JP2009148258A - Gdnf及びgdnf受容体の用途 - Google Patents

Gdnf及びgdnf受容体の用途 Download PDF

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ロバート, ディー. クライン,
Mark W Moore
マーク, ダブリュ. ムーア,
Arnon Rosenthal
アーノン ローゼンタール,
Anne M Ryan
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Abstract

【課題】GDNFRα、GDNFRα細胞外ドメイン(ECD)、GDNFRα変異体、キメラGDNFRα(例えばGDNFRαイムノアドヘシン)、及びこれらに結合する抗体(アゴニスト及び中和抗体を含む)の提供。
【解決手段】GDNFRα−リガンド、例えばGDNFに対する応答によって、細胞へGDNFRαを提供することによる、細胞活性及び生存を変調する方法。GDNFRα、GDNF、又はそのアゴニストを別個に又は複合して用いて腎臓疾患を治療する方法。
【選択図】なし

Description

〔関連出願の参照〕
本出願は、同時に係属する米国特許出願第08/615902号(1996年3月14日出願)及び第08/618236号(1996年3月14日)を参照し、米国特許法第120条に基づきこれらの優先権を主張するもので、その開示内容全体を出典明示によりここに援用する。
〔導入〕
〔技術分野〕
本願発明は、 グリア細胞(神経膠細胞、Glia-cell)由来の神経栄養因子(「GDNF」)とその受容体GDNFRαの新規な使用方法に関するものであり、GDNFRαをコードする核酸及びアミノ酸配列を提供する。特に、本願発明は、天然のGDNFRα配列、GDNFRα変異体、GDNFRαの細胞外ドメインを含む可溶性GDNFRα変異体、キメラGDNFRα、GDNFRαに結合する(アゴニスト(agonist)及び中和(neutralizing)抗体を含む)抗体、及び、これらの分子のさまざまな用途に関するものである。本願発明は更に、GDNFRαに対するリガンドのアッセイ系、GDNFの生理学的機能、GDNFが関係する疾患の診断手法、GDNFRαと相同的な分子を同定するための方法、特に腎臓病のようなGDNFが関係するかあるいはGDNFRαが関係する疾患の治療手段に関連する。
〔技術背景〕
神経系の疾患は往々にして致命的であり、しばしば死亡に至る。神経学的疾患は慢性であることが多く、社会的、経済的な負担が大きい。例えば、脳卒中は米国では心臓病、がんについて3番目の死亡原因である。インシュリンのような成長因子、神経成長因子、脳由来の神経栄養因子、ニューロトロフィン−3、−4/5及び6、繊毛様神経成長因子、GDNF、最近ではニュートリン(neurturin)等の自然発生的なタンパクである神経栄養因子は、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、脳卒中、癲癇、ハンチントン病、パーキンソン病あるいは外延神経障害のような神経系の疾患に対して特定のニューロンの生存率を向上させる可能性があると提案されている。脊髄神経組織の成長と発達に影響を与える神経栄養因子あるいはニューロトロフィンは、脳及び周辺部位における多種多様なニューロン集団の分化、生存及び機能の促進に大きく関わっていると考えられている。神経栄養因子は、先に神経成長因子(NGF)で確立された一部の知見に基づくと、神経組織において重要なシグナル機能をもつと考えられている。NGFは、試験管内及び生体の内で、前脳の交感系、知覚系及び基底ニューロンの生存を支援する。外からのNGF投与は発生過程のニューロンが死滅することを防止する。反対に、抗NGF抗体の投与による内因性のNGFの排除あるいは隔離は、前記細胞の死滅を促進する(Heumann, J. Exp. Biol., 132:133-150 (1987); Hefti, J. Neurosci., 6:2155-2162 (1986); Thoenenら, Annu. Rev. Physiol., 60:284-335 (1980))。
NGF関連の他の神経栄養因子もその後同定された。これらは、脳由来の神経栄養因子(BDNF)(Leibrockほか, Nature, 341:149-152 (1989)))、ニューロトロフィン−3(NT−3)(Kaisho ほか, FEBS Lett., 266:187 (1990); Maisonpierre, ほか, Science, 247:1446 (1990); Rosenthalほか, Neuron, 4:767 (1990)))、及びニューロトロフィン4/5(NT−4/5)(Berkmeierほか, Neuron, 7:857-866 (1991)))。TGFβスーパーファミリーの遠いメンバーで、最近同定された、構造的に関連のあるGDNF及びニューツリン(「NTN」)は、知覚交感神経系及び中枢神経系のニューロンの潜在的な生存栄養因子である(Linほか, Science 260:1130-1132 (1993); Henderson ほかScience 266:1062-1064 (1994); Buj-Bello ほか, Neuron 15:821-828 (1995); Kotzbauer ほか Nature 384:467-470 (1996))。GDNFは、パーキンソン病、ALS及びアルツハイマー病に対する治療薬の可能性があると考えられてきた。GDNF及びNTNのシグナルが伝達される機構は解明されていない。
ニューロトロフィンは、NGFと同様、標的細胞表面の受容体との相互作用を通じて標的細胞に影響を与える。現在理解されているところによれば、2種の膜貫通糖タンパクが、既知のニューロトロフィン受容体として作用する。結合平衡に関する研究によれば、ニューロトロフィンに応答するニューロンには、 親和性の低いp75LNGFR又はp75と称する普通の低分子量(65,000〜80,000ダルトン)受容体と、130,000〜150,000ダルトンの高分子量受容体とがある。高親和性の受容体(trkA, trkB及びtrkC)は、受容体チロシンキナーゼでtrkファミリーに属す。
受容体チロシンキナーゼは、細胞の増殖、分化、及び生存を促進する種々のタンパクの受容体として知られている。trk受容体以外に受容体チロシンキナーゼとして知られているものには、上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、及び血小板由来成長因子(Platelet Derived Growth Factor, PDGF)がある。一般に、これらの受容体は、細胞膜を貫通し、一部は細胞質と接触し、残りの一部は細胞外に露出している。受容体の細胞外ドメインにリガンドが結合すると、受容体の細胞内ドメインのチロシンキナーゼの活性化が誘導され、細胞内シグナル伝達経路上の種々のタンパクが次々にリン酸化される。
受容体チロシンキナーゼ(「RTK」)の過剰発現は形質転換能と関連する。例えば、肝臓がん、肺がん、乳がん、大腸がんにおいてはEph RTKの上昇が見られる。他の多くのチロシンキナーゼとは異なり、この上昇は遺伝子の増幅あるいは再構成を伴わずに発生する。更に、ヒトのRTKであるHekは、白血球株化細胞のプレ−B細胞(B細胞前駆細胞)の表面に存在する白血球の固有のマーカーとして同定された。Ephに関しては、Hek同様、遺伝子の増幅あるいは再構成なしに、たとえば造血性腫瘍やリンパ系の腫瘍株化細胞中で過剰発現する。Myk-1(ヒトHekのマウス相同体、Bennett ほか, J. Biol. Chem., 269(19):14211-8 (1994))の過剰発現は、Ha-rasがん遺伝子を発現しているトランスジェニックマウスの、未分化で侵食性のある乳腺の腫瘍でみられた。
複数の膜貫通型チロキシンキナーゼは、発ガン性に関する役割に加えて、発生過程においても重要な役割を果たすことが報告されている。受容体チロキシンキナーぜのうちのいくつかは、発生段階で制御され、胚組織で主に発現する。FGFのサブクラスに属するCek1、Cek4及びCek5チロシンキナーゼがその例である(Pasquale ほか, Proc. Natl. Acd. Sci., USA, 86:5449-5453 (1989); Sajjadiほか, New Biol., 3(8): 769-78 (1991); Pasqualeほか, Cell Regulation, 2:523-534 (1991))。Ephファミリーのメンバーは神経系あるいは、特異的にニューロンで発現する複数のファミリーメンバーとともに、種々の成熟した組織で発現する(Maisonpierre ほか, Oncogene, 8:3277-3288 (1993); Laiほか, Neuron, 6:691-704 (1991))。
チロキシンキナーゼ受容体の過剰発現、あるいはこれら受容体のどれかが制御不能になると、種々の不具合あるいは病理学的障害を引き起こす。したがって、受容体チロシンキナーゼ経路あるいは細胞過程の障害に対する診断と治療の新規な手段を提供するために、受容体チロキシンキナーゼ(「RTK」)とそのリガンド、あるいはGPIが結合した受容体を制御、調節、操作する手段が必要とされている。本願発明は、診療医及び研究者に、特定のRTK受容体と特異的に相互作用する、新規なニューロトロフィン結合分子を提供する。この分子とニューロトロフィンリガンドが関係する新規な疾患の病状が同定される。したがって、この新規な受容体あるいはそのリガンドが役割を担う、神経栄養の情報伝達経路が関与する神経系の疾患あるいは他の疾患に対して、進んだ予防あるいは/又は治療法を提供することも本発明の目的の一つである。
本願発明の上記の目的及び上記以外の目的は、明細書の全体を通じて当業者に明らかになるであろう。
〔発明の要旨〕
本願発明は、部分的には、完全に腎臓及び腸内の神経系統を欠き、部分的に後根神経節(<23%)、交感神経(<35%)、知覚性結節(<40%)の欠損が見られる、GDNF欠損マウスの発見に基づくものである。GDNFヘテロ結合体は、早期において重大な腎臓障害を呈する。このように、GDNFは、後腎及び腸内のニューロンの発生と生存に必須な役割を演じる。したがって、GDNF及びGDNF様の化合物、必要に応じてGDNF受容体との組合せあるいは複合体、を用いてこのような疾病あるいは関連する疾病を治療する方法が提供される。
本発明はGDNFRαと称する新規なGDNF受容体、可溶性の受容体、GDNFRαの細胞外ドメイン(「ECD」)を提供する。更に、必要に応じて血清の半減期を延長する分子と結合あるいは融合させたGDNFRαポリペプチド、あるいは、生理学的に受容できるキャリアと共に製剤された薬剤が提供される。
リガンド結合能、好ましくはGDNF結合能、と共に受容体シグナル機能(Ret受容体チロシンキナーゼを経由した)を持つ可溶性GDNFRαは、細胞のGDNFRαリガンド(好ましくはGDNF)に対する応答性の付与、回復、増強に用いられる。この応答性は、リガンドとの結合、Retチロシンキナーゼのリン酸化及び、生存あるいは成長といった細胞活性を調節する、Retが仲介する下流側の活性を含む。この実施態様は、生体内(in vivo)及び試験管内(in vitro)で使用することができる。本願発明に係る化合物は、GDNFが関与する疾患及び本明細書に記載される、新たに同定される疾患に対して処方することができる。GDNFには結合するが、GDNFシグナルには関わらないGDNFRαECDは、 内因性のGDNFRαの活性化を抑制するため、GDNF リガンドを隔離するアンタゴニストとして用いることができる。このことは、哺乳動物内でGDNFリガンド量が過多、あるいはGDNFRαの活性化が過剰な疾患に対して有効である。
可溶性GDNFRα、好ましくはECDの医薬組成物は、GDNFRαリガンド、好ましくはGDNFを更に含む。リガンド/GDNFRα複合体を含むこのような組成物は、リガンドの半減期の延長、リガンドのゆっくりした持続的な放出、標的細胞へのGDNFRαリガンド応答性の付与、及び/又は内因性細胞GDNFRαあるいはRetの活性を直接的に活性化又は向上させる。組成物は、1つ以上のサイトカイン、神経栄養因子、それらのアゴニスト抗体を含んでも良い。
キメラGDNFRα分子、たとえば半減期の長いGDNFRαイムノアドヘシン(免疫付着因子)及び抗体認識部位が付けられたGDNFRαが公示されている。これらは、可溶性GDNFRα、特に細胞にGDNFを送付する、あるいはGDNF応答性を付与する複合体としての特定の使用法を発見する。特異性を2つ持つ免疫付着因子(たとえばGDNFRαのリガンド結合活性と、他のサイトカインあるいは神経栄養因子受容体のリガンド結合領域とを合せ持つ)は、他の因子あるいは標的送付因子とGDNFRαリガンドとが組合わさった、高親和性結合複合体を形成できる。
更に、GDNFRαに結合するか、あるいは、GDNFRαを活性化する分子を同定するための方法が提供される。GDNFRαのアゴニストあるいはアンタゴニストであるGDNFRαリガンド分子(ペプチド、抗体、小分子等の)を選別する、あるいは同定するアッセイ方法が提供される。そのような方法は、一般に、固定化GDNFRαに結合する可能性があると思われる分子を接触させ、固定化されたGDNFRαとの結合の有無を決定し、あるいは/又は、当該分子がGDNFRαを活性化するか(又は活性をブロックするか)否かを評価する工程を含む。そのようなGDNFRαリガンドを同定するために、細胞の表面に提示されたGDNFRαは、複数の合成化合物あるいは天然の化合物(血清や細胞のような内在的ソースからの)ライブラリーからの選別に用いられる。GDNFRαは又、内在性あるいは外来性のGDNFRαリガンドの血清中での濃度を測定する、診断ツールとしても用いることができる。
更に他の実施態様においては、GDNFRαリガンドを精製する方法が提供される。この方法は当該受容体に結合する治療活性を有する分子の商業的な生産と精製に用いられる。1つの実施態様において目的分子(一般的には、1種あるいはそれ以上の不純物を組成として含む)は固定化GDNFRα(例えば、プロテインA樹脂上に固定化されたGDNFRα)に吸着する。不純物は、GDNFRαに結合することができないので、一般的にはその樹脂に結合しない。したがって、リガンド分子が固定化された受容体から放出されるように溶出条件を変えることで、目的分子の樹脂からの回収が可能となる。
GDNFRαに特異的に結合する抗体が提供される。好ましい抗体は、ヒトには抗原性が無く、受容体の細胞外ドメインにある抗体認識部位と結合するモノクローナル抗体である。好ましい抗体は、GDNFRαとの親和性が少なくとも10L/mole、更に好ましくは10L/mole で結合するものである。好ましい抗体はアゴニスト抗体である。
GDNFRαに結合する抗体を、異種のポリペプチドと融合させることもできる。抗体あるいは融合物は、GDNFRαを受容体のソースから分離精製する用途を提供する。
更に、受容体を含むと思われるサンプルとの接触段階、及び結合が起こったか否かの検出を含む、生体内及び試験管内でのGDNFRαの検出方法が提供される。
適用例のうちのいくつかにおいては、アゴニスト抗体であることが望ましい。アゴニスト抗体は、GDNF の様なGDNFRαリガンドについて述べたのと同様に、GDNFRαの活性化において有用である。更に、これらの抗体は、哺乳動物において効果がある量のGDNFRαの活性化が治療効果につながるような疾患に対する処方としても有用である。たとえば、アゴニスト抗体は、GDNFRα及び好ましくはRetをも含むような細胞において、GDNFの応答を引き出すために用いられる。治療用外用薬としては、アゴニスト抗体及び生理学的に許容されるキャリアを含む組成のものを用意するのが好ましい。更に、当該組成に、一つ以上のサイトカイン、神経栄養因子、あるいは、それらのアゴニスト抗体を入れられる。
他の実施態様においては、抗体は中和抗体である。そのような分子は、GDNFRαの望ましくない、あるいは、過剰な活性化で特徴付けられる疾患に対して処方することができる。
更に、本願発明は、上記に加え、GDNFRα、GDNFあるいはそれらのアゴニストをコードする単離された核酸分子、発現ベクター及び宿主細胞を提供するものである。これらは、記載されているようGDNFRα、GDNF、あるいはそれらのアゴニストの組換え体の生産に使用することができる。単離された核酸分子及びベクターはトランスジェニック動物の生産、GDNFRαあるいはGDNFに欠陥をもつ患者の、GDNFRαリガンドに対する細胞の応答性を向上させる、あるいは(アンチセンス核酸の使用による)GDNFRαあるいはGDNF活性を抑制させる遺伝子治療法に利用できる。
〔詳細な説明〕
本願発明の詳細な説明においては、以下の用語を下記の意味に用いる。
本説明において用いる「GDNFRα」又は「GDNFRαポリペプチド」は、天然の配列のGDNFRα、GDNFRαの変異体、GDNFRα細胞外ドメイン、キメラGDNFRα(いずれもそれぞれ定義される)を意味する。場合によっては、GDNFRαは天然のグリコシル化とは無関係の場合がある。「天然のグリコシル化」とは、GDNFRαに共有結合的に結合した炭水化物部分が哺乳動物の細胞から自然に由来した場合を言う。したがって。ヒト以外の細胞から生産されたヒトのGDNFRαは、「天然のグリコシル化と無関係」なGDNFRαの例である。時には、GDNFRαはグリコシル化されていない場合がある(原核生物において組換えによって生産された場合など)。
「天然配列GDNFRα」は、天然由来のGDNFRαと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。したがって、天然配列GDNFRαは、ラットのGDNFRα、マウスのGDNFRα、ヒトのGDNFRαあるいは他の哺乳動物の種から得られたGDNFRαの天然のアミノ酸配列と同一の配列を有する。そのような天然の配列からなるGDNFRαポリペプチドは、自然から単離するか組換えあるいは合成手法によって生産することができる。「天然配列GDNFRα」なる用語は、GDNFRαの天然に発生するGDNFRαの構成部分、自然に発生する変異形(他の結合形)、自然に発生する対立遺伝子的変異体をさす。好ましい天然配列GDNFRαは成熟した天然配列GDNFRαである。ラットのGDNFRα配列を図1A−1Eに示す。好ましい分子は、中程度の、好ましくは厳密なハイブリダイゼーション条件下において、図1A−1Eに示すラットのGDNF受容体をコードしているGDNF配列とハイブリダイズすることができる核酸分子を含むものである。一つの実施例においては、GDNFR核酸分子は、42oC、20%ホルムアミド中で、図1A−1Eに示すGDNF受容体をコードしているDNA配列とハイブリダイズする。他の実施態様においては、GDNFR核酸分子は、42oC、20%ホルムアミド中で、図1A−1Eに示す完全なGDNF受容体の一部をコードしている少なくとも10の連続した塩基、好ましくは20の連続した塩基、更に好ましくは45の連続した塩基、更に好ましくは60の塩基のDNA配列とハイブリダイズすることができる。好ましい配列は、同様の条件下では他のニューロトロフィン受容体配列とはハイブリダイズしない。
同様に、「GDNF」は、天然GDNF、GDNF変異体、プレ−プロGDNF、成熟GDNF、及びキメラGDNFを意味する。必要に応じて、GDNFは天然のグリコシル化とは無関係である。GDNFは(原核生物内において組換えによって生産することで)脱グリコシル化することができる。「天然配列GDNF」は、天然由来のGDNF と同一のアミノ酸配列を持つポリペプチドを含む(ここでその開示内容を取り込むLin ほか., Science, 260:1130-1132 (1993)WO 93/06116を参照せよ)。したがって、天然配列GDNFは、天然のラットGDNF、マウスGDNF、ヒトGDNF、あるいは他の哺乳動物由来のGDNFのアミノ酸配列を有することができる。そのような天然配列GDNFのポリペプチドは天然の物質から単離(分離)するかあるいは組換えあるいは合成の手法によって得ることができる。「天然配列GDNFRα」とはGDNFの天然に生じる切取り形、天然に起こる変異体形(例えばスプライスされた形)、及び天然に起こるGDNFの対立形質変異体を包含する。好ましい天然配列GDNFは、成熟したヒトGDNF配列である。
「GDNFRα細胞外ドメイン(ECD)」は、GDNFRαの膜間あるいは細胞質ドメインを本質的に有しないもの、つまり、そのようなドメインを1%未満、好ましくは0.5%から0%、更に好ましくは、0.1%から0%だけ有するGDNFRαの形態である。通常は、GDNFRαECDは、GDNFRαのECDのアミノ酸配列と少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸を有する。たとえば、図1A−1Eに示されたGDNFRαあるいは対応する配列、例えば、マウスの配列、ヒトの配列で、好ましくは65%、更に好ましくは少なくとも75%、更に好ましくは少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも90%、更に好ましくは95%、99%、終局的には100%のアミノ酸の同一性を有し、したがって、以下に規定するGDNFRαの変異体を含むことになる。好ましい配列は少なくともアミノ酸16個分の長さを有し、更に好ましくは少なくともアミノ酸20個分の長さ、更に好ましくは少なくともアミノ酸40個分の長さを有する。
「GDNFRα変異体」(あるいはGDNF変異体)とは、例えば、GDNFRαの図1A−1Eに示す推定アミノ酸配列を持つGDNFRα(又はヒトGDNF;Lin ほか, Science, 260:1130-1132 (1993)を見よ)又はこの明細書に開示される配列と、100%未満(少なくとも60%の同一性)の配列同一性を有する生物学的に活性なGDNFRα(あるいはGDNF)を意味する。そのような変異体は、GDNFRαあるいはGDNF配列のN末端あるいはC末端に、あるいはその配列内部に一つ以上のアミノ酸残基が追加されたポリペプチド;1ないし30のアミノ酸残基が欠失され、場合によっては一あるいはそれ以上のアミノ酸残基によって置換されたポリペプチド;上記のポリペプチドの誘導体で、結果の生成物が天然に存在しないアミノ酸を有するようにアミノ酸が共有結合的に修飾されたポリペプチドを含む。通常は、生物学的に活性な変異体のアミノ酸配列は、天然に存在するGDNFRα(図1A−1Eに示す対応する配列)あるいはヒトGDNFのアミノ酸配列と少なくとも約65%が一致し、好ましくは少なくとも約75%が、更に好ましくは少なくとも約80%が、更に好ましくは少なくとも約90%が、更に好ましくは少なくとも約95%が、更に好ましくは少なくとも99%が、終局的には100%が一致する。「キメラGDNFRα」は、全長のGDNFRαを含むかその一つ又はそれ以上のドメイン(例えば細胞外ドメイン)を異種性のポリペプチドに融合あるいは結合させたポリペプチドである。キメラGDNFRαは、GDNFRαと少なくとも一つの共通する生物学的性質を有している。キメラGDNFRαの例としては、イムノアドヘシン及びエピトープタグGDNFRαがある。「キメラGDNF」は、異種性のペプチド、好ましくは他の神経成長因子あるいはサイトカインに、融合あるいは結合した成熟したGDNFを含むポリペプチドである。
「イムノアドヘシン」なる用語は、「GDNFRα免疫グロブリンキメラ」と同義語として用いられ、GDNFRα(通常は、その細胞外ドメイン)の一部を免疫グロブリン配列と組合せるキメラ分子を意味する。免疫グロブリン配列は、好ましくは、ただし限定的にではないが、免疫グロブリンの定常ドメインを指す。本発明のキメラ内の免疫グロブリン部分は、IgG1、IgG2、IgG3、 又はIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD又はIgM、好ましくはIgG1又はIgG3から得ることができる。
「エピトープタグ」とは、「タグポリペプチド」に融合したGDNFRα(又はGDNF)を有するキメラポリペプチドをさす。タグポリペプチドは、抗体が形成されるエピトープを提供するに十分な数の残基を有しているが、その長さはGDNFRαやGDNFの生物学的活動を阻害しないよう十分に短い。タグポリペプチドは、好ましくは、それに対して形成される抗体が他のエピトープと交差反応しないようにかなりユニークである。好ましいタグポリペプチドは、一般に、少なくとも6つのアミノ酸残基を有しており、通常は8から50のアミノ酸残基を有し、好ましくは9から30の間のアミノ酸残基を有する。好ましいものは、タグタンパク質をNi−NTAクロマトグラフィー(Lindsay ほか. Neuron 17:571-574 (1996))で分離することができるようニッケルと結合するポリヒスチジン配列である。
