JP3759623B2 - Wntポリペプチドについての使用 - Google Patents

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Description

発明の分野
本出願は、Wntポリペプチド("Wnt")についての使用に関する。特に本発明は、例えば造血幹/始原細胞といった原始的造血細胞の増殖、分化及び/または維持を促進するためのWntポリペプチドについての使用に関する。
発明の背景
A.造血作用
赤血球細胞と白血球細胞が骨髄に位置する細胞の分裂を通じて置換される血液細胞形成の工程は、造血作用と呼ばれる。造血作用のレビューについては、Dexter及びSpooncer(Ann.Rev.Cell Biol.,3:423-441[1987])参照。
異なる細胞系列に属する血液細胞の多くの異なるタイプが存在する。天然の血液細胞は、異なる機能のために特異化している。例えば、成熟赤血球は、O2及びCO2輸送に関与する;Tリンパ球及びBリンパ球は、それぞれ免疫応答を介在する細胞及び抗体に関与する:血小板は血液凝固に必要である;そして顆粒球及びマクロファージは、一般的な清掃細胞及びアクセサリー細胞として機能する。顆粒球はさらに、好塩基球、好酸球、好中球及びマスト細胞に分化しうる。
様々な血液細胞タイプのそれぞれは、より制限された細胞タイプの系列を生ずる始原細胞またはColony Forming Units(CFU)に、自己再生を実施するまたは生まれ変わることが可能な多能性または全能性幹細胞から生ずる。幹細胞はその自己再生についての能力を急速に減少するので、それらは次第に制限された系列となる。幹細胞は多能性細胞(Dexter及びSpooncer,上記参照によって"CFC-Mix"と呼ばれる)に発達しうることが示されている。CFC-Mix細胞のいくつかは再生を実施し、そこでは他のものが成熟ミエロイド細胞(例えば好中球、巨核球、マクロファージ、好塩基球及び赤血球)に次第に発達する系列制限的子孫を導く。同様に、多能性幹細胞は、それぞれ成熟B細胞及びT細胞に分化するPreBリンパ球及びPreTリンパ球系列に変化しうる。始原細胞はその子孫によって定義される、例えば顆粒球/マクロファージコロニー形成始原細胞(GM-CFU)は、好中球またはマクロファージに分化する;推定の赤血球系バースト形成ユニット(BFU-E)は、成熟赤血球に変化する赤血球系コロニー形成ユニット(CFU-E)に分化する。同様に、Meg-CFU,Eos-CFU及びBas-CFU始原細胞は、それぞれ巨核球、好塩基球及び好酸球に分化しうる。
骨髄における多能性細胞の数は極端に低く、約10,000当たり一つまたは100,000細胞当たり一つの割合と見積もられている(Boggs等,J.Clin.Inv.,70:242[1982]及びHarrison等,PNAS,85;822[1988])。したがって、幹細胞の特性指摘は困難である。それ故、多能性幹細胞を増やすための様々なプロトコールが開発されている。例えば、Matthews等,Cell,65:1143-1152[1991];Wo 94/02157;Orlic等,Blood,82(3):762-770[1993];及びVisser等,Stem Cells,11(2):49-55[1993]参照。
様々な系列特異的因子が、造血細胞の細胞成長、分化及び機能化をコントロールすることが示されている。これらの因子またはサイトカインには、インターロイキン(例えばIL-3)、顆粒マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CFS)、顆粒コロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポイエチン(Epo)、リンホトキシン、スチール因子(SLF)、腫瘍壊死因子(TNF)及びガンマインターフェロンが含まれる。これらの増殖因子は、造血作用における一般化された役割から系列特異的な役割まで、または両者の組み合わせにおいて、広範囲の活性を有する。例えば、IL-3は、多能性幹細胞において機能するようであるのと同様に、顆粒/マクロファージ、好酸球、巨核球、赤血球またはマスト細胞系列に制限された始原細胞においても機能するようである。対照的に、Epoは一般的に完全に成熟した赤血球系列始原細胞においてのみ機能する。
B.造血環境及び胚形成
全ての血液系列の生涯にわたる生産を提供する造血幹細胞の能力は、特異的な血液系列を生ずる縛られた始原細胞の生産である、該幹細胞の形成性の間のバランス、及び非分化状態における幹細胞の複製(自己再生)によって達成される。in vivoで造血幹細胞の形成性及び自己再生を調節する機能は、定義することが困難である。しかしながら、主要な寄与因子は、細胞固有の影響及び環境的な影響の組み合わせを表す(Morrison等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92;10302-10306[1995])。造血微環境の重要性は、支質上で培養された造血細胞が、低頻度ではあるがHSCの維持を許容する長期的な骨髄カルチャーシステムの使用を通じて確立されている(Fraser等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:1968-1972,[1992];Wineman等,Blood,81:365-372[1993])。
カルチャーにおける造血細胞維持の証明は、候補の「幹細胞」因子を同定する努力を導いている。幹細胞維持における造血サイトカインの役割は、培養細胞の移植に引き続き幹細胞の集団のin vitroカルチャーに対して精製因子を直接的に添加することによって研究されている(Muench等,Blood,81:3463-3473[1993];Wineman等,上記参照[1993];Rebel等,Blood,83:128-136[1994])。IL-3,IL-6及びKLのような周知の「即効性」サイトカインのほとんどは、具体的に維持が許容されている一方で、より縛られた始原細胞の増殖を刺激するが、誇張することなく、長期的多能性再集団化が可能な細胞の増殖をすることも示されている(Williams,Blood,12:3169-3172[1993];Muller-Sieberg及びDeryugira,Stem Cells,13:477-486[1995])。これらのデータは細胞の形成性及び再集団化機能が、サイトカイン処理によって保存されている一方で、これらの全能性細胞の自己再生を促進する分子は未知のままである。
移植研究により、全能性細胞の運命を調節するシグナルは、胚と大人の骨髄において同様であることが示されている。11日目の胎児肝、卵黄嚢、または大動脈/生殖腺/中腎(AGM)領域由来の細胞は大人の髄を再生産し得、長期的多能性造血作用を持続する非固有的な役割に適切に応答する(Muller等,Immunity,1:291-301[1994])。胚造血作用は赤血球細胞系列に大きく依存しているが、胚微環境は非分化状態における全能性幹細胞の維持に明白に寄与している。これらの細胞全能性は、胚形成の間サイクリングしている(Zeigler等,上記参照[1994];Morrison等,上記参照[1995];Rebel等,Blood,87:3500-3507[1996])。
哺乳動物においては、造血前駆体は、胚外及び腹側中胚葉、卵黄嚢、またはAGM領域において生じる(Dzierzak及びMedvinsky,Trends Genet.,11:359-366[1995];Zon,Blood,86:2876-2891[1995])。両生類の胚においては、同等の領域は、腹側血島中胚葉及び背側外側板中胚葉に存在する(Kessler及びMelton,Science,266:596-604[1994];Zon,上記参照,1995;Tam及びQuinlin,Curr.Biol.,6:104-106[1996]にレビューされている)。Xenopusにおいて腹側中胚葉の細胞の運命の決定を潜在的に調節する分泌因子には、Wnt,FGF及びBMP-4が含まれる(Christian及びMoon,Bio Essays,15:135-140[1993a];Zon,上記参照[1995]にレビューされている)。XWnt-8(Christian及びMoon,Genes Dev.,7:13-28[1993b])及びXWnt-11(Ku及びMelton,Developmant,119:1161-1173[1993])の胚の発現は、将来の腹側及び背側中胚葉の領域に位置し、XWnt-8の発現は、FGF及びBMP-4のような腹側化因子によって誘導されうる。
C.Wnt遺伝子ファミリー
Wntは、円形動物、昆虫、軟骨魚類及び脊椎動物においてそのメンバーが見出されている大きな遺伝子ファミリーによってコードされている(Sidow,1994)。Wntは多くの多様化した種がWnt遺伝子を複合的に保存しているため、様々な発達及び生理的プロセスにおいて機能すると考えられる(mcMahon,Trends Genet.,8:236-242[1992];Nusse及びVarmus,Cell,69:1073-1087[1992])。Wnt遺伝子は、いくつかの原始的細胞タイプにおいて活性なパラクリンまたはオートクリンとして機能すると考えられる分泌糖タンパク質をコードする(McMahon,上記参照[1992];Nusse及びVarmus,上記参照[1992])。Wnt増殖因子ファミリーには、マウスにおいて同定された10より多い遺伝子が含まれ(Wnt-1,2,3a,3b,4,5a,5b,6,7a,7b,8a,8b,10b,11,12)(例えばGavin等,Denes Dev.,4:2319-2332[1990];Lee等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:2268-2272;Christiansen等,Mech.Dev.,51:341-350[1995]参照)、及びcDNAクローニング(例えばVant Veer等,Mol.Cell.Biol.,4:2532-2534[1984]参照)ヒトにおいて同定された少なくとも7の遺伝子が含まれる(Wnt-1,2,3,4,5a,7a及び7b)。Wnt-1プロトオンコジーン(int-1)は、マウス乳腫瘍ウイルス(NNTV)のよってウイルスDNA配列の挿入のため誘導される乳腫瘍からもともと同定された(Nusse及びVarmus,Cell,31:99-109[1982])。大人のマウスにおいては、Wnt-1 mRNAの発現レベルは、精子発達の後期の間精巣においてのみ検出される。Wnt-1タンパク質は約42KDaであり、アミノ末端疎水性領域を含み、該領域は分泌のためのシグナル配列として機能する(Nusse及びVarmus,上記参照)。Wnt-2/irpの発現は、マウス胎児及び大人組織において検出され、その分布はWnt-1についての発現パターンとオーバーラップしない。Wnt-3は、マウス乳腫瘍形成と関連する。マウス胚におけるWnt-3の発現は、神経繊維及び肢芽において検出される。Wnt-5aの転写は、9.5から14.5日の間で発達中の前後の肢で検出され、最高レベルが肢の末端部で末端外胚葉に集中している(Nusse及びVarmus,上記参照[1992])。最近、Wnt-xと呼ばれるWnt増殖因子が、骨組織及び骨由来細胞においてWnt-x発現の検出と共に記載された(PCT/US94/14708:WO95/17416)。成熟骨芽細胞の維持におけるWnt-xの役割、及びWnt-x増殖因子の治療薬としてまたは骨関連疾患を治療する他の治療薬の開発における使用もまた記載された。
Wntは、局所的細胞シグナリングにおいて役割を果たす。生化学的研究により、分泌Wntタンパク質の多くが、培地に遊離して拡散するよりもむしろ細胞表面または細胞外マトリックスに関して見出されうることが示されている(Papkoff及びSchryver,Mol.Cell.Biol.,10:2723-2730[1990];Bradley及びBrown,EMBO J.,9:1569-1575[1990])。
Wnt遺伝子におけるミュータントの研究により、増殖コントロール及び組織パターン化におけるWntの役割が同定されている。Drosophilaにおいては、wingless(wg)はWnt遺伝子をコードし(Rijsewik等,Cell,50:649-657[1987])及びwgミューテーションは胚の外胚葉、神経発生及び想像上の横方向の成長のパターンを改変する(Morata及びLawerence,Dev.Biol.,56:227-240[1977];Baker,Dev.Biol.,125:96-108[1988];Klingensmith及びNusse,Dev.Biol.,166:396-414[1994])。Caenorhabditis elegansにおいては、lin-44は非対称的な細胞分裂に必要であるWntをコードする(Herman及びHorvitz,Development,120:1035-1047[1994])。マウスにおけるノックアウトミューテーションにより、Wntが脳発達(McMahon及びBradley,Cell,62:1073-1085[1990];Thomas及びCappechi,Nature,346:847-850[1990])、腎臓に対する胚原基の成長(Stark等,Nature,372:679-683[1994])、尾芽(Takada等,Genes Dev.,8:174-189[1994])、及び肢芽(Parr及びMcMahon,Nature,374:350-353[1995])において必須であることが示されている。乳腺におけるWntの過剰発現は、乳過形成(McMahon,上記参照[1992];Nusse及びVarmus,上記参照[1992])、及び早発性槽形成(Bradbury等,Dev.Biol.,170:553-563[1995])を引き起こしうる。哺乳動物造血作用におけるWntの役割は、以前には示唆も考慮もされていない。
Wnt-5a及びWnt-5bは、7-8日のネズミ胚の後ろ及び背側中胚葉と、胚外中胚葉において発現される(Gavin等,上記参照[1990])。これらの胚ドメインは、複数の造血前駆体及びHSCが由来するAGM領域及び卵黄嚢組織に寄与する(Dzierzak及びMedvinsky,上記参照[1995];Zon,上記参照[1995];Kanatsu及びNishikawa,Development,122:823-830[1996])。Wnt-5a,Wnt-10b及び他のWntは肢芽で検出されており、Wnt-7bで示されているように、早期骨微環境の形成及びパターンニングにおいての役割の可能性を示している(Gavin等,上記参照[1990];Christiansen等,Mech.Devel.,51:341-350[1995];Parr及びMcMahon,上記参照[1995])。
D.造血性疾患及び疾病
化学療法及び放射線療法は、ガン患者における血液細胞集団の劇的な減少を引き起こす。少なくとも500,000のガン患者が米国及びヨーロッパで、さらに200,000が日本で、毎年化学療法及び放射線療法を受けている。再生不良性貧血、初期免疫不全症及び急性白血病において有効な骨髄移植治療(全身放射線照射に引き続く)は、医療の分野でより広範に実施されるようになっている。少なくとも15,000のアメリカ人が、毎年骨髄移植を受けている。他の疾患は、完全なまたは選択的な血液細胞系列における減少を引き起こしうる。これらの疾患の例としては、貧血(大球性貧血及び再生不良性貧血を含む);血小板減少症;発育不全症;免疫(自己免疫)血小板減少性紫斑病(ITP);及びHIV誘導性ITPが含まれる。
これらの患者の血液細胞集団の再構成を促進しうる製薬品が必要とされる。
したがって、原始造血細胞の増殖及び/または分化及び/または維持を促進するための方法を提供することが本発明の目的である。上記方法は、造血幹細胞の、それ故成熟血液細胞系列の再集団化を促進するために有用である。これは、哺乳動物が疾患、放射線、化学療法の結果として、造血細胞または成熟血液細胞の減少に苦しんでいる場合に望ましい。この方法はまた、ex vivoで上記幹細胞、及び上記造血細胞由来の成熟血液細胞系列の大規模な集団を生産するためにも有用である。
これら及び他の目的は、本明細書を全体として考慮することで当業者に明らかであろう。
発明の概要
一つの面として、本発明はWnt-5aのようなWntポリペプチド("Wnt")が造血作用で役割を演じるというここでの発見に関する。もう一つの面として、本発明は、上記Wntが造血調節因子として機能し、造血幹細胞の増殖を直接的に刺激し、多細胞性凝集物または原始芽細胞の「フォーカス」の形成を引き起こし、受容体シグナリングを介して全能性コロニー形成細胞の全体の数を増大しうるという観察に基づく。Wntは、早期造血前駆体(即ち造血幹/始原細胞)のレベルに直接的に作用するようである。上記増大した幹細胞集団は、骨髄造血、赤血球生成(例えば脾臓性赤血球生成)及びリンパ球産生のための細胞のソースとして機能しうる。したがって、Wntはin vitroまたはin vivoのそれぞれで造血幹/始原細胞の増殖及び/または分化及びまたは維持を刺激するために用い得る(例えば造血性疾患または疾病を治療するために)。
それ故、本発明はWntポリペプチドを用いて細胞の増殖、分化及び/または維持を促進するための方法を提供し、該方法は該細胞の増殖及び/または分化及び/または維持(例えば生存)を刺激するのに有効であるWntポリペプチドの量と、該細胞を接触させる工程を含む。好ましい実施態様として、Wntポリペプチドにさらされる細胞は、例えば造血幹/始原細胞といった造血前駆体である。例えば、Wntポリペプチドは、Wnt-1,Wnt-5AまたはWnt-10bでありうる。in vivoでの使用については、選択されたWntポリペプチドは、例えばWnt-5aイムノグロブリンキメラのようなWnt-5aポリペプチド、及び/またはポリエチレングリコール(PEG)のような非タンパク質性ポリマーで修飾されたWnt-5aポリペプチドといった長期半減期誘導体である。ここで企図される方法は、維持されたまたは増大した造血幹/始原細胞集団由来のリンパ球、骨髄、及び/または赤血球の各血液細胞系列の増殖及び/または分化の増大を導き、in vitro及びin vivoの方法の両者を包含する。in vitroでの使用について、Wntによって刺激された細胞は、細胞カルチャー内に存在する。in vivoの方法においては、該細胞は哺乳動物、特にヒト(例えば減少した血液レベルに苦しんでいるヒト、及び様々な血液細胞の増大により利益を受けるヒト)において存在する。潜在的な患者には、化学療法または放射線療法、あるいは骨髄移植治療を受けているヒトが含まれる。それ故本発明は、哺乳動物の治療上の有効量のWntポリペプチドを投与することを含む哺乳動物における血液細胞(例えば赤血球、骨髄及び/またはリンパ球の各血液細胞)を再集団化する方法を提供する。
リンパ球の増大から利益を受ける哺乳動物には、以下の例示的な疾患の一つ以上に罹患する傾向のあるヒト、またはそれらに苦しんでいるヒトが含まれる:リンパ球減少症;リンパ漏;リンパうっ滞;免疫不全症(例えばHIV及びAIDS);感染症(例えば日和見感染症及び結核(TB));狼瘡;及びリンパ球不全によって特徴付けられる他の疾患。有効量のWntポリペプチドが、哺乳動物の免疫増強の方法において、または免疫機能を改良するために用いられ得る。
赤血球の増大が有益である疾患または疾病には、以下のものが制限されることなく含まれる:赤血球減少症;赤血球変性疾患;赤芽球減少症;白赤芽球症;赤血球崩壊症;サラセミア;貧血(例えば後天性自己免疫のような溶血性貧血、または細血管異常性溶血性貧血;再生不良性貧血;例えば先天性異常赤血球生成性貧血、先天性溶血性貧血または先天性低形成貧血といった先天性貧血;異常造血性貧血;Faconi's貧血;遺伝学的貧血;出血性貧血;高色素性貧血または低色素性貧血;栄養性貧血、低鉄性貧血または鉄欠乏性貧血;低形成貧血;感染性貧血;鉛貧血;局所貧血;大球性貧血または小球性貧血;悪性貧血または悪性の貧血;巨赤芽球性貧血;分子的貧血;正球性貧血;生理的貧血;外傷性貧血または出血後貧血;不応性貧血;放射線性貧血;鎌状赤血球貧血;脾性貧血;及び中毒性貧血)。
骨髄造血の増大は、上記記載の疾患または疾病のいずれかにおいて、同様に以下の例示的な疾患において有益である;骨髄線維症;血小板減少症;発育不全;汎発性血管内凝固症候群(DIC);免疫(自己免疫)血小板減少性紫斑病(ITP);HIV誘導性ITP;脊髄形成異常症;血小板増加性疾患及び血小板増加症。
該方法はさらに、一つ以上の他のサイトカイン(例えば系列特異的サイトカイン)に対して造血細胞(それらは細胞カルチャーとしてまたは哺乳動物において存在する)をさらす工程を含み、これは該細胞の増殖及び/または分化の相助作用的増大を導く。例示的なサイトカインとしては以下のものが含まれる:トロンボポイエチン(TPO);エリスロポイエチン(EPO);マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF);顆粒マクロファージ-CSF(GM-CSF);顆粒-CSF(G-CSF);インターロイキン−1(IL-1);IL-1a;IL-2;IL-3;IL-4;IL-5;IL-6;IL-7;IL-8;IL-9;IL-11;IL-10;IL-12;白血病阻害因子(LIF)またはkitリガンド(KL)。本実施態様においては、サイトカインにさらすことは、Wntポリペプチドにさらすことに先行して、同時に、または引き続いてなされる。好ましくはWntポリペプチド及び一つ以上のさらなるサイトカインは、患者に同時に投与され(該方法がin vivoのものである場合)、場合により製薬学的組成物を形成するために組み合わされる。
上記方法の使用において、本発明はまた製造品を提供し、それは以下のものを含む:容器、容器に付いたラベル、及び容器内に活性試薬を含む組成物で、そこでは該組成物は哺乳動物における造血幹/始原細胞の増殖及び/または分化及び/または維持を促進するのに有効であり、容器に付いたラベルは該組成物が上記細胞の増殖及び/または分化及び/または維持を促進するために用い得ることを示しており、組成物中の活性試薬はWntポリペプチドである。場合により該製造品は、Wntの入った容器とパッケージして組み合わせたさらなるサイトカイン(類)の入った一つ以上のさらなる容器を含む。
もう一つの実施態様として、Wntポリペプチドの有効量は、哺乳動物の末梢血由来の造血始原細胞を集める前に、骨髄移植におけるつぎ足しを改良するために、または該哺乳動物における造血幹細胞の移動及び/または増殖を刺激するために用い得る。
上記記載事項に加えて、本発明は、ここに記載されるWntの組換え生産において用い得るWntポリペプチドをコードする単離された核酸分子、発現ベクター及びホスト細胞を提供する。単離された核酸分子及びベクターはまた、例えばWntポリペプチドを発現する細胞の数を増大するために、そしてWnt反応性を増大するために、患者を治療する遺伝子治療応用に対しても有用である。加えて、抗Wnt抗体、特にWntに対して中和する抗体が、疾患、幹細胞腫瘍及びWnt発現の部位での他の腫瘍の治療のために有用であり、該腫瘍にはWntの過剰発現によって特徴付けられる腫瘍が含まれる。
【図面の簡単な説明】
図1は、flASK細胞の懸濁カルチャーにおける細胞増殖のWnt促進を示すグラフである。7日間の培養に引き続く細胞数の倍増数が示されている。培養は、flASK細胞(5000/ウェル)、25ng/ml KL、及びコントロールプラスミドWnt-1,Wnt-5a(gDWnt5aHis6)、またはWnt-10bを用いてトランスフェクトされた293細胞由来の調製培地(CM)で開始された。アッセイは二重で実施され、2の独立の実験が繰り返された。
図2A、B及びCは、増大した倍増のWnt促進、及びflASK細胞由来のコロニー形成を示すグラフである。図2Aは、Wnt5a/LNL6レトロウイルスを用いたトランスダクションに引き続くflASK細胞の増大した生存/増殖を示す。トランスダクションは、IL-3,IL-6,及びKLにおける100,000細胞/mlを用いて開始された。LNL6またはWnt5a/LNL6処理細胞に対する倍増は、トランスダクション期間(48時間)の最後での細胞カウントから測定され、4回繰り返された。図2Bは、7日間のWnt5a/LNL6トランスダクション細胞の懸濁カルチャーが、LNL6処理カルチャーと比較して過剰な増大を引き起こすことを示す。図2Cは、LNL6またはWnt5a/LNL6を用いた48時間のトランスダクションに引き続くflASK細胞由来のコロニー形成を示す。細胞を骨髄性メチルセルロースに4重に置き、培養の12日後のコロニー形成を評価し、4の独立の実験で繰り返した。
好ましい実施態様の詳細な説明
胚及び胎児造血微環境における研究から、新規な自己再生因子を露わにするための研究により、Wntポリペプチドが、幹細胞レギュレーターの新規なクラスに含まれ、培養造血幹/始原細胞の過度の増殖及び/または分化及び/または維持を直接的に刺激するという発見が導かれた。それ故Wntポリペプチドは、造血幹/始原細胞の増殖及び/または分化及び/または維持を促進するためにin vivoまたはex vivoで有用であり、これらの細胞の集団化を促進し、哺乳動物における上記細胞、及び複数の系列の血液細胞の細集団化を促進する。
I.定義
本発明を記載する際に、以下の語は、以下に示されるように用いられ、定義されるように企図される。
ここで用いられる場合、「Wnt」または「Wnt遺伝子産物」または「Wntポリペプチド」なる語は、天然の配列のWntポリペプチド、Wntポリペプチド変異体、Wntポリペプチド断片、及びキメラWntポリペプチドを包含する。場合により、該Wntポリペプチドは、天然のグリコシル化と関連していない。「天然のグリコシル化」とは、Wntポリペプチドが天然で由来する哺乳動物細胞で生産される場合、該Wntポリペプチドに共有結合で付着する糖部分をいう。したがって、非ヒト細胞で生産されるヒトWntポリペプチドは、「天然のグリコシル化と関連していない」Wntの例である。時には、Wntポリペプチドは非グリコシル化される(例えば、原核生物において組換え的に生産される結果として)。
「天然配列」のポリペプチドは、天然から誘導されるポリペプチド(例えばWntポリペプチド)と同じアミノ酸配列を有するものである。このような天然配列のポリペプチドは、天然から単離されるか、または組換え若しくは合成手段により生成されうる。而して、天然配列のポリペプチドは、天然に生じるヒトポリペプチド、ネズミポリペプチドまたは何れかの他の哺乳動物種由来のポリペプチドのアミノ酸配列を有しうる。
「天然配列のWntポリペプチド」なる用語は、何れかの動物種(例えば、ヒト、ネズミ、ウサギ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ニワトリ、ブタ、ウマ等)に由来する天然に生じるWntポリペプチドを含む。この定義は、ヒトWntポリペプチド、Wnt-1,2,3,4,5a,7a及び7b、そしてネズミWntポリペプチド、Wnt-1,2,3a,3b,4,5a,5b,6,7a,7b,8a,8b,10b,11及び12を特に包含する。「天然配列のWntポリペプチド」なる用語は、最初のN−末端メチオニン(Met)を伴うかあるいは伴わず、また天然のシグナル配列を伴うかまたは伴わない天然のタンパク質を含む。この技術において既知の天然配列のヒト及びネズミWntポリペプチドは、変異性を反映して(特にあまり保存されていないアミノ末端で及びいくつかの内部部位で)その非プロセス化形態において約348から約389アミノ酸長であり、21個の保存されたシステインを含み、分泌タンパク質の特徴を有している(例えば、Gavin等,上記参照;Lee等,上記参照;Christiansen等,上記参照;PCT/US94/140708[WO95/17416]のようなWntポリペプチド参照)。Wntポリペプチドの分子量は、単量体形態で約38-42kDである。
「変異体」ポリペプチドは、天然配列ポリペプチドに対して100%未満の配列同等性を有する下記に定義される生物学的に活性なポリペプチドを意味する。このような変異体は、1個以上のアミノ酸残基が、天然配列のN−末端またはC−末端、あるいは内部に付加されるか;1〜40個のアミノ酸残基が削除され、及び場合により1個以上のアミノ酸残基が置換されたポリペプチド;並びに得られる生成物が天然に生じないアミノ酸を有するようにアミノ酸残基が共有的に修飾された上記ポリペプチドの誘導体を含む。通常は、生物学的に活性なWnt変異体は、天然配列のWntポリペプチドに対して少なくとも約90%のアミノ酸配列の同等性、好ましくは少なくとも約95%、更に好ましくは少なくとも約99%の同等性を持ったアミノ酸配列を有するであろう。
