JP3760109B2 - かさ状歯車の中間製品と加工工具との位置決め方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、まがりばかさ歯車,ハイポイドギア等のまぎりばかさ状歯車を加工する歯車加工装置において、中間製品と加工工具とを位置決めする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
まがりばかさ状歯車は、一般に、予め塑性加工,切削加工等の前加工により歯みぞが形成された被加工物である中間製品の歯部に切削・研削等の仕上げ加工を施すことにより製造される。その仕上げ加工を実施する加工装置において、それら中間製品と加工工具とを自動的に位置決めする位置決め装置が既に存在する。特許第2572155号の特許公報に記載されたものがそれである。この位置決め装置は、中間製品を予め定められた回転位置とするとともに、加工工具を予め定められた相対位置に配置する(加工工具の回転位置を予め定められた回転位置にすることを含む場合もある)ことにより、中間製品の歯みぞと加工工具の切刃との適切な噛合いを実現し得る位置決めを行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
しかし、この位置決め装置は、同じかさ状歯車を複数個加工する場合に、2個目以降の中間製品の位置決めには利用し得るが、最初の中間製品の位置決めには利用できないものであった。最初の中間製品を位置決めする際には、中間製品と加工工具との位置決めを作業者が行う必要があったのである。例えば、作業者が中間製品と加工工具とを接近させて中間製品と加工工具との位置関係を確認し、それらが適当な位置でない場合には、中間製品の回転位置を修正するという作業を繰り返すことにより、中間製品と加工工具とを相対的に位置決めするのである。この種の作業は、作業者が加工工具と中間製品とに顔を近づけるように装置内に身を乗り出し、その状態で加工工具と中間製品とを移動・回転させる必要があるので大変な作業であった。さらに、作業者の熟練を必要とするため加工精度が安定せず、あるいは、作業を繰り返して噛み合いを確認することが必要であるため、長時間を要する等の問題があった。
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として、複数の同じ中間製品の最初のものについても、加工開始位置を自動で設定し得るようにすることを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の位置決め方法および装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0005】
なお、以下の各項のうち、 (1)項が請求項1に相当し、 (2)項が請求項2に相当し、 (3)項が請求項6に相当し、 (20)項が請求項7に相当し、(21)項が請求項8に相当する。
【0006】
(1)既に歯みぞが形成されているまがりばかさ状歯車の中間製品とその中間製品に機械加工を施して加工品とする加工工具との、それら中間製品と加工工具との各基準点の3次元空間内における位置とそれらの回転軸線の方向とで規定される相対位置と、前記中間製品の回転軸線まわりの回転位置とを決める方法であって、
前記中間製品の前記歯みぞの位置を検出する検出器を予め定められた位置に位置決めする第一工程と、
前記検出器が、その検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出するまで前記中間製品を回転させる第二工程と、
その第二工程において回転させられた回転位置から前記中間製品を予め設定された設定角度回転させるとともに、その中間製品と前記加工工具とを、予め設定された設定相対位置であって、加工工具が中間製品に接触を開始する位置からエアカット移動分だけ離れた位置である加工開始位置に位置決めする第三工程と、
前記設定角度と前記加工開始位置とを、前記第三工程において前記設定角度回転させられた回転位置および前記加工開始位置から、前記中間製品と前記加工工具とに、その加工工具と前記まがりばかさ状歯車との諸元によって決まる加工工具の回転および揺動と中間製品の回転とを実質的に含む加工運動が付与されれば、中間製品が前記加工品に加工されることとなる設定角度および加工開始位置として、計算により取得する工程と
を含むまがりばかさ状歯車の中間製品と加工工具との位置決め方法。
【0006】
上記第二工程において決められる中間製品の回転位置と、上記第三工程において決められる中間製品の回転位置とは、上記設定角度分異なる。この設定角度は、例えば次のようにして決められる。まがりばかさ状歯車の歯みぞの両側の歯面の一方の予め定められた特定点が、加工工具としての歯切工具(例えば正面フライス)により切削加工されている状態において、その切削加工の結果得られるはずのまがりばかさ状歯車と歯切工具との相対位置は、まがりばかさ状歯車と歯切工具との諸元(各部の形状,寸法)から一義的に決まる。まがりばかさ状歯車の加工は、中間製品と歯切工具とが理論計算通りに相対移動させられることによって行われるのであり、その相対移動の一過程が上記相対位置であって、当然理論的に計算できる。そして、その相対位置から上記切削加工時における中間製品と歯切工具との相対移動の逆の計算を行えば、歯切工具が中間製品の歯みぞの切削加工を始める瞬間の位置からエアカット移動分だけ離れた位置である加工開始位置における中間製品と歯切工具との相対位置を計算することができる。
【0007】
一方、検出器として、例えば、先端に球状の接触部を有するプローブを使用し、その球状接触部を歯みぞ内に進入させた状態で中間製品を回転させ、中間製品の歯みぞの両側の歯面の一方を接触部に接触させれば、中間製品とプローブとの相対回転位置を決めることができる。そして、上記歯面の球状接触部と接触させる部分を、前記まがりばかさ状歯車の歯みぞの前記特定点に対応する位置(特定点から歯面の法線方向に切削加工の取り代だけ離れた点)とすれば、プローブと中間製品と歯切工具との相対位置を一義的に決め得ることになる。
【0008】
ただし、プローブが接触するのは中間製品の歯面であるのに対し、歯切工具が接触するのは切削加工後のまがりばかさ状歯車の歯面であり、歯切工具が接触する特定点(歯切工具の位置はこの特定点と接触する点の位置で表されるものとする)とプローブの球状接触部の球心(プローブの位置はこの球心の位置で表されるものとする)との間には、歯面の法線方向に取り代と球状接触部の半径との和だけのずれがある。また、歯切工具が接触する特定点は、切削加工の一過程であって、加工開始位置とは異なる。歯切工具の揺動位置(クレードル角)および中間製品の回転位置とが異なるのである。したがって、プローブの球状接触部との接触により決められる中間製品の回転位置から、上記「歯面の法線方向における取り代と球状接触部の半径との和(取り代および半径分と称する)」と「特定点と加工開始位置との回転角度差(加工進行対応分と称する)」との和(方向を考慮に入れた)に対応する角度だけ中間製品を回転させた位置が中間製品の加工開始位置であることになる。この場合には、上記「取り代および半径分」と「加工進行対応分」との和が前記設定角度となり、この設定角度を採用する態様が本発明の一実施態様である。
【0009】
上記のように、プローブを進入させる歯みぞと、歯切工具により切削加工する歯みぞとを同じにする場合には、上記設定角度を採用すれば中間製品を加工開始位置に位置決めし得るのであるが、その場合には歯切工具の近傍にプローブを配設することが必要になり、設計の自由度が低下するとともに切削液や切り屑により検出器が汚れ易いという問題が生じる。したがって、プローブを進入させる歯みぞは、歯切工具により切削加工する歯みぞから所定ピッチ離れた歯みぞとすることが望ましく、その場合には、上記所定ピッチの違いを考慮することが必要になる。例えば、プローブとの接触により決めた回転位置から前記「取り代および半径分」と「加工進行対応分」との和に加えて、上記「所定ピッチ分」中間製品を回転させればよい。「取り代および半径分と加工進行対応分との和」と「所定ピッチ分」との和が前記設定角度となることになるのである。この態様も本発明の一実施態様であり、プローブにより位置決めされた歯みぞ自体が歯切工具により切削加工されることとなる利点があるが、反面、第三工程において中間製品を回転させるべき角度が大きくなり、その分加工能率が低くなることを避け得ない。
【0010】