「単離されたGDNFRα」又は「単離されたGDNF」は、天然資源から精製されたかあるいは組換えあるいは合成技術によって生産された物質であって、(1)スピニングカップシークエネーターあるいは市販の最良のアミノ酸シークエネーターを使用することにより、又は本出願の出願日に刊行されている方法により修正して、少なくとも15あるいは好ましくは20のN末端あるいは内部アミノ酸配列のアミノ酸残基を得るのに十分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS−PAGEによる均質性が得られるように十分なほど、他のペプチド又はタンパク質を含んでいないことを言う。ここでの均質性とは、他の供給源からのタンパク質がおよそ5%未満であるような汚染を意味する。
「本質的に純粋な(essentially pure)」タンパク質とは、組成物の重量に対して少なくとも90重量%のタンパク質を含むもの、好ましくは95重量%以上のタンパク質を含むものを言う。「本質的に均質な(essentially homogenious)」タンパク質とは、組成物の重量に対して99重量%以上のタンパク質を含む混合物を言う。
「生物学的性質」は、これが「GDNF」、「GDNFRα」あるいは「単離されたGDNFRα」について用いられた場合は、(天然又は変性されたコンフォメーションの如何にかかわらず)その天然GDNFあるいはGDNFRαによって直接又は間接に引き起こされるエフェクターあるいは抗原機能又は活性を有することを意味する。エフェクター機能は、リガンド結合あるいは受容体結合、及び細胞の生存、分化及び/又は増殖(特に細胞の増殖)の向上を含む。しかしながら、エフェクター機能は天然配列GDNFあるいはGDNFRαに対して作製された抗体と交差反応しうるエピトープあるいは抗原部位の保持を含まない。
「抗原機能」とは、天然配列GDNFあるいはGDNFRαに対して作製された抗体と交差反応することのできるエピトープあるいは抗原部位を有することを意味する。ポリペプチドの基本的な抗原機能は、それが天然配列GDNFあるいはGDNFRαに対して作製された抗体と、少なくとも約10L/moleの親和性を持って結合することである。通常は、このポリペプチドは少なくとも10L/moleの親和性を持って結合する。「抗原機能」を定義するために用いられる抗体は、完全フロイントアジュバント中に抗原を処方し、この処方物を皮下に注入し、抗原価がプラトーに達するまでこの処方物を腹腔内に注射して免疫反応を追加免疫して作製される、ウサギポリクローナル抗体である。
「生物学的に活性な」は、これが「GDNF」、「GDNFRα」あるいは「単離されたGDNFRα」と共に用いられた場合は、天然配列GDNFあるいはGDNFRαのエフェクター機能を有し、必ずしも必要ではないが、更に抗原機能を有するポリペプチドを意味する。GDNFRαの基本的なエフェクター機能は、GDNFと結合する能力である。GDNFRαの他の基本的なエフェクター機能はRetチロシンキナーゼを活性化して(Retの自己リン酸化をもたらし)Retシグナル機能を媒介して下流側の経路を活性化することである。
「抗原的に活性な」とは、GDNFあるいはGDNFRαの抗原機能を有し、必ずしも必要ではないが、エフェクター機能を有するポリペプチドとして定義される。
「パーセントアミノ酸配列同一性」とは、配列を整列させ最大のパーセント配列同一性を得るために必要なら間隙を導入し、配列の同一性のために保存的な置換を行わない状態での、GDNFあるいはGDNFRα配列の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。対象となるGDNFあるいはGDNFRα配列に対するN末端、C末端又は内部の、伸長、欠失又は挿入は、配列の同一性あるいは相同性に影響を与えるとは考えられない。
「GDNFリガンド」とは、天然配列GDNFRαに結合し、好ましくはこれを活性化する分子を意味する。ある分子のGDNFRαに結合する能力は、たとえば、アッセイプレート上に塗布されたGDNFRαに結合する推定上のリガンドの能力によって決定することができる。結合の特異性は、他の神経栄養因子あるいはサイトカイン受容体、特にTGF−βスーパーファミリーに属するものに対する結合と比較することによって決定することができる。少なくとも2倍の差次的結合が観測される必要がある。GDNFのGDNFRαへの結合と競合する能力はGDNFリガンドの好ましい特性である。チミジン取り込み試験は、GDNFRα機能を活性化するリガンドをスクリーニングする他の方法である。
「チミジン取り込み試験」とは、GDNFRαを活性化する分子を選別するために用いられる。この試験のためには、IL−3に依存するBaf3細胞(Palacios ほか, Cell, 41:727-734 (1985))を、ここに記載した全長の天然配列GDNFRα及びRetによって安定にトランスフェクトする。このようにして生産したGDNFRα/ret/Baf3細胞は、湿度を有し、37oCで5%のCOと残りが空気の環境からなるインキュベーターの中で24時間IL−3不足の状態におく。IL−3不足の状態に続き、潜在的アゴニストを含む試料と共にあるいは無しで細胞を96穴培養皿に移し(当該サンプルは場合によって希釈する)、細胞培養インキュベーターの中で24時間培養する。最後の6時間ないし8時間は、それぞれの培養皿にHチミジンの1μCiを含有する無血清RPMI20μリットルを添加する。次に細胞を96穴フィルタープレートに取り出し洗浄する。フィルターを例えばパッカードトップカウントマイクロプレートシンチレーション計数機(Packard Top Count Microplate Scintillation Counter)で計測する。作用物質はHアップテイクが対照に対して、統計上有意な程度に増加していることが期待される。好ましい作用物質の場合、Hアップテイクが比較例に対して少なくとも2倍になっている。他の検査方法は文中に記載する。
「単離された」核酸分子とは、GDNFあるいはGDNFRα核酸の天然源に通常は伴っている少なくとも1つの汚染核酸分子から同定され分離されたものをいう。単離された核酸分子は天然に見出される形態あるいは様相以外のものである。しかし、単離されたGDNFRα(又はGDNF)核酸分子は、天然の細胞中に存在する核酸分子とは異なる。しかし、単離されたGDNFRα(又はGDNF)核酸分子は、通常GDNFRα(又はGDNF)を発現するGDNFRα(又はGDNF)核酸分子、たとえば、核酸分子は天然の細胞の場合とは異なった染色体の位置にあるような核酸分子を含む。
「調節(control)配列」とは、特定の宿主生物において機能的に関連付けられたコード配列を発現するために必要なDNA配列をさす。例えば原核生物に好適な調節配列は、プロモーター、場合によってはオペレータ配列、リボソーム結合部位、更には今のところ十分には解明されていない配列を含む。真核生物の細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーを使用することが知られている。
核酸は、他の核酸配列と機能的な関係を有するときに「作用的に関連付けられる」と称する。たとえば、プレ配列あるいは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に寄与するタンパク質として発現されているならそのポリペプチドのDNAに機能的に関連付けられているし、リボソームの結合領域はもしそれが変換を容易にするような位置にあるならコード配列と機能的に関連付けられている。一般的に、「機能的に関連付けられる」とは、関連付けられたDNA配列が近接しており、分泌リーダーの場合には解読フェーズに近接している。しかし、エンハンサーは必ずしも近接しているわけではない。結合は適当な部位に核酸結合することで達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来手法にしたがって、合成されたオリゴヌクレオチドアダプターあるいはリンカーが使用される。
「細胞」、「セルライン(株化細胞)」及び「細胞培養物」は相互に交換可能な意味で用いられ、子孫を含むものを意味するものとしても用いられる。「形質転換体」あるいは「形質転換細胞」は、最初の細胞及び何度転換したかに関わらずその子孫に当たる細胞を意味する。全ての子孫が、意図的な変異あるいは意図せざる変異の影響で、完全に同一のDNAを有するわけではないことも理解されている。最初の細胞と選別の対象となる機能あるいは生物的活性を共有する変異細胞子孫も含まれる。特に区別して考慮されなければならない場合、そのことは文中から明瞭に理解されるはずである。
「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、モノクローナル抗体、多エピトープ特異性抗体組成物、二重特異性抗体、ダイアボディー(diabodies)、単鎖の分子、及び抗体断片(すなわちFab, F(ab’)2及びFv)が所望の生物学的特性を有する限り含まれる。
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体を意味する、すなわち、自然に起きるごくわずかの変異を有することを除いて集団内において均質な抗体を意味する。モノクローナル抗体は厳密に、特定の一つの抗原部位に対応する。更に、異なる決定要素(エピトープ)に対応する異なる抗体を複数含む従来の(ポリクローナル)抗体とは異なり、個々のモノクローナル抗体は抗原の単一の決定要素に対応する。更に、モノクローナル抗体はハイブリドーマカルチャーから合成することができ、他の変異グロブリンによって汚染されていない点において優れている。「モノクローナル」との形容は、実質的に均一な抗体集団から得られたことを示し、抗体が特定の方法で得られたものであることを意味するものではない。例えば、本発明に関連して使用される抗体は、最初にコーラ−等(Kohler ほか)によってネイチャー誌に掲載された(Nature, 256:495 (1975))ハイブリドーマ法によって作られたり、組換えDNA法(U.S. patent No. 4,816,567 (Cabilly ほか))によって作られたりしている。「モノクローナル抗体」は、ある場合には、クラクソンの手法(Clackson ほか, 624-628 (1991) およびMarks ほか, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991))を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されている。
モノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種に属する抗体あるいは特定の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の他の部分は他の種に属する抗体あるいは特定の他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列あるいは生物的活性を有する限りそれらの部分と同一であるか相同である「キメラ」抗体(免疫ブロブリン)を含む(Cabilly ほか, 前掲; Morrison ほか, Proc. Natl. a Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984))。
ヒト以外(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリンの鎖あるいは断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)あるいは抗体の他の抗原結合配列)であって、ヒト以外の免疫グロブリンに由来する配列を最小限有するものである。大部分においてヒト化した抗体は受容体の相補性決定的領域(CDR)の残基が、マウス、ラット、ラビット等所望の特性、親和性を有するヒト以外(ドナー体)のCDRの残基によって置換されたものである。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、ヒト以外の残基によって置換されている。更に、ヒト化された抗体は受容体抗体、インポートされたCDR、あるいは作成体配列のいずれにも発見されたに残基を含む場合がある。これらの変更は抗体の特性を更に洗練し、最適化する目的で行われる。一般に、ヒト化した抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つのヒト以外の免疫グロブリンに対応する全てあるいはほとんど全てのCDR領域可変ドメイン及び全てあるいはほとんど全てのFR領域が、ヒト免疫グロブリン配列である。ヒト化した抗体は、最適な状態では免疫グロブリン一定領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの一定領域、の少なくとも一部を含む。詳細については以下を参照されたい:Jones ほか, Nature, 321:522-525 (1986); Reichmann ほか, Nature, 332:323-329 (1988); Presta, Curr. Op Struct. Biol., 2:593-596 (1992)。ヒト化抗体は、プリマタイズした(PrimatizedTM)抗体、すなわち抗体の抗原に接続する領域が対象抗体で免疫化したマカクザルから生産された抗体、を含む。
「ヒトにおいて免疫原性のない」とは、ヒトのポリペプチドと、生理学的に許容されるキャリア中で診療的に有意な量を接触した際に、適当な時間(8日〜14日)を置いて当該ポリペプチドを与えても対象ポリペプチドに対する抵抗が観測されないことを言う。
「アゴニスト抗体」とは、天然配列GDNFRαを活性化するGDNFRαリガンドをいう。
「中性化抗体」とは、天然配列GDNFあるいはGDNFRαのエフェクター機能を阻止するか顕著に減少させることのできる抗体を言う。たとえば、中性化抗体は、神経突起生存検査、GDNF結合検査、この明細書に述べる検査あるいはそれ以外の知られている検査において、GDNFリガンドによるGDNFRαの活性を阻止あるいは減少させることができる。
「細胞の増殖を増大させる」とは、インビトロ又はインビボで処理をされていない細胞に比較して細胞の成長あるいは/又は再生産の度合いを増大させる工程を包含する。細胞培養における細胞の増殖は、対象分子に曝露前及び曝露後の細胞数を数えることによってアッセイすることができる。増殖の程度は、細胞の広がりを顕微鏡でアッセイすることで定量化できる。細胞増殖の他の定量評価方法としては、本明細書に記載するように、チミジン取り込みアッセイによるものが有る。
「細胞の分化を増大させる」とは、元となった細胞とは異なる特徴あるいは機能を得るようにすることを言う(たとえば細胞特殊化)。これは細胞の発現形の変化をスクリーニングすることによって(例えば、細胞の形態的変化の把握)アッセイ可能である。
「生理学的に許容できる」担体、賦形剤、あるいは安定化剤とは、これらのうち細胞あるいは哺乳動物に対して使用された量あるいは濃度では毒性を有しないものをいう。生理的に許容可能な担体はしばしばpH緩衝液である。生理的に許容可能な担体は、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸、アスコルビン酸を含む酸化防止剤、分子量の小さい(およそ10残基よりも少ない)ポリペプチド、血清アルブミンのようなタンパク質、ゼラチン、免疫グロブリン、ポリビニルピロリドンのような撥水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルジニン、リジンのようなアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、デキストリン等の他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールあるいはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩形成対イオン;及び/又はトゥイーン(Tween)、プルロニック(Pluronics)又はポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤である。
本明細書において使用される「サルベージ受容体結合エピトープ」とは、生体内血清のIgG分子の半減期の延長に関与するIgG分子(つまり、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)のFc領域のエピトープを意味する。サルベージ受容体に結合するエピトープの具体例は、たとえば、HQNLSDGK;HQNISDGK;HQSLGTQ;VISSHLGQ;及びPKNSSMISNTPである。
「サイトカイン」とは、ある細胞集団から排出されるタンパク質であって、他の細胞に対して細胞間伝達物質として作用するものを言う。そのようなサイトカインの例としては、リンフォカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンを挙げることができる。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラクシン、プロリラクシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)のような糖タンパク質;副甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;繊維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子α及びβ;マレリアン(mullerian)抑制物質;マウス性腺刺激ホルモン関連のペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン(integrin);トロンボポエチン(thrombopoietin TPO);NGF−β、NT−3、NT−4、NT−6、BDNF、CNTF、GDNF、AL−1あるいは他のeph受容体ファミリーのリガンド等の神経因子あるいは神経成長因子;血小板成長因子;TGF−αあるいはTGF−βのようなトランスフォーミング成長因子(TGFs);インスリン様成長因子I及びII;エリスロポエチン(EPO);オステオインダクティブ因子;インターフェロンα、β、γのようなインターフェロン;マクロファージ−CSF(M-CSF)のようなコロニー刺激因子;顆粒球‐マクロファージ−CSF(GM-CSF);顆粒球−CSF(G‐CSF);IL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、 IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、 IL−8、IL−9、IL−11、IL−12等のインターロイキン;LIF及びキットリガンドを含む他のポリペプチド因子を含む。本明細書において使用される限り、サイトカインは天然のソースからのもの、組換え細胞培養物からのもの、生物的に活性な天然配列サイトカインの均等物を含む。更に、TrkA−IgGあるいは他の可溶性受容体キメラのような遺伝学的に手を加えたサイトカイン活性を有する細胞を含む。
「治療」には、治療的処置及び予防的措置を含む。治療を要するとは、秩序が乱されているあるいはその秩序の乱れが排除可能であることを意味する。
治療に関して「哺乳動物」と言うときは、ヒト、イヌ、ウマ、ネコ、ウシその他の飼育された動物、動物園の動物、運動用の動物、愛玩用の動物を含む。好ましくは動物はヒトである。
「固相」とは、対象となる試薬(たとえばGDNFRαあるいはそれに対する抗体)を塗布することができる液状でないマトリックスをさす。固相は、例えば全部又は一部がガラス(調整穴明きガラス)、多糖類(たとえばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコールあるいはシリコーンからなるマトリックスをさす。いくつかの実施例においては、内容によっては、固体相はアッセイプレートのウエルを意味する;他に(アフィニティークロマトグラフィーカラムのような)精製カラムをさす。この言葉は更に、米国特許第4275149号に記載されているような分散粒子の不連続な固相を指す場合がある。
本願発明の実施形態をここに提供する。GDNF(その記載をここに全て取り込むLin ほか, Science, 260:1130-1132 (1993); WO 93/06116)は、パーキンソン病(Hirsch ほか, Nature, 334:345-348 (1988); Hornykiewicz, Mt. Sinal J. Med., 55:11-20 (1988))、筋萎縮性側索硬化症(Hirano, Amyotrophic Lateral Sclerosis and Other Motor Neuron Diseases, P. Rowland編(New York: Raven Press Inc.) pp. 91-101 (1991))、及びアルツハイマー病(Marcynuik ほか, J. Neuro. Sci., 76:335-345 (1986); Case ほか, Neurology, 37:42-46 (1987); Chan-Palay ほか, Comp. Neurol., 287:373-392 (1989))ドーパミン作動性あるいはノルアドレナリン作動性の中脳神経細胞(Lin ほか, Science, 260:1130-1132 (1930); Stromberg ほか, Exp. Neurol., 124:401-412 (1993); spinal motor (Henderson ほか, Science, 266:1062-1064 (1994))の有効な生存因子である(Arenas ほか, Neuron, 15:1465-1473 (1995))。GDNFを遺伝子的操作によって欠失したマウスに基づいてGDNFの生物学的働き:腸内神経、交感神経、知覚神経及び腎臓細胞の発達と生存、が報告されている。実施例に記載されている結果は、GDNFが中央神経系(CNS)におけるカテコールアミン作動性の神経組織の発達には必ずしも必要でないこともまた示している。
更に、本願明細書は、GDNFRαと称するGDNFに対する細胞の応答を抑制するものであるGPIにリンクした新規なタンパク質とその遺伝子の分離、配列及び組織分布を開示する。リガンド結合性GDNFRαはチロキシンキナーゼ受容体retのリン酸化を誘発する。この知見は、RetとGDNFRαのGDNFに対する複合受容体のシグナル及びリガンド結合成分としての特性を明らかにする。
サイトカイン受容体はしばしば集合して複数のサブユニットからなる複合体を形成する。時には、この複合体のαサブユニットは、同族成長因子の結合に関与し、βサブユニットは細胞にシグナルを伝達する能力を有する。理論に拘束されるものではないが、これらの受容体は形成する複合体にしたがって3種のサブファミリーに分類される。サブファミリー1はEPO、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン−4(IL-4)、インターロイキン−7(IL-7)、成長ホルモン(GH)、及び催乳ホルモン(PRL)に対する受容体を含む。このサブファミリーに属する受容体に結合するリガンドは、受容体のホモ二量体化に帰着すると考えられる。第2のサブファミリーは、IL-3、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン−5(IL-5)、インターロイキン−6(IL-6)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経成長因子(CNTF)に対する受容体を含む。サブファミリ2に属する受容体は、リガンド結合にαサブユニットを有し、シグナルの伝達にβサブユニット(IL-3、GM-CSF及びIL-5受容体の共有されたベータサブユニットあるいはIL-6、LIF,OSMあるいはCNTFのgp130サブユニット)を有するヘテロ二量体である。第3のサブユニットは、インターロイキン−2(IL-2)に対する受容体のみを含む。IL−2受容体複合体のβ及びγサブユニットは、無関係のTac抗原のαサブユニットに随伴するサイトカイン受容体ポリペプチドである。