「キメラ」Wntポリペプチドは、異種ポリペプチドに融合または結合されたWntポリペプチド、またはその一部分(例えば、一つ以上のドメイン)を含むポリペプチドである。キメラWntポリペプチドは一般に、Wnt-5aのような天然配列のWntポリペプチドと共通する少なくとも一つの生物学的性質を共有するであろう。キメラポリペプチドの例は、イムノアドヘシン及びエピトープ標識ポリペプチドを含む。
「Wntイムノアドヘシン」なる用語は、「Wntポリペプチドイムノグロブリンキメラ」という表現と可換的に使用され、Wntポリペプチドの一部ををイムノグロブリン配列と組み合わせたキメラ分子を指す。必須ではないが、イムノグロブリン配列は好ましくはイムノグロブリン定常配列である。本発明のキメラにおいてイムノグロブリン残基は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgDまたはIgMから得られてよく、好ましくはIgG1またはIgG3である。
ここにおいて使用される場合「エピトープ標識される」なる用語は、「標識ポリペプチド」に融合されるWntポリペプチドまたはその部分を含むキメラポリペプチドを指す。標識ポリペプチドは、抗体が生じ得る様なエピトープを与えるに充分な残基を有し、しかもWntポリペプチドの生物活性を妨害しない程度に十分短い。標識ポリペプチドは、好ましくはそれに対する抗体が他のエピトープと実質的に交差反応しない程度に十分固有なものでもある。好適な標識ポリペプチドは、一般的には少なくとも6個のアミノ酸残基、通常は6−60個のアミノ酸残基を有する。
「単離された」Wntポリペプチドは、Wnt供給源から精製されるか、組換えまたは合成方法により調製され、(1)スピニングカップシークェンターまたは本願出願当時において市販されるか、若しくは刊行された方法により修飾される最良の商業的に入手可能なアミノ酸シークェンターを使用して、N−末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個、好ましくは20個のアミノ酸残基を得るか、(2)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用して非還元または還元条件下でのSDS−PAGEによって均質である様な、他のペプチドまたはタンパク質から充分に遊離されたWntポリペプチドを意味する。ここにおいて均質とは、他の供給源による5%未満の夾雑を意味する。
「本質的に純粋な」タンパク質は、組成物の全重量に基づきタンパク質の重量で少なくとも約90%、好ましくは重量で少なくとも95%を含む組成物を意味する「本質的に均質な」タンパク質は、組成物の全重量に基づきタンパク質の重量で少なくとも約99%を含む組成物を意味する。
「Wntポリペプチド」または「単離されたWntポリペプチド」の何れかとの関連において使用される場合に、「生物学的活性」とは、Wnt-5aのような天然配列Wntポリペプチドにより直接または間接的に生じるかまたは演じられるエフェクター機能を有することを意味する。天然配列Wntポリペプチドのエフェクター機能は、造血幹/始原細胞の分化及び/または増殖及び/または維持(例えば実施例1及び2に記載されるアッセイにおいて測定されるように)を含む。「生物学的に活性なWntポリペプチド」は、天然配列Wntポリペプチドの生物学的活性を有するものである。
天然配列Wntポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列Wntポリペプチドと共通する定性的な生物学的性質を有する化合物である。「機能的誘導体」は、限定されるものではないが、それらが対応する天然配列Wntポリペプチドに共通する生物学的活性を有する限り、天然配列Wntポリペプチドの断片、天然配列Wntポリペプチドの誘導体及びそれらの断片を含む。「誘導体」なる用語は、Wntポリペプチドのアミノ酸変異体及びその共有結合的修飾物の両者を含む。
Wntポリペプチドとの関連において使用される「長い半減期」なる句は、対応する天然配列Wntポリペプチドよりも長い血漿半減期及び/またはより遅い排除期間を有するWnt誘導体に関する。長い半減期の誘導体は、好ましくは天然のWntポリペプチドより少なくとも1.5倍長い、更に好ましくは天然のWntポリペプチドより少なくとも2倍長い、更に好ましくはWntポリペプチドより少なくとも3倍長い半減期を有するであろう。
ここにおいて「アミノ酸配列同等性の百分率」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して配列同等性の百分率を最大にし、かついずれの保存的置換も配列同等性の一部としては考慮せずに、天然配列中の残基と同等な候補配列のアミノ酸残基の百分率として定義される。候補配列のN−末端、C−末端または中間の伸長、削除または挿入は、配列同等性または相同性に影響するものとは解釈されない。
「制御配列」なる表現は、特定の宿主中で機能的に連結されたコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。原核生物に好適な制御配列は、例えばプロモータ、場合によりオペレータ配列、リボソーム結合部位及び多分他の未だ十分に理解されていない配列を含む。真核性細胞は、プロモータ、ポリアデニル化シグナル、及びエンハンサーを使用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的に関連して配置される場合に、「機能的に連結されている」。例えば、先行配列または分泌リーダーのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与する先行タンパク質として発現される場合にポリペプチドのDNAに機能的に連結され;またプロモータ若しくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響する場合にコード配列に対して機能的に連結され;またリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように位置する場合にコード配列に機能的に連結されている。一般的に、「機能的に連結」とは、DNA配列が連続し、分泌リーダーの場合には連続かつ読み取りの位相内に連結されることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続する必要はない。連活は、慣用の制限部位においての連結により達成される。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプタまたはリンカーが慣用の方法により使用される。
ここにおいて使用されるように、「細胞」、「細胞系」及び「細胞培養物」なる表現は、可換的に使用され、全てのこのような表記は子孫の細胞も含む。従って、「トランスフォーマント」及び「トランスフォームされた細胞」または「トランスフェクタント」及び「トランスフェクトされた細胞」の用語は、最初の原因細胞及び形質転換数に関わりなくそれから誘導される培養物を含む。また全ての子孫は、計画的または不慮の変異のためにDNA含量において正確に同等である必要はないものと理解される。元の形質転換細胞についてスクリーニングしたのと同様な機能及び生物学的活性を有する変異子孫細胞が含まれる。別の指定が望まれる場合には内容から明確となるであろう。
「抗体」なる用語は、最も広い意味において使用されており、特定的にはそれらが所望の生物学的活性を有する限りにおいてモノクローナル抗体、ポリエピトープ特異性を持った抗体組成物、2重特異的抗体、ジアボディ、及び単鎖分子、並びに抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2及びFv)を包含する。
ここにおいて使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均質な抗体、すなわち母集団を含むそれぞれの抗体がわずかに存在してもよい天然に生じ得る変異を除いて同等であるような母集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原性部位を指向する。更に、典型的には異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を含む慣用の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は他のイムノグロブリンで夾雑していないハイブリドーマ培養物により合成される点においても有利である。「モノクローナル」なる修飾語は、実質的に均質な抗体の母集団から得られ、いずれかの特定方法による産生を要求するものとも解されない抗体の特徴を示す。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495(1975)により最初に記述されたハイブリドーマ法により調製されてよく、あるいは組換えDNA法により調製されてもよい。“モノクローナル抗体”は、例えばClackson et al., Nature 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)に記述される技術を使用してファージ抗体ライブラリーからも単離されうる。
ここにおけるモノクローナル抗体は、特定的には「キメラ」抗体(イムノグロブリン)を含み、その重及び/または軽鎖の一部は特定の種から誘導された抗体の対応する配列に同等、若しくは相同的であるか、また別の種から誘導された抗体の対応する配列に同等、若しくは相同的であるか、または別の抗体種若しくは亜種に属するものであり、加えて、それらが所望の生物学的活性を示す限りこのような抗体の断片も含む(Cabilly et al., 前出文献;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 [1984])。
非ヒト(例えばネズミ)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒトイムノグロブリンから誘導された最小の配列を含むキメラ性イムノグロブリン、イムノグロブリン鎖、またはその断片(Fv、Fab、Fab’F(ab’)2若しくは抗体の他の抗原結合配列等)である。ほとんどの部分についてヒト化抗体はヒトイムノグロブリン(受容抗体)であり、そのレセプターの相補性決定領域(CDR)の残基は、所望の特異性、親和性、及び容量を持ったマウス、ラットまたはウサギ等の非ヒト種(提供側抗体)のCDRの残基により置換されている。ある例においては、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク領域(FR)は、対応する非ヒト残基により置換されている。更に、ヒト化抗体は、受容抗体にも、あるいは導入されるCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能を更に洗練させるかまたは最適化させるために行われる。一般的に、ヒト化抗体は実質的に全て、または少なくとも1つ、典型的には2つの可変領域を有し、全てまたは実質的に全てのCDR領域が非ヒトイムノグロブリンのものに対応したものである。ヒト化抗体は、最適にはイムノグロブリンの定常領域(Fc)、典型的にはヒトイムノグロブリンのものの少なくとも一部をも含んでよい。更に詳細には、Jones et al., Nature 321:522-525 [1986]; Reichmann et al., Nature 332:323-329 [1988];及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 [1992]参照。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合部位が、マカクザルを興味ある抗原にて免疫して生成された抗体から誘導された、PrimatizedTM抗体を含む。
「ヒトにおいて非免疫性」とは、生理学的に許容される担体中の治療的に有効量の興味あるポリペプチドを、ヒトの適切な組織に接触させた場合に、適切な潜在期間(例えば8〜14日)の後に、興味あるポリペプチドの第2回の投与において、該興味あるポリペプチドの対して感受性または抵抗性の状態が示されないことを意味する。
「細胞増殖を向上」なる句は、インビトロまたはインビボの何れかにおいて、非処理細胞に比較して細胞の生育及び/または再生の程度を増大する工程を包含する。細胞培養物中における細胞増殖の増加は、興味ある分子に対する暴露の前後における細胞数の計数により検出されうる。増殖の程度は、密集の程度の顕微鏡的検査により定量化されうる。細胞増殖は、チミジン取り込みアッセイを使用しても定量化されうる。
「細胞分化を向上」とは、元の細胞とは異なる1種以上の特徴または機能の獲得または所有の程度の増加作用を意味する(細胞の特化)。これは細胞のフェノタイプにおける変化のスクリーニングにより検出されうる(例えば、細胞の及び/または細胞の表面マーカーの形態学的変化を同定する)。
「細胞の生存または維持を向上」とは、元の細胞のものと同様である一つ以上の性質または機能の所有の程度を増大する工程を包含する(即ち細胞表現型維持)。これは細胞の表現型の維持についてスクリーニングすることによって検出される(例えば実施例2のような芽細胞表現型)。
「造血幹/始原細胞」または「原始的造血細胞」は、より専心的または成熟した細胞型を形成するように分化可能なものである。
「造血幹細胞」または「幹細胞」は、致死的に放射線照射されたホストの長期的なつぎ足しが特異的に可能であるものである。
「リンパ性血液細胞系」は、リンパ細胞(B−細胞またはT−細胞)を形成するように分化可能な造血性先駆体細胞である。同様に、「リンパ形成」は、リンパ細胞形成である。
「赤血球細胞系」は、赤血球細胞(赤血球)を形成するように分化可能な造血性先駆体細胞であり、「赤血球形成」は、赤血球の形成である。
ここにおける目的について「骨髄性血液細胞系」なる句は、上記に定義されるリンパ性及び赤血球性血液細胞系以外の全ての造血性先駆体細胞を包含し、「骨髄形成」は、血液細胞(リンパ細胞及び赤血球細胞を除く)の形成に関与する。
「CD34+細胞母集団」は、造血性幹細胞について富裕化されている。CD34+細胞母集団は、例えば臍帯血または骨髄から得られる。ヒト臍帯血CD34+細胞は、Miltenyi(カリフォルニア)により販売される免疫磁性ビーズを、製造者の指示に従って使用して選択されうる。
「AA4+細胞集団」は造血幹細胞が豊富な集団である。AA4+細胞集団は、例えば胎児肝から得ることができる。AA4+細胞は、例えばAA4.1のような抗体を用いてイムノアドヘレントパンニングによって選択しうる。
「LinloSca+」、「細胞集団」または「AA4+Sca+細胞集団」は、造血幹細胞が豊富な集団である。上記集団は例えば骨髄または胎児肝からそれぞれ得ることができる。LinloSca+細胞またはAA4+Sca+細胞は、例えばPharmingen(San Diego,CA)由来のLy6A/Eフィコエリスリン接合物といったSca-1抗原(Ly6A/E)に対して抗体を用いて染色した後細胞ソーティングによって選択しうる。
「flASK細胞集団」は、胎児肝由来の造血幹細胞が高く豊富な集団である。flASK細胞は、胎児肝、AA4+、Sca+、kit+細胞である。flASK細胞は、例えば抗体を用いた染色の後、細胞ソーティングによって選択しうる。
「生理学的に許容される」担体、賦形剤、または安定化剤は、採用される投与量または濃度においてそれに曝される細胞または哺乳類に対して非毒性のものである。しばしば、生理学的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容される担体の例は、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたはイムノグロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリン等を含むモノサッカライド、ジサッカライド及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトールまたはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;及び/またはTween、Pluronicsまたはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
「サイトカイン」なる用語は、細胞間媒体として他の細胞に作用するある細胞母集団から放出されるタンパク質についての一般的用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン類、モノカイン類、増殖因子類及び伝統的ポリペプチドホルモン類である。サイトカインの内に含まれるものは、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン等の成長ホルモン類;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)等の糖蛋白ホルモン類;肝細胞成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子−α及び−β;ミュラー阻害物質;マウスゴナドトロピン−会合ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポイエチン(TPO);NGF−β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF−α及びTGF−β等のトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子−I及び−II;エリスロポイエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロンーα、−β及び−γ等のインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)及び顆粒球−CSF(G−CSF)等のコロニー刺激因子(CSF);IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12等のインターロイキン(IL);並びに白血病阻害因子(LIF)及びキットリガンド(KL)等を含む他のポリペプチド因子等である。ここにおいて使用されるように、サイトカインなる用語は天然供給源由来または、組換え細胞培養物由来のタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的活性同等物を含む。
「細胞系特異的サイトカイン」は、造血性のカスケードの比較的特化した細胞に作用し、単一系統の血液細胞における展開を生じる。このようなサイトカインの例は、EPO、TPO及びG−CSFを含む。
「処置」は、治療的処置及び予防的または防止手段の両者を指す。処置を必要とするものは、すでに疾患または疾病を有するもの並びに疾患が防止されなければならないものを含む。
治療のための「哺乳動物」は、ヒト、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等の家庭及び農場の動物、及び動物園、スポーツまたはペット用の動物を含む哺乳類に分類される何れかの動物を指す。好ましくは哺乳動物はヒトである。
「固相」とは、興味ある試薬(例えばWntポリペプチドまたはそれに対する抗体)が付着しうる非−水性担体を意味する。固相の例は、ガラス(調節された多孔質ガラス)、ポリサッカライド(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコーンにより部分的または全体が形成されるものを含む。ある実施態様において、内容に依存するが、固相はアッセイプレートのウエルを含むことが出来、他の態様ではそれは精製カラム(例えば、アフィニティクロマトグラフィーカラム)である。この用語は、米国特許第4,275,149号に記述されるような、分散的粒子の非連続的固相も含む。
II.発明実施の態様
本発明は造血作用を促進するためのWntポリペプチドの使用の発見に基づく。ここに記述される実験は、このWntが、造血細胞の増殖、分化及び/または維持の向上に役割を演じると思われる造血調節因子であることを例示している。特に、Wntは、富裕化したヒト幹細胞母集団に存在することが見出されており、而してWntが、造血幹細胞/始原細胞の増殖刺激に使用され得る。これらのポリペプチドの他の用途は、以下の検討から明らかになろう。記述は、Wnt遺伝子及びポリペプチドが如何にして調製されるかについて続けられる。
A.Wnt遺伝子及び遺伝子産物の調製
下記の検討のほとんどは、Wntポリペプチドコード核酸を含むベクターにより形質転換された細胞の培養、及び該細胞培養物からのポリペプチドの回収によるWnt遺伝子及び遺伝子産物の組換え生産に関連する。
1.WntポリペプチドをコードするDNAの単離
WntポリペプチドをコードするDNAは、WntポリペプチドmRNAを有し、かつそれを検出可能な水準で発現すると考えられる組織から調製されるcDNAライブラリーから得ることが出来る。従って、WntポリペプチドDNAは、哺乳動物胎児性肝臓または胎児脳から調製されたcDNAライブラリーから都合よく得られうる。Wntポリペプチドコード遺伝子は、ゲノムライブラリーまたはオリゴヌクレオチド合成からも得られ得る。
ライブラリーは、興味ある遺伝子またはそれによりコードされるタンパク質を同定すべく設計されたプローブ(Wntポリペプチドに対する抗体または約20−80塩基のオリゴヌクレオチド)を用いてスクリーニングされる。cDNAまたはゲノムライブラリーの選択されたプローブを用いるスクリーニングは、Sambrook et al.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press)の10−12章に記述される標準的方法を使用して行われうる。Wntポリペプチドをコードする遺伝子を単離するための別の手段は、Sambrook et al.,前出文献の14節に記述されるPCR方法を使用することである。
本発明の実施の好適な方法は、種々のヒト組織、好ましくはヒト胎児性肝臓由来のcDNAをスクリーニングするために、注意深く選択されたオリゴヌクレオチド配列を使用することである。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、擬陽性が最小化されるように充分な長さ及び充分な明確さでなければならない。
該オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリー中のDNAに対するハイブリッド形成を検出可能とすべく、標識されなければならない。標識の好ましい方法は、この分野で周知のようにオリゴヌクレオチドを放射標識するための、ポリヌクレオチドキナーゼを用いる32P−標識ATPを使用することである。しかしながら、限定されるものではないが、ビオチニル化または酵素標識を含む別の方法が、オリゴヌクレオチドの標識のために使用されてもよい。
Wntポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化をWntポリペプチドDNAに導入するか、または所望のWntポリペプチドを合成することにより調製される。このような変異体は、ヒトWntポリペプチドの天然に生じるWntポリペプチドのアミノ酸配列の内部、または一方若しくは両方の末端における残基の、挿入、置換、及び/または特定の削除を示す。好ましくは、これらの変異体は、成熟配列の内部、一方若しくは両方の末端における挿入及び/または置換、及び/またはWntポリペプチドのシグナル配列の内部、一方若しくは両方の末端における挿入、置換及び/または特定の削除を示す。最終構築物が、ここに定義される所望の生物学的活性を有する限り、挿入、置換及び/または特定の削除の何れかの組み合わせが、最終構築物に到達するように作成される。アミノ酸の変化は、Wntポリペプチドの翻訳後修飾工程も変化させ、グリコシル化部位の数及び位置の変化、膜結合特性の改変、及び/または挿入、削除、若しくはWntポリペプチドの先行配列に変化を与えることによりWntポリペプチドの細胞内位置に改変を与える。
上述の天然配列の変化は、米国特許第5,364,934号に示される保存的及び非保存的変異生成についての技術及びガイドラインの何れかを使用して行われうる。これらは、オリゴヌクレオチド−媒介(部位−特異的)変異生成、アラニン走査、及びPCR変異生成を含む。例えば、変化、付加または削除すべくアミノ酸を選択する指導についてはその表1、及びその表の周囲の検討も参照されたい。
2.複製可能なベクターへの核酸の挿入
Wntポリペプチドをコードする核酸(例えばcDNAまたはゲノムDNA)は、更なるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。多くのベクターが利用可能である。ベクターの成分は、限定されるものではないが、一般に次の1種以上を含む:シグナル配列、複製のオリジン、1種以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーター、及び転写停止配列。
a.シグナル配列成分
本発明にしたがった造血作用に有用なWntポリペプチドは、組換え的に直接に産生されうるのみならず、好ましくはシグナル配列、または成熟タンパク質若しくはポリペプチドのN−末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドである異種的ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても産生されうる。一般的に、シグナル配列は、ベクターの成分であってよく、あるいはベクターに挿入されるWntポリペプチドDNAの一部であってもよい。選択される異種的シグナル配列は、好ましくは宿主細胞により認識され、処理(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断)されるものである。天然Wntポリペプチドシグナル配列を認識及び処理しない原核性宿主細胞については、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーからなる群から選択される原核細胞性シグナル配列に置換される。酵母分泌のためには、天然シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(Saccharomyces及びKluyveromycesα−因子リーダーを含む、後者は1991年4月23日発行の米国特許第5,010,182号に記述されている)、またはC. albicansグルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行のEP 362,179号)または1990年11月15日発行のWO90/13646に記述されるシグナルにより置換されてよい。哺乳動物細胞の発現において、天然シグナル配列(例えば、インビボにおいてWntポリペプチドのヒト細胞からの分泌を通常支配するWntポリペプチド先行配列)が満足できるものであるが、他の動物のWntポリペプチド由来のシグナル配列、同じまたは関連する種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列等の他の哺乳動物シグナル配列、並びに例えば単純ヘルペスgDシグナル等のウイルス性分泌リーダーも好適であり得る。
このような前駆領域についてのDNAは、成熟WntポリペプチドをコードするDNAに読枠内にて連結される。
b.複製成分のオリジン
発現及びクローニングベクターの両者は、1種以上の選択される宿主細胞内で複製を可能とする核酸配列を含む。一般的に、クローニングベクター内でこの配列は、宿主の染色体DNAとは独立してベクターの複製を可能とするもので、複製のオリジンまたは自動的複製配列を含んでいる。この配列は、種々の細菌、酵母及びウイルスについて周知である。プラスミドpBR322由来の複製オリジンは、ほとんどのグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミドオリジンは酵母に好適であり、種々のウイルスオリジン(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は、ベクターを哺乳動物細胞中にクローニングするために有用である。一般に、複製成分のオリジンは、哺乳動物発現ベクターについては必要ではない(SV40オリジンは、早期プロモーターを含むことのみの理由で典型的には使用される)。
ほとんどの発現ベクターは、“シャトル”ベクターであり、即ちそれらは少なくとも1種の生物において複製可能であり、他の生物に発現のためにトランスフェクトされうる。例えば、ベクターはE.coli中でクローニングされ、次いでそれは宿主細胞染色体と独立して複製することは出来ないが、同じベクターが酵母または哺乳動物細胞に発現のためにトランスフェクトされる。
