JP3760171B1 - 絶縁被覆電気部品、絶縁被覆電線、電気部品の導通方法及びコイルの製造方法 - Google Patents

絶縁被覆電気部品、絶縁被覆電線、電気部品の導通方法及びコイルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 導通作業が容易でコスト上昇の問題がなく、耐熱性の点でも良好な絶縁被覆電気部品を提供する。
【解決手段】 導電性の表面を有する部品本体を覆う絶縁被覆は、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との複合樹脂より成る。複合樹脂は、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、シリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されたものであり、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率は5〜30%である。絶縁被覆は、所定温度に所定時間加熱されて半硬化状態であり、室温から80℃の範囲でタックフリー又は非融着状態であるとともに、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための加熱の際に他の導電部に対して部品本体が短絡可能となるよう融解する融点を有し、他の導電部へのハンダ付け又は溶接ための熱量を超える熱量で加熱された際に本硬化する。
【選択図】 図1

Description

本願の発明は、絶縁被覆を有する電気部品に関するものであり、そのような絶縁被覆の性質及び他の導電部に対する導通のさせ方に関するものである。また、本願の発明は、特にコイルの製造に関するものである。
各種製品に搭載されている各種電気部品は、多くの場合、表面の保護や所定の電気特性を確保する目的で、表面に絶縁被覆が形成されている。その一方、電気部品を実装する場合等、他の導電部に対して導通させる場合には、絶縁被覆を部分的に除去する必要がある。絶縁被覆の除去は、ハンダ付け等の際の熱により絶縁被覆を融解させたり破断させたりして行う場合の他、ニッパー等の工具を用いて除去する場合もある。
尚、本願において「電気部品」とは、電子部品と呼ばれるものも含む概念であり、弱電、強電を問わない。
特開昭50−22272号公報
上述したような電気部品において、絶縁被覆の特性に起因して一定の問題が生じている。この点を、コイルの製造を例にして説明する。
コアに電線を巻いて構成したコイルは、トランスやリアクタ等として知られており、各種モータも広い意味ではコイルである。コイルは、コアと、コアに巻かれた絶縁被覆電線とから成る。電線は、電線本体(心線)と、電線本体を覆う絶縁被覆とから成る。
コイルは、このように電線をコアに巻いた後、コアの外面に設けられた電極に電線の端部を導通させる。この場合の導通は、電線の端部を電極にハンダ付け又は溶接して短絡固定することである。
電気部品としてのコイルはコイルメーカーから出荷される。コイルを製品に組み込む製品メーカーで、コイルが実装される。実装は、プリント基板上に形成された回路に電極をハンダ付けすることで行われる。
上記コイルにおいて、絶縁被覆は、コアに巻かれた状態で電線同士が短絡しないよう充分な絶縁性を有することが必要である。それとともに、コアに巻かれた状態でも割れたり欠けたりしないよう、充分な可撓性(又は柔軟性)を有することも必要である。
尚、コアへの巻線後、巻かれた電線のズレ等を防止するため、巻かれた電線を固定する場合もある。固定方法としては、ワニス塗布、テーピングによる固定、又はセメントワイヤー法(通称)等による。セメントワイヤー法とは、電線の被覆として通常の絶縁用の第一層の上に固着用の第二層を積層した構造とし、巻線後に加熱して第二層を融解させて固着する方法である。この方法は、例えば特開昭50−22272号公報に開示されている。
このようなコイルにおいて、電線としては主にポリウレタン被覆電線(通常、UEW)が使用されている。ポリウレタン被覆電線は、被覆のポリウレタンがハンダ付けや溶接等の際の熱により融解して除去できるので、ハンダ付けや溶接等の作業が容易であるという長所がある。その反面、樹脂としての耐熱性が低いことに起因した短所もある。例えば、コイルをプリント基板に実装する場合等に、全体を加熱させてハンダをリフローさせる場合が多い。この際、最近では、鉛フリーのハンダ材を使用する関係からリフローの温度が高くなる傾向にあり、リフロー時の高温がポリウレタンの耐熱性を越えてしまうこともある。また、携帯電話やノートパソコン等の機器に搭載されるコイルは、非常に小型のものが多くなってきている。このような小型のコイルの場合でも所定の巻線数を確保しなければならないので、結果的に電線の径が非常に小さくなってきている(極細線化)。極細線化すると、自己発熱(ジュール熱)時の熱容量が小さくなるので、より高い耐熱性が要求されるが、ポリウレタン被覆電線の場合、そのような耐熱性に応えられないこともある。
このような問題のため、耐熱性を向上させたポリイミド被覆の電線が使用されることもある。しかしながら、ポリイミド被覆電線の場合、ハンダ付けや溶接時の高温のみでは被覆が除去できないので、事前にニッパー等で剥離する必要がある。このような作業は面倒でコスト上昇の原因となる他、上記のように極細線化していくと、電線本体(心線)を残して絶縁被覆だけを剥離することは困難になることもある。