そこで、以下のようにして回転角度を小さくすることが望ましい。中間製品の歯みぞのピッチは比較的高い精度で均一になっているのが普通であるので、ある歯みぞをプローブにより位置決めすれば、他の歯みぞもほぼ同様の精度で位置決めされていると考えてよく、プローブにより位置決めされた歯みぞとは所定ピッチ隔たった歯みぞに歯切工具による切削加工を施しても支障はない。そして、この場合には、前記「所定ピッチ分」中間製品を回転させる必要がなくなり、第三工程の実施に要する時間を短縮できる。ただし、歯切工具により前記特定点が切削加工される時点における歯切工具の位置と、プローブの中間製品の周方向における位置とが共に一義的に決まっている場合には、プローブとの接触により決まる中間製品の回転位置と、歯切工具が前記特定点を切削している状態における中間製品の回転位置とが、丁度歯みぞの整数倍のピッチ離れた状態になるとは限らない。したがって、丁度歯みぞの整数倍のピッチ離れた状態にはならない場合には、「取り代および半径分」と、「加工進行対応分」から「歯みぞの整数ピッチ分」を差し引いた余りである「ピッチの端数分」との和が前記設定角度となる。この態様が本発明の特に望ましい態様の1つである。
【0011】
以上は、検出器として接触型の検出器を使用し、それの接触子が球状接触部を備えたプローブである場合を例として説明したが、接触子としては任意の形状のものを採用することが可能であり、また、非接触型の検出器を採用することも可能である。例えば、超音波,可視光線,レーザ等を利用した距離測定器、各種の近接スイッチ等を採用し得るのである。また、加工工具が歯切工具の一種である正面フライスである場合を例として説明したが、正面ホブ等別の歯切工具である場合や、シェービング工具,研削工具,面取工具等他の加工工具である場合にも本発明を適用することができる。
【0012】
【0013】
なお、前記「検出器が、検出器に対して歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出する」とは、例えば、検出器の接触部が歯みぞの両側の歯面のいずれか一方に接触することや、歯みぞの中央面が検出器の軸線と一致することとすることができる。また、加工されるのがまがりばかさ状歯車の中間製品がである場合には、そのまがりばの長手方向における予め定められる任意の部位が、検出器に対して位置決めされればよい。さらに、検出器が接触型であり、第三工程において中間製品が回転させられる際に、接触子と中間製品の歯とが干渉する場合には、第二工程と第三工程との間に接触子を歯みぞ内から退避させる工程が必要であるが、検出器が非接触型である等により干渉のおそれがない場合にはその工程は不要である。
【0014】
本発明によれば、第一工程において、検出器を予め定められた位置に位置決めし、第二工程において、検出器に対して中間製品の歯みぞを予め定められた相対回転位置に位置決めし、第三工程において、第二工程で決められた回転位置から中間製品を設定角度だけ回転させれば、中間製品が加工工具による加工を開始し得る加工開始位置に位置決めされる。また、その中間製品に対して加工工具が予め設定された設定相対位置に位置決めされるため、直ちに中間製品と加工工具とに加工運動を開始させることができる。従来は、複数の同じ中間製品の最初のものの相対位置決めは作業者が行い、その結果決定された中間製品の歯みぞの回転位置を検出しておき、2個目以降の中間製品の歯みぞの回転位置をその検出しておいた回転位置に一致させることによって、中間製品の回転位置決めを行うことが行われていた。それに対し、本発明によれば、複数の同じ中間製品の最初のものについても、加工開始位置を簡単に(例えば全自動で)設定することができ、それによって、まがりばかさ状歯車加工装置の使い勝手,加工精度および作業能率の少なくとも一つを向上させることができる。
【0015】
(2)既に歯みぞが形成されているまがりばかさ状歯車の中間製品とその中間製品に機械加工を施して加工品とする加工工具との、それら中間製品と加工工具との各基準点の3次元空間内における位置とそれらの回転軸線の方向とで規定される相対位置と、前記中間製品の回転軸線まわりの回転位置とを決める方法であって、
前記中間製品の前記歯みぞの位置を検出する検出器を予め定められた位置に位置決めする第一工程と、
前記検出器が、その検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出するまで前記中間製品を回転させる第二工程と、
その第二工程において回転させられた回転位置にある中間製品と前記加工工具とを、予め設定された設定相対位置であって、加工工具が中間製品に接触を開始する位置からエアカット移動分だけ離れた位置である加工開始位置に位置決めする第三工程と、
前記加工開始位置を、その加工開始位置から、前記中間製品と前記加工工具とに、その加工工具と前記まがりばかさ状歯車との諸元によって決まる加工工具の回転および揺動と中間製品の回転とを実質的に含む加工運動が付与されれば、中間製品が前記加工品に加工されることとなる加工開始位置として、計算により取得する工程と
を含むまがりばかさ状歯車の中間製品と加工工具との位置決め方法。
【0016】
例えば、前記 (1)項の発明に関して説明した設定角度として「取り代および半径分」と「歯みぞのピッチの端数分」との和に相当する設定角度だけ中間製品を回転させる代わりに、第一工程における検出器の位置をそのような回転を必要としない位置に設定しておく態様が本項の発明の一実施態様である。例えば、検出器が基準位置にある状態で、前述の方法により「取り代および半径分」および「歯みぞのピッチの端数分」の和に相当する設定角度を計算により求めた後、その設定角度の回転に相当する分だけ検出器の位置を変更すればよいのである。この場合には、検出器に基づいて中間製品の回転位置を決めれば、その回転位置が取りも直さず加工開始位置であることになるのである。ただし、本実施態様においては、検出器の位置を、少なくとも中間製品の回転軸線と直交する一平面内の任意の位置(望ましくは、三次元空間内の任意の位置)に位置決めし得るようにすることが必要である。
【0017】
また、上記「取り代および半径分」および「歯みぞのピッチの端数分」の和に相当する設定角度だけ中間製品を回転させる代わりに、加工工具の位置を設定角度と同じ大きさの角度だけ逆方向に回転させる態様が、本発明の別の実施態様である。加工工具を保持して回転させる工具軸を備えた工具保持回転装置が、工具軸の軸方向および位置を任意に変更し得るものである場合に、本態様を実施することができる。ただし、この場合には、加工工具の加工開始位置の変更に応じて、加工工具の加工運動を制御する制御プログラムも変更されることが必要となる。
【0018】
(3)前記検出器が、先端に球状接触部を有するプローブを備えてその球状接触部の対象物に対する接触を検出するタッチセンサを含み、前記第一工程が、
前記中間製品を回転させつつその中間製品に前記タッチセンサを接近させ、前記球状接触部が前記中間製品の歯先面と接触したとき停止させる工程と、
前記タッチセンサの停止後、前記中間製品を、その中間製品の歯先面が前記球状接触部に接触しなくなるまで回転させる工程と、
前記中間製品を、前記歯先面が前記球状接触部に接触しなくなってから予め定められた角度回転させる工程と、
前記タッチセンサを前記中間製品の回転軸線に接近させて、前記球状接触部を前記歯みぞ内に位置させる工程とを含み、前記第二工程が、前記中間製品を、その中間製品の前記歯みぞの両側の歯面の一方が前記球状接触部に接触するまで回転させる工程を含む (1) 項または (2) 項に記載の位置決め方法。
【0019】
(4)前記検出器が、その検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出する状態が、前記歯みぞの幅方向の中央が、前記検出器と一致することを検出する状態である(1)項または (2) 項に記載の位置決め方法。
【0020】
歯みぞは検出器に対していずれの相対回転位置に位置決めされてもよいが、本項あるいは次項に記載するように、歯みぞの中央が検出器と一致する状態か、歯みぞの両側の歯面のいずれか一方から設定距離(0を含む)離れた点が検出器と一致する状態とすることが望ましい。後者の場合、例えば、設定距離をタッチセンサの接触子の球状の接触部の半径と等しくしておけば、球状接触部が歯面に接触する状態が、検出器が歯面から設定距離離れた状態であることになる。なお、歯みぞが湾曲しあるいは捩じれている場合には、歯みぞの長手方向における予め定められた位置、あるいは中間製品の軸方向における予め定められた位置において、検出器と歯みぞとの相対位置が決められるべきである。この点は、次項の態様に関しても同様である。
(5)前記検出器が、その検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出する状態が、前記歯みぞの両側の歯面のいずれか一方から設定距離離れた点が前記検出器と一致することを検出する状態である(1)項または (2) 項に記載の位置決め方法。