DNAは、宿主ゲノム中への挿入によっても増幅されうる。このことは、例えば宿主としてBacillus種を使用し、BacillusゲノムDNAに見出される配列に相補的なDNA配列をベクター中に含ませることにより達成される。Bacillusのこのベクターによるトランスフェクションは、ゲノムとの相同的組換え及びWntポリペプチドDNAの挿入を生じる。しかしながら、WntポリペプチドをコードするゲノムDNAの回収は、制限酵素消化がWntポリペプチドDNAの切断に要求される為、外部的に複製されるベクターよりも複雑である。
c.選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含まなければならない。この遺伝子は、選択培養培地中で形質転換された宿主細胞が生存または生育するために必要なタンパク質をコードする。選択遺伝祖を含むベクターにより形質転換されていない宿主細胞は、培養培地中で生存しないであろう。典型的な選択遺伝子は、(a)例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートまたはテトラサイクリン等の抗生物質または他のトキシンに対する抵抗性を与える、(b)栄養素要求株の欠陥を補充する、あるいは(c)例えばBacilliに対するD−アラニンセラミ化酵素をコードする遺伝子等、複合媒体から入手できない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択スキームの一例は、宿主細胞の生育を阻止する薬剤を使用する。異種遺伝子により成功裏に形質転換されたそれらの細胞は、薬剤耐性を付与するタンパク質を産生し、選択処方を生き延びる。このような主要な選択の例は、薬剤ネオマイシン、マイコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞についての好適な選択マーカーの別の例は、DHFRまたはチミジンキナーゼ等のWntポリペプチド核酸を取り上げるために細胞成分の同定を可能とするものである。哺乳動物細胞形質転換体は、形質転換体のみがマーカーの取り込みによって固有に生存に適合する選択圧の下におかれる。選択圧は、培地中の選択試薬の濃度が順次変化し、これによって選択遺伝子とWntポリペプチドをコードするDNAの両者の増幅をもたらす条件下で、形質転換体を培養することにより付加される。増幅は、生育のために重要なタンパク質の産生に対する要求がより大きい遺伝子が、組換え細胞の引き続く世代の染色体中で、縦列に反復される工程である。増大した量のWntポリペプチドが、増幅DNAから合成される。増幅可能な遺伝子の他の例は、メタロチオネイン−I及び−II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシン、オルニチンデカルボキシラーゼ等を含む。
例えば、DHFR選択遺伝子により形質転換された細胞は、全ての形質転換体をDHFRの競合的拮抗剤であるメトレキセート(Mtx)を含む培養培地中で培養することにより最初に同定される。天然型のDHFRが採用される場合に適切な宿主細胞は、urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)により記述されるように調製され、繁殖された、DHFR欠損のモルモット卵巣(CHO)細胞である。次いで形質転換細胞は、増大された濃度のメトトレキセートに曝される。これは、DHFR遺伝子の複数コピーの合成を誘導し、また、これに付随してWntポリペプチドをコードするDNA等の発現ベクターを含む他のDNAの複数コピーの合成を誘導する。この増幅技術は、例えばMtxに対して高度に抵抗性の変異DHFR遺伝子を採用する場合に(EP 117,060)、内因性のDHFRの存在に関わらず、他の適当な宿主、例えばATCC No. CCL61 CHO-K1を用いて使用可能である。
別法として、Wntポリペプチド、天然型DHFRタンパク質及びアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)等の他の選択可能なマーカーをコードするDNA配列により形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特には内因性DHFRを含む天然型宿主)は、例えばカナマイシン、ネオマイシン、またはG418等のアミノグリコシド抗生物質等の選択可能なマーカーに対する選択試薬を含む培地中で、細胞育成して選択されうる。米国特許第4,965,199号参照。
公募中で使用するための好適な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7二存在するtrpI遺伝子である(Stinchcomb et al. Nature 282:39 (1979))。trpI遺伝子は、例えばATCC No. 44076またはPEP4-1等のトリプトファン中での生育能力を欠く酵母変異株のための選択マーカーを与える。Jones, Genetics 85:12(1977)。次いで、酵母宿主細胞ゲノム中のtrpI傷害の存在は、トリプトファンの不在下での生育による形質転換検出のための有効な環境を提供する。同様に、Leu2−欠損酵母株(ATCC 20,622及び38,626)は、Leu2遺伝子を保持する既知のプラスミドにより補完される。
加えて、1.6μm環状プラスミドpKD1から誘導されるベクターは、Kluyveromyces酵母の形質転換に使用され得る。Bianchi et al., Curr. Genet. 12:185 (1987)。更に最近には、組換えウシキモシンの大規模製造の為の発現系が、K. lactisについて報告された。Van den Berg, Bio/Technology 8:135 (1990)。Kluyveromycesの工業用株による成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌用安定複数コピー発現ベクターも開示されている。Fleer et al., Bio/Tschnology 9:968-975 (1991)。
d.プロモーター成分
通常、発現及びクローニングベクターは、宿主生物により認識され、Wntポリペプチド核酸に機能的に連結されるプロモーターを含む。プロモーターは、構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)(一般に約100〜1000bp内)に位置する非翻訳配列であり、機能的に連結されるWntポリペプチド核酸配列等の特定の核酸配列の転写及び翻訳を制御する。このようなプロモーターは、典型的には2つの種類、誘導性及び構成性に分けられる。誘導性プロモーターは、培養条件の何らかの変化、例えば栄養素の存在または不在、または温度変化に応答して、その制御下で増大したレベルのDNAからの転写を開始するプロモーターである。この時点において、種々の可能性ある宿主により認識される多くのプロモーターが周知である。これらのプロモーターは、制限酵素消化により供給源のDNAからプロモーターを除去し、単離されたプロモーターをベクター中に挿入することにより、WntポリペプチドコードDNAに機能的に連結される。天然Wntポリペプチドプロモーター配列及び多くの異種プロモーターの両者が、WntポリペプチドDNAの直接増幅及び/または発現に使用され得る。しかしながら、天然のWntポリペプチドプロモーターに比べて、異種プロモーターは一般により大きい転写及びWntポリペプチドのより多い収量を可能とするため、異種プロモーターが好ましい。
原核性宿主と共に使用する為に好適なプロモーターは、β−ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系(Chang et al., Nature 275:615 (1978); Goeddel et al., Nature 281:544 (1979))、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, Nucleic Acid Res. 8:4057 (1980); EP 36,776)及びtacプロモーター等のハイブリッドプロモーターを含む。deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:21-25 (1983)。しかしながら、他の既知の細菌プロモータが好適である。それらのヌクレオチド配列は刊行されており、それによって当業者が、任意の要求される制限部位を供給するためにリンカーまたはアダプターを使用して、WntポリペプチドをコードするDNAに対してそれらを機能的に連結することを可能とする。細菌系において使用するためのプロモーターは、WntポリペプチドをコードするDNAに機能的に連結されるシャイン−ダルガルノ(SD)配列も含むであろう。
プロモーター配列は、真核性細胞について知られている。実質上、全ての真核性遺伝子は転写開始部位からおよそ25〜30塩基上流に位置するAT−富裕領域を有している。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見出される他の配列は、Xが任意のヌクレオチドであり得るCXCAAT領域である。ほとんどの真核性遺伝子の3’末端はAATAAA配列であり、これはコード配列の3’末端にポリAテールを付加するシグナルであり得る。これらの配列の全ては、真核性発現ベクターに適切に挿入される。
酵母宿主と共に使用するための適当な促進配列の例は、3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzeman et al., J. Biol. Chem. 255:2073 (1980))、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベートデカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルベートキナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼ等の糖分解酵素(Hess et al., J. Adv. Enzyme Reg. 7:149 (1968); Holland, Biochemistry 17:4900 (1978))のプロモーターを含む。
転写が生育条件によって調節される付加的優位点を有する誘導性プロモーターである他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関わる分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、並びにマルトース及びガラクトース利用を司る酵素のプロモーター領域である。酵母発現において使用するための好適なベクター及びプロモーターは、EP 73,657に更に記述されている。酵母エンハンサーも、利点を持って酵母プロモーターと共に使用される。
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからのWntポリペプチドの転写は、プロモーターが宿主細胞系と適合性を有する限り、例えば、ポリオーマウイルス、フォウルポックスウイルス(1989年7月5日発行のUK 2,211,504)、アデノウイルス(アデノウイルス2等)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及び最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)等のゲノムに由来するか、例えばアクチンプロモーターまたはイムノグロブリンプロモーター等の異種的哺乳動物プロモーターに由来するか、熱ショックプロモーターに由来するか、及び通常にWntポリペプチド配列に伴われるプロモーターに由来して得たプロモーターにより調節される。
SV40ウイルスの早期及び後期プロモーターは、SV40制限断片として都合よく得られ、それは複製のSV40ウイルスオリジンを含む。Fiers et al., Nature 273:113 (1978); Mulligan et al., Science 209:1422-1427 (1980); Pavlakis et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:7398-7403 (1981)。ヒトサイトメガロウイルスの直前プロモーターは、Hind III E制限断片として都合よく得られる。Greenaway et al., Gene 18:355-360 (1982)。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用する哺乳動物宿主におけるDNA発現系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の修飾は、米国特許第4,601,978号に記述されている。免疫インターフェロンをコードするcDNAのサル細胞における発現についてはGray et al., Nature 295:503-508 (1982); 単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの制御下における、マウス細胞中でのヒトβ−インターフェロンcDNAの発現についてはReyes et al., Nature 297:598-601 (1982); 培養マウス及びウサギ細胞中でのヒトインターフェロンβ1遺伝子の発現についてはCanaani et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:5166-5170 (1982); ラウス肉腫ウイルスの長末端反復をプロモーターとして使用する、CV−1サル腎細胞、ニワトリ胚線維芽細胞、モルモット卵巣細胞、HeLa細胞、及びマウスNIH-3T3細胞における細菌CAT配列の発現に関してはGorman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6777-6781 (1982)参照。
e.エンハンサー要素成分
高等真核性細胞による本発明にしたがった造血作用に有用なWntポリペプチドをコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによりしばしば増大される。エンハンサーは、DNAのcis−作用要素であり、通常約10〜300bpであり、プロモーターに作用して転写を増大させる。エンハンサーは、相対的に配向及び位置に非依存的であり、転写単位に対して5’側(Laimins et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:993 (1981))及び3’側(Lusky et al., Mol. Cell Bio. 3:1108 (1983))、イントロン内(Banerji et al., Cell 33:729 (1983))並びにコード配列それ自体の内部に見出されている。Osborne et al., Mol. Cell Bio. 4:1293 (1984)。今では多くのエンハンサー配列が哺乳動物遺伝子から知られている(グロブリン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトタンパク質、及びインスリン)。しかしながら、典型的には真核性細胞ウイルスからのエンハンサーが使用されるであろう。例としては、複製オリジンの後方側のSV40エンハンサー(bp 100−270)、サイトメガロウイルスの初期プロモーターエンハンサー、複製オリジンの後方側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスのエンハンサーを含む。真核性プロモーター活性化のための増強因子については、Yaniv, Nature 297:17-18 (1982)も参照。エンハンサーは、Wntポリペプチドコード配列の5’または3’位置において、ベクター中に結合されてよいが、好ましくはプロモーターから5’側の部位に位置する。
f.転写停止成分
真核性宿主細胞(酵母、カビ、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多細胞生物からの有核細胞)において使用される発現ベクターは、転写の停止及びmRNAの安定化のために必要な配列も含むであろう。このような配列は、真核性またはウイルス性DNAまたはcDNAの5’及び場合により3’非翻訳領域から一般的に入手可能である。これらの領域は、WntポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分において、ポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチド分節を含む。
g.ベクターの構築及び分析
上記に掲げた成分の1種以上を含む適当なベクターの構築は、標準的連結技術を採用する。単離されたプラスミドまたはDNA断片は、切断され、修復され、所望の形態をもって再連結されて必要なプラスミドを生成させる。
構築されたプラスミドにおける正しい配列を確認するための分析には、連結混合物がE. coli K12 294株(ATCC 31,446)を形質転換するために使用され、成功した形質転換体が、適切な場合にはアンピシリンまたはテトラサイクリン耐性により選択される。形質転換体からプラスミドが調製され、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析されるか、及び/またはMessing et al., Nucleic Acids Res. 9:309 (1981)の方法若しくはMaxam et al., Methods in Enzymology 65:499 (1980)の方法により配列決定される。
h.一時的発現ベクター
本発明の実施において特に有用なものは、WntポリペプチドをコードするDNAの哺乳動物細胞における一時的発現を与える発現ベクターである。一般に一時的発現は、宿主細胞が多数の発現ベクターのコピーを蓄積し、従って、該発現ベクターによりコードされる所望のポリペプチドを高水準で合成するように、宿主細胞において効率的に複製することが出来る発現ベクターの使用を含む。Sambrook et al.,前出文献pp.16.17-16.22。適当な発現ベクター及び宿主細胞を有してなる一時的発現系は、クローン化されたDNAによりコードされるポリペプチドの都合よい陽性の同定を可能とし、所望の生物学的または生理学的性質についてそのようなポリペプチドの迅速なスクリーニングも可能とする。従って、一時的発現系は、生物学的に活性なWntポリペプチドであるWntポリペプチドの類似体及び変異体を同定する目的で、本発明において特に有用である。
i.好適な例としての脊椎動物細胞ベクター
組換え脊椎動物細胞培養物におけるWntポリペプチドの合成に適合される好適な別の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gething et al., Nature 293:620-625 (1981); Mantei et al. Nature 281:40-46 (1979); EP 117,060及びEP 117,058に記述されている。Wntポリペプチドの哺乳動物細胞培養物発現のための特に有用なプラスミドは、pRK5(EP 307,247)またはpSV16Bである。1991年6月13日発行のWO91/08291。
3.宿主細胞の選択及び形質転換
ここにおいてベクター中のDNAのクローニングまたは発現の為に好適な宿主細胞は、上述した原核性細胞、酵母、またはより高等な真核性細胞である。この目的のために好適な原核性細胞は、グラム−陰性またはグラム−陽性生物等の真正細菌、例えばE. coli等のEscherichia、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、例えばSalmonella typhimurium等のSalmonella、例えばSerratia marcescans等のSerratia及びShigella、並びにB. subtilis及びB. licheniformis(例えば1989年4月12日発行のDD 266,710に開示されるB. licheniformis 41P)等のBacilli、P. aeruginosa等のPseudomonas並びにStreptomyces等、腸内細菌科である。好適なE. coliクローニング宿主は、E. coli 294(ATCC 31,446)であるが、E. coli B、E. coli X1776(ATCC 31,537)及びE. coli W3110(ATCC 27,325)等の他の株も好適である。これらの例は、限定的ではなくして例示的なものである。W3110株は、組換えDNA産生発酵のための一般的な宿主株であり、宿主または親宿主として特に好ましい。好ましくは宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するものである。例えば、W3110株は、タンパク質をコードする遺伝子において、遺伝的変異を与える修飾を受けてもよく、このような宿主の例としてはW3110 27C7株を含む。27C7の完全なゲノタイプは、tonAΔ ptr3 phoA ΔE15 Δ(argF-lac)169 ompTΔ degP4Ikanrである。27C7株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに、ATCC No. 55,244として1991年10月30日に寄託されている。別法として、1990年8月7日発行の米国特許第4,946,783号に開示された変異周辺細胞質プロテアーゼを有するE. coliが採用されてもよい。更に別法として、PCRまたは他の核酸ポリメラーゼ反応等のクローニング方法も好適である。
原核性細胞に加えて、糸状菌または酵母等の真核性微生物も、Wntポリペプチド−コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Saccharomyces cerevisiaeまたは通常のベーカーズイーストは、下等真核性宿主微生物の内では最も通常に使用されている。しかしながら、Schizosaccharomyces pombe(Beach et al., Nature 290:140 (1981); 1985年5月2日発行のEP 139,383); 例えば、K. lactis(MW98-8C, CBS683, CBS4574), K. Fragilis(ATCC 12,424), K. bulgaricus(ATCC 16,045), K. wickeramii(ATCC 24,178), K. waltii(ATCC 56,500), K. drosophilarum(ATCC 36,906; Van den Berg et al.,前出文献), K.thermotolerans,及びK. marxianus; yarrowia(EP 402,226)等のKluyveromyces宿主(米国特許第4,943,529; Fleer et al., 前出文献);Pichia pastoris(EP 183,070; Sreekrishna et al., J. Basic Microbiol. 28:265-278 (1988)); Candida; Trichoderma reesia(EP 244,234); Neurospora crassa(Case et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:5259-5263 (1979)); Schwanniomycess occidentalis(1990年10月31日発行のEP 394,538)等のSchwanniomyces;並びに、例えばNeurospora, Penicillium, Tolypocladium(1991年1月10日発行のWO91/00357)、及びA. nidulans(Ballance et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 112:284-289 (1983); Tilburn et al., Gene 26: 205-221 (1983); Yelton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:1470-1474 (1984))及びA. niger(Kelly et al., EMBO J. 4: 475-479 (1985))等のAspergillus宿主等、多くの他の属、種及び株が一般的に入手可能であり、また有用である。
グリコシル化Wntポリペプチドの発現のために好適な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。このような宿主細胞は、複雑な処理及びグリコシル化活性が可能である。原理的には、脊椎動物または無脊椎動物のいずれから誘導されようが、任意の高等真核性細胞培養物が利用可能である。無脊椎動物細胞の例は、植物及び昆虫細胞である。多くのバキュロウイルス株及び変異体、並びに対応する許容可能な昆虫宿主細胞が、Spodoptera frugiperda(イモ虫)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)及びBombyx mori等の宿主から同定されている。例えば、Luckow et al., Bio/Technology 6:47-55 (1988); Miller et al., in Genetic Engineering, Setlow et al., eds. Vol. 8 (Plenum Publishing, 1986), pp.277-279; 及びMaeda et al., Nature 315:592-594 (1985)参照。例えばAutographa californixa NPVのL-1変異体及びBombyx mori NPVのBm-5株等のトランスフェクションのための多くのウイルス株が一般に入手可能であり、このようなウイルスは本発明におけるウイルスとして特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクトのために使用され得る。
綿、トウモロコシ、ポテト、ダイズ、ペチュニア、トマト及びタバコの植物細胞培養物は、宿主として使用され得る。典型的には、植物細胞は、予めWntポリペプチドコードDNAを含むように操作された細菌のある種の株、Agrobacterium tumefaciensと共に培養することによりトランスフェクトされる。植物細胞培養物とA. tumefaciensとの培養の間に、WntポリペプチドをコードするDNAが植物細胞宿主に移動し、それがトランスフェクトされて適当な条件下でWntポリペプチドコードDNAを発現するであろう。加えて、ノパリン合成酵素プロモーター及びポリアデニル化シグナル配列等の植物細胞に適合性の調節及びシグナル配列も入手可能である。Depicker et al., J. Mol. Appl. Gen. 1:561 (1982)。加えて、T-DNA 780遺伝子の上流領域から単離されたDNA断片は、組換えDNA含有植物組織において、植物が発現可能な遺伝子の転写レベルを活性化及び増大させうる。1989年6月21日発行のEP 321,196。
しかしながら、最も興味あるのは脊椎動物細胞であり、培養物(組織培養物)中での脊椎動物細胞の増殖は情報になっている。例えば、Tissue Culture, Academic Press Kruse and Patterson, 編(1973)参照。有用な哺乳動物細胞系の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系(COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎細胞系(293または懸濁培養中の生育についてサブクローンされた293細胞、Graham eta al., J. Gen. Virol. 36:59 (1977));仔ハムスター腎細胞(BHK, ATCC CCL 10);モルモット卵巣細胞/−DHFR(CHO, Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト頸部腫瘍細胞(HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK, ATCC CCL 34):バッファローラット肝細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562, ATCC CCL 51);TRI細胞(Mather et al., Annal. N. Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;並びにヒト肝癌系(Hep G2)である。