さらに、従来の方法において、巻線後に巻線状態を固定させる必要がある場合、ワニス塗布やテーピングといった作業も手間が掛かり、コスト上昇の原因となる。また、セメントワイヤー法の場合、加熱・冷却するだけで良いのでコスト上昇はそれほどではないが、固着用の第二層に熱可塑性樹脂を使用したものが多く、製造後に何らかの原因で温度上昇した際(例えばハンダリフロー時)に第二層が融解してしまう問題がある。
本願の発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、他の導電部に対するハンダ付け等の導通を必要とする絶縁被覆電気部品において、導通作業が容易でコスト上昇の問題がなく、また耐熱性の点でも良好な絶縁被覆電気部品を提供する技術的意義を有する。
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、導電性の表面を有する部品本体と、部品本体を覆う絶縁被覆とから成る絶縁被覆電気部品であって、
絶縁被覆は、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂との複合樹脂より成るものであってエポキシ樹脂をシリコーン樹脂で変性したシリコーン変性エポキシ樹脂を含む複合樹脂より成るとともに、所定温度に所定時間加熱されることで半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、
複合樹脂は、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、同じくシリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されたものであり、
絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して部品本体が短絡可能となるよう融解する融点を有するものであり、
絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接ための熱量を超える熱量で加熱された際に本硬化するものであり、
絶縁被覆は、室温から80℃の範囲においてタックフリー又は非融着状態を維持するものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記部品本体は、可撓性又は柔軟性を有するものであり、前記絶縁被覆は、前記本硬化されるまでに可撓性又は柔軟性を有しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2の構成において、前記複合樹脂は、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の範囲であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、導電性の表面を有する電線本体と、電線本体を覆う絶縁被覆とから成る絶縁被覆電線であって、
絶縁被覆は、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂との複合樹脂より成るものであってエポキシ樹脂をシリコーン樹脂で変性したシリコーン変性エポキシ樹脂を含む複合樹脂より成るとともに、所定温度に所定時間加熱されることで半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、
複合樹脂は、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、同じくシリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されたものであり、
絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して電線本体が短絡可能となるよう融解する融点を有するものであり、
絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接ための熱量を超える熱量で加熱された際に本硬化するものであり、
絶縁被覆は、室温から80℃の範囲においてタックフリー又は非融着状態を維持するものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項4の構成において、前記電線本体は、可撓性又は柔軟性を有するものであり、前記絶縁被覆は、前記本硬化されるまで可撓性又は柔軟性を有しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項4又は5の構成において、前記複合樹脂は、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の範囲であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、電気部品を構成する表面が導体である部品本体を他の導体部に導通させる電気部品の導通方法であって、
部品本体に絶縁被覆を形成する被覆工程と、