(6)前記検出器が前記中間製品の回転軸線の垂直上方に位置させられる(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の位置決め方法。
中間製品と加工工具との回転軸線が共に水平とされ、それら両回転軸線がほぼ同一水平面上に位置する状態で加工が行われることが多く、その場合に検出器が中間製品の回転軸線の垂直上方に位置させられれば、中間製品の被加工点から最も大きく上方へ離れた位置に配設されることになり、検出器と加工工具との干渉や、切削液や切り屑による検出器の汚染,損傷等を特に良好に回避し得る。ただし、中間製品の回転軸線を間に挟んで、被加工点と丁度反対側に検出器を配設したり、作業者の見易い位置に配設する等、他の位置に配設することも可能である。
(7)前記第一工程が、前記中間製品の軸方向の予め定められた位置において、タッチセンサの接触子の接触部が、中間製品の歯みぞ内の予め定められた位置にある状態を実現する工程である(1)項ないし(6)項のいずれかに記載の位置決め方法。
【0021】
接触部は、歯底面と歯先面との間のいずれの位置に配置されても良いが、歯面を検出するのに適した位置に配設されることが望ましい。具体的には、歯底面と歯先面との間の領域であって、両端から歯丈の4分の1の領域を除いた部分が望ましい。例えば、ピッチ円錐上の位置が推奨される。なお、タッチセンサの接触子は中間製品の回転軸線を含む平面上に中心軸線を有する姿勢とされることが望ましい。
(8)前記接触部が前記中間製品の歯みぞ内の予め定められた位置にある状態を実現する工程が、
前記接触部が中間製品の歯先面に接触可能な位置に達するまでタッチセンサを移動させて停止させる第一接近工程と、
タッチセンサが接触信号を発する状態から発しない状態に変化するまで中間製品をそれの回転軸線まわりに回転させるとともにその変化時における回転位置から予め定められた角度回転させる第一回転工程と、
接触部が中間製品の歯みぞ内に位置する状態となるまでタッチセンサと移動させて停止させる第二接近工程と、
接触部が中間製品の歯面に接触するまで中間製品を回転軸線まわりに回転させる第二回転工程と
を含むことを特徴とする(7)項に記載の位置決め方法。
(9)前記接触部の前記歯みぞ内における予め定められた位置が歯みぞの中央である(7) 項または(8)項に記載の位置決め方法。
(10)前記接触部の前記歯みぞ内における予め定められた位置が、接触部が歯みぞの両側の歯面の一方に接触する位置である(7)項または(8)項に記載の位置決め方法。
(11)前記接触子が、前記中間製品の歯部の軸方向のほぼ中央の位置において前記歯みぞ内に位置させられる(7)項ないし(10)項のいずれかに記載の位置決め方法。
【0022】
接触子は、中間製品の軸方向における両端に近い位置に配設されても良いが、中央近傍に配設されることが望ましい。
(12)前記接触子が、それの中心軸線が前記中間製品の回転軸線と直交する姿勢で使用される(7)項ないし(11)項のいずれかに記載の位置決め方法。
(13)前記接触子が、垂直下向きの姿勢で使用される(12)項に記載の位置決め方法。
タッチセンサは接触子を垂直下向きの姿勢で使用することが位置決め装置の設計上簡明であるし、加工液や切り屑によるタッチセンサの汚染や損傷を回避する上でも有利である。また、作業者がタッチセンサの保守点検を行う場合にも便利であることが多い。
(14)前記接触子が、前記中間製品の回転軸線と直交する方向の移動により前記歯みぞ内に進入させられる(7)項ないし(13)項の位置決め方法。
【0023】
上記(13)項の特徴と本項の特徴との両方を採用すれば、タッチセンサを移動させる移動装置を中間製品の被加工点から可及的に上方へ離れた位置に配設し、加工液や切り屑の影響を少なくすることができる。
(15)前記接触子が、上方から下方への移動により、上方に向かって開いた前記歯みぞに進入させられる(7)項または(14)項に記載の位置決め方法。
(16)前記加工工具が、切刃が一円周に沿って配置された正面フライス(環状フライス)である(1)項ないし(15)項のいずれか一つに記載の位置決め方法。
加工工具は、切刃が少なくとも一本の伸開線に沿って配置された正面ホブ(環状ホブ)であっても良い。
(17)前記タッチセンサの前記接触部が、前記中間製品の予め定められた軸方向位置において、中間製品の歯先面に接触する位置が、中間製品の回転軸線と直交する方向において設定範囲内であるか否かに基づいて、予定の中間製品であるか否かを判定する工程を含む(7)項ないし(16)項のいずれかに記載の位置決め方法。
タッチセンサの接触部が歯先面に接触する位置が設定範囲外である場合には、現に取り付けられている中間製品が予定のものではないと判断される。その場合には、位置決め作業の中止と、警報発生との少なくとも一方が行われるようにすることが望ましい。
【0024】
歯先面を検出することは、中間製品の位置決めの際に実施されることであるので、それを利用することにより、余分な設備や時間を要することなく中間製品が予定のものであるか否かを判定することができる。
(18)前記接触部と歯みぞの両側面とが接触する際の中間製品の回転位置に基づいて歯みぞの幅と歯部の厚さとの少なくとも一方を取得する工程を含む(7)項ないし(17)項のいずれかに記載の位置決め方法。
(19)前記検出された歯みぞの幅と歯部の厚さとの少なくとも一方と、予定の中間製品の対応する値との差が設定範囲以内であるか否かに基づいて、予定の中間製品であるか否かを判定する工程を含む(18)項に記載の位置決め方法。
(17)項の特徴と本項の特徴とを合わせて採用すれば、不適切な中間製品が加工されてしまうことをさらに確実に回避することができる。
【0025】
(20)既に歯みぞが形成されているまがりばかさ状歯車の中間製品とその中間製品に機械加工を施して加工品とする加工工具との、それら中間製品と加工工具との各基準点の3次元空間内における位置とそれらの回転軸線の方向とで規定される相対位置と、前記中間製品の回転軸線まわりの回転位置とを決める装置であって、
前記中間製品の前記歯みぞの位置を検出する検出器と、
その検出器を前記中間製品に対して予め定められた位置に位置決めする第一手段と、
前記検出器がその検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出するまで、前記中間製品を回転させる第二手段と、
その第二手段により回転させられた回転位置から前記中間製品を予め設定された設定角度回転させるとともに、その中間製品と前記加工工具とを、予め設定された設定相対位置であって、加工工具が中間製品に接触を開始する位置からエアカット移動分だけ離れた位置である加工開始位置に位置決めする第三手段と、
前記設定角度と前記加工開始位置とを、前記第三手段により前記中間製品が前記設定角度回転させられた回転位置および前記加工開始位置から、前記中間製品と前記加工工具とに、その加工工具と前記まがりばかさ状歯車との諸元によって決まる加工工具の回転および揺動と中間製品の回転とを実質的に含む加工運動が付与されれば、中間製品が前記加工品に加工されることとなる設定角度および加工開始位置として、計算により取得する手段と
を含むまがりばかさ状歯車の中間製品と加工工具との位置決め装置。
(3)項ないし(19)項のそれぞれに記載の特徴は本項の装置にも適用可能である。
【0026】
(21)既に歯みぞが形成されているまがりばかさ状歯車の中間製品とその中間製品に機械加工を施して加工品とする加工工具との、それら中間製品と加工工具との各基準点の3次元空間内における位置とそれらの回転軸線の方向とで規定される相対位置と、前記中間製品の回転軸線まわりの回転位置とを決める装置であって、
前記中間製品の前記歯みぞの位置を検出する検出器と、
その検出器を前記中間製品に対して予め定められた位置に位置決めする第一手段と、
前記検出器がその検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出するまで、前記中間製品を回転させる第二手段と、
それら中間製品と前記加工工具とを、予め設定された設定相対位置であって、加工工具が中間製品に接触を開始する位置からエアカット移動分だけ離れた位置である加工開始位置に位置決めする第三手段と、
前記加工開始位置を、その加工開始位置から、前記中間製品と前記加工工具とに、その加工工具と前記まがりばかさ状歯車との諸元によって決まる加工工具の回転および揺動と中間製品の回転とを実質的に含む加工運動が付与されれば、中間製品が前記加工品に加工されることとなる加工開始位置として、計算により取得する手段と