ある側面において、本発明は、高い親和性を持ってGDNFと結合するタンパク質GDNFRαの発見に基づくものである。本明細書に記載された実験によれば、この細胞はGDNFに対する応答を媒介するように観察される。特にこの細胞は、神経細胞を含むいろいろな種類の細胞集団中に存在し、そのことによりアゴニスト抗体のようなGDNFリガンドがGDNFRαあるいはRetを含有する細胞の増殖、成長、分化、代謝あるいは再新生を刺激するために用いられることを示す。
好ましい実施態様において、GDNFはGDNFをコードする遺伝子を用いて遺伝子組換えによって生産される(ヒト及びラットの配列、発現及び検査法についてはWO 93/06116を参照)。本発明は、成熟あるいはプレプロGDNFをコードする核酸配列に機能的に結合した発現調節エレメントからなる生物学的に活性なGDNFを生産するためのベクター、及び、DNA配列を発現するために必要な調節エレメントを含むベクターによって形質転換した宿主細胞、該発現ベクターでの宿主細胞の形質転換、ベクターの増殖とGDNFの発現のための条件下での宿主細胞の培養、及びGDNFの収穫を含む。
ベクターの増殖とGDNFの発現のための本発明による宿主細胞の培養とGDNFの収穫を含むGDNF生産のための組換えDNA手法が記載されている。
発現の後に単離された材料は基本的には生物学的に不活性であり、モノマーとして存在する。リフォールディングの後は、GDNFは生物学的に活性なジスルフィド結合の二量体である。GDNFはしたがって、そのような自然で且つ生物学的に活性なジスルフィド結合二量体である。本発明はGDNFのモノマーとしての、ダイマーとしての、又、生物学的に活性なあるいは生物学的に不活性な形態を含む。
明細書を通じて、グリア細胞由来の神経成長因子は、由来に関わらず、ここに記載されたGDNFと実質的に相同であって等価である神経成長因子を含むものと解さなければならない。ラットとヒトのタンパク質の相同性はおよそ93%であり、全ての哺乳類のGDNFは高い相同性を有する。そのようなGDNFは、生物学的に活性な形態の二量体として存在する。
本発明は、グリコシル化されたあるいはグリコシル化されていないGDNF及び、記載されているような天然のあるいは組換えによるGDNFの欠損形態に関する。更に他の実施形態においては、GDNFは1つ又はそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)あるいはそれ以外の繰り返しのあるポリマー残基を付着して変更されたものである。本発明は、又、アミノ端を有するメチオニン残基を有する細菌系によって組換え生産されたGDNFを含む。
更に、本明細書において検討されている病気の予防あるいは治療方法が本発明に含まれる。ある実施例においてはGDNFによる治療を必要としている患者の体内にGDNFを分泌する細胞を埋め込む方法が開示される。当該方法は場合によっては可溶性のGDNFRα分泌細胞を用いたものである。本発明には更に、ここにおいて検討した病気の予防又は治療の為の機具、たとえば、半透過性の膜、GDNFに対しては透過性であり患者からの当該細胞に有害な因子に対しては非透過性の膜、とその膜の中に保持されたGDNFを分泌する細胞に関する。
本明細書のベクター、宿主細胞、融合タンパク質、変更、及びGDNFRを生産し、発現し、使用する方法と経路等は、当業者の知識に基づきGDNFとその変異体にも適用される。
GDNFRαの生産方法は当業者によく知られており、体内のポリペプチド源からのGDNFRαの分離、(ペプチド合成体を用いた)ペプチド合成、及び、組み替え技術(及びこれらの技術の任意の組み合わせ)を含む。GDNFRαの望ましい生産方法は、以下に述べる組み替え技術による方法である。
以下に記載する内容はGDNFRα核酸を含むベクターから形質転換された細胞を増殖させ、細胞集合から当該ポリペプチドを取り出す組み替え技術によるGDNFRαの生産方法に関わるものである。更に本発明のGDNFRαは、1991年5月16日に公開されたWO 91/06667に記載された相同体の組み替えによって得ることが出来る。
簡単に言えば、当該方法はGDNFRαをコーディングする遺伝子を有するヒトの一次細胞を(ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)又は以下に記載するそれ以外のもののような)増殖可能な作成体(すなわちベクター)遺伝子、及び、少なくとも一つの長さが約150bpでGDNFRαのコーディング領域におけるDNA配列と相同であるフランク領域と共に形質転換しGDNFRα遺伝子の増殖を行うものである。増殖可能な遺伝子はGDNFRα遺伝子の発現を阻害しない位置にあるものでなければならない。形質転換は、増殖可能な位置を決定する為に、作成体が一次細胞のゲノムに相同的に組み込まれるような方法で行われる。
作成体を有する一次細胞は次に増殖可能な遺伝子又は作成体に内在するマーカーによって選択される。マーカー遺伝子の存在は宿主ゲノムへの作成体の組み込みを可能にする。二次ホストにおいて選別が行われる為、一次細胞をそれ以上選別する必要はない。必要ならば、PCRを用いて、結果として得られる増殖したDNA配列を同定するか、正確に相同的な配列がある場合にはPCR断片の概略の長さを決定しそのような断片を有する細胞を拡張することで、相同的組み替えの発生を測定することが出来る。又、もし必要であれば、選別された細胞を(遺伝子がDHFRならメトトレキサートのような)適当な増殖媒介物を作用させてこの時点で増殖させ、目的とする遺伝子の複数のコピーを入手することが出来る。好ましくは、しかし、増殖ステップは、以下に記載する第二の形質転換の後に行われる。
選別ステップの後に、増殖すべき領域を含む充分な大きさがあるゲノムのDNA部分を、選別した一次細胞から分離する。二次の哺乳動物の宿主細胞をゲノムのDNA部分とともに形質転換しクローンさせ、増殖させる領域を有するクローンを選別する。増殖させるべき領域を、一次細胞で増殖していなければ、次に増殖媒介物を用いて増殖させる。最後に、GDNFRαを含む増殖させるべき領域の複数のコピーを含む二次宿主細胞を成長させ、遺伝子を発現しタンパク質を生産するようにする。
保存された哺乳類のGDNFRαの構造と配列及び、マウスとラット及びヒトの受容体をコードするcDNA配列の解明がGDNFRαをコードする他の哺乳動物からの遺伝子配列のクローンを可能にする。ここに開示された配列を用いて、ヒトのGDNFRα分子をクローンすることが出来ることが本発明の効果の一つである。GDNFRαをコードするDNAは、例としてここに記載されているようなGDNFRα mRNAを有すると考えられており検出可能な程度に発現しているいるどのcDNAライブラリーからも得ることが出来る。したがって、GDNFRα DNAは、たとえば哺乳動物の胎児の肝臓、脳、筋肉、腸及び外縁神経等の準備されたcDNAのライブラリーから得ることができる。GDNFRαをコードする遺伝子はゲノムライブラリーあるいはオリゴヌクレオチド合成によっても得ることができる。
ライブラリーは(GDNFRαに対する抗体又はおよそ20−80基からなるオリゴヌクレオチド等の)対象となる遺伝子あるいはその遺伝子からコードされた蛋白質を特定する目的のプローブによって選別される。選択されたプローブによるcDNA又はゲノムライブラリーの選別は、以下に記載される標準的方法で行うことができる(chapters 10-12, Sambrook ほか, Molecular Cloning: A laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。GDNFRαをコードする遺伝子を単離する他の方法は、サムブルック他の14章に記載のPCR法による方法である。
本発明を実施する好ましい方法は、好ましくはヒト胎児の肝臓からなる種々のヒト組織からcDNAライブラリーを選別する為に慎重に選別したオリゴヌクレオチド配列を用いることである。プローブとして選択されたオリゴヌクレオチド配列は、充分な長さで、見せかけの積極因子が最小限に押さえられるよう充分に明瞭でなければならない。好ましい配列はここに記載した天然のGDNFRαから得ることができる。
オリゴヌクレオチドは、選別されるライブラリー内のDNAとハイブリッドした状態で検出可能なように標識されていなければならない。標識付けの好ましい方法は、当該技術分野においては良く知られている32P標識されたATPをポリヌクレオチドキナーゼと共に用いてオリゴヌクレオチドを放射線的に標識する方法である。しかし、オリゴヌクレオチドの他の標識方法として、これらに限定されるわけではないが、例えば、ビオチン標識あるいは酵素標識がある。
GDNFRαのアミノ酸配列の変異体はGDNFRαDNAに適当なヌクレオチド変化をさせることによって入手することができる。これらの変異体は、図1Aないし図1Eに示したようなGDNFRαあるいは本明細書に記載した配列で示されるような天然のGDNFRαのアミノ酸配列の一端あるいは両端あるいはそれらの中への、残基の挿入、置換、あるいは/又は特定の削除に対応する。変異体は成熟した配列の一端又は両端への挿入及び/又は置換、あるいは、GDNFRαのシグナル配列の一端又は両端への挿入、置換及び/又は特定の削除であることが好ましい。いずれの挿入、置換、特定の削除の組合せは、最終的な作成体が本明細書で定義する望ましい生物学的活性を有するように行われる。アミノ酸の違いは、挿入、削除あるいはGDNFRαのリーダー配列に影響を与えることを通じて、グリコシル化サイトの数と位置の変化、膜へのアンカリング特性の変化、及び/又は、GDNFRαの細胞間位置等、GDNFRαの翻訳後の工程に影響を与えることがある。複数のアミノ置換、追加あるいは挿入を有するものが望ましい。更に好ましいものは、1ないし3つのアミノ酸置換、削除あるいは挿入を有するものである。もっとも好ましいのは、1つのアミノ酸の置換、削除あるいは挿入である。望ましい変化は天然では極めて持続性がある。
天然の配列の変異は、ここで特に明細書に取り込む米国特許第5,364,934号に記載された持続性あるいは非持続性の変異に関する技術とガイドラインの何れかを用いて生じさせることができる。これらにはオリゴヌクレオチドに誘発される(位置を特定した)変異発生、アラニンスキャニング、及びPCR変異発生が含まれる。変更、追加あるいは削除のためのアミノ酸の選別については表1及び関連する記載を参照されたい。
GDNFRαをコードする核酸(DNA又はゲノムDNA)が、更にクローンするため(DNAの増殖)又は発現するためにベクターに挿入される。多くのベクターが入手可能である。ベクターとしては、以下に非限定的に例示すれば、次の1つ又は複数である:単一の配列、複製原、一つ又は複数のマーカー遺伝子、増殖誘発エレメント、プロモーター、及び転写終了配列。
本発明のGDNFRαは必ずしも直接的に組換え手法によって生産されるだけではなく、シグナル配列あるいは成熟したタンパク質あるいはポリペプチドの特定部位に切断部位を有する他のペプチドのような異種ポリペプチドとの融合ペプチドとしても生産される。一般には、シグナル配列はベクターの一部であるか、ベクターに挿入されたGDNFRαDNAの一部である。好ましい異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。GDNFRαシグナル配列を認識し加工しない原核生物性の宿主細胞の場合、シグナル配列は選択された、たとえばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定なエンテロトキシンIIリーダーのような原核生物性のシグナル配列によって置換する。酵母の分泌に関しては、本来のシグナル配列は酵母インバターゼリーダー、(Saccharomyces及び1991年4月23日に登録された米国特許第5,010,182号に記載されたKluyveromycesを含む)α因子リーダー、酸ホスファターゼリーダー、及びCアルビカン(albicans)グルコアミラーゼリーダー(1990年4月4日発行のEP 362,179)、又は1990年11月15日に発行されたWO 90/13646、によって置換することができる。哺乳動物の細胞発現においては、他の動物のGDNFRαあるいは同一あるいは関連ある種の分泌ポリペプチドから得たシグナル配列、単純ヘルペスgDシグナルのような分泌リーダー他の哺乳動物のシグナル配列が適しているとしても、本来のシグナル配列(体内においてヒトあるいはラットの細胞からGDNFRαを命令するGDNFRαの存在)は十分である。
そのような前駆体領域のDNAは成熟したGDNFRαあるいは可溶性の変異体をコードするDNAのリーディングフレームに結合する。
発現とクローニングベクターは共に一つ又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を有する。一般に、この配列はクローニングベクターにおいて、宿主の染色体DNAとは独立に複製を可能にし、複製の元又は自律的複製配列を有するものである。多くのバクテリア、酵母及びウイルスにおいてそのような配列が知られている。プラスミドpBR322に由来する複製起点は大部分のグラム陰性のバクテリアに好適であり、2μプラスミド起点は酵母に適しており、多くのウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳類のベクターをクローンするのに適している。一般には、哺乳類の発現ベクターには複製コンポーネントの起点は不要である(SV40起点は早期のプロモーターを有するために用いられる)。
多くのベクターは「シャトル」ベクターである、すなわち、それらは少なくとも一つの生物において複製可能であり、発現のために他の生物に転移することができる。たとえば、E.Coliにおいてベクターがクローンされ、そのベクターが酵母あるいは哺乳類の細胞に転移されて、宿主細胞の染色体を独立して複製することはできないとしても、発現する。
DNAは宿主染色体に挿入することによって増殖する場合もある。これは、ベクターにバシラス染色体DNAで発見された配列と相補的なDNA配列をベクターに挿入するような、宿主としてバシラス(Bacillus)種を用いた場合に行われる。このベクターのバシラスへのトランスフェクションは、ゲノムとの相同的組換え及びGDNFRαDNAの挿入をもたらす。しかし、GDNFRαをコードする染色体DNAの回復は、GDNFRαDNAを切除するのに制限酵素による消化を必要とするために、外来的に複製したベクターの場合よりも複雑である。
発現及びクローニングベクターは、選択マーカーとも称する選択遺伝子を含まなければならない。この遺伝子は、選択的培養基で形質転換した宿主細胞の生存又は成長に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含むベクターと共に形質転換していない宿主細胞は培地で生存することができない。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトキサレートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性の欠陥を補い、(c)バシリ(Bacilli)に遺伝子をコードするD-アラニンラセマーゼを与えるように、複合的な培地から得られない必須の栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択技術の一つにおいては、宿主細胞の成長を抑止する薬品が用いられる。非相同的遺伝子から形質転換に成功した細胞は、抗薬品性を付与し、そのために選択工程を生きぬくことができる。選択においてたとえば、ネオマイシン、ミコフェノール酸、及びハイグロマイシンが利用される。
哺乳動物の細胞の選択的マーカーのほかの適当な例は、DHFRあるいはチミジンキナーゼのように、GDNFRα核酸を捕捉することのできる細胞を特定することのできるものである。哺乳類の細胞からの形質転換細胞は、マーカーを補足することによって当該形質転換細胞のみが生存できるような選択圧の下に置かれる。選択圧は、媒体中の選択媒介物濃度が次第に変化する環境下に形質転換細胞を置くことで、選択遺伝子とGDNFRαをコードするDNAをともに増殖させる。成長に必須のタンパク質を要求する程度の高い遺伝子が、組みかえられた細胞の後の世代の染色体に直列の状態で再生産されることで増殖が行われる。増殖されたDNAによってGDNFRαの量が増大する。増殖可能な遺伝子のほかの例は、メタロチオネインI及びII、好ましくはプリメート、メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等がある。好ましいベクター系は米国特許第5,561,053号に開示されている。
たとえば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された遺伝子は、まず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトレキサート(methotrexate Mtx)を有する培地において増殖させることで特定される。野生のDHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、下記の方法で準備し増殖させたDHFR活性について欠陥のあるチャイニーズハムスターの卵巣株(CHO)細胞である(Urlaub ほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:7216 (1980))。形質転換した細胞は次に濃度の高いメトトレキサート溶液に接触させる。このことによりDHFRのコピーが多く作られ、同時に、GDNFRαをコードするDNAのような発現ベクターを含む他のDNAが多く作られる。この増殖方法は、もしMtxに非常に耐性の高い変異DHFR遺伝子が使用されたような場合には内在性DHFRの存在にかかわらず、他の宿主、たとえば、ATCC No. CCL61 CHO-K1に関しても使用することができる(EP 117,060)。
他に、GDNFRαをコードするDNA、野生型DHFRタンパク質、あるいはアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような選択マーカーと形質転換したあるいは共形質転換した宿主細胞(内在性のDHFRを含有する野生の宿主の場合は特に)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド系抗生物質のような選択可能なマーカーの選択媒質を有する培地において成長させることで選択することができる。
酵母に関して好適な選択遺伝子は酵母プラスミドYRp7に含まれるtrp1遺伝子である。trp1遺伝子は、例えば、ATCC No. 44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力のない突然変異酵母を選択する選択マーカーを提供する(Jones, Genetics, 85:12 (1977))。酵母宿主細胞ゲノムにtrp1破壊が存在することは、トリプトファンの不存在下における成長による形質転換を検出する環境を提供する。同様に、Leu2欠陥を有する酵母(ATCC20,622あるいは 38,626)は、Leu2遺伝子を有する既知のプラスミドによって補完することができる。
更に、1.6μmの円形プラスミドpKD1由来のベクターは、クルイヴェロマイシス(Kluyveromyces)酵母の形質転換に用いることができる(Bianchi ほか., Curr. Genet., 12:185(1987))。より最近の例としては、子ウシのキモシンの大量生産のための発現系がK. lactis. Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)に記載されている。クルイヴェロマイシスの工業的な菌株からの、組換えによる成熟したヒト血清アルブミンを分泌する複数の発現ベクターも開示されている(Fleer ほか., Bio/Technology, 9:968-975 (1991))。
発現及びクローニングベクターは、通常、宿主生物によって認識され、GDNFRα核酸に機能的に結びついているプロモーターを有する。プロモーターは、作用的に結合しているGDNFRα核酸配列のような特定の核酸配列の転写あるいは翻訳を制御する構造的な遺伝子(通常100ないし1000bp)のスタートコドンの上流側の翻訳されていない配列である。プロモーターは典型的には、誘発的なクラス及び構成的なクラスの2つのクラスに属する。誘発的なプロモーターは、養分の存在あるいは不存在、温度変化等の培養条件の変化に対応して自己の制御の元でDNAからの転写レベルを上昇させるプロモーターである。現時点において多種の宿主細胞から認識される非常に多くのプロモーターが良く知られている。これらのプロモーターは、酵素の消化によって元DNAからプロモーターを排除し、独立したプロモーター配列を挿入することで、GDNFRαをコードするDNAに作用的に結合している。天然のGDNFRαプロモーター配列及び非相同的プロモーターはいずれもGDNFRαDNAの増殖及び/又は発現に用いることができる。しかし、非相同的プロモーターは、天然のプロ−モーターに比較して多量の転写が可能でありGDNFRαの収量が大きいために好ましい。
原核生物宿主に好適なプロモーターはβ‐ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系(Cahng ほか, Nature, 275:615 (1978), Goeddel ほか., Nature, 281:544 (1979))、アルカリホスファターゼ(Alkaline Phosphatase)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980); EP 36,776)、及び、tacプロモーターのようなハイブリッドプロモーターを含む(deBoer ほか., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983)。しかし、他のバクテリアプロモーターも好適である。これらのヌクレオチド配列は発表されており、当業者は、所望の位置にリンカーあるいはアダプターを使用することでGDNFRαをコードするDNA(Siebenlist ほか., Cell, 20:269 (1980))と結びつけることが可能である。バクテリア系で使用するプロモーターも又、GDNFRαをコードするDNAと作用的に結びついたShine-Delgarno (S.D.)配列を有する。
真核生物のプロモーター配列が知られている。ほとんど全ての真核生物の遺伝子は、転写開始位置から25ないし30基上流の位置にAT豊富な領域を有する。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80基上流の位置にはXがヌクレオチドであるCXCAAT領域がある。大部分の真核生物遺伝子の3’端には、コード配列の3’端にA尾が付加されていることを示すシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに挿入されている。
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーティング配列の例として、3‐ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzeman ほか, J. Biol. Chem., 255:2073 (1980))、又は、エノラーゼ、グリセルアルデヒド‐3‐リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼのような他の解凍系酵素(Hess ほか, J. Adv. Enzyme Reg., 7:149 (1968))がある。