宿主細胞は、Wntポリペプチド産生のための上述した発現またはクローニングベクターによりトランスフェクト、好ましくは形質転換され、プロモーターの誘発、形質転換体の選択または所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に修飾された慣用の栄養媒体中で培養される。
トランスフェクションは、何れかのコード配列が実際に発現されるか否かには関わらず、宿主細胞により発現ベクターが取り入れられることを指す。例えばCaPO4及びエレクトロポレーション等の多くのトランスフェクション方法が当業者に知られている。成功したトランスフェクションは、このベクターの作用の何れかの兆候が宿主細胞内で起こることにより、一般に認識される。
形質転換は、DNAが、染色体外要素として、あるいは染色体組み込みによりDNAが複製可能となるように、DNAを生体内に導入することを意味する。使用される宿主細胞に依存して、形質転換はこのような細胞に適当な標準的方法を使用して行われる。Sambrook et al.,前出文献1.82節に記述されるようにして塩化カルシウムを使用するカルシウム処理、またはエレクトロポレーションが、原核細胞または実質的に細胞壁障害を有する他の細胞について一般に使用される。Agrobacteriumu tumefacienceを用いる感染が、Shaws et al., Gene 23: 315 (1983)及び1989年6月29日発行のWO89/05859に記述されるようにある種の植物細胞の形質転換のために使用される。更に、植物は、1991年1月10日発行のWO91/00358に記述されるように超音波処理を使用してトランスフェクトされてもよい。
そのような細胞壁を有さない哺乳動物細胞については、Graham et al., Virology 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈殿法が好ましい。哺乳動物細胞宿主形質転換の一般的側面に関しては、1983年8月16日発行の米国特許第4,399,216号に記述されている。酵母への形質転換は、典型的には、Van Solingen et al., J. Bact. 130:946 (1977)及びHsiao et al., Proc Natl. Acad, Sci. USA 76:3829 (1979)の方法に従って行われる。しかしながら、細胞への他のDNA導入方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、真細胞との細菌性プロトプラスト融合、例えばポリブレン、ポリオミチン等の多価陽イオン等も使用され得る。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown et al., Methods in Enzymology 185:527-537 (1990)及びMansour et al., Nature 336:348-352 (1988)参照。
4.宿主細胞の培養
本発明にしたがって有用なWntポリペプチドの産生に使用される原核性細胞は、一般にSambrook et al., 前出文献に記述されるように適当な培地中で培養される。
本発明のWntポリペプチドを産生するために使用される哺乳動物宿主細胞は、種々の媒体中で培養されうる。商業的に入手可能な、例えばHam's F10(Sigma)、最小必須培地((MEM), Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及び、ダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞の培養に好適である。加えて、Hma et al., Meth. Enz. 58:44 (1979, Barns et la., Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4,767,704; 4,657,866; 4,927,762; 4,560,655または5,122,469; WO90/03430; WO87/00195; 及び米国再審査特許30,985に記述されている何れかの培地も宿主細胞の培養培地として使用され得る。これらのいずれの培地も、必要に応じてホルモン類及び/または多の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または表皮成長因子等)、塩類(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸等)、緩衝剤(HEPES等)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジン等)、抗生物質(ゲンタマイシンTM等)、微量元素(通常マイクロモルの最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、並びにグルコースまたは他の同等なエネルギー源が補充されてもよい。その他の必要な補充物が、当業者に知られている適当な濃度をもって含まれてもよい。温度、pH等の培養条件は、発現のために選択された宿主について従来使用されているとおりで、当業者には明らかであろう。
一般的に、哺乳動物細胞の生産性を最大にする為の原理、プロトコール及び実際的技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M. Butler, ed.(IRL Press, 1991)に見出される。
この開示において引用される宿主細胞は、培養物中の細胞、並びに宿主動物内にある細胞を含む。
5.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子増幅及び/または発現は、試料中において例えば慣用のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するノーサンブロッティング(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:5201-5205 (1980))、ドットブロッティング(DNA分析)、またはインサイツ・ハイブリダイゼーションにより、ここに提供される配列に基づいた適当な標識プローブを使用して直接に測定されうる。種々の標識が使用され得、最も普通には放射性同位体、特に32Pである。しかしながら、ポリヌクレオチドに導入するためのビオチン修飾ヌクレオチドの使用等、他の技術も採用されうる。次いでビオチンは、放射性核種、蛍光体、酵素等の広範囲の種々の標識により標識されたアビジンまたは抗体に対する結合部位として作用する。別法として、DNA二重体、RNA二重体、DNA−RNAハイブリッド二重体またはDNA−タンパク質二重体等の特定の二重体を認識する抗体が採用されうる。次いで抗体は、標識され、またアッセイが実行され、ここにおいて二重体は表面に結合され、該表面の二重体形成により該二重体に結合する抗体が検出されうる。
別法として、遺伝子発現は組織断面の免疫組織化学的染色、及び細胞培養物または体液のアッセイ等の免疫学的方法により、遺伝子生成物の発現を直接に定量して測定されうる。免疫組織化学的染色技術によれば、細胞試料が典型的には脱水及び固定化により調製され、次いで結合される遺伝子生成物に対して特異的な標識抗体が反応に付され、ここにおいて標識は、一般に酵素標識、蛍光標識、発光正標識等の目視検出可能なものである。本発明に使用するために好適な特に高感度の染色技術は、Hsu et al., Am. J. Clin. Path. 75:734-738 (1980)に記述されている。
免疫組織化学的染色及び/または試料液体のアッセイのために有用な抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれでもよく、ここに記述されるように調製されうる。
6.Wntポリペプチドの精製
Wntポリペプチドは、好ましくは培養培地から分泌タンパク質として回収されるが、宿主細胞溶解物から回収されてもよい。Wntポリペプチドが膜結合である場合には、例えば、スラミン、PMA、ヘパリン、ヘパリナーゼI及びIII、プラスミン、n-オクチル-ベータ-D-グルコシド、PI-特異的-及びPC-特異的-ホスホリパーゼC、及びTNF-アルファといった酵素または界面活性剤(例えばTriton-X 100)を含む適切な試薬を用いて細胞表面から解放されうる。
Wntポリペプチドがヒト起源のもの以外の組換え細胞において産生される場合には、Wntポリペプチドは、ヒト起源のタンパク質またはポリペプチドを全く含まない。しかしながら、Wntポリペプチドとして実質的に均質な調製物を得るためには、組換え細胞タンパク質またはポリペプチドからWntポリペプチドを精製する必要がある。第一の工程として、培養培地または溶解物は遠心分離されて粒状細胞破砕物が除去される。その後に、Wntポリペプチドが、可溶性タンパク質またはポリペプチド夾雑物から、好適な精製方法の例である次の方法により精製される:イオン交換カラムによる分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカ上またはDEAE等の陽イオン交換樹脂上のクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG−75TMを使用するゲル濾過;並びにIgG等の夾雑を除去するタンパク質AセファロースTMカラム。
残基が除去、挿入または置換されたWntポリペプチド変異体は、変異による性質の実質的変化を考慮して、天然のWntポリペプチドと同様な様式で回収されうる。ウサギポリクローナル抗−Wntポリペプチドカラム等の免疫アフィニティカラムが、少なくとも残る免疫エピトープとの結合により、Wntポリペプチド変異体を吸着するために使用され得る。
フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)等のプロテアーゼ阻害剤は、精製の間のタンパク質分解を阻害するために有用であり、また抗生物質は、外因性の夾雑の生育を防止するために含まれてよい。
7.共有性修飾
Wntポリペプチドの共有性修飾物は、本発明の範囲内に含まれる。天然配列Wntポリペプチド及びWntポリペプチドのアミノ酸配列変異体の両者は、共有結合的に修飾されてよい。Wntポリペプチドの一つの型の共有性修飾は、Wntポリペプチドの標的アミノ酸残基を、Wntポリペプチドの選択された側鎖またはN−若しくはC−末端残基と反応しうる有機誘導試薬と反応させることにより、該分子に導入される。
最も普通には、システイン残基が、クロロ酢酸またはクロロアセタミド等のα−ハロアセテート(及び対応するアミン)と反応に付されて、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を与える。システイン残基は、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミダゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応により誘導される。
ヒスチジン残基は、pH5.5−7.0においてジエチルピロカルボネートとの反応により誘導され、けだしこの試薬はヒスチジン側鎖に比較的特異的であるからである。パラ−ブロモフェナシルブロマイドも有用であり、該反応は、好ましくはpH6.0において0.1Mカコジル酸ナトリウム中で行われる。
リジン及びアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応に付される。これらの試薬による誘導は、リジン残基の電荷の逆転の効果がある。
α−アミノ−含有残基の誘導のための他の好適な試薬は、メチルピコリンイミデート等のイミドエステル類、ピリドキサルホスフェート、ピリドキサル、クロロボロハイドライド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソウレア、2,4−ペンタンジオン、及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応を含む。
アルギニン残基は、1種または数種の慣用の試薬により修飾され、それらの内にはフェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−しくろヘキサンジオン及びニンヒドリンがある。グアニジン官能基の高いpKa故に、アルギニン残基の誘導は、アルカリ条件下で反応を行うことが必要である。更に、これらの試薬は、アルギニンイプシロン−アミノ基に加えて、リジンの基とも反応しうる。
チロシン残基の特異的修飾は、芳香族性ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によりチロシル残基に分光学的標識を導入することに特に興味を持って行われうる。最も一般的には、N−アセチルイミジゾール及びテトラニトロメタンが、それぞれO−アセチルチロシン分子種及び3−ニトロ誘導体を形成するために使用される。チロシル残基は、放射免疫アッセイにおいて使用される標識タンパク質を調製するために、125Iまたは131Iを使用してヨウ素化され、クロラミンT法が好適である。
カルボキシル側鎖基(アスパルチルまたはグルタミル)は、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミド等の、R及びR’が異なるアルキル基であるカルボジイミド(R−N=C=N=R’)との反応により選択的に修飾される。更に、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によりアスパラギニル及びグルタミニル残基に変換される。
二官能性試薬による誘導は、抗−Wntポリペプチド抗体の精製方法において使用される水不溶性支持担体または表面に、Wntポリペプチドを公差結合するために有用であり、その逆もしかりである。一般に使用される交差結合試薬は、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、例えば4−アジドサリチル酸エステル等のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)等のジスクシンイミジルエステルを含むホモ二官能性イミドエステル、並びにビス−N−マレイミド−1,8−オクタン等の二官能性マレイミドを含む。メチル−3−((p−アジドフェニル)ジチオ)プロピオイミデート等の誘導試薬は、光の存在下で交差結合の形成が可能な光活性化可能な中間体を生じる。別法として、シアノゲンブロマイド−活性化炭水化物等の反応性水不溶性担体、及び米国特許第3,969,287; 3,691,016; 4,195,128; 4,247,642; 4,229,537;及び4,330,440に記述される反応性基質は、タンパク質の固定化に使用される。
グルタミニル及びアスパラギニル残基は、それぞれ対応するグルタミル及びアスパルチル残基にしばしば脱アミド化される。これらの残基は中性または塩基性条件下で脱アミド化される。これらの残基の脱アミド化形態は、本発明の範囲内にある。
そのほかの修飾は、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリンまたはスレオニン残基のヒドロキシル基のホスホリル化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983))、N−アミノ末端のアセチル化、並びにC−末端カルボキシル基のアミド化を含む。
本発明の範囲内に含まれるWntポリペプチドの他の型の共有性修飾は、ポリペプチドの天然のグリコシル化パターンの改変を含む。改変とは、天然Wntポリペプチドに見出される炭化水素残基の一つ以上の除去、及び/または天然のWntポリペプチドには存在しない一つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的にはN−結合またはO−結合の何れかである。N−結合は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物残基の結合を指す。Xがプロリン以外のアミノ酸であるトリペプチド配列アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニンは、炭水化物残基のアスパラギン側鎖への酵素的結合について、認識配列である。而して、ポリペプチド中の、これらのトリペプチド配列の何れかの存在は、可能性あるグリコシル化部位を創成する。O−結合グリコシル化は、N−アセチルグルコサミン、ガラクトースまたはキシロース等の糖類の一つがヒドロキシルアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンに結合することを指すが、5−ヒドロキシプロリン及び5−ヒドロキシリジンも使用され得る。
Wntポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、それが上述したトリペプチド配列(N−結合グリコシル化部位)を一つ以上含むようにアミノ酸配列を改変することによって都合よく達成される。改変は、1個以上のセリンまたはスレオニン残基を天然のWntポリペプチド配列に付加するか、またはこれらにより置換することによってもなされうる(O−結合グリコシル化部位)。簡単には、Wntポリペプチドアミノ酸配列は、DNAレベルの変化を介して、特にWntポリペプチドをコードするDNAを、予め選択した塩基においてコドンが所望のアミノ酸に翻訳されるように生成されるよう変異させることによって改変される。DNAの変異は、上記の米国特許第5,364,934号に記述される方法を使用して行われてよい。
Wntポリペプチド上に炭水化物残基の数を増大させる他の手段は、ポリペプチドに対するグリコシドの化学的または酵素的結合による。これらの手法は、N−またはO−結合グリコシル化についてグリコシル化能力を持った宿主細胞中でのポリペプチド産生を必要としない点で有利である。使用されるカップリングの態様に依存して、糖類は(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離のカルボキシル基、(c)システインのもの等の遊離のスルフィドリル基、(d)セリン、スレオニンまたはヒドロキシルプロリンのもの等の遊離のヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンのもの等の芳香族残基、あるいは(f)グルタミンのアミド基に結合する。これらの方法は、1987年9月11日発行のWO 87/05330及びAplin et al., CRC Crit. Rec. Biochem. 259-306 (1981)に記述されている。
Wntポリペプチドに存在する炭水化物残基の除去は、化学的または酵素的に行いうる。化学的脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等な化合物に対するポリペプチドの暴露を必要とする。この処理は、結合糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除いてほとんどまたは全ての糖類の切断をもたらし、その一方でポリペプチドを無傷のまま残す。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddin, et al., Arch. Biochem. Biophys. 259:52 (1987)及びEdge et al., Anal. Biochem. 118:131 (1981)に記述されている。ポリペプチドの炭水化物残基の酵素的切断は、Thotakura et al., Meth. Enzymol. 138:350 (1987)に記述されているように種々のエンド−及びエキソ−グリコシダーゼの使用により行われうる。
可能性あるグリコシル化部位におけるグリコシル化は、Duskin et al., J. Biol. Chem. 257:3105 (1982)に記述されるように化合物チュニカマイシン(tunicamycin)の使用により阻止されうる。チュニカマイシンは、タンパク質−N−グリコシド結合の形成を阻止する。
Wntポリペプチドの共有性修飾の他の型は、米国特許第4,640,835; 4,496,689; 4,301,144; 4,670,417; 4,791,192または4,179,337号に示された方法で、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン糖の種々の非タンパク質性ポリマーの一つに対して、Wntポリペプチドを結合することを含む。
変異体Wntポリペプチドの性質を予め予想することはしばしば困難であるため、回収された変異体の何らかのスクリーニングが、最適な変異体を選択する為に必要であることが認識されるであろう。所定の抗体に対する親和性等の、Wntポリペプチド分子の免疫学的性質の変化は、競合型のイムノアッセイにより測定可能である。Wntポリペプチド変異体は、実施例8のコロニーアッセイにおいて、該タンパク質の細胞増殖誘導能力における変化についてアッセイされる。酸化還元若しくは熱安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、または担体との凝集傾向若しくは多量体への凝集傾向等の、タンパク質またはポリペプチドの性質の他の可能性ある修飾は、この技術で周知の方法によりアッセイされる。
8.エピトープ−標識Wntポリペプチド
この発明は、異種ポリペプチドに融合するWntポリペプチドを含んでなるキメラポリペプチドを包含する。キメラWntポリペプチドは、ここにおいて定義されるWntポリペプチド変異体の一つの型である。好ましい実施態様において、キメラポリペプチドは、抗−標識抗体が選択的に結合可能なエピトープを与える標識ポリペプチドとの、Wntポリペプチドの融合体を含む。エピトープ標識は、一般的にはWntポリペプチドのアミノ−またはカルボキシル−末端に与えられる。このようなWntポリペプチドのエピトープ標識形態は、その存在が標識ポリペプチドに対する標識抗体を使用して検出可能であるため、望ましい。また、エピトープ標識の提供は、Wntポリペプチドを、抗−標識抗体を使用してアフィニティ精製により容易に精製することを可能とする。抗体に関与するアフィニティ精製及び診断アッセイは、ここにおいて後述される。
標識ポリペプチド類及びそれぞれに対する抗体は、この技術では周知である。例としては、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)標識及びその抗体(Pennica et al.,上記参照);例えばhis6といったhisタグ(Hengen,Trends Biochem.Sci.,20:285-286[1995]及びPennica et al.,J.Biol.Chem.,270:10915-10922[1995]);flu HA標識ポリペプチド及びその抗体12CA5(Field et al., Mol. Cell Biol. 8:2159-2165 (1988));c−myc標識及びそれに対する8F9, 3C7, 6E10, G4, B7及び9E10抗体(Evan et al., Molecular and Cellular Biology 5:3610-3616 (1985)及びPaborsky et al., Protein Engineering 3(6):547-553 (1990)が含まれる。他の標識ポリペプチドが開示されている。例としては、Flag-ペプチド(Hopp et al., BioTechnology 6:1204-1210 (1988));KT3エピトープペプチド(Martin et al., Science 255:192-194 (1992));α−ツブリンエピトープペプチド(Skinner et al., J. Biol. Chem. 266:15163-15166 (1991));及びT7遺伝子10ペプチド標識を含む。Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6393-6397 (1990)。標識ポリペプチドが一旦選択されたならば、それに対する抗体はここに開示される技術により生成されうる。
エピトープ標識Wntポリペプチドの構築及び産生のために好適な一般的方法は、先に開示した方法と同様である。Wntポリペプチド−標識ポリペプチド融合体は、Wntポリペプチド部分をコードするcDNA配列を、読枠において、標識ポリペプチドDNAに融合し、得られたDNA融合構築物を適切な宿主細胞にて発現させることにより、最も都合よく構築される。通常には、本発明のWntポリペプチド−標識ポリペプチドキメラを調製する場合には、Wntポリペプチドをコードする核酸が、標識ポリペプチドのN−末端をコードする核酸の3’末端に融合されるであろうが、5’融合もまた可能である。
エピトープ標識Wntポリペプチドは、抗−標識抗体を使用するアフィニティクロマトグラフィーにより都合よく精製されうる。アフィニティ抗体が結合される担体は、ほとんどの場合アガロースであるが、他の担体も利用可能である(例えば、調節多孔性ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼン)。エピトープ標識Wntポリペプチドは、例えば、緩衝溶液のpH若しくはイオン強度の変化、またはカオトロピズム溶媒の添加により、アフィニティカラムから溶離されうる。
9.Wntポリペプチドイムノアドヘシン
適切なイムノグロブリン定常領域配列に結合されたレセプター配列から構築されたキメラ(イムノアドヘシン)が、この技術で知られている。文献中に報告されたイムノアドヘシンは、T細胞レセプター*(Gascoigne et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:2936-2940 (1987));CD4*(Capon et al., Nature 337:525-531 (1980); Traunecker et al., Nature 339:68-70 (1980); Zetmeissl et al., DNA Ceel Biol. USA 9: 347-353 (1990); Byrn et al., Nature 344:667-670 (1990));L−セレクチン(ホーミングレセプター)(Watson et al., J. Cell. Biol. 110:2221-2229 (1990); Watson et al., Nature 349:164-167 (1991));CD44*(Aruffo et al., Cell 61:1303-1313 (1990));CD28*およびB7*(Linsley et al., J. Exp. Med. 174:651-569 (1991));CD22*(Stamenkovic et al., Cell 66:1133-1144 (1991));TNFレセプター(Ashkenazi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535-10539 (1991); Lesslauer et al., Eur. J. Immunol. 27:2883-2886 (1991); Peppel et al., J. Exp. Med. 174:1483-1489 (1991));NPレセプター(Benett et al., J. Biol. Chem. 266:23060-23067 (1991));並びにIgEレセプターα*(Ridgway et al., J. Cell Biol. 115: abstr. 1448 (1991))の融合物を含み、ここにおいてアステリスク(*)は、レセプターがイムノグロブリンの上位科の構成員であることを示す。
最も単純かつ最も素直なイムノアドヘシンの設計は、“アドヘシン”タンパク質の結合領域を、イムノグロブリン重鎖のヒンジ及びFc領域と組み合わせることである。一般に、本発明のWntポリペプチド−イムノグロブリンキメラを調製する場合に、Wntポリペプチドをコードする核酸が、C−末端においてイムノグロブリン定常領域配列のN−末端をコードする核酸に融合されるが、N−末端の融合も可能である。
典型的には、このような融合において、コードされるキメラポリペプチドは、少なくともイムノグロブリン重鎖の機能的に活性化ヒンジ、低上領域のCH2及びCH3領域を維持するであろう。融合は、定常領域のFc部分のC−末端、若しくは重鎖のCH1に対して直ぐN−末端側、または軽鎖の対応する領域においても行われる。