を含むまがりばかさ状歯車の中間製品と加工工具との位置決め装置。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1にまがりばかさ歯車を歯切加工する歯車加工装置の全体を示す。本歯車加工装置は一般に良く知られたものであるので、本発明に関係のある部分のみ詳細に説明し、それ以外の部分は簡略に説明する。
【0028】
歯車加工装置20においては、装置本体22に工具主軸台24と工作物主軸台26とが相対移動可能に支持されている。工具主軸台24は、装置本体20上に形成された水平面に平行な第一方向(以下、X軸方向と称する)に移動する第一移動台28を備えている。第一移動台28はガイドレール27にガイドされ、第一移動モータ29により移動させられる。その第一移動台28にコラム30が立設され、コラム30の側面に形成され垂直方向(Y軸方向)に延びる一対のガイドレール32と、昇降モータ34とにより工具主軸36を支持するハウジング38がY軸方向に移動させられる。ハウジング38は、工具主軸36を水平な軸線のまわりに回転可能に、かつ、軸方向(X軸方向)に相対移動可能に支持しており、工具主軸36を回転させる工具主軸回転モータ40と軸方向に移動させる軸方向駆動モータ42とが設けられている。それら第一移動モータ29,昇降モータ34,工具主軸回転モータ40および軸方向駆動モータ42が、図5に示すコンピュータ72により制御されて、工具主軸36が軸線まわりに回転しつつ、X軸方向とY軸方向とに移動させられる。この工具主軸36にアダプタ44を介して加工工具の一種である歯切工具としての正面フライス46が相対回転不能に保持されている。
【0029】
一方、工作物主軸台26は、装置本体20上に、水平面内においてX軸方向と直交するZ軸方向に相対移動可能に設けられた第二移動台50と、その第二移動台50に設けられ、垂直軸線まわりに相対回転可能な旋回台52とを含み、装置本体20に設けられた第二移動モータ54と、 旋回台52上に設けられた旋回モータ56とによりそれぞれが運動させられる。旋回台52上に工作物主軸57を回転可能に保持するハウジング58が設けられている。工作物主軸57は水平な軸線のまわりに回転可能に支持され、工作物主軸回転モータ59により回転させられる。以上の結果、工作物主軸57は、水平な軸線まわりの回転と、Z軸方向移動と、垂直軸線まわりの旋回とが可能となっている。なお、上記第一移動モータ29,昇降モータ34,工具主軸回転モータ40,軸方向駆動モータ42,第二移動モータ54,旋回モータ56,工作物主軸回転モータ59等はいずれもサーボモータ等回転角度の正確な制御が可能なモータである。
【0030】
本歯車加工装置20によれば、上記X,Y,Z軸方向の相対移動と,工作物主軸57の垂直軸線まわりの旋回と、各主軸の軸線まわりの回転とを組み合わせることにより、成形歯切加工と創成歯切加工との両方を実施することができる。以下に、工作物主軸57についてさらに詳細に説明する。
【0031】
工作物主軸57の先端部には、アダプタ60が取り外し可能に設けられている。アダプタ60の本体内には、図3に示すように、工作物主軸57と同軸に嵌合穴62が形成され、その嵌合穴62内にコレットチャック64が配設されている。したがって、コレットチャック64に被加工物としての中間製品66を任意の位相で嵌合し、その状態でコレットチャック64を作動させることにより、中間製品66をアダプタ60に任意の位相で固定することができる。アダプタ60とコレットチャック64とが共同して、中間製品66を工作物主軸57に任意の位相で固定可能な固定装置を構成しているのである。
【0032】
中間製品66は、塑性加工,切削加工等の前加工により、予め複数の歯,歯みぞ等を有するかさ状歯車の形状にされている。それら歯みぞは、互いに対向する一対の歯面68をそれぞれ備えている(図9参照)。
【0033】
工作物主軸57は、ハウジング58内において、減速機を介して工作物主軸回転モータ59に接続されている。本実施形態においては、これら減速機および工作物主軸回転モータ59により回転駆動装置が構成されているのである。図5に示すように、工作物主軸回転モータ59は駆動回路70を介してコンピュータ72の出力ポート74に接続されている。また、工作物主軸回転モータ59の回転量はエンコーダ76によって検出されるようになっている。エンコーダ76はアブソリュートエンコーダであり、その検出値がコンピュータの入力ポート78に入力される。エンコーダ76が工作物主軸57の回転位置(回転位相)を検出する位置(位相)検出装置を構成しているのであり、コンピュータ72はそれの検出結果に基づいて工作物主軸回転モータ59の回転角度を制御することができる。それによって、工作物主軸57が任意の角度回転させられるとともに、一定の基準回転位置(基準位相)で停止させられる。主軸回転モータ59,駆動回路70およびコンピュータ72により主軸制御装置が構成されているのである。
【0034】
本実施形態においては、図2に示すように、工作物主軸57のハウジング58に中間製品66の回転位置(位相)を検出する位置検出装置80が固定的に設けられている。ただし、図1においては、理解を容易にするために位置検出装置80の図示が省略されている。
工作物主軸57のハウジング58に垂直方向に延びるプレート82が固定されており、そのプレート82には、その板面に直角な方向に延びるブラケット84,85が取り付けられている。ブラケット84,85は、それぞれフランジ部86,87を備えており、工作物主軸57の軸線に直角な方向に隔たった位置においてプレート82に固定されている。ブラケット84,85にはボールねじ88がベアリング90,91を介して回転可能かつ軸方向に移動不能に支持されている。ボールねじ88は工作物主軸57の軸線に直角な方向に延びており、それの工作物主軸57から遠い側の端にプーリ92が固定されている。ボールねじ88には、ボールナット94が螺合されている。ボールナット94はスライド96に嵌合されており、そのスライド96はリニアベアリング98を介してガイドバー100に嵌合されている。ガイドバー100はボールねじ88と平行に延びる姿勢でブラケット84,85に支持されている。したがって、ボールねじ88の回転に伴ってスライド96が工作物主軸57の軸線に直角する方向に沿って工作物主軸57に接近,離間する。
【0035】
スライド96にはタッチセンサ102が固定されている。タッチセンサ102はボールねじ88と平行、すなわち工作物主軸57の軸線に直角な方向に延びており、先端部にはプローブ104を備えている。プローブ104は先端に球状接触部106を備えている。タッチセンサ102はコンピュータ72の入力ポート78に接続されており、プローブ104が中間製品66にいずれの方向から接触しても接触信号をコンピュータ72に入力するようになっている。プローブ104は、タッチセンサ102の本体に対してあらゆる方向に相対移動可能であり、中間製品66への接触時の衝撃を吸収する。
【0036】
プレート82には、さらに、図3および図4に示すように、昇降モータ110がブラケット111を介して固定的に取り付けられている。昇降モータ110の回転軸113にはプーリ112が相対回転不能に取り付けられており、このプーリ112とボールねじ88のプーリ92との間に無端のベルト114が巻きかけられている。このベルト114により、昇降モータ110の回転がボールねじ88に伝達される。昇降モータ110は、図5に示すように、駆動回路70を介してコンピュータ72の出力ポート74に接続されている。また、昇降モータ110の回転量は昇降エンコーダ116により検出され、その検出信号がコンピュータ72の入力ポート78から入力されるようになっている。したがって、コンピュータ72の指令信号に基づいて昇降モータ110が駆動され、タッチセンサ102が工作物主軸57の軸線に直角な直線に沿って任意の位置へ移動させられ、中間製品66に接近,離間させられる。上記ブラケット84,ボールねじ88,プーリ92,ボールナット94,スライド96,ガイドバー100,昇降モータ110,プーリ112,ベルト114等によりタッチセンサ移動装置が構成されているのである。
【0037】