成長条件によって転写が制御される付加効果を有する誘発的プロモーターである他の酵母プロモーターとしては、アルコールデヒドロゲナーゼ2のプロモーター領域、イソシトクロームC、酸ホスファターゼ、窒素代謝関連の分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースの使用を支配する酵素がある。酵母の発現に好適に用いられるベクターとプロモーターはヨーロッパ特許73,657号に記載されている。酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に好適に用いられる。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからのGDNFα転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス(1989年7月5日公開のUK 2,211,504)、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及び最も好ましくはシミアンウィルス40(サルウィルス:SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、ヒートショックプロモーター、そしてGDNFRα配列に通常付随するプロモーターによって(このようなプロモーターは宿主細胞系に適合し得ると仮定する)調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40複製起点も含むSV40制限断片として簡便に得られる。Fiersほか, Nature, 273:113 (1978); Mulliganほか, Science, 109:1422-1427 (1980); Pavlakisほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:7398-7402 (1981). ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。Greenawayほか, Gene, 18:355-360 (1982)。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主でDNAを発現する系が、米国特許第4419446号明細書に開示されている。この系の修飾は米国特許第4601978号に開示されている。サルの細胞での免疫インターフェロンをコードしているcDNAの発現について、Grayほか, Nature, 295:503-508 (1982);単純ヘルペスウィルス由来のチミジンキナーゼプロモーターの調節下でのマウス細胞におけるヒトβインターフェロンcDNAの発現について、Reyesほか, Nature, 297:598-601 (1982);培養されたマウス及びウサギの細胞におけるヒトインターフェロンβ1遺伝子の発現についてCanaaniほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79:5166-5170 (1982);及び、プロモーターとしてラウス肉腫ウィルスの長い末端反復配列を用いたCV−1サル腎臓細胞、ニワトリ胚線維芽細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、及びマウスNIH−3T3細胞における細菌CAT配列の発現について、Gormanほか, Proc. Natl. Acas. Sci. USA, 79:6777-6781 (1982)も参照のこと。
より高等の真核生物による本発明のGDNFRαをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強される。エンハンサーは、通常は約10から300bpで、プロモーターに作用してその転写を増強するシス作動要素のDNAである。エンハンサーは、相対的に方向及び位置に独立しており、転写ユニットの5’(Laiminsほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:993 (1981))及び 3’(Luskyほか, Mol. Cell Bio., 3:1108 (1983))、イントロン内部(Banerjiほか, Cell, 33:729 (1983))並びにコーディング配列自身の内部に見出されている。Osbornほか, Mol. Cell Bio., 4:1293 (1984)。現在は哺乳動物の遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp100−270)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物のプロモーターの活性化のための増強要素については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)も又参照のこと。エンハンサーは、GDNFRαコード化配列の5’又は3’位でベクター中にスプライスされ得るが、好ましくはプロモーターから5’位に位置している。
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、又転写の終止及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5’、時には3’の非翻訳領域から一般に取得できる(Crowleyほか, Cell 76:1001-1011 (1994))。これらの領域は、GDNFRαをコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
一又は複数の上に列挙した成分を含む適切なベクターの組立てには標準的なライゲーション技術を用いる。分離されたプラスミド又はDNA断片を開裂させ、整え、そして必要とされるプラスミドの生成のために望ましい型に再ライゲーションする。
組立てられたプラスミドが正しい配列であることを確認する分析のために、ライゲーション混合物を用いて、E.coli K12菌株294(ATCC31446)を形質転換し、適当な場合にはアンピシリン又はテトラサイクリン耐性によって選択する。形質転換体からプラスミドを調製し、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析し、及び/又はMessingほか, Nucleic Acids Res., 9:309 (1981)の方法又はMaxamほか, Methods in Enzymology, 65:499 (1980)の方法によって配列決定する。
本発明の実施に特に有用であるのは、哺乳動物細胞におけるGDNFRαをコードしているDNAの一過性発現を提供する発現ベクターである。一般に、一過性発現は、宿主細胞が発現ベクターの多くのコピーを蓄積し、次にその発現ベクターによってコードされている所望のポリペプチドを高レベルで合成するように、宿主細胞中で効果的に複製できる発現ベクターを使用することを含む。Sambrookほか, supra, pp.16.17-16.22。一過性発現系は、適切な発現ベクターと宿主細胞を含むが、クローニングされたDNAによりコードされているポリペプチドの簡便で正の同定並びに所望の生物学的又は生理学的性質についてのポリペプチドの迅速なスクリーニングを可能にする。したがって、一過性発現系は、本発明において、生物学的に活性なGDNFRαであるGDNFRαの類似体及び変異体を同定する目的のために特に有用である。
組換え脊椎動物細胞培養でのGDNFRαの合成に適応するのに適切な他の方法、ベクター及び宿主細胞は、Gethingほか, Nature, 293:620-625 (1981); Manteiほか, Nature, 281:40-46 (1979); EP 117,060; 及びEP 117,058に記載されている。GDNFRαの哺乳動物細胞培養発現にとって特に有用なプラスミドは、pRK5(EP307247)又はpSV16Bである。1991年6月13日に公開されたWO91/08291。
ここに記載のベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、又は上述の高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物体、例えばエシュリシアのような腸内菌科、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィエア、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えばサルモネラ・ティフィムリウム、セラチア、例えばセラチア・マルセスキャンス及びシゲラ並びにバシリ(桿菌)、例えばB.サブティリス(枯草菌)及びB.リチェフォルミス(例えば、1989年4月12日に公開された DD 266,710に開示されたB.リチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えばP.アエルギノーサ(緑膿菌)及びストレプトマイセスを含む。E. coli B、E. coli X1776 (ATCC 31,537)及びE. coli W3110 (ATCC 27,325)のような他の菌株も適切ではあるが、一つの好ましい大腸菌クローニング宿主はE. coli 294 (ATCC 31,446)である。これらの例は限定するものではなく、例示のためのものである。菌株W3110は、組換えDNA産物生産のための一般的な宿主菌株であるので、特に好適な宿主又は親宿主である。好ましくは、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌すべきである。例えば、菌株W3110は、タンパクをコードしている遺伝子に遺伝的突然変異が起こるように修飾されてもよく、そのような宿主の例にはE. coli W3110菌株27C7がある。27C7の完全な遺伝子型はtonAΔptr3phoAΔE15Δ(argF-lac)169ompTΔdegP41kanrである。菌株27C7はATTC55244としてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に1991年10月30日に寄託された。又、1990年8月7日に発行された米国特許第4946783号に開示された突然変異体ペリプラズムプロテアーゼを持つE.coliの菌株を用いても良い。更に又、クローニング法、例えばPCR又はその他の核酸ポリメラーゼ反応も適切である。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、GDNFRαをコードしているベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は下等真核生物宿主微生物のなかで最も一般的に用いられる。しかしながら、例えばシゾサッカロミセス・ポンベ(分裂酵母)(Beachほか, Nature, 290:140 (1981); 1985年5月2日発行のEP 139,383); クルイヴェロミセス宿主 (米国特許番号4,943,529; 前掲のFleerほか) 、例えばK. ラクティス(MW98-8C, CBS683, CBS4574; Louvencourtほか, J. Bacteriol., 737 (1983)), K. フラギリス (ATCC 12,424), K. ブルガリウス (ATCC 16,045), K. ウィッケラミイ(ATCC 24,178), K. ワルティイ (ATCC 56,500), K. ドロソフィラルム(ATCC 36,906; 前掲のVan den Bergほか), K. サーモトレランス、及び K. マルクシアヌス; ヤロウィア(EP 402,226); ピチア・パストリス (EP183,070; Sreekrishnaほか, J. Basic Microbiol., 28:265-278 (1988)); カンジダ; トリコルデルマ・リーシア (EP 244,234); ニューロスポラ・クラッサ (Caseほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5259-5263 (1979)); シュワニオミセス・オクシデンタリスのようなシュワニオミセス (1990年10月31日発行のEP 394,538); 及び 糸状菌、例えばニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラディウム(WO 91/00357 1991年1月10日発行), 及びアスペルギルス宿主、例えばA.ニデュランス (Ballanceほか, Biochem Biophys. Res. Commun.,112;284-289 (1983); Tilburnほか, Gene, 26:205-221 (1983); Yeltonほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:1470-1474 (1984)及びA. niger. Kellyほか, EMBO J., 4:475-479 (1985)のような、多数のほかの属、種、及び菌株が一般に利用でき、本発明において有用である。
グリコシル化GDNFRαの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物から誘導される。このような宿主細胞は、複雑なプロセシング及びグリコシル化活動が可能である。原則的には、脊椎動物であろうと無脊椎動物培養由来であろうと、任意のより高等の真核生物細胞培養が利用できる。無脊椎動物細胞の例としては植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウィルス株及び変異体及び対応する許容可能な昆虫宿主細胞、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(毛虫)、アエデス・アエジプティ(蚊)、アエデス・アルボピクトゥス(蚊)、ドロソフィラ・メラノガスター(ショウジョウバエ)、ボンビクス・モリ(カイコ)が特定されている。例えば、Luckowほか, Bio/Technology, 6:47-55 (1988); Millerほか, Genetic Engineering, Setlowほか, eds., Vol. 8 (Plenum Publishing, 1986), pp.277-279; 及びMaedaほか, Nature, 315:592-594 (1985)を参照のこと。トランスフェクションのための種々のウィルス株が公に利用できる。例えば、オートグラファ・カリフォルニカ NPVのL−1変異体とボンビクス・モリNPVのBm−5株があり、このようなウィルスは本発明によるウィルスとして、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞のトランスフェクションに使用することができる。
綿花、コーン、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト、及びタバコのような植物細胞培養を宿主として用いることができる。典型的には、GDNFRαをコードしているDNAを前もって含むように操作しておいた細菌アグロバクテリウム・トメファシエンスのある菌株と共にインキュベートすることによって植物細胞をトランスフェクトする。A. トメファシエンスと共に植物細胞培養をインキュベートする間に、GDNFRαをコードしているDNAが、植物細胞宿主がトランスフェクトされるようにその植物細胞宿主に移され、そして適切な条件下でGDNFRαをコードしているDNAを発現する。加えて、例えば、ノパリンシンターゼプロモーター及びポリアデニル化シグナル配列のような、植物細胞と適合しうる調節及びシグナル配列が利用できる。Depickerほか, J. Mol. Appl. Gen., 1:561 (1982)。又、T−DNA780遺伝子の上流領域から分離されるDNAセグメントは、組換えDNAを含む植物細胞中の植物発現遺伝子の転写レベルを活性化又は増強しうる。1989年6月21日公開のEP 321,196。しかしながら、脊椎動物細胞への関心が最も高く、培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的手法になっている。例えば、Tissue Culture, Academic Press,編者Kruse and Patterson (1973)を参照のこと。有用な哺乳動物宿主セルラインの例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Grahamほか, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO, Urlaubほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CVI ATCC CCL 70); アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587); ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL 2); イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL 34); バッファローラット肝臓細胞 (BRL 3A, ATCC CRL 1442); ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL 75); ヒト肝細胞 (Hep G2, HB 8065); マウス乳房腫瘍細胞 (MMT 060562, ATTC CCL51); TRI細胞(Motherほか, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982)); MRC 5細胞; FS4細胞; 及びヒト肝癌ライン(Hep G2)である。
宿主細胞をトランスフェクトし、そして好ましくは上述のGDNFRαの発現又はクローニングベクターで好ましくは形質転換し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適当に修飾された常套的栄養培地で培養する。
トランスフェクションは、如何なるコード配列が実際に発現されるか否かにかかわらず、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。多数のトランスフェクションの方法が当業者に知られている。例えば、CaPO及びエレクトロポレーションである。このベクターの操作のあらゆる徴候が宿主細胞内で生じたときに成功したトランスフェクションが一般に認められる。
形質転換は、染色体外のエレメントとしてであろうと染色体成分によってであろうと、DNAが複製可能であるように、生物体中にDNAを導入することを意味する。用いられる宿主細胞に応じて、そのような細胞に対して適した標準的な方法を用いて形質転換はなされる。前掲のSambrookほかの1.82項に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処理又はエレクトロポレーションは、原核生物又は実質的な細胞壁障壁を含む他の細胞に対して用いられる。アグロバクテリウム・トメファシエンスによる感染が、Shawほか, 23:315 (1983)及び1989年6月29日公開のWO 89/05859に記載されたように、ある種の植物細胞の形質転換に用いられる。加えて、1991年1月10日に公開されたWO91/00358に記載されているように、超音波処理を用いて植物をトランスフェクトすることもできる。
このような細胞壁のない哺乳動物の細胞に対しては、Grahamほか, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈殿法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主系形質転換の一般的な側面は1983年8月16日に発行された米国特許第4399216号に記載されている。酵母中の形質転換は、典型的には、Van solingenほか, J. Bact., 130:946 (1977)及びHsiaoほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:3829 (1979)の方法によって実施する。しかしながら、DNAを細胞中に導入する他の方法、例えば、核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、又はポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチン等々を用いる細菌プロトプラスト融合も又用いることもできる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の方法については、Keownほか, Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)及び Mansourほか, Nature, 336:348-352 (1988)を参照のこと。
本発明のGDNFRαポリペプチドをつくるために用いられる原核細胞は、前掲のSambrookほかに一般的に記載されているような適切な培地で培養される。
本発明のGDNFRαをつくるために用いられる哺乳動物の宿主細胞は種々の培地において培養することができる。例えばハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地((MEM) Sigma)、RPMI−1640(Sigma)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM), Sigma)のような市販培地が当該宿主細胞の培養に適している。又、Hamほか, Meth. Enz., 58:44 (1979), Barnesほか, Anal. Biochem., 102:255 (1980), 米国特許 4,767,704; 4,657,866; 4,927,762; 4,560,655; 5,122,469; WO 90/03430; WO 87/00195; 米国再発行特許 30,985に記載された任意の培地を宿主細胞の培養培地として用いることができる。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、ゲンタマイシン(商標)薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物と定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質も又当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について従来用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
一般に、哺乳動物の細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコール、及び実用技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M. Butler編 (IRL Press, 1991)に見出すことができる。
この明細書において言及される宿主細胞は培養中の細胞並びに宿主動物内にある細胞を包含する。
遺伝子の増幅及び/又は発現は、ここに記載された配列に基づき、適切に標識されたプローブを用い、良く知られたサザンブロット法、mRNAの転写を定量化するノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980))、ドットブロット法(DNA分析)、又はインサイツハイブリダイゼーション法によって、直接的に試料中で測定することができる。種々の標識を用いることができ、最も一般的なものは放射性同位元素、特に32Pである。しかしながら、他の方法、例えばポリヌクレオチド中への導入のためのビオチン修飾されたヌクレオチドを用いる方法も又使用することができる。ついで、このビオチンは、例えば放射性核種、蛍光剤、酵素等のような広範囲の標識で標識することができるアビジン又は抗体への結合部位として働く。又、DNA二本鎖、RNA二本鎖及びDNA−RNAハイブリッド二本鎖又はDNA−タンパク二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識することができる抗体を用いることもできる。ついで、抗体を標識し、アッセイを実施することができ、ここで二本鎖は表面に結合しており、その結果二本鎖の表面での形成の時点でその二本鎖に結合した抗体の存在を検出することができる。
又、遺伝子の発現は、遺伝子産物の発現を直接的に定量する免疫学的な方法、例えば組織切片の免疫組織化学的染色及び細胞培養又は体液のアッセイによって、測定することもできる。免疫組織化学的染色技術では、細胞試料を、典型的には脱水と固定によって調製し、結合した遺伝子産物に対し特異的な標識化抗体と反応させるが、この標識は通常は視覚的に検出可能であり、例えば酵素標識、蛍光標識、発光標識等である。本発明における使用に適した特に感度の良好な染色法は、Hsuほか, Am. J. Clin. Path., 75:734-738 (1980)に記載されている。
