JP4086324B2 - ニュールツリン受容体 - Google Patents

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Description

緒言
技術分野
本願発明は、NTNRαと(またGFRα2とも)命名されたニュールツリン(neurturin:「NTN」)受容体に関するものであり、NTNRαをコードする核酸及びアミノ酸配列を提供する。特に、本発明は、天然のNTNRα配列、NTNRα変異体、NTNRα細胞外ドメインを含む可溶性NTNRα変異体、キメラNTNRα、NTNRαに結合する抗体(アゴニスト及び中和抗体を含む)、並びにこれらの分子の様々な用途に関するものである。本発明はまたNTNRαに対するリガンドの検出アッセイ系、NTNの生理学的役割の研究系、NTNが関与する疾患の同定のための診断手法、NTNが関与する疾患とNTNRαが関与する疾患の治療方法、及びNTNRαと相同的な分子を同定するための方法に関連する。
背景
インスリン様成長因子、神経成長因子、脳由来神経栄養因子、ニューロトロフィン−3、−4/5及び−6、毛様体神経栄養因子、GDNF、及びニュールツリンのような神経栄養因子が、例えば、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、脳卒中、癲癇、ハンチントン病、パーキンソン病あるいは外延神経障害のような神経系の疾患に対する治療方法として特定のニューロン細胞の生存率を向上させる可能性がある手段として提案されている。この目的に対して更なる治療法を提供することが望まれる。脊椎動物の神経系の成長と発達に影響を及ぼすタンパク神経栄養因子、すなわちニューロトロフィンは、脳と末梢の多種多様なニューロン群の分化、生存及び機能の促進において重要な役割を担っていると考えられている。神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)で証明された先例に部分的に基づいて、神経組織において重要なシグナル伝達機能を持っていると考えられている。NGFは、インビトロ及びインビボの双方における交感神経、感覚及び前脳基底核ニューロンの生存を支援する。外来性NGFの投与は、発達過程でニューロンが細胞死することを防止する。逆に、抗NGF抗体の投与による内在性NGFの排除又は隔離はそのような細胞死を促進する(Heumann, J. Exp. Biol., 132: 133-150(1987);Hefti, J. Neurosci., 6: 2155-2162(1986);Thoenenほか, Annu. Rev. Physiol., 60: 284-335(1980))。
その後、NGFに関連した更なる神経栄養因子が同定された。これらには、脳由来神経栄養因子(BDNF)(Leibrockら, Nature, 341: 149-152(1989))、ニューロトロフィン−3(NT−3)(Kaishoほか, FEBS Lett., 266: 187(1990);Maisonpierreほか, Science, 247: 1446(1990);Rosenthalほか, Neuron, 4: 767(1990))及びニューロトロフィン4/5(NT−4/5)(Berkmeierほか, Neuron, 7: 857-866(1991))が含まれる。
ほかのポリペプチド成長因子と同様に、ニューロトロフィンは、細胞表面受容体との相互作用を通じてその標的細胞に影響をもたらす。我々の現在の理解によれば、2種類の膜貫通型糖タンパクが既知のニューロトロフィンの受容体として作用する。平衡結合性の研究から、ニューロトロフィンに応答するニューロン細胞は、典型的にはp75LNGFR又はp75と称される普通の低分子量(65000−80000ダルトン)の低親和性受容体と高分子量(130000−150000ダルトン)の受容体を持っていることが示されている。高親和性受容体は受容体チロシンキナーゼのtrkファミリーのメンバーである。
受容体チロシンキナーゼは、細胞の増殖、分化及び生存を促進する様々なタンパク因子の受容体となることが知られている。trk受容体以外に、受容体チロシンキナーゼとして知られているものには、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)及び血小板由来成長因子(PDGF)の受容体群がある。典型的には、これらの受容体は、細胞膜を貫通し、その一部は細胞内にあって細胞質と接触し、残りの一部は細胞外に露出している。受容体の細胞外部分にリガンドが結合すると、受容体の細胞内部分のチロシンキナーゼ活性が誘導され、細胞シグナル伝達経路に関わる様々な細胞内タンパクがリン酸化される。
グリア株化細胞由来神経栄養因子(「GDNF」)とニュールツリン(「NTN」)は交感感覚及び中枢神経系ニューロンに対する2つの最近同定された構造的に関連する有力な生存因子である(Linら, Science 260:1130-1132(1993);Hendersonら, Science 266:1062-1064(1994);Buj-Belloら, Neuron 15:821-828(1995);Kotzbauerら, Nature 384:467-470(1996))。最近、GNDFは、(GDNFRαと命名され;またGFR−アルファ−1とも命名された)グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合タンパク質と膜貫通受容体チロシンキナーゼRetからなる多成分性受容体系を通してその作用を媒介することが示された(Treanorら, Nature 382:80-83(1996);Jingら, Cell 85:1113-1124(1996);Truppら, Nature 381:785-789(1996);Durbecら, Nature 381:789-793(1996))。NTNシグナルが伝達される機構は解明されていない。
受容体チロシンキナーゼ(「RTK」)の異常発現は形質転換能と相関する。例えば、肝臓癌、肺癌、乳癌、大腸癌においてはEphRTKの発現の上昇が見られる。他の多くのチロシンキナーゼとは異なり、この発現の上昇は遺伝子の増幅あるいは再構成を伴わずに生じうる。更に、ヒトRTKのHekは、プレB細胞白血球細胞株の表面に存在する白血球特異的マーカーとして同定された。Eph同様、Hekもまた、遺伝子の増幅あるいは再構成なしに、例えば造血性腫瘍やリンパ系の腫瘍細胞株中で過剰発現する。Myk−1(ヒトHtkのマウスホモログ(Bennettほか, J.Biol.Chem., 269(19):14211-8(1994)))の過剰発現は、トランスジェニックマウスの未分化で侵食性のある、Ha−ras癌遺伝子を発現している乳房の腫瘍でみられた(Andresほか, Oncogene, 9(5): 1461-7(1994)及びAndresほか, Oncogene, 9(8): 2431(1994))。c−retプロトオンコジーンの産物であるRetは、受容体チロシンキナーゼスーパーファミリーのメンバーである。
複数の膜貫通型チロシンキナーゼは、発癌における役割に加えて、発生過程においても重要な役割を果たしていると報告されている。受容体チロシンキナーゼのうちの幾つかは、発生段階で制御され、胚性組織で主に発現する。FGFのサブクラスに属するCek1、並びにCek4及びCek5チロシンキナーゼがその例である(Pasqualeほか, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86: 5449-5453(1989);Sajjadiほか, New Biol., 3(8): 769-78(1991);及びPasquale, Cell Regulation, 2: 523-534(1991))。Ephファミリーのメンバーは、神経系、あるいは特にニューロンで発現するいくつかのファミリーメンバーと共に、多くの異なった成熟組織で発現する(Maisonpierreほか, Oncogene, 8: 3277-3288(1993);Laiほか, Neuron, 6: 691-704(1991))。
これら受容体チロシンキナーゼの何れかが異常発現しあるいは制御不能状態になると、異なった悪性疾患及び病理学的障害を引き起こす。従って、受容体チロシンキナーゼ経路関与障害及び細胞過程に対する診断と治療の新規で更なる手段を提供するために、受容体チロシンキナーゼ(「RTK」)とその関連するリガンドまたはGPI−結合受容体を調節、制御及び操作する手段を特定する必要がある。本願は、あるRTK受容体と特異的に相互作用する新規な分子を提供することによって、そのような手段を診療医及び研究者に提供する。ここで提供するこれら化合物とその使用方法により、精巧な治療管理と特異性が実現する。従って、神経系の疾患及びある種の神経栄養のシグナル伝達経路がある役割を担う神経系の疾患に対して改良された予防法及び/又は治療法を提供することが本発明の目的のである。
本願発明の上記の目的及び他の目的は、明細書の全体を通じて当業者に明らかになるであろう。
概要
NTNRαと称するNTN受容体、該受容体の可溶形態、NTNRαの細胞外ドメイン(「ECD」)がここに開示される。また、必要に応じて血清の半減期を延長する分子と抱合あるいは融合され、かつ必要に応じて生理学的に受容できる担体との製薬組成物として製剤されるNTNRαポリペプチドも開示される。
リガンド結合能、好ましくはNTN結合能と、受容体シグナル伝達機能(Ret受容体チロシンキナーゼを経由した)を持つ、例えばNTNRαECDイムノアドヘシン(長い血清半減期を有する)及びエピトープタグNTNRαECDのようなキメラNTNRαを含む、可溶性NTNRαは、細胞に対するNTNRαリガンド(好ましくはNTN)の応答性の付与、回復、増強に用いることができる。この応答性は、リガンドとの結合、Retチロシンのリン酸化及び、生存あるいは成長といった細胞活性を調節する、Retが仲介する下流側の活性を含む。この実施態様は、インビボ、インビトロ又はエキソビボで使用される。NTNには結合するが、Retとは相互作用をせず活性化しない可溶性NTNRα型は、内因性のNTNRαの活性化を抑制するため、(NTNに結合し隔絶することにより)NTNリガンドのアンタゴニストとして用いることができる。このことは、哺乳動物内でNTNリガンド量が過多、及び/又はNTNRαの活性化が過剰な疾患に対して有効である。(例えば、NTNRα−リガンド結合活性を他のサイトカイン又は神経栄養因子受容体のリガンド結合ドメインと組合せる)二特異的イムノアドヘシンは、NTNRα−リガンドと他の因子の高親和性結合複合体を形成することができ、アンタゴニスト活性(Ret活性化機能がない場合)か付着リガンドの送達を高める手段を提供する。
可溶性NTNRα、好ましくはECDの製薬組成物は、NTNRαリガンド、好ましくはNTNを更に任意に含むことができる。このような組成物は、リガンドの半減期の延長、リガンドのゆっくりとした除放性をもたらし、標的細胞へのNTNRαリガンド応答性の付与、及び/又は内因性細胞NTNRαあるいはRetの活性を直接的に活性化又は向上させる。場合によっては、組成物は一又は複数のサイトカイン、神経栄養因子、それらのアゴニスト抗体を含んでも良い。
更に、NTNRαに結合及び/又はこれを活性化する分子を同定するための方法が提供される。しかして、NTNRαのアゴニストあるいはアンタゴニストであるNTNRαリガンド分子(ペプチド、抗体、小分子等)をスクリーニングあるいは同定する検定方法が提供される。そのような方法は、固定化されたNTNRαをそれに結合する可能性があると思われる分子にさらし、固定化されたNTNRαへの分子の結合の有無を決定し及び/又は当該分子がNTNRαを活性化するか(又は活性化を阻害するか)否かを評価することを一般に含む。そのようなNTNRαリガンドを同定するために、NTNRαを細胞の表面に発現させ、合成候補化合物あるいは天然に存在する化合物(例えば血清や細胞のような内在的ソースからのもの)のライブラリをスクリーニングするために使用できる。NTNRαはまた内在性あるいは外来性のNTNRαリガンドの血清中での濃度を測定するための診断ツールとしても用いることができる。
更なる実施態様においては、NTNRαリガンドを精製する方法が提供される。この方法は該受容体に結合する治療的に活性な分子の商業的な生産と精製に用いられる。一実施態様においては、(一般的には1種あるいはそれ以上の不純物を含む組成物中の)対象分子を、固定化NTNRα(例えば、プロテインA樹脂上に固定化されたNTNRαイムノアドヘシン)に吸着する。不純物は、NTNRαに結合することができないので、一般的にはその樹脂に結合しない。したがって、リガンド分子が固定化された受容体から放出されるように溶出条件を変えることで、対象分子を樹脂から回収することができるようになる。
NTNRαに特異的に結合する抗体が提供される。好ましい抗体は、ヒトには非免疫原性で、受容体の細胞外ドメインのエピトープに結合するモノクローナル抗体である。好ましい抗体は、少なくとも106L/mole、更に好ましくは107L/moleの親和性でNTNRαと結合するものである。好適な抗体はアゴニスト抗体である。
NTNRαに結合する抗体を、場合によっては異種性ポリペプチドと融合させることができる。抗体あるいは融合物には、NTNRαを受容体源から分離し精製するという特定の用途が見出される。
更なる側面では、受容体を含んでいると思われる試料とNTNRα抗体を接触させ、結合が生じたか否かを検出する工程を含むインビトロ及びインビボでのNTNRαの検出方法が提供される。
ある応用例においては、アゴニスト抗体があることが望ましい。かかるアゴニスト抗体は、NTNのようなNTNRαリガンドに対して記載されたようにNTNRαを活性化するのに有用である。更に、これらの抗体は、有効量のNTNRαの活性化が哺乳動物において治療効果につながる疾患を治療するのに有用である。例えば、アゴニスト抗体は、NTNRα及び好ましくはRetを含む細胞においてNTN応答を誘発するために使用することができる。治療用途としては、アゴニスト抗体及び生理学的に許容される担体を含む組成物を調製するのが望ましい。場合によっては、該組成物は一又は複数のサイトカイン、神経栄養因子、あるいはそのアゴニスト抗体を更に含む。
他の実施態様では、抗体は中和抗体である。そのような分子は、NTNRαの望ましくない又は過剰な活性化により特徴付けられる疾患を治療するために使用することができる。
上記のものに加えて、本発明は、ここに記載されているようなNTNRαの組換え生産に使用することができるNTNRαをコードする単離核酸分子、発現ベクター及び宿主細胞を提供するものである。単離核酸分子及びベクターは、遺伝子組換え動物の生産、NTNRαの欠陥を持つ患者の治療又はNTNRαリガンドに対する細胞の応答性を向上させる、あるいは(アンチセンス核酸の使用により)NTNRα活性を抑制する遺伝子療法に利用できる。
【図面の簡単な説明】
図1A−1Bは、全長のヒトNTNRαをコードするcDNAの有意鎖の核酸配列(配列番号1)、hNTNRαのコード配列(配列番号2)及び全長hNTNRαの推定アミノ酸配列(配列番号3)を示す。有意鎖の初めからヌクレオチドに番号をふった。アミノ酸残基はアミノ酸配列の初めから番号をふった。
図2A−2Bは、全長のラットNTNRαをコードするcDNAの有意鎖の核酸配列(配列番号4)、rNTNRαのコード配列(配列番号5)及び全長rNTNRαの推定アミノ酸配列(配列番号6)を示す。有意鎖の初めからヌクレオチドに番号をふった。アミノ酸残基はアミノ酸配列の初めから番号をふった。
図3A−3BはhNTNRα、rNTNRα、及びrGDNFRαをコードしている核酸を比較している。
図4は、hNTNRα、rNTNRα、及びrGDNFRαタンパク質の比較で、特徴を示している。シグナルペプチドは実線で示す。シグナル切断部位は矢印で示す。潜在的なグリコシル化部位には影をつける。GPI結合部位の疎水性ドメインは二重下線で示す。GPI結合タンパク質の切断/結合部位を構成する小アミノ酸残基はアステリスクで示す。コンセンサスシステイン残基は実線の円で示す。細胞外ドメイン(「ECD」)は、シグナルペプチド及びGPI結合部位の脇に位置する。
図5はhNTNRαとhGDNFRαのアミノ酸配列の比較である。
図6A−6Dは、I125NTNとGDNFのNTNRα又はGDNFRα発現細胞との結合及び非標識NTNによる置換を示す。図6Aと6Cは、それぞれ、125IマウスNTN(125I−mNTN)のラットGDNFRα(「rGDNFRα」)又はラットNTNRα(「rNTNRα」)との結合を示す。図6Bと6Dは、それぞれ、125IrGDNF(125I−rGDNF)のラットGDNFRα(「rGDNFRα」)又はラットNTNRα(「rNTNRα」)との結合を示す。図6Bの挿入図に示されたスキャッチャード分析に示されているように、GDNFは3pMのKd値でGDNFRαに結合する。細胞ベースアッセイで同様なKdが報告されている(Jingほか, Cell 85:1113-1124(1996))。マウスNTNは10pMのKdでrNTNRαを結合する(図6Cの挿入を参照)。ヒトNTNRαはラットNTNRαと同様の結合特異性を示した(データは示さず)。これらの実験においてはGDNFRαへの125I NTNの結合(図6A)と125IrGDNFのNTNRαへの結合(図6D)は検出されなかったが、ビオチン化NTNとGDNFで行った実験ではGDNFRαへのNTN及びその逆の低親和性結合(1mMを超えるKd)が明らかになった。
図7A−7Fは、NTN、NTNRα及びRet間の相互作用を示す。図7Aは、NTNRαを発現する細胞への125I NTNの結合を示す。NTNRαがGDI結合タンパク質であるという予想に一致して、NTNRαを発現する細胞への125I NTNの結合はPIPLCでの処理に続いて50−70%減少した。図7Bは、胚性ラット脊髄運動ニューロンのGDNF又はNTNに対する生存応答を示す。その受容体分布に一致して、NTNは脊髄運動ニューロンの有力な生存因子である。図7Cは、PIPLCの存在下でのNTNもしくはBDNF及び可溶性NTNRαに対する胚性ラット脊髄運動ニューロンの生存応答を示す。PIPLC処理は、BDNFへの応答を変化させないで、NTNへの生存応答を50−90%減少させた。可溶性NTNRα(sRα)はNTNへのPIPLC処理運動ニューロンの応答を回復する。図7Dは神経芽細胞腫のTGW−1細胞におけるRetのチロシンリン酸化のNTN誘導を示す。図7Eは、TGW−1におけるERKのリン酸化のNTN誘導を示す。図7Fは、Ret発現細胞に対するNTN−可溶性NTNRα複合体によりもたらされるNTN−応答性(例えばRetリン酸化)を示す。記号:(Con)=非形質導入細胞。(Ret)=Retのみが形質移入された細胞。(Rα+Ret)=RetとNTNRαが形質移入された細胞。全ての場合、細胞はNTN(100ng/ml)に暴露され、ついでNTN抗血清で免疫沈降処理がなされた。
図8Aないし8Cは、NTNRα及びGDNFRα細胞外ドメインの可溶性Ret活性化型に対するドーパミン作動性ニューロンの生存応答を示す。
図9は、一つの線条体にNTN、NTNRαの可溶型、NTNとNTNRαの双方、又はビヒクルが注入されたラットの様々な脳領域、特に線条体におけるドーパミンに対するDOPACの比(非注入側のパーセントとして注入側を表したもの:平均±標準偏差)を示す。
詳細な説明
本発明の説明においては、以下の用語を下記のように用い定義する。
本説明において用いる「NTNRα」(またGFR−アルファ−2とも命名される)又は「NTNRαポリペプチド」は、天然配列NTNRα;NTNRαの変異体;NTNRα細胞外ドメイン;及びキメラNTNRα(いずれもここで定義される)を意味する。場合によっては、NTNRαは天然のグリコシル化とは無関係の場合がある。「天然のグリコシル化」とは、天然に由来した哺乳動物細胞において産生されたときにNTNRαに共有結合的に結合している炭水化物部分を言う。したがって、非ヒト細胞において産生されたヒトNTNRαは、「天然のグリコシル化と関連していない」NTNRαの例である。時には、NTNRαはグリコシル化されていない場合がある(例えば、原核生物において組換えによって生産された場合)。
「天然配列NTNRα」は、天然由来のNTNRαと同一のアミノ酸配列を有するポペプチドを含んでなる。しかして、天然配列NTNRαは、天然に生じるラットNTNRα、マウスNTNRα、ヒトNTNRαあるいは他の哺乳動物種由来のNTNRαのアミノ酸配列を有し得る。かかる天然配列NTNRαポリペプチドは、自然から単離することができるか組換えあるいは合成手段によって生産することができる。「天然配列NTNRα」なる用語は、NTNRαの天然に生じる切断形、天然に生じる変異体型(例えば他のスプライス型)、及びNTNRαの天然に生じる対立遺伝子変異体をさす。好ましい天然配列NTNRαは成熟天然配列NTNRαである。ヒトとラットのNTNRα配列を図1A−1B及び2A−2Bに示す。好ましい分子は、中程度の、より好ましくは厳密なハイブリダイゼーション条件下において、図1A−1Bに示すヒトNTN受容体をコードしているDNA配列とハイブリダイズ可能な核酸分子を含んでなるものである。一実施態様では、NTNRα核酸は、42℃、20%ホルムアミド中で、図1A−1Bに示すNTN受容体をコードしているDNA配列とハイブリダイズする。他の実施態様では、核酸分子は、42℃、20%ッホルムアミド中で、図1A−1B又は2A−2Bに示す完全型NTN受容体の一部をコードしている少なくとも10の近接塩基、好ましくは少なくとも20の近接塩基、より好ましくは少なくとも45の近接塩基、更により好ましくは少なくとも60の塩基のDNA配列とハイブリダイズ可能である。好ましい配列は、同様の条件下ではGDNFRα配列とはハイブリダイズしない。
「NTNRα細胞外ドメイン」(ECD)は、NTNRαの膜貫通及び細胞質ドメインを本質的に有しないものNTNRαの形態であり、つまり、そのようなドメインを1%未満、好ましくはそのようなドメインを0.5%から0%、更に好ましくはそのようなドメインを0.1%から0%だけ有する。通常、NTNRαECDは、例えばNTNRαあるいはここに提供するマウス配列のような対応する配列に対して図1A−1B又は2A−2Bに示されるように、NTNRαのECDのアミノ酸配列と少なくとも約60%、好ましくは少なくとも65%、更に好ましくは少なくとも75%、更により好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは95%のアミノ酸配列同一性を有し、更には少なくとも99%のアミノ酸配列同一性、最終的には100%の同一性を有するアミノ酸を有し、従って以下に規定するNTNRα変異体を含む。好ましい配列は、少なくとも16のアミノ酸長、更に好ましくは少なくとも20のアミノ酸長さ、更により好ましくは少なくとも40のアミノ酸長である。
「NTNRα変異体」とは、例えば、NTNRαに対して図1A−1B又は2A−2Bに示される推定アミノ酸配列を持つNTNRα又はここに提供される配列と100%未満(しかし少なくとも60%の同一性)の配列同一性を有する以下に示す生物学的に活性なNTNRαを意味する。このようなNTNRα変異体には、NTNRα配列のN末端あるいはC末端に、あるいはその配列内部に一又は複数のアミノ酸残基が付加されたNTNRαポリペプチド;約1ないし30のアミノ酸残基が欠失され、場合によっては一又は複数のアミノ酸残基によって置換されたポリペプチド;及び上記のポリペプチドの誘導体で、生じた生成物が非天然のアミノ酸を有するようにアミノ酸が共有結合的に修飾されたものが含まれる。通常は、生物学的に活性なNTNRα変異体は、天然に存在するNTNRαのアミノ酸配列(図1A−1B又は2A−2Bに示すものあるいはここに提供する対応する配列)と約60%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%が、更により好ましくは少なくとも約80%、更により好ましくは少なくとも約90%が、更に好ましくは95%が、更に好ましくは少なくとも99%、最終的には100%の同一性を有する。
「キメラNTNRα」は、全長NTNRαを含むかその一又は複数のドメイン(例えば細胞外ドメイン)を異種性ポリペプチドに融合あるいは結合させたポリペプチドである。キメラNTNRαは、NTNRαと共通する少なくとも一つの生物学的性質を有している。キメラNTNRαの例としては、イムノアドヘシン及びエピトープタグNTNRαがある。
「イムノアドヘシン」なる用語は、「NTNRα免疫グロブリンキメラ」なる表現と同義的に用いられ、NTNRαの一部(一般にはその細胞外ドメイン)を免疫グロブリン配列と組合せるキメラ分子を意味する。免疫グロブリン配列は、好ましくは、ただし非制限的に、免疫グロブリン定常ドメインを指す。本発明のキメラ内の免疫グロブリン部分は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD又はIgMから得ることができるが、好ましくはIgG1又はIgG3から得ることができる。
「エピトープタグ」なる用語は、ここで用いられるときは、「タグポリペプチド」に融合したNTNRαを含んでなるキメラポリペプチドを指す。タグポリペプチドは、その抗体が産生され得るエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、その長さはNTNRαの生物学的活動を阻害しないよう充分に短い。また、タグポリペプチドは、好ましくは、それに対して形成される抗体が他のエピトープと実質的に交差反応をしないようにかなり独特である。好適なタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6のアミノ酸残基、通常は約8−50のアミノ酸残基(好ましくは約9−30の残基)を有する。好ましいものは、タグタンパク質を、例えば記載されているように(LindsayほかNeuron 17:571-574(1996))Ni−NTAクロマトグラフィーで分離することを可能にするニッケルを結合するポリヒスチジン配列である。
「単離されたNTNRα」は、NTNRα源から精製されたかあるいは組換えもしくは合成法によって調製されたNTNRαであって、(1)スピニングカップシークエネーターあるいは市販されている最良のアミノ酸シークエネーターを使用することにより、又は本出願の出願日に刊行されている方法により修正して、少なくとも15、好ましくは20のN末端あるいは内部アミノ酸配列のアミノ酸残基を得るのに充分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS−PAGEによる均一性が得られるように充分なほど、他のペプチド又はタンパク質を含んでいないNTNRαを意味する。ここで、均一性とは、他の供給源タンパク質での汚染が約5%未満であることを意味する。
「本質的に純粋な」タンパク質とは、組成物の全重量に対して少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも約95重量%のタンパク質を含む組成物を意味する。「本質的に均一な」タンパク質とは、組成物の全重量に対して少なくとも約99重量%のタンパク質を含む組成物を意味する。
「生物学的性質」は、これが「NTNRα」あるいは「単離されたNTNRα」について用いられた場合、(天然か変性されたコンフォメーションかにかかわらず)天然配列NTNRαによって直接又は間接に引き起こされあるいはなされるエフェクターあるいは抗原機能又は活性を有することを意味する。エフェクター機能は、リガンド結合及び細胞の生存、分化及び/又は増殖(特に細胞の増殖)の向上を含む。しかしながら、エフェクター機能は天然配列NTNRαに対して産生された抗体と交差反応し得るエピトープあるいは抗原部位の保持を含まない。
「抗原機能」とは、天然配列NTNRαに対して産生された抗体と交差反応可能なエピトープあるいは抗原部位を有することを意味する。NTNRαポリペプチドの主要な抗原機能は、それが天然配列NTNRαに対して産生された抗体に少なくとも約106L/moleの親和性をもって結合することである。通常、該ポリペプチドは少なくとも約107L/moleの親和性をもって結合する。「抗原機能」を定義するために用いられる抗体は、完全フロイントアジュバント中にNTNRαを処方し、この処方物を皮下的に注入し、抗NTNRα抗体の抗体価がプラトーに達するまでこの処方物を腹腔内に注射して免疫反応を追加免疫して産生されるウサギポリクローナル抗体である。
「生物学的に活性な」は、これが「NTNRα」あるいは「単離されたNTNRα」と共に用いられた場合は、天然配列NTNRαのエフェクター機能を示すか共有し、(必ずしも必要ではないが)更に抗原機能を有するNTNRαポリペプチドを意味する。NTNRαの主要なエフェクター機能は、NTNを結合するその能力である。NTNRαの他の主要なエフェクター機能はRetチロシンキナーゼを活性化して(Retの自己リン酸化をもたらし)Retシグナル伝達機能を媒介して下流経路を活性化することである。
「抗原的に活性な」NTNRαは、NTNRαの抗原機能を有し、(必ずしも必要ではないが)エフェクター機能を更に有するポリペプチドとして定義される。
NTNRα配列に関する「パーセントアミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ最大のパーセント配列同一性を得るために必要なら間隙を導入し、配列の同一性の一部として如何なる保存的な置換も行わない状態での、NTNRα配列の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとしてここに定義される。候補NTNRα配列に対するN末端、C末端、もしくは内部の伸長、欠失、又は挿入は何れも、配列の同一性あるいは相同性に影響を与えるとはみなされない。
「NTNリガンド」とは、天然配列NTNRαに結合し、好ましくはこれを活性化する分子を意味する。ある分子のNTNRαに結合する能力は、例えば、検定プレート上に塗布されたNTNRαに結合する推定リガンドの能力によって決定することができる。結合の特異性は、GDNFRαに対する結合と比較することによって決定することができる。NTNのNTNRαへの競合的結合はリガンドの好ましい性質である。チミジン取り込みアッセイは、NTNRα機能を活性化するリガンドをスクリーニングする他の手段を提供する。
「チミジン取り込みアッセイ」は、NTNRαを活性化する分子をスクリーニングするために用いることができる。この検定を行うためには、IL−3依存性Baf3細胞(Palaciosほか, Cell, 41:727-734(1985))を、ここに記載した全長の天然配列NTNRα及びRetに安定に形質移入する。このようにして生産したNTNRα/Ret/Baf3細胞を、37℃で5%のCO2と空気中の加湿インキュベーターにおいて24時間IL−3飢餓させる。IL−3飢餓に続いて、潜在的なアゴニストを有する試験試料(このような試験試料は場合によって希釈する)と共にあるいは試験試料なしで細胞を96ウェルの培養皿に蒔き、細胞培養インキュベーター中で24時間培養する。最後の6−8時間の間に各ウェルに3Hチミジンの1μCiを含む20μlの無血清RPMI培地を添加する。次に細胞を96ウェルのフィルター皿に取出して水で洗浄する。次に、フィルターを例えばパッカードトップカウントマイクロプレートシンチレーション計数機(Packard Top Count Microplate Scintillation Counter)でカウントする。アゴニストは、対照に対して、統計上有意な程度の3H取り込みの増加を誘発するものと予想される。好ましいアゴニストの場合、対照の少なくとも2倍の3H取り込みの増加になる。他の検定方法はここに記載する。
「単離された」NTNRα核酸分子は、NTNRα核酸の天然源に通常は伴っている少なくとも1つの汚染核酸分子から同定され分離された核酸分子である。単離されたNTNRα核酸分子は天然に見出される形態あるいは様相以外のものである。ゆえに、単離されたNTNRα核酸分子は、天然の細胞中に存在するNTNRα核酸細胞とは区別される。しかし、単離されたNTNRα核酸分子は、例えば、核酸分子が天然の細胞の場合とは異なった染色体位置にあるNTNRαを通常発現する細胞に含まれるNTNRα核酸分子を含む。
「対照配列」という表現は、特定の宿主生物において機能的に関連付けられたコード配列を発現するために必要なDNA配列を指す。例えば原核生物に好適な対照配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、リボソーム結合部位、更には今のところ十分には解明されていない他の配列を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを使用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係にあるときに「作用的に関連付けられ」ている。例えば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するプレタンパク質として発現されているならそのポリペプチドのDNAに機能的に関連付けられている;プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼすならばコード配列に機能的に関連付けられている;又はリボソームの結合部位は、もしそれが翻訳を容易にするような位置にあるならコード配列と機能的に関連付けられている。一般的に、「機能的に関連付けられる」とは、関連付けられたDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には近接しており読みフェーズにある。しかし、エンハンサーは必ずしも近接しているわけではない。結合は簡便な制限部位でのライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合は、通常の手法にしたがって、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
「細胞」、「株化細胞」及び「細胞培養」なる表現は相互に交換可能に用いられ、これら全ての表記は子孫を含む。「形質転換体」あるいは「形質転換細胞」は、初代対象細胞と何度転換したかに関わらずそれから由来した培養を含む。全ての子孫が、意図的な突然変異あるいは意図せざる突然変異のために、完全に同一のDNAを有するわけではないことも理解される。最初に形質転換した細胞に対してスクリーニングされたものと同じ機能あるいは生物的活性を共有する突然変異子孫も含まれる。特に区別して表記されなければならない場合は、文脈から明瞭に理解されるはずである。