上記コンピュータ72には、図5に示すように、CPU130,ROM132,RAM134およびそれらを接続するバス136が設けられ、バス136には、さらに、入力ポート78および出力ポート74が接続されている。コンピュータ72の入力ポート78には、前述のエンコーダ76,タッチセンサ102および昇降エンコーダ116が接続されている。入力ポート78には、さらに、入力装置138が接続されている。入力装置138には、歯切のための工作物主軸57と歯切工具駆動装置との制御データとともに、工作物主軸57の回転角度,タッチセンサ102の下降量等、工作物主軸57の加工開始位置(位相)および工具主軸36の加工開始位置の決定に必要な種々のデータが記憶されたフロッピーディスクがセット可能とされており,それらのフロッピーディスクのデータが作業者のキー操作によりコンピュータに入力されるようになっている。一方、出力ポート74には、駆動回路70を介して昇降モータ34,第二移動モータ54,旋回モータ56,工作物主軸回転モータ59,軸方向駆動モータ42および工具主軸回転モータ40が接続されている。ROM132には、メインルーチンや、図6ないし図8にフローチャートで示す予備位置決めルーチンなど種々のプログラムが格納されている。
【0038】
本歯車加工装置によれば、まがりばかさ歯車の創成歯切と成形歯切との両方の歯切を実施することができ、かつ、いずれの歯切を行う場合にも本発明の位置決め方法を実施することができるが、ここでは仮想歯車として冠歯車を使用し、正面フライス46によりまがりばかさ状小歯車(ピニオン)を創成歯切する場合の位置決め作業を例として説明する。
【0039】
従来、この種の歯車加工装置において、既に歯みぞが形成されている複数のまがりばかさ歯車の中間製品の最初のものが歯切加工が行われる場合には、前述のように作業者により中間製品の加工開始位置への位置決めが行われていたが、本歯車加工装置においては自動で行われる。コンピュータ72により、中間製品66を位置検出装置80に対して位置決めする予備位置決めルーチンと、予備位置決めされた状態に基づいて中間製品66と正面フライス46とを加工開始位置に設定する本位置決めルーチンとが実行され、それによって、中間製品66と加工工具としての正面フライス46との加工開始位置への位置決めが行われるのである。
【0040】
まず、予備位置決めルーチンの開始に先だって、加工工具としての正面フライス46が工具主軸36に取り付けられ、工作物主軸57に今回加工されるべき複数の中間製品66のうち最初のものが取り付けられる。この取り付け作業は、作業者により行なわれても良いが、本実施形態においては、図示しない取り付け装置により自動で行なわれる。それとともに、コンピュータ72に今回加工すべき中間製品66の形状や加工条件などが入力される。入力装置138に、今回の中間製品66に対応するデータが記憶されたフロッピーディスクがセットされ、そのデータが作業者のキー操作によりコンピュータ72に読み込まれるのである。
【0041】
次に、工作物主軸57に取り付けられた中間製品66が今回加工すべき中間製品66であるか否かを確認しつつ中間製品66のタッチセンサ102に対する位置決めを行う予備位置決めルーチンが実行される。その予備位置決めルーチンを図6ないし図9に示す。
【0042】
作業者により予備位置決めルーチンの開始が指示されると、ステップS1(以下単にS1と称する。他のステップについても同じ)において、工作物主軸57を低速で一定方向に回転させるべきことが指示され、その回転と並行してS2ないしS3において、タッチセンサ102が、図9(a) に示す原位置から中間製品66に接近する向きに移動させられる。図9(b) に示すように、タッチセンサ102のプローブ104が中間製品66の歯先面150に接触するまでタッチセンサ102が下降させられ、S4において歯先面150に接触したことを示す検出信号がタッチセンサ102から出力されると、S5においてタッチセンサ102の下降が停止させられる。このときのタッチセンサ102の位置が歯先面検出位置であり、S6において、その歯先面検出位置が今回加工すべき中間製品66の形状に対応しているか否かが判定される。具体的には、プローブ104の工作物主軸57の軸線からの距離が予め設定された許容範囲内であれば作業が続行されるが、許容範囲を超えている場合には、S6の判定がNOとなり、S50に進んで工作物主軸57の回転が停止させられ、S51に進み、セットされた中間製品66が今回加工すべき中間製品66と異なることを示す異常ランプが点灯させられる。さらに、符号Cで行き先が示されるように、図8のS27ないしS30に進んで、タッチセンサ102が原位置まで上昇させられて作業が終了する。なお、原位置はタッチセンサ102のプローブ104が中間製品66から十分離れる位置に設定されている。
【0043】
S6の判定がYESであれば、S7に進んでフラグF1が1とされる。それにより、以後本ルーチンの実行においてS3ないしS7の実行がスキップされる。歯先面150とタッチセンサ102のプローブ104とが接触した状態で、工作物主軸57が引き続き回転させられ、S8ないしS11において、タッチセンサ102が歯先面から離れた回転位置α、すなわちタッチセンサ102の検出信号がONからOFFに切り替わった回転位置αが検出される。S11において、フラグF2が1とされ、以後、本ルーチンの実行においてS9ないしS11の実行がスキップされる。次に、その回転位置αから工作物主軸57が歯みぞの幅の半分の角度だけ回転させられて停止させられる(図7のS12ないしS15参照)。S16ないしS20において、タッチセンサ102が歯丈の半分の距離だけ下降させられ、その位置において停止させられる(図9(c) 歯みぞ検出位置参照)。このときのタッチセンサ104の球状接触部106の球心Cの位置は、図10ないし図12に示す位置に設定されている。中間製品66の軸線であるワーク軸線をXwとし、中間製品66のピッチ円錐面の頂点が原点Owとなるように設定されたワーク座標系を考える。そのワーク座標系において、ワーク軸線Xwに平行な方向における原点Owから距離がD、ワーク軸線からの距離がRとなるように球心Cの位置が設定されているのである。
【0044】
上記タッチセンサ104の下降後に、符号Bで行き先が示されている図8のS21ないしS26に進み、工作物主軸57が低速で左方向に回転させられ、プローブが右側の歯面68に接触すれば回転が停止させられる(図9(d) 歯面検出位置参照)。S25において、工作物主軸57の現在の回転位置が回転位置Aとして記憶される。歯みぞの両側に位置する凸側歯面と凹側歯面とのうち、いずれか一方の歯面68にタッチセンサ102が接触させられることにより予備位置決めが行なわれるのであるが、本実施形態においては、凸側歯面がタッチセンサ102に接触させられることにより、予備位置決めが行なわれる。次にS27ないしS29に進み、タッチセンサ102が上昇させられ、原位置に戻されたならば、S30において全てのフラグFnが初期値0に戻される。
以上で、工作物主軸57に取り付けられた中間製品66の予備位置決めが終了する。
【0045】
上記予備位置決め行程の実施により、タッチセンサ104の球状接触部106との接触により位置決めされる中間製品66の歯面上の点と、その点に対応する加工後のまがりばかさ歯車の歯面上の点(この点を特定点Pと称する)とは、特定点Pにおけるまがりばかさ歯車の歯面に対する法線の方向に、歯切加工による取り代δだけ離れている。また、球状接触部106の球心Cと特定点とは、上記法線方向に取り代δと球状接触部106の半径rの和に等しい距離離れている。そして、球状接触部106の球心Cの位置は前述のように予め定められているため、特定点Pの位置(例えば、ワーク座標系における座標)は演算によって求めることができる。
【0046】
次に本位置決めルーチンが実行される。以下、この本位置決めルーチンについて説明するが、まず正面フライス46によるまがりばかさ歯車の創成歯切について図13を参照しつつ説明する。図14に示す創成歯切は、前記図1に示した歯車加工装置20による歯切の状態を示すものではない。従来から創成歯切に一般的に使用されている工具軸がクレードル軸に対して一定角度チルトさせられた状態でクレードル軸線まわりに揺動させられるタイプの創成歯切装置によりまがりばかさ歯車が創成歯切される状態を示すものである。この図14に基づいて説明を行うのは、この図に示した正面フライス46および中間製品66の運動の方が、図1に示した装置におけるそれらの運動よりも創成歯切の原理に近く、理解が容易であるからである。創成歯切は、正面フライス46をそれの軸線、すなわち、工具軸線のまわりに回転させつつ、その工具軸線をクレードル軸線に対するチルト角を一定に保ってクレードル軸線まわりに揺動させることにより、正面フライス46のブレード160(内刃ブレード160aまたは外刃ブレード160b)に、製品たるまがりばかさ歯車と噛み合って回転するまがりばかさ歯車(仮想かさ歯車と称される)の歯と同じ軌跡を描かせ、中間製品66をまがりばかさ歯車に切削加工するものである。したがって、中間製品66と正面フライス46とは当初図14(a)に示す加工開始位置に位置決めされ、正面フライス46と中間製品66とが正面側から見て時計方向に回転させられつつ、正面フライス46が反時計方向に揺動させられ、図14(b)の状態を経て、図14(c)の加工終了位置に達することにより、1本の歯みぞの加工が終了する。それに対して、図1の歯車加工装置においては、第一移動台28およびハウジング38の移動により工具主軸36がX軸方向およびY軸方向に移動させられるとともに、第二移動台50の移動と旋回台52の旋回とにより工作物主軸57がZ軸方向移動および垂直軸線まわりの回動運動をさせられることにより、上記創成歯切装置におけるのと実質的に同じ運動が正面フライス46と中間製品66とに付与されるのであるが、この運動は図示しにくく、理解しにくいため、創成歯切の原理通りの運動を行う上記タイプの創成歯切装置によりまがりばかさ歯車が創成歯切される状態を図示し、その図に基づいて説明を行うことにしたものである。