形成された絶縁被覆を再加熱して部分的に融解させながら他の導電部と電気部品とを導通させる導通工程と
を含む方法であり、
被覆工程は、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂との複合樹脂より成るものであってエポキシ樹脂がシリコーン樹脂で変性されたシリコーン変性エポキシ樹脂を含む複合樹脂より成るものを部品本体に塗布した後に所定温度に所定時間加熱して半硬化状態としてタックフリー又は非融着状態とする工程であり、
複合樹脂は、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、同じくシリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されたものであり、
絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して前記部品本体が短絡可能となるよう融解する融点を有するものであり、
絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接ための熱量を超える熱量で加熱された際に本硬化するものであり、
さらに、導通工程の後、前記導通のための再加熱の際の熱量を超える熱量で絶縁被覆を加熱することで絶縁被覆を本硬化させる工程が行われる方法であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項7の構成において、前記複合樹脂は、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の範囲であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、コアと、コアに巻かれた絶縁被覆電線とから成るコイルを製造するコイルの製造方法であって、
絶縁被覆電線は、導電性の表面を有する電線本体と、電線本体を覆う絶縁被覆とから成り、絶縁被覆は、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂との複合樹脂より成るものであってエポキシ樹脂がシリコーン樹脂で変性されたシリコーン変性エポキシ樹脂を含む複合樹脂より成るとともに、所定温度に所定時間加熱されることで半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、
複合樹脂は、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、同じくシリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されたものであり、
この絶縁被覆電線をコアに所定の長さ巻き付ける巻き付け工程と、
絶縁被覆電線の端部を他の導電部に対して導通させる導通工程と
を含む方法であり、
導通工程では、端部に存在する絶縁被覆を再加熱して融解させせながら導通が行われ、
巻き付け工程及び導通工程の後、導通工程において前記絶縁被覆を融解させるのに必要な熱量を超える熱量で加熱して前記絶縁被覆を本硬化させる本硬化工程が行われる方法であり、
前記半硬化状態の絶縁被覆は巻き付け工程において破損が生じないよう可撓性又は軟性を有しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、前記請求項7の構成において、前記複合樹脂は、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の範囲であるという構成を有する。
以下に説明する通り、請求項1記載の絶縁被覆電気部品によれば、絶縁被覆が半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、且つ、ハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して部品本体が短絡可能となるよう融解するので、ハンダ付け又は溶接の作業が容易である。また、シリコーン変性エポキシ樹脂を含有させることで可撓性や柔軟性を付与しているため、本硬化後の耐熱性も良好である。さらに、未反応のシリコーン樹脂の残留に起因した被着性の悪化の問題もない。
また、請求項2記載の絶縁被覆電気部品によれば、上記請求項1の発明の効果に加え、部品本体が可撓性又は柔軟性を有し、絶縁被覆が本硬化されるまでに可撓性又は柔軟性を有しているので、可撓性又は柔軟性が要求される部品に適用されると好適である。
また、請求項3記載の絶縁被覆電気部品によれば、上記請求項1又は2の発明の効果に加え、エポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%であるので、絶縁被覆の可撓性や耐熱性がより充分なものとなるとともに、部品本体に対する被着性もより充分なものとなる。
また、請求項4記載の絶縁被覆電線によれば、絶縁被覆が半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、且つ、ハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して電線本体が短絡可能となるよう融解するので、ハンダ付け又は溶接の作業が容易である。また、シリコーン変性エポキシ樹脂を含有させることで可撓性や柔軟性を付与しているため、本硬化後の耐熱性も良好である。さらに、未反応のシリコーン樹脂の残留に起因した被着性の悪化の問題もない。