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、特にモノクローナル抗体、多エピトープ特異性抗体組成物、二重特異性抗体、ダイアボディー(diabodies)、及び単鎖分子、並びに抗体断片(例えばFab、F(ab’)2及びFv)を、それらが所望の生物学的特性を有する限り、包含する。
ここで使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じる可能な突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対応する。更に、異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を典型的に含む通常の(ポリクローナル)抗体とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対応する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成される点で優れている。「モノクローナル」との形容は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の性質を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohlerほかによってネイチャー(256:495(1975))に掲載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法(例えば米国特許第4816567号(Cabillyほか)を参照)によって作ることができる。「モノクローナル抗体」は例えばClacksonほか(624-628(1991))及びMarksほか(J. Mol. Biol. 222:581-597(1991))に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離してもよい。
ここで、モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分は他の種由来の抗体あるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りそれら抗体の断片を特に含む(Cabillyほか, 前掲;Morrisonほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいは断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2あるいは抗体の他の抗原結合配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。大部分においてヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラット又はウサギのような所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでもよい。これらの変更は抗体の特性を更に洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる。更なる詳細については、Jonesほか, Nature, 321:522-525(1986);Reichmannほか, Nature, 332:323-329(1988);及びPresta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596(1992)を参照されたい。ヒト化抗体は、抗体の抗原結合領域が対象抗体でマカクザルを免疫化することにより生産された抗体から由来するプリマタイズした(PrimatizedTM)抗体を含む。
「ヒトにおいて非免疫原性である」とは、生理学的に許容される担体中の治療的に有効量の対象ポリペプチドをヒトの適当な組織に接触させたときに、適当な潜伏期間(例えば8日〜14日)をおいて対象ポリペプチドの2回目の投与時に対象ポリペプチドに対する感受性又は抵抗性が証明できないことを意味する。
「アゴニスト抗体」とは、天然配列NTNRαを活性化し得るNTNRαリガンドである抗体を意味する。
「中和抗体」とは、天然配列NTNRαのエフェクター機能を阻害するか有意に減少させることのできる抗体である。例えば、中和抗体は、神経突起生存検定、NTN結合検定、あるいはここで教示するか従来から既知の他の検定において決定されるNTNリガンドによるNTNRαの活性を阻害あるいは減少させることができる。
「細胞の増殖を増大させる」とは、インビトロ又はインビボで未処理細胞に対して細胞の成長あるいは/又は再生の度合いを増大させる工程を包含する。細胞培養における細胞の増殖は、対象分子に曝露前及び曝露後の細胞数を数えることによって検出することができる。増殖の度合いは、集密度合いを顕微鏡で検査することで定量化できる。細胞増殖は、ここに記載するチミジン取り込みアッセイを使用しても定量化できる。
「細胞の分化を増大させる」とは、元となった細胞とは異なる一又は複数の特徴あるいは機能を獲得あるいは保有する度合いを増大させる行為を意味する(例えば細胞特殊化)。これは細胞の発現型の変化をスクリーニングすることによって(例えば、細胞の形態学的変化の同定)検出可能である。
「生理学的に許容できる」担体、賦形剤、あるいは安定化剤は、使用された用量及び濃度ではこれらに暴露された細胞あるいは哺乳動物に対して非毒性であるものである。生理的に許容可能な担体はしばしば水性pH緩衝溶液である。生理的に許容可能な担体の例には、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量の(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールあるいはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;及び/又はトゥイーン(Tween)、プルロニック(Pluronics)又はポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤がある。
ここで使用される「サルベージ受容体結合エピトープ」とは、IgG分子のインビボ血清半減期を延長する原因であるIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)のFc領域のエピトープを意味する。サルベージ受容体結合エピトープの具体例には、HQNLSDGK;HQNISDGK;HQSLGTQ;VISSHLGQ;及びPKNSSMISNTPがある。
「サイトカイン」という用語は、一つの細胞集団から放出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間メディエータとして作用するものの包括的な用語である。そのようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン;プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質;副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子−α及び−β;マレリアン(mullerian)阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF−β、NT−3、NT−4、NT−6、BDNF、CNTF、GDNF、AL−1あるいは他のeph受容体ファミリーのリガンド等の神経因子あるいは神経成長因子;血小板成長因子;TGF−αあるいはTGF−βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポイエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロンα、β、γのようなインターフェロン;マクロファージ−CSF(M−CSF)のようなコロニー刺激因子(CSF);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)及び顆粒球−CSF(G−CSF);IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12等のインターロイキン(IL);及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書において、サイトカインなる用語は天然源由来あるいは組換え細胞培養由来のタンパク質及び天然配列サイトカインの生物的に活性な等価物を含む。更に、TrkA−IgGあるいは他の可溶性受容体キメラのようなサイトカイン活性を持つ遺伝子操作分子も含まれる。
「治療」は治療的処置及び予防的あるいは防護的措置の双方を意味する。治療を要するものには、障害を既に持つもの並びに障害を防止すべきものが含まれる。
治療目的で「哺乳動物」と言うときは、ヒト、家及び牧場の動物、及び動物園の動物、運動用の動物、愛玩用動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ等々を含む哺乳動物として分類されるあらゆる動物を意味する。好ましくは哺乳動物はヒトである。
「固相」とは、対象となる試薬(例えばNTNRαあるいはそれに対する抗体)が付着しうる非水性のマトリックスを意味する。固相の例には、例えば全部又は一部がガラス(調整穴明きガラス)、多糖類(例えばアガローズ)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコールあるいはシリコーンからなるものが含まれる。ある実施態様においては、文脈によっては、固相は検定プレートのウエルからなりうる;他の実施態様では(アフィニティークロマトグラフィーカラムのような)精製カラムである。この用語には更に米国特許第4275149号に記載されているもののような分散粒子の不連続な固相も含まれる。
本願発明の実施形態をここに提供する。グリア株化細胞由来神経栄養因子(「GDNF」)とニュールツリン(「NTN」)は交感感覚及び中枢神経系ニューロンに対する2つの構造的に関連する有力な生存因子である(Linほか, Science 260:1130-1132(1993);Hendersonほか, Science 266:1062-1064(1994);Buj-Belloほか, Neuron 15:821-828(1995);Kotzbauerほか, Nature 384:467-470(1996))。GNDFは(GDNFRαと命名された)グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合タンパク質と膜貫通受容体チロシンキナーゼRetからなる多成分性受容体系を通してその作用を媒介することが示されているが(Treanorほか, Nature 382:80-83(1996);Jingほか, Cell 85:1113-1124(1996);Truppほか, Nature 381:785-789(1996);Durbecほか, Nature 381:789-793(1996))、NTNシグナルが伝達される機構は過去には解明されていない。ここに記載するのは、NTNRαと命名されたGPI結合タンパク質とその遺伝子の単離、配列、及び組織分布であり、これはNTNへの応答を変調するがGDNFへの応答は変調しないことが示される。それがGDNFRαに構造的に関連していることがここで示される。無細胞系において組換えタンパク質を用いて、NTNRαがNTN(Kd〜10pM)を結合するがGDNFは結合せず、NTNは高親和性ではGDNFRαを結合しないことが示されている。NTNに対する細胞応答にはNTNRαの存在が必要であることもまた示されている。リガンド結合NTNRαはチロシンキナーゼ受容体Retのリン酸化を誘導する。これらの知見は、RetとNTNRαをそれぞれNTNと関連リガンドの受容体のシグナル及びリガンド結合成分として同定する。これは、共有膜貫通タンパクチロシンキナーゼ(Ret)とリガンド特異的GPI結合タンパク質(NTNRα)を含む受容体の新規な神経栄養及び分化因子受容体ファミリーを定める。
グリア株化細胞由来神経栄養因子(「GDNF」)(その記載の全体を出典明示によりここに取込むLinほか, Science,260:1130-1132(1993);W0 93/06116)は、パーキンソン病(Hirschほか, Nature, 334:345-348(1988);Hornykiewicz, Mt. Sinai J. Med., 55:11-20(1988))、筋萎縮性側策硬化症(Hirano, Amyotrophic Lateral Sclerosis and Other Motor Neuron Diseases, P. Rowland編(New York: Raven Press Inc.)pp. 91-101(1991))、及びアルツハイマー病(Marcynuikほか, J. Neurol. Sci., 76:335-345(1986);Cashほか, Neurology, 37:42-46(1987);Chan-Palayほか, Comp. Neurol., 287:373-392(1989))において変性する中脳ドーパミン作動性(Linほか, Science, 260:1130-1132(1993);Stroembergほか, Exp. Neurol., 124:401-412(1993);Beckほか, Nature, 373:339-341(1995);Kearnsほか, Brain Res., 672:104-111(1995);Tomacほか, Nature, 373:335-339(1995))脊髄運動(Hendersonほか, Science, 266:1062-1064(1994);Oppenheimほか, Nature, 373:344-346(1995);Yanほか, Nature, 373:341-344(1995))及びノルアドレナリン作動性ニューロン(Arenasほか, Neuron, 15:1465-1473(1995))の有力な生存因子である。GDNFを遺伝子的操作によって欠失したマウスに基づいてGDNFの更なる生物学的役割:腸内、交感、及び知覚ニューロン及び腎臓系の発達及び/又は生存、が報告されているが、中央神経系(CNS)におけるカテコールアミン作動性ニューロンについてではない(Mooreほか, Nature 382:73-76(1996);Pichelほか, Nature 382:73-76(1996);Sanchezほか, Nature 382:70-73(1996))。GDNFの生理学的かつ臨床的重要性にも拘らず、その作用機序についてはあまり知られていない。
サイトカイン受容体はしばしば集合して多サブユニット複合体を形成する。時には、この複合体のαサブユニットは同族成長因子の結合に関与し、βサブユニットは細胞にシグナルを伝達する能力を有する。理論に拘束されることは望まないが、これらの受容体は形成された複合体に応じて3種のサブファミリーに分類される。サブファミリー1はEPO、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−7(IL−7)、成長ホルモン(GH)、及び催乳ホルモン(PRL)に対する受容体を含む。このサブファミリーに属する受容体に結合するリガンドは、受容体のホモ二量体化に帰着すると考えられる。サブファミリー2は、IL−3、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経成長因子(CNTF)に対する受容体を含む。サブファミリー2受容体は、リガンド結合にαサブユニットを有し、シグナル伝達にβサブユニット(IL−6、GM−CSF及びIL−5受容体の共有βサブユニットあるいはIL−6、LIF、OSMあるいはCNTFのgp130サブユニット)を有するヘテロ二量体である。サブファミリー3は、インターロイキン−2(IL−2)に対する受容体のみを含む。IL−2受容体複合体のβ及びγサブユニットは、無関係のTac抗原のαサブユニットに随伴するサイトカイン受容体ポリペプチドである。
本発明は、高い親和性を持ってNTNを結合するタンパク質NTNRαの発見に基づくものである。本明細書に記載された実験により、この分子はNTNに対する応答を媒介する役割を担っていると思われる受容体であることが実証される。特にこの受容体は、ニューロンを含む様々な組織及び細胞集団中に存在することが見出され、従って、アゴニスト抗体のようなNTNリガンドをNTNRαあるいはRetを含有する細胞の増殖、成長、生存、分化、代謝あるいは再生を刺激するために使用できることが示される。
NTNRαの生産に適した方法は当業者によく知られており、内因性ポリペプチド源からのNTNRαの分離、(ペプチドシンセサイザーを用いた)ペプチド合成及び組換え技術(又はこれらの技術の任意の組み合わせ)を含む。NTNRαの望ましい生産方法は、以下に述べる組換え技術による方法である。
以下に記載する内容はNTNRα核酸を含むベクターで形質転換された細胞を培養し、細胞培養からポリペプチドを回収する組換え技術によるNTNRαの生産方法に関わるものである。更に本発明のNTNRαは、1991年5月16日に公開されたWO91/06667に記載された相同性組換え法によって得てもよい。
簡単に言えば、当該方法はNTNRαをコードする遺伝子を含む一次ヒト細胞を、(ジヒドロフォレートリダクターゼ(DHFR)又は以下に記載するそれ以外のもののような)増殖可能な遺伝子とNTNRα遺伝子の増殖をもたらすためのNTNRα遺伝子のコード領域の座位にDNAと相同である少なくとも約150bpの長さの少なくとも一つのフランキング領域を含んでなる作成物(すなわちベクター)で形質転換することを含む。増殖可能な遺伝子はNTNRα遺伝子の発現を阻害しない位置にあるものでなければならない。形質転換は、増殖可能な領域を定めるために、作成物が一次細胞のゲノムに相同的に組込まれるように行われる。
作成物を有する一次細胞は次に増幅可能な遺伝子又は作成物中に存在するマーカによって選択される。マーカ遺伝子の存在は作成物の存在と宿主ゲノムへの組み込みを可能にする。二次宿主において選別が行われる為、一次細胞をそれ以上選別する必要はない。必要ならば、PCRを用いて、結果として得られる増幅したDNA配列を配列決定するか、正確に相同的な組み込み体からのDNAがあり、そのような断片を含む細胞のみを拡張している場合にはPCR断片の適当な長さを決定することで、相同的組換え事象の発生を測定することができる。また、もし必要であれば、選別された細胞に(遺伝子がDHFRならばメトトレクセートのような)適当な増幅剤でストレスをかけてこの点で増殖させ、標的遺伝子の複数のコピーが得られる。好ましくは、しかし、増幅工程は、以下に記載する第二の形質転換の後まで行われない。
選別工程の後に、増幅領域全体を含むのに充分に大きいゲノムのDNA部分を、選別した一次細胞から単離する。二次哺乳動物の発現宿主細胞をゲノムDNA部分で形質転換しクローン化し、増幅可能領域を含むクローンを選別する。ついで、増幅可能領域を、一次細胞中でまだ増幅されていなければ、増幅剤により増幅させる。最後に、NTNRαを含む増幅可能領域の複数コピーを含んでなる二次発現宿主細胞を成長させ、遺伝子を発現しタンパク質を生産する。
哺乳類NTNRαの保存構造と配列、並びにラット及びマウス受容体をコードするcDNA配列、並びにここに開示されたヒト配列の解明が、NTNRαをコードする他の哺乳動物からの遺伝子配列のクローン化を可能にする。ここに開示された配列を用いて、ヒトNTNRα分子をクローン化する能力は本発明の特に興味深いところである。NTNRαをコードするDNAは、実施例としてここに記載したように、NTNRαmRNAを有すると考えられており検出可能な程度にそれを発現する組織から調製される任意のcDNAライブラリから得ることができる。したがって、NTNRαDNAは、例えば哺乳動物の胎児肝臓、脳、筋肉、腸及び外縁神経等から調製されたcDNAのライブラリから簡便に得ることができる。NTNRαをコードする遺伝子はゲノムライブラリあるいはオリゴヌクレオチド合成法によっても得ることができる。
ライブラリは、対象となる遺伝子あるいはその遺伝子によりコードされるタンパク質を同定するために設計された(NTNRαに対する抗体又はおよそ20−80塩基のオリゴヌクレオチド等の)プローブによってスクリーニングされる。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリのスクリーニングはSambrookほか, Molecular Cloning: A laboratory Manual(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)の第10−12章に記載された標準的な方法を使用して実施することができる。NTNRαをコードする遺伝子を単離する他の方法は、Sambrookほかのセクション14に記載されているようなPCR法を使用するものである。
本発明を実施する好ましい方法は、好ましくはヒト胎児肝臓である種々のヒト組織からcDNAライブラリをスクリーニングするために慎重に選別したオリゴヌクレオチド配列を用いることである。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、擬陽性が最小化されるのに充分に明瞭でなければならない。好ましい配列はここに開示した天然に生じるNTNRαから得られる。
オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされるライブラリ内のDNAとのハイブリダイズ時に検出可能であるように標識されなければならない。標識化の好ましい方法は、当該分野において良く知られているように、32P標識ATPをポリヌクレオチドキナーゼと共に用いてオリゴヌクレオチドを放射標識するものである。しかし、これらに限定されるわけではないが、ビオチン標識あるいは酵素標識を含むオリゴヌクレオチドの他の標識方法を使用することもできる。
NTNRαのアミノ酸配列変異体はNTNRαDNAに適当なヌクレオチド変化を導入することによって、あるいは所望のNTNRαポリペプチドの合成によって調製することができる。これらの変異体は、図1A−1B又は2A−2Bに示したNTNRαあるいは本明細書に記載した配列のような天然に生じるNTNRαのアミノ酸配列の内部もしくは一端あるいは両端における残基の挿入、置換、及び/又は特定の欠失を表す。好ましくは、これら変異体は成熟配列の内部もしくは一端又は両端での挿入及び/又は置換、及び/又は、NTNRαのシグナル配列の内部もしくは一端又は両端における挿入、置換及び/又は特定の欠失である。任意の組合せの挿入、置換、及び/又は特定の欠失が、最終の作成物が本明細書で示す望ましい生物学的活性を有する限り、最終作成物を得るために実施される。アミノ酸の変化は、グリコシル化部位の数と位置の変化、膜結合特性の変化、及び/又は挿入、削除あるいはNTNRαのリーダー配列に影響を与えることによるNTNRαの細胞間位置の変更のような、NTNRαの翻訳後の工程をまた変更しうる。
天然の配列の変異は、ここで特に明細書に取り込む米国特許第5364934号に記載された保存的あるいは非保存的突然変異に関する任意の技術とガイドラインを使用して発生させることができる。これらにはオリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)変異誘発、アラニンスキャニング、及びPCR変異誘発が含まれる。変更、付加あるいは欠失のためのアミノ酸の選別についてはそこの表Iと該表に関しての関連する記載を参照されたい。
NTNRαをコードする核酸(例えば、cDNA又はゲノムDNA)が、更にクローン化するために(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分としては、一般に、非限定的であるが、次のものの一又は複数が含まれる:単一の配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモータ、及び転写終結配列。
本発明のNTNRαは直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、好ましくはシグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。一般に、シグナル配列はベクターの成分であるか、ベクターに挿入されるNTNRαDNAの一部である。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。NTNRαシグナル配列を認識し加工しない原核生物宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。酵母の分泌に関しては、天然シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、(酵母菌属(Saccharomyceg)α−因子リーダー及び1991年4月23日に登録された米国特許第5010182号に記載されたクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α−因子リーダーを含む)α因子リーダー、酸ホスファターゼリーダー、及び白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行の欧州特許362179)、又は1990年11月15日に公開のWO90/13646によって置換することができる。哺乳動物細胞の発現においては、他の動物NTNRα由来のシグナル配列、及び同一あるいは関連ある種の分泌ポリペプチド由来のシグナル配列、単純ヘルペスgDシグナルのようなウィルス分泌リーダーのような他の哺乳動物のシグナル配列が適しているが、天然シグナル配列(例えば、インビボでヒト細胞からNTNRαの分泌を指示するNTNRαプレ配列)が十分である。
そのような前駆体領域のDNAは、成熟NTNRαあるいはその可溶性変異体をコードするDNAにリーディングフレームが結合される。
発現ベクターとクローン化ベクターは共に一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般に、この配列はクローン化ベクターにおいて、宿主染色体DNAとは独立にベクターが複製することを可能にするものであり、複製開始点又は自律的複製配列を含む。そのような配列は様々な細菌、酵母及びウイルスに対してよく知られている。プラズミドpBR322に由来する複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラズミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローン化ベクターに有用である。一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である(SV40開始点は典型的には初期プロモーターを有しているために用いられる)。
多くの発現ベクターは「シャトル」ベクターである、すなわち、それらは少なくとも一つのクラスの生物において複製可能であるが、発現のために他の生物に形質移入され得る。例えば、大腸菌においてベクターがクローン化され、そのベ同じクターが酵母あるいは哺乳動物細胞に形質移入され、宿主細胞染色体と独立して複製することはできないとしても、発現する。
DNAはまた宿主ゲノムへの挿入によって増幅され得る。これは、例えばベクターにバシラスゲノムDNAに見られる配列と相補的なDNA配列をベクターに含めることにより、宿主としてバシラス(Bacillus)種を用いて容易に達成される。このベクターでのバシラスの形質移入は、ゲノムとの相同的組換え及びNTNRαDNAの挿入をもたらす。しかし、NTNRαをコードするゲノムDNAの回収は、NTNRαDNAを切除するのに制限酵母による消化が必要となるために、外来的に複製したベクターの場合よりも複雑である。
発現及びクローニングベクターは、選択性マーカーとも称される選択遺伝子を含まなければならない。この遺伝子は、選択的培地で成長させた形質転換宿主細胞の生存又は成長に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターと共に形質転換していない宿主細胞は培地で生存しない。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは毒素に対する耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、(c)例えばバシリ(Bacilli)に対する遺伝子コードD−アラニンセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
選択技術の一例においては、宿主細胞の成長を抑止する薬品が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、抗薬品性を付与し、従って選択工程を生存するタンパク質を生産する。そのような優性の選択の例としては、ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンが利用される。
哺乳動物の細胞の選択的マーカーのほかの適当な例は、DHFRあるいはチミディンキナーゼのように、NTNRα核酸を捕捉することのできる細胞を特定することのできるものである。哺乳類の細胞からの形質転換細胞は、マーカーを捕捉することによって当該形質転換細胞のみが生存できるように独特に適応化された淘汰圧下に置かれる。淘汰圧は、培地中の選択剤の濃度が次第に変化する環境下で形質転換細胞を培養することにより課し、選択遺伝子とNTNRαをコードするDNAの双方を増幅させる。増幅は、成長に必須のタンパク質の生産に対する要求度が高い遺伝子が、組換え細胞の後の世代の染色体内に直列に反復されるプロセスである。増幅されたDNAから増大したNTNRα量が合成される。増幅可能な遺伝子のほかの例には、メタロチオネインI及びII、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々がある。好ましいベクター系は米国特許第5561053号に開示されている。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された遺伝子は、まず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、Urlaubほか(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216(1980))により記載されているようにして調製され増殖されたDHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である。形質転換した細胞は次に濃度の高いメトトレキセートに接触させる。これによりDHFRの複数コピーが合成され、同時に、NTNRαをコードするDNAのような発現ベクターを含む他のDNAの複数コピーが作られる。この増幅方法は、もしMtxに高度に耐性である変異体DHFR遺伝子が使用されたような場合には内在性DHFRの存在にかかわらず、他の適当な宿主、例えば、ATCC番号CCL61CHO−K1を使用することができる(EP117060)。
あるいは、NTNRαをコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような選択的マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を有する培地における細胞成長により選択することができる。米国特許第4965199号参照。
酵母中での使用に好適な選択遺伝子は酵母プラズミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombほか, Nature, 282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC第44075号あるいはPEP4−1のようなトリプトファン内で成長する能力に欠ける酵母の突然変異株に対する選択マーカーを提供する(Jones, Genetics,85:12(1977))。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、トリプトファンの不存在下における成長による形質転換を検出する環境を提供する。同様に、Leu2欠陥を有する酵母株(ATCC20622あるいは38626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラズミドによって補完することができる。
更に、1.6μmの円形プラズミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる(Bianchiほか., Curr. Genet., 12:185(1987))。より最近の例としては、子ウシのキモシンの大量生産のための発現系がK.ラクティス(lactis)に対して報告されている。Vanden Berg, Bio/Technology, 8:135(1990)。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株からの、組換えによる成熟したヒト血清アルブミンを分泌する複数の発現ベクターも開示されている。Fleerほか., Bio/Technology, 9:968-975(1991)。
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、NTNRα核酸に機能的に結びついているプロモータを有する。プロモータは、作用的に結合しているNTNRα核酸配列のような特定の核酸配列の転写あるいは翻訳を制御する構造的な遺伝子(通常約100ないし1000bp)の開始コドンの上流側(5’)に位置する未翻訳配列である。プロモータは典型的には、誘発的なクラス及び構成的なクラスの2つのクラスに属する。誘発的なプロモータは、養分の存在あるいは不存在、温度変化等の培養条件の変化に対応してその制御の下でDNAからの転写レベルを上昇させるプロモータである。現時点において多種の宿主細胞から認識される非常に多くのプロモータが良く知られている。これらのプロモータは、制限酵素の消化によって供給源DNAからプロモータを排除し、単離したプロモーター配列を挿入することで、NTNRαをコードするDNAに作用的に結合している。天然NTNRαプロモーター配列及び多くの非相同的プロモータはいずれもNTNRαDNAの増幅及び/又は発現に用いることができる。しかし、異種性プロモータが、天然のNTNRαプローモータに比較して多量の転写が可能でありNTNRαの収量が大きくなるために好ましい。