【0047】
上記図14(b)の状態が前記特定点Pが正面フライス46のブレード160によって切削される状態である。なお、本実施形態においては、特定点Pが凸側歯面上に設定されているので厳密には、内刃ブレード160aによって切削される。これに対して、タッチセンサ102が凹側歯面に接触させられることにより予備位置決めが行なわれ、特定点Pが凹側歯面上に設定されている場合には、特定点Pは外刃ブレード160bによって切削される。
【0048】
すなわち、正面フライス46は中間製品66の1本の歯みぞの切削加工中に切削加工部位を図15に矢印Fで示すように歯みぞに沿って徐々に変えるのであるが、その途中、特定点P(厳密には図15に示されているのは中間製品66であるため、特定点Pは歯面より前記取り代δ分だけ内部に位置する)を切削加工する状態となるのである。この状態における特定点Pの原点からの角度、すなわち、プローブ104の球状接触部106の球心Cとは丁度180度隔たった点である回転の原点からの角度は図11に符号Wp´で示す角度である。中間製品66がプローブ104の球状接触部106により位置決めされた状態における特定点Pの原点からの角度はWpであり、プローブ104により位置決めされた特定点Pを丁度正面フライス46により加工される位置まで回転させるために必要な中間製品66の回転角度はWp−Wp´である。そして、180−Wpが前記「取り代δと球状接触部106の半径rの和に等しい距離」に対応する角度であるから、角度Wpは既知の値であり、角度Wp´も中間製品66から製造されるまがりばかさ歯車と正面フライス46との諸元が決まれば一義的に決まる値であるため、上記中間製品66の回転角度Wp−Wp´は計算で求めることができる。
【0049】
また、創成歯切は、前述のように、正面フライス46と中間製品66とが図14(a)に示す加工開始位置に位置決めされた後、両者が正面側から見て時計方向に回転させられつつ、正面フライス46が反時計方向に揺動させられ、センタオブロールと称される位置を経て、図14(c)の加工終了位置に達することにより1本の歯みぞが加工されるものである。すなわち、正面フライス46の回転軸線が、図13に示すように、クレードル軸線に対して一定のチルト角でチルトさせられた状態で、クレードル軸線まわりに、角度Qsの加工開始位置から角度Qcのセンタオブロール位置を経て角度Qeの加工終了位置まで揺動させられるとともに、中間製品66が図12に示す角度Wsの加工開始位置から角度Wcのセンタオブロール位置を経て角度Weの加工終了位置まで回転させられるのである。
【0050】
そして、通常は、まず上記センタオブロールにおけるまがりばかさ歯車と正面フライスとの位置が求められ、その位置を基準として上記加工開始位置および加工終了位置を含む多数の位置が求められて、それら多数の位置の集合を含む創成歯切プログラムが作成される。また、上記特定点Pが丁度正面フライス46により加工される位置は、その創成歯切プログラムの実行により発生させられるまがりばかさ歯車と正面フライスとの運動軌跡上の一位置であるから、その位置を基準としてまがりばかさ歯車(ひいては中間製品66)と正面フライス46との加工開始位置を計算で求めることができる。図11における中間製品66の角度Wsと図12における正面フライス46の角度Qsとが計算で得られるのである。なお、正面フライス46の回転軸線まわりの揺動角度と中間製品66の回転角度との間には、次の関係がある。
(Wc−Ws)/(Qc−Qs)=(Wp−Wc)/(Qp−Qc)=(We−Wp)/(Qe−Qp)=Gr
ただし、Grは前記仮想まがりばかさ歯車と中間製品66から加工される製品としてのまがりばかさ歯車とのギヤ比である。
【0051】
以上の説明から明かなように、S17ないしS19の実行によりプローブ104を中間製品66の歯みぞ内に位置させる工程が第一工程であり、S22ないしS24の実行により中間製品66の歯面をプローブ104に接触させる工程が第二工程である。そして、この第二工程で位置決めされた中間製品66を角度(Ws−Wp)だけ回転させ、正面フライス46を角度Qsの位置まで揺動させ、かつ、中間製品66と正面フライスとをX,YおよびZ軸方向の予め定められた相対位置に位置決めする工程が第三工程であり、角度(Ws−Wp)が設定角度である。角度(Ws−Wp)は負の値であり、中間製品66は負方向、すなわち図12,図14等において反時計方向に回転させられることになる。なお、図1に示す歯車加工装置においては、見かけ上は上記位置決め工程と異なるが、実質的には同じ位置決め工程が実施されることとなる。
【0052】
上記のように、プローブ104によって予備位置決めされた歯みぞ自体が正面フライス46によって歯切加工される位置へ移動させられるようにすることも可能であり、この態様も本発明の一実施形態であるが、この場合には、第三工程において中間製品66を回転させるべき設定角度が角度(Ws−Wp)と大きくなる。それに対し、中間製品66の複数の歯みぞは、ほぼ正確に一定の角度θの間隔で形成されているため、プローブ104によって予備位置決めされた歯みぞとは異なる歯みぞを正面フライス46によって歯切加工される位置へ移動させても結果は同じである。そこで、上記角度(Ws−Wp)とN×θの差が最小となる整数Nの値Naを求め、第三工程において中間製品66が角度|(Ws−Wp)−Na×θ|だけ回転させられるようにすることが望ましい。この場合には、角度|(Ws−Wp)−Na×θ|が設定角度となり、この角度は歯みぞの形成角度間隔θの1/2以下であるため、第三工程において中間製品66を設定角度回転させるために必要な時間が短くて済む。
【0053】
以上説明した本位置決め工程は、実際には図16のフローチャートで示される本位置決めルーチンの実行により行われる。この本位置決めルーチンは前記図6〜8の予備位置決めルーチンに続いて実行される。まず、S41において、昇降モータ34,第二移動モータ54,旋回モータ56,工作物主軸回転モータ59等、第一移動モータ29,工具主軸回転モータ40および軸方向移動モータ42以外の各モータの回転が開始され、S42において、目標位置に達したモータから順次停止させられる。それにより、工具主軸36が加工開始位置に対応するY方向位置に位置決めされる一方、工作物主軸57が上記設定角度回転させられて加工開始位置に位置決めされるとともに加工開始時の回動位置およびZ軸方向位置に位置決めされる。続いて、S43ないしS46の実行により、工具主軸36が加工開始位置まで前進させられる。以上によって、工具主軸36に保持された正面フライス46と工作物主軸57に保持された中間製品66とが加工開始位置に位置決めされ、本位置決め工程が終了する。本実施形態において、工具主軸36が最後に軸方向に前進させられるのは、位置決め工程の実施中に正面フライス46と中間製品66とが干渉することを確実に回避するためであり、この目的を達成し得る限り、各モータは任意の順序で作動開始および停止させ得る。
【0054】
その後、工具主軸回転モータ40による工具主軸36の回転が開始されるとともに、昇降モータ34,第二移動モータ54,旋回モータ56,工作物主軸回転モータ59等の創成歯切用の制御が開始され、小距離のエアカットの後、正面フライス46による中間製品66の切削加工が開始される。そして、正面フライス46と中間製品66とが加工終了位置に達すれば、1本の歯みぞの凸側歯面の切削加工が終了する。続いて、軸方向駆動モータ42により工具主軸36を後退させた後、工作物主軸回転モータ59によって中間製品66を予め定められた角度回転させ、正面フライス46による凹側歯面の切削加工が可能な回転位置に位置決めし、この位置から昇降モータ34,第二移動モータ54,旋回モータ56,工作物主軸回転モータ59等の創成歯切用の制御を行って、凹側歯面の切削加工を実行し、1本の歯みぞの仕上げ加工を行ってもよい。
【0055】