また、請求項5記載の絶縁被覆電線によれば、上記請求項4の発明の効果に加え、電線本体が可撓性又は柔軟性を有し、絶縁被覆が本硬化されるまでに可撓性又は柔軟性を有しているので、コイル用電線のような可撓性又は柔軟性が要求される電線の場合特に好適なものとなる。
また、請求項6記載の絶縁被覆電線によれば、上記請求項4又は5の発明の効果に加え、エポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%であるので、絶縁被覆の可撓性や耐熱性がより充分なものとなるとともに、電線本体に対する被着性もより充分なものとなる。
また、請求項7記載の電気部品の導通方法によれば、絶縁被覆が半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、且つ、ハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して部品本体が短絡可能となるよう融解するので、ハンダ付け又は溶接の作業が容易である。また、シリコーン変性エポキシ樹脂を含有させることで可撓性や柔軟性を付与しているため、本硬化後の耐熱性も良好である。さらに、未反応のシリコーン樹脂の残留に起因した被着性の悪化の問題もない。
また、請求項8記載の電気部品の導通方法によれば、上記請求項7の発明の効果に加え、エポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%であるので、絶縁被覆の可撓性や耐熱性がより充分なものとなるとともに、電線本体に対する被着性もより充分なものとなる。
また、請求項9記載のコイルの製造方法によれば、絶縁被覆が半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、且つ、ハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して電線本体が短絡可能となるよう融解するので、ハンダ付け又は溶接の作業が容易である。また、シリコーン変性エポキシ樹脂を含有させることで可撓性や柔軟性を付与しているため、本硬化後の耐熱性も良好である。さらに、半硬化状態の絶縁被覆は破損が生じないよう可撓性又は柔軟性を有するので、信頼性も高い。さらに、未反応のシリコーン樹脂の残留に起因した被着性の悪化の問題もない。
また、請求項10記載のコイルの製造方法によれば、上記請求項9の発明の効果に加え、エポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%であるので、絶縁被覆の可撓性や耐熱性がより充分なものとなるとともに、電線本体に対する被着性もより充分なものとなる。
以下、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
まず、絶縁被覆電線の発明の実施形態について説明する。実施形態の絶縁被覆電線は、電線本体と、電線本体を覆う絶縁被覆とから成る。電線本体は、銅等から成り、直径は電線の用途により異なるが、前述したコイル用の場合、0.02〜0.1mm程度である。
本実施形態の絶縁被覆電線の特徴点は、絶縁被覆の性状や特性にある。一つめの大きな特徴点は、絶縁被覆が熱硬化性樹脂より成るものであり、且つ、半硬化状態となっている点である。
熱硬化性樹脂には硬化剤が添加され、溶剤又は可塑剤を使用して適当な粘度のワニスとされる。適当な粘度とは、電線本体の表面に被着させ易い粘度ということである。電線本体への被着は、例えば、ワニスを溜めた容器の中に電線本体を通すことで行われる。ワニスを電線本体に被着させて電線本体を覆った後、加熱によって溶剤又は可塑剤を蒸発させながらワニス中のエポキシ樹脂の硬化反応を開始させる。加熱温度及び加熱時間を適宜設定することで、硬化反応は途中で停止し、いわゆる半硬化(Bステージとも呼ばれる)の状態となる。
半硬化とは、例えば日刊工業新聞社発行「プラスチック材料講座〔1〕エポキシ樹脂」300頁にも記載されているが、可溶、可融の状態の固体にまで反応させて反応を停止させることである。エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂では、架橋重合即ち重合反応とともに架橋反応が進行するが、半硬化は、架橋反応が部分的なままで停止している状態(部分架橋)ということもできる。尚、本実施形態における「半硬化」は、後述のようにハンダ付け又は溶接時の熱で融解する可融性は必要とするが、「可溶」であることは必ずしも必要としない。
本実施形態の絶縁被覆電線の別の特徴点は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して部品本体が短絡可能となるよう融解する融点を有することである。絶縁被覆電線のハンダ付けや溶接の温度は、一般的には150℃〜460℃である。従って、絶縁被覆の融点は、この範囲の温度より低い温度となっている。尚、絶縁被覆は、後述のように複数の材料から成るので、融点はいわゆる共融点である。また、この場合の融点は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための融解であるから、厳密な意味の融点より低い場合もあり得る。即ち、ある程度軟化した絶縁被覆を例えばハンダごてでより分けて電線本体を露出できるようにできれば足りる場合もあり、この場合は厳密な意味の融点よりも低い場合もある。