原核生物宿主に好適なプロモータはβ−ラクタマーゼ及びラクトースプロモータ系(Changほか., Nature,275:615(1978), Goeddelほか., Nature, 281:544(1979))、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモータ系(Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057(1980);EP 36,776)、及び、tacプロモータのようなハイブリッドプロモータを含む(deBoerほか., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25(1983)。しかし、他の既知の細菌プロモータも好適である。これらのヌクレオチド配列は発表されており、よって当業者は任意の所望の制限部位を提供するためにリンカーあるいはアダプターを使用することでNTNRαをコードするDNA(Siebenlistほか., Cell, 20:269(1980))にそれらを結合させることが可能である。細菌系で使用するプロモータもまたNTNRαをコードするDNAと作用的に結合したSD配列を有する。
真核生物に対してもプロモータ配列が知られている。ほとんど全ての真核生物の遺伝子は、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有する。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Xが任意のヌクレオチドであるCXCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端にA尾部が付加されていることを示すシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに好適に挿入される。
酵母宿主と共に用いて好適なプロモータ配列の例としては、3−ホスホグリセラートキナーゼ(Hitzemanほか, J. Biol. Chem., 255:2073(1980))又は他の糖分解酵素(Hessほか, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149(1968))、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン散デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイノメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼがある。
他の酵母プロモータとしては、成長条件によって転写が制御される更なる効果を有する誘発的プロモータであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソサイトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの利用を支配する酵素がある。酵母の発現に好適に用いられるベクターとプロモータは欧州特許73657号に更に記載されている。酵母エンハンサーもまた酵母プロモーターと共に好適に用いられる。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのNTNRα転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開の英国特許2211504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及び最も好ましくはサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモータ、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモータ、熱衝撃プロモータ、そしてNTNRα配列に通常付随するプロモータによって、このようなプロモータが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモータは、SV40複製起点をまた含むSV40制限断片として簡便に得られる。Fiersほか, Nature, 273:113(1978);Mulliganほか, Science, 209:1422-1427(1980);Pavlakisほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:7398-7402(1981). ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。Greenawayほか, Gene, 18:355-360(1982)。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主でDNAを発現する系が、米国特許第4419446号明細書に開示されている。この系の修飾は米国特許第4601978号に開示されている。サルの細胞での免疫インターフェロンをコードしているcDNAの発現について、Grayほか, Nature, 295:503-508(1982);単純ヘルペスウィルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞におけるヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyesほか, Nature, 297:598-601(1982);培養されたマウス及びウサギの細胞におけるヒトインターフェロンβ1遺伝子の発現についてCanaaniほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:5166-5170(1982);及び、プロモーターとしてラウス肉腫ウィルスの長い末端反復配列を用いたCV−1サル腎臓細胞、ニワトリ胚線維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、及びマウスNIH−3T3細胞における細菌CAT配列の発現について、Gormanほか, Proc. Natl. Acas. Sci. USA, 79:6777-6781(1982)も参照のこと。
より高等の真核生物による本発明のNTNRαをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。エンハンサーは、通常は約10から300bpで、プロモーターに作用してその転写を増強するDNAのシス作動要素である。エンハンサーは、相対的に方向及び位置に独立しており、転写ユニットの5’(Laiminsほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:993(1981))及び3’(Luskyほか, Mol. Cell Bio., 3:1108(1983))、イントロン内部(Banerjiほか, Cell, 33:729(1983))並びにコーディング配列自身の内部に見出されている。Osbornほか, Mol. Cell Bio., 4:1293(1984)。現在は哺乳動物の遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp100−270)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物のプロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18(1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、NTNRαコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライスされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、また転写の終止及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5’、時には3’の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、NTNRαをコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
一又は複数の上に列挙した成分を含む適切なベクターの組立てには標準的なライゲーション技術を用いる。分離されたプラスミド又はDNA断片を開裂させ、整え、そして必要とされるプラスミドの生成のために望ましい型に再ライゲーションする。
組立てられたプラスミドが正しい配列であることを確認する分析のために、ライゲーション混合物を用いて、大腸菌K12菌株294(ATCC31446)を形質転換し、適当な場合にはアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって選択する。形質転換体からプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、及び/又はMessingほか, Nucleic Acids Res., 9:309(1981)の方法又はMaxamほか, Methods in Enzymology, 65:499(1980)の方法によって配列決定する。
本発明の実施に特に有用であるのは、哺乳動物細胞におけるNTNRαをコードしているDNAの一過性発現を提供する発現ベクターである。一般に、一過性発現は、宿主細胞が発現ベクターの多くのコピーを蓄積し、次にその発現ベクターによってコードされている所望のポリペプチドを高レベルで合成するように、宿主細胞中で効果的に複製できる発現ベクターを使用することを含む。Sambrookほか, supra, pp.16.17-16.22。一過性発現系は、適切な発現ベクターと宿主細胞を含むが、クローニングされたDNAによりコードされているポリペプチドの簡便で正の同定並びに所望の生物学的又は生理学的性質についてのポリペプチドの迅速なスクリーニングを可能にする。したがって、一過性発現系は、本発明において、生物学的に活性なNTNRαであるNTNRαの類似体及び変異体を同定する目的のために特に有用である。
組換え脊椎動物細胞培養でのNTNRαの合成に適応するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gethingほか, Nature, 293:620-625(1981);Manteiほか, Nature, 281:40-46(1979);EP 117,060;及びEP 117,058に記載されている。NTNRαの哺乳動物細胞培養発現にとって特に有用なプラスミドは、pRK5(EP307247)又はpSV16Bである。1991年6月13日に公開されたWO91/08291。
ここに記載のベクターにDNAをクローン化あるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、又は上述の高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシェリチアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア属、例えばセラチア・マルセスキャンス及び赤痢菌属、並びに桿菌、例えば枯草菌及びバシリ・リチェニフォルミス(licheniformis)(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266710に開示されたバシリ・リチェニフォルミス41P)、シュードモナス属、例えば緑膿菌及びストレプトマイセス属を含む。大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31537)及び大腸菌W3110(ATCC27325)のような他の菌株も適切ではあるが、一つの好ましい大腸菌クローン化宿主は大腸菌294(ATCC31446)である。これらの例は限定するものではなく、例示のためのものである。菌株W3110は、組換えDNA産物発酵のための一般的な宿主菌株であるので、特に好適な宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきである。例えば、菌株W3110は、タンパクをコードしている遺伝子に遺伝的突然変異が起こるように修飾されてもよく、そのような宿主の例にはE. coli W3110菌株27C7がある。27C7の完全な遺伝子型はtonAΔptr3phoAΔE15Δ(argF-lac)169ompTΔdegP41Kanrである。菌株27C7はATTC55244としてアメリカン・タイプ・カルチュア・コレクション(American Type Culture Collection)に1991年10月30日に寄託された。また、1990年8月7日に発行された米国特許第4946783号に開示された突然変異体ペリプラズムプロテアーゼを持つ大腸菌株を用いても良い。更にまた、クローニング法、例えばPCR又はその他の核酸ポリメラーゼ反応も適切である。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、NTNRαをコードしているベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、例えばシゾサッカロミセス・ポンベ(分裂酵母)(Beachほか, Nature, 290:140(1981);1985年5月2日発行のEP139383);クルイヴェロミセス宿主(米国特許第4943529;前掲のFleerほか)、例えばK.ラクティス(MW98-8C, CBS683, CBS4574;Louvencourtほか, J. Bacteriol., 737(1983)),K.フラギリス(ATCC12424),K.ブルガリカス(ATCC16045),K.ウィッケラミイ(ATCC24178),K.ワルティイ(ATCC56500),K.ドゥロソフィラルム(ATCC36906;前掲のVan den Bergほか),K.サーモトレランス、及びK.マルクシアヌス;ヤロウィア(EP402226);ピチア・パストリス(EP183070;Sreekrishnaほか, J. Basic Microbiol.,28:265-278(1988));カンディダ;トリコルデルマ・リーシア(EP244234);ニューロスポラ・クラッサ(Caseほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5259-5263(1979));シュワニオミセス・オクシデンタリスのようなシュワニオミセス(1990年10月31日発行のEP394538);及び糸状菌、例えばニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラディウム(WO91/00357、1991年1月10日公開),及びアスペルギルス宿主、例えばA.ニデュランス(Ballanceほか, Biochem Biophys. Res. Commun., 112;284-289(1983);Tilburnほか, Gene, 26:205-221(1983);Yeltonほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:1470-1474(1984)及びクロカビ(Kellyほか, EMBO J., 4:475-479(1985)のような、多数のほかの属、種、及び菌株が一般に利用でき、本発明において有用である。
グリコシル化NTNRαの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。このような宿主細胞は、複雑なプロセシング及びグリコシル化活動が可能である。原則的には、脊椎動物であろうと無脊椎動物培養由来であろうと、任意のより高等の真核生物細胞培養が利用できる。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドゥロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、及びボンビクス・モリ(カイコ)が特定されている。例えば、Luckowほか, Bio/Technology, 6:47-55(1988);Millerほか, Genetic Engineering, Setlowほか, eds., Vol. 8(Plenum Publishing, 1986), pp.277-279;及びMaedaほか, Nature, 315:592-594(1985)を参照のこと。トランスフェクションのための種々のウィルス株が公に利用できる。例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL−1変異体とボンビクス・モリNPVのBm−5株があり、このようなウィルスは本発明によるウィルスとして、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞のトランスフェクションに使用することができる。
綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として用いることができる。典型的には、NTNRαをコードしているDNAを前もって含むように操作しておいた細菌アグロバクテリウム・トゥメファシエンスのある菌株と共にインキュベートすることによって植物細胞をトランスフェクトする。A.トゥメファシエンスと共に植物細胞培養をインキュベートする間に、NTNRαをコードしているDNAが、植物細胞宿主がトランスフェクトされるようにその植物細胞宿主に移され、そして適切な条件下でNTNRαをコードしているDNAを発現する。加えて、例えば、ノパリンシンターゼプロモーター及びポリアデニル化シグナル配列のような、植物細胞と適合しうる調節及びシグナル配列が利用できる。Depickerほか, J. Mol. Appl. Gen., 1:561(1982)。また、T−DNA780遺伝子の上流領域から分離されるDNAセグメントは、組換えDNAを含む植物細胞中の植物発現遺伝子の転写レベルを活性化又は増強しうる。1989年6月21日公開のEP 321,196。
しかしながら、脊椎動物細胞への関心が最も高く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的手法になっている。例えば、Tissue Culture, Academic Press,編者Kruse and Patterson(1973)を参照のこと。有用な哺乳動物宿主セルラインの例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Grahamほか, J. Gen Virol., 36:59(1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO, Urlaubほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216(1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251(1980));サルの腎細胞(CVI ATCC CCL 70);アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA, ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK, ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A, ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138, ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2, HB 8065);マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562, ATTC CCL51);TRI細胞(Motherほか, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌ライン(Hep G2)である。
宿主細胞をトランスフェクトし、そして好ましくは上述のNTNRαの発現又はクローニングベクターで好ましくは形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適当に修飾された常套的栄養培地で培養する。
トランスフェクションは、如何なるコード配列が実際に発現されるか否かにかかわらず、宿主細胞による発現ベクターの取り上げを意味する。多数のトランスフェクションの方法が当業者に知られている。例えば、CaPO4及びエレクトロポレーションである。このベクターの操作のあらゆる徴候が宿主細胞内で生じたときに成功したトランスフェクションが一般に認められる。
形質転換は、染色体外のエレメントとしてであろうと染色体成分によってであろうと、DNAが複製可能であるように、生物体中にDNAを導入することを意味する。用いられる宿主細胞に応じて、そのような細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrookほかの1.82項に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションは、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トゥメファシエンスによる感染が、Shawほか, 23:315(1983)及び1989年6月29日公開のWO 89/05859に記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。加えて、1991年1月10日に公開されたWO91/00358に記載されているように、超音波処理を用いて植物をトランスフェクトすることもできる。
このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Grahamほか, Virology, 52:456-457(1978)のリン酸カルシウム沈殿法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な側面は1983年8月16日に発行された米国特許第4399216号に記載されている。酵母中の形質転換は、典型的には、Vansolingenほか, J. Bact., 130:946(1977)及びHsiaoほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829(1979)の方法によって実施する。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷の細胞、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等々を用いる細菌プロトプラスト融合もまた用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の方法については、Keownほか, Methods in Enzymology, 185:527-537(1990)及びMansourほか, Nature, 336:348-352(1988)を参照のこと。
本発明のNTNRαポリペプチドをつくるために用いられる原核細胞は、前掲のSambrookほかに一般的に記載されているような適切な培地で培養される。
本発明のNTNRαをつくるために用いられる哺乳動物の宿主細胞は種々の培地において培養することができる。例えばハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM), Sigma)のような市販培地が当該宿主細胞の培養に適している。又、Hamほか, Meth. Enz., 58:44(1979), Barnesほか, Anal. Biochem., 102:255(1980), 米国特許4,767,704;4,657,866;4,927,762;4,560,655;5,122,469;WO 90/03430;WO 87/00195;米国再発行特許30,985に記載された任意の培地を宿主細胞の培養培地として用いることができる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商標)薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物と定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質も又当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について従来用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
一般に、哺乳動物の細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M. Butler編(IRL Press, 1991)に見出すことができる。
この明細書において言及される宿主細胞は培養中の細胞並びに宿主動物内にある細胞を包含する。
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここに記載された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、良く知られたサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205(1980))、ドットブロット法(DNA分析)、又はインシトゥハイブリッド形成法によって、直接的に試料中で測定することができる。種々の標識を用いることができ、最も一般的なものは放射性同位元素、特に32Pである。しかしながら、他の方法、例えばポリヌクレオチド中への導入のためのビオチン修飾されたヌクレオチドを用いる方法も又使用することができる。ついで、このビオチンは、例えば放射性核種、蛍光剤、酵素等のような広範囲の標識で標識することができるアビジン又は抗体への結合部位として働く。又、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA−タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識し、検定を実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
また、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液の検定によって、測定することもできる。免疫組織化学的染色技術では、細胞試料を、典型的には脱水と固定によって調製し、結合した遺伝子産物に対し特異的な標識化抗体と反応させるが、この標識は通常は視覚的に検出可能であり、例えば酵素的標識、蛍光標識、ルミネサンス標識等である。本発明における使用に適した特に感度の良好な染色法は、Hsuほか, Am. J. Clin. Path., 75:734-738(1980)に記載されている。
試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、ここに記載されるようにして調製することができる。
NTNRα(例えばNTNRαECD)は、宿主細胞の溶菌液から回収してもよいが、好ましくは分泌されたポリペプチドとして培養基から回収される。NTNRαが膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばトリトン−X100)を用いて膜から引き離すことができる。
NTNRαがヒト起源以外の組換え細胞でつくられるときは、NTNRαはヒト起源のタンパク質又はポリペプチドを全く含んでいない。しかしながら、NTNRαに関して実質的に相同である調製物を得るには、組換え体胞タンパク又はポリペプチドからNTNRαを精製する必要がある。第一段階として、培養培地又は可溶化液を遠心分離して粒状の細胞残屑を除去することができる。ついで、NTNRαを、汚染した可溶性タンパク質及びポリペプチドから、適切な精製手順の例である次の手順により精製することができる:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;免疫アフィニティー;エピトープタグ結合樹脂;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG−75を用いるゲル濾過;及びIgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラムである。
残基が欠失され、挿入され、又は置換されたNTNRα変異体は、その変異によってしばしば惹起された実質的な性質変化を考慮に入れて、天然配列NTNRαと同じようにして回収される。免疫親和性樹脂、例えばモノクローナル抗NTNRα樹脂を、少なくとも一つの残りのエピトープに結合させることによってNTNRα変異体を吸収するために用いることができる。
例えばフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)のようなプロテアーゼインヒビターもまた精製の間のタンパク分解を阻害するのに有用であり、偶発的な汚染物質の成長を防止するために抗生物質を含めることができる。
NTNRαポリペプチドの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。天然配列NTNRαとNTNRαのアミノ酸配列変異体の双方は共有結合的に修飾することができる。NTNRαの共有結合的修飾の一つの型は、NTNRαの標的アミノ酸残基を、N末端残基、C末端残基と反応できる有機誘導体形成試薬又は選択された側鎖と反応させることによって分子内に導入することができる。
システイニル残基は最も一般的にはα−ハロアセタート(及び対応するアミン)、例えば、クロロ酢酸又はクロロアセトアミドと反応し、カルボキシメチル又はカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。システイニル残基もまたブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスファート、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル−2−ピリジルジスルフィド、p−クロロ水銀ベンゾアート、2−クロロ水銀−4−ニトロフェノール、又はクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によって誘導体化される。
ヒスチジル残基はpH5.5−7.0でジエチルピロカルボナートとの反応によって誘導体化されるが、これは、この試薬がヒスチジル側鎖に対して相対的に特異的であるからである。パラ−ブロモフェナシルブロミドもまた有用である;この反応は、好ましくはpH6.0で0.1Mのカコジル酸ナトリウム中で行われる。
リジニル及びアミノ末端残基はスクシン又は他のカルボン酸無水物と反応させられる。これらの試薬を用いた誘導体形成は、リシニル残基の電荷を逆転させる効果を有する。α−アミノ含有残基を誘導体化する他の適当な試薬は、イミドエステル、例えば、メチルピコリンイミダート、リン酸ピリドキサル、ピリドキサル、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4−ペンタンジオン、及びグリオキシラートを用いたトランスアミナーゼにより触媒される反応である。
アルギニル残基は一あるいは幾つかの従来の試薬との反応によって修飾され、とりわけ、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン及びニンヒドリンがある。アルジニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基の高いpKaのために反応がアルカリ性条件下で行われることを必要とする。更に、これらの試薬はリジンの基並びにアルギニンのイプシロン−アミノ基と反応するかも知れない。
チロシル残基の特異的修飾は、芳香族ジアゾニウム化合物又はテトラニトロメタンとの反応によるチロシル残基内へのスペクトル標識の導入に特に興味を持って、なされる。最も一般的には、N−アセチルイミジゾールとテトラニトロメタンを使用して、それぞれがO−アセチルチロシル種と3−ニトロ誘導体を形成する。チロシル残基はラジオイムノアッセイ用の標識化タンパクを調製するために125I又は131Iを用いてヨウ素化され、クロラミンT法が適切である。
カルボキシル側基(アスパルチル又はグルタミル)がカルボジイミド(R−N=C=N−R’)(ここで、RとR’は異なったアルキル基)、例えば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド又は1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドとの反応によって選択的に修飾される。
二官能性試薬による誘導体形成は、抗NTNRα抗体を精製する方法に使用する水不溶性支持体マトリックス又は表面へのNTNRαの架橋に有用であり、又その逆も同様である。良く用いられる架橋剤は、例として、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4−アジドサリチル酸とそのエステル、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオナート)のようなジスクシンイミジルエステルを包含するホモ二官能性イミドエステル、及びビス−N−マレイミド−1,8−オクタンのような二官能性マレイミドを含む。メチル−3−[(p−アジゾフェニル)ジチオ]プロピオイミダートのような誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化中間体を生じる。また、臭化シアン活性化炭水化物のような反応性の水不溶性マトリックス及び米国特許第3969287号;3691016号;4195128号;4247642号;4229537号及び4330440号に記載されている反応性基質がタンパク固定に用いられる。
グルタミニル及びアスパラギニル残基はしばしば各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基にそれぞれ脱アミド化される。これらの残基は中性又は塩基性条件下で脱アミド化される。これらの残基の脱アミド化型は本発明の範囲内に入る。