しかし、多くの場合は、1本の歯みぞの凸側歯面の切削加工が終了すれば、他の歯みぞの凸側歯面が順に切削加工され、全ての歯みぞの凸側歯面の切削加工が終了すれば、正面フライス46が凹側歯面の切削加工が可能な正面フライスに交換されて各歯みぞの凹側歯面の切削加工が行なわれる。なお、全ての凸側歯面の切削加工が終了した後で、中間製品66が工作物主軸57から取り外されて、別の歯車加工装置の工作物主軸に取り付けられ、その歯車加工装置により凹側歯面の切削加工が行なわれるようにしてもよい。後者の場合には、中間製品のそれぞれについて加工工具を交換する作業を省略することができる。
【0056】
以上の説明から明らかなように、本実施形態における位置決め方法によれば、加工開始位置が設定されていない中間製品66についても、自動的に中間製品66と正面フライス46とを加工開始位置に位置決めすることができる。
作業者による加工開始位置の設定作業が不要となるので、歯車加工装置の使い勝手が向上する。さらに、加工開始位置に位置決めする作業が迅速に行なわれるので作業能率が向上する。
【0057】
上記実施形態においては、歯みぞの一方の歯面68がタッチセンサ102のプローブ104と接触する回転位置に中間製品66が位置決めされたが、プローブ104と歯みぞの中央とが一致する状態に位置決めされるようにしてもよいし、それ以外の回転位置に位置決めされるようにしてもよい。以下、歯みぞの中央がプローブ104の球状接触部106の球心と一致するように位置決めされる態様について具体的に説明する。
【0058】
この実施形態においては、上記実施形態における図8のS26とS27との間に図17に示す各ステップが追加される。図8のS26の実行後、図17のS61ないしS66に進み、工作物主軸57が反時計方向に回転させられてプローブ104が右側の歯面68に接触する回転位置が検出され、その回転位置が回転位置Bとして記憶される。次にS68において、上記回転位置Bと前記S25において記憶された回転位置Aとに基づいて現に取り付けられている中間製品66の歯みぞの実際の幅が算出され、S69において、その幅が今回加工すべき歯みぞの幅とほぼ一致しているか否かが判定される。歯みぞの幅が許容範囲であれば作業が続行されるが、許容範囲を超えている場合には、S69の判定がNOとなり、S70に進んで異常ランプが点灯させられた後、S27ないしS30が実行され、タッチセンサ102が原位置に戻されて作業が中止させられる。
【0059】
それに対して、S69の判定がYESであればS71を経て、S72ないしS76に進み、取得された歯みぞの幅の半分の回転角度だけ工作物主軸57が時計方向に回転させられ、その位置で停止させられる。次にS27ないしS29が実行され、タッチセンサ102が上昇させられ、原位置に戻されたならば、S30において全てのフラグFnが初期値0に戻される。以上で、工作物主軸57に取り付けられた中間製品66の予備位置決めが終了する。
【0060】
この態様によれば、歯先面だけでなく、1本の歯みぞの両側の歯面を検出して歯みぞの幅を算出することにより、今回加工すべき中間製品を確認することができる。
【0061】
上記実施形態は、まがりばかさ小歯車の中間製品66を仕上げ加工するために、まがりばかさ歯車を仮想歯車とし、正面フライス46によって創成歯切を行う場合の実施形態であるが、いずれの歯切加工においても上記実施形態とほぼ同様に加工開始位置を設定することができる。例えば、冠歯車を仮想歯車とし、まがりばかさ大歯車を成形歯切する場合であっても、まがりばかさ歯車を仮想歯車とし、まがりばかさ大歯車を創成歯切する場合であっても、加工工具として正面ホブを使用する場合であっても本発明を適用して加工開始位置を設定することができる。また、まがりばかさ状歯車の一種であるハイポイドギヤの加工時における加工開始位置の設定にも本発明を適用することができる。
【0062】
上記各実施形態においては、第一工程および第二工程を含む予備位置決め工程の実行により予備位置決めされた中間製品66が、その中間製品66の設定角度の回転を伴う第三工程(本位置決め工程)の実行により、正面フライス46に対して加工開始位置に位置決めされるようになっていたが、第三工程における中間製品66の設定角度の回転を省略することも可能である。例えば、パラレルリンク機構と称される機構を備えたまがりばかさ状歯車の歯切加工装置においては、工具主軸と工作物主軸との一方を他方に対して任意の3次元方向に傾けることができるため、中間製品66を設定角度回転させる代わりに、工具主軸と工作物主軸との相対的な方向を変更することにより、予備位置決めされた中間製品に対して歯切工具を加工開始位置に位置決めすることができるのである。この実施形態が請求項2に係る発明の一実施形態である。
【0063】
また、前記図1ないし図16の実施形態に関して説明した設定角度として「取り代および半径分」と「歯みぞのピッチの端数分」との和に相当する設定角度だけ中間製品を回転させる代わりに、第一工程における検出器の位置をそのような回転を必要としない位置に設定しておくことも可能である。例えば、検出器が基準位置にある状態で、前述の方法により「取り代および半径分」および「歯みぞのピッチの端数分」の和に相当する設定角度を計算により求めた後、その設定角度の回転に相当する分だけ検出器の位置を変更すればよいのである。この場合には、検出器に基づいて被加工物たる中間製品の回転位置を決めれば、その回転位置が取りも直さず加工開始位置であることになるのである。ただし、本実施形態においては、検出器の位置を、図18に示すように中間製品の回転軸線と直交する一平面内の任意の位置に位置決めし得るようにすることが必要である。図に示す検出装置は、前記図2〜4に示した検出装置にさらに別の移動装置を付加したものである。この別の移動装置は、中間製品66の回転軸線とタッチセンサ102の軸方向とに直角な方向に延びるガイド170と、そのガイド170に沿って前記実施形態におけるプレート82に相当するスライド172を移動させる移動モータ174とを有し、図示を省略する制御装置の制御によって、昇降モータ110と共同してタッチセンサ102を中間製品の回転軸線と直交する一平面内の任意の位置に位置決めする。移動モータ174も昇降モータ110と同様に回転位置を正確に制御可能なモータなのである。三次元空間内の任意の位置に移動可能とすれば、さらに自由度に富んだ位置決め方法の実施が可能となる。
【0064】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態である位置決め装置を有する歯車加工装置を示す平面図である。
【図2】 上記位置決め装置の要部を示す側面(一部断面)図である。
【図3】 図2における正面図である。
【図4】 図2における平面図である。
【図5】 上記歯車加工装置の制御部を示すブロック図である。
【図6】 上記制御部のコンピュータに記憶された予備位置決めルーチンの一部を示すフローチャートである。
【図7】 上記制御部のコンピュータに記憶された予備位置決めルーチンの別の部分を示すフローチャートである。
【図8】 上記制御部のコンピュータに記憶された予備位置決めルーチンのさらに別の部分を示すフローチャートである。
【図9】 上記予備位置決めルーチンを説明するための図である。
【図10】 本実施形態における本位置決め工程を説明するための図である。
【図11】 上記本位置決め工程を説明するための別の図である。
【図12】 上記本位置決め工程を説明するためのさらに別の図である。
【図13】 上記本位置決め工程を説明するためのさらに別の図である。
【図14】 本実施形態によって位置決めされた中間製品が正面フライスによって歯切加工される状態を概念的に示す図であり、(a)は加工を開始する直前の状態、(b)は加工の途中の状態、(c)は加工が終了した状態を示す図である。
【図15】 上記中間製品の斜視図である。
【図16】 前記制御部のコンピュータに記憶された本位置決めルーチンを示すフローチャートである。
【図17】 本発明の別の実施形態である位置決め装置を有する歯車加工装置の制御部のコンピュータに記憶された予備位置決めルーチンを部分的に示すフローチャートである。
【図18】 本発明のさらに別の実施形態である位置決め方法におけるタッチセンサの正面図である。
【符号の説明】
20:歯車加工装置 24:工具主軸台 26:工作物主軸台
46:正面フライス 66:中間製品66 68:歯面 80:位置検出装置 102:タッチセンサ 104:接触子 106:球状接触部 150:歯先面
Claims (9)
- 既に歯みぞが形成されているまがりばかさ状歯車の中間製品とその中間製品に機械加工を施して加工品とする加工工具との、それら中間製品と加工工具との各基準点の3次元空間内における位置とそれらの回転軸線の方向とで規定される相対位置と、前記中間製品の回転軸線まわりの回転位置とを決める方法であって、