試料液の免疫組織化学的染色及び/又はアッセイに有用な抗体は、モノクローナルでもポリクローナルでもよく、ここに記載されるようにして調製することができる。
GDNFRα(例えばGDNFRαECD)は、宿主細胞の溶菌液から回収してもよいが、好ましくは分泌されたポリペプチドとして培地から回収される。GDNFRαが膜結合性であるならば、適切な洗浄液(例えばTriton-X100)を用いて膜から引き離すことができる。
GDNFRαがヒト起源以外の組換え細胞でつくられるときは、GDNFRαはヒト起源のタンパク質又はポリペプチドを全く含んでいない。しかしながら、GDNFRαに関して実質的に相同である調製物を得るには、組換え細胞タンパク質又はポリペプチドからGDNFRαを精製する必要がある。第一段階として、培養培地又は可溶化液を遠心分離して粒状の細胞残屑を除去することができる。ついで、GDNFRαを、汚染した可溶性タンパク質及びポリペプチドから、適切な精製手順の例である次の手順により精製することができる:すなわち、イオン交換カラムでの分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;免疫アフィニティー;エピトープタグ結合樹脂;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えばセファデックスG-75を用いるゲル濾過;及びIgGのような汚染物を除くプロテインAセファロースカラムである。
残基が欠失され、挿入され、又は置換されたGDNFRα変異体は、その変異によってしばしば惹起された実質的な性質変化を考慮に入れて、天然配列GDNFRαと同じようにして回収される。免疫親和性樹脂、例えばモノクローナル抗GDNFRα樹脂を、少なくとも一つの残りのエピトープに結合させることによってGDNFRα変異体を吸収するために用いることができる。
例えばフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)のようなプロテアーゼインヒビターも又精製の間のタンパク分解を阻害するのに有用であり、偶発的な汚染物質の成長を防止するために抗生物質を含めることができる。
GDNFRαポリペプチドの共有結合的修飾は本発明の範囲内に含まれる。天然配列GDNFRαとGDNFRαのアミノ酸配列変異体の双方は共有結合的に修飾することができる。GDNFRαの共有結合的修飾の一つの型は、GDNFRαの標的アミノ酸残基を、N末端残基、C末端残基と反応できる有機誘導体形成試薬又は選択された側鎖と反応させることによって分子内に導入することができる。
システイニル残基は最も一般的にはα−ハロアセタート(及び対応するアミン)、例えば、クロロ酢酸又はクロロアセトアミドと反応し、カルボキシメチル又はカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。システイニル残基も又ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスファート、 N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル−2−ピリジルジスルフィド、p−クロロ水銀ベンゾアート、2−クロロ水銀−4−ニトロフェノール、又はクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によって誘導体化される。
ヒスチジル残基はpH5.5−7.0でジエチルピロカルボナートとの反応によって誘導体化されるが、これは、この試薬がヒスチジル側鎖に対して相対的に特異的であるからである。p−ブロモフェナシルブロミドも又有用である;この反応は、好ましくはpH6.0で0.1Mのカコジル酸ナトリウム中で行われる。
リジニル及びアミノ末端残基はスクシン又は他のカルボン酸無水物と反応させられる。これらの試薬を用いた誘導体形成は、リジニル残基の電荷を逆転させる効果を有する。α−アミノ含有残基を誘導体化する他の適当な試薬は、イミドエステル、例えば、メチルピコリンイミダート、リン酸ピリドキサル、ピリドキサル、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4−ペンタンジオン、及びグリオキシラートを用いたトランスアミナーゼにより触媒される反応である。
アルギニル残基は一あるいは幾つかの従来の試薬との反応によって修飾され、とりわけ、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン及びニンヒドリンがある。アルギニル残基の誘導体化は、グアニジン官能基の高いpKaのために反応がアルカリ性条件下で行われることを必要とする。更に、これらの試薬はリジンの基並びにアルギニンのε−アミノ基と反応するかも知れない。
チロシル残基の特異的修飾は、芳香族ジアゾニウム化合物又はテトラニトロメタンとの反応によるチロシル残基内へのスペクトル標識の導入に特に興味を持って、なされる。最も一般的には、N-アセチルイミジゾールとテトラニトロメタンを使用して、それぞれがO−アセチルチロシル種と3−ニトロ誘導体を形成する。チロシル残基はラジオイムノアッセイ用の標識化タンパクを調製するために125I又は131Iを用いてヨウ素化され、クロラミンT法が適切である。
カルボキシル側基(アスパルチル又はグルタミル)がカルボジイミド(R−N=C=N−R’)(ここで、RとR’は異なったアルキル基)、例えば、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド又は1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドとの反応によって選択的に修飾される。
二官能性試薬による誘導体形成は、抗GDNFRα抗体を精製する方法に使用する水不溶性支持体マトリックス又は表面へのGDNFRαの架橋に有用であり、又その逆も同様である。良く用いられる架橋剤は、例として、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4−アジドサリチル酸とそのエステル、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオナート)のようなジスクシンイミジルエステルを包含するホモ二官能性イミドエステル、及びビス−N−マレイミド−1,8−オクタンのような二官能性マレイミドを含む。メチル−3−[(p−アジゾフェニル)ジチオ]プロピオイミダートのような誘導体化剤は、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化中間体を生じる。又、臭化シアン活性化炭水化物のような反応性の水不溶性マトリックス及び米国特許第3969287号;3691016号;4195128号;4247642号;4229537号及び4330440号に記載されている反応性基質がタンパク固定に用いられる。
グルタミニル及びアスパラギニル残基はしばしば各々対応するグルタミル及びアスパルチル残基にそれぞれ脱アミド化される。これらの残基は中性又は塩基性条件下で脱アミド化される。これらの残基の脱アミド化型は本発明の範囲内に入る。
その他の修飾は、プロリンとリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のαアミノ基のメチル化(T.E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, PP.79-86 (1983))、N末端アミンのアセチル化及び任意のC末端カルボキシル基のアミド化を含む。
本発明の範囲内に含まれるGDNFRαポリペプチドの共有結合的修飾の他のタイプは、ポリペプチドの天然グリコシル化パターンを変更することを含む。変更とは、天然GDNFRαに見出される一以上の炭水化物部分を欠失させ、及び/又は天然GDNFRαに存在しない一以上のグリコシル化部位を付加することを意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)というトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチドの何れかが存在すると、可能性の有るグリコシル化部位が作り出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシルアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニン(5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンも又用いられるが)に、N−アセチルガラクトーサミン、ガラクトース、又はキシロースの糖の一つが結合することを意味する。
GDNFRαポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、簡便には、アミノ酸配列を、それが一以上の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって達成される。この変化は、天然のGDNFRα配列への一以上のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O結合グリコシル化部位の場合)。簡単にするには、GDNFRαアミノ酸はDNAレベルでの変化によって、特にGDNFRαポリペプチドをコードしているDNAを、所望のアミノ酸に翻訳するコドンが産生されるように予め選んだ塩基で突然変異することによって、好ましくは変更される。このDNA突然変異は、上記に記載され前掲の米国特許第5364934号に記載された方法を用いてなされる。
GDNFRαポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、該ポリペプチドへのグリコシドの化学的又は酵素的結合による。これらの手順は、N結合又はO結合グルコシル化のためのグリコシル化能を有する宿主細胞中でポリペプチドを生産させる必要がないという点で有利である。用いられる結合様式に応じて、糖(一以上)は、(a)アルギニンとヒスチジンに、(b)遊離のカルボキシル基に、(c)遊離のスルフヒドリル基、例えばシステインのものに、(d)セリン、スレオニン又はヒドロキシプロリンのもののような遊離のヒドロキシル基に、(e)フェニルアラニン、チロシン又はトリプトファンのような芳香族残基、又は(f)グルタミンのアミノ基に結合される。これらの方法は1987年9月11日発行 のWO87/05330及びAplinほか, CRC Crit. Rev. Biochem., 259-306 (1981)に示されている。
GDNFRαポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的又は酵素的になされる。化学的脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸、又は等価な化合物への該ポリペプチドの曝露を必要とする。この処理により、該ポリペプチドを無傷のまま残しながら、結合糖(N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)を除く殆ど又は全ての糖の開裂がなされる。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinほか, Arch. Biochem Biophys., 259:52 (1987)及びEdgeほか, Anal. Biochem., 118:131 (1981)により示されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的開裂は、Thotakuraほか, Meth. Enzymol., 138:350 (1987)に記載されているように、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼを使用して達成することができる。
潜在的なグリコシル化部位でのグリコシル化は、Duskinほか, J. Biol. Chem., 257:3105 (1982)によって記載されているように、化合物ツニカマイシンを使用して防ぐことができる。ツニカマイシンはタンパク質−N−グルコシド結合の形成を阻害する。
GDNFRαの共有結合修飾の他のタイプは、米国特許番第4640835号;第4496689号;第4301144号;第4670417号;第4791192号又は第4179337号に記載されているように、GDNFRαポリペプチドを、種々の非タンパク性ポリマーの一つ、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンに結合させることを含む。
変異体はここに教示するようにしてアッセイすることができる。例えば所定の抗体に対する親和性のような、GDNFRα分子の免疫学的性質の変化は、競合型免疫アッセイによって測定することができる。例えばレドックス又は熱安定性、疎水性、タンパク分解の受けやすさ、又は担体との又はマルチマー内への凝集傾向のようなタンパク質又はポリペプチドの性質の他の潜在的な修飾は、従来からよく知られている方法によってアッセイすることができる。
本発明は、異種性のポリペプチドと融合したGDNFRαを含むキメラポリペプチドを包含する。キメラGDNFRαはここに定義したGDNFRαの変異体の一タイプである。一つの好ましい実施態様では、キメラポリペプチドは、抗タグ抗体又は分子が選択的に結合するエピトープを提供するタグペプチドとのGDNFRαの融合体含む。エピトープタグは一般にGDNFRαのアミノ又はカルボキシ末端に付与される。GDNFRαのこのようなエピトープタグが付けられた形は、その存在をタグポリペプチドに対する標識抗体を用いて検出することができるので、望ましい。又、エピトープタグを供給すると、GDNFRαを抗タグ抗体を用いてアフィニティー精製によって直ぐに精製することができる。抗体を含むアフィニティー精製法及び診断アッセイはここに後で記載する。
タグポリペプチドとその各抗体は従来から良く知られている。例には、fluHAタグポリペプチドとその抗体12CA5(Fieldほか, Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988));c−mycタグとそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7及び9E10抗体(Evanほか, Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985));及び単純ヘルペスウィルス糖タンパクD(gD)タグとその抗体が含まれる。Paborskyほか, Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990)。他のタグポリペプチドも開示されている。例には、フラッグ−ペプチド(Flag-peptide)(Hoppほか, BioTechnology, 6:1204-1210 (1988));KT3エピトープペプチド(Matinほか, Science, 255:192-194 (1992));αチューブリンエピトープペプチド(Skinnerほか, J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991));及びT7遺伝子10タンパクペプチドタグが含まれる。Lutz-Freyermuthほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990)。ひとたびタグポリペプチドが選択されれば、それに対する抗体を、ここに開示した方法を用いて産生することができる。C末端ポリヒスチジン配列タグが好ましい。ポリヒスチジン配列は、例えば(Lindsayほか, Neuron 17:571-574 (1996))記載されているようなNi−NTAクロマトグラフィーによってタグタンパクを単離することを可能にする。
エピトープタグGDNFRαの作成と生産に適切な一般的方法は、これまでに開示したものと同じである。GDNFRαタグポリペプチド融合体は、GDNFRαをインフレームでコードしているcDNA配列をタグポリペプチドDNA配列に融合させ、適当な宿主細胞に結果のDNA融合作成物を発現させることによって最も簡便に作成される。通常は、本発明のGDNFRαタグポリペプチドキメラを調製するときは、GDNFRαをコードしている核酸を、タグポリペプチドのN末端をコードしている核酸にその3’端で融合させるが、5’融合も又可能である。
エピトープタグGDNFRαは、抗タグ抗体を用いてアフィニティークロマトグラフィーによって簡便に精製することができる。アフィニティー抗体が付着される基質は非常に多くの場合アガロースであるが、他の基質も利用できる(例えば、調整穴明きガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼン)。エピトープタグ付きGDNFRαは、例えばバッファーpH又はイオン強度を変化させ、あるいはカオトロピック(chaotropic)剤を添加することによってアフィニティーカラムから溶出させることができる。
適当な免疫グロブリン定常ドメイン配列(イムノアドヘシン)に連結した受容体配列から作成されるキメラが従来から知られている。文献において報告されているイムノアドヘシンは、T細胞受容体(Gascoigneほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:2936-2940 (1987));CD4(Caponほか, Nature 337:525-531 (1989)); Trauneckerほか, Nature, 339:68-70 (1989); Zettmeisslほか, DNA Cell Biol. USA, 9:347-353 (1990); Byrnほか, Nature, 344:667-670 (1990)); L−セレクチン(ホーミングレセプター)((Watsonほか, J. Cell Biol., 110:2221-2229 (1990)); Watsonほか, Nature, 349:164-167 (1991)); CD44(Aruffoほか, Cell, 61:1303-1313 (1990)); CD28及びB7(Linsleyほか, J. Exp. Med., 173:721-730 (1991)); CTLA−4(Lisleyほか, J. Exp. Med 174:561-569(1991)); CD22(Stamenkovicほか, Cell, 66:1133-1144 (1991)); TNF受容体(Ashkenaziほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:10535-10539 (1991); Lesslauerほか, Eur. J. Immunol., 27:2883-2886 (1991); Peppelほか, J. Exp. Med., 174:1483-1489 (1991)); NP受容体(Bennettほか, Biol. Chem. 266:23060-23067 (1991));及びIgE受容体α(Ridgwayほか, J. Cell Biol., 115:abstr. 1448 (1991))の融合物を含む。ここで星印()は受容体が免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであることを示している。
最も簡単で最も簡単なイムノアドヘシンの設計は、「アドヘシン」タンパク質の結合領域(一以上)を免疫グロブリン重鎖のヒンジ及びFc領域と結合させる。通常は、本発明のGDNFRα免疫グロブリンキメラを調製するときは、GDNFRαの細胞外ドメインをコードしている核酸が、免疫グロブリンの定常ドメイン配列のN末端をコードしている配列に融合されるが、N末端融合も又可能である。
典型的には、そのような融合では、コードキメラポリペプチドは、免疫グロブリンの重鎖の少なくとも機能的に活性なヒンジ及び定常領域のCH2及びCH3ドメインを保持する。融合は又定常ドメインのFc部分のC末端、又は重鎖のCH1のN末端に直ぐ、又は軽鎖の対応する領域になされる。
融合がなされる正確な部位は重要ではない;特定の部位は、良く知られており、GDNFRα免疫グロブリンキメラの生物学的活性、分泌又は結合特性を最適化するために選択することができる。
いくつかの実施態様では、WO91/08298に例証されているように、GDNFRα免疫グロブリンキメラは、モノマー、又はヘテロ−又はホモ−マルチマー、そして特にはダイマー又はテトラマーとして構築される。
好ましい実施態様では、GDNFRα細胞外ドメイン配列は、免疫グロブリンの効果機能、例えば免疫グロブリンG(IgG1)を含む、抗体(特にFcドメイン)のC末端部分のN末端に融合される。GDNFRαの細胞外ドメイン配列に全重鎖定常領域を融合させることができる。しかしながら、より好ましくは、パパイン切断部位(化学的にIgGFcを定める;重鎖の定常領域の最初の残基を114として残基216、又は他の免疫グロブリンの類似の部位)の丁度上流側のヒンジ領域に始まる配列が融合に用いられる。特に好ましい実施態様では、GDNFRαアミノ酸配列はIgG1、IgG2又はIgG3重鎖のヒンジ領域及びCH2及びCH3、又はCH1、ヒンジ、CH2及びCH3領域に融合される。融合がなされる正確な部位は重要ではなく、最適な部位は日々の実験で決定することができる。
いくつかの実施態様では、GDNFRα免疫グロブリンキメラは、マルチマー、特にホモダイマー又はテトラマーとして構築される。一般には、これらの構築免疫グロブリンは既知の単位構造を有している。基本的な4鎖の構造単位はIgG、IgD及びIgEが存在する形である。4つの単位がより大なる高分子量の免疫グロブリンにおいて繰り返される;IgMが一般にジスルフィド結合によって一緒になる4単位に対して基本的なペンタマーとして存在する。IgAグロブリン、そして時折IgGグロブリンは又血清中にマルチマー形で存在する。マルチマーの場合は、各4単位は同一でも異なっていてもよい。
又、GDNFRα細胞外ドメイン配列は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の間に、キメラ重鎖を含む免疫グロブリンが得られるように、挿入することができる。この実施態様では、GDNFRα配列は、ヒンジとCH2ドメインの間か、CH2とCH3ドメインの間において、免疫グロブリンの各アームの免疫グロブリン重鎖の3’末端に融合される。同様の作成物はHoogenboomほか, Mol. Immunol., 28:1027-1037 (1991)によって報告されている。
免疫グロブリンの軽鎖の存在は本発明のイムノアドヘシンでは必要とされないが、免疫グロブリン軽鎖が、GDNFRα免疫グロブリン重鎖融合ポリペプチドに関連して共有結合的か、あるいはGDNFRα細胞外ドメインに直接的に融合されて存在するかもしれない。前者の場合には、免疫グロブリン軽鎖をコードしているDNAがGDNFRα免疫グロブリン重鎖の融合タンパクをコードしているDNAと典型的には同時発現される。分泌時には、ハイブリッド重鎖と軽鎖が共有結合的に結合して、2つのジスルフィド結合免疫グロブリン重鎖−軽鎖対を含む免疫グロブリン様構造を提供する。このような構造の調製に適切な方法は、例えば1989年3月28日に発行された米国特許第4816567号に開示されている。
好ましい実施態様では、本発明のイムノアドヘシンの作成に用いられる免疫グロブリン配列は、IgG免疫グロブリン重鎖定常ドメインからのものである。ヒトイムノアドヘシンに対して、IgG1とIgG3の免疫グロブリン配列の使用が好ましい。IgG1を用いる主な利点は、IgG1イムノアドヘシンが固定プロテインAで効率的に精製できることである。これに対して、IgG3の精製には、著しく用途が少ない基剤であるプロテインGが必要である。しかしながら、免疫グロブリンの他の構造的及び機能的性質を、特定のイムノアドヘシン作成のIg融合パートナーを選択するときは考慮するべきである。例えば、IgG3のヒンジはより長く、よりフレキシブルであり、IgG1に融合されるとき、適切に機能しなかったり折りたたまれないより大きなアドヘシンドメインを収容することができる。他に考慮することは結合価である;IgGイムノアドヘシンは2価のホモ二量体であり、IgAとIgMのようなIgサブタイプはそれぞれ基本的Igホモ二量体単位の二量体又は五量体構造になる。インビボでの応用に設計されたGDNFRαイムノアドヘシンについては、Fc領域によって特定される薬物動態学的性質と効果機能も又重要である。IgG1、IgG2及びIgG4は全て21日のインビボ半減期を有するが、補体系を活性化するその相対的な効力は異なっている。IgG4は補体を活性化せず、IgG2はIgG1よりも補体活性が有意に弱い。更に、IgG1とは異なり、IgG2は単核細胞又は好中球のFc受容体に結合しない。IgG3は補体活性には最適である一方、そのインビボの半減期は他のIgGアイソタイプのおよそ1/3である。ヒトの治療に用いられるように設計されたイムノアドヘシンの他の重要な考慮事項は、特定のアイソタイプのアロタイプ変異体の数である。一般に、血清学的に定義されたアロタイプがより少ないIgGアイソタイプが好ましい。例えば、IgG1は血清学的に定義されたアロタイプ部位を4つだけ有し、その内の二つ(G1mと2)がFc領域に位置している;そしてこれらの部位の一つG1m1は非免疫原性である。これに対して、IgG3には12の血清学的に定義されたアロタイプがあり、その全てがFc領域にある;これらの部位の3つ(G3m5、11及び21)が非免疫原性である一つのアロタイプを持っている。従って、γ3イムノアドヘシンの潜在的な免疫原性はγ1イムノアドヘシンのそれよりもより大きい。