その他の修飾は、プロリンとリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のαアミノ基のメチル化(T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, PP.79-86(1983))、N末端アミンのアセチル化及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
本発明の範囲内に含まれるNTNRαポリペプチドの共有結合的修飾の他のタイプは、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンを変更することを含む。変更とは、天然NTNRαに見出される一以上の炭水化物部分を欠失させ、及び/又は天然NTNRαに存在しない一以上のグリコシル化部位を付加することを意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)というトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチドの何れかが存在すると、可能性の有るグリコシル化部位が作り出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシルアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニン(5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンも又用いられるが)に、N−アセチルガラクトーサミン、ガラクトース、又はキシロースの糖の一つが結合することを意味する。
NTNRαポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、簡便には、アミノ酸配列を、それが一以上の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって達成される。この変化は、天然のNTNRα配列への一以上のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O結合グリコシル化部位の場合)。簡単にするには、NTNRαアミノ酸はDNAレベルでの変化によって、特にNTNRαポリペプチドをコードしているDNAを、所望のアミノ酸に翻訳するコドンが産生されるように予め選んだ塩基で突然変異することによって、好ましくは変更される。このDNA突然変異は、上記に記載され前掲の米国特許第5364934号に記載された方法を用いてなされる。
NTNRαポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、該ポリペプチドへのグリコシドの化学的又は酵素的結合による。これらの手順は、N結合又はO結合グルコシル化のためのグリコシル化能を有する宿主細胞中でポリペプチドを生産させる必要がないという点で有利である。用いられる結合様式に応じて、糖(一以上)は、(a)アルギニンとヒスチジンに、(b)遊離のカルボキシル基に、(c)遊離のスルフヒドリル基、例えばシステインのものに、(d)セリン、スレオニン又はヒドロキシプロリンのもののような遊離のヒドロキシル基に、(e)フェニルアラニン、チロシン又はトリプトファンのような芳香族残基、又は(f)グルタミンのアミノ基に結合される。これらの方法は1987年9月11日発行のWO87/05330及びAplinほか, CRC Crit. Rev. Biochem., 259-306(1981)に示されている。
NTNRαポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的になされる。化学的脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸、又は等価な化合物への該ポリペプチドの曝露を必要とする。この処理により、該ポリペプチドを無傷のまま残しながら、結合糖(N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)を除く殆ど又は全ての糖の開裂がなされる。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinほか, Arch. Biochem Biophys., 259:52(1987)及びEdgeほか, Anal. Biochem., 118:131(1981)により示されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的開裂は、Thotakuraほか, Meth. Enzymol., 138:350(1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを使用して達成することができる。
潜在的なグリコシル化部位でのグリコシル化は、Duskinほか, J. Biol. Chem., 257:3105(1982)によって記載されているように、化合物ツニカマイシンを使用して防ぐことができる。ツニカマイシンはタンパク質−N−グルコシド結合の形成を阻害する。
NTNRαの共有結合修飾の他のタイプは、米国特許番第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号又は第4179337号に記載されているように、NTNRαポリペプチドを、種々の非タンパク性ポリマーの一つ、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンに結合させることを含む。
変異体はここに教示するようにして検定することができる。例えば所定の抗体に対する親和性のような、NTNRα分子の免疫学的性質の変化は、競合型免疫アッセイによって測定することができる。例えばレドックス又は熱安定性、疎水性、タンパク分解の受けやすさ、又は担体との又はマルチマー内への凝集傾向のようなタンパク質又はポリペプチドの性質の他の潜在的な修飾は、従来からよく知られている方法によって検定することができる。
本発明は、異種性のポリペプチドと融合したNTNRαを含むキメラポリペプチドを包含する。キメラNTNRαはここに定義したNTNRαの変異体の一タイプである。一つの好ましい実施態様では、キメラポリペプチドは、抗タグ抗体又は分子が選択的に結合するエピトープを提供するタグペプチドとのNTNRαの融合体含む。エピトープタグは一般にNTNRαのアミノ又はカルボキシ末端に付与される。NTNRαのこのようなエピトープタグが付けられた形は、その存在をタグポリペプチドに対する標識抗体を用いて検出することができるので、望ましい。又、エピトープタグを供給すると、NTNRαを抗タグ抗体を用いてアフィニティー精製によって直ぐに精製することができる。抗体を含むアフィニティー精製法及び診断アッセイはここに後で記載する。
タグポリペプチドとその各抗体は従来から良く知られている。例には、fluHAタグポリペプチドとその抗体12CA5(Fieldほか, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165(1988));c−mycタグとそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体(Evanほか, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616(1985));及び単純ヘルペスウィルス糖タンパクD(gD)タグとその抗体が含まれる。Paborskyほか, Protein Engineering, 3(6):547-553(1990)。他のタグポリペプチドも開示されている。例には、フラッグ−ペプチド(Flag-peptide)(Hoppほか, BioTechnology, 6:1204-1210(1988));KT3エピトープペプチド(Matinほか, Science, 255:192-194(1992));αチューブリンエピトープペプチド(Skinnerほか, J. Biol. Chem., 266:15163-15166(1991));及びT7遺伝子10タンパクペプチドタグが含まれる。Lutz-Freyermuthほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397(1990)。ひとたびタグポリペプチドが選択されれば、それに対する抗体を、ここに開示した方法を用いて産生することができる。C末端ポリヒスチジン配列タグが好ましい。ポリヒスチジン配列は、例えば(Lindsayほか, Neuron 17:571-574(1996))記載されているようなNi−NTAクロマトグラフィーによってタグタンパクを単離することを可能にする。
エピトープタグNTNRαの作成と生産に適切な一般的方法は、これまでに開示したものと同じである。NTNRαタグポリペプチド融合体は、NTNRαをインフレームでコードしているcDNA配列をタグポリペプチドDNA配列に融合させ、適当な宿主細胞に結果のDNA融合作成物を発現させることによって最も簡便に作成される。通常は、本発明のNTNRαタグポリペプチドキメラを調製するときは、NTNRαをコードしている核酸を、タグポリペプチドのN末端をコードしている核酸にその3’端で融合させるが、5’融合も又可能である。
エピトープタグNTNRαは、抗タグ抗体を用いてアフィニティークロマトグラフィーによって簡便に精製することができる。アフィニティー抗体が付着される基質は非常に多くの場合アガロースであるが、他の基質も利用できる(例えば、調整穴明きガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼン)。エピトープタグ付きNTNRαは、例えばバッファーpH又はイオン強度を変化させ、あるいはカオトロピック(chaotropic)剤を添加することによってアフィニティーカラムから溶出させることができる。
適当な免疫グロブリン定常ドメイン配列(イムノアドヘシン)に連結した受容体配列から作成されるキメラが従来から知られている。文献において報告されているイムノアドヘシンは、T細胞受容体*(Gascoigneほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:2936-2940(1987));CD4*(Caponほか, Nature 337:525-531(1989));Trauneckerほか, Nature, 339:68-70(1989);Zettmeisslほか, DNA Cell Biol. USA, 9:347-353(1990);Byrnほか, Nature, 344:667-670(1990));L−セレクチン(ホーミングレセプター)((Watsonほか, J. Cell Biol., 110:2221-2229(1990));Watsonほか, Nature, 349:164-167(1991));CD44*(Aruffoほか, Cell, 61:1303-1313(1990));CD28*及びB7*(Linsleyほか, J. Exp. Med., 173:721-730(1991));CTLA−4*(Lisleyほか, J. Exp. Med 174:561-569(1991));CD22*(Stamenkovicほか, Cell, 66:1133-1144(1991));TNF受容体(Ashkenaziほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:10535-10539(1991);Lesslauerほか, Eur. J. Immunol., 27:2883-2886(1991);Peppelほか, J. Exp. Med., 174:1483-1489(1991));NP受容体(Bennettほか, Biol. Chem. 266:23060-23067(1991));及びIgE受容体α*(Ridgwayほか, J. Cell Biol., 115:abstr. 1448(1991))の融合物を含む。ここで星印(*)は受容体が免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであることを示している。
最も簡単で最も直接的なイムノアドヘシンの設計は、「アドヘシン」タンパク質の結合領域(一以上)を免疫グロブリン重鎖のヒンジ及びFc領域と結合させる。通常は、本発明のNTNRαイムノグロブリンキメラを調製するときは、NTNRαの細胞外ドメインをコードしている核酸が、免疫グロブリンの定常ドメイン配列のN末端をコードしている配列に融合されるが、N末端融合も又可能である。
典型的には、そのような融合では、コードキメラポリペプチドは、免疫グロブリンの重鎖の少なくとも機能的に活性なヒンジ及び定常領域のCH2及びCH3ドメインを保持する。融合はまた定常ドメインのFc部分のC末端、又は重鎖のCH1のN末端に直ぐ、又は軽鎖の対応する領域になされる。
融合がなされる正確な部位は重要ではない;特定の部位は、良く知られており、NTNRα免疫グロブリンキメラの生物学的活性、分泌又は結合特性を最適化するために選択することができる。
いくつかの実施態様では、WO91/08298に例証されているように、NTNRα免疫グロブリンキメラは、モノマー、又はヘテロ−又はホモ−マルチマー、そして特にはダイマー又はテトラマーとして構築される。
好ましい実施態様では、NTNRα細胞外ドメイン配列は、免疫グロブリンの効果機能、例えば免疫グロブリンG1(IgG1)を含む、抗体(特にFcドメイン)のC末端部分のN末端に融合される。NTNRαの細胞外ドメイン配列に全重鎖定常領域を融合させることができる。しかしながら、より好ましくは、パパイン切断部位(化学的にIgGFcを定める;重鎖の定常領域の最初の残基を114として残基216、又は他の免疫グロブリンの類似の部位)の丁度上流側のヒンジ領域に始まる配列が融合に用いられる。特に好ましい実施態様では、NTNRαアミノ酸配列はIgG1、IgG2又はIgG3重鎖のヒンジ領域及びCH2及びCH3、又はCH1、ヒンジ、CH2及びCH3領域に融合される。融合がなされる正確な部位は重要ではなく、最適な部位は日々の実験で決定することができる。
いくつかの実施態様では、NTNRα免疫グロブリンキメラは、マルチマー、特にホモダイマー又はテトラマーとして構築される。一般には、これらの構築免疫グロブリンは既知の単位構造を有している。基本的な4鎖の構造単位はIgG、IgD及びIgEが存在する形である。4つの単位がより大なる高分子量の免疫グロブリンにおいて繰り返される;IgMが一般にジスルフィド結合によって一緒になる4単位に対して基本的なペンタマーとして存在する。IgAグロブリン、そして時折IgGグロブリンは又血清中にマルチマー形で存在する。マルチマーの場合は、各4単位は同一でも異なっていてもよい。
又、NTNRα細胞外ドメイン配列は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の間に、キメラ重鎖を含む免疫グロブリンが得られるように、挿入することができる。この実施態様では、NTNRα配列は、ヒンジとCH2ドメインの間か、CH2とCH3ドメインの間において、免疫グロブリンの各アームの免疫グロブリン重鎖の3’末端に融合される。同様の作成物はHoogenboomほか, Mol. Immunol., 28:1027-1037(1991)によって報告されている。
免疫グロブリンの軽鎖の存在は本発明のイムノアドヘシンでは必要とされないが、免疫グロブリン軽鎖が、NTNRα免疫グロブリン重鎖融合ポリペプチドに関連して共有結合的か、あるいはNTNRα細胞外ドメインに直接的に融合されて存在するかもしれない。前者の場合には、免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAがNTNRα免疫グロブリン重鎖の融合タンパクをコードしているDNAと典型的には同時発現される。分泌時には、ハイブリッド重鎖と軽鎖が共有結合的に結合して、2つのジスルフィド結合免疫グロブリン重鎖−軽鎖対を含む免疫グロブリン様構造を提供する。このような構造の調製に適切な方法は、例えば1989年3月28日に発行された米国特許第4816567号に開示されている。
好ましい実施態様では、本発明のイムノアドヘシンの作成に用いられる免疫グロブリン配列は、IgG免疫グロブリン重鎖定常ドメインからのものである。ヒトイムノアドヘシンに対して、IgG1とIgG3の免疫グロブリン配列の使用が好ましい。IgG1を用いる主な利点は、IgG1イムノアドヘシンが固定タンパクAで効率的に精製できることである。これに対して、IgG3の精製には、著しく用途が少ない培地であるタンパクGが必要である。しかしながら、免疫グロブリンの他の構造的及び機能的性質を、特定のイムノアドヘシン作成のIg融合パートナーを選択するときは考慮するべきである。例えば、IgG3のヒンジはより長く、よりフレキシブルであり、IgG1に融合されるとき、適切に機能しなかったり折りたたまれないより大きなアドヘシンドメインを収容することができる。他に考慮することは結合価である;IgGイムノアドヘシンは2価のホモ二量体であり、IgAとIgMのようなIgサブタイプはそれぞれ基本的Igホモ二量体単位の二量体又は五量体構造になる。インビボでの応用に設計されたNTNRαイムノアドヘシンについては、Fc領域によって特定される薬物動態学的性質と効果機能も又重要である。IgG1、IgG2及びIgG4は全て21日のインビボ半減期を有するが、補体系を活性化するその相対的な効力は異なっている。IgG4は補体を活性化せず、IgG2はIgG1よりも補体活性が有意に弱い。更に、IgG1とは異なり、IgG2は単核細胞又は好中球のFc受容体に結合しない。IgG3は補体活性には最適である一方、そのインビボの半減期は他のIgGアイソタイプのおよそ1/3である。ヒトの治療に用いられるように設計されたイムノアドヘシンの他の重要な考慮事項は、特定のアイソタイプのアロタイプ変異体の数である。一般に、血清学的に定義されたアロタイプがより少ないIgGアイソタイプが好ましい。例えば、IgG1は血清学的に定義されたアロタイプ部位を4つだけ有し、その内の二つ(G1mと2)がFc領域に位置している;そしてこれらの部位の一つG1m1は非免疫原生である。これに対して、IgG3には12の血清学的に定義されたアロタイプがあり、その全てがFc領域にある;これらの部位の3つ(G3m5、11及び21)が非免疫原生である一つのアロタイプを持っている。従って、γ3イムノアドヘシンの潜在的な免疫原生はγ1イムノアドヘシンのそれよりもより大きい。
親の免疫グロブリンに関しては、有用な結合点は、2つの重鎖の間のジスルフィド結合を形成するヒンジのシステインの丁度上流である。頻繁に用いられる設計では、分子のNTNRα部分のC末端残基のコドンがIgG1ヒンジ領域の配列DKTHTCPPCPのコドンの直ぐ上流に位置される。
イムノアドヘシンの作成と発現に適した一般的な方法は、NTNRαに関してこれまでに開示したものと同じである。NTNRαイムノアドヘシンは、NTNRα部分をインフレームでコードしているcDNAをIgcDNA配列に融合させることによって最も簡便に作成される。しかしながら、ゲノムIg断片への融合も又用いることができる(例えばGascoigneほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:2936-2940(1987);Aruffoほか, Cell, 61:1303-1313(1990);Stamenkovicほか, Cell, 66:1133-1144(1991)を参照のこと)。後者の融合タイプは、発現にIg制御配列の存在を必要とする。IgG重鎖定常領域をコードしているcDNAは、ハイブリッド形成法又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって脾臓又は末梢血リンパ球から由来するcDNAライブラリからの発表された配列に基づいて単離できる。NTNRαとイムノアドヘシンのIg部分をコードしているcDNAは、選択された宿主細胞において効果的な発現を方向付けるプラスミドベクター内に直列に挿入される。哺乳動物の細胞における発現では、pRK5−系ベクター(Schallほか, Cell. 61:361-370(1990))及びCDM8系ベクター(Seedほか, Nature, 329:840(1989))を用いることができる。正確な接合部は、オリゴヌクレオチド特異的欠失変異誘発を用いて設計接合部コドン間の余分の配列を除去することによってつくられる(Zollerほか, Nucleic Acids Res., 10:6487(1982);Caponほか, Nature, 337:525-531(1989))。各半分が所望の接合部の何れかの側の配列と相補的であり;理想的には36ないし48マー(mer)である合成オリゴヌクレオチドを用いることができる。又、PCR法を用いてインフレームの分子の2つの部分を適当なベクターと結合させることができる。
NTNRαイムノアドヘシンの発現に対しての宿主株化細胞の選択は、主に発現ベクターに依存する。他の考慮事項は必要とされるタンパク質の量である。ミリグラム量をしばしば一過性トランスフェクションによってつくることができる。例えば、アデノウィルスEIA形質転換293ヒト胚腎臓株化細胞は効果的なイムノアドヘシンの発現を可能にする修正リン酸カルシウム法によってpRK5系ベクターで過渡的にトランスフェクトされうる。CDM8系ベクターはDEAEデキシトラン法によってCOS細胞をトランスフェクトするために用いることができる(Aruffoほか, Cell, 61:1303-1313(1990);Zettmeisslほか, DNA Cell Biol. US, 9:347-353(1990))。もし多量のタンパク質が所望されるならば、イムノアドヘシンは、宿主株化細胞の安定名トランスフェクションの後に発現することができる。例えば、pRK5系ベクターはジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードしG418に対する抵抗性を付与する更なるプラスミドの存在下デチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞内に導入することができる。G418に対して抵抗性のあるクローンが培養において選択できる;これらのクローンは増加量のDHFR阻害薬であるメトトレキセートの存在下で成長させられる;イムノアドヘシン配列とDHFRをコードしている遺伝子コピーの数が共に増幅されるクローンが選ばれる。もしイムノアドヘシンがそのN末端に疎水性のリーダー配列を含んでいれば、トランスフェクション細胞によってプロセシングされて分泌される。更に複雑な構造のイムノアドヘシンの発現には、独特の適した宿主細胞が必要となる;例えば、軽鎖又はJ鎖のような成分がある種のミエローマ又はハイブリドーマ宿主細胞によって提供される(Gascoigneほか, 1987, 上掲, Martinほか, J. Virol., 67:3561-3568(1993))。
イムノアドヘシンはアフィニティークロマトグラフィーによって簡便に精製することができる。アフィニティーリガンドとしてのタンパクAの適切性は、キメラに用いられる免疫グロブリンのFcドメインのアイソタイプと種に依存する。タンパクAは、ヒトのγ1、γ2、又はγ4の重鎖に基づくイムノアドヘシンを精製するために用いることができる(Lindmarkほか, J. Immunol. Meth., 62:1-13(1983))。タンパクGは全てのマウスのアイソタイプ及びヒトのγ3に対して推奨される(Gussほか, EMBO J., 5:1567-1575(1986))。アフィニティーリガンドが付着する基質は、最も頻繁にはアガロースであるが、他の基質も利用できる。機械的に安定な基質、例えばコントロール穴明きガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースで達成できるよりもより速い流量とより短いプロセス時間を可能にする。タンパクA又はGアフィニティーカラムにイムノアドヘシンを結合させる条件は、Fcドメインの特性によって完全に支配される;すなわち、その種とアイソタイプに支配される。一般には、適切なリガンドが選ばれた場合には、効果的な結合が無条件培養流体から直接的に生じる。イムノアドヘシンの一つの目立つ特徴は、ヒトのγ1分子に対しては、タンパクAに対する結合能力が同じFc型の抗体に対していささか消失する。結合性イムノアドヘシンは酸性のpH(3.0あるいはそれ以上)か、あるいは穏やかにカオトロピックな塩を含む中性pHのバッファー中で効果的に溶出され得る。このアフィニティークロマトグラフィーの工程により、純度が>95%であるイムノアドヘシン調製物を得ることができる。
プロテインA又はGについてアフィニティークロマトグラフィーの代わりに、又はそれに加えて、従来知られている他の方法もイムノアドヘシンを精製するために用いることもできる。イムノアドヘシンは、チオフィリック(thiophilic)ゲルクロマトグラフィー(Hutchensほか, Anal. Biochem., 159:217-226(1986))と固定金属キレート(Al-Mashikhiほか, J. Dairy Sci., 71:1756-1763(1988))における抗体と同様に挙動する。しかしながら、抗体とは異なり、イオン交換カラムでの挙動は、それらの等電点によってばかりではなく、そのキメラ性により分子内に存在する双極子電荷によっても又支配される。
所望されるならば、イムノアドヘシンは二特異性(bispecific)とされ得る。従って、本発明のイムノアドヘシンは、NTNRαの細胞外ドメインと、他のサイトカイン又は神経栄養因子受容体サブユニットの、細胞外ドメインのようなドメインを組合せることもできる。そのような二特異性イムノアドヘシン分子が作られ得る例示的なサイトカイン受容体としては、TPO(又はmplリガンド)、EPO、G−CSF、IL−4、IL−7、GH、PRL、IL−3,GM−CSF、IL−5,IL−6,LIF、OSM、CNTF、GDNF及びIL−2受容体が含まれる。二特異性分子には、抗体様構造の一つの腕にキメラ抗体の重鎖を、他の腕にキメラ抗体の重鎖−軽鎖対を含んでなるトリマー分子が、精製の容易性のために有利である。10のテトラマーの混合物をつくる、二特異的イムノアドヘシンの生産に伝統的に用いられる抗体生産クアドローマとは対照的に、トリマーイムノアドヘシン構造の3つの鎖をコードしている核酸でトランスフェクトされた細胞が3つの分子だけの混合物をつくり、この混合物からの所望の生成物の精製が従ってより容易である。
NTNRαタンパク質とNTNRα遺伝子は、NTN活性に関連するあるいはNTN応答性が有益となる疾病あるいは疾患の治療において、哺乳動物、特にヒトに投与するエクスビボ又はインビボでの治療用途があると考えられる。出典を明示して特にここに取り込まれるKotzbauerほか(Nature 384:467-470(1996))を参照されたい。本発明の実施態様での治療で特に受け入れられる症状は、Retの発現に関与するもの又はRet活性化が有益となるもの、特にRetによって媒介される下流経路のものである。TreanorほかNature 382:80-83(1996);JingほかCell 85:1113-1124(1996);TruppほかNature 381:785-789(1996);及びDurbecほかNature 381:789-793(1996)を参照されたい。特に好ましいものは、神経性障害、好ましくは中枢神経系障害、腎臓の障害、脾臓に関連する造血障害、及び腸内神経系障害である。患者には本発明の有効量のNTNRαタンパク質、ペプチド断片又は変異体が投与される。治療方法は、NTNRα、NTNRαアゴニスト(例えばNTN)、(内因性NTNと競合しこれを結合するがRetを活性化しない)NTNRαアンタゴニスト、抗NTNRα抗体を投与することを含む治療方法も本発明の範囲内にあある。本発明は、またNTNRαタンパク質、ペプチド断片、又は誘導体を適切な薬理的担体中に含有する製薬組成物をも提供する。NTNRαタンパク質、ペプチド断片、又は変異体は全身的にあるいは局所的に投与することができる。ここに教示した方法に適用できるが、受容体タンパク質は、必要に応じて、NTN又は他のNTNRαリガンドの前に、後に、あるいは好ましくは同時に(又は複合して)投与することができる。ここに教示されているように、NTNRαはNTNが存在しない標的細胞に設けて、続いて投与されるNTN又はNTNアゴニストに対するこれらの細胞の応答性を増加させることができる。
ある状態では、NTN(又は他のNTNRαリガンド)の応答性の増大が有益となり得る。従って、そのような症状を患っている患者の細胞内におけるNTNRαの数及び結合親和性を増大させることが有益であり得る。これは、可溶性のNTNRα、必要に応じてNTNRαリガンド、好ましくはNTNで複合化されたものの投与によって、あるいはNTNRαをコードしている核酸を用いる遺伝子療法によって、達成することができる。適当な細胞中における組換えNTNRαの選択的発現は、組織特異性又は誘発性のプロモータによって調節されたNTNRα遺伝子を用いて、あるいは組換えNTNRα遺伝子を担持する複製欠陥ウィルスでの局所的感染をつくりだすことによって達成することができる。NTNに対して感受性が増加すると有益である症状は、限定するものではないが、筋萎縮性側索硬化症、ヴェルディヒ−ホフマン病、慢性近位脊柱筋萎縮、そしてギラン−バレ症候群を含む運動ニューロン疾患である。更なる症状は、交感神経細胞に関与するもの、特に増加した生存又はNTN応答性が望ましいものである。ドーパミン作動性ニューロンを含む、中枢神経系ニューロンと、末梢感覚神経を含む、感覚神経の増加した生存又はNTN応答性が望ましい症状が、本発明の実施態様により好適に治療される。従って、糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー病、及びハンチントン舞踏病に伴う神経性疾患の治療がここで提供される。NTNはパーキンソン病の治療に特定の用途が見出される。本方法は、NTNRαを発現する非神経細胞に関連した症状にもまた適用できる。実際、NTNRαはRetを活性化するので、Ret発現細胞におけるRet活性経路に関連する症状を本発明の実施態様で治療することができる。
神経細胞及び/又はその軸索突起の生存又は機能が妥協されるならば、疾病又は医療疾患は神経損傷であると考えられる。そのような神経損傷は、結果的な症状として含まれるものは:(a)身体的損傷で、損傷部位の近くの軸索突起及び/又は神経細胞体の変性を引き起こすもの;(b)脳卒中のような虚血;(c)癌及びエイズの化学療法薬、例えばシスプラチン及びジデオキシチジン(ddC)のような、神経毒への暴露;(d)糖尿病又は腎不全のような慢性代謝病;及び(e)パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のような神経変性疾患で、これらは特定のニューロン集団の変性をもたらす。神経損傷に関与する症状は、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、糖尿病性多発神経障害、中毒性神経症、及び神経系の物理的損傷、例えば脳及び脊髄の物理的損傷又は腕及び手又は身体の他の部分の座滅又は切創によって惹起されるものであり、脳卒中におけるように神経系の部分への血流の一次的又は永久的休止を含む。
NTNRα遺伝子は、筋肉細胞及び関連するニューロンに発現される。従って、本発明は、本発明の組成物をそのような治療を必要としている患者に投与することを含んでなる、NTNR発現筋肉細胞疾患を治療する方法を提供する。このような治療が有益な筋肉細胞疾患は、限定するものではないが、次の進行性筋ジストロフィー:デュシエーヌ、ベッカー、エメリー−ドライフス、ランドジー−デジェリーヌ、肩甲上骨、肢帯、フォン・グラッフェ−フュクス(Von Graefe-Fuchs)、眼咽頭、筋緊張性及び先天性の筋ジストロフィーを含む。加えて、このような分子は、先天性(中央コア(central core)、ネマリン、中心核及び先天性線維型不均衡)及び後天性(毒性、炎症性)ミオパシーの治療に使用できる。本発明は、有効量のNTNRαタンパク質又はその活性部分を患者に投与することを含んでなる、筋肉細胞疾患を治療する方法を更に提供する。
本発明の更なる実施態様では、NTNRα遺伝子をコードしている領域に対応するアンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチドの有効量を投与することによって、過剰のNTNR、NTNに対する過敏症、過剰のNTN等々を煩っている患者を治療することができる。
本発明の化合物と方法は、造血細胞の減少に関連した症状に使用することができる。これらの疾病の例としては、貧血(大球性及び再生不良性貧血を含む);血小板減少症;発育不全;播種性血管内血液凝固(DIC);脊髄形成異常;免疫(自己免疫)血小板減少性紫斑病(ITP);及びHIV誘発ITPがある。また、NTNRα分子は、骨髄増殖性疾患並びに炎症症状からの血小板増多症の治療及び鉄分不足に有用である。造血細胞増殖の増大を導くNTNRαポリペプチド及びNTNRα遺伝子は、化学又は放射線療法もしくは骨髄移植療法を受けた細胞における成熟血球系列の再増殖を高めるために使用することもできる。一般に、NTNRα分子は造血細胞の増殖及び/又は分化(しかし特に増殖)を高めるものと期待される。好ましい実施態様は、脾臓で生じる造血を高める治療法を提供する。