融合が行われる厳密な位置は重要ではなく;特定の部位は周知であり、またWntポリペプチド−イムノグロブリンキメラの生物学的活性、分泌または結合特性を最適化するように選択されうる。
いくつかの実施態様において、基本的にはWO91/08298に例示されるように、Wntポリペプチド−イムノグロブリンキメラは、単量体、または異種−若しくは同種多量体、特には二量体または三量体として集合する。
好ましい実施態様において、Wntポリペプチド配列は、例えばイムノグロブリンG1(IgG1)等のイムノグロブリンのエフェクター機能を含む抗体のC−末端部分(特にFc領域)のN−末端に融合される。重鎖定常領域の全体を、Wntポリペプチド配列に融合することも可能である。しかしながら、より好ましくはパパイン切断部位の直ぐ上流のヒンジ領域から始まる配列(IgGのFcを化学的に定義し;重鎖定常領域の最初の残基を114位として、残基216、または他のイムノグロブリンの類似する部位)が、融合に使用される。特に好適な実施態様において、Wntポリペプチドアミノ酸配列は、IgG1、IgG2、またはIgG3重鎖のヒンジ領域、CH2及びCH3、またはCH1、ヒンジ、CH2及びCH3領域に対して融合される。融合が行われる厳密な部位は重要ではなく、至適部位は常法の実験により決定されうる。
いくつかの実施態様において、Wntポリペプチド−イムノグロブリンキメラは、多量体として、及び特には同種二量体または四量体として集合する。一般的にはこれらの集合体イムノグロブリンは、既知の単位構造を有するであろう。基本的な4本鎖構造単位は、IgG、IgD及びIgEが存在する形態である。4本単位は、より高分子量のイムノグロブリンにおいて反復され;IgMは、ジスルフィド結合により互いに保持される基本的4本単位の五量体として一般には存在する。IgAグロブリン及び場合によってはIgGグロブリンは、血清中において多量体としても存在しうる。多量体の場合、各4本単位は、同じであるかまたは異なってもよい。
本発明の範囲にある種々の典型的な集合WntポリペプチドまたはWnt−イムノグロブリンキメラは、下記に模式的に図表化される:
(a)ACL-ACL;
(b)ACH-(ACH,ACL-ACH,ACL-CHCH,またはVLCL-ACH);
(c)ACL-ACH-(ACL-ACH,ACL-VHVH,VLCL-ACH,またはVLCL-VHCH);
(d)ACL-VHCH-(ACH,またはACL-VHCH,またはVLCL-ACH);
(e)VLCL-ACH-(ACL-VHCH,またはVLCL-ACH);及び
(f)(A-Y)n-(VLCL-VHCH)2,
式中、
各Aは、同じまたは異なったWntポリペプチドのアミノ酸配列を表し;
VLは、イムノグロブリン軽鎖可変領域であり;
VHは、イムノグロブリン重鎖可変領域であり;
CLは、イムノグロブリン軽鎖の定常領域であり;
CHは、イムノグロブリン重鎖の定常領域であり;
nは、1より大きい整数であり;
Yは、共有的交差結合試薬の残基を示す。
簡潔さのために前述の構造は、基本的特徴のみを示し;それらはイムノグロブリンの連結部(J)または他の領域は示されず、またジスルフィド結合も示されない。しかしながら、そのような領域が結合活性のために必要な場合には、それらはイムノグロブリン分子に占める通常の位置に存在するように構築されるであろう。
別法として、Wntポリペプチド配列は、イムノグロブリン重鎖及び軽鎖の間にされ得、而してキメラ重鎖を有するイムノグロブリンが得られる。この実施態様において、Wntポリペプチド配列は、イムノグロブリンの各アームにおけるイムノグロブリン重鎖の3’末端に対して、ヒンジ及びCH2領域の間またはCH2及びCH3領域の間の何れかにおいて融合される。類似する構築物が、Hoogenboom et al., Mol. Immunol. 28:1027-1037 (1991)により報告されている。
イムノグロブリン軽鎖の存在は、本発明のイムノアドヘシンにおいては必要とされないが、イムノグロブリン軽鎖は、Wntポリペプチド−イムノグロブリン重鎖融合ポリペプチドに共有的に結合するか、あるいは、Wntポリペプチドに直接に融合するかの何れかで存在するであろう。前者の場合、イムノグロブリン軽鎖をコードするDNAは、典型的にはWntポリペプチド−イムノグロブリン重鎖融合タンパク質をコードするDNAと共に発現される。分泌に際して、ハイブリッド重鎖及び軽鎖は共有的に結合して、2個のジスルフィド結合したイムノグロブリン重鎖−軽鎖対を有するイムノグロブリン様構造を与えるであろう。このような構造の調製のための好適な方法は、例えば1989年3月28日発行の米国特許第4,816,567号に開示されている。
好適な実施態様において、本発明のイムノアドヘシンの構築に使用されるイムノグロブリン配列は、IgGイムノグロブリン重鎖定常領域に由来する。ヒトイムノアドヘシンについては、ヒトIgG1及びIgG3イムノグロブリン配列の使用が好ましい。IgG1を使用することの主な優位点は、IgG1イムノアドヘシンが固定化タンパク質Aにて効率的に精製されうることである。対照的に、IgG3の精製には顕著により不安定な媒体であるタンパク質Gを必要とする。しかしながら、特定のイムノアドヘシン構造のためのIg融合のの相手を選択する際には、イムノグロブリンの他の構造的及び機能的性質を考慮しなければならない、例えば、IgG3のヒンジはより長く、より柔軟性であって、それはIgG1と融合させた場合に、適切に畳み込みまたは機能しないであろうより大きいアドヘシン領域を適合させうる。他の考慮点は荷電であり;IgGイムノアドヘシンは2価の同種二量体である一方で、IgA及びIgM等のIgサブタイプは、基本的同種二量体単位の二量体または五量体をそれぞれ与えるであろう。インビボでの適用のために設計されるイムノアドヘシンについては、Fc領域により特定される動薬理学的性質及びエフェクター機能も重要である。いずれも21日のインビボ半減期を有するIgG1、IgG2及びIgG4であるが、それらの相補系を活性化する相対的能力は異なっている。IgG4は相補系を活性化せず、IgG2は相補体活性化においてIgG1よりも顕著に弱い。更にIgG1とは異なって、IgG2は単核細胞または好中球のFcレセプターに結合しない。IgG3は、相補体活性化においては至適であるが、インビボ半減期は、他のIgGアイソタイプの約3分の1である。ヒト治療において使用すべく設計されるイムノアドヘシンについての他の重要な考慮点は、特定のアイソタイプのアロタイプ変異体の数である。一般に、血清学的に定義されるアロタイプのより少ないIgGアイソタイプが好ましい。例えば、IgG1は、4種の血清学的に定義されるアロタイプ部位を有し、それらの内の2種(G1m及び2)はFc領域に位置し;これらの部位の内のG1m1は、非免疫原性である。対照的に、IgG3には12種の血清学的に定義されるアロタイプがあり、これらの全てはFc領域にあり;これらの部位の内わずかに3種(G3m5、11及び21)のみが非免疫原性である1個のアロタイプを有する。従って、γ3イムノアドヘシンの潜在的免疫原性は、γ1イムノアドヘシンよりも大きい。
親としてのイムノグロブリンに関しては、2個の重鎖間でジスルフィド結合を形成するヒンジのシステインの直ぐ上流が、有用な結合点である。しばしば使用される設計においては、分子のWntポリペプチド部分のC−末端残基のコドンが、IgGヒンジ領域の配列DKTHTCPPCP(配列番号:1)のコドンの直ぐ上流におかれる。
イムノアドヘシンの構築及び発現のための好適な一般的方法は、Wntポリペプチドについてここで開示した方法と同様である。イムノアドヘシンは、Wntポリペプチド部分をコードするcDNAを、読枠においてIgのcDNA配列に融合することにより最も都合よく構築される。しかしながら、ゲノムIg断片に対する融合も使用され得る(例えば、Gascoigne et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:2936-2940 (1987); Aruffo et al., Cell 61:1303-1313 (1991); Stamenkovic et al., Cell 66:1133-1144 (1991)参照)。後者の型の融合は、発現のためのIg制御配列の存在を必要とする。IgG重鎖定常領域をコードするcDNAは、発表された配列に基づいて、ハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術により、脾臓または末梢血リンパ細胞から誘導されたcDNAライブラリーから単離されうる。イムノアドヘシンのWntポリペプチド及びIg部分をコードするcDNAは、選択した宿主細胞にて効率的発現が可能なプラスミドベクター中に縦列にて挿入される。哺乳動物細胞での発現のためには、pKR−5(Schall et al., Cell 61:361-370 (1990))及びCDM−8ベースのベクター(Seed, Nature 329:840(1989))が使用され得る。正確な結合部分は、設計された結合部分コドン間の付加的配列を、オリゴヌクレオチド特異的削除変異生成を使用して除去することにより生成されうる(Zoller et al., Nucleic Acids Res. 10:6487 (1982); Capon et al., Nature 337:525-531 (1989))。合成的オリゴヌクレオチドが、各半分が所望の結合部分の何れかの側に相補的であるようにし、理想的には36−48量体として使用され得る。別法として、PCR技術が、分子の2個の部分を読枠内において、適当なベクターに結合させるために使用され得る。
イムノアドヘシンの発現用の宿主細胞系の選択は、主として発現ベクターに依存する。他の考慮点は、必要とされる蛋白量である。ミリグラム量が、一時的トランスフェクトによりしばしば産生されうる。例えば、アデノウイルスEIA−形質転換293ヒト胚腎細胞系は、リン酸カルシウム法の修飾によってpRK5ベースのベクターにより一時的にトランスフェクトされ、効率的イムノアドヘシン発現を許容する。CDM−8ベースのベクターは、DEAE−デキストラン法によってCOS細胞のトランスフェクトに使用され得る(Aruffo et al., Cell 61:1303-1313 (1990); Zettmeissl et al., DNA Cell Biol. USA 9:347-353 (1990))。大量のタンパク質が必要な場合、イムノアドヘシンは、宿主細胞系の安定な形質転換の後に発現されうる。例えば、pRK5−ベースのベクターは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードし、G418に対する耐性を付与する付加的なプラスミドの存在下で、モルモット卵巣(CHO)細胞に導入されうる。G418耐性のクローンが培養物中に選択でき;これらのクローンは、増大する濃度のDHFR阻害剤メトトレキセートの存在下で育成され;クローンが選択され、ここにおいてDHFR及びイムノアドヘシン配列をコードする遺伝子コピー数が共に増幅される。イムノアドヘシンがN−末端に疎水性先行配列を含む場合には、それが処理され、トランスフェクトされた細胞から分泌されるであろう。より複雑な構造を持ったイムノアドヘシンの発現には、特有に適合させた宿主細胞が必要とされ、例えば軽鎖またはJ鎖部分がある種の骨髄腫またはハイブリドーマ細胞により提供されるであろう(Gascoigne et al.,前出文献;Martin et al., J. Virol. 67:3561-3568 (1993))。
イムノアドヘシンは、アフィニティクロマトグラフィーにて都合よく精製されうる。アフィニティリガンドとしてのタンパク質Aの適合性は、キメラにおいて使用されたイムノグロブリンのFc領域の種及びアイソタイプに依存する。タンパク質Aは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づくイムノアドヘシンの精製に使用され得る(Lindmark et al., J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))。タンパク質Gは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3について推奨される(Guss et al., EMBO J. 5:1567-1575 (1986))。アフィニティリガンドが結合される担体は多くの場合にアガロースであるが、他の担体も使用可能である。調節多孔性ガラスまたはポリ(スチレンビニル)ベンゼン等の機械的に安定な担体は、アガロースにより達成されるよりも早い流速及び短時間の処理を可能とする。イムノアドヘシンのタンパク質AまたはGアフィニティカラムに対する結合条件は、Fc領域、即ちその種及びアイソタイプにより完全に指示されうる。一般的に、適切なリガンドが選択されれば、効率的結合が条件調節されない培養液から直接に生じる。イムノアドヘシンの際だった特徴は、ヒトのγ1分子については、タンパク質Aの結合容量が同じFc型の抗体に比較して若干低下していることである。結合したイムノアドヘシンは、酸性pH(3.0またはそれ以上)または穏和なカオトロピズム塩を含む中性pH緩衝溶液の何れかにて、効率的に溶離されうる。このアフィニティクロマトグラフィー工程は、>95%の純粋なイムノアドヘシン調製物を生じうる。
イムノアドヘシンを精製するために、タンパク質AまたはGでのアフィニティクロマトグラフィーに代えて、またはそれに加えて、この技術で既知の他の方法も使用されうる。イムノアドヘシンはイオウ−親和性ゲルクロマトグラフィーにおいて抗体と同様に挙動し(Hutchens et al., Anal. Biochem. 159:217-226 (1986))、また金属キレートクロマトグラフィーに固定化される(Al-Mashikhi et al., J. Diary Sci. 71:1756-1763 (1988))。しかしながら、抗体とは対照的に、イオン交換カラムにおけるそれらの挙動は、それらの等電点のみならず、それらのキメラの性質のために分子に存在する荷電二極性によっても予想される。
所望により、イムノアドヘシンは二重特異的に作成されうる。而して、本発明の意味のアドヘシンは、Wntポリペプチドを、他のサイトカインレセプターサブユニットの細胞外領域等と組み合わせてもよい。このような二重特異的イムノアドヘシン分子が作成されるサイトカインレセプターは、TPO(またはmplリガンド)、EPO、IL−4、IL−7、GH、PRL、IL−3、GM−CSF、IL−5、IL−6、LIF、OSM、CNTF及びIL−2を含む。別法として、Wntポリペプチド領域は、二重特異的イムノアドヘシンの生成において、ここに例示されるような他のサイトカインと組み合わされてもよい。二重特異的分子について、それらの抗体様構造の一つのアームにキメラ抗体重鎖、及び他のアームにキメラ抗体軽鎖からなる三量体分子が、精製の容易性の点から有利である。二重特異的イムノアドヘシンの酸性に伝統的に使用され、10種の四量体の混合物を産生する抗体産生四量体とは対照的に、三量体イムノアドヘシン構造の3本の鎖をコードする核酸によりトランスフェクトされた細胞は、3種の分子の混合物のみを産生し、この混合物からの所望の生成物の精製は、対応してより容易である。
10.Wntポリペプチドの長い半減期の誘導体
本発明の方法において使用される好ましいWntポリペプチド機能性誘導体は、Wnt−イムノグロブリンキメラ(イムノアドヘシン)及び他の長半減期分子を含む。
天然分子より長い半減期を有するWntポリペプチドの他の誘導体は、非蛋白性ポリマーに共有的に結合されたWntポリペプチドまたはWnt−イムノグロブリンキメラを含む。非蛋白性ポリマーは、通常は親水性合成ポリマー、即ち天然には他に見出されないポリマーである。しかしながら、天然の供給源から単離されるポリマーのように、天然に存在し、また組み換え的若しくはインビトロの方法により産生されるポリマーは有用である。親水性ポリビニルポリマー、例えばポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンは、本発明の範囲内にはいる。特に有用なものは、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリアルキレンエステル;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、及びポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックコポリマー(PluronicsTM)等のポリエルキレン;ポリメタクリレート;カルボマー;ラクトース、アミロプクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、デキストランサルフェート、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、若しくは例えばヒアルロン酸等の酸ムコポリサッカライドのポリサッカライドサブユニット等の、ホモポリサッカライドまたはヘテロポリサッカライドを含む、サッカライド単量体、D−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、フラクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンニュロン酸(例えば、ポリマンニュロン酸またはアルギン酸)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルコース、及びノイラミン酸からなる分枝鎖また非分枝鎖のポリサッカライド;ポリソルビトール及びポリマンニトール等の糖アルコールのポリマー;ヘパリン若しくはヘパロンを含む。該ポリマーは、好ましくは水溶性であるが、交差結合の前にはそうである必要はなく、しかしながら接合体は水溶性でなければならない。更に、該ポリマーは、接合体形態で高度に免疫原性であってはならず、また血管内輸液または注射により投与されるべき場合には、このような経路に適合しないような粘性を有してはならない。
好ましくは該ポリマーは、反応性の単一の基のみを有する。このことは、タンパク質分子の交差結合の防止を助ける。しかしながら、交差結合を低減すべく反応条件を至適化すること、または実質的に均質な誘導体を回収するために、ゲル濾過またはクロマトグラフィー的ふるいを通して反応生成物を精製することは、ここにおける権利範囲内にある。
該ポリマーの分子量は、望ましくは約100〜500,000の範囲にあり、好ましくは約1,000〜20,000である。選択される分子量は、ポリマーの性質及び置換の程度に依存するであろう。一般的には、ポリマーの親水性がより大きく、かつ置換の程度が大きいほど、採用される分子量はより小さい。至適分子量は、常法の実験により決定されるであろう。
該ポリマーは、該ポリマー及び結合されるべきWntポリペプチドまたはWnt−イムノグロブリンキメラの1個以上のアミノ酸または糖残基と反応する多官能性交差結合試薬を介して、WntポリペプチドまたはWnt−イムノグロブリンキメラに共有的に結合される。しかしながら、誘導化ポリマーをハイブリッドと直接結合させることにより、該ポリマーを直接に交差結合させること、またはその逆も、本発明の範囲にある。
WntポリペプチドまたはWnt−イムノグロブリンキメラの共有的交差結合部位は、N−末端アミノ基及びリジン残基に見出されるイプシロンアミノ基、並びに他のアミノ、イミノ、カルボキシル、スルヒドリル、ヒドロキシまたは他の親水性基を含む。該ポリマーは、多官能性(通常二官能性)交差結合試薬を使用することなくハイブリッドに直接に共有的に結合されうる。アミノ基に対する共有結合は、塩化シアヌル酸、カルボニルジイミダゾール、アルデヒド反応基(PEGアルコキシドとブロモアセトアルデヒドのジエチルアセタール;PEGとDHSO及び無水酢酸;PEGと4−ヒドロキシベンズアルデヒドのフェノキシド、スクシンイミジル活性化エステル、活性化ジチオカルボネートPEG、2,4,5−トリクロロフェニルクロロホルメートまたはP−ニトロフェニルクロロホルメート活性化PEG)に基づく既知の化学によりなされる。カルボキシル基は、カルボジイミドを使用してPEG−アミン結合により誘導される。
ポリマーは、化学試薬、例えばメタ過ヨウ素酸または酵素、例えばグルコース若しくはガラクトースオキシダーゼ(何れかが炭水化物のアルデヒド誘導体を生成する)を使用する酸化により、次いでオリゴサッカライドのビオチンまたはアビジンにより標識に関するHeitzmann et al., P. N. A. S. 71:3537-41 (1974)またはBayer et al., Methods in Enzymology 62:310 (1979)により記述されるのと同様な方法でヒドラジンまたはアミノ誘導体ポリマーとの反応により、オリゴサッカライドの基に接合される。更に、オリゴサッカライドを結合するために使用された他の化学的または酵素的方法は、一般に誘導のためのアミノ酸部位よりも少ない置換が存在し、従ってオリゴサッカライド生成物はより均質であるため、特に有利である。オリゴサッカライド置換基は、場合により酵素消化、例えばノイラミニダーゼ消化により、ポリマー誘導に先立って修飾されてもよい。
該ポリマーは、結合されるポリペプチドのアミノ酸側鎖、またはN−若しくはC−末端に対して直接に反応性を有するか、または多官能性交差結合試薬と反応性の基を有する。一般的に、このような反応性基を有するポリマーは、固定化タンパク質の調製について知られている。ここにおいてこのような化学を使用するためには、タンパク質固定化のために従来使用された不溶性ポリマーと同様な様式で誘導するのでなければ、水溶性ポリマーを採用しなければならない。シュウ化シアン活性化は、ポリサッカライドの交差結合において採用するために、特に有用な手法である。
出発ポリマーについて称される“水溶性”とは、接合のために使用される該ポリマーまたは反応性中間体が、誘導反応に関与するために充分に水溶性であることを意味する。
ポリマー接合体について称される“水溶性”とは、該接合体が血液糖の生理学的液体に可溶性であることを意味する。
このようなポリマーによる置換の程度は、タンパク質上の反応部位の数、タンパク質の全てまたは断片が使用されるか、該タンパク質が異種タンパク質との融合物であるか否か(例えばWnt−イムノグロブリンキメラ)、分子量、親水性、及びポリマーの他の性質、並びに選択される特定のタンパク質誘導部位等に依存して変化するであろう。一般的に、接合体は1〜10個のポリマー分子を有し、一方で任意の異種的配列は、所望の活性が有意に悪影響を受けない限り、基本的には限定されない個数のポリマー分子により置換されてもよい。交差結合の至適な程度は、所望の提要にて機能する接合体の能力が決定された後には、置換の程度を変化させるための時間、温度及び他の反応条件が変化する実験的マトリクスにより容易に決定される。例えばPEG等のポリマーは、PEG等の非蛋白ポリマーによるタンパク質の共有的修飾について、それ自体既知の広範囲の方法により交差結合される。しかしながら、これらの方法のいくつかは、ここにおける目的に対しては好ましくない。塩化シアヌル酸化学は、タンパク質交差結合を含む多くの副反応を招く。更に、それは特にスルヒドリル基を含むタンパク質の不活性化を導く恐れが大きい。カルボニルジイミダゾール化学(Beauchamp et al., Anal. Biochem., 131:25-33 (1983))は、高いpH(>8.5)を必要とし、これはタンパク質を不活性化しうる。更に、“活性化PEG”中間体は水と反応しうる為、タンパク質に対して大過剰モルの“活性化PEG”が必要とされる。カルボニルジイミダゾール化学に要求される高濃度のPEGは、ゲル濾過クロマトグラフィー及び親水性クロマトグラフィーの両者に対して悪影響を与えるため、精製において問題を生じる。加えて、高濃度の“活性化PEG”は、タンパク質を沈殿させ得、これはそれ自体既に指摘されている問題点である(Davis, 米国特許第4,179,337)。他方において、アルデヒド化学(Royer, 米国特許第4,002,531)は、わずかに40倍のモル過剰量のPEG及び1−2時間のインキュベートを必要とすることから、より効率的である。しかしながら、“断言されているPEGの金属ベース酸化剤と複合体を形成する傾向の為に”(Harris et al., J. Polym. Sci. Polym. Chem. Ed. 22:341-52 (1984))、PEGアルデヒドの調製についてRoyerにより示唆された二酸化マンガンは問題である。DMSO及び無水酢酸を使用するMoffatt酸化の使用は、この問題を取り除く。更にRoyerにより示唆されたナトリウムボロヒドリドは高いpHにおいて使用されなければならず、ジスルフィド結合を還元する顕著な傾向を有する。対照的に、ナトリウムシアノボロヒドリドは、中性pHにおいて有効であり、ジスルフィド結合を還元する極めてわずかな傾向のみを有するため、好ましい。
本発明のWntポリペプチドまたはWnt−イムノグロブリンキメラを修飾するための官能化PEGポリマーは、Shearwater Polyner, Inc. (Huntsville, AL)から入手可能である。このように商業的に入手可能なPEGポリマーは、限定されるものではないが、アミノーPEG、PEGアミノ酸エステル、PEG−ヒドラジド、PEG−チオール、PEG−コハク酸塩、カルボキシメチル化PEG、PEG−プロピオン酸、PEGアミノ酸、PEGスクシンイミジルスクシネート、PEGスクシンイミジルプロピオネート、カルボキシメチル化PEGのスクシンイミジルエステル、PEGのスクシンイミジルカルボネート、アミノ酸PEGのスクシンイミジルエステル、PEG−オキソカルボニルイミダゾール、PEG−ニトロフェニルカルボネート、PEGトレシレート、PEG−グリシジルエーテル、PEG−アルデヒド、PEGビニルスルホン、PEG−マレイミド、PEG−オルトピリジル−ジスルフィド、異種官能性PEG、PEGビニル誘導体、PEGシラン、及びPEGホスホライドを含む。これらのPEG誘導体を結合させるための反応条件は、タンパク質、所望のPEG化の程度及び使用されるPEG誘導体に依存して変化するであろう。PEG誘導体の選択におけるいくつかの因子は、所望の結合点(リジンまたはヒスチジン)、誘導体の加水分解安定性及び反応性、安定性、結合の毒性及び抗原性、分析に対する適合性等を含む。任意の特定の誘導体の使用に関する特定の指導は、製造者から入手可能である。
本発明の長半減期接合体は、未反応原料からゲル濾過により分離できる。接合体の異種的分子種は、同様な方法で他から精製される。該ポリマーは疎水性ゲルとして水不溶性であってもよい。
接合体は、イオン交換クロマトグラフィーによっても精製されうる。親電子的に活性化されたPEGの多くの化学は、PEG化生成物のアミノ基の電荷を低下させる。而して、高分解能イオン交換クロマトグラフィーは、遊離及び接合タンパク質を分離するために使用され得、また異なるPEG化の程度を持った分子種を分離するために使用され得る。実際に、異なる分子種(例えば1個または2個のPEG残基を有する)の分離は、未反応アミノ酸のイオン的性質の差異によって可能である。
B.Wntポリペプチドの治療的使用
Wntポリペプチド及びWntポリペプチド遺伝子は、造血細胞における減少に特徴づけられる疾患または疾病の治療において、哺乳動物に投与するために治療的用途が見出されると考えられる。これらの疾患の例は、貧血(大球性及び無形成貧血);血小板減少症;形成不全;散在性血管内凝集(DIC);骨髄形成不全;免疫(自己免疫)血小板減少性紫斑(ITP);HIV誘導ITPを含む。加えて、これらのWntポリペプチド分子は、出血に苦しんでいる患者を治療するのに有用であり得る。造血細胞増殖を導くWntポリペプチド及びWntポリペプチド遺伝子は、化学若しくは放射線療法または骨髄移植療法を受けた細胞における成熟血液細胞系の再母集団形成を促進する為にも使用され得る。一般的にはこれらの分子は、原始造血細胞の増殖及び/または分化(特には増殖)を増強するものと期待される。
Wntポリペプチドは、単独でまたは、上記に示した臨床状況において、増殖因子または抗体を含む一つ以上のサイトカインとの組み合わせにおいて投与されうる。これは、Wntポリペプチドの投与量の効果的な低減を促す。このような付加的分子の好適な投与量は、下記に議論される。