親の免疫グロブリンに関しては、有用な結合点は、2つの重鎖の間のジスルフィド結合を形成するヒンジのシステインの丁度上流である。頻繁に用いられる設計では、分子のGDNFRα部分のC末端残基のコドンがIgG1ヒンジ領域の配列DKTHTCPPCPのコドンの直ぐ上流に位置される。
イムノアドヘシンの作成と発現に適した一般的な方法は、GDNFRαに関してこれまでに開示したものと同じである。GDNFRαイムノアドヘシンは、GDNFRα部分をインフレームでコードしているcDNAをIgcDNA配列に融合させることによって最も簡便に作成される。しかしながら、ゲノムIg断片への融合も又用いることができる(例えば Gascoigneほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84:2936-2940 (1987); Aruffoほか, Cell, 61:1303-1313 (1990); Stamenkovicほか, Cell, 66:1133-1144 (1991)を参照のこと)。後者の融合タイプは、発現にIg制御配列の存在を必要とする。IgG重鎖定常領域をコードしているcDNAは、ハイブリダイゼーション法又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって脾臓又は末梢血リンパ球から由来するcDNAライブラリーからの発表された配列に基づいて単離できる。GDNFRαとイムノアドヘシンのIg部分をコードしているcDNAは、選択された宿主細胞において効果的な発現を方向付けるプラスミドベクター内に直列に挿入される。哺乳動物の細胞における発現では、pRK5−系ベクター(Schallほか, Cell. 61:361-370 (1990))及びCDM8系ベクター(Seedほか, Nature, 329:840 (1989))を用いることができる。正確な接合部は、オリゴヌクレオチド特異的欠失変異誘発を用いて設計接合部コドン間の余分の配列を除去することによってつくられる(Zollerほか, Nucleic Acids Res., 10:6487 (1982); Caponほか, Nature, 337:525-531 (1989))。各半分が所望の接合部の何れかの側の配列と相補的であり;理想的には36ないし48マー(mer)である合成オリゴヌクレオチドを用いることができる。又、PCR法を用いてインフレームの分子の2つの部分を適当なベクターと結合させることができる。
GDNFRαイムノアドヘシンの発現に対しての宿主株化細胞の選択は、主に発現ベクターに依存する。他の考慮事項は必要とされるタンパク質の量である。ミリグラム量をしばしば一過性トランスフェクションによってつくることができる。例えば、アデノウィルスEIA形質転換293ヒト胚腎臓株化細胞は効率的なイムノアドヘシンの発現を可能にする修正リン酸カルシウム法によってpRK5系ベクターで過渡的にトランスフェクトされうる。CDM8系ベクターはDEAEデキストラン法によってCOS細胞をトランスフェクトするために用いることができる(Aruffoほか, Cell, 61:1303-1313 (1990); Zettmeisslほか, DNA Cell Biol. US, 9:347-353 (1990))。もし多量のタンパク質が所望されるならば、イムノアドヘシンは、宿主株化細胞の安定なトランスフェクションの後に発現することができる。例えば、pRK5系ベクターはジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードしG418に対する抵抗性を付与する更なるプラスミドの存在下でチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞内に導入することができる。G418に対して抵抗性のあるクローンが培養において選択できる;これらのクローンは増加量のDHFR阻害薬であるメトトレキサートの存在下で成長させられる;イムノアドヘシン配列とDHFRをコードしている遺伝子コピーの数が共に増幅されるクローンが選ばれる。もしイムノアドヘシンがそのN末端に疎水性のリーダー配列を含んでいれば、トランスフェクション細胞によってプロセシングされて分泌される。更に複雑な構造のイムノアドヘシンの発現には、独特の適した宿主細胞が必要となる;例えば、軽鎖又はJ鎖のような成分がある種のミエローマ又はハイブリドーマ宿主細胞によって提供される(Gascoigneほか, 1987, supra, Martinほか, J. Virol., 67:3561-3568 (1993))。
イムノアドヘシンはアフィニティークロマトグラフィーによって簡便に精製することができる。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適切性は、キメラに用いられる免疫グロブリンのFcドメインのアイソタイプと種に依存する。プロテインAは、ヒトのγ1、γ2、又はγ4の重鎖に基づくイムノアドヘシンを精製するために用いることができる(Lindmarkほか, J. Immunol. Meth., 62:1-13 (1983))。プロテインGは全てのマウスのアイソタイプ及びヒトのγ3に対して推奨される(Gussほか, EMBO J., 5:1567-1575 (1986))。アフィニティーリガンドが付着する基質は、最も頻繁にはアガロースであるが、他の基質も利用できる。機械的に安定な基質、例えばコントロール穴明きガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースで達成できるよりもより速い流量とより短いプロセス時間を可能にする。プロテインA又はGアフィニティーカラムにイムノアドヘシンを結合させる条件は、Fcドメインの特性によって完全に支配される;すなわち、その種とアイソタイプに支配される。一般には、適切なリガンドが選ばれた場合には、効果的な結合が無条件培養流体から直接的に生じる。イムノアドヘシンの一つの目立つ特徴は、ヒトのγ1分子に対しては、プロテインAに対する結合能力が同じFc型の抗体に対していささか消失する。結合性イムノアドヘシンは酸性のpH(3.0あるいはそれ以上)か、あるいは穏やかにカオトロピックな塩を含む中性pHのバッファー中で効果的に溶出され得る。このアフィニティークロマトグラフィーの工程により、純度が>95%であるイムノアドヘシン調製物を得ることができる。
プロテインA又はGについてアフィニティークロマトグラフィーの代わりに、又はそれに加えて、従来知られている他の方法もイムノアドヘシンを精製するために用いることもできる。イムノアドヘシンは、チオフィリック(thiophilic)ゲルクロマトグラフィー(Hutchensほか, Anal. Biochem., 159:217-226 (1986))と固定金属キレート(Al-Mashikhiほか, J. Dairy Sci., 71:1756-1763 (1988))における抗体と同様に挙動する。しかしながら、抗体とは異なり、イオン交換カラムでの挙動は、それらの等電点によってばかりではなく、そのキメラ性により分子内に存在する双極子電荷によっても又支配される。
所望されるならば、イムノアドヘシンは二特異性(bispecific)とされ得る。従って、本発明のイムノアドヘシンは、GDNFRαの細胞外ドメインと、他のサイトカイン又は神経栄養因子受容体サブユニットの、細胞外ドメインのようなドメインを組合せることもできる。そのような二特異性イムノアドヘシン分子が作られ得る例示的なサイトカイン受容体としては、TPO(又はmplリガンド)、EPO、G−CSF、IL−4、IL−7、GH、PRL、IL−3,GM−CSF、IL−5,IL−6,LIF、OSM、CNTF、及びIL−2受容体が含まれる。二特異性分子には、抗体様構造の一つのアームにキメラ抗体の重鎖を、他のアームにキメラ抗体の重鎖−軽鎖対を含んでなるトリマー分子が、精製の容易性のために有利である。10のテトラマーの混合物をつくる、二特異的イムノアドヘシンの生産に伝統的に用いられる抗体生産クアドローマとは対照的に、トリマーイムノアドヘシン構造の3つの鎖をコードしている核酸でトランスフェクトされた細胞が3つの分子だけの混合物をつくり、この混合物からの所望の生成物の精製が従ってより容易である。
GDNFRαタンパク質とGDNFRα遺伝子(及びGDNFとGDNF遺伝子)は、GDNF活性に関連するあるいはGDNF応答性が有益となる疾病あるいは疾患の治療において、哺乳動物、特にヒトに投与するエクスビボ又はインビボでの治療用途があると考えられる。本発明の実施態様での治療で特に受け入れられる症状は、Retの発現に関与するもの又はRet活性化が有益となるもの、特にRetによって媒介される下流経路のものである。特に好ましいものは、神経性障害、好ましくは中枢神経系障害、腎臓の障害、脾臓に関連する造血障害、及び腸内神経系障害である。一つの実施態様では、患者に有効量のGDNFRα、GDNF、又はそのアゴニスト、又はその活性なペプチド断片又は変異体が投与される。本発明は、又、GDNFRα、GDNF、又はそのアゴニスト、又はその活性なペプチド断片又は誘導体を適切な薬理的担体中に含有する製薬組成物をも提供する。ここに教示した方法に適用できるが、受容体タンパク質は、必要に応じて、GDNF又は他のGDNFRαリガンドの前に、後に、あるいは好ましくは同時に(又は複合して)投与することができる。ここに教示されているように、GDNFRαはGDNFが存在しない標的細胞に設けて、続いて投与されるGDNF又はGDNFアゴニストに対するこれらの細胞の応答性を増加させることができる。
内因性GDNFの栄養効果を減少させるのが好ましい。したがって、神経系トラウマの領域においては、GDNF結合について内因性細胞受容体と競合する、Ret活性化に欠陥のある無細胞GDNFRαを含む(これには限定されない)GDNFアンタゴニストを提供することが望ましい。このような状況下では、GDNFアンタゴニストを全身的よりもむしろ損傷部位に局所的に付与することが望まれる。GDNFRを提供する移植片の使用が局所投薬に対しては望ましい。
又、ある状態では、GDNF(又は他のGDNFRαリガンド)の応答性の増大が有益となり得る。従って、そのような症状を患っている患者の細胞内におけるGDNFRαの数及び結合親和性を増大させることが有益であり得る。これは、可溶性のGDNFRα、必要に応じてGDNFRαリガンド、好ましくはGDNFで複合化されたものの投与によって、あるいはGDNFRαをコードしている核酸を用いる遺伝子療法によって、達成することができる。適当な細胞中における組換えGDNFRの選択的発現は、組織特異性又は誘発性のプロモーターによって調節されたGDNFR遺伝子を用いて、あるいは組換えGDNFR遺伝子を担持する複製欠陥ウィルスでの局所的感染をつくりだすことによって達成することができる。GDNFに対して感受性が増加すると有益である症状は、限定するものではないが、筋萎縮性側索硬化症、ヴェルディヒ−ホフマン病、慢性近位脊柱筋萎縮、そしてギラン−バレー症候群を含む運動ニューロン疾患である。更なる症状は、交感神経細胞に関与するもの、特に増加した生存又はGDNF応答性が望ましいものである。ド−パミン作動性ニューロンを含む、中枢神経系ニューロンと、末梢感覚神経を含む、感覚神経の増加した生存又はGDNF応答性が望ましい症状が、本発明の実施態様により好適に治療される。従って、糖尿病、パーキンソン病、アルツハイマー病、及びハンチントン舞踏病に伴う神経性疾患の治療がここで提供される。本組成物と方法は、GDNFRαを発現する非神経細胞に関連した症状にも又適用できる。実際、GDNFRαはRetを活性化するので、Ret発現細胞におけるRet活性経路に関連する症状を本発明の実施態様で治療することができる。
神経細胞及び/又はその軸索突起の生存又は機能が妥協されるならば、疾病又は医療疾患は神経損傷であると考えられる。そのような神経損傷は、結果的な症状として含まれるものは:(a)身体的損傷で、損傷部位の近くの軸索突起及び/又は神経細胞体の変性を引き起こすもの;(b)脳卒中のような虚血;(c)癌及びエイズの化学療法薬、例えばシスプラチン及びジデオキシチジン(ddC)のような、神経毒への暴露;(d)糖尿病又は腎不全のような慢性代謝病;及び(e)パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のような神経変性疾患で、これらは特定のニューロン集団の変性をもたらす。神経損傷に関与する症状は、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、糖尿病性多発神経障害、中毒性神経症、及び神経系の物理的損傷、例えば脳及び脊髄の物理的損傷又は腕及び手又は身体の他の部分の座滅又は切創によって惹起されるものであり、脳卒中におけるように神経系の部分への血流の一次的又は永久的休止を含む。
GDNFRα遺伝子は、筋肉細胞及び関連するニューロンに発現される。従って、本発明は、本発明の組成物をそのような治療を必要としている患者に投与することを含んでなる、GDNFR発現筋肉細胞疾患を治療する方法を提供する。このような治療が有益な筋肉細胞疾患は、限定するものではないが、次の進行性筋ジストロフィー:デュシエーヌ、ベッカー、エメリー−ドライフス、ランドジー−デジェリーヌ、肩甲上骨、肢帯、フォン・グラッフェ−フュクス(Von Graefe-Fuchs)、眼咽頭、筋緊張性及び先天性の筋ジストロフィーを含む。加えて、このような分子は、先天性(中央コア(central core)、ネマリン、中心核及び先天性線維型不均衡)及び後天性(毒性、炎症性)ミオパシーの治療に使用できる。
本発明の更なる実施態様では、GDNFR遺伝子をコードしている領域に対応するアンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴデオキシリボヌクレオチドの有効量を投与することによって、過剰のGDNFR、GDNFに対する過敏症、過剰のGDNF等々を煩っている患者を治療することができる。
本発明の化合物と方法は、造血細胞の減少に関連した症状に使用することができる。これらの疾病の例としては、貧血(大球性及び再生不良性貧血を含む);血小板減少症;発育不全;播種性血管内血液凝固(DIC);脊髄形成異常;免疫(自己免疫)血小板減少性紫斑病(ITP);及びHIV誘発ITPがある。又、GDNF及びGDNFRα分子は、骨髄増殖性疾患並びに炎症症状からの血小板増多症の治療及び鉄分不足に有用である。造血細胞増殖の増大を導くGDNF及びGDNFRαは、化学又は放射線療法もしくは骨髄移植療法を受けた細胞における成熟血球系列の再増殖を高めるために使用することもできる。一般に、GDNF及びGDNFRα分子は造血細胞の増殖及び/又は分化(しかし特に増殖)を高めるものと期待される。好ましい実施態様は、脾臓で生じる造血を高める治療法を提供する。
GDNF及びGDNFRα、及びそれらの遺伝子の他の可能性の有る治療用途は、腎臓又な肝臓細胞の成長、生存及び修復を促進する治療を含み、腎臓病及び腎臓疾患を治療することを含む。例えば、急性腎不全はそれまでに正常な腎機能の突然の破壊を意味する。この深刻な臨床症状は、循環系の不全(ショック)、血管妨害、糸球体腎炎、尿流閉塞を含む非常に広範なメカニズムから生じうる。急性腎不全はしばしば腹部又は又は血管手術の合併症として生じる。又、出生前の継続した改善による肺と心臓問題を克服して生存する少ない出生時体重のハイリスク新生児は、感染又は薬物毒性によって惹起される急性腎不全の合併症によって死亡しうる。特に臨床的に重要であるのは、外傷、敗血症、術後の合併症、又は投薬、特に抗生物質に関連する急性腎不全の場合である。特に、本発明の化合物は、腸内神経系又は腎臓系の不全に直接的に又は間接的に関連する病因学に使用用途がある。GIに影響する特定の症状は、これに限定するものではないが、噴門痙攣、食道スパスム、強皮症(食道の平滑筋部分の筋萎縮、食道本体部の下方2/3の収縮の弱さ、及び食道下方の括約筋の機能不全に関連し、又免疫抑制剤での治療によっても引き起こされる)、十二指腸潰瘍のような疾患、ゾリンガー−エリソン症候群(遺伝子因子、喫煙、神経的影響を含む因子によって引き起こされる酸過多)、胃酸過多、吸収不全症、例えば胃アトニー、吐き気、嘔吐などが少なくとも部分的に交感/副交感神経系の不全に関連している糖尿病(及び副甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、及び副腎不全)を含む。更なる疾患は、憩室症/憩室炎;ハーシュスプラング病(通常は肛門に近い遠位結腸の小セグメントにおける神経節細胞の不在によって引き起こされる先天性疾患(マイスナー及びアオエルバッハの神経叢)で、典型的には乳児にみられ、深刻でない場合は、青年期又は成人期初期になるまで診断されない);他の型の巨大結腸症(ハーシュスプラングのものは巨大結腸のタイプである);腸の筋層の交感神経支配の異常による深刻な運動性異常であり、強皮症、糖尿病、アミロイド症、他の神経性疾患、薬物又はセプシスから起因する急性又は慢性の仮性腸閉塞;及び患者に精神遅滞又は神経性疾患を持つ患者に深刻な問題であり、寄与因子が不順な腸運動性である慢性便秘を含む。更なる症状は、限定するものではないが、腸内神経系の明確な破壊による脊髄機能不全;ギラン・バレー症候群;多発性硬化症;パンディソウトノミア(Pandysautonomia)(自律神経系の機能不全);振せん麻痺(不順な胃腸運動をしばしば伴う);特徴として不順な腸運動を持つと文献で報告されている多発系萎縮症(Multiple System Atrophy)(シャイドレーガー症候群);及びニューロパチーによって現れ、しばしばGI運動性障害を伴う拡散性疾患であるポルフィリン及びアミロイド症を含む。
ここに提供した組成物と方法によって治療できるGDNFR−発現又はGDNF応答性組織の壊死又は損傷は、微生物又はウィルス感染による壊死、例えば、ウィルス性肝炎、結核、腸チフス熱、野兎病、ブルセラ病、黄熱病等、又はショック、心臓発作等から起因する虚血症による壊死、又は薬物及び毒性物質、例えば化学療法、クロロホルム、四塩化炭素、亜リン酸中毒等のようなでの急性又は慢性反応による壊死を含む。ここに教示されるように、本発明の組成物と方法は、腎臓を神経支配する神経細胞と腎臓上皮細胞のような腎臓細胞のものを含む細胞成長促進によって腎臓疾患を治療するのに有用である。本発明の組成物と方法は
腎臓損傷の修復をなさしめる。理論に限定されるのものではないが、神経支配ニューロンを含む腎細胞を刺激して成長させ分割することによって直接的又は間接的にこれが達成できると考えられる。従って、ここに開示したGDNFRアゴニスト(例えばGDNFと複合化されていてもよい可溶性GDNFRα)を、薬理学的に許容可能な担体又は更なる成長因子もしくはサイトカインと必要に応じて組合せて、調製し、該組成物に腎臓組織を接触させる腎臓組織を再生する方法が提供される。該組成物の治療的量が投与される。局所的注射又は移植片が好ましい移送(送達)方法である。又、損傷した腎臓を除去し、エクスビボで処理し、腎臓の修復後に宿主に戻すこともできる。
GDNFを含むGDNFRアゴニストは、血液透析の間に投与することができる。血液透析は、血液から毒素を抽出又は分離する目的で患者から血液を一時的にとり、同じ患者に清浄血液を戻すこととして定義される。血液透析は、腎臓機能障害又は不全が存在する患者、すなわち血液が腎臓によって適切に又は十分に清浄化されていない(特に水分を除去する)場合に指示される。慢性的な機能障害の場合は、透析は繰り返す形で実施されなければならない。例えば、腎臓移植が可能ではなかったり、禁忌指示されている末期の腎臓疾患では、患者は年に約100から150回透析を受けなければならない。
本発明は腎障害をもたらす可能性がある疾患や症状に有用である。本発明は腎障害の副作用を有する免疫抑制療法、例えば自己免疫反応を抑制するように構成された方法によるヒトにおけるIDDMの治療等に使用できる。糖尿病にシクロスポリンAを用いた治療は腎障害をもたらす可能性がある。糖尿病は腎臓における血管の遅発性障害をもたらすことがある。他の例としては、例えば、糸球体腎炎、急性腎不全、移植の拒絶反応やネフローゼ性物質による腎障害、腎臓移植、腎臓の毒性障害等の免疫学的に又は非免疫学的に発生する腎臓病がある。更に、本発明は、移植時にドナーから除核した臓器が無事運ばれることを保証するために臓器を保管し、移植手術までに問題が発生することを避け、該臓器が良い状態で保存されることを保証する臓器輸送体等を含み、臓器移植に有用である。臓器はGDNF保持又はGDNF応答性細胞を有するものである。好ましい具体例では、臓器が腎臓である。GDNFを含むGDNFRアゴニストの使用や処置では、腎臓機能の維持の成功を保証する。
ここで述べるように、本発明の目的には機能障害性胃腸筋又は身体の他の部位に平滑筋障害を有する哺乳類の治療方法を提供することがある。胃腸筋は他の部位の筋肉とは非常に異なる形で組織化され、制御される。胃腸管の骨格筋及び平滑筋は両方とも、運動、分泌及び吸収を含む消化プロセスを全面的に制御し、胃腸壁内に存在する非常に複雑な神経や筋肉のネットワークである腸神経系の支配下にある。腸神経は、神経叢と称する、相互接続するネットワークに組織化されている。この内、円形筋層と縦筋層の間に位置する腸筋層間神経叢が胃腸運動の主調節機構である。(迷走性及び交感性経路を介して)中央神経系及び局所的反射経路からシグナルを受ける。抑制的及び興奮性シグナルを両方隣接する筋に出力する。よって、胃腸管の筋肉緊張を制御する最終的神経経路は腸筋層間神経叢の神経細胞である。胃腸管における総合的筋肉活動が、一方は筋肉を(主にアセチルコリンによって)短縮させ、他方は弛緩させる腸筋層間神経叢内の二つの神経系の対向する作用のバランスによるものと見なすと分かり易い。しかし、両種類の神経細胞とも腸筋層間神経叢内のアセチルコリンによって活動する。つまり、胃腸筋緊張の制御におけるアセチルコリンの役割は複雑である。筋肉の近辺でエフェクター神経から直接放出されるアセチルコリンは弛緩させるが、神経叢内では抑制作用又は興奮作用を引き起こす。それに対して、胃腸管外の骨格筋は中央神経系の神経によって直接支配される。胃腸管外の骨格筋における神経と筋肉との相互作用は遥かに単純であり、神経がアセチルコリンを放出すると、それが筋肉を弛緩させる。最後に、胃腸管の筋緊張において腸筋層間神経叢が多分最も重要であるが、決定要因はそれだけではない。実は、基礎平滑筋緊張は、神経活動の他に内因性(筋原性)緊張や循環性ホルモンを含む様々な因子の総合作用によるものと見なすことができる。例に示すとおり、GDNFRは胃腸筋及び支配神経細胞内に存在する。その結果、本発明はアカラシア、下部食道括約筋の他の障害、オッディ括約筋機能不全、刺激反応性腸管症候群(Irritable Bowel Syndrome)及び他の障害等を含む胃腸障害を治療するための組成物、方法及びデバイスを提供する。
例えば、腸の習性の変化、腹痛及び検出可能な病理の非存在を特徴とする運動疾患である刺激反応性腸管症候群(IBS)の治療方法を提供する。IBSは、精神的因子やストレスを伴う状況等によってかなり影響されるその症状によって認識できる。胃腸科に訪れる患者の内20%から50%がIBSに悩まされている。それ以外正常に思われる人の内、約14%にIBSの症状が現れる。この症候群は、同様に発現する複数の疾患から成っている。IBSの主な症状(腸の習性の変化、腹痛及び鼓脹)は腸内の運動性の増加や胃酸の過剰分泌の発現である。胃腸管の活動は、副交感性及び交感性神経支配を介して中央神経系(CNS)、及び胃腸管自体に存在し、GDNFRを発現する腸神経系(ENS)によって神経的に調節される。