本実施形態の絶縁被覆電線のさらに別の特徴点は、熱硬化性樹脂が半硬化であるにも関わらず、タックフリー又は非融着状態である点である。タックフリーとは、「指触乾燥」とも呼ばれおり、人の指で触ってもベトつかないことである。ベトつくとは、触った指に材料が付着するかどうかである。「非融着状態」とは、材料同士を接触させた際に融着してしまわない状態ということである。
本実施形態の絶縁被覆電線のさらに別の特徴点は、熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂とシリコーン樹脂との複合樹脂の形で与えられている点である。そして、この複合樹脂は、シリコーン変性エポキシ樹脂を含む。シリコーン変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の官能基にシリコーン樹脂を反応させて変性したエポキシ樹脂である。この点は、絶縁特性、耐熱性、可撓性(又は柔軟性)、電線本体への被着性(造膜性)等を考慮したものである。
エポキシ樹脂は、半硬化状態での電線本体への被着性の点では良好であり、絶縁特性や耐熱性の点でも優れているが、可撓性、特に本硬化後の可撓性の点で多少難がある。一方、シリコーン樹脂は、可撓性の点では問題はなく絶縁特性や耐熱性の点でも良好である。しかし、シリコーン樹脂のみで本実施形態のように半硬化状態の絶縁被覆を形成しようとすると、電線本体に充分に被着せず、電線本体の表面に上手く膜が造れないという問題がある。
そこで、本実施形態では、エポキシ樹脂の一部又は全部をシリコーン樹脂で変性したシリコーン変性エポキシ樹脂として可撓性を確保しつつ、それらで構成された複合樹脂を半硬化させるようにしている。具体的には、シリコーン変性エポキシ樹脂が硬化剤により半硬化され、未変性のエポキシ樹脂が含まれている場合にはそれも硬化剤により半硬化される。以下の説明においても同様であり、エポキシ樹脂の「半硬化」や「本硬化」というとき、未変性のエポキシ樹脂が含まれていなければ硬化するのはシリコーン変性エポキシ樹脂だけであるが、未変性のエポキシ樹脂が含まれていれば、シリコーン変性エポキシ樹脂と未変性のエポキシ樹脂とが硬化する。
複合樹脂の基材となるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、スピロ環式エポキシ樹脂等が使用できる。これらのエポキシ樹脂については、一種類単独で使用することもできるし、二種以上混合して使用することもできる。
エポキシ樹脂には、多くの場合硬化剤が添加されて硬化されるが、硬化剤としては有機ポリアミン(例えば脂肪族単純アミン等)や有機酸(例えば無水フタル酸等)が使用される。これらの硬化剤についても、一種類単独で使用することもできるし、二種以上混合して使用することもできる。
また、エポキシ樹脂硬化促進剤を使用する場合もあり得る。エポキシ樹脂硬化促進剤は、特に限定されず、使用するエポキシ樹脂により適宜選択される。例えば、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−メチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール系硬化剤促進剤や、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドアジド、メラミン等の硬化促進剤が使用できる。これらの硬化促進剤についても、一種類単独で使用することもできるし、二種以上混合して使用することもできる。
また、シリコーン樹脂としては、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等の官能基を持つ反応性シリコーン樹脂が使用できる。これらのシリコーン樹脂についても、一種類単独で使用することもできるし、二種以上混合して使用することもできる。
シリコーン変性エポキシ樹脂は、シリコーン樹脂とエポキシ樹脂とを混合して所定の高温に所定時間加熱することで得られる。本実施形態では、特に、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、同じくシリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値にして混合して得られたものを使用している。
エポキシ樹脂とシリコーン樹脂がそれぞれ二つの官能基を有する場合、エポキシ樹脂の平均分子量もシリコーン樹脂の平均分子量もともに1000であったと仮定すると、エポキシ樹脂の化学当量x=500、シリコーン樹脂の化学当量y=500となり、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/y=1より大きい値で混合される。
このような重量比で混合して充分に加熱にして完全に反応させると、原理的には、シリコーン樹脂の官能基にすべてエポキシ樹脂が反応し、未反応のシリコーン樹脂は無くなる。未反応のシリコーン樹脂が多く残留すると、電線本体への被着性が悪化する問題があるが、本実施形態ではこのような問題はない。