NTNRα及びNTNRα遺伝子の他の可能性の有る治療用途は、腎臓又は肝臓細胞の成長、生存及び修復を促進する治療を含む。例えば、急性腎不全はそれまでに正常な腎機能の突然の破壊を意味する。この深刻な臨床症状は、循環系の不全(ショック)、血管妨害、糸球体腎炎、尿流閉塞を含む非常に広範なメカニズムから生じうる。急性腎不全はしばしば腹部又は又は血管手術の合併症として生じる。又、出生前の継続した改善による肺と心臓問題を克服して生存する少ない出生時体重のハイリスク新生児は、感染又は薬物毒性によって惹起される急性腎不全の合併症によって死亡しうる。特に臨床的に重要であるのは、外傷、敗血症、術後の合併症、又は投薬、特に抗生物質に関連する急性腎不全の場合である。特に、本発明の化合物は、腸内神経系又は腎臓系の不全に直接的に又は間接的に関連する病因学に使用用途がある。GIに影響する特定の症状は、これに限定するものではないが、噴門痙攣、食道スパスム、強皮症(食道の平滑筋部分の筋萎縮、食道本体部の下方2/3の収縮の弱さ、及び食道下方の括約筋の機能不全に関連し、又免疫抑制剤での治療によっても引き起こされる)、十二指腸潰瘍のような疾患、ゾリンガー−エリソン症候群(遺伝子因子、喫煙、神経的影響を含む因子によって引き起こされる酸過多)、胃酸過多、吸収不全症、例えば胃アトニー、吐き気、嘔吐などが少なくとも部分的に交感/副交感神経系の不全に関連している糖尿病(及び副甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、及び副腎不全)を含む。更なる疾患は、憩室症/憩室炎;ハーシュスプラング病(通常は肛門に近い遠位結腸の小セグメントにおける神経節細胞の不在によって引き起こされる先天性疾患(マイスナー及びアオエルバッハの神経叢)で、典型的には乳児にみられ、深刻でない場合は、青年期又は成人期初期になるまで診断されない);他の型の巨大結腸症(ハーシュスプラングのものは巨大結腸のタイプである);腸の筋層の交感神経支配の異常による深刻な運動性異常であり、強皮症、糖尿病、アミロイド症、他の神経性疾患、薬物又はセプシスから起因する急性又は慢性の仮性腸閉塞;及び患者に精神遅滞又は神経性疾患を持つ患者に深刻な問題であり、寄与因子が不順な腸運動性である慢性便秘を含む。更なる症状は、限定するものではないが、腸内神経系の明確な破壊による脊髄機能不全;ギライン・バレ症候群;多発性硬化症;パンディソウトノミア(Pandysautonomia)(自律神経系の機能不全);振せん麻痺(不順な胃腸運動をしばしば伴う);特徴として不順な腸運動を持つと文献で報告されている多発系萎縮症(Multiple System Atrophy)(シャイドレーガー症候群);及びニューロパチーによって現れ、しばしばGI運動性障害を伴う拡散性疾患であるポリフィリン及びアミロイド症を含む。
NTNR発現又はNTN応答性組織の壊死又は損傷は、微生物又はウィルス感染による壊死、例えば、ウィルス性肝炎、結核、腸チフス熱、野兎病、ブルセラ病、黄熱病等、又はショック、心臓発作等から起因する虚血症による壊死、又は薬物及び毒性物質、例えば化学療法、クロロホルム、四塩化炭素、亜リン酸中毒等のようなでの急性又は慢性反応による壊死を含む。ここに教示されるように、本発明の組成物と方法は、腎臓を神経支配する神経細胞と腎臓上皮細胞のような腎臓細胞のものを含む細胞成長促進によって腎臓疾患を治療するのに有用である。本発明の組成物と方法は腎臓損傷の修復をなさしめる。理論に限定されるのものではないが、神経支配ニューロンを含む腎細胞を刺激して成長させ分割することによって直接的又は間接的にこれが達成できると考えられる。従って、ここに開示したNTNRαアゴニスト(例えばNTNと複合化されていてもよい可溶性NTNRα)を、薬理学的に許容可能な担体又は更なる成長因子もしくはサイトカインと必要に応じて組合せて、調製し、該組成物に腎臓組織を接触させる腎臓組織を再生する方法が提供される。該組成物の治療的量が投与される。局所的注射又は移植片が好ましい移送(送達)方法である。又は、損傷した腎臓を除去し、エクスビボで処理し、腎臓の修復後に宿主に戻すこともできる。
NTNを含むNTNRαアゴニストは、血液透析の間に投与することができる。血液透析は、血液から毒素を抽出又は分離する目的で患者から血液を一時的にとり、同じ患者に清浄血液を戻すこととして定義される。血液透析は、腎臓機能障害又は不全が存在する患者、すなわち血液が腎臓によって適切に又は十分に清浄化されていない(特に水分を除去する)場合に指示される。慢性的な機能障害の場合は、透析は繰り返す形で実施されなければならない。例えば、腎臓移植が可能ではなかったり、禁忌支持されている末期の腎臓疾患では、患者は年に約100から150回透析を受けなければならない。これは、患者の残りの人生にわたって活発な血液透析をなすために数千回血流へのアクセスがなされるという結果になる。
本発明は腎障害の副作用を有する免疫抑制療法に使用できる。例えば自己免疫反応を抑制するように構成された方法によるヒトにおけるIDDMの治療に使用できる。糖尿病にシクロスポリンAを用いた治療は腎障害をもたらす可能性がある。本発明は腎障害となりうる疾患もしくは症状に使用できる。例えば、糖尿病は腎臓における血管の遅発性障害をもたらすことがある。
他の例としては、例えば、糸球体腎炎、急性腎不全、移植の拒絶反応やネフローゼ性物質による腎障害、腎臓移植、腎臓の毒性障害等の免疫学的に又は非免疫学的に発生する腎臓病がある。更に、本発明は、移植時にドナーから除核した臓器が無事運ばれることを保証するために臓器を保管し、移植手術までに問題が発生することを避け、該臓器が良い状態で保存されることを保証する臓器輸送体等を含み、臓器移植に有用である。好適な臓器はNTNR保持又はNTN応答性細胞を有するものである。特定の一実施態様では、臓器は腎臓である。NTNを含むNTNRαアゴニストの使用や処置では、腎臓機能の維持の成功を保証する。
ここで述べるように、本発明の目的は機能障害性胃腸筋又は身体の他の部位に平滑筋障害を有する哺乳類の治療方法を提供するである。胃腸筋は他の部位の筋肉とは非常に異なる形で組織化され、制御される。胃腸管の骨格筋及び平滑筋は両方とも、運動、分泌及び吸収を含む消化プロセスを全面的に制御し、胃腸壁内に存在する非常に複雑な神経や筋肉のネットワークである腸神経系の支配下にある。腸神経は、神経叢と称する、相互接続するネットワークに組織化されている。この内、円形筋層と縦筋層の間に位置する腸筋層間神経叢が胃腸運動の主調節機構である。(迷走性及び交感性経路を介して)中央神経系及び局所的反射経路から信号を受ける。抑制的及び興奮性信号を両方隣接する筋に出力する。よって、胃腸管の筋肉緊張を制御する最終的神経経路は腸筋層間神経叢の神経細胞である。胃腸管における総合的筋肉活動が、一方は筋肉を(主にアセチルコリンによって)短縮させ、他方は弛緩させる腸筋層間神経叢内の二つの神経系の対向する作用のバランスによるものと見なすと分かり易い。しかし、両種類の神経細胞とも腸筋層間神経叢内のアセチルコリンによって活動する。つまり、胃腸筋緊張の制御におけるアセチルコリンの役割は複雑である。筋肉の近辺でエフェクター神経から直接放出されるアセチルコリンは弛緩させるが、神経叢内では抑制作用又は興奮作用を引き起こす。それに対して、胃腸管外の骨格筋は中央神経系の神経によって直接支配される。胃腸管外の骨格筋における神経と筋肉との相互作用は遥かに単純であり、神経がアセチルコリンを放出すると、それが筋肉を弛緩させる。最後に、胃腸管の筋緊張において腸筋層間神経叢が多分最も重要であるが、決定要因はそれだけではない。実は、基礎平滑筋緊張は、神経活動の他に内因性(筋原性)緊張や循環性ホルモンを含む様々な因子の総合作用によるものと見なすことができる。胃腸平滑筋のインビトロ調製に対するボツリヌス毒素の効果に関して孤立した報告があるが、胃腸筋の調節は非常に複雑で、ヒト又は生存動物において(ボツリヌスのような毒素を使用することにより)神経伝達物質放出を阻害という生理学的な結果は本発明のなされる前では予想できなかった。本発明はアカラシア、下部食道括約筋の他の障害、オッディ括約筋機能不全、刺激反応性腸管症候群(irritable bowel syndrome)及び他の障害等を含む胃腸障害を治療するための組成物、方法及びデバイスを提供する。
例えば、腸の習性の変化、腹痛及び検出可能な病理の非存在を特徴とする運動疾患である刺激反応性腸管症候群(IBS)の治療方法を提供する。IBSは、精神的因子やストレスを伴う状況等によってかなり影響されるその症状によって認識できる。胃腸科に訪れる患者の内20%から50%がIBSに悩まされている。それ以外正常に思われる人の内、約14%にIBSの症状が現れる。この症候群は、同様に発現する複数の疾患から成っている。IBSの主な症状(腸の習性の変化、腹痛及び鼓脹)は腸内の運動性の増加や胃酸の過剰分泌の発現である。胃腸管の活動は、副交感性及び交感性神経支配を介して中央神経系(CNS)、及び胃腸管自体に存在する腸神経系(ENS)によって神経的に調節される。
他の側面では、内在性NTNRαレベルが低いか欠損のNTNRα遺伝子を有する哺乳類に、好ましくはそのようなレベルの低下が病理学的疾患を引き起こすおそれがある場合やNTNRα及びRetの活性がない場合に、NTNRαを投与する。これらの実施形態では、全長のNTNRαを患者に投与する場合、遺伝子療法で受容体をコードしている遺伝子を患者に投与することが考えられる。
遺伝子療法では、例えば欠損の遺伝子を交換するために、治療に効果的な遺伝子産物のインビボ合成の目的で細胞内に遺伝子を導入する。遺伝子療法とは、一度の処理で持続する効果を得る従来の遺伝子療法も、治療に効果的なDNA又はmRNAを一度又は何度も投与する遺伝子治療剤投与法も含む。アンチセンスRNA及びDNAは、インビボで特定の遺伝子の発現を阻止する治療剤として利用できる。短かいアンチセンスオリゴヌクレオチドは細胞内に導入すると、細胞膜への取り込み制限により、細胞内濃度が低いにも関わらず、抑制剤として機能することは既に発表済みである(Zamecnikら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,83:4143-4146(1986))。オリゴヌクレオチドは、例えば陰性リン酸ジエステル基を無荷電基で置換することで、取り込みを増強するように変更できる。
生細胞に核酸を導入する方法は様々である。それら方法は、試験管内で培養細胞内にトランスフェクトするか宿主の細胞内に生体内でトランスフェクトするかによって異なる。試験管内で哺乳類細胞に核酸をトランスフェクトするのに適する方法として、例えばリポソームの使用、電気穿孔法、微量注入、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法等がある。現在好まれている生体内遺伝子転移法としては、ウイルス(通常レトロウイルス)ベクターを用いた形質移入やウイルス性コートタンパク質−リポソーム形質移入(Dzauほか, Trends in Biotechnology, 11:205-210(1993))等がある。状況によっては、例えば細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異性を有する抗体や標的細胞上の受容体に対するリガンド等、標的細胞をターゲットする薬剤を核酸源に設けることが好ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質と結合するタンパク質、例えば特定の細胞型に対して向性であるキャプシドタンパク質又はその断片、サイクリングの際に内部移行するタンパク質の抗体、及び細胞内局所性をターゲットし、細胞内半減期を延長するタンパク質等をターゲティング及び/又は取り込みを容易化するために使用できる。受容体介入エンドサイトーシス法は、例えばWuほか, J. Biol. Chem, 262:4429-4432(1987)及びWagnerほか, Proc. Natl. Acad Sci. USA, 87:3410-3414(1990)に記載されている。現在知られている遺伝子マーキング及び遺伝子治療プロトコルについてはAndersonほか, Science, 256:808-813(1992)を参照。
本発明はNTNRα活性に対するアンタゴニスト(例えばNTNRαアンチセンス核酸、中和抗体)も提供する。増加又は過剰レベルの内在性NTNRα活性を有する哺乳類に、特にそのような増加又は過剰レベルのNTNRα又はRet活性が病理的障害をもたらす可能性がある場合、NTNRαアンタゴニストを投与することが考えられる。
一実施態様では、体内で内在性リガンドを結合するためにNTNRαアンタゴニスト分子を用い、特に血清内のNTNリガンドレベルが正常の生理的レベルを越えている場合に、非感受性のNTNRαをNTNリガンドに応答するようにする。また、望まれない細胞応答(例えば腫瘍細胞の増殖)を活性化している内因性NTNリガンドを結合するのに有用である。
可溶性NTNRαの医薬組成物は、更にNTN又は他のNTNRαアゴニストも含むことが可能である。NTNの半減期を延長すること、NTNの遅放性リザーバを設けること、内在性NTNRα又はRetを活性化すること、及び/又はNTNRαに欠ける標的Ret発現性細胞にそれを補充し、その細胞をNTNに応答するようにすることが治療的に効果的であれば、このような例えばNTN/NTNRα複合体等を含む二成分組成物は有利である。
NTNRαの治療用製剤は、所望の純度のNTNRαを、凍結乾燥ケーキ又は水溶液の形態の生理的に許容できる担体、賦形剤又は安定剤と任意に混合する(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A., Ed., (1980))ことにより調製され保管される。許容できる担体、賦形剤又は安定剤は、適用する投与量及び濃度では受給者にとって無毒性のものを意味し、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液、アスコルビン酸等の抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性重合体、グリシン、グルタミン、アスニパラギン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸、グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類又は他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール類、ナトリウム等の塩基形成対イオン及び/又はトゥィーン(tween)、プルロニックス(pluronics)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤等を含む。
また、NTNRαは、コアセルベーション法や界面重合法によって得た(例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル等)、コロイド薬剤送達系(例えば、リポソーム・アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子又はナノカプセル等)、又はマクロエマルション中に封入することもできる。このような方法はRemingtonのPharmaceutical Sciences(上掲)に開示されている。
インビボ投与に使用するNTNRαは無菌性であることが必要である。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、無菌の濾過膜で濾過することで容易に実施できる。NTNRαは通常凍結乾燥状態又は溶液内で保存する。
NTNRαの治療用組成物は、通常は無菌のアクセスポートを有する容器、例えば静脈内溶液袋又は皮下用注射針で貫通可能のストッパを有するバイアル等の中に設ける。
NTNRαの投与経路は周知の方法に従い、例えば特定の場合について上述する経路や静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内又は病巣内注射又は注入等の一般的経路や下記の徐放系等がある。NTNRαは、連続的に注入するか又は大量瞬時注射することで投与する。一般に、病状が許すならば、NTNRαを部位特異性送達用に製剤し、投与するべきである。投与法は、連続的又は定期的のいずれであっても良い。投与法は、定常運動又はプログラマブル流量の埋込み式ポンプ、又は定期的注射によって実施できる。
徐放性製剤の好適な例としては、タンパク質を含む固体疎水性重合体の半透過性マトリックスがあり、マトリックスはフィルム状又はマイクロカプセル状等の形付けられた物である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、Langerほか, J. Biomed. Mater. Res., 15:167-277(1981)及びLanger, Chem. Tech., 12:98-105(1982)に記載されているヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)等)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidmanほか, Biopolymers, 22:547-556(1983))、非分解性エチレン−酢酸ビニル(上記Langerほか)、Lupron Depot(商標)(乳酸−グリコル酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能な微粒子)等の分解性乳酸−グリコル酸共重合体及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133988)等がある。
エチレン−酢酸ビニルや乳酸−グリコール酸等の重合体は100日以上分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。カプセル化タンパク質は、長時間体内に残存すると、37℃で水分に曝されることで、変性又は凝集し、生理活性の喪失や免疫原生の変化のおそれがある。かかる機構によって安定性を得るための合理的な処置が考えられる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換による分子間S−S結合であることが分かったら、スルフヒドリル残基を変更し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を調整し、適当な添加物を使用し、特定の重合体マトリックス化合物を開発することで安定性を保証することができる。
NTNRαの徐放性組成物は、リポソーム的に取り込まれたNTNRαを含む。NTNRαを含有するリポソームは、それ自体周知である方法、例えば、DE 3,218,121、Epsteinほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688-3692(1985)、Hwangほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030-4034(1980)、EP52322、EP36676、EP88046、EP143949、EP142641、日本国特許出願83−1118008、米国特許第4485045号及び第4544545号、及びEP102324等による方法によって生成する。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モル%以上コレステロールであり、選択される割合が最適な治療法に対して調整された微小(約200-800オングストローム)な単層状のものである。
NTNRαは、局所的に適用する場合には、担体及び/又はアジュバント等の他の成分と適宜組み合わせる。それら他の成分の特徴については、生理的に許容でき、投与法に有効であり、組成物の主成分の活性を劣化しないものであれば特に限定しない。適切なビヒクルの例には、精製コラーゲンを伴うか伴わない、軟膏、クリーム、ゲル、又は懸濁液がある。組成物はまた経皮的パッチ、プラスター、及び包帯、好ましくは液体もしくは半液体状のものに含浸させることができる。
ゲル製剤を得るには、液体組成物として製剤したNTNRαを、局所的に塗布するために適した粘性のゲルを得るために有効な量でPEG等の水溶性多糖類又は合成重合体を混合することができる。使用可能な多糖類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルヒドロキシアルキルセルロースを含むエーテル化セルロース誘導体等のセルロース誘導体、デンプン又は分画デンプン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸塩、アラビアゴム、プルラン、アガロース、カラゲナン、デキストラン、デキストリン、フルクタン、イヌリン、マンナン、キシラン、アラビナン、キトサン、グリコゲン、グルカン、合成生体高分子、及びキサンタンゴム、グアルゴム、ローコストゴム、アラビアゴム、トラガカンスゴム又はカラヤゴム等のゴム類、又はそれらの誘導体又は混合物がある。ここで、ゲル化剤としては、生理系に対して無活性であり、無毒性であり、容易に製剤でき、薄すぎず、固すぎず、中に含まれるNTNRαを不安定化しないものが好ましい。
多糖類は好ましくはエーテル化セルロース誘導体であり、更に好ましくは、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のメチルセルロースやヒドロキシアルキルセルロースの誘導体のような明瞭に定まり、精製され、USPに掲載されたものである。この内メチルセルロースが最も好ましい。
ゲル化に有用なポリエチレングリコールは、典型的には適当な粘性を得るため低分子量PEGと高分子量PEGの混合物である。例えば、分子量400-600のPEGと分子量1500のものとの混合物は、ペーストを得るのに妥当な割合で混合するとこの目的には有効である。
多糖類やPEGについて適用される「水溶性」という用語は、コロイド溶液や分散液も含む。一般には、セルロース誘導体の水溶性はエーテル基の置換度により決定され、ここで使用される安定化誘導体は水溶性に成し得るに足りる量のエーテル基をセルロース鎖の無水グルコース一単位当たりに有することが望ましい。一般的に、エーテル置換度は無水グルコース一単位当たり少なくとも0.35のエーテル基で十分である。また、セルロース誘導体はLi、Na、K又はCs等のアルカリ金属塩の形態であっても良い。
ゲルにメチルセルロースが使用される場合、それは、好ましくはゲルの2−5%の割合、更に好ましくは3%の割合で存在し、NTNRαはゲルの1ml当たり300−1000mgの量で存在する。
ある状況において、インプラント可能な半透過性隔膜装置は薬剤の投与手段として有用である。例えば、可溶性NTNRα又はキメラを分泌する細胞をカプセル化し、その装置を患者の体内、例えばパーキンソン病の患者の脳内等にインプラントすることができる。Aebischerほかの米国特許第4892538号、Aebischerほかの米国特許第5011472号、Aebischerほかの米国特許第5106627号、PCT特許出願WO91/10425号、PCT特許出願WO91/10470号、Winnほか, Exper. Neurology, 113:322-329(1991)、Aebischerほか, Exper. Neurology, 111:269-275(1991)及びTrescoほか, ASAIO, 38:17-23(1992)等を参照のこと。よって、特定の条件によってそれを必要とする患者の体内にNTNRα、そのアゴニスト又はアンタゴニストを分泌する細胞をインプラントすることを含む神経への損傷又はここで教示するような腎臓等のNTNR発現性又はNTN応答性細胞への損傷を防止又は治療する方法をも包含する。最後に、本発明は神経の損傷又はここで教示するような他の細胞への損傷を防止又は治療する、NTNRα(又はそのアゴニストもしくはアンタゴニスト)に対して透過性であり、細胞に有害な患者からの成分に対して不透過性である半透過性隔膜及びその隔膜内にカプセル化されるNTNRα(又は特定の条件によってはそのアゴニストもしくはアンタゴニスト)を分泌する細胞を含むインプラント装置を包含する。NTN又はNTNRαをエキソビボで生成するように形質転換された患者自身の細胞を直接的に、場合によってはカプセル化しないで、患者の体内にインプラントすることも可能である。生存細胞の隔膜カプセル化技術は当業者には周知であり、カプセル化細胞の調製及び患者内へのインプラントは実験を行わなくとも実施できる。
本発明は、従って、必要とする患者の体内へ細胞をインプラントすることにより神経損傷を予防もしくは治療する方法であり、細胞はNTNRαを生成するその自然の能力を有するものが選択されるかNTNRαを分泌するように設計される。好ましくは、患者がヒトである場合、分泌NTNRαは可溶性のヒト成熟NTNRαである。埋込体は好ましくは非免疫原性であり及び/又はインプラントされた免疫原性細胞を免疫系によって認識されることを防ぐ。CNS送達においては、好ましいインプラント部位は脊髄の脳脊髄液内である。
NTNRαの治療的に適用するのに有効な量は、例えば、治療目的、投与経路、患者の状態等に依る。そのため、診療医は最適の治療効果を得るために、必要な投与量を滴定し、投与経路を変更する必要がある。通常、望ましい結果が得られる投与量に到達するまでNTNRαを投与する。全身治療に対する典型的な一日の用量は、上述した因子に応じて、1μg/kgないし10mg/kgあるいはそれ以上の範囲である。他の一般的な提案として、組織内に約0.1ng/ccより多く、効果的であるが必要以上毒性ではない最大量までのNTNRαの濃度を確立できる量のNTNRαを処方し、目的部位又は組織内に送達させる。この組織内濃度は可能であれば、連続注入、徐放、局所投与、NTNRαの発現性細胞インプラント、又は実験的に決定された頻度での注射で保持するべきである。この治療の進行状態は治療される病用の周知検定によって容易に監視できる。NTNRαをNTNと複合又は併用して投与する場合、NTNRα対NTN二量体の比率が100:1ないし1:100であることが有効である。比率は、好ましくは10:1ないし1:10、より好ましくは1:1、更に好ましくはNTNRαのNTNに対する天然の結合比を反映する2:1である。所望の効果を得るのに有効なNTN量が投与される。全身的な治療に対する典型的な一日の投与量は、上述した因子に依存して、約1μg/kgから10mg/kgまであるいはそれ以上の範囲であろう。
NTNRα核酸はここで例を挙げる組換え方法によるNTNRαポリペプチドの調製に有用である。そのNTNRαは以下に述べる様々な用途を有する抗NTNRα抗体の生成に利用できる。
NTNRα(ポリペプチド又は核酸)は試験管内で細胞のNTN応答性を増加させる(よって細胞生存率を増加し、Ret仲介下流経路を変調する)のに使用できる。それら細胞は細胞表面Retを含むか含むよう変形されてなければならない。エキソビボで培養されるこれら細胞は、同時に、ここで述べるような他の既知の神経栄養性因子又はサイトカインに暴露されてあっても良い。
本発明の更なる側面では、NTNRαを、自然又は人工リガンドの内、NTNRαに結合するリガンドのアフィニティー精製する目的で使用できる。精製されるリガンドの内、NTNが好ましい。簡単に説明すると、この方法は(a)精製されるべきNTNリガンドが選択的に固定されたNTNRαに吸着する状況においてNTNリガンド源を固定受容体に接触させ、(b)無吸着物を除去するためにNTNRα及びその支持体を洗浄し、(c)溶出緩衝液によってNTNリガンドを固定NTNRαから溶出する工程を含む。アフィニティー精製の特に好ましい実施形態では、NTNRαは不活性かつ多孔性の基質又は樹脂(例えば、臭化シアンとの反応を経たアガローズ)に共有結合をしている。特に好ましくはプロテインAカラムに固定されたNTNRαイムノアドヘシンである。次に、NTNリガンドを含有する溶液をクロマトグラフィー材料を通過させる。NTNリガンドはカラムに吸着し、その後溶出条件を変えることで(例えば、pHやイオン性を変えることで)離脱される。新規リガンドはI125やビオチン化NTN等の周知の標識NTNRαリガンドの置換を監視することで検出できる。
NTNRαはNTNRαに結合する可能性のあるアゴニストやアンタゴニストの競合的スクリーニングに使用できる。これらのようなアゴニストやアンタゴニストはそれぞれ不充分又は過度のNTNRα活性化に特徴を有する疾患を治療するための治療薬を構成できる。
NTNRαに結合する分子を同定するための好ましい方法はアッセイプレートの穴等の固相に付着したキメラ受容体(例えば、エピトープタグNTNRα又はNTNRαイムノアドヘシン)を利用する。任意に標識(例えば、放射標識)できる候補分子の固定受容体への結合を測定することができる。あるいは、I125NTN等の周知の標識されたNTNRαリガンドへ結合するための競合を測定することができる。アンタゴニストのスクリーニングのためには、NTNRαをNTNリガンドに暴露してから推定上のアンタゴニストに暴露し、又は同時にNTNリガンドとアンタゴニストをNTNRαに加え、アンタゴニストの受容体活性化を阻止する能力を評価できる。
また、本発明は、NTNRαを強く発現し、つまりかなり低濃度のNTNやNTN式分子に対しても高い感受性を有する細胞を含む、NTN活性を検出する検定システムをも提供する。本発明は、ペプチドや非ペプチド化合物への暴露によるNTN活性又はNTN活性に似た活性を発明のNTNRα分子を発現するNTNに応答する細胞又は株細胞におけるNTNに対する生理反応を測定することで検出できる検定システムを提供する。生理反応はNTNのいずれの生物学的作用を含むが、それはここで述べるものを含むが、それには限定されず、他に特定の核酸配列の転写活性(例えば、プロモータ/エンハンサーエレメント並びに構造遺伝子)、NTN関連処理、翻訳又はリン酸化、Ret仲介作用を含むNTNによって直接的又は間接的に誘発されるプロセスに反応する二次プロセスの誘発、及び神経突起発芽又は下神経節や後根神経節細胞、運動神経細胞、ドーパミン作動性神経細胞、感覚神経細胞、プルキンエ細胞又は海馬細胞等の細胞の生存を支持する能力などの形態学的変化をも含む。
本発明の一実施形態では、自己リン酸化Retタンパク質あるいはリン酸化ERK−1又はERK−2相同体(上記Kotzbauerほか参照)の発生の増加を検出することによって、NTNとNTNRαとの機能的相互作用を観測できる。
本発明はNTN又はNTN様活性を検出する目的で化合物をスクリーニングするために使用できる新規検定システムの開発にも役立つ。NTNと結合する標的細胞は、NTNRαをコードする核酸の形質移入により産生でき、例えば蛍光活性細胞選別、ロゼットの沈降又は限界希釈等により確認及び隔離できる。一度標的細胞の株が産生か認識されると、NTNに対して極めて高感受性である細胞を選出することが望ましい。そのような標的細胞はNTNRα分子をより多く有している可能性があり、例えば高発現性のものをフルオロホアでタッギングされたNTNでマークした後、免疫蛍光検出や細胞選別をすることでNTNRαを比較的大量に有する標的細胞はNTNを多く結合する標的細胞を選択することで確認できる。又、NTNに極めて高感受性である細胞はNTN結合に対して比較的強力な生理反応、例えばRet仲介作用又はc−fosやc-jun等の最初期遺伝子産物の急激な増加を示す可能性がある。NTNに対して極めて高感受性である標的細胞を使用した検定システムを開発することで、本発明は低レベルのNTN活性も検出可能な、NTN又はNTN様活性を検出する目的のスクリーニング方法を提供する。
特に、本発明は組換DNA技術を使用し、NTNに対して高感受性となるように操作されたNTN標的細胞を提供する。例えば、元々NTN応答性である細胞にNTN受容遺伝子を挿入し、組換えNTNRα遺伝子を高レベルで発現するようにし、得られた操作後の標的細胞が細胞表面において多数のNTNRを発現するようにしても良い。又、標的細胞は、NTN/受容体結合に反応して高レベルで発現される組換遺伝子を含むように操作することもできる。このような組換遺伝子は、好ましくは容易に検出できる物質と付随している。例えば、これに限定されないが、最初期遺伝子の転写制御領域(すなわち、プロモータ/エンハンサ領域)を標的細胞に導入された構造体のレポータ遺伝子の発現を制御するために利用できる。最初期遺伝子/レポータ遺伝子構造体は、強力なプロモータ/エンハンサあるいは高いコピー数によって標的細胞において高レベルに発現されると、NTNRα結合に対して増幅応答を発生することに利用できる。例えば、これに限定されないが、NTN応答性のプロモータはβガラクトシダーゼ、成長ホルモン、クロラムフェニコールアセチル転移酵素、ネオマイシンリン酸転移酵素、ルシフェラーゼ又はβグルクロニダーゼ等の検出可能なレポータ遺伝子の発現を制御することに利用できる。当業者には周知であるこれらレポータ遺伝子産生物の検出は医薬化合物のNTN又はNTN様活性に敏感な指標として利用できる。
ここで述べるNTNRαコードもしくはレポーター遺伝子作成物(例えば、可溶性ECD)は、形質移入、電気穿孔、リン酸カルシウム/DEAEデキストラン法及びセルガンを含むがこれに限定されないこの分野において既知であるいずれの方法を使用しても標的細胞中に挿入できる。作成物や操作標的細胞は説明した方法を使用してその中からNTNRα発現性標的細胞を選択できる、上記作成物を導入遺伝子として有するトランスジェニック動物の産生に使用できる。
NTNRをコードする、望ましくは例えばマウスやラットのタンパク質のような非ヒト種の核酸、トランスジェニック動物かあるいはノックアウト動物を産生するのに使用でき、これらは治療的に有用な試薬の開発やスクリーニングに使用できる。トランスジェニック動物(例えばマウス)とは、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態では、NTNRαをコードするヒト及び/又はラットのcDNA、又はその適当な配列を、確立された方法によりNTNRαをコードするゲノムDNAをクーロン化するために使用し、NTNRをコードするDNAを発現する細胞を有するトランスジェニック動物を生産するためにゲノム配列を用いる。特にマウス等の動物のトランスジェニック動物を産生する方法は周知であり、例えば米国特許第4736866号や第4870009号に記されている。典型的には、特定の細胞を組織特異的エンハンサーでのNTNRα導入遺伝子の導入の標的にし、これによって治療で望む効果を得ることが可能である。胚段階で動物の生殖系列に導入されたNTNRαをコードする導入遺伝子のコピーを含むトランスジェニック動物はNTNRをコードするDNAの増大した発現の効果を調べるために使用できる。このような動物は、例えばNTNに関連した疾患を予防すると思われる試薬のテスター動物として利用できる。発明の本実施形態では、動物を試薬で治療し、導入遺伝子を有する未治療の動物に比べ疾患の出現率が低ければ、疾患に対する治療的処置の可能性を示す。
現在はミニ遺伝子を有するトランスジェニックマウスが好ましいとされる。先ず、実施例で述べるように、融合酵素発現性作成物を作成し、細胞培養の発現に基づき選択する。次いで、既知の方法によりその融合酵素を発現可能なミニ遺伝子を作成する。特に好適な宿主は、発現に組織特異性である転写制御因子を含むミニ遺伝子作成物を持つものである。
NTNRαミニ遺伝子を発現するトランスジェニックマウスは、例えば受精卵の回収、雄性前核内へのDNA作成物の微量注入、及びホルモン操作された偽妊娠の乳母の子宮への受精トランスジェニック卵の再注入を含む既知の方法を使用して産生する。あるいは、例えば宿主種の胚幹細胞(Rossantほか, Philos. Trans. R. Soc. Lond. Biol. 339:207-215(1993))又は始原生殖細胞(Vickほか, Philos. Trans. R. Soc. Lond. Biol. 251:179-182(1993))を使用した既知の方法によりキメラを産生する。導入遺伝子の挿入は子孫マウスの尾から調製したDNAのサザンブロットによって評価できる。そのようなトランスジェニックマウスは戻し交配してホモ接合体を得る。