他の実施例では、内在性GDNFRαレベルが低いか欠損のGDNFRα遺伝子を有する哺乳類に、好ましくはそのようなレベルの低下が病理学的疾患を引き起こすおそれがある場合やGDNFRα及びRetの活性がない場合に、GDNFRαを投与する。これらの実施形態では、全長のGDNFRαを患者に投与する場合、遺伝子療法で受容体をコードしている遺伝子を患者に投与することが考えられる。
遺伝子療法では、例えば欠損の遺伝子を交換するために、治療に効果的な遺伝子産物の生体内合成の目的で細胞内に遺伝子を導入する。遺伝子療法とは、一度の処理で持続する効果を得る従来の遺伝子療法も、治療に効果的なDNA又はmRNAを一度又は何度も投与する遺伝子治療剤投与法も含む。アンチセンスRNA及びDNAは、生体内で特定の遺伝子の発現を阻止する治療剤として利用できる。短かいアンチセンスオリゴヌクレオチドは細胞内に導入すると、細胞膜への取り込み制限により、細胞内濃度が低いにも関わらず、抑制剤として機能することは既に発表済みである(Zamecnikほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:4143-4146 (1986))。オリゴヌクレオチドは、例えば陰性リン酸ジエステル基を無荷電基で置換することで、取り込みを増強するように変更できる。
生細胞に核酸を導入する方法は様々である。それら方法は、試験管内で培養細胞内にトランスフェクトするか宿主の細胞内に生体内でトランスフェクトするかによって異なる。試験管内で哺乳類細胞に核酸をトランスフェクトするのに適する方法として、例えばリポソームの使用、電気穿孔法、微量注入、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法等がある。現在好まれている生体内遺伝子転移法としては、ウイルス(通常レトロウイルス)ベクターを用いた形質移入やウイルス性コートタンパク質―リポソーム形質移入(Dzauほか, Trends in Biotechnology, 11:205-210 (1993))等がある。状況によっては、例えば細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異性を有する抗体や標的細胞上の受容体に対するリガンド等、標的細胞をターゲットする薬剤を核酸源に設けることが好ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質と結合するタンパク質、例えば特定の細胞型に対して向性であるキャプシドタンパク質又はその断片、サイクリングの際に内部移行するタンパク質の抗体、及び細胞内局所性をターゲットし、細胞内半減期を延長するタンパク質等をターゲティング及び/又は取り込みを容易化するために使用できる。受容体介入エンドサイトーシス法は、例えばWuほか, J. Biol. Chem., 262:4429-4432 (1987)及びWagnerほか, Proc. Natl. Acad Sci. USA, 87:3410-3414 (1990)に記載されている。現在知られている遺伝子マーキング及び遺伝子治療プロトコルについてはAndersonほか, Science, 256:808-813 (1992)を参照。
本発明はGDNFRα活性に対するアンタゴニスト(例えばGDNFRαアンチセンス核酸、中和抗体)も提供する。増加又は過剰レベルの内在性GDNFRα活性を有する哺乳類に、特にそのような増加又は過剰レベルのGDNFRα又はRet活性が病理的障害をもたらす可能性がある場合、GDNFRαアンタゴニストを投与することが考えられる。
一実施態様では、体内で内在性リガンドを結合するためにGDNFRαアンタゴニスト分子を用い、特に血清内のGDNFリガンドレベルが正常の生理的レベルを越えている場合に、非感受性のGDNFRαをGDNFリガンドに応答するようにする。
可溶性GDNFRαの医薬組成物は、更にGDNF又は他のGDNFRα結合性アゴニストも含むことが可能である。GDNFの半減期を延長すること、GDNFの遅放性リザーバを設けること、内在性GDNFRα又はRetを活性化すること、及び/又はGDNFRαに欠ける標的Ret発現性細胞にそれを補充し、その細胞をGDNFに応答するようにすることが治療的に効果的であれば、このような例えばGDNF/GDNFRα複合体等を含む二成分組成物は有利である。
GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストの治療用製剤は、所望の純度のGDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストを、凍結乾燥ケーキ又は水溶液の形態の生理的に許容できるキャリア、賦形剤又は安定剤と任意に混合する(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A., Ed., (1980))ことで、保管のために準備する。許容できるキャリア、賦形剤又は安定剤とは、適用する投与量及び濃度では受給者にとって無毒性のものを意味し、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等の緩衝液、アスコルビン酸等の抗酸化剤、低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性重合体、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸、グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類又は他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、マンニトール又はソルビトール等の糖アルコール類、ナトリウム等の塩基形成対イオン及び/又はトゥィーン(tween)、プルロニックス(pluronics)又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤等を含む。
GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストは、コアセルベーション法や界面重合法によって得た(例えば、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンミクロカプセル及びポリ−(メチルメタシレート)ミクロカプセル等)ミクロカプセル、コロイド薬剤投与系(例えば、リポソーム、アルブミン微粒子、ミクロエマルジョン、ナノ粒子又はナノカプセル等)、又はマクロエマルジョン中に包括することもできる。このような方法はRemington’s Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
生体内に投与するGDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストは、無菌性であることが必要である。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、無菌の濾過膜で濾過することで容易に実施できる。GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストは通常凍結乾燥状態又は溶液内で保管する。
GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストの治療用組成物は、通常は無菌のアクセスポートを有する容器、例えば静脈内溶液袋又は皮下用注射針で貫通可能のストッパを有するバイアル等の中に設ける。
GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストの投与経路は周知の方法に従い、例えば特定の場合について上述する経路や静脈内、腹腔内、脳内、筋肉内、眼内、動脈内又は病巣内注射又は注入等の一般的経路や下記の徐放システム等がある。GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストは、連続的に注入するか又は大量瞬時注射することで投与する。通常、病状が許すならば、GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストを部位特異性投与用に製剤し、投与量を決めることが好ましい。投与法は、連続的又は定期的のいずれであっても良い。投与法は、定常運動又はプログラマブル流量の埋込み式ポンプ、又は定期的注射によって実施できる。
徐放性製剤の適例としては、タンパク質を含む固体疎水性重合体の半透性マトリックスがあり、マトリックスはフィルム状又はミクロカプセル状等の形付けられた物である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、Langerほか, J. Biomed. Mater. Res., 15:167-277 (1981)及びLanger, Chem. Tech., 12:98-105 (1982)に記載されているヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル―メタクリレート)等)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸の共重合体(Sidmanほか, Biopolymers, 22:547-556 (1983))、非分解性エチレン―酢酸ビニル(上記Langerほか)、Lupron Depot(商標)(乳酸―グリコル酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能な微粒子)等の分解性乳酸―グリコル酸共重合体及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)等がある。
エチレン−酢酸ビニルや乳酸−グリコール酸等の重合体は100日以上分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短い時間タンパク質を放出する。カプセル化タンパク質は、長時間体内に残存すると、37℃で水分に曝されることで、変性又は凝集し、生理活性の喪失や免疫原性の変化のおそれがある。かかる機構によって安定性を得るための合理的な処置が考えられる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換による分子間S―S結合であることが分かったら、スルフヒドリル残基を変更し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を調整し、適当な添加物を使用し、特定の重合体マトリックス化合物を開発することで安定性を保証することができる。、
GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストの徐放性組成物は、リポソーム的に包括されたGDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストを含む。GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストを含有するリポソームは、それ自体周知である方法、例えば、DE 3,218,121、Epsteinほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688-3692 (1985)、Hwangほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030-4034 (1980)、EP 52,322、EP 36,676、EP 88,046、EP 143,949、EP 142,641、特願昭58-118008、米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号、及びEP 102,324等による方法によって生成する。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モル%以上コレステロールであり、選択される割合が適切治療法により調整された微小(約200-800オングストローム)な単層状のものである。
GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストは、局所的に塗る場合には、キャリア及び/又はアジュバント等の他の成分と適宜組み合わせる。それら他の成分の特徴については、生理的に許容でき、投与法に有効であり、組成物の主成分の活性を劣化しないものであれば特に限定しない。
ゲル製剤を得るには、液体組成物として製剤したGDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストを、局所的に塗るのに適した粘性のゲルを得るために有効な量でPEG等の水溶性多糖類又は合成重合体を混合することができる。使用可能な多糖類としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びアルキルヒドロキシアルキルセルロースを含むエーテル化セルロース誘導体等のセルロース誘導体、デンプン又は分画デンプン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸塩、アラビアゴム、プルラン、アガロース、カラゲナン、デキストラン、デキストリン、フルクタン、イヌリン、マンナン、キシラン、アラビナン、キトサン、グリコゲン、グルカン、合成生体高分子、及びキサンタンゴム、グアルゴム、ローコストゴム、アラビアゴム、トラガカンスゴム又はカラヤゴム等のゴム類、又はそれらの誘導体又は混合物がある。ここで、ゲル化剤としては、生理系に対して無活性であり、無毒性であり、容易に製剤でき、薄すぎず、固すぎず、中に含まれるGDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストを不安定化しないものが好ましい。
多糖類は好ましくはエーテル化セルロース誘導体であり、更に好ましくは、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のメチルセルロースやヒドロキシアルキルセルロースの誘導体のような細かく定義され、精製され、USPに掲載されたものである。この内メチルセルロースが最も好ましい。
通常ゲル化に使用するポリエチレングリコールは適当な粘性を得るため低分子量PEGと高分子量PEGの混合物である。例えば、分子量400-600のPEGと分子量1500のものとの混合物は、ペーストを得るのに妥当な割合で混合するとこの目的には有効である。
多糖類やPEGについて述べる「水溶性」とは、コロイド溶液や分散液等も含む。一般的には、セルロース誘導体の水溶性はエーテル基の置換度により決定され、ここで使用される安定化誘導体は水溶性に成し得るに足りる量のエーテル基をセルロース鎖の無水グルコース一体当たり有することが望ましい。一般的に、エーテル置換度は無水グルコース一体当たり0.35以上のエーテル基で十分である。又、セルロース誘導体はLi、Na、K又はCs等のアルカリ金属塩であっても良い。
ゲルにメチルセルロースが使用されると、好ましくはゲルの2−5%の割合、更に好ましくは3%の割合で存在し、GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストはゲルの1ml当たり300−1000mgの量で存在する。
特定の状況において、インプラント可能な半透過性隔膜装置は薬剤の投与手段として有用である。例えば、可溶性GDNFR、GDNF又はそれらのアゴニスト、又はキメラを分泌する細胞をカプセル化し、その装置を患者の体内、例えばパーキンソン病の患者の脳内等にインプラントすることができる。Aebischerほかの米国特許第4,892,538号、Aebischerほかの米国特許第5,011,472号、Aebischerほかの米国特許第5,106,627号、PCT特許出願第WO 91/10425号、PCT特許出願第WO 91/10470号、Winnほか, Exper. Neurology, 113:322-329 (1991)、Aebischerほか, Exper. Neurology, 111:269-275 (1991)及びTrescoほか, ASAIO, 38:17-23 (1992)等参照。よって、特定の条件によってそれを必要とする患者の体内にGDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニスト、又はアンタゴニストを分泌する細胞をインプラントすることを含む神経への損傷又はここで教示するような腎臓等のGDNFR発現性又はGDNF応答性細胞への損傷を防止又は治療する方法をも包含する。最後に、本発明は神経の損傷又はここで教示するような他の細胞への損傷を防止又は治療する、GDNFR,GDNF又はそれらのアゴニストに対して透過性であり、細胞に有害な患者からの成分に対して不透過性である半透過性隔膜及びその隔膜内にカプセル化されるGDNFR、GDNF又はそれらのアゴニスト(又は特定の条件によってはアンタゴニスト)を分泌する細胞を含むインプラント装置を包含する。GDNF又はGDNFRを生成するよう生体外で形質転換された患者自身の細胞を直接的に、任意に無カプセル化で、患者の体内にインプラントすることも可能である。生息する細胞の隔膜カプセル化技術は当業者には周知であり、カプセル化細胞の準備や必要とする患者内へのインプラントは分野において既知のとおり容易に実施できる。すなわち、本発明は、GDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストを発生する本来の能力を有することで選択されるかGDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストを分泌するよう転換された細胞をそれを必要とする患者の体内にインプラントすることによって細胞の損傷、好ましくは神経の損傷を防止又は治療する方法を包含する。好ましくは、患者が人間である場合、分泌されるGDNFRαは可溶性の成熟ヒトGDNFRαである。GDNFとしては、成熟ヒトGDNF(WO93/06116)が好ましい。埋込体は好ましくは非免疫原性であり及び/又はインプラントされた免疫原性細胞を免疫系によって認識されることを防ぐ。CNS投与においては、好ましいインプラント部位は脊髄の脳脊髄液内である。
GDNFRα、GDNF、又はそれらのアゴニストの治療的に適用するのに有効な量は、例えば、治療目的、投与経路、患者の状態等に依る。そのため、治療士は最適の治療効果を得るために必要な投与量を滴定し、投与経路を変更しなければならない。通常、望ましい結果が得られる投与量に到達するまでGDNFRα、GDNF又はそれらのアゴニストを投与する。全身治療用の通常の一日量は上述する因子に依り、1μg/kgないし10mg/kgの範囲内にあり、望ましくは1μg/kgないし2mg/kg、更に好ましくは1μg/kgないし2mg/kgである。他の一般提案として、組織内に約0.1ng/ccより多く、効果的であるが必要以上毒性ではない最大量までのGDNFRα、GDNF、又はそれらのアゴニストの濃度を確立できる量のGDNFRα、GDNF,又はそれらのアゴニストを調整し、目的部位又は組織内に投与する。この組織内濃度は可能であれば、連続注入、徐放、局所投与、GDNFRα(又はGDNF又はそれらのアゴニスト)発現性細胞インプラント、又は実験的に決定された頻度での注射で保持するべきである。この治療の進行状態は治療される病用の周知検定によって容易に監視できる。GDNFRαをGDNFと複合又は併用して投与する場合、GDNFRα対GDNF二量体の比率が100:1ないし1:100であることが有効である。比率は、好ましくは10:1ないし1:10、より好ましくは1:1、更に好ましくはGDNFRαのGDNFに対する自然結合比を反映する2:1である。
GDNFRα核酸はここで例を挙げる組換え方法によるGDNFRαポリペプチドの製法に有用である。そのGDNFRαは以下に述べる様々な用途を有する抗GDNFRα抗体の生成に利用できる。
GDNFRα(ポリペプチド又は核酸)は試験管内で細胞のGDNF応答性を増加させる(よって細胞生存率を増加し、Ret仲介下流経路を変調する)のに使用できる。それら細胞は細胞表面Retを含むか含むよう変形されてなければならない。生体外で培養されるこれら細胞は、同時に、ここで述べるような他の既知の神経栄養性因子又はサイトカインに暴露されてあっても良い。
本発明の更なる実施形態では、GDNFRαを、自然又は人工リガンドの内、GDNFRαに結合するリガンドの親和精製する目的で使用できる。精製されるリガンドの内、GDNFが好ましい。簡単に説明すると、この方法は(a)精製されるべきGDNFリガンドが選択的に固定されたGDNFRαに吸着する状況においてGDNFリガンド源を固定受容体に接触させ、(b)無吸着物を除去するためにGDNFRα及びその支持体を洗浄し、(c)溶出緩衝液によってGDNFリガンドを固定GDNFRαから溶出する工程を含む。親和精製の特に好ましい実施形態では、GDNFRαは不活性かつ多孔性の基質又は樹脂(例えば、臭化シアンとの反応を経たアガローズ)に共有結合をしている。特に好ましくはプロテインAカラムに固定されたGDNFRαイムノアドヘシンである。次に、GDNFリガンドを含有する溶液をクロマトグラフ材料を通過させる。GDNFリガンドはカラムに吸着し、その後溶出条件を変えることで(例えば、pHやイオン性を変えることで)離脱される。新規リガンドはI125やビオチン化GDNF等の周知の標識GDNFRαリガンドの転移を監視することで検出できる。
GDNFRαはGDNFRαに結合する可能性のあるアゴニストやアンタゴニストの競合的スクリーニングに使用できる。これらのようなアゴニストやアンタゴニストはそれぞれ不充分又は過度のGDNFRα活性化に特徴を有する病を治療するための治療薬を構成できるる。
GDNFRαに結合する分子を同定するための好ましい方法はアッセイプレートのウェル等の固相に付着したキメラ受容体(例えば、エピトープ標識GDNFRα又はGDNFRαイムノアドヘシン)を利用する。任意に標識(例えば、放射標識)できる候補分子の固定受容体への結合を測定することができる。あるいは、I125GDNF等の周知の標識されたGDNFRαリガンドの結合との競合を測定することができる。アンタゴニストのスクリーニングのためには、GDNFRαをGDNFリガンドに暴露してから推定上のアンタゴニストに暴露し、又は同時にGDNFリガンドとアンタゴニストをGDNFRαに加え、アンタゴニストの受容体活性化を阻止する能力を評価できる。
本発明は、GDNFRαを強く発現し、つまりかなり低濃度のGDNFやGDNF式分子に対しても高い感受性を有する細胞を含む、GDNF活性を検出するアッセイ系をも提供する。本発明は、ペプチドや非ペプチド化合物への暴露によるGDNF活性又はGDNF活性に似た活性を発明のGDNFR分子を発現するGDNFに応答する細胞又は株細胞におけるGDNFに対する生理反応を測定することで検出できるアッセイ系を提供する。生理反応はGDNFのいずれの生物学的作用を含むが、それはここで述べるものを含むが、それには限定されず、他に特定の核酸配列の転写活性(例えば、プロモーター/エンハンサー要素と共に構造遺伝子)、GDNF関連処理、翻訳又はリン酸化、Ret仲介作用を含むGDNFによって直接的又は間接的に誘発されるプロセスに反応する二次プロセスの誘発、及び神経突起発芽又は下神経節や後根神経節細胞、運動神経細胞、ドーパミン作動性神経細胞、感覚神経細胞、プルキンエ細胞又は海馬細胞等の細胞の生存を支持する能力などの形態学的変化をも含む。
本発明の一実施形態では、自己リン酸化Retタンパク質あるいはリン酸化ERK−1又はERK−2相同体(上記Kotzbauerほか参照)の発生の増加を検出することによって、GDNFとGDNFRαとの機能的相互作用を観測できる。