尚、平均分子量には、数平均分子量、重量平均分子量、粘度平均分子量、z平均分子量(超遠心法により求めた平均分子量)があるが、いずれでも良い。また、平均分子量の測定は、沸点上昇法、氷点降下法、浸透圧法、末端基法、光散乱法、超遠心法、粘度法のいずれでも良い。
尚、前掲の公報には、半硬化状態の樹脂を使用することが開示されている。この公報のでは、半硬化状態で適度な柔軟性を与えるため、熱硬化性樹脂に熱可塑性樹脂(ポリビニルブチラール)を混合している。しかしながら、この構成では、本硬化後の樹脂成分に熱可塑性樹脂が多く含まれることになるため、熱的形態安定性が不十分となる問題がある。即ち、ハンダリフロー時の高温や電線の自己発熱による高温に晒されると、本硬化後であっても絶縁被覆が融解し、絶縁特性の悪化等の問題を生ずるおそれがある。
前掲の公報の実施例の中で、耐熱性の高いポリイミド等から成る第一層の絶縁被覆の上に第二層として半硬化樹脂の絶縁被覆を設ければ上記のような問題はないが、第一層として設けたポリイミド等から成る絶縁被覆は、ハンダ付け又は溶接時の熱では除去できず、やはり事前に手作業で剥離しておく必要が生ずる。
これに対し、本実施形態の絶縁被覆電線では、シリコーン変性エポキシ樹脂を含有させることで可撓性や柔軟性を付与しており、熱可塑性樹脂を混合させてはいない。従って、本硬化後の耐熱性も良好であり、且つ、ハンダ付け又は溶接時に絶縁被覆を事前に剥離する必要もない。
上記の通り、本実施形態における複合樹脂は、シリコーン変性エポキシ樹脂とシリコーン変性されていないエポキシ樹脂とから成っているが、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率を5〜30%の範囲とすることが好ましい。エポキシ樹脂のシリコーン変性率が5%未満であると、充分な可撓性、耐熱性が得られなくなる。また、エポキシ樹脂のシリコーン変性率が30%を越えると、電線本体に対する充分な被着性が得られなくなる。尚、ここでいうシリコーン変性率とは、エポキシ樹脂全量に対するシリコーン変性エポキシ樹脂の重量比である。
次に、コイルの製造方法の発明の実施形態について説明する。以下の説明は、導通方法の発明の実施形態の説明でもある。
図1は、実施形態に係るコイルの製造方法について示した概略図である。図1に示す方法は、絶縁被覆電線製造工程と、絶縁被覆電線をコアに巻き付ける巻き付け工程と、絶縁被覆電線の端部を他の導電部に対して導通させる導通工程とを有している。
絶縁被覆電線製造工程では、上述した所定の複合樹脂を得るため、所定のエポキシ樹脂とシリコーン樹脂と硬化剤とを所定の比率で混合し、溶剤を適宜使用して所定の粘度とする。これを所定温度に所定時間加熱し、エポキシ樹脂にシリコーン樹脂を反応させてシリコーン変性エポキシ樹脂を生成する。生成された樹脂は、エポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の複合樹脂である。得られた複合樹脂を、必要に応じて溶剤に溶解させて所定の粘度としてワニス1を得る。
次に、図1(1)に示すように、得られたワニス1を溜めた容器2の中に電線本体3を通してワニス2を被着させる。被着後にワニス1を加熱し、溶剤を揮発させるとともに硬化反応を開始させる。加熱温度及び加熱時間を制御して硬化反応を途中で停止させ、エポキシ樹脂を半硬化状態とする。電線本体3は、送り出しリール21から送り出され、絶縁被覆の被着後に巻き取りリール22に巻き取られる。電線本体3は、ワニス1中に浸けられた後、巻き取りリール22によりワニス1から引き上げられる。この引き上げの過程で、加熱が行われる。加熱は、図1(1)に示すように例えば熱風加熱ヒータ23により行われる。電線本体3の引き上げ速度、加熱温度等を適宜制御することにより半硬化状態が達成される。この他、ランプやレーザーによる輻射加熱、心線の通電発熱による加熱、高周波誘導加熱等の方法が採用できる。
次に、製造された絶縁被覆電線4をコア5に巻き付ける(図1(2))。巻き付けは、ロボット等の自動機又は人の手により行う。次に、コア5に設けられた電極6への導通工程を行う(図1(3))。導通は、絶縁被覆電線4を電極6にハンダ付け又は溶接することである。ハンダ付け又は溶接のための加熱は人の手により行われることもあるが、レーザー照射により自動化する場合もある。電極6は、リードフレームの形で用意され、ハンダ付け又は溶接後にフレーム部分から切断される。ハンダ付け又は溶接をし易いように、巻かれた絶縁被覆電線4の端部を接着剤又はテープ等で仮止めする場合もある。
尚、「ハンダ付け」はろう付けも含む概念であり、ハンダ材又はろう材を使用して二つの導電部を短絡し固定することである。「溶接」は、二つの導電部を直接短絡し固定することである。
電極6へのハンダ付け又は溶接の後、全体をモールド樹脂で覆う場合もある。この場合は、電極部分を残して全体も熱硬化性のモールド樹脂で覆い、熱硬化させる。
尚、製造されたコイルは、プリント基板への実装が行われる(図1(4))。プリント基板7に設けられた配線パターン8上の所定位置にコイルを置き、盛られたハンダ9をリフローさせて配線パターン8上に装着する。
以下に、本願発明の実施例について説明する。