導入遺伝子は、5’側にイントロンを含み、そのイントロンが天然に生じるイントロンである場合より効率的に発現されることは既に確認されている(Brinsterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:836(1988)、Yokodeほか, Science 250:1273(1990))。
NTNRαミニ遺伝子を発現するトランスジェニックマウスはトランスジェニックマウスを産生するための周知の方法を使用して産生する。トランスジェニックマウスは現在は標準的な方法によって作成する(ほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:836(1988);Yokodeほか, Science 250:1273(1990);Rubinほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:434(1991);Rubinほか, Nature, 353:265(1991))。時間制限交尾による受精卵はPBSで軽く洗浄して卵管から収集し、100ナノリットル未満のDNA溶液を微量注入して雄性前核中に約104個のDNA分子を送り込む。注入が成功した卵子は次に卵管転移によって偽妊娠の乳母に再移植する。微量注入された卵子の内、トランスジェニック子孫が得られるのは僅か5%にも満たなく、この内僅か1/3しか能動的に導入遺伝子を発現しない。この数はおそらく導入遺伝子がゲノムに導入される部位に影響される。
トランスジェニック子孫は、好ましくは短い尾の断片からDNAを調製し、サザンブロットにより導入遺伝子の有無について分析すること「テイルブロット」でゲノム内への微量注入された導入遺伝子の導入を確かめることによって確認される。好ましいプローブは導入遺伝子にのみ存在し、マウスゲノムには存在しないミニ遺伝子融合作成物のセグメントである。あるいは、導入遺伝子内のコドンの天然配列を同一ペプチドをなおコードする異なる配列で置換するとDNA及びRNA分析によって確認できる独特の領域が得られる。このようにして確認されたトランスジェニック開祖マウスを通常のマウスと繁殖させてヘテロ接合体を得、これを戻し交配してトランスジェニックマウスの系統を作る。その系統が確立してホモ接合性になるまで、各世代の各マウスのテイルブロットを分析する。それぞれの首尾よく作られた開祖マウス及びその系統は、マウスゲノムに挿入された導入遺伝子の場所及びコピー数において他の系統とは異なり、そのため導入遺伝子の発現性も大きく異なる。各々確立した系統から複数の動物を選択し、生後二ヶ月で屠殺し、肝臓、筋肉、脂肪、腎臓、脳、肺、心臓、脾臓、性線、副腎及び腸のRNAのノーザンブロットにより導入遺伝子の発現性を分析する。
あるいは、NTNRαの非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入された変更ゲノムNTNRαDNAと内在性のNTNRα遺伝子との間の相同的組換えによって、NTNRα「ノックアウト」動物、すなわちNTNRをコードする欠陥又は変更遺伝子を有する動物を作成するために使用できる。例えば、マウスのNTNRαcDNAは周知の方法によりゲノム性NTNRαDNAのクローニングに使用できる。ゲノム性NTNRαDNAの一部(例えば、細胞外ドメイン等をコードするエキソン)を欠失したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等の他の遺伝子で置換することができる。典型的には、無変化のフランキングDNA(5’と3’端両方)の数キロベースがベクターに含められる(相同的組換えベクタについてはThomas and Capecchi, Cell 51:503(1987)参照)。ベクターは胚性幹細胞に(例えば電気穿孔法等によって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に再結合した細胞を選択する(例えば、Liほか, Cell 69:915(1992)参照)。選択された細胞は次に動物(例えばマウス)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する(Bradley, in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed.(IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照)。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、孵化させてノックアウト動物を作る。胚細胞に相同的に組替えられたDNAを有する子孫は標準的な方法によって確認し、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組替えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物は移植を許容し、腫瘍を拒絶し、感染症に対して防御する能力によって特徴付けられ、基礎的な免疫生物学の研究に使用できる。
本発明の実施により組換えDNA分子と形質転換宿主動物を産生するために使用できる上記の方法の他に、他の周知の方法とその変更方法を使用して発明を実施することができる。例えば、米国特許第4736866号は胚細胞及び体細胞が胚段階で動物又は動物の祖先に導入された遺伝子配列を含むトランスジェニック非ヒト真核動物を産生するためのベクター及び方法を開示する。米国特許第5087571号は(1)全ての胚細胞及び体細胞が胚段階で導入された組換え遺伝子配列を含むトランスジェニック非ヒト哺乳類を提供し、(2)該体細胞を一つ以上培養することを含む細胞培養の提供方法を開示する。米国特許第5175385号は体細胞及び胚細胞が、好ましくは微量注入によって、胚段階でマウス又はそのマウスの祖先に導入された遺伝子を含み、その遺伝子を所望の表現型を得るのに十分なレベルで発現するトランスジェニックマウスを産生するためのベクター及び方法を開示する。異種性遺伝子発現を促進するために部分的に構成的なプロモータ、すなわちメタロチオネインプロモータが使用された。米国特許第5175384号は胚を導入遺伝子を含むレトロウィルスに感染させることで胚に導入遺伝子を導入する方法を開示する。米国特許第5175383号はマウスの泌尿生殖器において遺伝子を発現するために有効である異種性及び誘導性のプロモータと操作可能に連結された宿主細胞に対して相同的な遺伝子を有し、導入遺伝子は胚段階でマウスに導入してトランスジェニックマウスを産生する、DNA作成物を開示する。相同性の遺伝子が導入されても、内因性コード配列の位置とは異なる部位でマウスの染色体に遺伝子を組み込むことができる。適当な誘導性プロモータとして重要なMMTVプロモータが開示される。米国特許第5162215号はトランスジェニック動物を産生するために多能性幹細胞を使用してニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ又はカモ等の家畜種を含む鳥類のためのトランスジェニックベクター及び方法を開示する。米国特許第5082779号は遺伝子の組織特異性発現性を有するトランスジェニック動物を産生するために使用できる下垂体特異性発現プロモータを開示する。米国特許第5075229号は、胎児の造血生肝細胞のゲノムに組み込まれるよう、ベクターを宿主胎児の腹腔に注入することで、造血生肝細胞が肝臓特異性プロモータによって促進される機能性遺伝子を含み、発現するトランスジェニックのキメラ動物を産生するベクター及び方法を開示する。
上記の特許及び文献の内いずれかは本発明の範囲に属しない特定の遺伝子産物又は物質の産生又は使用に関するが、そこに記述された方法は、発酵や遺伝子工学の分野における当業者によって本明細書で説明した本発明の実施に対して容易に変更可能である。
本発明の検定システムは、NTN関連疾患の治療に使用する製薬化合物の効率的なスクリーニングを可能とする。例えば、これに限定されるものではないが、小脳の退化に対するNTN活性及び治療効能に関して製薬剤をスクリーニングすることが望ましい。本発明の一実施態様では、NTNに反応する細胞を確認し、単離し、多穴培養皿の微小穴内で培養する。被験剤添加又はNTN添加培地を多数の希釈度で適切な対照と共にウェルに加える。その後、細胞を生存率の改善及び神経突起の発芽等について調べ、被験剤及びNTNの活性又は関連する活性を定測する。例えば、NTNのように毒性攻撃や軸索切断に対し運動神経細胞死を防止できるNTN様化合物を確認できる。NTN応答性運動神経は、運動神経疾患の治療に有用な化合物を確認するための検定システムに使用できる。特定の疾患が特定の組織において欠陥のNTN応答に関連付けられると、その疾患に対する合理的な治療法は患者に外来性のNTNを供給することである。しかし、内在性のNTNより長い半減期を有し、又はNTNアゴニストとして機能し、又は特定の組織を標的にする分子を開発することが望ましい。よって、本発明の方法は、所望の性質を有する分子を同定するために使用できる効率的かつ感度の良好なスクリーニングシステムを得るために使用できる。同様の検定システムを使用して、NTNアンタゴニストも同定できる。
また、本発明はNTN及びその受容体の生理的役割を研究するための実験的モデル系を提供する。このような系は(i)NTN結合について細胞受容体との競合する循環性NTNRαペプチドに曝され、NTN不全状態になっている動物、(ii)NTNRによって免疫化された動物、(iii)NTNRαを高レベルで発現し、NTNに対して過敏性であるトランスジェニック動物又は(iv)胚性幹細胞技術を使用してゲノムから内在性NTNRα遺伝子が除去された動物等の動物モデルを含む。
更に、本発明はNTN及びその受容体の生理的役割を研究するための実験的モデル系を提供する。これらモデル系では、NTNRαタンパク質、ペプチド断片又はその誘導体は系に供給されても系内で産出されても良い。このようなモデル系はNTN過剰又はNTN不全の作用を調べるために使用できる。実験的モデル系は、細胞又は組織培養内、動物全体内、動物全体又は組織培養系における特定の細胞や組織内、あるいはNTNRα発現が誘発性又は発達的に制御されたプロモータによって調節される実施形態では特定の時間経過(胚形成時も含む)におけるNTNに対する反応の低下又は増加の効果を研究するのに使用できる。本発明の特定の実施形態では、CMVプロモータをトランスジェニック動物におけるNTNRαの発現の制御に使用できる。ここで述べるトランスジェニック動物は、微量注入法、細胞融合法、形質移入法及び電気穿孔法を含むがこれらに限定されない当該分野において周知のあらゆる方法によって産生できる。
本発明はNTNRαに対して自己免疫反応を起こす自己免疫疾患のモデル系を提供する。このようなモデルは免疫原性量のNTNRαで免疫化され、好ましくは抗NTNRα抗体及び/又は細胞仲介免疫性を作り出すことが見出される動物を含む。モデル系を作るためには、NTNRαを免疫性アジュバントと共に投与することが望ましい。
これに限定されるものではないが、例えば、過剰NTN活性の効果を研究するための実験的モデル系を作成できる。このような系ではモデル系の細胞を、操作されていない細胞に比べ、より多数のNTNRを含むよう操作し、NTNに対する応答性を増大させる。これらの細胞はRet、又はNTNRαと相互作用を成し得、NTNシグナルを仲介できるシグナル伝達分子をも発現するべきである。通常はNTNRを発現する細胞に選択的により多数のNTNRを設けることが望ましい。細胞は、本発明のNTNRα遺伝子を保有するウイルスで感染することによって、NTNRαをより多数産出するように操作できる。あるいは、形質移入によって、細胞にNTNRα遺伝子を設けても良い。モデル系が動物である場合、NTNRα遺伝子を保有するウイルスによる感染又はここで述べる他の方法で組換えNTNRα遺伝子を動物の細胞内に導入することができる。例えば、NTNRα遺伝子を導入遺伝子として有するトランスジェニック動物を産生できる。NTNRの発現を確実にするためには、NTNRα遺伝子を適当なプロモータ配列の制御下に置く。NTNRα遺伝子を構成的及び/又は組織特異性プロモータの制御下に置くことが望ましい。細胞NTNRの数を増やすことで、内在性NTNに対する応答性を増大させることができる。モデル系にはNTNが少量しか存在しないか全く存在しない場合、系にNTNを添加することができる。過剰NTN活性の効果を評価するために、モデル系に更なるNTNを追加することもまた望ましい。NTN(又は分泌されたNTN)の過剰発現は、NTNRを既に発現している細胞に対する高レベルのNTNの効果を調べるために望ましい方法である。更に望ましくは、全細胞においてNTNRαを発現し(一般発現)、どの細胞がNTNに対する機能的応答性を付与されたかを判断することで、存在するならば、第2の受容体成分を確認できるようになる。
NTN活性の低下の作用について研究を行うために使用できる実験的モデル系を作成できる。この系は、NTNを必要とし治療の対象になり得るプロセスや神経細胞の同定を可能とする。このような系では、細胞の表面には結合していないかあるいはNTNに対する応答を伝達しにくくなるよう操作された組換えNTNRを提供することでNTN応答性を軽減することができる。例えば、NTNRαタンパク質、ペプチド又は誘導体を系に供給し、供給された受容体が内在性NTNRαとNTN結合について競合し、NTN応答性を軽減するようにできる。NTNRαは系に追加されるかあるいは系によって産生される無細胞受容体であっても良い。例えば、産生する細胞から分泌される無アンカーNTNRαのような、膜貫通ドメインを有しないNTNRαタンパク質が系内の細胞によって産生される。あるいは、NTNRαタンパク質、ペプチド又は誘導体を系内の細胞外空間に添加することができる。本発明の更なる実施形態では、相同体組換えによって内在性遺伝子を無活性化あるいはノックアウトするために組換えNTNRα遺伝子を使用して、低NTNRαの細胞、組織又は動物を作ることができる。例えば、これに限定されるものではないが、NTNRαを無活性化するネオ遺伝子等の挿入性変異を含むように組換えNTNRα遺伝子を操作する。このような作成物は、適当なプロモータの制御下で、形質移入、形質導入、注入等々の方法によって胚幹細胞等の細胞に導入する。その後、作成物を含む細胞をG418抵抗性により選択できる。無傷のNTNRα遺伝子を持たない細胞は、例えばサザンブロット、ノーザンブロット又は発現性検定により同定できる。無傷のNTNRα遺伝子を含まない細胞は初期胚細胞に融合して、NTNR欠乏性のトランスジェニック動物を産生する。そのような動物を内在性NTNを発現しない動物と比較すると、二つの表現型は完全に一致するか一致しないかが明らかになり、一致しない場合、他のNTN様因子や受容体の存在を裏付ける。そのような動物は、通常NTN又はその受容体に依存する神経細胞集団等の特定の細胞集団や任意の他のインビボプロセスを定めるために利用できる。よって、その動物がNTNRを発現できなく、そのためNTNに反応できない場合、それら集団やプロセスは影響を受けることが予想できる。あるいは、内在性の受容性とNTNについて競合する組換えNTNRαタンパク質、ペプチド又は誘導体を、系内の細胞の表面上に発現しても良い、NTN結合に対する応答を伝達しないように操作しても良い。上記の組換えNTNRαタンパク質、ペプチド又は誘導体は、NTNに対する内在性NTNRαの親和性と同様であるかあるいは異なる親和性でNTNと結合する。より効果的にNTNに対する応答性を下げるには、NTNRαタンパク質、ペプチド又は誘導体は、天然の受容体が示すより高い親和性でNTNと結合することが好ましい。NTNRαタンパク質、ペプチド又は誘導体がモデル系内で産生されるのであれば、そのNTNRαタンパク質、ペプチド又は誘導体をコードする核酸を感染、形質導入、形質移入等によって、又は導入遺伝子として、系に供給することができる。上述したように、NTNRα遺伝子は適当なプロモータによって制御されても良く、それは例えば組織特異性プロモータ又は誘発性プロモータ又は発生的に調節されるプロモータであっても良い。本発明の具体的な実施形態では、細胞の内在性NTNRα遺伝子は相同性組換えにより変異体NTNRα遺伝子で置換される。本発明の更なる実施形態では、NTNRαタンパク質の発現を低下させるために有効な量のNTNRαアンチセンスRNA又はDNAをNTNRα発現性細胞に与えることによってNTNR発現を低下させる。
本発明のポリペプチドはまた動物の食料添加物として使用される。本発明の核酸はこれらのポリペプチドを調製する際に使用される。
NTNRαポリペプチドは分子量マーカーとしても有用である。NTNRαポリペプチドを分子量マーカーとして使用するには、分子量を実質的に通常の方法で求めたいタンパク質を分類するために、例えばゲル濾過クロマトグラフィー又はSDS−PAGEを使用する。ある範囲の分子量を得るためにNTNRα、好ましくは可溶性NTNR及び他の分子量マーカーを基準として使用する。例えば、ホスホリラーゼb(mw=97,400)、ウシ血清アルブミン(mw=68,000)、卵白アルブミン(mw=46,000)、トリプシン阻害剤(mw=20,100)及びリゾチーム(mw=14,400)をMWマーカーとして使用できる。ここで述べた他の分子量マーカーはイリノイ州、アーリングトン・ハイツのアマシャム・コーポレーションから購入できる。分子量マーカーは通常その検出を容易にするために標識が付される。例えば、マーカーをビオチニル化し、分離後、多種のマーカーが光検出によって確認できるようにストレプトアビジン−西洋わさびペルオキシダーゼでインキュベートすることができる。
精製されたNTNRα及びそれをコードする核酸は、正常な成長と発達、並びに異常な成長と発達、例えば悪性な成長におけるNTNRα及びNTNリガンドの役割を調べるためのNTNRα及びそのリガンドの機構研究の試薬としても販売できる。NTNRαプローブは、正常状態又は疾患状態においてNTNに応答性を有する細胞や組織を同定するために使用できる。例えば、NTN関連疾患にかかっている患者はNTNR発現に異常を示す場合がある。本発明は細胞におけるNTNRα発現を検出することからなるNTN応答性の細胞を同定する方法を提供する。NTNRα発現はNTNRα・mRNAの転写やNTNRαタンパク質の生成によって示される。NTNRα発現はNTNRα核酸やタンパク質を認識するプローブを使用して検出できる。NTNRα発現の検出に使用できる一種のプローブとしては、インサイツハイブリッド形成法、ノーザンブロット分析法又はPCRによる方法等を含むが、これらに限定されないこの分野において既知のあらゆる方法によってNTNRをコードするRNAを検出するために使用できる核酸プローブがある。他に使用できるプローブとしては、ここで述べるタグNTNがある。
本発明では、タグNTNは、細胞に対するNTNの結合又は付着を促進する条件下で上記細胞と共にインキュベートする。多くの場合、これは標準の培養条件で十分である。例えば、本発明の一実施形態では、タグNTNの存在下で細胞を約30分間インキュベートする。タグが抗体分子の場合、NTNを先ず細胞に結合させ、次いで細胞を洗浄して未結合分子を除き、次いで抗NTN抗体タグを添加することが望ましい。本発明の他の実施形態では、NTN応答性細胞の表面上のタグNTNは、タグに結合可能なインディケータ細胞を、タグNTNを有する細胞と共にインキュベートし、標的細胞のタグNTNに付着させ、結合したインディケータ細胞がNTNタグ保有細胞の周囲にロゼット様クラスターを形成するようにするロゼット検定法によって確認する。これらロゼットは標準的顕微鏡法によりプレート上の細胞で見ることができ、あるいは密度遠心法によりロゼット化細胞と非ロゼット化細胞の分離を可能とする。本発明の好適な特定の実施形態では、神経細胞等の標的細胞。本発明の他の実施例では、タグと反応する分子、好ましくは抗体が、直接的又は間接的に蛍光を発生する免疫蛍光法を利用して標的細胞の表面上のタグNTNを検出する。蛍光は顕微鏡で観察するかあるいは蛍光活性化細胞選別法によりタグNTN保有細胞を隔離するために使用される。本発明は色素生産性タグや触媒作用性タグ等の他の種類のタグを検出する方法も提供する。抗NTNRα抗体をプローブとして使用することもできる。特定のタグの検出方法はタグからシグナルを発生させるために必要な条件によるが、当業者にとっては明らかであろう。
NTNRα変異体は、使用される分析系によって認識できるもの、例えば抗NTNRα抗体等であれば、例えばELISA、RIA又はRRA等のNTNRα検定法における標準や対照として使用できる。
一般に、ポリクローナル抗体は動物において、該当する抗原及びアジュバントを数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することで産生させる。好ましいエピトープはNTNRαのECD内にあるため、NTNRαECD又はECDを含む分子(例えば、NTNRαイムノアドヘシン等)をポリクローナル及びモノクローナル抗体の産生のための抗原として使用することが望ましい。関連した抗原を、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、Nヒドロキシスクシンイミド(リシン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2又はR1N=C=NR(ここで、R及びR1は異なるアルキル基である)等の二官能性又は誘導体化剤を使用してキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又は大豆トリプシンインヒビターのような免疫化される種において免疫原性のタンパク質に抱合することが有用である。
動物は、1mg又は1μgのペプチド又は抱合体(ウサギ又はマウスにそれぞれ)を3容量のフロイント完全アジュバントと混合して得た溶液を複数の部位に皮内注射することで抗原、免疫原性抱合体又は誘導体に対して免疫化する。一ヶ月後、動物をフロイント完全アジュバントに入れたペプチド又は抱合体の元の1/5から1/10の量を複数の部位に皮下注射して追加免疫する。7日から14日後、動物から採血し、血清を検定して抗体価を求める。抗体価がプラトーに達するまで追加免疫する。望ましくは、動物は同一の抗原の抱合体で追加免疫するが、他のタンパク質に及び/又は他の架橋試薬によって抱合する。抱合体はタンパク質融合体として組換え細胞培養中に形成できる。また、免疫反応を増強するためミョウバン等の凝集剤を使用する。
モノクローナル抗体は実質的に均質の抗体集団から得る、すなわち集団を構成する各抗体は、僅かに存在する天然に生じる突然変異を除いて同一である。従って、モノクローナルという修飾語は別々の抗体の混合体ではないという抗体の特徴を示す。
モノクローナル抗体は、例えばKohlerほか, Nature, 256:495(1975)において初めて記されたハイブリドーマ法又は組換えDNA法(上記Cabillyほか)によって生成できる。
ハイブリドーマ法では、マウス又はハムスター等の適当な宿主動物を上述する方法で免疫化することで、免疫化に用いるタンパク質に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成する機能を有するリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫化することもできる。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を骨髄腫細胞に融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103(Academic Press, 1986))。
こうして調製されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは未融合の親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻止する一又は複数の物質を含有する適切な培地で播種し、生育させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠いていると、ハイブリドーマの培地は典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含み、この物質がHGPRT欠乏性細胞の成長を阻止する。
効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体生成を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である骨髄腫細胞が望ましい。その内、望ましい骨髄腫株化細胞として、米国カリフォルニア州、サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerより入手可能であるMOPC−21及びMPC−11マウス腫や米国メリーランド州、ロックヴィルのアメリカンタイプ カルチャー コレクションより入手可能であるSP−2細胞から得られるようなマウス骨髄腫株がある。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒト異種骨髄腫株化細胞も開示されている(Kozbor, J. Immunol, 133:3001(1984)、Brodeurほか, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が成長している培地を抗原に対するモノクローナル抗体の生成について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等のインビトロ結合検定法によって求める。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220(1980)によるスキャッチャード分析法によって求めることができる。
所望の特異性、親和性及び/又は活性を示す抗体を生成するハイブリドーマ細胞が確認されたら、クローンを制限希釈工程を経てサブクローニングし、標準的な方法で成長させることができる(上記Goding)。この目的のための適当な培地としては、例えばD−MEMやRPMI−1640倍地等がある。更に、ハイブリドーマ細胞は動物においてインビボで腹水腫として成長させることもできる。
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインAセファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティークロマトグラフィー等の通常の免疫グロブリン精製方法によって培地、腹水液又は血清から適切に分離する。
NTNと受容体への結合を阻止するMAbの能力は、入手可能な試薬(NTNRαを発現する安定な形質移入CHO株化細胞であるrhNTNr−IgG)を用いてELISA及び生物検定によって評価できる。中和活性は神経細胞生存率検定法によって評価できる。
NTNR特異性MAbは、例えば受容体イムノアドヘジン及び形質移入株化細胞を使用して、潜在的なアゴニストやアンタゴニストとして利用できるNTNR特異性MAbを生成するための新しい免疫化プロトコールを導入する目的や免疫組織化学、免疫細胞化学及びアッセイ開発のために開発できる。免疫化動物の融合により生成されるMAbは生物検定法(例えば、ニューロン生存率検定法、シグナル伝達/リン酸化、腎細胞生存率検定法)並びにELISA及びFACS(NTN−NTNRα結合の機能的ブロッキング)によってアゴニスト及びアンタゴニスト活性についてスクリーニングできる。適切な方法は、例えばLucasほか, J. Immunol. 145:1415-1422(1990)、Hoogenraadほか, J. Immunol. Methods 6:317-320(1983)、Moksほか, Eur. J. Biochem. 85:1205-1210(1986)、Laemmli, Nature(London)227:680-685(1970)及びTowbinほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:4350-4354(1979)に記されている。
モノクローナル抗体をコードするDNAは通常の方法によって(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用して)単離及び配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源である。一度単離されたら、DNAは発現ベクター内に配することができ、発現ベクターは、大腸菌、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はその他免疫グロブリンタンパク質を生成しない骨髄腫細胞等の宿主細胞に形質移入することで、組換え宿主細胞内でモノクローナ抗体の合成を達成できる。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現に関する論文として、Skerraほか, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及び
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ほか, Immunol. Revs., 130:151-188(1992)が挙げられる。
更なる実施形態では、McCaffertyほか, Nature, 348:552-554(1990)による方法を利用して、抗体又は抗体断片を、産生された抗体ファージライブラリから単離できる。Clacksonほか, Nature, 352:624-628(1991)及びMarksほか, J. Mol. Biol., 222:581-597(1991)は、それぞれファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記す。その後の文献では、鎖シャフリングによる高親和性(nM領域)ヒト抗体の産生(Markほか, Bio/Technology, 10:779-783(1992))並びに大規模のファージライブラリを構成するための方策としての組み合わせ感染及びインビボ組換え(Waterhouseほか, Nuc. Acids. Res. 21:2265-2266(1993))が記されている。これらの方法はモノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に代わる有力な方法である。
DNAは、例えば相同生マウス配列をヒトの重鎖及び軽鎖定常ドメインで置換すること(上記Cabillyほか、Morrisonほか, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81:6851(1984))あるいは免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有的に結合させることで変更できる。
典型的にはそのような非免疫グロブリンポリペプチドは抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、ある抗原に対する特異性を有する抗原結合部位及び異なる抗原に対する特異性を有する他の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を産生する。
キメラ又はハイブリッド抗体は架橋剤を用いるものを含む合成タンパク質化学における既知の方法を使用してインビトロで調製することができる。例えば、ジスルフィド交換反応を使用して又はチオエーテル結合を形成することにより免疫毒素を構築できる。この目的に適する試薬としてイミノチオレート及びメチル−4−メルカプトブチリミデートがある。
非ヒト抗体をヒト化する方法は周知である。一般的に、ヒト化抗体は非ヒト由来の一又は複数のアミノ酸残基その中に導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入物」可変ドメインから得られる「移入」残基と称されている。ヒト化は本質的にげっ歯類のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することにより、ウインター及び共同研究者(Jonesほか, Nature, 321:522-525(1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327(1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536(1988))の方法に従って実施できる。よって、かかるヒト化抗体は、無償のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ性抗体(上記Cabillyほか)である。実際には、ヒト化抗体は典型的にはある程度のCDR残基及び場合によってはいくらかのFR残基がげっ歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。
抗原性を軽減するには、ヒト化抗体を産生するために使用するヒトの軽及び重可変ドメインの両方の選択が非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法では、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列を既知のヒト可変ドメインライブラリ全体に対してスクリーニングする。げっ歯類のものと最も類似するヒト配列を次にヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として認める(Simsほか, J. Immunol., 151:2296(1993)、Chothiaほか, J. Mol. Biol., 196:901(1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から引き出す特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285(1992)、Prestaほか, J. Immunol. 151:2623(1993))。