前記中間製品の前記歯みぞの位置を検出する検出器を予め定められた位置に位置決めする第一工程と、
前記検出器が、その検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出するまで前記中間製品を回転させる第二工程と、
その第二工程において回転させられた回転位置から前記中間製品を予め設定された設定角度回転させるとともに、その中間製品と前記加工工具とを、予め設定された設定相対位置であって、加工工具が中間製品に接触を開始する位置からエアカット移動分だけ離れた位置である加工開始位置に位置決めする第三工程と、
前記設定角度と前記加工開始位置とを、前記第三工程において前記設定角度回転させられた回転位置および前記加工開始位置から、前記中間製品と前記加工工具とに、その加工工具と前記まがりばかさ状歯車との諸元によって決まる加工工具の回転および揺動と中間製品の回転とを実質的に含む加工運動が付与されれば、中間製品が前記加工品に加工されることとなる設定角度および加工開始位置として、計算により取得する工程と
を含むまがりばかさ状歯車の中間製品と加工工具との位置決め方法。 - 前記加工工具が前記中間製品の歯面を切削加工して前記加工品とする歯切工具であり、前記設定角度が、 (a) 前記第二工程において前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることが前記検出器により検出された際における前記中間製品の回転位置と、前記加工品の歯みぞの前記検出器に対応する部分である特定点が前記歯切工具により加工される状態における前記中間製品の回転位置との差と、 (b) 前記中間製品の前記特定点と前記加工開始位置との間の位相差との和とされる請求項1に記載の位置決め方法。
- 前記加工工具が前記中間製品の歯面を切削加工して前記加工品とする歯切工具であり、前記設定角度が、 (a) 前記第二工程において前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることが前記検出器により検出された際における前記中間製品の回転位置と、前記加工品の歯みぞの前記検出器に対応する部分である特定点が前記歯切工具により加工される状態における前記中間製品の回転位置との差と、 (b) 前記中間製品の前記特定点と前記加工開始位置との間の位相差と、 (c) 前記検出器により検出される歯みぞと前記加工開始位置から加工が開始された際に前記歯切工具により最初に加工される歯みぞとの位相差との和とされる請求項1に記載の位置決め方法。
- 前記加工工具が前記中間製品の歯面を切削加工して前記加工品とする歯切工具であり、前記設定角度が、 (a) 前記第二工程において前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることが前記検出器により検出された際における前記中間製品の回転位置と、前記加工品の歯みぞの前記検出器に対応する部分である特定点が前記歯切工具により加工される状態における前記中間製品の回転位置との差と、 (d) 前記中間製品の前記特定点と前記加工開始位置との間の位相差から、前記歯みぞの整数ピッチ分の位相差を差し引いたピッチの端数分の位相差との和とされる請求項1に記載の位置決め方法。
- 既に歯みぞが形成されているまがりばかさ状歯車の中間製品とその中間製品に機械加工を施して加工品とする加工工具との、それら中間製品と加工工具との各基準点の3次元空間内における位置とそれらの回転軸線の方向とで規定される相対位置と、前記中間製品の回転軸線まわりの回転位置とを決める方法であって、
前記中間製品の前記歯みぞの位置を検出する検出器を予め定められた位置に位置決めする第一工程と、
前記検出器が、その検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出するまで前記中間製品を回転させる第二工程と、
その第二工程において回転させられた回転位置にある中間製品と前記加工工具とを、予め設定された設定相対位置であって、加工工具が中間製品に接触を開始する位置からエアカット移動分だけ離れた位置である加工開始位置に位置決めする第三工程と、
前記加工開始位置を、その加工開始位置から、前記中間製品と前記加工工具とに、その加工工具と前記まがりばかさ状歯車との諸元によって決まる加工工具の回転および揺動と中間製品の回転とを実質的に含む加工運動が付与されれば、中間製品が前記加工品に加工されることとなる加工開始位置として、計算により取得する工程と
を含むまがりばかさ状歯車の中間製品と加工工具との位置決め方法。 - 前記検出器が、先端に球状接触部を有するプローブを備えてその球状接触部の対象物に対する接触を検出するタッチセンサを含み、前記第一工程が、
前記中間製品を回転させつつその中間製品に前記タッチセンサを接近させ、前記球状接触部が前記中間製品の歯先面と接触したとき停止させる工程と、
そのタッチセンサの停止後、前記中間製品を、その中間製品の歯先面が前記球状接触部に接触しなくなるまで回転させる工程と、
前記中間製品を、前記歯先面が前記球状接触部に接触しなくなってから予め定められた角度回転させる工程と、
前記タッチセンサを前記中間製品の回転軸線に接近させて、前記球状接触部を前記歯みぞ内に位置させる工程とを含み、前記第二工程が、前記中間製品を、その中間製品の前記歯みぞの両側の歯面の一方が前記球状接触部に接触するまで回転させる工程を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の位置決め方法。 - 既に歯みぞが形成されているまがりばかさ状歯車の中間製品とその中間製品に機械加工を施して加工品とする加工工具との、それら中間製品と加工工具との各基準点の3次元空間内における位置とそれらの回転軸線の方向とで規定される相対位置と、前記中間製品の回転軸線まわりの回転位置とを決める装置であって、
前記中間製品の前記歯みぞの位置を検出する検出器と、
その検出器を前記中間製品に対して予め定められた位置に位置決めする第一手段と、
前記検出器がその検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出するまで、前記中間製品を回転させる第二手段と、
その第二手段により回転させられた回転位置から前記中間製品を予め設定された設定角度回転させるとともに、その中間製品と前記加工工具とを、予め設定された設定相対位置であって、加工工具が中間製品に接触を開始する位置からエアカット移動分だけ離れた位置である加工開始位置に位置決めする第三手段と、
前記設定角度と前記加工開始位置とを、前記第三手段により前記中間製品が前記設定角度回転させられた回転位置および前記加工開始位置から、前記中間製品と前記加工工具とに、その加工工具と前記まがりばかさ状歯車との諸元によって決まる加工工具の回転および揺動と中間製品の回転とを実質的に含む加工運動が付与されれば、中間製品が前記加工品に加工されることとなる設定角度および加工開始位置として、計算により取得する手段と
を含むまがりばかさ状歯車の中間製品と加工工具との位置決め装置。 - 既に歯みぞが形成されているまがりばかさ状歯車の中間製品とその中間製品に機械加工を施して加工品とする加工工具との、それら中間製品と加工工具との各基準点の3次元空間内における位置とそれらの回転軸線の方向とで規定される相対位置と、前記中間製品の回転軸線まわりの回転位置とを決める装置であって、
前記中間製品の前記歯みぞの位置を検出する検出器と、
その検出器を前記中間製品に対して予め定められた位置に位置決めする第一手段と、
前記検出器がその検出器に対して前記歯みぞが予め定められた相対回転位置にあることを検出するまで、前記中間製品を回転させる第二手段と、
それら中間製品と前記加工工具とを、予め設定された設定相対位置であって、加工工具が中間製品に接触を開始する位置からエアカット移動分だけ離れた位置である加工開始位 置に位置決めする第三手段と、
前記加工開始位置を、その加工開始位置から、前記中間製品と前記加工工具とに、その加工工具と前記まがりばかさ状歯車との諸元によって決まる加工工具の回転および揺動と中間製品の回転とを実質的に含む加工運動が付与されれば、中間製品が前記加工品に加工されることとなる加工開始位置として、計算により取得する手段と
を含むまがりばかさ状歯車の中間製品と加工工具との位置決め装置。 - 前記第一手段が、前記検出器を前記中間製品の回転軸線と直交する一平面内の任意の位置に位置決めし得る移動装置を含む請求項8に記載の位置決め装置。
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