絶縁被覆を構成する樹脂成分は、以下の通りである。
エポキシ樹脂として、平均分子量が900程度のビスフェノール型A型エポキシ樹脂を使用する。例えば、以下の化学式1で示される、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート1001が使用される。
Figure 0003760171
また、シリコーン樹脂として、例えば、以下の化学式2で示される、チッソ株式会社製FM−3311(平均分子量1000)が使用される。
Figure 0003760171
また、硬化材としては、フォルムアルデヒド縮合系のアセチル化変性物が使用される。例えば、以下の化学式3で示される、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピキュアDC808が使用される。
Figure 0003760171
上記エポキシ樹脂とシリコーン樹脂と硬化剤とを混合し、80℃で3時間加熱すると、エポキシ樹脂にシリコーン樹脂が反応してシリコーン変性エポキシ樹脂が生成され、複合樹脂が得られる。そして、溶剤としてトルエンを使用して適度な粘度とすることでワニスが得られる。ワニスを得るまでの材料の使用比率(重量%)について一例を示すと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂35.7%、シリコーン樹脂8.9%、アセチル化変性物(硬化剤)5.4%、溶剤(トルエン)50%である。
このように調製したワニスを前述したように電線本体に被着させ、200〜290℃の温度で5〜20秒ほど加熱した。この加熱により、溶剤を揮発させるとともにエポキシ樹脂(未変性のエポキシ樹脂及びシリコーン変性エポキシ樹脂)を半硬化状態とした。このようにして、直径70μmの銅製の裸電線である電線本体上に厚さ5μmの絶縁被覆を形成した。
このようにして得られた絶縁被覆電線は、半硬化状態の絶縁被覆の可撓性や柔軟性が良好で、巻線径100mm以下のコイル用にも充分使用可能なもので、この程度の小さいコアに巻いた場合でも絶縁被覆にクラック等の破損の発生は見られなかった。また、絶縁被覆は、室温から80℃までの温度でタックフリーかつ非融着状態であるとともに融点は80℃を越える温度で軟化し、ハンダ付け又は溶接の熱で充分に融解させることが可能であることが確認された。さらに、この絶縁被覆は150℃以上の温度で30分以上の加熱を行うことで本硬化した。本硬化後も、絶縁被覆にクラック等の破損の発生は見られず、またハンダリフロー等の際の高温にも充分耐え得る耐熱性を示した。
上記実施形態及び実施例では、電気部品の一例として電線を採り上げたが、本願発明はこれ以外の各種の電気部品に適用が可能である。例えば、抵抗やコンデンサ、ICパッケージ等の電気部品において、金属製の端子の表面に保護等の目的で絶縁被覆を設けている場合、上記実施形態又は実施例の構成を採用することができる。この場合、可撓性や柔軟性が要求されないこともある。尚、絶縁被覆に要求される、破損が生じない可撓性又は柔軟性における「破損」には、クラックの他、破壊、破断、剥離等が含まれる。
実施形態に係るコイルの製造方法について示した概略図である。
符号の説明
1 ワニス
2 容器
3 電線本体
4 絶縁被覆電線
5 コア
6 電極

Claims (10)

  1. 導電性の表面を有する部品本体と、部品本体を覆う絶縁被覆とから成る絶縁被覆電気部品であって、
    絶縁被覆は、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との複合樹脂より成るものであってエポキシ樹脂がシリコーン樹脂で変性されたシリコーン変性エポキシ樹脂を含む複合樹脂より成るとともに、所定温度に所定時間加熱されることで半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、
    複合樹脂は、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、同じくシリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されたものであり、
    絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して部品本体が短絡可能となるよう融解する融点を有するものであり、
    絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接ための熱量を超える熱量で加熱された際に本硬化するものであり、
    絶縁被覆は、室温から80℃の範囲においてタックフリー又は非融着状態を維持するものであることを特徴とする絶縁被覆電気部品。
  2. 前記部品本体は、可撓性又は柔軟性を有するものであり、前記絶縁被覆は、前記本硬化されるまでに可撓性又は柔軟性を有していることを特徴とする請求項1記載の絶縁被覆電気部品。
  3. 前記複合樹脂は、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁被覆電気部品。
  4. 導電性の表面を有する電線本体と、電線本体を覆う絶縁被覆とから成る絶縁被覆電線であって、
