変換器8に供給される直流電流Idcに重畳した交流分とスイッチング素子12に流れる抵抗電流Ibに重畳した交流分とが相殺関係を保つようなスイッチング信号が生成され、このスイッチング信号によってスイッチング素子12がスイッチング動作され、このスイッチング素子12のスイッチング動作により、障害電流の原因となる障害電流の交流分が相殺されるようになっている。
【0033】
以下、本実施形態の具体的動作について説明する。まず、関数発生器14の出力が0の場合、すなわち、フィルタコンデンサ電圧Ecfが関数発生器14における第1の基準電圧E1以下である場合について述べる。
【0034】
電力変換器8に流れる直流電流Idcに交流成分が含まれている場合、この交流成分はフィルタリアクトル5とフィルタコンデンサ6で構成されるフィルタ回路により減衰し、その一部が架線電流Isの交流分となり、この交流分が軌道回路に障害を与える障害電流となる。このとき、フィルタコンデンサ電圧Ecfに着目すると、直流電流Idcが交流分により減少するときには、フィルタコンデンサ電圧Ecfは増加する。この増加分は交流成分であるため、ハイパスフィルタ101で減衰することなく、ハイパスフィルタ101を通過して加算器103に加算され、加算器104の出力が増加する。加算器104の出力は、三角波発生器13の出力による三角波と比較器15で比較され、比較器15の出力によってスイッチング素子12がスイッチング動作され、抵抗器10に流れる電流の期間が決定される。
【0035】
このため、加算器104の出力が増加した場合、抵抗器10に流れる電流の期間が増加すると、図3に示すように、抵抗器10に平均的に流れる抵抗電流Ibが増加し、交流成分によって減少する直流電流Idcを相殺することができ、障害電流を抑制することができる。
【0036】
一方、交流成分によって直流電流Idcが増加する場合は、フィルタコンデンサ電圧Ecfが減少し、交流成分を検出するハイパスフィルタ101の出力が減少する。ハイパスフィルタ101の出力が減少すると、そのままでは、加算器104の出力が負になり、スイッチング素子12の導通期間が負になる恐れがある。しかし、本実施形態においては、加算器104の出力が負の値とならないように、加算器103にはバイアス電圧Ebが加算されている。これにより、直流電流Idcが増加した場合でも、直流電流Idcの交流分を相殺する交流成分が抵抗電流Ibとして流れるため、障害電流を抑制することができる。
【0037】
次に、関数発生器14の出力が0より大きい場合について述べる。この場合、第1の基準電圧E1とフィルタコンデンサ電圧Ecfとの差に比例する量の信号が関数発生器14から出力されるため、直流電流Idcが減少し、フィルタコンデンサ電圧Ecfが増加したときには、入力電圧の増加に伴って、関数発生器14の出力は増加する。このとき、フィルタコンデンサ電圧Ecfに重畳した交流成分の増加に伴って、ハイパスフィルタ101の出力も増加するとともに加算器103の出力も増加する。すなわち、関数発生器14の出力とフィルタコンデンサ電圧Ecfの増加を抑制するように動作する。したがって、直流電流Idcの交流分を相殺する交流成分が抵抗電流Ibとして流れ、障害電流を抑制することができる。また直流電流Idcが増加したときも同様の動作により障害電流を抑制することができる。
【0038】
このように、本実施形態においては、障害電流の原因となる直流電流Idcに含まれる交流成分が、フィルタコンデンサ電圧Ecfを変動させることに着目してスイッチング素子12をスイッチング動作させることで、障害電流を抑制することができる。
【0039】
なお、関数発生器14の出力が1近傍になり、加算器104の出力が1以上になったときには、スイッチング素子12のオフ期間を0より小さくすることができないため、直流電流の増加を相殺することはできない。
【0040】
このため、加算器104の出力が1以上にならないように、抵抗器10を選定する必要がある。また加算器104の出力が1近傍になった場合、電力変換器8の回生電流を抑制するように、電力変換器8を制御してもよい。
【0041】
このように、本実施形態によれば、フィルタコンデンサ電圧Ecfの大きさや力行回生状態によらず、スイッチング素子12を常にスイッチング動作させることにより、障害電流を抑制することができる。
【0042】
なお、従来例では、関数発生器の出力が0となる第1の基準電圧E1以下では、関数発生器の出力が三角波発生器の出力よりも小さくなるため、スイッチング素子は導通状態とならない。
【0043】
これに対して本実施形態の場合には、関数発生器14の出力およびハイパスフィルタ101の出力がともに0になった場合でも、バイアス発生器102の出力によるバイアス電圧Ebにより、三角波発生器13から出力される三角波の1周期に1度は、スイッチング素子12が導通状態になる。
【0044】
ただし、スイッチング素子12が過電圧で破損することを防止するために、フィルタコンデンサ電圧Ecfが第1の設定電圧より大きくなった場合、動作を停止する。すなわち、スイッチング素子12は導通状態とはならない。また、フィルタコンデンサ電圧Ecfが第1の設定電圧より小さい第2の設定電圧より小さくなった場合、直流電源1や架線2に異常が発生すた可能性が高いため、動作を停止する。それ以外の場合、すなわち、フィルタコンデンサ電圧Ecfが第1の設定電圧以下で、かつ第1の設定電圧より小さい第2の設定電圧以上の場合には、三角波発生器13の1周期に1度は、スイッチング素子が導通状態になる。