更に、抗体は、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的性質を保持した状態でヒト化されることが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調製する。三次元免疫グロブリンモデルは容易に入手可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元高次構造的構造を図解し、表示するコンピュータプログラムは購入可能である。これらの表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能な役割の分析、すなわち候補イムノグログリンの抗原を結合する能力に影響を及ぼす残基の分析を可能とする。このようにして、例えば標的抗原に対する高親和性等の望ましい抗体特性が得られるように、FR残基をコンセンサス及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。
その他、現在では、免疫化することで、内在性免疫グロブリンが生成されない状態でもヒト抗体の完全リパートリを生成することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)を産生することが可能である。例えば、キメラ及び生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)のホモ接合性欠失は内在性抗体生成の完全阻止を招くことが記されている。そのような生殖系列変異体マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列を移すと、抗原による誘発時にはヒト抗体の生成を引き起こす。例えば、Jakobovitsほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551(1993)、Jakobovitsほか, Nature, 362:255-258(1993)、Bruggermanほか, Year in Immuno., 7:33(1993)を参照。ヒト抗体はファージ表示ライブラリ(Hoogenboomほか, J. Mol. Biol., 227:381(1991)、Marksほか, J. Mol. Biol., 222:581(1991))において産生することもできる。
二特異性抗体(BsAb)とは、少なくとも二つ以上の異なる抗原に対して結合特異性を有する抗体である。BsAbは腫瘍のターゲティング剤又はイメージング剤として使用でき、NTNRαを含む細胞に酵素や毒素等をターゲティングするために使用できる。そのような抗体は、全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab’)2二特異性抗体)から得られる。本発明によると、BsAbはNTNRαを結合する一つのアームとサイトカイン又はTPO、EPO、G−CSF、IL−4、IL−7、GH、PRL等の受容体、IL−3、GM−CSF、IL−5、IL−6、LIF、OSM及びCNTF受容体のα又はβサブユニット、又はIL−2受容体複合体のα、β又はγサブユニット等の他のサイトカイン受容体(又はそのサブユニット)と結合する別のアームを有している。
二特異性抗体を生成する方法は当該技術分野において周知である。従来の全長二特異性抗体生産は、二つの鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現(Millsteinほか, Nature, 305:537-539(1983))に基づく。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖のランダムな混合のため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常行われるが、かなり厄介であり、収率は低い。同様な方法は1993年5月13日公開のWO 93/08829及びTrauneckerほか, EMBO J., 10:3655-3656(1991)に開示されている。
他のより好ましいアプローチによれば、所望の結合特異性(抗体−抗原組合せ部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。融合は、好ましくは少なくともヒンジ、CH2及びCH3領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとである。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNAと、所望されれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクター中に挿入し、適当な宿主生物内に同時形質移入する。これは、構築に使用される三つのポリペプチド鎖の不等の比が最高の収率をもたらす態様において、三つのポリペプチド断片の相互の比率を調整する際に大なる柔軟性をもたらす。しかし、少なくとも二つ以上のポリペプチド鎖が同比率で発現すると高収率が得られる場合や比率が特に重要ではない場合には、一つの発現ベクターに二つ又は三つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を挿入することができる。
このアプローチの好適な形態では、二特異性抗体は、一方のアームの第一結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)からなる。このような非対称的構造は、二特異性分子の半分にのみ免疫グロブリン軽鎖が存在すると容易に分離できるので、所望の二特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離し易くすることが見出された。このアプローチは1994年3月3日発行のWO 94/04690に開示された。二特異性抗体を産生するための更なる詳細については、Sureshほか, Methods in Enzumology, 121:210(1986)を参照されたい。
二特異性抗体は架橋抗体又は「ヘテロ抱合」抗体を含む。例えば、ヘテロ抱合体の一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合しうる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせるため(米国特許第4676980号)及びHIV感染の治療(WO 91/00360、WO 92/200373及びEP 03089)のために提案された。ヘテロ抱合抗体は任意の簡便な架橋方法を使用して生成できる。当該分野において、適切な架橋剤は周知であり、多くの架橋法と共に米国特許第4676980号に開示されている。
二特異性抗体を抗体断片から作り出す方法も文献に開示されている。次の方法は、必ずしも二特異性ではなくても、二価抗体断片の生成に用いることもできる。これらの方法によれば、Fab’−SH断片を大腸菌から回収し、化学的に結合させて、二価抗体を生成する。Shalabyほか, J. Exp. Med., 175:217-225(1992)には、完全にヒト化されたBsAbF(ab’)2分子の生成が記されている。各Fab’片は、大腸菌から別々に分泌され、インビトロで方向性、化学カップリングを受け、BsAbを形成する。こうして得られたBsAbはHER2受容体を過剰に発現する細胞や正常のヒトT細胞に結合することができ、ヒト乳腫瘍標的に対してのヒト細胞毒性リンパ球の溶解活性を若起した。Rodriguezほか, Int. J. Cancers, (Suppl.)7:45-50(1992)を参照されたい。
組換え細胞培養から直接二価抗体片を生成し、単離する様々な方法も記されている。例えば、ロイシンジッパを使用して二価ヘテロ二量体が生成された。Kostelnyほか, J. Immunol., 148(5):1547-1553(1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパペプチドを遺伝子融合によって二つの異なる抗体のFab’部分と結合させた。抗体ホモ二量体はヒンジ領域において還元してモノマーを形成し、再酸化して抗体ヘテロ二量体を得た。Hollingerほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448(1993)に開示された「ジアボディー」技術はBsAb断片を生成するための代替方法を提供した。断片は、一の鎖において二つのドメイン間の対合を可能にしないほど短いリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に結合された重鎖可変ドメイン(VH)からなる。従って、一つの断片のVHドメインとVLドメインは他の断片の相補のVL及びVHドメインと対合を強いられ、二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体を使用してBsAb断片を生成する方法もまた報告されている。Gruberほか, J. Immunol., 152:5368(1994)を参照されたい。
本発明のNTNRαアゴニスト(NTNを含む)及びアゴニストNTNRα抗体は、脾臓の造血を促進するために使用でき、化学療法又は放射線療法及び移植を受けた患者の血液細胞系譜の再増殖を可能とする。一般的に、抗体は脾臓内で造血細胞の増殖及び/又は分化(特に増殖)を促進させるように働く。理論に縛られるものではないが、NTNRαアゴニストは脾臓内の造血細胞の成長、生存又は分化因子として直接働くか、及び/又は脾臓の間質性環境に間接的に働き(おそらくは脾臓の神経支配に関わる神経細胞)、造血系譜の維持に関与する他の因子を生成しうる。とにかく、ここで教示するように、NTNを含むNTNRαアゴニストは、放射線療法又は化学療法後の骨髄の脾臓的移植の容易化や、貧血(赤血球)、慢性感染(好中球)、骨髄不全(全系譜)及び免疫不足(リンパ球)による赤血球生成の増加が要求される疾患における(げっ歯類では通常であるがヒトにおいては通常みられない)脾臓内の延髄外造血を刺激するための治療的効果を有する。同様に、アゴニストは赤血球の減少を特徴とする疾患の治療に有用である。これら疾患の例としては、貧血(大赤血球性及び再生不良性貧血を含む);血小板減少症;発育不全;免疫(自己免疫)血小板減少性紫斑病(ITP);及びHIV誘発ITPがある。また、アゴニストは出血の患者の治療にも使用できる。
NTNRα中和抗体の治療適用例としては、NTNRα発現の部位における代謝疾患及び細胞腫瘍、特にNTNRαの過剰発現に特徴付けられる腫瘍の治療がある。
治療的応用においては、本発明のNTN又はNTNRα抗体は、大量瞬時投与、経時的に連続注入するヒト静脈内投与、又は筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、経口、局所的及び吸入投与等の生理的に許容される投与形態で哺乳類、好ましくはヒトに、投与される。抗体は、腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内、病巣周囲又はリンパにも適切投与することで、局所的及び全身的治療効果を発揮する。
このような投与形態は、本来無毒性及び無治療性である生理的に許容される担体を含む。このような担体の例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸塩等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩類、又は硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド性シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質及びPEG等の電解液がある。NTNRα抗体の局所的又はゲル系形態の担体としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、PEG及び木質ワックスアルコール等がある。全ての投与形態において、従来からの適当なデポ形態が使用される。その形態は、例えばマイクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、点鼻スプレー、舌下錠及び徐放性調製物を含む。NTNRの抗体は、典型的には約0.1mg/mlないし100mg/mlの濃度でそのようなビヒクル中に処方される。
徐放性調製物の適切な例としては、NTNRα抗体を含む固体疎水性重合体の半透過性マトリックスがあり、そのマトリックスはフィルム状又はマイクロカプセル等の形状物品の形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、上記Langerほか及び上記Langerに示すようなヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)等)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ乳酸(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタマートの共重合体(上記Sidmanほか)、非分解性エチレン−酢酸ビニル(上記Langerほか)、Lupron Depot(TM)(乳酸−グリコルー酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能なミクロスフィア)等の分解性乳酸−グリコルー酸共重合体、及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸があげられる。エチレン−酢酸ビニルや乳酸−グリコルー酸などの重合体は100日以上も分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短時間の間タンパク質を放出する。カプセル化された抗体が体内に長時間残存する場合、37℃で水分に曝されることで、変性又は凝集し、生理活性を失ったり、免疫原生が変化する可能性がある。関与する機構に応じて安定性を得るための合理的な方策が案出できる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換による分子間S−S結合であることが分かったら、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を調整し、適当な添加物を使用し、特定の重合体マトリックス組成物を開発することで安定性を達成することができる。
徐放性NTNRα抗体組成物は、リポソーム的に取込まれた抗体をまた含む。NTNRの抗体を含むリポソームは、Epsteinほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688(1985)、Hwangほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030(1980)及び米国特許第4485045号及び4544545号に記載されるような当業者に周知である方法によって調製される。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モル%以上コレステロールであり、選択される割合が最適なNTNRの抗体治療を得るように調整された微小(約200−800オングストローム)な単層状のものである。米国特許第5013556号には、循環時間が増強されたリポソームが開示される。
疾患の防止や治療に対して、NTNRα抗体の適切な投与量は上述したような疾患の種類、疾患の重症度及び過程、抗体が防止目的か治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の病歴及び治療にあたる医師の裁量に依存する。抗体は患者に一度に、又は一連の治療過程において適切に投与される。
疾患の種類及び重症度によって、患者への最初の投与量としてNTNRα抗体を、一又は複数の別個の投与か又は連続注入のいずれであれ、約1μg/kgないし15mg/kg投与する。上述した因子に依存して、典型的には、一日量は約1μg/kgから100mg/kg又はそれ以上の範囲であろう。数日間以上の繰り返し投与の場合、状態によって、疾患の症状が望ましい程度抑えられるまで治療を維持する。しかし、他の投与療法も有効になる可能性もある。この治療の進行状態は通常の方法及び検定法で容易にモニターできる。
本発明の化合物や方法による効果を評価するために動物モデルが利用できる。例えば、成長に影響する組成物で損傷した腎臓の治療効果を評価するために(Tobak, 1997、Tobackほか, 1997)、ラットに、体重1kgにつきHgCl2の形態で水銀を1.0ないし1.1mg静脈注射し、急性非乏尿性急性腎不全の可逆症候群を引き起こした。一日後、血清尿素の窒素濃度(SUN)とナトリウム及びタンパク質の尿中排泄、近位尿細管の壊死が大幅に増加した。二日目には、リン脂質、DNA及びRNAの合成や分裂指数が増加し、細胞再生が開始したこと示した。三日目には、SUNが最大値に達し、細管の基底膜に扁平上皮細胞が出現する。五日目には、SUNが正常値に戻り、リン脂質合成が最大速度に達し、より成熟した細胞が細管に復帰する。自己分泌成長因子の組成物の注入の腎臓構造に対する効果を、上述の昇コウ誘発急性細管壊死症候群の過程において、無処置ラット及びビヒクルのみ注入した動物と比較する。
本発明の抗体は親和性精製剤としても有用である。この方法では、NTNRαに対する抗体を、当分野で周知な方法を使用して、セファデックス樹脂や濾過紙等の適当な支持体に固定化する。次に、固定化された抗体を、精製するべきNTNRαを含有するサンプルと接触させ、その後、支持体を、固定化された抗体に結合したNTNRα以外の試料内の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で洗浄する。最後に、pH5.0のグリシン緩衝液のような、NTNRαを抗体から離脱させる他の適当な溶媒で洗浄する。
NTNRα抗体は、NTNRαの診断検定、例えば特異的細胞、組織又は血清中の発現を検出するためにも有用である。診断に適用する場合、抗体は、典型的には検出可能なシグナルを作り出すことができる部分によって標識する。この検出可能部分は、直接的であろうと間接的であろうと検出可能なものであれば、どのようなものでも良い。例えば、検出可能部分は、3H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位元素;蛍光イソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光又は化学発光化合物、125I、32P、14C又は3H等の放射性同位元素標識;又はアルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ又は西洋わさびペルオキシダーゼ等の酵素であっても良い。
Hunterほか, Nature, 144:945(1962);Davidほか, Biochemistry, 13:1014(1974);Painほか, J. Immunol. Meth., 40:219(1981);及びNygrenほか, J.Histochem. and Cytochem., 30:407(1982)により記載された方法を含む、ポリペプチド変異体を検出可能部分に別々に抱合させる、当該分野において周知の任意の方法が使用できる。
本発明の抗体は、競合的結合検定、直接的又は間接的サンドイッチ検定、及び免疫沈降検定等の如何なる周知の検定方法においても使用できる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp. 147-158(CRC `Press, Inc.,1987)。
競合的結合検定は、限定された量の抗体との結合に対して被験試料分析物と競合する標識標準物質の能力に依存する。被験試料内のNTNRα量は抗体に結合する標準物質の量と反比例する。結合する量を測定し易くするため、競合前又は競合後に抗体を一般に不溶性化させて、結合しないで残った標準物質及び分析物から、結合した標準物質及び分析物を簡便に分離できるようにする。
サンドイッチ検定では、検出するべきタンパク質の異なる免疫原性部分又はエピトープにそれぞれ結合し得る二つの抗体を用いる。サンドイッチ検定では、被験試料分析物を固体支持体に固定される第一抗体と結合させ、その後分析物に第二抗体を結合させ、不溶性の三部複合体を形成する。例えば、米国特許第4376110号を参照。第二抗体は、それ自体を検出可能部分で標識する(直接サンドイッチ検定)か、検出可能部分で標識される抗免疫グロブリン抗体を使用して測定する(間接サンドイッチ検定)。例えば、サンドイッチ検定の一つのタイプはELISA検定であり、この場合には検出可能部分は酵素である。
本発明を実施するための特定の実施態様の次の実施例は、発明を説明するためにのみ提供されるもので、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
ここで引用した全ての文献、特許及び特許出願の開示の全体を出典明示によりここに取り込む。
実施例
実施例1
ヒトNTNRαのクローニング
8種の部分的ヒトcDNA(ジェンバンク受託番号:R02249(配列番号:7)、H12981(配列番号:8)、W73681(配列番号:9)、W73633(配列番号:10)、H05619(配列番号:11)、R02135(配列番号:12)、T03342(配列番号:13)、及びHSC1KA111(配列番号:14)が、GDNF受容体α成分と類似性を有するものとして同定されたが(JingほかCell 85:1113-1124(1996);TreanorほかNature 382:80-83(1996))、GDNFR配列とは同一ではなかった。これらの発現配列タグ(「EST」)cDNA配列を整列化させて決定しDNA配列を、製造者により提供された条件を用いてヒト脾臓mRNAについての5’及び3’マラソンRACE反応(クローンテック・インク)を使用して伸長し、ヒトcDNAクローンの最初のセットを得た。更なるcDNAクローンを、標準的なプロトコールを使用してヒト胎児脳cDNAライブラリ(ストラタジーン)をスクリーニングして同定した。ラムダcDNAライブラリを標準的なプロトコールを使用してプレーティングし、3’及び5’RACE情報を使用してNTNRα遺伝子のPCR増幅により得られたコード領域プローブをライブラリにハイブリダイズした。クローン化ヒトcDNA配列の整列化から、全長cDNA配列が得られ(配列番号:1)、ヒトニュールツリン受容体α(「hNTNRα」)cDNA配列と命名した。この配列は、一本鎖464アミノ酸タンパク質配列(配列番号:3)をコードするオープンリーディングフレーム配列(配列番号:2)を含んでおり、これはヒトニュールツリン受容体α(「hNTNRα」)と命名された。
ヒトNTNRα(「hNTNRα」)は、hGDNFRαとrGDNFRαの双方に対してアミノ酸レベルで47%の全体の類似性を示す。
hGDNFRαと同様に、hNTNRαは、グリコシル−ホスファチジルイノシトール(「GPI」)修飾を介して細胞外膜に結合している細胞外タンパク質である。これは、分泌のためのアミノ末端シグナルペプチド、3つの潜在的なグリコシル化部位、及びGPI結合に対する切断/結合部位となる(図4;Micanovicほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 157-161(1990);Moranほか, J. Biol. Chem., 266: 1250-1257(1991))一群の3個の小アミノ酸(グリシン、セリン、アスパラギン)が先行している17のカルボキシ末端疎水性アミノ酸の伸展を有している。その30個のシステイン残基の位置はNTNRαとGDNFRαの間で完全に保存されている(図5)。細胞外ドメイン(「ECD」)にはシグナルペプチドとGPI結合部位が隣接している。
実施例2
ラットNTNRα(「rNTNRα」)のクローニング
標準的なプロトコールを使用してラット脳cDNAライブラリ(クローンテック)をスクリーニングしてラットNTNRα(「rNTNRα」)をクローン化した。中程度の厳密性(例えば、42℃で30%のホルムアミド、55℃で0.1xSSC中で洗浄)でラットcDNAライブラリに全長ヒトNTNRαプローブをハイブリダイズした。(配列番号:4)を有し完全型オープンリーディングフレーム(配列番号:5)を含むcDNAをrNTNRαcDNAと命名した。オープンリーディングフレーム配列は一本鎖464アミノ酸タンパク質配列(配列番号:6)をコード化しており、これはラットニュールツリン受容体α(「rNTNRα」)と命名した。
ラットNTNRαとヒトNTNRαはアミノ酸レベルで94%の全体の類似性を示す。DNAレベルでは97%の同一性が認められた。ラットNTNRαはタンパク質レベルでラットGDNFRαとヒトGDNFRαの双方に対して46%の同一性を有している。ラットNTNRαはDNAレベルでラットGDNFRαに対して53%の同一性を有している。
rGDNFRα、hGDNFRα、及びhNTNRαと同様に、rNTNRαは、グリコシル−ホスファチジルイノシトール(「GPI」)修飾を介して細胞外膜に結合している細胞外タンパク質である。これは、分泌のためのアミノ末端シグナルペプチド、3つの潜在的なグリコシル化部位、及びGPI結合に対する切断/結合部位となる一群の3個の小アミノ酸(グリシン、セリン、アスパラギン)が先行している17のカルボキシ末端疎水性アミノ酸の伸展を有している(図4)。驚いたことに、ヒトとラットのGDNFRαの間で保存されている30個のシステイン残基の位置は、ヒトとラットのNTNRαの間で保存されている(図5)。これらのシステイン残基はNTNRαとGDNFRαの間で完全に保存されている(図5)。細胞外ドメイン(「ECD」)にはシグナルペプチドとGPI結合部位が隣接している。
実施例3
膜結合及び可溶性NTNRαの発現ベクター
哺乳動物のタンパク質発現のためにヒトNTNRαの完全型オープンリーディングフレームをPCRを使用して増幅し、CMVベースの発現ベクターpRK5もしくはpRK7中にクローニングした。プラスミドをヒトNTNRに対してpRK−hNTNRαと命名した。
可溶型ラット及びヒトNTNRαを調製するために、ヒトFc配列の前の(GPI結合部位を欠く)各受容体の最初の432のアミノ酸をクローニングして、ラットとヒトの双方のNTNRα−IgG発現作成物を作成した。例えば、ヒトFc(IfF2a)配列の前の(GPI結合部位を欠く)受容体の最初の432のアミノ酸をクローニングしてNTNRα−IgG発現作成物を作成した。プラスミドは、hNTNRα融合に対してはpRK−hNTNRα−IgG、ラットNTNRα融合に対してはpRK−rNTNRα−IgGと命名した。ヒト遺伝子融合をコードしている核酸配列は配列番号15であり、これはヒト融合タンパク質配列番号16をコードしている。ECDへの構造の付着の好適な位置は、NTNRαECDのCFTELTTNIIPG配列の内部、あるいは好ましくはそのC末端である。ラット遺伝子融合をコードしている核酸配列は配列番号17であり、これはラット融合タンパク質配列番号18をコードしている。
実施例4
NTNRαの組織分布
NTNRαmRNAの組織分布をインサイツハイブリッド形成分析法を用いて調べた。その分布をGDNFRαの分布と比較した。
インサイツハイブリッド形成では、E15.5ラット胎仔を4%のパラホルムアルデヒドに一晩浸漬固定し、15%のスクロースで一晩凍結保護した。成体ラットの脳と脊髄を新鮮凍結した。全ての組織を16μmの切片とし、記載されたように(DavisほかScience 259:1736-1739(1993))33P−UTP標識RNAプローブを用いてインサイツハイブリッド形成用のプロセッシングを行なった。センス及びアンチセンスプローブをT7ポリメラーゼを用いてGDNFRαのN末端領域から引き出した。NTNRαRNAは、hNTNRαから誘導され、hNTNRα.T7インサイツプローブ(配列番号:19)と命名されたプローブで検出した。
胎仔及び成体のラット神経系において、NTNRαのmRNAは、ドーパミン作動性ニューロンが位置している前中脳中に、運動ニューロンが位置する前脊髄の一部中に、及び感覚神経がある後根神経節(DRG)中に見出された。また、高レベルのNTNRα転写物が、例えば胎仔腸、膀胱、心臓刺激伝導系及び横隔膜のような組織に見出された。成体ラットの脳においては、NTNRαは、主に黒質、皮質及び嗅球並びに脊髄後角に見出された。NTNRαはGDNFRαを発現する組織中に時折見出されたが、2つの転写物は、非常によく互いに隣接して存在していた。例えば、肢においては、GDNFRαは筋細胞中に発現されるが、NTNRαは筋肉を弱める腕神経叢神経中に見出される。同様に、胎仔の膀胱中では、NTNRαは筋層中に発現される一方、GDNFRαは下にある上皮に発現される。最後に、腸においては、NTNRαは、粘膜上皮中に発現される一方、GDNFRαは隣接平滑筋中にのみ発現される。発現のこのパターンは、NTNRαが神経系の内側並びに外側でシグナルを媒介するという考えと一致しており、NTNRαとGDNFRαに対する区別される相補的な生物学的役割を示唆している。
実施例5
NTNRαはNTNを特異的に結合する
NTNに対するNTNRαの結合を決定するために平衡結合実験を実施した。pRK−hNTNRα−IgGあるいはpRK−rNTNRα−IgG作成物の何れかが一過性に形質移入された293細胞由来の条件培地が可溶性受容体をもたらした。条件培地は、2mg/mlのBSA(シグマ)及び0.05%のBrij96(フルカ)を含むPBS中に入れた異なった濃度の適当なコールドリガンドと共に室温で4時間5pMの125Iヒトニュールツリン、マウスニュールツリン、又はrGDNFとインキュベートした。リガンドは受容体に対して過剰である。ついで、受容体/リガンド複合体を室温で更に1時間の間、プロテインAセファロースCL−4B(ファーマシア)と共にインキュベートした。0.2mg/mlのBSAを含むPBSで洗浄した後、特異的な知覚可能な数を計測した。IGORプログラムを使用してKdを決定した。ヒトとマウスの125I−NTNの双方が、組換え可溶性ヒトNTNRα(データは示さず)又は可溶性rNTN−Rαタンパク質に、およそ10pMのKdで特異的かつ可逆的に結合しうることが見出された(図6Cに挿入)。これに対して、ヒトNTN(データは示さず)もマウスNTNも何れもrGDNFRαから125I−rGDNFを置換することができず、rGDNFRαに対するヒトもしくはマウスの125I−NTNの高親和的結合は検出されなかった(図6A)。従って、NTNは特異的にNTNRαに結合し、rGDNFRαではなくNTNRαと高親和性をもって相互作用をする。NTNRαがNTNに対する特異的な受容体であることを更に確認するために、125I−rGDNFを使用して競合結合実験を実施した。組換え可溶性rGDNFRαに対する置換可能な高親和的結合が即座に認められた(3pMのKd)(図6Bの挿入);しかし、ヒトあるいはラットNTNRαの何れに対する(ボルトン・ハンター法によりチロシンか、ラクトペルオキシダーゼを使用してリシンがヨウ素化された)125I−rGDNFの結合も検出されなかった。GDNFはNTNRαではなくGDNFRαと高親和性をもって相互作用をする。そして、NTNはNTNRαに特異的に結合する。NTNとGDNFRαの間に高親和的相互作用は検出されなかったが、より高濃度の未標識NTN(10nm)がGDNFRαから標識rGDNFを置換したとき、低親和的相互作用(Kd>1nM)が認められた。
記載されたようにして実施された細胞ベース平衡結合分析により(TreanorほかNature 382:80-83(1996))、GDNFとニュールツリンに対するGDNFRαとNTNRαの特異性がそれぞれ確認された。全長NTNRα発現作成物(又はGDNFRα)か無関係な(対照)作成物が一過性に形質移入された293細胞が膜結合型受容体をもたらした。未修飾受容体を発現する細胞への競合結合法を用いてGDNFとGDNFRαの間及びNTNとNTNRαの間の観察された特異的会合は可溶性受容体データ(データは示さず)と一致した。
膜結合受容体のホスホイノシチド−特異的ホスホリパーゼC(「PIPLC」)処理のリガンド結合効果を決定した。PIPLCはGPI結合を特異的に切断する酵素である(KokeほかProt.Express.Purification 2:51-58(1991);Shukla, Life Sci., 10:1323-1335(1982);RheeほかScience, 244:546-550(1989))。全長NTNRα発現作成物か無関係な(対照)作成物が一過性に形質移入された293細胞を、PIPLCの指示量の存在下で室温で90分間〜20000cpm125IヒトNTNと共にインキュベートした(図7A)。0.2mg/mlのBSAを含む氷冷PBSで細胞を洗浄し、ついで細胞会合125Iを測定した。NTNRαがGPI結合により細胞表面に結合しているという予想と一致して、NTNRαを発現している細胞に対する125I−NTNの結合は次の処理で著しく減少した(図7A)。従って、NTNRαはNTNに対する特異的な高親和性GPI−連結タンパク質である。
実施例6
NTNRαがNTNに対する生物学的応答を媒介する
NTNRαがNTNに対する生物学的応答を媒介することを確認するために、NTNRαを発現する細胞の生存に対するNTNの効果を決定した。生存アッセイに対して、E14ラットの運動ニューロンを、記載されたようにして単離し、三つ組のウェルに蒔き生育させた。指示された成長因子の添加後、生存しているニューロンの数を72時間後に測定した(図7B)。NTNは、(インサイツハイブリッド形成により測定される)NTNRαを発現する一次運動ニューロンの死を防止することができることが認められた(図7B)。更に、NTNとGDNFが区別される受容体を利用するという知見と一致して、2つの因子に対する運動ニューロンの生存応答の定量的差異が検出された:飽和濃度ではGDNFは100%のBDNF−応答性運動ニューロンの生存を促進した;その受容体が運動ニューロンが常在する胎仔前角にまばらに分散したNTNはこれらの細胞の50%だけの死を防止することができる(図7B)。NTNはNTNRαを発現する一次胎仔ドーパミン作動性ニューロンの死を防止することができることもまた観察された。
NTNRαがNTNシグナルの必要とされるメディエータであることを更に確認するために、胎仔運動ニューロンをPIPLCで処理し、NTN又はBDNFの存在下でのその生存を培養中でモニターした。E14ラットの運動ニューロンを、記載されたようにして単離し、三つ組のウェルプレートに蒔き、生育させた。表示された成長因子の添加前1−2時間、並びに添加後12時間及び24時間に表示サンプルにPIPLC(2−4ug/ml)を添加し、生存しているニューロンの数を72時間後に決定した(図7C)。飽和濃度のNTNで生存している胎仔ラット脊髄運動ニューロンの数は、PIPLC処理後に70−90%減少したが、PIPLC−処理ニューロンの脳由来神経栄養因子(BDNF)に対する応答には減少が認められなかった。更に、可溶性NTNRα(IgG融合)と組み合わせてNTNがこれら運動ニューロンに加えられたとき、NTNに対する応答が回復した(図7C)。従って、NTNRαはNTNシグナル伝達カスケードの必須成分であると思われ、機能性NTN受容体のリガンド結合サブユニットの予想特性を有している。また、可溶性NTNRα受容体は、細胞表面NTNRαを欠くが相補のRet膜貫通タンパク質を発現している細胞にNTN−応答性を付与することができる。