遺伝子療法の適用において、例えば欠陥遺伝子との置き換えによって、治療的に有効な遺伝子産物のインビボにての合成が達成されるように、遺伝子が細胞に導入される。“遺伝子療法”とは、単一の処置によって継続的効果が達成される慣用の遺伝子療法と、1回または反復する治療的に有効なDNAまたはmRNAの投与を含む遺伝子治療薬の投与との両者を含む。アンチセンスRNA及びDNAは、インビボにおけるある遺伝子の発現を阻止するための治療剤として使用され得る。細胞膜により制限された取り込みのために低い細胞内濃度ではあるが、短いアンチセンスオリゴヌクレオチドが、それらが阻害剤として作用する細胞中に取り入れられることが既に示されている(Zamecnik et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4143-4146 (1986))。該オリゴヌクレオチドは、例えば、それらの負に荷電するホスホジエステル基を非荷電基に置換することにより、それらの取り込みを向上するように修飾されうる。
核酸を性細胞に導入する為の種々の技術が利用可能である。この技術は、核酸が、インビトロでの培養細胞中、または意図する宿主の細胞にインビボにおいて移送されるかにより変化する。核酸をインビトロにおいて哺乳動物細胞に移送する技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法等の使用を含む。最近好まれるインビボ遺伝子移送技術は、ウイルス性(典型的にはレトロウイルス性)ベクターによるトランスフェクション、及びウイルス被覆蛋白−リポソーム媒介トランスフェクションが含まれる(Dzau et al., Trends in Biotechnology 11:205-210(1993))。ある場合には、核酸供給源を標的細胞の細胞表面膜タンパク質に特異的抗体、標的細胞のレセプターに対するリガンド等の標的細胞を標的とする試薬と共に提供することが望ましい。リポソームが使用される場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質が、標的を定め及び/または取り込みを促進するために使用されてよく、例えば、特定の細胞に対して向性を持ったカプシドタンパク質またはその断片、周期において内部化を行うタンパク質に対する抗体、及び細胞内局在化を標的とし、細胞内半減期を向上するタンパク質がある。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu et al., J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987); 及びWagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:3410-3414 (1990)により記述されている。最近知られている遺伝子の標識付け及び遺伝子治療プロトコールの検討にはAnderson et al., Science 256:808-813 (1992)参照。
治療上の応用については、本発明にしたがって有用なWntポリペプチドは、ボーラスとして、または一定期間の継続的な点滴によって、ヒトの静脈に投与されるものを含む、生理的に許容可能な投与形態で、哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。投与の代わりの経路としては、筋肉内、腹膜内、脳脊髄内、皮下、動脈内、骨膜内、包膜内、経口、局所的、または吸入の各経路が含まれる。Wntポリペプチドはまた、局所的と同様に全身性の治療効果を発揮するために、腫瘍内、腫瘍周辺、病変内、病変周辺の各経路で、またはリンパに対して場合により投与される。
上記投与形態には、固有に非毒性及び非治療性である生理学的に許容されるキャリアーが包含される。上記キャリアーの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のようなバッファー物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩類、または硫酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩類、コロイド状シリカ、三ケイ酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベース物質、及びPEGが含まれる。Wntポリペプチドの局所的またはゲルベース形態についてのキャリアーには、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたはメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、PEG、及びウッドワックスアルコールのようナポリ多糖が含まれる。全ての投与について、簡便な蓄積形態が適宜用いられる。上記形態には例えば、ミクロカプセル、ナノカルセル、リポソーム、硬膏、吸入形態、鼻へのスプレー、舌下の錠剤、及び持続放出調製物が含まれる。Wntポリペプチドは典型的には、約0.1mg/mlから100mg/mlの濃度で上記担体に処方される。
持続放出調製物の好ましい例は、Wntポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性担体を含み、担体は、フィルムまたはマイクロカプセル等の成形された形態である。持続放出性担体の例は、ポリエステル、Langer et al., 上記参照及びLanger, 上記参照に記述されるハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919)、L−グルタミン酸及びγエチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidman et al., 上記参照)、非−分解性エチレン−ビニルアセテート(Langer et al.,前出文献)、Lupron DepotTM(乳酸−グリコール酸コポリマー及びロイプロライドアセテートからなる注射可能な微小球)等の分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、並びにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。ポリエチレン−ビニルアセテート及び乳酸−グリコール酸コポリマーのポリマーは、100日にわたって分子の放出を可能とする一方で、ある種のハイドロゲルは、タンパク質をより短期間で放出する。カプセル化されたWntポリペプチドが体内に長期間残ると、湿り気の中に37℃にて曝された結果、それらは変性し、または凝集して生物学的活性及び免疫原性の生じうる変化をもたらす。関連する機構に応じてタンパク質の安定化のために合理的な手段が考案されうる。例えば、凝集の機構が、チオ−ジチオ交換を介しての分子間S−S結合形成であることが見出された場合、安定化はスルヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分量の調整、適切な添加剤の使用及び特定のポリマー担体組成物を開発等によって達成されうる。
持続放出性Wntポリペプチド組成物は、リポソーム捕捉ポリペプチドも含む。Wntポリペプチドを含むリポソームは、本分野で既知の方法により調製される:Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030(1980);及び米国特許第4,485,045号及び4,544,545号。通常、リポソームは小型(約200−800オングストローム)の単層型で、その脂質含量は約30%コレステロール以上であり、選択される比率は至適Wntポリペプチド治療のために調節される。増大した循環時間を有するリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
疾患の予防または治療のために、Wntポリペプチドの適切な投与量は、上記定義された治療される疾患のタイプ、該疾患のひどさ及び過程、抗体が予防または治療目的のため投与されたか否か、以前の治療、患者の病歴とWntポリペプチドに対する応答性、及びかかっている医師の指示に依存するであろう。Wntポリペプチドは一回、または一連の治療を通じて患者に適宜投与される。
疾患のタイプ及びひどさに依存して、約1μg/kgから15mg/kgのWntポリペプチドが、例えば一度以上の分離した投与または継続的な点滴によって、患者に対する投与のために最初の候補の投与量である。典型的な毎日の投与量は、上記記載の因子に依存して、約1μg/kgから100μg/kgまたはそれ以上の範囲である。例えば、投与量は、G-CSF,GM-CSF及びEPOのような他のサイトカインに対するものと同様であろう。疾患に依存して、数日間以上の繰り返される投与については、該治療は疾患の兆候の望ましい抑制が生じるまで継続される。しかしながら、他の投与摂生も有用である。この治療の進行は、簡便な方法及びアッセイによって容易にモニターされる。
一種以上のサイトカインがWntポリペプチドと共投与される場合、より少量のWntポリペプチドが用いられる。適切な投与量のサイトカインは、約1μg/kgから15mg/kgのサイトカインである。サイトカインの典型的な毎日の投与量は、約1μg/kgから100μg/kg(例えば1-50μg/kg)以上の範囲である。例えば、該投与量は、G-CSF,GM-CSF及びEPOのような他のサイトカインに対するものと同様である。サイトカイン(類)は、Wntポリペプチドの投与の前、それと同時、またはそれに引き続いて投与される。サイトカイン(類)及びWntポリペプチドは、哺乳動物に対して同時に投与するための製薬学的組成物を形成するために組み合わされる。特的の実施態様においては、Wntポリペプチドとサイトカインの量は、血液細胞の相助作用的再集団化(または造血細胞の増殖及び/または分化の相助作用的増加)が、Wntポリペプチドとそのサイトカインの投与により哺乳動物において生じるようなものである。言い換えると、血液細胞の再集団化(または造血細胞の増殖/分化)の観点から、2以上の試薬(即ちWntポリペプチドとサイトカイン(類))の協同作用は、これらの分子の個々の効果の総額よりも大きい。
Wntポリペプチドの治療用剤形は、貯蔵のために、所望の純度を有するWntポリペプチドを場合により生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤(Remington's Pharmaceutical Science, 16th edition, Osol, A., Ed., (1980))と混合することにより、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で調製される。許容される担体、賦形剤及び安定化剤は、使用される投与量及び濃度において受容者に対して非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含むモノサッカライド、ジサッカライドまたは他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;マンニトールまたはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;Tween, PluronicsTMまたはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
Wntポリペプチドは、例えばコアセルベート化技術または界面重合(例えば、それぞれ、リポソーム、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)により調製され、コロイド状薬剤分配システム(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノパーティクル、及びナノカプセル)において、またはマクロエマルジョンにおいて、マイクロカプセルに取り込まれてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Science,前出文献に開示されている。
インビボでの投与に使用するためのWntポリペプチドは、滅菌的でなければならない。これは、凍結乾燥及び再構成に先行してまたはその後に、滅菌フィルター膜を通して濾過により容易に行われうる。Wntポリペプチドは通常凍結乾燥形態または溶液にて貯蔵されるであろう。治療用Wntポリペプチド組成物は、一般に例えば静脈内溶液バッグまたは皮下注射針で刺すことが出来るストッパを有するバイアル等の滅菌的な連通部を有する容器内に収容される。
局所的に適用される場合、Wntポリペプチドは好適には担体及び/または賦形剤等の他の成分と組み合わされる。このような他の成分にはそれらが生理学的に許容され、かつ予定する投与について有効であり、組成物の活性成分の活性を破壊しないことを除いて、性質に制限はない。好適なベヒクルの例は、軟膏、クリーム、ゲル、または懸濁物であり、精製されたコラーゲンを含むかまたは含まない。該組成物は経皮的パッチ、プタスター、またはバンデージに、好ましくは液体または半液体の形態で含浸させてもよい。
ゲル剤型を得るためには、液体組成物中に製剤化されたWntポリペプチドを、局所投与に適当な粘性のゲルを形成すべく、有効量の水溶性ポリサッカライドまたはPEG等の合成ポリマーと混合してもよい。使用され得るポリサッカライドは、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルヒドロキシアルキルセルロース含むエーテル化セルロース誘導体、等のセルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等;デンプン及び分画デンプン;寒天;アルギン酸及びアルギン酸塩;アラビアゴム;プル欄;アガロース;カーラギナン;デキストラン;デキストリン;フルクタン;イヌリン;マンナン;キシラン;アラビナン;キトサン;グリコーゲン;グルカン;及び合成生体高分子;並びにキサンタンガム;グアガム;イナゴマメゴム;アラビアゴム;トラガカンスゴム;カラヤゴム等のゴム類、並びにそれらの誘導体及び混合物を含む。ここにおける好適なゲル化剤は、生体系に対して不活性であり、非毒性、調製が容易、及び流動性に過ぎずかつ粘性に過ぎない、かつWntポリペプチドをその内部に維持して不安定化しないものである。
好ましくはポリサッカライドは、エーテル化セルロースであり、より好ましくはUSPに列挙された充分に定義され精製されたもの、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のメチルセルロース及びヒドロキシアルキルセルロース誘導体である。ここにおいて最も好ましくは、メチルセルロースである。
ゲル化のために有用なポリエチレングリコールは、典型的には適切な粘性を得るために低及び高分子量PEGの混合物である。例えば、分子量400−600のPEGの、分子量1500のものとの混合物は、ペーストを得るために適当な比で混合した場合に、この目的に有効である。
ポリサッカライド及びPEGに適用したように、“水溶性”なる用語は、コロイド溶液及び分散物を含む。一般にセルロース誘導体の溶解度は、エーテル基の置換の程度により決定され、ここにおいて有用な安定化誘導体は、該誘導体を水溶性とするために、セルロース鎖中の無水グルコース単位あたりのエーテル基を充分に持たねばならない。無水グルコース単位あたり少なくとも0.35エーテル基のエーテル置換度が、一般には充分である。さらには、セルロース誘導体は、例えば、Li, Na, K, またはCs塩類等のアルカリ金属塩の形態でもよい。
メチルセルロースがゲルにおいて採用される場合、それは好ましくは約2−5%、より好ましくは約3%のゲルを含み、Wntポリペプチドはゲルのmlあたり、約300−1000mgの量で存在する。
治療的に採用されるべきWntポリペプチドの有効量は、例えば、治療対象、投与経路及び患者の症状に依存するであろう。従って、治療医は、至適治療効果を得るために要求されるように、投与量の力価を決定し、投与経路を修飾する必要がある。典型的には臨床医は、所望の効果が達成される投与量に至るまで、Wntポリペプチドを投与するであろう。全身治療のための典型的な1日投与量は、上述した因子に依存して、約1μg/kgから10mg/kgまでまたはそれ以上であろう。別法としての一般的計画では、Wntポリペプチドは製剤化され、組織内において約0.1ng/cc以上であり有効であるが不当に毒性ではない最大投与量までのWntポリペプチド濃度が確立され得る投与量をもって、標的部位または組織に分配される。この組織内濃度は、可能であれば連続的輸液、徐放剤、局所投与、経験的に決定される頻度での注射によることを含む、投与摂生により維持されなければならない。この治療の進行は、慣用のアッセイにより容易に監視される。
C.Wntポリペプチドの非治療的用途
Wnt核酸は、ここに例示される組換え技術によってWntポリペプチドを調製するために有用であり、次いでこれは以下に記述される種々の有用性を持った抗−Wnt抗体の産生に使用され得る。
Wntポリペプチド(ポリペプチドまたは核酸)は、インビトロにて細胞の増殖及び/または分化を誘導するために使用され得る。特に、この分子は幹細胞/先駆細胞母集団(例えば、下記実施例2に記述されるようにして得られたflASK細胞集団)の増殖を誘導するために使用され得る。生体外にて生育されるこれらの細胞は、ここに記述されるような他の既知の成長因子またはサイトカインに同時に曝されうる。これは、細胞の増殖及び/または分化を生じる。
本発明の別の側面において、WntポリペプチドはWntレセプターのアフィニティ精製の為にも使用され得る。略述すれば、この技術は:(a)Wntレセプターの供給源を固定化Wntポリペプチドに、精製されるべきWntレセプターが選択的に固定化レセプターに吸着される条件下で接触させ;(b)固定化Wntポリペプチド及びその担体を洗浄して非吸着物質を除去し、;並びに(c)Wntレセプターを、それが吸着された固定化Wntポリペプチドから溶離緩衝溶液にて溶出することを含む。アフィニティ精製の特に好ましい実施態様においては、Wntポリペプチドは不活性かつ多孔性の担体(例えば、シュウ化シアンと反応させたアガロース)に、共有的に結合する。特に好ましくは、タンパク質Aカラムに固定化したWntポリペプチドイムノアドヘシンである。Wntレセプターを含む溶液が、次いでクロマトグラフィー担体を通される。Wntレセプターはカラムに吸着され、次いで溶離条件を変化させる(例えばpHまたはイオン強度を変化させる)ことにより放出される。
Wntポリペプチドは、細胞表面レセプターへの結合について、可能性ある作動剤または拮抗剤の競合的スクリーニングに使用されてもよい。このような作動剤または拮抗剤は可能性ある治療薬となりうる。
Wntポリペプチドに結合する分子を同定するための好ましい技術は、アッセイプレートのウエル等の固相に結合されるキメラレセプター(例えば、エピトープ標識WntポリペプチドまたはWntポリペプチドイムノアドヘシン)を使用する。場合により標識された(例えば放射標識)分子の、固定化レセプターへの結合が評価されうる。
Wntポリペプチドは、分子量マーカーとしても有用である。Wntポリペプチドを分子量マーカーとして使用するために、例えばゲル濾過クロマトグラフィーまたはSDS−PAGEが、タンパク質分離のために使用され、このために実質的に通常の方法でそれらの分子量を決定することが望まれる。Wntポリペプチド及び他の分子量マーカーは、分子量範囲を与えるための標準として使用されるであろう。例えば、ホスホリラーゼb(mw=97,400)、ウシ血清アルブミン(mw=68,000)、オボアルブミン(mw=46,000)、Wntポリペプチド(例えば、Gavin et al.,上記参照に記載されたコード配列に依存してmw=38,000-42,000)、トリプシンインヒビタ(mw=20,100)、及びリゾチーム(mw=14,400)が、mwマーカーとして使用され得る。ここで述べた他の分子量マーカーは、Amersham Corporation, Arlington Heights, ILから商業的に購入できる。分子量マーカーは、その検出を容易にするために一般に標識されている。例えばマーカーはビオチニル化され、分離に次いでストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼと共にインキュベートされて種々のマーカーが光り検出により検出可能となる。
精製Wntポリペプチド及びそれをコードする核酸は、Wntポリペプチド及びそのリガンドの機構研究用試薬、正常の生育及び発生におけるWntポリペプチド及びWntレセプターの役割研究、並びに異常な生育及び発生、例えば悪性腫等または疾患や疾病のために試薬として販売されうる。
D.Wntポリペプチド抗体調製
1.ポリクローナル抗体
抗Wnt抗体、特に中和抗体に対する潜在的な治療上の応用には、疾患、幹細胞腫瘍及びWnt発現の部位での他の腫瘍の治療が含まれ、該他の腫瘍にはWntの過剰発現によって特徴付けられる腫瘍が含まれる。
一般にポリクローナル抗体は、関連する抗原及びアジュバントの複数回の経皮的(sc)または腹腔内的(ip)注射により、動物に生じさせうる。関連する抗原を、免疫されるべき種に対して免疫原性のタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリンまたはダイズトリプシンインヒビタ等と、二官能性または誘導化試薬、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介しての接合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR及びR1が異なるアルキル基であるR1N=C=NRを使用して接合させることは有用であろう。
動物は、1mgまたは1μgのペプチドまたは接合体(それぞれウサギまたはマウス)を3体積のフロイント完全アジュバントと合わせ、該溶液を複数部位に皮内的に注射することにより、抗原、免疫原性接合体または誘導体に対して免疫される。1ヶ月後に動物は、フロイント完全アジュバント中のペプチドまたは接合体の基の量の1/5ないし1/10を用い、複数部位の経皮注射により追加免疫される。7〜14日後に、動物は採血され、血清が抗体力価についてアッセイされる。動物は力価がプラトーにはいるまで追加免疫される。好ましくは動物は、同じ抗原の接合体であるが、異なるタンパク質に接合するか及び/または異なった交差結合試薬を介して接合する接合体にて追加免疫される。接合体は、タンパク質融合体として組み換え細胞培養においても調製されうる。アルム等の凝集剤も、免疫応答を向上するために好適に使用される。
2.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の母集団、即ち母集団に含まれる個々の抗体は、少量存在しうる自然に起こる可能性のある変異を除いて同等である母集団から得られる。従って、修飾語“モノクローナル”は、異なる抗体の混合物ではないものとしての抗体の特徴を示す。例えばモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法を使用して作成されるか、または組換えDNA法(Cabilly et al., 前出文献)によって作成されてもよい。ハイブリドーマ法において、マウスまたはハムスター等の適当な宿主動物は、免疫に使用したタンパク質に対して特異的に結合するであろう抗体を産生するか、または産生しうるリンパ細胞を引き出すために、上述したようにして免疫される。別法として、リンパ細胞はインビトロにおいて免疫される。次いで、リンパ細胞は、ポリエチレングリコール等の適当な融合試薬を使用して、ミエローマ細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。
斯くして調製されたハイブリドーマ細胞は、非融合の親ミエローマ細胞の生育または生存を阻害する1種囲繞の物質を好ましくは含有する、適当な培養培地に播種され育成される。例えば親ミエローマ細胞が酵素ハイポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合には、ハイブリドーマのための培地は、典型的にはHGPRT-欠損細胞の生育を阻害する物質であるハイポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むであろう。
好ましいミエローマ細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞により安定した高水準の抗体産生を支持し、かつHAT培地等の培地に感受性のものである。これらの内で好ましいミエローマ細胞系は、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍から誘導されるもの、及びAmerican Type Culture Collection, Rockville, Maryland USAから入手可能なSP−2細胞等のネズミミエローマ系である。ヒトミエローマ及びマウス−ヒトヘテロミエローマも、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記述されている(Kozbor et al., J. Immunol. 133:3001(1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc. New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が生育する培養培地は、該抗原に対して向けられたモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、免疫沈殿または放射免疫アッセイ(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)等のインビトロ結合アッセイにより測定される。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson et al., Anal. Biochem. 107:220 (1980)のスキャッチャード(Scatchard)アッセイにより測定されうる。
ハイブリドーマが、所望の特異性、親和性及び/または活性の抗体を産生することが同定された後は、該クローンは限定希釈法によりサブクローン化され得、標準法により育成される(Goding, 前出文献)。この目的のために適当な培地は、D−MEMまたはRPMI−1640培地を含む。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物内で腹水腫瘍としてインビボにおいて生育されうる。
サブクローンから分泌されたモノクローナル抗体は、例えばタンパク質A−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティクロマトグラフィー等の慣用のイムノグロブリン精製方法により、培養培地、腹水または血清から好適に分離される。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用方法により容易に単離され、配列決定される(例えばネズミ抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合しうるオリゴヌクレオチドプローブの使用により)。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として働く。一旦単離されれば、DNAは発現ベクターに入れられ、これは次いで、E. coli細胞、霊長類COS細胞、モルモット卵巣(CHO)細胞、またはイムノグロブリンタンパク質を別途産生しないミエローマ細胞にトランスフェクトさせ、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの最近における組換え発現に関する総説は、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol. 5:256-262 (1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130:151-188 (1992)を含む。
更なる実施態様において、抗体または抗体断片は、McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990)に記述される技術を使用して生成された抗体ファージライブラリーから単離されうる。Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)は、ファージライブラリーを使用して、ネズミ及びヒト抗体の単離をそれぞれ記述している。引き続く文献は、鎖シャフルによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992))、並びに極めて大きいファージライブラリー構築のための計画として組み合わせ感染及びインビボ組換え(Waterhouse et al. Nuc. Acids Res. 21:2265-2266 (1993))を記述している。しかしてこれらの技術は、モノクローナル抗体の単離に関する伝統的モノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対して生存可能な別の技術であり得る。