【0045】
また、三角波発生器13の周期は要求される応答から少なくとも1秒以下に設定することが望ましい。よって、フィルタコンデンサ電圧Ecfが第1の設定電圧以上、かつ第2の設定電圧以下の場合には、少なくとも1秒に1度はスイッチング素子12が導通状態となり、抵抗器10に電流が流れる。
【0046】
(実施形態2)
次に、本発明の第2実施形態を図4にしたがって説明する。本実施形態は、架線電流Isを検出する電流検出器201を設け、電流検出器201の出力をハイパスフィルタ202に入力し、ハイパスフィルタ202により直流分を除去し、直流分の除去された架線電流、すなわち架線電流Isに含まれる交流分を減算器203に入力し、減算器203においてバイアス電圧Ebからハイパスフィルタ202の出力を減算し、この減算結果を加算器104に出力するようにしたものであり、他の構成は図1のものと同様である。
【0047】
すなわち、前記実施形態では、障害電流の原因となる直流電流Idcに含まれる交流成分が、フィルタコンデンサ電圧Ecfを変動させることに着目して障害電流を抑制しているのに対して、本実施形態では、架線電流Isを電流検出器201によって直接検出し、架線電流Isに含まれる交流分をハイパスフィルタ202から出力し、バイアス電圧Ebから交流分を減算するようにしたものである。
【0048】
本実施形態においては、架線電流Isの交流分が増加するときには、抵抗電流Ibが減少し、抵抗電流Ibの減少に伴って架線電流Isの増加が抑制されるため、障害電流を抑制することができる。また架線電流に含まれる交流成分が減少したときには、抵抗電流Ibが増加することで、障害電流の発生を抑制することができる。
【0049】
本実施形態においては、関数発生器14の出力は、加算器14の出力が1以上にならなければ、実施形態1と同様に、障害電流を抑制する効果を有するために、上記動作による障害電流の抑制効果を阻害することはない。
【0050】
(実施形態3)
次に、本発明の第3実施形態を図5にしたがって説明する。本実施形態は、図1に示すバイアス発生器102、加算器103を削除し、関数発生器14の代わりに、関数発生器301を設けたものであり、他の構成は図1のものと同様である。
【0051】
関数発生器301は、図2の実線の特性で示すように、フィルタコンデンサ電圧Ecfが第1の基準電圧E1以下の場合、関数発生器301の出力はバイアス電圧Ebとなり、フィルタコンデンサ電圧Ecfが第2の基準電圧E2以上のときには1を出力し、E1以上E2未満の場合にはEcfとE1との差に比例する振幅の信号であってバイアス電圧Ebが加算された信号を出力するようになっている。すなわち、関数発生器301の特性は、出力の下限値がバイアスEbに設定されている。これにより、加算器104の出力が負になるのを防止することができ、バイアス発生器102、加算器103を用いることなく、常にスイッチング素子12をスイッチング動作させることができる。
【0052】
本実施形態によれば、バイアス発生器102、加算器103を用いることなく、フィルタコンデンサ電圧Ecfの大きさや力行回生状態によらず、スイッチング素子12を常にスイッチング動作させることにより、障害電流を抑制することができる。
【0053】
(実施形態4)
次に、本発明の第4実施形態を図6にしたがって説明する。本実施形態は、ハイパスフィルタ101の代わりにハイパスフィルタ202を用い、架線電流Isを検出する電流検出器201の出力をハイパスフィルタ202に入力し、ハイパスフィルタ202の出力の符号を合わせるために、加算器104の代わりに減算器302を用いたものであり、他の構成は図5のものと同様である。
【0054】
本実施形態においては、関数発生器301の特性は、出力の下限値がバイアス電圧Ebに設定されているため、バイアス発生器102、加算器103を用いることなく、スイッチング素子12を常にスイッチング動作させることができるとともに、障害電流の発生を抑制することができる。
【0055】
本実施形態によれば、バイアス発生器102、加算器103を用いることなく、フィルタコンデンサ電圧Ecfの大きさや力行回生状態によらず、スイッチング素子12を常にスイッチング動作させることにより、障害電流を抑制することができる。
【0056】
前記各実施形態においては、電気機器として電力変換器8を用いたものについて述べたが、電気機器としては、直流によって動作する機器であれば、他の機器であっても、電気機器に入力される障害電流を抑制することができる。
【0057】
また、第1実施形態および第2実施形態においては、回生時におけるフィルタコンデンサ電圧Ecfの上昇を抑制するために、関数発生器14および加算器104を備えているが、障害電流の抑制のみを目的とする場合、関数発生器14および加算器104を省略することも可能である。この場合、抵抗器10で消費される電力が小さくなるため、小型の抵抗器を用いることができる。
【0058】
また、第2実施形態および第4実施形態においては、電流検出器201を用いて架線電流Isを検出しているが、電流検出器201を用いる代わりに、フィルタリアクトル5の両端の電圧を検出する電圧検出器を用い、この電圧検出器を交流分検出器として用いることでも、障害電流を抑制することができる。この場合、フィルタリアクトル5の両端電圧を交流分として検出しており、しかも、この検出電圧には直流分が含まれていないため、ハイパスフィルタ202を省略することができる。
【0059】