    絶縁被覆は、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との複合樹脂より成るものであってエポキシ樹脂がシリコーン樹脂で変性されたシリコーン変性エポキシ樹脂を含む複合樹脂より成るとともに、所定温度に所定時間加熱されることで半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、
    複合樹脂は、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、同じくシリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されたものであり、
    絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して前記電線本体が短絡可能となるよう融解する融点を有するものであり、
    絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接ための熱量を超える熱量で加熱された際に本硬化するものであり、
    絶縁被覆は、室温から80℃の範囲においてタックフリー又は非融着状態を維持するものであることを特徴とする絶縁被覆電線。
  5. 前記電線本体は、可撓性又は柔軟性を有するものであり、前記絶縁被覆は、前記本硬化されるまで可撓性又は柔軟性を有していることを特徴とする請求項4記載の絶縁被覆電線。
  6. 前記複合樹脂は、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の範囲であることを特徴とする請求項4又は5記載の絶縁被覆電線。
  7. 電気部品を構成する表面が導体である部品本体を他の導体部に導通させる電気部品の導通方法であって、
    部品本体に絶縁被覆を形成する被覆工程と、
    形成された絶縁被覆を再加熱して部分的に融解させながら他の導電部と電気部品とを導通させる導通工程と
    を含む方法であり、
    被覆工程は、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との複合樹脂より成るものであってエポキシ樹脂がシリコーン樹脂で変性されたシリコーン変性エポキシ樹脂を含む複合樹脂より成るものを前記部品本体に塗布した後に所定温度に所定時間加熱して半硬化状態としてタックフリー又は非融着状態とする工程であり、
    複合樹脂は、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、同じくシリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されたものであり、
    絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接のための熱が加えられた際に他の導電部に対して前記部品本体が短絡可能となるよう融解する融点を有するものであり、
    絶縁被覆は、他の導電部へのハンダ付け又は溶接ための熱量を超える熱量で加熱された際に本硬化するものであり、
    さらに、導通工程の後、前記導通のための再加熱の際の熱量を超える熱量で絶縁被覆を加熱することで絶縁被覆を本硬化させる工程が行われる方法であることを特徴とする電気部品の導通方法。
  8. 前記複合樹脂は、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の範囲であることを特徴とする請求項7記載の電気部品の導通方法。
  9. コアと、コアに巻かれた絶縁被覆電線とから成るコイルを製造するコイルの製造方法であって、
    絶縁被覆電線は、導電性の表面を有する電線本体と、電線本体を覆う絶縁被覆とから成り、絶縁被覆は、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との複合樹脂より成るものであってエポキシ樹脂がシリコーン樹脂で変性されたシリコーン変性エポキシ樹脂を含む複合樹脂より成るとともに、所定温度に所定時間加熱されることで半硬化状態となっていてタックフリー又は非融着状態であり、
    複合樹脂は、平均分子量を官能基で割ったエポキシ樹脂の化学当量をx、同じくシリコーン樹脂の化学当量をyとしたとき、シリコーン樹脂に対するエポキシ樹脂の重量比がx/yを越える値で混合されたものであり、
    この絶縁被覆電線をコアに所定の長さ巻き付ける巻き付け工程と、
    絶縁被覆電線の端部を他の導電部に対して導通させる導通工程と
    を含む方法であり、
    導通工程では、端部に存在する絶縁被覆を再加熱して融解させせながら導通が行われ、
    巻き付け工程及び導通工程の後、導通工程において絶縁被覆を融解させるのに必要な熱量を超える熱量で加熱して絶縁被覆を本硬化させる本硬化工程が行われる方法であり、
    前記半硬化状態の絶縁被覆は巻き付け工程において破損が生じないよう可撓性又は柔軟性を有していることを特徴とするコイルの製造方法。
  10. 前記複合樹脂は、成分中のエポキシ樹脂のシリコーン変性率が5〜30%の範囲であることを特徴とする請求項9記載のコイルの製造方法。
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