DNAも同種的ネズミ配列に代えて、ヒト重鎖及び軽鎖定常領域コード配列を置換することにより(Cabilly et al.,前出文献;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851 (1984))、あるいはイムノグロブリンコード配列に非イムノグロブリンポリペプチドの全てまたは一部のコード配列を共有的に結合することにより修飾されうる。
典型的なこのような非イムノグロブリンポリペプチドは、抗体の定常領域を置換するか、またはそれらは抗体の一方の抗原結合部位の可変領域を置換して、抗原に対して特異性を有する一つの抗原結合部位及び異なる抗原に特異性を有する他の抗原結合部位を有するキメラ性二価抗体を創生する。
キメラまたはハイブリッド抗体は、交差結合試薬を含む合成タンパク質化学における貴地方法を使用してインビトロにて調製されてもよい。例えば、イムノトキシンは、ジスルフィド交換反応またはチオエーテル結合形成により使用して構築される。この目的に好適な試薬の例は、イミノチオレート及びメチル−4−メルカプトブチルイミデートを含む。
3.ヒト化及びヒト抗体
非ーヒト抗体をヒト化する方法はこの分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非−ヒトである供給源から導入される1個以上のアミノ酸残基を有する。これらの非−ヒトアミノ酸残基は、しばしば“輸入”残基と称され、これは典型的には“輸入”可変領域から採られる。ヒト化は、基本的には齧歯類CDRまたはCDR配列を、対応するヒト抗体配列で置換することにより、Winter及び共同研究者の方法に従って行われうる(Jones et al., Nature 321:522-525(1986); Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1985);Verhoeyen et al., Science 239: 1534-1536(1988))。従って、このようなヒト化抗体は、キメラ抗体(Cabillly et al. 前出文献)であり、実質的に身障の可変領域より少ない部分が非−ヒト種からの対応する配列により置換されている。実際的には、ヒト化抗体は典型的にはCDR残基のいくらか及び、たぶんFRのいくらかが、齧歯類抗体の類似部位からの残基により置換されている。
軽鎖及び重鎖の両方のヒト化抗体を作成するために使用される可変領域の選択は、抗原性を低減するために重要である。いわゆる“最適化”方法に従えば、齧歯類抗体の可変領域の配列が、既知のヒト可変領域配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで齧歯類のものに最も近接したヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒト骨格(FR)として認められる(Sims et al., J Immunol. 151:2296 (1993); Chothia et al., J Mol. Biol. 196:901 (1987))。他の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体の共通配列から誘導される特定の骨格を使用する。同じ骨格は、いくつかの異なるヒト化抗体についても使用され得る(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 89:4285 (1992); Presta et al., J. Immunol. 151:2623 (1993))。
抗体が、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的性質を保ってヒト化されることは更に重要である。この目的を達成するために、好ましい方法に従えば、ヒト化抗体は親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び種々の概念的ヒト化生成物の分析工程により調製される。三次元イムノグロブリンモデルは、一般に利用可能であり当業者にはなじみがある。選択された候補のイムノグロブリン配列の可能な三次元配置構造を描いて映し出すコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレーを見ることは、候補のイムノグロブリン配列の機能における残基のそれらしい役割の分析、即ち候補のイムノグロブリンの抗原に対する結合能力に影響を与える残基の分析を可能とする。このようにして、FR残基が、標的抗原に対する増大した親和性等の所望の抗体特性が達成される様に、共通及び輸入配列から選択され、組み合わされる。一般的に、CDR残基は、抗体結合への影響において、直接的かつ最も実質的に関与するものである。
別法として、免疫により、内因性イムノグロブリン産生を伴わずに完全量のヒト抗体を産生しうるトランスジェニック動物(例えばマウス)の作成が可能である。例えば、キメラ及び生殖系列変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子の同型接合的削除が、内因性抗体の産生を完全に阻害することが記述されている。このような生殖系列変異マウスへのヒト生殖系列イムノグロブリン遺伝子の並びの移送は、抗原の攻撃に対してヒト抗体の産生を生じるであろう。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551 (1993); Jakobovits et al., Nature 362:255-258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immuno. 7:33 (1993)参照。ヒト抗体は、ファージディスプレーライブラリーにおいても産生されうる(Hoogenboom et al., J. Mol. Biol. 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991))。
4.二重特異的抗体
二重特異的抗体(BsAbs)は、少なくとも2種の異なる抗原に対して結合特異性を有する抗体である。BsAbsは、腫瘍標的または造影剤として使用可能であり、またWSXレセプターを有する細胞に対して酵素またはトキシンを標的に向ける為に使用され得る。このような抗体は、抗体の全配列または抗体断片(例えばF(ab')2二重特異性抗体)から誘導されうる。本発明に従えば、BsAbsはWSXレセプターに結合する一つのアーム、並びにサイトカインまたは他のサイトカインレセプター(またはそのサブユニット)、例えばTPO、EPO、G−CSF、IL−4、IL−7、GH、PRLに対するレセプター;IL−3、GM−CSF、IL−5、IL−6、LIF、OSM及びCNTFレセプターのα及びβサブユニット;またはIL−2レセプター複合体のα、βまたはγサブユニットに結合する他方のアームを有する。
二重特異的抗体の調製方法はこの技術において知られている。全長二重特異的抗体の伝統的産生は、2種のイムノグロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づき、ここにおいて2本の鎖は異なる特異性を有する(Milstein et al., Nature 305:537-539 (1983))。イムノグロブリン重鎖及び軽鎖の無作為の寄せ集めのために、これらのハイブリドーマ(クォドローマ:Quadromas)は、1種のみが正しい二重特異性構造を有する10種の異なる異なる抗体分子の可能な混合物を生じる。通常アフィニティクロマトグラフィー工程により行われる正しい分子の精製は、かなり煩雑であり、また生成物の収率も低い。同様な手法は、1993年5月13日発行のWO 93/08829及びTraunecker et al., EMBO J. 10:3655-3659 (1991)に開示されている。
別のより好ましい方法に従うと、所望の結合特異性を持った抗体可変領域(抗体−抗原結合部位)は、イムノグロブリン定常領域配列に融合される。融合物は、好ましくは少なくともヒンジの一部、CH2及びCH3領域を有するイムノグロブリン重鎖定常領域を伴う。軽鎖結合に必要な部位を含む、融合物の少なくとも一つに存在する第一の重鎖定常領域を有することが好ましい。イムノグロブリン重鎖融合物、及び所望によりイムノグロブリン軽鎖をコードするDNAが、別個の発現ベクターに挿入され、適当な宿主生物に同時インフェクションする。これは、構築に使用される3種のポリペプチドの異なる比が至適収率を与える場合に、実施態様において3種のポリペプチド断片の相対比の調節に大きな柔軟性を与える。しかしながら、少なくとも2種のポリペプチド鎖の同じ比率での発現が高収率をもたらす場合、または比率が重要でない場合には、2種または3種全てのポリペプチド鎖のコード配列を1個の発現ベクター中に挿入することも可能である。
この方法の好ましい実施態様において、二重特異的抗体は、第一の結合特異性を一つのアームに有するハイブリッドイムノグロブリン重鎖、及び他方のアームのハイブリッドイムノグロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を与える)からなる。この非対称構造は、二重特異的分子の半分のみにイムノグロブリン軽鎖が存在することが分離に容易な方法を提供するため、所望の二重特異的化合物を望まれないイムノグロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にする。この方法は、1994年3月3日発行のWO 94/04690に開示されている。二重特異的抗体の生成の更なる詳細は、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology 121:210 (1986)参照。
二重特異的抗体は、交差結合または“異種接合”抗体を含む。例えば、異種接合体の一方の抗体はアビジンと結合され、他方がビオチンと結合されうる。このような抗体は、例えば免疫系細胞を望ましからぬ細胞に向ける為(米国特許第4,676,980)及びHIV感染の治療のため(WO 91/00360, WO 92/200373及びEP 03089)に提案された。異種接合抗体は、都合よい交差結合方法により作成されうる。このような交差結合試薬は既知であり、種々の交差結合方法と共に米国特許第4,676,980に開示されている。
二重特異的抗体を抗体断片から生成する技術も文献に記述されている。以下の技術は、二重特異的であるとは限らないが二価抗体断片の調製に有用である。これらの技術に従えば、Fab'-SH断片がE. coliから回収され、これは化学的に結合されて二価抗体が形成される。Shalaby et al., J. Exp. Med. 175:217-225 (1992)は、完全にヒト化されたBsAb F(ab')2分子を記述している。各Fab断片は、E.coliから別個に分泌され、インビトロにて直接的化学結合に付されてBsAbが形成される。該BsAbは、HER2を過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合可能であり、加えて、ヒト乳癌標的に対するヒト細胞毒性リンパ細胞の溶解活性の引き金を引く。Rodrigues et al., Int. J. Cancer (suppl.) 7:45-50(1992)も参照。組換え細胞培養物から直接に二価抗体断片を製造及び単離する種々の方法も記述されている。例えば、二価異種二量体は、ロイシンジッパーを使用して調製された。Kostelny et al., J. Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合によって2種のことなる抗体のFab'部分を連結している。該抗体同種二量体は、ヒンジ領域にて還元されて単量体が形成され、次いで再度酸化されて抗体異種二量体が形成された。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)により記述されている“ジアボディ”技術は、BsAb断片を作成するための別の機構を提供した。該断片は、リンカーにより軽鎖可変領域(VL)に連結する重鎖可変領域(VH)を有し、リンカーは同じ鎖の2つの領域の間で対形性を許容するには短すぎるものである。従って、一つの断片のVH及びVL領域は、他の断片の相補的Vl及びVH領域と対形性することを強いられ、これによって2個の抗原結合部位が形成される。単鎖Fv(sFv)二量体を使用してBsAbを作成する他の方法も報告されている。Gruber et al., J. Immunol. 152:5368 (1994)参照。
E.製造品
本発明の他の実施態様では、上述の状態の治療に有用な材料を含む製造品が提供される。この製造品は、容器とラベルとを含んでなる。好ましい容器は、例えば、ボトル、ガラス瓶、シリンジ、及び試験管を含む。この容器は、ガラスやプラスチックなどの種々の材料から形成してよい。この容器は、状態を治療するのに有効な組成物を保有し、無菌の出入り口を具備する(例えば、容器は、血管内溶液バッグまたは皮下用縫い針で貫通できるストッパーを有するガラス瓶であってもよい)。組成物中の活性剤はWntポリペプチドである。容器上の又は添付されたラベルは、組成物が選択した状態の治療に用いられることを示している。この製造物は、Wntポリペプチドとともに投与されるサイトカインを収容した第二の容器を具備してもよい。製造物は、例えば、リン酸塩緩衝塩水、リンガー溶液又は出来ストロース溶液などの生理学的に許容されるバッファーを収容した更なる容器を有してもよい。さらに、製造物は、他のバッファー、希釈液、フィルター、針、シリンジ、及び使用時に挿入されるパッケージを含む、商業的又は使用者の立場から望ましい他の材料を具備してもよい。
F.Wntに対する抗体についての非治療的使用
本発明のWntポリペプチド抗体は、親和性精製試薬としても有用である。この方法では、Wntに対する抗体が、Sephadex樹脂又は濾紙などの適当な支持体に、当業者に周知の方法を用いて固定化される。固定化された抗体は、次いで、精製されるべきWntを含むサンプルと接触し、その後、固定化された抗体に結合したWnt以外の、サンプル中の実質的に全ての材料を除去するのに好適な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、グリセリン緩衝液pH5.0等の、Wntポリペプチドを抗体から放出させる他の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
また、Wnt抗体は、Wntポリペプチドの診断アッセイ、例えば、特定細胞、組織または血清におけるその発現の検出においても有用である。診断的応用のために、抗体は、典型的には検出可能な部分でラベルされる。検出可能部分は、直接的又は間接的に検出可能なシグナルを生ずることのできる任意のものである。例えば、検出可能な部分は、3H、14C、32P、35S又は125Iなどの放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアナート、ローダミンまたはルシフェリンなどの蛍光又は化学発光化合物;125I、32P、14C又は3Hなどの放射活性同位体ラベル;あるいは、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼまたはセイヨウワサビペルオキシダーゼ等の酵素である。
ポリペプチド変異体の検出可能な部分への分離可能な結合のためにこの分野で知られた任意の方法が採用され、Hunter等, Nature, 144: 945 (1962); David等, Biochemistry, 13: 1014 (1974); Pain等, J.Immunol.Meth., 40: 219 (1981); 及びNygren, J.Histrochem. and Cytochem., 30: 407 (1982)に記載されたものも含む。
本発明の抗体は、競合結合アッセイ、直接及び間接サンドウィッチアッセイ、及び免疫沈降アッセイ等の周知の検定方法に採用することができる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc., 1987)。
競合結合アッセイは、限られた量の抗体との結合について、試験サンプル分析物と競合するラベルした標準物の能力に依る。試験サンプル中のWSXレセプターの量は、抗体と結合し始める標準物の量に反比例する。結合を始める標準物の量の測定を腰囲にするため、通常、抗体は、競合の前又は後に不溶化され、抗体と結合した標準物及び分析物が、結合していない標準物及び分析物から分離しやすくする。
サンドウィッチアッセイは2つの抗体の使用を含み、各々が、検出すべきタンパク質の異なる免疫原部分又はエピトープに結合できる。サンドウィッチアッセイにおいて、試験サンプル分析物は、固体支持体に固定化された第1の抗体に結合し、次いで、第2の抗体が分析物に結合し、不溶性の3元複合体を形成する。米国特許第4,376,110号参照。第2の抗体は、それ自身が検出可能な部分でラベルされてもよく(直接サンドウィッチアッセイ)、あるいは、検出可能な部分でラベルした抗−免疫グロブリン抗体を用いて測定してもよい(間接サンドウィッチアッセイ)。例えば、サンドウィッチアッセイの一つのタイプがELISAであり、検出可能な部分は酵素である。
III.実験
以下は、本発明を実施するための特定の実施態様の例である。これらの実施例は、単に例示を目的とするものであり、本発明の範囲を如何なる方法においても制限するものではない。
以上、以下に関わらず、ここに挙げる全ての刊行物、特許、特許出願は、それらの全体を、参考としてここに取り入れる。
実施例1
細胞及び細胞系におけるWnt遺伝子のスクリーニング
造血幹細胞集団及び造血幹/始原細胞成育をサポートする間質細胞系の両者を、RT-PCR分析によるWnt発現に対して調査した。これらの実験について、胎児肝及び骨髄造血幹/始原細胞集団を、本質的に記載されているように調製した(例えば、PCT/US95/03718の実施例2A;及びZeigler et al.,Blood,84:2422-2430[1994]参照)。
略記すると、14-15日目の胎児肝を単一細胞懸濁液に調製し、AA4+細胞をZeigler et al.,上記参照によって記載されたハイブリドーマ上清から精製されたAA4+抗体を用いてイムノアドヘシンパンニングによってポジティブに選択した。Sca+c-kit+二重ポジティブ細胞を、Sca+細胞を回収するためにLy6A/Eフィコエリスリン接合物(Pharmingan,San Diego,CA)を用いて、及びc-kitに対するフルオレセイン接合抗体(これもPharminganより得た)を用いて、フローサイトメトリーソーティングによってAA4+細胞集団から回収した。LinloSca+骨髄細胞を、全骨髄から系列抗原発現細胞のマグネチックビーズデプリーション(Dynal,Inc.,Great Neck,NJ;Plomacher et al.,Blood,74:2755-2763[1989])及び記載されたような(例えば、PCT/US95/03718の実施例2A;及びZeigler et al.,上記参照を参照)Cartag(South Francisco,CA)からLinカクテル抗体を用いたフローサイトメトリーソーティングによるLinloSca+細胞の選択によって回収した。
これらの細胞のサブ集団のRT-PCRのために、Wnt3アンチセンスプライマーを用いて各センスプライマー(LL1-7)を使用しaa4+Sca+ cDNAまたは7-4細胞系cDNAライブラリーについてTaqポリメラーゼ(Cetus)で実施した(センスプライマー:
LL1 5' CAA GAG TGC AAA TGC CAC GGG ATG TCC GGC TCC TGC 3'(配列番号:2)
;LL2 5' CAA GAG TGC AAA TGC CAC GGG GTG TCC GGC TCC TGC 3'(配列番号:3)
;LL3 5' CTC AAG TGC AAA TGC CAC GGG CTA TCT GGC AGC TGT 3'(配列番号:4)
;LL4 5' GTG GAG TGC AAG TGC CAC GGG GTG TCC GGC TCC TGC 3'(配列番号:5)
;LL5 5' GTA GCC TGT AAG TGC CAT GGA GTG TCT GGC TCC TGT 3'(配列番号:6)
;LL6 5' ACC GGG TGT AAG TGC CAT GGG CTT TCG GGT TCC TGC 3'(配列番号:7)
;LL7 5' CTG GAG TGT AAG TGC CAT GGT GTG TCA GGC TCC TGT 3'(配列番号:8)
;アンチセンスプライマー"wNT3" 5' GCC(C/G)CG GCC (G/A)CA (G/A)CA CAT 3'(配列番号:9))。さらなるPCRを、プライマーWnt1a(5' (G/C)TG GA(A/G) TG(C/T) AA(A/G) TG(C/T) CAT 3'(配列番号:10)及びWnt2a 5' (A/G)CA (A/G) CA CCA (A/G)TG (A/G)AA 3'(配列番号:11)を用いて実施した。PCR産物をSmaI直線化pGEM7内に平滑末端断片としてクローン化し、Liem1 5' GAC CTG GTG TAC3'(配列番号:12)またはLiem2 5' TG(T/C) TG(T/C) GGC CG(G/C) GGC 3'(配列番号:13)オリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションによってWnt配列についてスクリーニングした。この分析は、ネガティブコントロールとしてWnt-3aを用い、Wnt-5a及びWnt-10bに対する以下の特異的なプライマーを用いて確認した:Wnt-3a(wn3a2,5' CAG CCC AGG CGT CGC TC3'(配列番号:14);wn3a.3 5' GGA ATG AAC CCT GCT CCC GT3'(配列番号:15))、Wnt-5a(wn5a1050,5' CGC GCC CCA AGG ACC TGC CTC G3'(配列番号:16);wn5aR1499,5' GCG AGC CAG TGC TCT CGT TGC G 3'(配列番号:17));Wnt-10b(W10.1,5' AAA CCT GAA GCG GAA GTG CAA ATG C 3'(配列番号:18);W10.3,5' GCT CAC CTT CAT TTA CAC ACA TTG A 3'(配列番号:19))。
これらの実験により、胎児肝AA4+Sca+細胞におけるWnt-5a及びWnt-10bのみが検出された。同様な実験を、胎児肝間質細胞系、7-4(共に継続し、共に譲り受けたPCT/US95/03718(WO95/27062);及びZeigler et al.,上記参照に記載されたように調製した)で実施し、そこではWnt-5aのみの発現が検出された。それ故、その発現をサポートする高富裕化幹/始原細胞及び間質細胞が、Wntを発現することが見出された。
これらの観察は、高富裕化胎児肝幹細胞集団AA4+Sca+Kit+("flASK"細胞、上記記載の抗体試薬を用いて、共に継続し、共に譲り受けたPCT/US95/03718(WO95/27062);及びZeigler et al.,上記参照に記載されたように調製した)からmRNA上でRT-PCRによって拡大された。Wnt-5a及びWnt-10bはflASK細胞で検出されたが、Wnt-3aは検出されなかった。さらに、flASK細胞におけるWnt-3a発現の欠如は、RT-PCRアッセイの検出レベルでは、造血幹細胞はあり得るWnt遺伝子のサブセットのみを発現することを示した。
さらなる実験において、Wnt-5a及びWnt-10bmRNAは、幹細胞集団AA4+、AA4+Sca+flk2+及びAA4+Sca+flk2-(zeigler et al.,上記参照)において発現されていることが示された。重要なことに、c-kitまたはflk2発現のためにそれぞれ独立に精製され、致死的に放射線照射された動物の長期的な移植が可能である全ての3の細胞サブセットである、3の異なる造血幹/始原細胞サブセットにおけるこれらのWnt mRNAの発現は、造血幹/始原細胞の局所的微環境におけるこれらのリガンドに対する役割を強力に示唆した。上記記載の胎児肝間質細胞系、7-4におけるWnt-5aの発現、及びより成熟した(AA4-)胎児肝造血細胞系におけるWnt-5a及びWnt-10b mRNAの発現は、(i)胎児肝造血微環境、同様に造血幹/始原細胞の多くは、Wntのソースとして潜在的に機能しうること、及び(ii)これらの細胞においてWntの発現は、これらの細胞の分化のWnt介在性パラクリンまたはオートクリン調節を許容しうることをさらに示唆した。
実施例2
造血作用におけるWntの分析
A.Wntトランスフェクト細胞由来の調製培地によって刺激された造血幹/始原細胞の増大
in vitro間質フリー懸濁カルチャー系を、実施例1に記載されたように調製された高富裕化造血幹/始原細胞集団でのWntの機能を研究するために形成した。これらの研究のため、富裕化分別細胞の懸濁カルチャーを、0.5mlのHSC内に接種され、5% CO2を用いて37℃で培養された24穴Coster皿に5000細胞/ウェルで実施した。HSC培地は、50% F12/50%低グルコースDMEM、10%熱処理胎児ウシ血清(Hyclon)、1mMグルタミン、及び支持されたようなネズミkitリガンド(KL)(R&D Systems)を含んだ。クローン化Wnt遺伝子でトランスフェクトされた293細胞由来の調製培地を、接種と同時に加えた。特異的に、Wnt-5a cDNAを7-4胎児肝間質細胞系cDNAライブラリーからクローン化し、Wnt-10b cDNAをflASK細胞mRNAからRT-PCRを用いてクローン化した。Wnt cDNAの分子クローニングのために、ポリA+RNAをFast Track法(Invitrogen)によって調製し、0.1M水酸化メチル第二水銀の存在下でcDNAを変性PolyA+RNA及びdT18プライマーによって調製し、引き続き20mMベータ−メルカプトエタノールを用いて失活させ、提示されたようにSuperscript逆転写酵素を用いて全量20μlに拡大した。
Wnt-5aPCR断片を、7-4細胞から作製され、pSPORT-1ベクター(Gibco)内にライゲートされたcDNAライブラリーをスクリーニングするために用いた。Wnt-5aコード領域を、一つのクローン、Wnt5a.13.pSPORT-1からシークエンスし、予想アミノ酸は以前に報告されたものと、(H207>Y)を除いてマッチした(Gavin et al.,Genes and Dev.,4:2319−2332[1990])。Wnt-10b cDNAを、プライマーwn10b.5ri(5' GGA ATT CCG GGC TTC GAC ATG CTG GAG GA 3'(配列番号:20))及びwn10b.3kpn(5' GGG GTA CCC CAG GCT CAC CTT CAT TTA CAC A 3'(配列番号:21))を用いてflASK細胞からRT-PCRによってクローン化し、pGEM7内にクローン化した。予想コード配列は、それ以外に報告されたものと正確にマッチした(Lee et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.92:2268-2272[1995])。
哺乳動物細胞におけるネズミWntの過剰発現、及びWnt遺伝子産物を含有する細胞からの調製培地(CM)の調製のため、そのように得られたWnt-1、Wnt-5a及びWnt-10b cDNAを発現ベクターpRK5tkneo内のEcoRI/HindIII断片内にクローン化した(Holmes,Science,253:1278-1280[1991])。CMの生産のため、293細胞をカルシウムリン酸法によってトランスフェクトし(Gorman,DNA Cloning:A Practical Approach,IRL,Washington,D.C[1985])、培地を少なくとも48時間後回収し、3000×gで遠心分離し、滅菌濾過した。CMを用いたほとんどの実験において、該CMを5-10%最終濃度で加えた。予備実験において、周知のサイトカインのほとんどが、10%胎児ウシ血清の存在下で単一の因子として加えた場合、懸濁カルチャーでflASK細胞の生存をサポートしなかった(例えばBodine et al.,Blood,78:914-920[1991])。しかしながら、100ng/mlのKLの添加は、顆粒始原細胞の細胞生存及び増殖に対する潜在的な刺激を提供した(Anderson et al.,Cell,63:235-24 [1990];Zsebo et al., Cell,63:195-201[1990])。興味深いことに、コントロール293CMは、KLと共に懸濁カルチャーに加えられた場合、およそ2倍の刺激活性を提供した。Wnt-5a cDNAを用いてトランスフェクトされた293細胞由来の調製培地(CM)の添加は、コントロールCMより2-3倍大きい増大を示した。