さらに前記各実施形態においては、直流電源1、架線2、軌道3を除くものを直流機器として車両に搭載し、電力変換器8に接続された誘導機9により車輪を駆動することもできる。
【0060】
このように、各実施形態によれば、フィルタリアクトル5やフィルタコンデンサ6を大型化することなく、また誘導機9の力行・回生動作によらず、架線電流Isに含まれる障害電流を効果的に抑制することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、フィルタリアクトルやフィルタコンデンサを大型化することなく、直流電源から供給される直流の電気量に重畳した交流成分を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す直流機器のブロック構成図である。
【図2】関数発生器の特性を説明するための特性図である。
【図3】抵抗電流と直流電流との関係を説明するための波形図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す直流機器のブロック構成図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す直流機器のブロック構成図である。
【図6】本発明の第4実施形態を示す直流機器のブロック構成図である。
【符号の説明】
1 直流電源
2 架線
3 軌道
4 集電器
5 フィルタリアクトル
6 フィルタコンデンサ
7 電圧検出器
8 電力変換器
9 誘導機
10 抵抗器
12 スイッチング素子
13 三角波発生器
14 関数発生器
15 比較器
101 ハイパスフィルタ
102 バイアス発生器
103、104 加算器
Claims (8)
- 直流電源から集電器を介して導入した直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、前記集電器と前記電力変換器との間に設置したフィルタリアクトルと、前記フィルタリアクトルと前記電力変換器との間に設置され前記電力変換器に並列に接続されたフィルタコンデンサとを有する直流機器において、前記フィルタコンデンサと並列に接続された抵抗器とスイッチング素子の直列回路と、前記電力変換器の直流側の電流に重畳した交流成分を検出し、検出した該交流成分を前記抵抗器及び前記スイッチング素子に流れる電流で相殺するスイッチング信号を生成して前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御器とを有することを特徴とする直流機器。
- 直流電源から集電器を介して導入した直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、前記集電器と前記電力変換器との間に設置したフィルタリアクトルと、前記フィルタリアクトルと前記電力変換器との間に設置され前記電力変換器に並列に接続されたフィルタコンデンサとを有する直流機器において、前記フィルタコンデンサと並列に接続された抵抗器とスイッチング素子の直列回路を有し、前記スイッチング素子は、前記フィルタコンデンサの電圧の大きさ又は力行回生状態によらず常にスイッチング動作されることを特徴とする直流機器。
- 請求項1又は2記載の直流機器において、前記スイッチング素子は、前記フィルタコンデンサの電圧が第1の設定値以下で、かつ前記第1の設定値より小さい第2の設定値以上の場合に、導通状態とされることを特徴とする直流機器。
- 請求項1又は2記載の直流機器において、前記フィルタコンデンサの両端電圧から、前記直流側の電流に重畳した交流成分を検出する交流分検出器を有することを特徴とする直流機器。
- 請求項1又は2記載の直流機器において、前記フィルタリアクトルの両端電圧から、前記直流側の電流に重畳した交流成分を検出する交流分検出器を有することを特徴とする直流機器。
- 請求項1又は2記載の直流機器において、前記電力変換器は、車輪を駆動する電動機と接続されることを特徴とする直流機器。
- 車輪に接続された電動機と、前記電動機に接続され、直流電源から集電器を介して導入した直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、前記集電器と前記電力変換器との間に設置したフィルタリアクトルと、前記フィルタリアクトルと前記電力変換器との間に設置され前記電力変換器に並列に接続されたフィルタコンデンサと、前記フィルタコンデンサと並列に接続された抵抗器とスイッチング素子の直列回路と、前記電力変換器の直流側の電流に重畳した交流成分を検出し、検出した該交流成分を前記抵抗器及び前記スイッチング素子に流れる電流で相殺するスイッチング信号を生成して前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御器とを有することを特徴とする車両。
- 車輪に接続された電動機と、前記電動機に接続され、直流電源から集電器を介して導入した直流電力を交流電力に変換する電力変換器と、前記集電器と前記電力変換器との間に設置したフィルタリアクトルと、前記フィルタリアクトルと前記電力変換器との間に設置され前記電力変換器に並列に接続されたフィルタコンデンサと、前記フィルタコンデンサと並列に接続された抵抗器とスイッチング素子の直列回路とを有し、前記スイッチング素子は、前記フィルタコンデンサの電圧の大きさ又は力行回生状態によらず常にスイッチング動作されることを特徴とする車両。
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