実施例7
NTNRαはRetを介して作用しうる
GDNFRαのように、NTNRαは細胞質ドメインを欠き、GPIを介して細胞の外表面に結合しているようなので、細胞内部へのNTNシグナルの伝達には更なるタンパク質が関与している。チロシンキナーゼ受容体Retは、それ自身はGDNFもしくはNTNを高親和性で結合しないが(JingほかCell 85:1113-1124(1996);TreanorほかNature 382:80-83(1996);データは示さず)、GDNF受容体のシグナル伝達成分であると思われるので、NTNRαへのNTNの結合に続くNTN応答のRet伝達を決定した。チロシンリン酸化を検査するために組織をPIPLCと共に又はPIPLCなしで37℃で1時間インキュベートし、ついで様々な濃度のNTNに暴露した。次に、PBS中の2mMのEDTAでプレートから細胞を取り除き、氷冷バッファー(10mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)、100mMのNaCl、1%のNP40、5mMのEDTA、100mMのバナジン酸ナトリウム、2mMのPMSF、及び0.2単位のアプロチニン)で溶解し、Retの19のアミノ酸カルボキシル末端に対して産生した抗血清での免疫沈降に使用し、プロテインAセファロースに結合させた。免疫沈降タンパク質をSDA試料バッファー中での煮沸により放出させ、8%のSDS−ポリアクリルアミドゲルで分離し、ニトロセルロース膜に移し、抗ホスホチロシン抗体(アップステート・バイオテクノロジー・インク)と反応させた;検出はECLウェスタンブロット検出システム(アメリカン・ライフ・サイエンス)で行った。内因性c−retを発現するヒト神経芽細胞腫株化細胞、TGW−1(IkedaほかOncogene 5:1291(1991);TakahashiほかOncogene 6:297(1991))をNTNに5分間暴露し、Retチロシンリン酸化のレベルを測定した。NTNは明らかにRet(図7D)、並びにこの株化細胞中の受容体チロシンキナーゼ応答性細胞質キナーゼERK(すなわち、MARK)のリン酸化を誘導したが、調べられた4種の他の神経芽細胞腫株化細胞では見られなかった(データは示さず)。更に、NTNRαがNTNとRetの間の必須のメディエータであるという仮説と一致して、NTNはPIPLCで処理された細胞においてRetに有意なチロシンリン酸化は誘導できなかった(図7F)。同様の結果がGDNFについて得られた。NTNを可溶性NTNRαと共に添加したとき、PIPLC−処理TGW−1細胞においてチロシンリン酸化Retタンパク質を直ぐに検出した。
これらの知見は、RetがNTNシグナルの伝達に関与していることを示唆しているので、Retが推定上のNTN受容体複合体の一部であるかどうかを決定した。NTNへの暴露時におけるタンパク質複合体の生成を調べるために、免疫共沈降実験を、500ng/mlのNTNに暴露したNTNRα−発現TGW−1細胞について実施した。暴露後、細胞を温和な洗浄剤brij96(シグマ)で溶解した(Davisら1993)。哺乳動物タンパク質発現では、完全型オープンリーディングフレームをPCRを使用して増幅し、CMVベース発現ベクター中にクローン化した。共沈降実験では、NTNRαの成熟コード配列とシグナルペプチドの間にエピトープタグを挿入した。タンパク質複合体をRetに対するモノクローナル抗体で免疫沈降させ、ついでNTNに対するポリクローナル抗体を使用するウェスタンブロットで分析したとき、NTNはRet抗体によって即座に共免疫沈降させられたが、これは、NTNとRetが細胞表面で物理的に相互作用するという考えに一致している。NTNRαがNTN/Retタンパク質複合体の一部であることを確認するために、ヒト胎児の腎臓293細胞を発現ベクター、Retのみ又はc−retの発現ベクターとエピトープタグ付NTNRαの組み合わせを一過性に形質移入し、NTNに暴露し、温和な洗浄剤brij96(シグマ)で溶解した(Davisほか1993)。推定上の免疫複合体をRetに対するポリクローナル抗体で免疫沈降させ、ニトロセルロースフィルター上に移し、エピトープタグ付NTNRαに対するポリクローナル抗体で分析した。NTNRαとRetタンパク質複合体中に見出すことができるという考え方に一致して、NTNが無い場合ではなくある状態でNTNRαがRet抗体により直ぐに共免疫沈降させられた。これらの発見は、NTN、NTNRα及びRetが細胞表面上で複合体を形成することができ、RetとNTNRαが機能性NTN受容体の成分であり、NTNRαがNTNとRetの間の相互作用の中間物であることを証明している。
神経栄養因子に対する発達中のニューロンの生存応答におけるNTNRαの潜在的な役割を明確にしその機能をGDNFRαの機能と比較するために、マイクロインジェクションを用いて、GDNFかニュールツリンの何れかに応答して通常は生存しない培養ニューロン中にNTNRαとGDNFRαをコードしている発現プラスミドを導入した。幾つかの異なったニューロン集団の調査から、遅発性胎仔ラット交感神経細胞の生存をニュールツリンは促進するが(Kotzbauer, 1996)、出生4日(P4)マウスの上頚交感神経節(SCG)の交感神経細胞は培養のニュールツリンとGDNFの何れによっても支援されていないことがここで見出された。これらのニューロンはまたマイクロインジェクションが比較的容易であり、神経栄養因子を欠く既知の培地中で迅速に死亡するので、ニューロンの生存と神経栄養因子の応答性におけるNTNRαの関与を調べるのに非常に有用である。SCGニューロンにおけるNTNRαかGDNFRαの何れかのみの異所性発現は、GDNFかニュールツリンの何れかに対するこれらニューロンの生存応答に対する効果は無視できるものであった(NTNRα又はGDNFRαの何れかの発現プラスミドでの注入に続いてこれらの因子を含む培地中で生存するのは5%未満)。これは、GDNFRαもNTNRαの単独の何れもGDNFとニュールツリンに対する生存応答を媒介し得ないことを示唆している。このことは、GPI−連結受容体が、GDNFRαの場合はRetのような適当な膜貫通シグナル伝達タンパク質なしでは(Treanorほか, 1996;JIngほか, 1996)、またCNTFRαの場合はgp130とLIFRβなしでは(Davisほか, 1993)そのリガンドに対する応答を媒介することができないという考えに一致する。
RetはGDNF受容体複合体の必須のシグナル伝達成分として報告されている(Treanorほか, 1996;Jingほか, 1996;Truppほか, 1996;Durbecほか, 1996;Vega, 1996)。これらの受容体成分の双方を発現するニューロンがGDNFとニュールツリンに対する特異的な生存応答を示すかどうかを調べるために、ニューロンにRet及びNTNRα又はGDNFRαの発現プラスミドを同時注入した。Retのみの異所性発現はニュールツリン又はGDNFの存在下で生存するSCGニューロンの数に対してほんの僅かな効果を有しているものであった(10と15%の間)。しかし、NTNRαプラスRetを同時発現するニューロンは、Retだけを発現するニューロンより著しく大きい大幅に高められたニュールツリンへの生存応答を有していた(p=0.0003、t−テスト、n=6)。同様に、GDNFRαプラスRetを同時発現するニューロンは、Retだけを発現するニューロンより著しく大きい大幅に高められたGDNFへの生存応答を有していた(p=0.0002、t−テスト、n=9)。これに対して、GDNFRαプラスRetを同時発現するニューロンはニュールツリンに対して増大した生存応答を示さず、Ret−発現ニューロンより、ニュールツリンで生存するRet/GDNFRα発現ニューロンは多くはなかった。同様に、GDNFで生存するRet/NTNRα−発現ニューロンの数はこの因子で生存するRet−発現ニューロンの数とは大きくは異なっていなかった(p=0.2、t−テスト、n=9)。これらのデータは上記において報告した結果を確認するものである。
実施例8
NTNはインビボにおけるニューロン生存因子である
NTNが中脳DAニューロンの生存を促進する作用をなしうるかどうかを決定するために、DAニューロンがリッチにされたE14ラットの前中脳の培養を調査した。この培養系は、GDNFと同様に、NTNが発育している中脳のチロシン水酸化酵素発現細胞の生存に強力な作用をもたらしうることを明らかにした。NTNの作用強度と効力はGDNFのものと同様であり、NTNは最大有効用量のGDNFで見られるものよりも多い数の細胞の生存を促進する傾向を示した。
胎仔ラット中脳DAニューロンのインビトロ生存を促進するNTNの能力は、NTNが無傷の成体の脳のDAニューロンの生存を促進するのに効果的でありうることを示唆している。ここに示したように、チロシンキナーゼRetはGDNFとNTNの双方の受容体複合体の重要な成分であり、成体ラットの中脳DAニューロン中に発現される。NTNRαが成体の黒質DAニューロン中に発現されるかどうかを調べるために、インサイツハイブリッド形成法を使用した。成体ラットの前中脳の切片は、黒質緻密部と腹側被蓋野に主に限局されているGDNFRαに対して強いシグナルを示したが、NTNRαのシグナルに対してより温和で散在したシグナルが前中脳において観察された。チロシン水酸化酵素に対して染色された切片において、TH+黒質細胞の大部分はNTNRαの弱く又は曖昧なシグナルを示したが、強いハイブリッド形成が黒質のTH+細胞と組み合わせてGDNFRαに対して認められた。NTNRαに対する強いシグナルは、しかしながら、脚間核、副視索の内側及び外側核、及び黒質緻密部の背外側側面に境を接する細胞を含む中脳DAニューロンに直ぐに隣接する領域に認められた。成体黒質DAニューロン中及び近傍における可溶性NTNRαの発現能をとると、これらの結果は、NTNが成体黒質ニューロンに作用していることを示唆している。
NTNの黒質内注入が線条体6−OHDA投与に続いてDAニューロンの生存とTH発現を促進することが可能で、NTNの作用強度と効力はGDNFのそれに類似していることがここで決定された。黒質DAニューロンの生存度と表現型発現を独立に評価するために、逆行性蛍光トレーサー、フルオロゴールドと、チロシン水酸化酵素の免疫細胞化学の双方を使用して細胞をカウントした。6−OHDA投与に続いて1週間投与した1又は10ugのNTNの1回の黒質内注入は、ビヒクル処理動物に見られるよりも1ヶ月後の破壊で(逆行性トレーサーフルオロゴールドにより評価して)ほぼ3倍高い細胞生存度に至った。チロシン水酸化酵素を発現する細胞の数を調べたところ、1マイクログラムではなく10マイクログラムのNTNで処理したラットにおいて有意な保護があることが明らかになった。細胞生存とTH発現についてのNTNの1回の注入の効果は匹敵するGDNF量の場合に見られるものと区別がつかなかった。NTNとGDNFの双方が、神経毒性もしくは外傷性障害に続く黒質ニューロンの生存を促進することができる。
ここに示されているように、NTNは、発育中及び成体の黒質線条体系中に発現され、黒質ドーパミン作動性ニューロンの生存及び表現型発現に対して強い影響をもたらしうる。DAニューロンを保護し6−OHDAの投与に続くTH発現を促進するNTNの作用は、この因子がパーキンソン病の治療における有用な薬剤となりうることを示している。
実施例9
NTNRα及びGDNFRα細胞外ドメインが受容体アゴニストとして作用する
受容体アゴニストとしてのGDNFRα及びNTNRα細胞外ドメインの効果を、外因的に添加した各受容体の細胞外ドメインで治療した前中脳、胎仔ラット、ドーパミン作動性ニューロンの生存を観察することにより調べた。前中脳のドーパミン作動性ニューロンがリッチにされた培養を、0日が膣栓が最初に出現した日であったE14ラットから解体した。組織を、少しの例外を除いて記載されているようにして(Poulsenほか, Neuron13(5):1245-52(1994))、酵素で処理し、単一の細胞懸濁液に倍散し、プレート培養した。細胞をガラスに蒔き、全ての成長因子を、(培地中に20uMのHClの最終濃度となる)最終の希釈前に1mMのHClの20X濃縮溶液中に先ず希釈した。あらゆる因子をプレーティングの時に一度に添加した。培地中のインスリン濃度を5um/mlから2.5ug/mlまで減少させた。培養を三つ組プレート培養した。1ug/mlでGDNFRαかNTNRαの何れかを、細胞プレーティングから2時間後に培養に添加した。同時に、並行して培養はGDNFRα又はNTNRαプラス50ng/mlのGDNFかNTNを受け入れるか、外因的に受容体を加えないで50ng/mlのGDNF又はNTNを受け入れた。培養4日後に、細胞を固定し、ドーパミン作動性ニューロンのマーカーであるチロシン水酸化酵素(TH)を染色し、各条件におけるTH+細胞の数をカウントし、対照培養(因子を添加しないで成長させた並行培養)と比較した。GDNFRαとNTNRαの両方の細胞外ドメインがC末端にヒスチジンタグ(6ヒスチジン残基)を含んでおり、これが細胞外ドメインの精製に対する簡便な操作手段となった。Hisタグ付GDNFRαECDのC末端はDGLAGASSHHHHHHであり、ここでGDNFR配列中に通常存在するHis残基の一つをタグ配列の部分を提供するために使用した。分子は(一過性形質移入、形質移入96時間後に収集された上清により)293細胞に産生され、標準的なIMAC精製法を使用してNi−NTAカラム上で精製した。単離ECDをPBS中に透析し、ついで4℃で貯蔵した。
3種の別個の実験において、外因的に添加されたリガンドの不存在及び存在下で、GDNFRα及びNTNRα細胞外ドメインが、対照培養より著しく大なるドーパミン作動性ニューロンの生存を促進した(図8Aから8C)。それぞれの場合において、生存量はリガンド(GDNF又はNTN)のみでの生存量よりも僅かに多いか等しかった。生存は、リガンドとその特定の受容体細胞外ドメイン(例えばNTN+NTNRα、GDNF+GDNFRα)の双方が一緒に添加されたとき、更に増大した。(因子の添加なしに)対照培養に添加された抗NTNモノクローナル抗体は、細胞成長の観測されたバックグラウンドレベルの減少には至らず、テスト期間中のバックグラウンド成長が、あるとすれば、内因性NTNによるものではないことを示している。これらの結果は、リガンドなしに、このファミリーの受容体の受容体細胞外ドメインの添加が対照に対して有意なニューロン生存効果を促進することを示している。
実施例10
NTNRα及びNTNはインビボでのドーパミン利用性を向上させる
可溶性NTNRαが無傷の成体ラットの黒質線条体ドーパミン作動系におけるNTNの効果を向上させると判定された。NTNと共にNTNRαを投与すると、ドーパミンに対するDOPAC(ジヒドロキシフェニル酢酸、ラットの主要なドーパミン代謝産物)の比を増加させ、これはドーパミン作動性ニューロンの機能アップレギュレーションを示している。成体SDラット(295−345g、n=23)に、26sのゲージ針を持つ10μlのハミルトンシリンジを使用して、ブレグマに対して前方に0.5mm、側方に3.0mm及び硬膜に対して腹側に4.5mmの定位固定座標で、右腺条体に、hNTN(0.1μg)、可溶性his−タグhNTNRα(0.6μg)、hNTN(0.1μg)と可溶性his−タグhNTNRα(0.6μg)の双方、又はビヒクル(4%マンニトール、10mMのHEPES)の1回の2μlの注射を行った。術後7日に、選択された脳領域からの組織をドーパミン及びドーパミン代謝産物含有量の分析のため収集した。ラットの断頭に続いて、脳を迅速に取除き、氷冷リン酸緩衝食塩水中に30秒間浸漬し、1mmの冠状切片を冷却金属脳マトリックスの助けを借りて切断し、線条体の3つの領域(前側、中央及び後部)、側坐核、及び黒質の組織パンチを11、13及び16ゲージ針をそれぞれ使用して採取した。組織パンチを内部基準としてDHBAを含む200μlの0.1M過塩素酸でホモジェナイズした。ホモジェネートを23000−28000xgで20分間遠心分離し、上清を電気化学的検出を伴うイオン対逆相高速液体クロマトグラフィーを使用してドーパミン及びDOPAC含有量について分析した。DOPAC/ドーパミン比を注入及び非注入側で計算し、非注入側に対する注入側のパーセントとして表した。図9に示されるように、NTNとNTNRαの組合わせは、ビヒクル、NTNRα単独、及びNTN単独と比較して線条体におけるDOPAC/ドーパミン比を増大させた。これらの結果は、NTNとNTNRαの組合せが線条体におけるドーパミンの利用を強力に向上させ、パーキンソン病の治療に有用であることを示している。
ここに提供したものは、GDNFタンパク質ファミリーの最近発見されたメンバーであるニュールツリンに対する新規な受容体をコードしている新規な配列である。ここに提供した結果は、成長及び分化因子に対する多成分受容体の新規なファミリーの存在を明らかにする。受容体複合体は、共有シグナル伝達サブユニット−膜貫通型チロシンキナーゼ受容体Ret−及びGPI−連結の受容体特異的リガンド結合サブユニット−NTNRα(NTNの場合)及びGDNFRα(GDNFの場合)からなる。これらの発見から、NTNとGDNFRの分子レベールでの作用機構の更なる詳細を決定することができる。また、GDNF/NTNタンパク質ファミリーの区別できる生物学的活性が、異なったシグナル伝達系を活性化する能力によるよりも、その各々のリガンド結合受容体成分の区別される組織分布により決定されることが明白である。最後に、ここに示したデータは、(LindsayとYancopoulos(Neuron17:571-574(1996)によりレビューされた)チロシンキナーゼ受容体を活性化する不必要に複雑な方法であると過去に思われていたものの関与に対して対比でき簡単な生物学的原理を提供する。リガンド結合アクセサリー分子を変更することが複数の成長因子に使用できる同じシグナル伝達系を補充する最も経済的な方法であり、GPI結合タンパク質が経済的なリガンド結合アクセサリー分子であることが明らかになった。複数の成長因子による一つの膜貫通型シグナル伝達系の使用は、サイトカインにより(StahlとYancopolulos, Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct. 24:269-291(1994))、並びに形質転換成長因子タンパク質ファミリーのメンバーにより(WranaほかNature370:341-347(1994))なされると思われる。同様に、GPI結合タンパク質は、幾つかの多成分受容体、例えば菌体内毒素受容体(LeeほかProc. Natl. Acad. Sci. USA 90:9930-9934(1993);PuginほかProc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2744-2748(1993))及び毛様体神経栄養因子の受容体(DavisほかScience259:1736-1739(1993))におけるリガンド結合アクセサリー分子として使用される。ここに提供した受容体と関連する受容体系の発見は、シグナル伝達において新規なパラダイムを定め、脊椎動物の神経系において細胞外シグナルを伝達するために使用される広範な方策を強調し、医師が利用できる治療様式を拡張する細胞活性と生存を変調し制御する手段を提供する。
配列表
(1)一般情報:
(i)出願人:Genentech, Inc.
(ii)発明の名称:ニュールツリン受容体
(iii)配列の総数: 19
(iv)現出願:
(A)あて名:Genentech, Inc.
(B)通り:460 Point San Bruno Blvd
(C)市:South San Francisco
(D)州: California
(E)国: USA
(F)郵便番号:94080
(v)コンピュータ読取り可能形態:
(A)媒体名:3.5インチ,1.44Mbフロッピーディスク
(B)コンピュータ:IBM PC コンパティブル
(C)オペレーティングシステム: PC−DOS/MS−DOS
(D)ソフトウェア:WinPatin(Genentech)
(vi)現出願データ:
(A)出願番号:
(B)出願日:
(C)分類:
(vii)優先権のもととなった出願
(A)出願番号:08/871913
(B)出願日:1997年6月9日
(vii)優先権のもととなった出願
(A)出願番号:08/802805
(B)出願日:1997年2月18日
(vii)優先権のもととなった出願
(A)出願番号:08/957063
(B)出願日:1997年10月24日
(viii)弁理士/代理人情報
(A)氏名: Torchia, PhD., Timothy E.
(B)登録番号:36700
(C)整理/ドケット番号: P1086R3PCT
(ix)通信情報:
(A)電話: 650/225−8674
(B)ファクシミリ: 650/952−9881
(2)配列番号:1
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 2378塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号1
(2)配列番号:1
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 2600塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(ix)配列の特徴
Figure 0004086324
Figure 0004086324
Figure 0004086324
(2)配列番号:2
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 1392塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号2
Figure 0004086324
(2)配列番号:3
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 464アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号3:
Figure 0004086324
Figure 0004086324
(2)配列番号:4
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 3358塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号4:
Figure 0004086324
Figure 0004086324
Figure 0004086324
(2)配列番号:5
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 1392塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号5:
Figure 0004086324
(2)配列番号:6
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 464アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号6:
Figure 0004086324
Figure 0004086324
(2)配列番号:7
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 229塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号7:
Figure 0004086324
(2)配列番号:8
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 521塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号8:
Figure 0004086324
(2)配列番号:9
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 478塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号9:
Figure 0004086324
(2)配列番号:10
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 433塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号10:
Figure 0004086324
(2)配列番号:11
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 418塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号11:
Figure 0004086324
(2)配列番号:12
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 364塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号12:
Figure 0004086324
(2)配列番号:13
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 319塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号13:
Figure 0004086324
(2)配列番号:14
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 309塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号14:
Figure 0004086324
(2)配列番号:15
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 1995塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号15:
Figure 0004086324
Figure 0004086324
(2)配列番号:16
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 664アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号16:
Figure 0004086324
Figure 0004086324
Figure 0004086324
(2)配列番号:17
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 1995塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号17:
Figure 0004086324
Figure 0004086324
Figure 0004086324
(2)配列番号:18
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 664アミノ酸
(B)配列の型: アミノ酸
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号18:
Figure 0004086324
Figure 0004086324
Figure 0004086324
(2)配列番号:19
(i)配列の性質:
(A)配列の長さ: 670塩基対
(B)配列の型: 核酸
(C)鎖の数: 一本鎖
(D)トポロジー: 直鎖状
(xi)配列: 配列番号19:
Figure 0004086324

Claims (33)

  1. (a) 配列番号3又は6のアミノ酸配列のアミノ酸残基23と447の間からなるニュールツリン受容体−α(NTNRα)細胞外ドメインアミノ酸配列;
    (b) (a)のアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列;
    (c) (a)又は(b)をコードする核酸にストリンジェントな条件下(20%ホルムアミド中42℃)でハイブリダイズする核酸によりコードされる配列;
    (d) (a)又は(b)のアミノ酸配列の一あるいは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加によって(a)から得られる配列;及び
    (e) (a)、(b)、(c)又は(d)のアミノ酸配列に免疫グロブリン又はエピトープタグのアミノ酸配列が共有結合したアミノ酸配列からなる、キメラNTNRα:
    からなる群から選ばれる配列を含んでなり、ニュールツリン(NTN)に結合可能なポリペプチド。
  2. NTNに特異的に結合する、請求項1のポリペプチド。
  3. 血清半減期を増加させる分子に抱合又は融合されている、請求項のポリペプチド。
  4. ニュールツリン受容体−α(NTNRα)細胞外ドメイン(ECD)若しくはNTNRαイムノアドヘシンである、請求項1のポリペプチド。
  5. キメラNTNRαである、請求項1のポリペプチド。
  6. 免疫グロブリン配列に融合したNTNRαアミノ酸配列を含む、請求項のポリペプチド。
  7. エピトープタグ配列に融合したNTNRαアミノ酸配列を含む、請求項のポリペプチド。
  8. 請求項1のポリペプチドと生理学的に許容可能な担体を含んでなる、細胞表面のRet膜貫通型タンパク質を活性化するための組成物。
  9. NTNRαに結合する分子の同定方法において、NTNRαをそれに結合すると思われる分子にさらし、該分子のNTNRαへの結合を決定することを含んでなり、前記NTNRαが:
    (a) 配列番号3又は6のアミノ酸配列のアミノ酸残基23と447の間からなるニュールツリン受容体−α(NTNRα)細胞外ドメインアミノ酸配列;
    (b) (a)のアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列;
    (c) (a)又は(b)をコードする核酸にストリンジェントな条件下(20%ホルムアミド中42℃)でハイブリダイズする核酸によりコードされる配列;
    (d) (a)又は(b)のアミノ酸配列の一あるいは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加によって(a)から得られる配列;及び
    (e) (a)、(b)、(c)又は(d)のアミノ酸配列に免疫グロブリン又はエピトープタグのアミノ酸配列が共有結合したアミノ酸配列からなる、キメラNTNRα:
    からなる群から選択される、同定方法
  10. NTNRαがニュールツリン受容体−α(NTNRα)細胞外ドメイン(ECD)若しくはNTNRαイムノアドヘシンである、請求項の方法。
  11. TNRαに結合する分子を同定する方法において、NTNRαに結合しうると思われる分子に、請求項1ないし7の何れか1項に記載のポリペプチドをさらし、NTNRαへの結合を測定することを含んでなる方法。
  12. TNRαに結合する分子を精製する方法において、固相に固定されたNTNRαに分子を吸着させる方法であって、固相に固定されたNTNRαが請求項1ないし7の何れか1項に記載のポリペプチドであり、固定されたNTNRαから分子を回収する方法。
  13. NTNRαがキメラNTNRαである請求項12の方法において、免疫グロブリン定常ドメイン配列へNTNRα細胞外ドメイン配列を融合する方法。
  14. 請求項1のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
  15. モノクローナル抗体である、請求項14の抗体。
  16. 請求項15の抗体と生理学的に許容可能な担体を含んでなる、細胞表面のRet膜貫通型タンパク質の活性化を阻害するための組成物。
  17. サイトカイン又は神経栄養性因子を更に含んでなる、請求項16の組成物。
  18. 細胞を、細胞中のRet膜貫通型タンパク質を活性化するのに有効な請求項に記載のポリペプチドにさらす、体外において細胞中のRet膜貫通型タンパク質を活性化する方法。
  19. 体外におけるNTNに対する細胞の生理的応答を変調する方法において、細胞のNTNへの応答を変調するのに有効な量の、請求項1ないし7の何れか1項に記載のポリペプチドと細胞を接触させる方法。
  20. 体外におけるRet発現細胞の生存を増大させる方法において、Ret発現細胞に、生存促進に有効量の、請求項1ないし7の何れか1項に記載のNTNRα細胞外ドメインを投与する方法。
  21. 体外における細胞表面Retを活性化させる方法において、細胞に、Ret活性化に有効量の、請求項1ないし7の何れか1項に記載のNTNRα細胞外ドメインを投与する方法。
  22. NTNRαの存在を判定する方法において、NTNRαを含むと思われる被験試料を請求項14の抗体にさらし、被験試料への該抗体の結合を判定する方法。
  23. 請求項1のポリペプチドをコードする配列を含んでなる単離核酸分子。
  24. 請求項のポリペプチドをコードする単離核酸分子。
  25. 核酸分子に作用可能に結合したプロモーターを更に含む、請求項23の核酸分子。
  26. 請求項23の核酸分子を含む発現ベクターであって、該ベクターで形質転換される宿主細胞においてプロモーター配列及び/又はエンハンサー配列に作用可能に結合したベクター。
  27. 請求項26のベクターを含む宿主細胞。
  28. NTNRαをコードしている核酸分子を使用してNTNRα細胞外ドメインを産生する方法において、前記NTNRα細胞外ドメインの発現を許容する条件下で請求項27の宿主を培養する方法。
  29. 更に宿主細胞培養物からNTNRαを回収する、請求項28の方法。
  30. 請求項1のポリペプチドをコードする核酸を発現する細胞を含む、非ヒト遺伝子組換え動物。
  31. マウスである請求項30の動物。
  32. 本来のコード配列における位置に請求項1ないし7のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする遺伝子を持つ細胞を含む、非ヒト遺伝子組換え動物。
  33. マウスである請求項32の動物。
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