トランスフェクト細胞由来のCMでのWnt-5aタンパク質の存在は、免疫沈降及びウエスタンブロッティングによって確認された。これらの実験のために、gDCT-1pRK5bにおけるWnt-5a AA38-379が引き続く単純ヘルペスウイルスグリコプロテインDの最初の55アミノ酸(AA)をコードするキメラWnt-5a遺伝子が作製された(Pennica et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:1142-1146[1995])。gDWnt5aを含む実験において用いられるコントロールベクターは、XhoI-XbaI断片としてCT-1cDNAを切り出し、突出ヌクレオチドを埋め、そしてT4DNAリガーゼ(Collaborative Research)を用いてgDpRK5bベクターを閉じることによって、gDCT-1pRK5bから作製された。生成構築物は、Dストップが引き続くgDの最初の54AAをコードすることが期待された。6のヒスチジン残基をコードする断片を、PCRによってgDpRK5b内のWnt-5aのカルボキシ末端にフレーム中で付加した。
トランスフェクト細胞によるWnt発現の分析のための免疫沈降実験のため、gDpRK5bまたはgDWnt5apRK5bを用いてトランスフェクトされた293細胞を、100μCiの[35S]メチオニン/[35S]システイン(Amersham)でラベルし、溶解し、そしてタンパク質を5B6 mAbプラスプロテインA Sepharose(Pharmacia)を用いて沈降した。該沈降物を標準的な方法にしたがって洗浄し、電気泳動し、そして蛍光明視化した。
比較のために、KLと共にカルチャーに対して単一の因子として加えた潜在的サイトカインIL-3及びGM-CSFは、コントロールより1.5-2倍大きい増大を示した。さらなる実験により、25ng/mlに対するKLのタイトレーションは、細胞数におけるより低い増大を示したが、該カルチャーは顆粒球増殖/分化の減少したレベルを示した。flASK細胞プラス25ng/ml KLの懸濁カルチャーに対するWnt-1,Wnt-5a及びWnt-10b CMの添加は、図1に示されたカルチャーにおける7日後のコントロールCMのものよりそれぞれ7,8,及び11倍細胞増殖を刺激した。KLとWntの間の相助作用効果は、Wnt CM単独が細胞の生存/増殖をほとんど全く引き起こさないために、明白であった。今までのところは、Wnt-1発現は幹細胞系で検出されていないが、しかしながらWnt-1 CMはこのアッセイにおいて活性であった。これらの結果は、造血細胞の同時の応答、または造血幹/始原細胞における共通のWntレセプターの存在を導くいくつかのWntリガンド由来の別のシグナリング経路に対する可能性を示す。
B.Wntによって増大される芽細胞表現型の維持及び造血始原細胞の病巣形成
マウスにおいてはWntはいくつかの原始的細胞タイプの形成に必須であり、Xenopusにおいてはそれらは細胞の運命の決定に関与していると考えられる。Wntの役割は、細胞染色調製物における培養細胞の形態を調べることによって、多能性造血幹/始原細胞の分化能で評価された。サイトスピン分析のために、細胞を上記記載の懸濁カルチャーで成育させ、ガラススライド上で回転させ、そして造血細胞タイプ及び形態を明らかにするためにWright Geimsaを用いて染色した。これらの実験のために、flASK細胞のサイトスピン分析を、(A)細胞ソーティング直後のflASK細胞、(B)コントロールCMプラス25ng/ml KLでの懸濁培養後のflASK細胞、及び(C)Wnt-5a CMプラスKLでの懸濁培養後のflASK細胞の各サイトスピン調製物を用いて実施した。減少した濃度であっても、懸濁カルチャーに対するKLの添加は必須であるが、KL単独の効果は、新鮮に単離されたflASK細胞と比較してHSC由来の顆粒球細胞の分化及び増殖を促進することであった。しかしながら、Wnt-5aまたはWnt-10b CMあるいは部分的に生成された組換えWnt-5a(以下のセクションC参照)で培養された細胞は一般的に、顆粒球系列に対して比較的低い関わり合いを有する細胞系列の比較的大きい多様性を生じた。骨髄性細胞(マクロファージ及び好中球)、巨核球、及び初期赤血球細胞が、Wnt-5a CMを用いて処理された後、懸濁カルチャーのサイトスピン分析によって観察された。特に、分化した単核球細胞に対する初期芽細胞の割合は、組換えWnt-5aを有するカルチャーにおいて4倍以上(コントロールに対する7%±0.8に比較して29%±3.4)上昇した。WntプラスKLの効果は、過度の細胞増殖を促進し、それは最初のHSC接種物由来の細胞数における純粋な増殖であり、一方で初期芽細胞形態を有する細胞の4倍大きい集団もまた維持していた。
Wntは細胞接着機構の調節に関与しており、細胞−細胞相互作用は細胞の運命の決定に重要であることが提案されている(Hink et al.,J.Cell.Biol.,124:729-741[1994];Preiffer,Development Suppl.,163-176[1993])。Wnt CMにおける懸濁カルチャーの最初の4-5日目の間、付着細胞凝集物または付着造血「中心」の数の劇的な増大が観察された。これらの中心の空間的な組織化及び形態を分析するために、25ng/mlのネズミKLを用いたHSC培地におけるflASK細胞を、50mg/mlのヒト血漿フィブロネクチン(Gibco)を用いてコートしたLab-Tekガラスチェンバースライド(NUNC,Naperville,IL)上に接種し、4-5日間コントロールCMプラス25ng/mlKL、及び(E)Wnt-5aCM(gDWnt5a)プラス25ng/mlKLで培養し、それからその中心の細胞間組織化を保存するためにin situで結晶化した。in vitroでのCFU-S始原細胞の接着を介在し得るため、このアッセイにおける接着基質としてフィブロネクチンを選択した(Williams et al.,Nature,352:438-441[1991])。培養の3-5日後、調製物Dにおけるコントロールカルチャーを調製物EにおけるWnt-5a処理細胞と比較した場合、核酸に対する低細胞質割合を有する5から30以上の芽細胞のクラスターが典型的に、一つ以上の基底をなす接着骨髄細胞との接着として見出された。これらの芽細胞の中心の形成はWntCMに応答して劇的に増大し、細胞相互作用の調節を介しての細胞増大におけるWntの役割を示唆した。
WntCMで培養された細胞の増大された増殖及び細胞−細胞接着の観点から、培養細胞の系列表現型及び接着機構を、フローサイトメトリーによって分析した。細胞分析及びソーティング実験のため、フィコエリスリン接合抗体(Ly6A/E,TER-119,CD14)、フルオレセイン接合抗体(c-kit,CD13,CD31,CD44,CD45,CD49d,CD49e,GR1,VCAM-1,ICAM-1,L-セレクチン)、CD11a及びCD29抗体を、Pharmingenから購入した。フィコエリスリン抗体Mac-1、フルオレセイン接合抗体(CD4,CD8a及びB220)、及び全ての二次そしてLinカクテル抗体は、Caltagから購入した。
flASK細胞は、7日間gDWnt5a CM(Wnt CM)またはgD CM(コントロールCM)で培養され、細胞表面抗原の発現のため分別された。成熟造血細胞(CD4,CD8a,CD13,CD14,B220,VCAM-1及びインテグリンベータ-7)で見出される抗原の発現は、新鮮に分別されたflASK細胞上で低いまたはネガティブであり、培養後同様なレベルを維持していた。CD11a,CD29,CD31,CD44,CD45,CD49d,CD49e,GR1,L-セレクチン,ICAM-1の発現のための核条件ではほとんどまたは全く変化が観察されなかった。しかしながらWnt-5aCMを補うと、Sca+(154±22.6%),c-kit+(158±36%),Sca+c-kit+(131±9.4%)またはTer119+(237±25.8%)である細胞の数の増大がもたらされた。これらの細胞表面抗原プロフィールをサイトスピン分析とよく比較し、WntプラスKLがHSCのex vivoカルチャーの間KL単独よりも初期芽細胞の大きい部分の維持を促進するという発見を強調した。
C.造血幹/始原細胞の増殖に対するWnt調節培地における分泌Wntタンパク質の必要性
Wntがトランスフェクトされた細胞における他の増殖因子の生産を刺激するというHSCでのWntの直接的な役割を、選択物から区別するためのいくつかのアプローチを採った。該増殖が培地に存在する分泌Wntタンパク質によって介在されることを確認するために、抗体デプリーション実験を実施した。容易に入手できる抗体試薬を用いたデプリーションを可能にするエピトープタグをWnt-5aに対して加工した。Wnt-5a(gDWnt5a,gDWnt5aHis6)が引き続くヘルペスウイルスグリコプロテインD(gD)のシグナル配列とN末端ドメインをコードする上記セクションAに記載されたキメラタンパク質を構築した。293細胞内でのgDWnt5a構築物のトランスフェクションは、gDのN末端エピトープを認識するmAb(5B6)によって、溶解物から特異的に免疫沈降される47-49kDポリペプチドの発現のために向けられた。mAb5B6を用いてCMから293トランスフェクト細胞(gDWnt5apRK5bまたはコントロールgDpRK5b)によって生産されたWntタンパク質を除去するための免疫沈降実験を実施した。プロテインAに結合した、または制御された多孔質のガラス(5B6-CPG)に結合したmAb5B6におけるgDWnt5aHis6 CMのインキュベーションは、コントロール値に対する細胞増殖を減少した。ひとまとめにして、これらのデータは分泌Wntがin vitroでの観察された細胞増殖を介在することを示す。Wntが細胞増殖を直接的に刺激しうるかどうかを試験するために、我々は懸濁カルチャーアッセイにおける部分的精製Wnt-5aタンパク質の活性を評価した。予備実験により、細胞抽出物はCMよりWnt-5aタンパク質のより豊富なソースを提供することが示された。gD.Wnt5a.His6の精製のため、DHER+プラスミドgD.Wnt5a.His6pSVi.del.dを用いてトランスフェクトされたCHOdp12細胞の安定した系列(DHFR-細胞、例えばBennett et al.,J.Biol.Chem.,766:23060[1991]参照)を、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GHT)-フリー培地で選択し、維持した。以下のようにgD.Wnt5a.His6CHO細胞由来の抽出物を作製した。細胞を、50mMトリエタノールアミン、100mM NaCl、0.4% SDS、1% PMSF、及び2% Triton X-100において溶解した。該溶解物由来のgD.Wnt5a.His6の精製は、5B6-CPGに対するgDエピトープの結合、PBSにおける過度の洗浄、及び酸溶出によって成し遂げられた。該溶出物を中和し、PBSで透析し、8M尿素で再ホールディングした。該ホールディングWnt-5aタンパク質は、尿素の濃度が幹細胞懸濁カルチャーアッセイにおいて60mM Wnt-5aより小さいために、HSC培地で希釈された。
ゲルアッセイにより、該タンパク質は還元条件の下で47-49kDモノマーとして移動することが明らかにされた。懸濁カルチャーアッセイに加えた場合、組換えWnt-5aタンパク質は、およそ40-80ng/mlまたは1-2nMで5倍まで細胞増殖を刺激することが見出された。
D.Wntタンパク質による造血始原細胞の全CFC増殖の刺激
造血始原細胞の重要な基準は、系列特異的サイトカイン及び他系列コロニー刺激因子に応答した半固体培地でコロニーを形成する能力である。flASK細胞カルチャーに対するWntプラスKLの添加により、初期形態及び細胞表面表現型を有する細胞の集団が増大するので、高増殖コロニー形成細胞の数が同様に増大するかどうかを分析するための実験を実施した。flASK細胞カルチャーにおけるコロニー形成細胞(CFC)の頻度を、サイトカイン(KL,IL-3,IL-6及びEpo)及びWntCMまたはコントロールCMの組み合わせを含有する骨髄メチルセルロース内に置かれた細胞のコロニー形成を測定ことによって調べた。コロニーアッセイ実験のために、メチルセルロース培養を、1.0mlの完全骨髄メチルセルロース(Stem Cell Technologies,Inc.)、または50ng/mlネズミKL及び50ng/mlネズミIL-7(R&D Systems)を含有するベースメチルセルロースより成るB細胞条件において、1000の細胞を用いて35mMプレート内で始めた。調製培地を接種と同時に加えた。接種後12日でプレートを読みとった。懸濁培養後、初めのカルチャーイノキュウラムで1000の細胞から由来する全CFCは、コントロールCMのものよりWnt-5aCMで3倍大きかった。さらに、細胞を12日目の骨髄メチルセルロースカルチャーから回収し再接種した場合、Wnt-5aCMによってもたらされる細胞の累積的な増大は、主に効率的に再接種されたコントロールCMで成育された細胞の無能力のため、コントロールCMに対するものより235倍以上大きかった。これらの結果は、分泌Wntが懸濁カルチャーにおける多能性造血始原細胞の生存/増殖を増大し、初期の高い増殖コロニー形成細胞の増大を直接的に刺激しうるという注目に値する機能的な証拠を提供する。
Wnt-5aCMにおける新鮮に単離された胎児肝AA4+Sca+細胞のコロニー形成もまた試験した。Wnt-5aCMは、骨髄メチルセルロースにおいておよそ3倍のコロニー形成を刺激した。B細胞条件においては、Wnt-5aCMは、4倍のコロニー形成を刺激した。コロニー形成は、骨髄及びB細胞メチルセルロースにおける骨髄LinloSca+細胞に対して2倍増大された。結局、これらのデータにより、WntCMは、骨髄またはB細胞始原細胞を検出する条件下で、高く富裕性の胎児肝及び骨髄HSCによってコロニー形成を増大することを示す。
E.Wntタンパク質を有するレトロウイルスを用いたトランスダクションの後の造血幹/始原細胞の増大
HSC上でのWnt発現の直接的な効果をさらに調べるために、代表的なWntタンパク質産物、Wnt-5aをレトロウイルストランスダクションを介して導入した。Wnt-5aがgag遺伝子に対して3'側に置かれ、LacZが能心筋炎ウイルス内部リボソームエントリー部位の下流に置かれるように、ラウス肉腫ウイルスベースバイシストロンLNL6ベクターを構築した。特異的に、ウイルス構築物及びトランスダクション実験のために、Wnt5a.13.pSPORT-1をEcoRI/BamHIを用いて切断し、挿入物をT4DNAポリメラーゼ(U.S.Biochemical)を用いて平滑にし、pLNL6ベクターの平滑化bglII/BamHI部位内にクローン化した(Ghattas et al.,Mol.Cell.Biol.,11:5848-5859[1991])。Wnt5a/LNL6または元となるLNL6ベクターを、BOSC23細胞(Pear et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:8392-8396[1993])内にカルシウムリン酸法によってトランスフェクトした。トランスフェクトされたBOSC細胞由来のウイルス上清を48-72時間後集め、-20℃で貯蔵し、flASK細胞をトランスデュースするために用いた。flASK細胞のトランスダクションは、ネズミサイトカインIL-3(25ng/ml),IL-6(50mg/ml)及びKL(10ng/ml)を補ったウイルス上清において、48時間で100,000細胞/mlで実施した。メチルセルロースコロニーを生ずる細胞のトランスダクション効率を、本質的にGerard et al.,Human Gene Therapy,7:343-354[1996]に記載されたPCR分析によって評価した。トランスダクションflASK細胞におけるバイシストロン性mRNAの発現を、FACS-Gal法を用いてLacZ活性を測定することによって確認した(Fiering et al.,Cytometry,12:291-301[1991])。添加されたサイトカインIL-3,IL-6及びKLはトランスダクション効率を増大し、その増大をFACS-Gal分析のトランスダクション後48時間でおよそ20%であると見積もられた。細胞生存/増殖におけるWnt-5aの潜在的な初期機動的効果を、トランスダクションの48時間後の細胞数をカウントすることによって測定した。Wnt5a/LNL6トランスデュース細胞は、ほぼ2倍まで増大した(図2A)。特に、この細胞生存/増殖は、さらなる利益が初期機動的サイトカインIL-3,IL-6及びKLの潜在的な効果に対して観察される点で印象的であった。7日間のWnt5a/LNL6トランスデュース細胞の培養により、コントロール細胞のものと比較して過度なる増殖が明らかにされた(図2B)。2日間のトランスダクション由来の細胞もまた、骨髄メチルセルロース内においた。Wnt5a/LNL6を用いてのトランスダクションは、コントロールベクターのものよりCFCの3倍大きい増大を刺激した(図2C)。CFCトランスダクションの効率は、メチルセルロース培養から掻き取られたコロニーのPCR分析によって14-47%であると見積もられた。
配列表
(1)一般的情報:
(i)出願人: Genentech, Inc.
(ii)発明の名称: Wntポリペプチドについての使用
(iii)配列数: 21
(iv)連絡先:
(A)宛名: Genentech, Inc.
(B)通り: 460 Point San Bruno Blvd
(C)市: South San Francisco
(D)州: California
(E)国: USA
(F)郵便番号: 94080
(v)コンピューター読み取り形態:
(A)メディアタイプ: 3.5インチ, 1.44Mbフロッピーディスク
(B)コンピューター: IBM PC互換機
(C)オペレーティング・システム: PC-DOS/MS-DOS
(D)ソフトウェア: WinPatin(Genentech)
(vi)現在の出願データ:
(A)出願番号:
(B)出願日:
(C)分類:
(vii)先願データ:
(A)出願番号: 08/696566
(B)出願日: 1996年8月16日
(Viii)弁理士/代理人情報:
(A)氏名: Svoboda, Craig G.
(B)登録番号: 39,044
(C)参照/登録番号: P1034PCT
(ix)遠距離通信情報:
(A)電話: 415/225-1489
(B)テレファックス: 415/952-9881
(C)テレックス: 910/371-7168
(2)配列番号1に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 10アミノ酸
(B)タイプ: アミノ酸
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号1:
Figure 0003759623
(2)配列番号2に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 36ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号2:
Figure 0003759623
(2)配列番号3に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 36ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号3:
Figure 0003759623
(2)配列番号4に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 36ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号4:
Figure 0003759623
(2)配列番号5に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 36ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号5:
Figure 0003759623
(2)配列番号6に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 36ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号6:
Figure 0003759623
(2)配列番号7に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 36ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号7:
Figure 0003759623
(2)配列番号8に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 36ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号8:
Figure 0003759623
(2)配列番号9に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 18ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号9:
Figure 0003759623
(2)配列番号10に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 18ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号10:
Figure 0003759623
(2)配列番号11に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 15ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号11:
Figure 0003759623
(2)配列番号12に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 12ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号12:
Figure 0003759623
(2)配列番号13に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 15ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号13:
Figure 0003759623
(2)配列番号14に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 20ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号14:
Figure 0003759623
(2)配列番号15に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 20ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号15:
Figure 0003759623
(2)配列番号16に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 22ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号16:
Figure 0003759623
(2)配列番号17に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 22ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号17:
Figure 0003759623
(2)配列番号18に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 25ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号18:
Figure 0003759623
(2)配列番号19に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 25ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号19:
Figure 0003759623
(2)配列番号20関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 29ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号20:
Figure 0003759623
(2)配列番号21に関する情報:
(i)配列の特徴:
(A)長さ: 31ベースペア
(B)タイプ: 核酸
(C)鎖状態: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列の記載: 配列番号21:
Figure 0003759623

Claims (20)

  1. 造血幹/始原細胞の増殖または維持を増大する方法であり、該細胞の増殖または維持を増大するのに有効なWnt-5aポリペプチドの量に該細胞をさらすことを含む方法。
  2. 該細胞がCD34+細胞である請求項1の方法。
  3. 該細胞がAA4+細胞である請求項1の方法。
  4. 該細胞がflASK細胞である請求項1の方法。
  5. 該細胞の増殖を増大する請求項1の方法。
  6. 該細胞の維持を増大する請求項1の方法。
  7. さらなるサイトカインに該細胞をさらすことをさらに含む請求項1の方法。
  8. 該さらなるサイトカインが系列特異的サイトカインである請求項の方法。
  9. 該さらなるサイトカインが、トロンボポイエチン(TPO);エリスロポイエチン(EPO);マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM-CSF);顆粒球−CSF(G-CSF);インターロイキン-1(IL-1);IL-1α;IL-2;IL-3;IL-4;IL-5;IL-6;IL-7;IL-8;IL-9;IL-11;IL10;IL-12;白血病阻害因子(LIF)及びkitリガンド(KL)より成る群から選択される請求項の方法。
  10. 該細胞が細胞カルチャーに存在する請求項1の方法。
  11. 該細胞がヒト以外の哺乳動物内に存在する請求項1の方法。
  12. 該哺乳動物が、減少した血液細胞濃度に苦しんでいる、または苦しむことが予想される請求項1の方法。
  13. 減少した血液細胞濃度が、化学療法、放射線治療、または骨髄移植治療によって引き起こされる請求項1の方法。
  14. 造血幹/始原細胞の増殖または維持を増大するための医薬であって、該細胞の増殖または維持を増大するのに有効なWnt-5aポリペプチドの量を含む医薬。
  15. Wnt-5aポリペプチドの治療上の有効量を含む、血液細胞の再集団化のための医薬。
  16. 該血液細胞が赤血球系細胞である請求項1記載の医薬。
  17. 該血液細胞が骨髄系細胞である請求項1記載の医薬。
  18. 該血液細胞がリンパ系細胞である請求項1記載の医薬。
  19. 血液細胞の相助作用的再集団化を導く量で、サイトカインをさらに含む、請求項1から18のいずれか一項記載の医薬。
  20. 該サイトカインが、エリスロポイエチン(EPO);顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子(GM-CSF);kitリガンド(KL);またはインターロイキン-3(IL-3)である請求項19記載の医薬。
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