本発明はGDNF又はGDNF様活性を検出する目的で化合物をスクリーニングするために使用できる新規アッセイ系の開発にも役立つ。GDNFと結合する標的細胞は、GDNFRαをコードする核酸の形質移入により産生でき、例えば蛍光活性細胞選別、ロゼットの沈降又は限界希釈等により確認及び隔離できる。一度標的細胞の株が産生か認識されると、GDNFに対して極めて高感受性である細胞を選出することが望ましい。そのような標的細胞はGDNFRα分子をより多く有している可能性があり、例えば高発現性のものをフルオロホアでタッギングされたGDNFでマークした後、免疫蛍光検出や細胞選別をすることでGDNFRαを比較的大量に有する標的細胞はGDNFを多く結合する標的細胞を選択することで確認できる。又、GDNFに極めて高感受性である細胞はGDNF結合に対して比較的強力な生理反応、例えばRet仲介作用又はc−fosやc−jun等の最初期遺伝子産物の急激な増加を示す可能性がある。GDNFに対して極めて高感受性である標的細胞を使用したアッセイ系を開発することで、本発明は低レベルのGDNF活性も検出可能な、GDNF又はGDNF様活性を検出する目的のスクリーニング方法を提供する。
特に、本発明は組換DNA技術を使用し、GDNFに対して高感受性となるように操作されたGDNF標的細胞を提供する。例えば、元々GDNF応答性である細胞にGDNF受容遺伝子を挿入し、組換GDNFR遺伝子を高レベルで発現するようにし、得られた操作後の標的細胞が細胞表面において多数のGDNFRを発現するようにしても良い。又、標的細胞は、GDNF/受容体結合に反応して高レベルで発現される組換遺伝子を含むように操作することもできる。このような組換遺伝子は、好ましくは容易に検出できる物質と付随している。例えば、これに限定されないが、最初期遺伝子の転写制御領域(すなわち、プロモーター/エンハンサー領域)を標的細胞に導入された構造体のレポーター遺伝子の発現を制御するために利用できる。最初期遺伝子/レポーター遺伝子構造体は、強力なプロモーター/エンハンサーあるいは高いコピー数によって標的細胞において高レベルに発現されると、GDNFR結合に対して増幅応答を発生することに利用できる。例えば、これに限定されないが、GDNF応答性のプロモーターはβガラクトシダーゼ、成長ホルモン、クロラムフェニコールアセチル転移酵素、ネオマイシンリン酸転移酵素、ルシフェラーゼ又はβグルクロニダーゼ等の検出可能なレポーター遺伝子の発現を制御することに利用できる。当業者には周知であるこれらレポーター遺伝子産生物の検出は医薬化合物のGDNF又はGDNF様活性に敏感な指標として利用できる。
ここで述べるGDNF又はGDNFRαコード遺伝子構造体(例えば、可溶性ECD)は、形質移入、電気穿孔、リン酸カルシウム/DEAEデキストラン法及びセルガン等を含むこの分野において既知であるいずれの方法でも使用して挿入できる。構造体や操作済み標的細胞は説明した方法を使用してその中からGDNF又はGDNFRα発現性標的細胞を選択できる、上記構造体を導入遺伝子として有するトランスジェニック動物の産生に使用できる。
GDNFRをコードする、望ましくは非ヒト種の核酸、例えばマウスやラットのタンパク質はトランスジェニック動物を産生するかあるいは動物をノックアウトするのに使用でき、これらは治療的に有用な試薬の開発やスクリーニングに使用できる。トランスジェニック動物(例えばマウス)とは、出生前、例えば胚段階で、その動物又はその動物の祖先に導入された導入遺伝子を含む細胞を有する動物である。導入遺伝子とは、トランスジェニック動物が発生する細胞のゲノムに組み込まれたDNAである。一実施形態では、GDNFRαをコードするヒト及び/又はラットのcDNA、又はその適当な配列を、周知の方法によりGDNFRをコードするゲノムDNA及びGDNFRをコードするDNAを発現する細胞を有するトランスジェニック動物を発生するために使用されるゲノム配列をクローンするために利用する。特にマウス等のトランスジェニック動物を産生する方法は周知であり、例えば米国特許第4,736,866号や第4,870,009号に記されている。通常、特定の細胞を組織特異性エンハンサーでのGDNFR導入遺伝子の導入の標的にし、これによって治療で望む効果を得ることが可能である。胚段階で動物の生殖系列に導入されたGDNFRをコードする導入遺伝子のコピーを有するトランスジェニック動物はGDNFRをコードするDNAの発現増加の結果を調べるために使用できる。このような動物は、例えばGDNF関連病を予防すると思われる試薬のテスター動物として利用できる。発明の本実施形態では、動物に試薬を投与し、導入遺伝子を有する無投与の動物に比べ病の出現率が低ければ、病に対する治療的処置の可能性を示す。
現在はミニ遺伝子を有するトランスジェニックマウスが好ましいとされる。先ず、実施例で述べるように、融合酵素発現性構造体を作成し、細胞培養の発現に基づき選択する。次いで、既知の方法によりその融合酵素を発現可能なミニ遺伝子を構成する。発現に組織特異性である転写制御因子を含むミニ遺伝子構造体を持つ宿主が特に好ましい。
GDNFRを発現するトランスジェニックマウスは、例えば受精卵の回収、雄性前核内へのDNA構造体の微量注入、及びホルモン操作された偽妊娠の乳母の子宮への受精トランスジェニック卵の再注入等を含む既知の方法により産生する。あるいは、例えば宿主種の胚幹細胞(Rossantほか, Philos. Trans. R. Soc. Lond. Biol. 339:207-215 (1993))や始原生殖細胞(Vickほか, Philos. Trans. R. Soc. Lond. Biol. 251:179-182 (1993))を使用した既知の方法によりキメラを産生する。導入遺伝子の挿入は子孫マウスの尾から調整したDNAのサザンブロットによって確認できる。それらトランスジェニックマウスは戻し交配してホモ接合体を得る。
導入遺伝子は、5’側にイントロンを含み、そのイントロンが天然である場合より効率的に発現されることは既に確認済みである(Brinsterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:836 (1988)、Yokodeほか, Science 250:1273 (1990))。
GDNFRミニ遺伝子を発現するトランスジェニックマウスはトランスジェニックマウスを産生するための周知の方法を使用して産生する。トランスジェニックマウスは現在標準の方法によって構成する(ほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:836 (1988)、Yokodeほか, Science 250:1273 (1990)、Rubinほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:434 (1991)、Rubinほか, Nature, 353:265 (1991))。時間制限交尾による受精卵はPBSで軽く洗浄して収集し、100nl未満のDNA溶液を微量注入して雄性前核に約10個のDNA分子を送り込む。注入が成功した卵子は次に卵管転移によって偽妊娠の乳母に再移植する。微量注入された卵子の内、トランスジェニックの子孫が得られるのは僅か5%にも満たなく、この内僅か1/3しか能動的に導入遺伝子を発現しない。この数はおそらく導入遺伝子がゲノムに導入される場所に影響される。
トランスジェニック子孫は、好ましくは短い尾の断片からDNAを採取し、サザンブロットにより導入遺伝子の有無について分析すること(テイルブロット)でゲノム内の微量注入された導入遺伝子の導入を確かめることによって確認される。プローブとして好ましくは導入遺伝子にのみ存在し、マウスゲノムには存在しないミニ遺伝子融合構造体の一部である。あるいは、導入遺伝子内のコドンの天然配列を同一ペプチドをコードする異なる配列で置換するとDNA及びRNA分析によって確認できる独特の領域が得られる。このようにして確認された開祖マウスは通常のマウスと繁殖させ、ヘテロ接合体を得て、これは戻し交配してトランスジェニックマウスの系統を作る。その系統が確立してホモ接合性になるまで、各世代の各マウスのテイルブロットを分析する。各開祖マウス及びその系統は、マウスゲノムに挿入された導入遺伝子の場所及びコピー数によって他の系統とは異なり、そのため導入遺伝子の発現性も大きく異なる。各々確立した系統から複数の動物を選択し、生後二ヶ月で屠殺し、肝臓、筋肉、脂肪、腎臓、脳、肺、心臓、脾臓、性線、副腎及び腸のRNAのノーザンブロットにより導入遺伝子の発現性を分析する。
他に、GDNFRの非ヒト相同体は、動物の胚性細胞に導入されたゲノム変化GDNFR・DNAと内在性のGDNFR遺伝子との間の相同的組換えによって、GDNFRノックアウト動物、すなわちGDNFRをコードする欠陥又は変化遺伝子を有する動物を構成するために使用できる。例えば、マウスのGDNFR・DNAは周知の方法によりゲノム性GDNFR・DNAのクローニングに使用できる。ゲノム性GDNFR・DNAの一部(例えば、細胞外ドメイン等をコードするエキソン)を除去したり、組み込みを監視するために使用する選択可能なマーカーをコードする遺伝子等他の遺伝子で置換することができる。通常、ベクターは無変化の側方DNA(5’側と3’側両方)を数キロベース含む(相同的組換えベクターについてはThomas and Capecchi, Cell 51:503 (1987)参照)。ベクターは胚性幹細胞に(例えば電気穿孔法等によって)導入し、導入されたDNAが内在性DNAと相同的に再結合した細胞を選択する(例えば、Liほか, Cell 69:915 (1992)参照)。選択された細胞は次に動物(例えばマウス)の胚盤胞内に注入され、集合キメラを形成する(Bradley, in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, E. J. Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987), pp. 113-152参照)。その後、キメラ性胚を適切な偽妊娠の雌性乳母に移植し、孵化させてノックアウト動物を作る。胚細胞に相同的に組替えられたDNAを有する子孫は標準の方法によって確認し、それらを利用して動物の全細胞が相同的に組替えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。ノックアウト動物はグラフトを許容し、腫瘍を拒絶し、感染症に対して防御する能力によって特徴付けられ、基本的な免疫生物学の研究に使用できる。
本発明の実施により組換えDNA分子や形質転換された宿主動物を産生するために使用できる上記の方法の他に、様々な周知の方法やそれらの変更によって発明を実施することができる。例えば、米国特許第4,736,866号は胚細胞及び体細胞が胚段階で動物又は動物の祖先に導入された遺伝子配列を含むトランスジェニック非ヒト真核動物を産生するためのベクター及び方法を開示する。米国特許第5,087,571号は(1)全ての胚細胞及び体細胞が胚段階で導入された組換え遺伝子配列を含むトランスジェニック非ヒト哺乳類を設け、(2)該体細胞を一つ以上培養することを含む細胞培養を作る方法を開示する。米国特許第5,175,385号は体細胞及び胚細胞が、好ましくは微量注入によって、胚段階でマウス又はそのマウスの祖先に導入された遺伝子を含み、その遺伝子を所望の表現型を得るのに十分なレベルで発現するトランスジェニックマウスを産生するためのベクター及び方法を開示する。異種遺伝子発現を促進するために部分的に構成的なプロモーター、すなわちメタロチオネインプロモーターを使用した。米国特許第5,175,384号は胚を導入遺伝子を含むレトロウイルスに感染させることで胚に導入遺伝子を導入する方法を開示する。米国特許第5,175,383号はマウスの泌尿生殖器において遺伝子を発現するために有効である異種性及び誘導性のプロモーターと操作可能に連結された宿主に対して相同的な遺伝子を有し、導入遺伝子は胚段階でマウスに導入してトランスジェニックマウスを産生する、DNA構造体を開示する。相同性の遺伝子が導入されるが、本来のコード配列における位置とは異なるサイトでマウスの染色体に遺伝子を組み込むことができる。適当な誘導性プロモーターとして重要なMMTVプロモーターが開示される。米国特許第5,162,215号はトランスジェニック動物を産生するために多能性幹細胞を使用してニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ又はカモ等の家畜種を含む鳥類のためのトランスジェニックベクター及び方法を開示する。米国特許第5,082,779号は遺伝子の組織特異性発現性を有するトランスジェニック動物を産生するために使用できる下垂体特異性発現プロモーターを開示する。米国特許第5,075,229号は胎児の造血性肝細胞のゲノムに組み込まれるよう、ベクタを宿主胎児の腹腔に注入することで、造血性肝細胞が肝臓特異性プロモーターによって促進される機能性遺伝子を含み、発現するトランスジェニックのキメラ動物を産生するベクター及び方法を開示する。
上記の特許公報及び文献の内いずれかは本発明の範囲に属しない特定の遺伝子産物又は物質の産生又は使用に関するが、それらに記述された方法は、発酵や遺伝子工学の分野における当業者によって本明細書で説明する本発明の実施に応じて容易に変更可能である。
本発明のアッセイ系は、GDNF関連病の治療に使用する医薬化合物の効率的なスクリーニングを可能とする。例えば、これに限定されるものではないが、腎臓や小脳の退化に対するGDNF活性及び治療有効性に関して医薬剤をスクリーニングすることが望ましい場合がある。本発明の一実施例では、GDNFに反応する細胞を確認し、単離し、マルチウェル培養プレートのマイクロウェル内で培養する。被検剤添加又はGDNF添加培養液を多数の希釈度で適切な対照と共にウェルに加える。その後、細胞を生存率の改善及び神経突起の発芽等について調べ、被検剤及びGDNFの活性又は関連する活性を観測する。例えば、GDNFの様に毒性攻撃や軸索切断に対し運動神経細胞死を防止できるGDNF様化合物を確認できる。GDNF応答性運動神経や腸神経は、運動神経系や腸神経系病の治療に有用な化合物を確認するためのアッセイ系に使用できる。特定の病が特定の組織におけるGDNF応答の欠乏に関連付けられると、その病に対する合理的な治療法は患者に外来性のGDNFを供給することである。しかし、内在性のGDNFより長い半減期を有し、GDNFアゴニストとして機能し、又は特定の組織を標的にした分子を開発することが望ましい。よって、本発明の方法は、望む特徴を有する分子を同定するために使用できる効率的かつ敏感なスクリーニング系を得るために使用できる。同様のアッセイ系によって、GDNFアンタゴニストも同定できる。
又、本発明はGDNF及びその受容体の生理的役割を研究するための実験モデル系を提供する。このような系は(1)GDNF結合の奪い合いで細胞受容体と競合する循環性のGDNFRαペプチドに曝され、GDNF欠乏状態になっている動物、(2)GDNFRによって免疫化された動物、(3)GDNFRを高レベルで発現し、GDNFに対して過敏性であるトランスジェニック動物又は(4)胚性幹細胞技術を使用してゲノムから内在性GDNFR遺伝子が除去された動物等の動物モデルを含む。
更に、本発明はGDNF及びその受容体の生理的役割を研究するための実験モデル系を提供する。これらモデル系では、GDNFRタンパク質、ペプチドフラグメント又はその誘導体は系に供給されても系内で産出されても良い。このようなモデル系はGDNF過剰又はGDNF欠乏の作用を調べるために使用できる。実験モデル系は、細胞又は組織培養内、動物全体内、動物全体又は組織培養系における特定の細胞や組織内、あるいはGDNFR発現が誘発性又は発達的に制御されるプロモーターによって調節される実施形態では特定の時間経過(胚形成時も含む)におけるGDNFに対する反応の低下又は増加の作用の研究に使用できる。本発明の具体的な実施形態では、CMVプロモーターをトランスジェニック動物におけるGDNFRαの発現の制御に使用できる。ここで述べるトランスジェニック動物は、微量注入法、細胞融合法、形質移入法及び電気穿孔法を含む分野において周知であるあらゆる方法によって産生できる。
本発明はGDNFRαに対して自己免疫反応を起こす自己免疫病のモデル系を提供する。このようなモデルは免疫原的な量のGDNFRで免疫化され、好ましくは抗GDNFR抗体及び/又は細胞仲介免疫性を有する動物を含む。モデル系を作るためには、GDNFRを免疫性アジュバントと共に投与することが望ましい。
これに限定されるものではないが、例えば、過剰GDNF活性の作用を研究するための実験モデル系を作成できる。このような系ではモデル系の細胞を、操作されていない細胞に比べ、より多数のGDNFRを含むよう操作し、GDNFに対する応答性を増大させる。これら細胞はRet、又はGDNFRαと相互作用を成し得、GDNFシグナルを仲介できるシグナル分子をも発現するべきである。本来GDNFRを発現する細胞に選択的により多数のGDNFRを設けることが望ましい。細胞は、本発明のGDNFR遺伝子を保有するウイルスで感染することによって、GDNFRをより多数産出するように操作できる。その他、形質移入によって、細胞にGDNFR遺伝子を設けても良い。モデル系が動物である場合、GDNFR遺伝子を保有するウイルスによる感染又はここで述べる他の方法で組換えGDNFR遺伝子を動物の細胞内に導入することができる。例えば、GDNFR遺伝子を導入遺伝子として有するトランスジェニック動物を産生できる。GDNFRの発現を保証するためには、GDNFR遺伝子を適当なプロモーター配列の制御下に置く。GDNFR遺伝子を構成的及び/又は組織特異性プロモーターの制御下に置くことが望ましい。細胞GDNFRの数を増やすことで、内在性GDNFに対する応答性も増大させることができる。モデル系にはGDNFが少量しか存在しないか全く存在しない場合、系にGDNFを添加することができる。過剰GDNF活性の作用を評価するためにも、モデル系にGDNFを追加することが望ましい。GDNF(又は分泌されたGDNF)の過剰発現は、GDNFRを既に発現する細胞における高レベルGDNFの作用を調べるために望ましい方法である。更に望ましくは、全細胞においてGDNFRを発現し(一般発現)、どの細胞がGDNFに対する機能的応答性を有するか判断することで、存在すれば、二つ目の受容体成分を確認できるようにする。
GDNF活性の低下の作用について研究を行うために使用できる実験モデル系を作成できる。この系は、GDNFを必要とする治療の対象になり得るプロセスや神経細胞の同定を可能とする。このような系では、細胞の表面には結合していないかあるいはGDNFに対する反応を伝達しにくくなるよう操作された組換えGDNFRを設けることでGDNF応答性を軽減することができる。例えば、GDNFRタンパク質、ペプチド又は誘導体を系に供給し、供給された受容体が内在性GDNFRとGDNF結合を奪い合い、GDNF応答性を軽減するようにできる。GDNFRは系に追加されるかあるいは系によって産生される無細胞受容体であっても良い。例えば、産生する細胞から分泌される無アンカーGDNFRのような、膜貫通ドメインを有しないGDNFRタンパク質は系内の細胞によって産生される。その他、GDNFRタンパク質、ペプチド又は誘導体を系内の細胞外部位に設けることができる。本発明の更なる実施形態では、相同体組換えによって組換えGDNFR遺伝子を内在性遺伝子を無活性化あるいはノックアウトして、低GDNFRの細胞、組織又は動物を作ることができる。例えば、これに限定されるものではないが、GDNFRを無活性化するネオ遺伝子等の挿入性変異を含むように組換えGDNFR遺伝子を操作する。このような構造体は、適当なプロモーターの制御下で、形質移入、形質導入又は注入等の方法によって胚幹細胞等の細胞に導入する。その後、構造体を含む細胞をG418抵抗性により選択できる。無傷のGDNFR遺伝子を持たない細胞は、例えばサザンブロット、ノーザンブロット又は発現アッセイにより同定できる。無傷のGDNFR遺伝子を含まない細胞は初期胚細胞に融合して、GDNFR欠乏性のトランスジェニック動物を産生する。そのような動物を内在性GDNFを発現しない動物と比較すると、その表現型は完全に一致するか否か決定できる。一致しない場合、他のGDNF様の因子や受容体の存在を裏付ける。そのような動物は、通常GDNF又はその受容体に依存する神経細胞集団等の特定の細胞集団や生体内プロセスを指定するために利用できる。よって、その動物がGDNFRを発現できなく、そのためGDNFに反応できない場合、それら集団やプロセスは影響を受けることが予想できる。その他には、内在性の受容体とGDNFを奪い合う組換えGDNFRタンパク質、ペプチド又は誘導体は、系内の細胞の表面上で発現するが、GDNF結合に対する反応を伝達しないように操作してあっても良い。上記の組換えGDNFRタンパク質、ペプチド又は誘導体は、GDNFに対する内在性GDNFRの親和性と同様であるかあるいは異なる親和性でGDNFと結合する。より有効にGDNFに対する応答性を下げるには、GDNFRタンパク質、ペプチド又は誘導体は、内在性の受容体が示すより高い親和性でGDNFと結合することが好ましい。GDNFRタンパク質、ペプチド又は誘導体がモデル系内で産生されるのであれば、そのGDNFRタンパク質、ペプチド又は誘導体をコードする核酸を感染、形質導入又は形質移入によって、又は導入遺伝子として、系に設けることができる。上述するように、GDNFR遺伝子は適当なプロモーターによって制御されても良く、それは例えば組織特異性プロモーター、誘発性プロモーター又は発生的に調節されるプロモーターであっても良い。本発明の具体的な実施形態では、細胞の内在性GDNFR遺伝子は相同性組換えにより変異GDNFR遺伝子で置換される。本発明の更なる実施形態では、GDNFRタンパク質の発現を低下させるために有効な量のGDNFRアンチセンスRNA又はDNAをGDNFR発現性細胞に与えることによってGDNFR発現を低下させる。
GDNFRαポリペプチドは分子量マーカーとしても有用である。GDNFRαポリペプチドを分子量マーカーとして使用するには、分子量を実質的に通常の方法で求めたいタンパク質を分類するために、例えばゲル濾過クロマトグラフィー又はSDS−PAGEを使用する。ある範囲の分子量を得るためにGDNFRα、好ましくは可溶性GDNFR及び他の分子量マーカーを基準とする。例えば、ホスホリラーゼb(mw=97,400)、ウシ血清アルブミン(mw=68,000)、卵白アルブミン(mw=46,000)、トリプシン阻害剤(mw=20,100)又はリゾチーム(mw=14,400)をMWマーカーとして使用できる。ここで述べる他の分子量マーカーはイリノイ州、アーリングトン・ハイツのAmersham Corporationから購入できる。分子量マーカーは通常検出し易くするために標識が付される。例えば、マーカーをビオチン化し、分離後、多種のマーカーが光検出によって確認できるようにストレプトアビジン―西洋わさびペルオキシダーゼでインキュベートする。本発明のポリペプチドは動物の餌用の添加物としても使用できる。本発明の核酸はポリペプチドを生成するために使用できる。
精製されたGDNFRα及びそれをコードする核酸は、正常な成長又は異常、つまり悪性な、成長におけるGDNFRα及びGDNFリガンドの役割を調べるためのGDNFRα及びそのリガンドの機構研究の試薬としても販売できる。GDNFRプローブは、正常状態又は病状態においてGDNFに応答性を有する細胞や組織を同定するために使用できる。例えば、GDNF関連病にかかっている患者はGDNFR発現に異常を示す場合がある。本発明は細胞におけるGDNFR発現を検出することによってGDNF応答性の細胞を同定する方法を提供する。GDNFR発現はGDNFR・mRNAの転写やGDNFRタンパク質の生成によって示される。GDNFR発現はGDNFR核酸やタンパク質を認識するプローブを使用して検出できる。GDNFR発現の検出に使用できる一種のプローブとしては、インサイツハイブリダイゼーション法、ノーザンブロット分析法又はPCRによる方法等を含むこの分野において既知であるあらゆる方法に従ってGDNFRをコードするRNAを検出するために使用できる核酸プローブがある。他に使用できるプローブとしては、ここで述べるタグGDNFである。
本発明では、タグGDNFは、細胞内又は細胞上におけるGDNFのGDNFRへの結合又は付着を促進する条件下で細胞と共にインキュベートする。多くの場合、これは標準の培養条件で十分である。例えば、本発明の一実施形態では、タグGDNFの存在下で細胞を30分間インキュベートする。本発明の他の実施形態では、GDNF応答性細胞(以下標的細胞と称する)の表面上のタグGDNFは、タグに結合可能な標識細胞を、タグGDNFを有する細胞と共にインキュベートし、標的細胞のタグGDNFに付着させ、結合した標識細胞がGDNFタグ保有細胞の周囲にロゼットのようなクラスタを形成するようにするロゼット検定法によって確認する。これらロゼットは通常の顕微鏡方法によりプレート上の細胞で見ることができ、あるいは密度遠心法によりロゼット化細胞と非ロゼット化細胞の分離を可能とする。本発明の好適な具体的実施形態では、神経細胞等の標的細胞。本発明の他の実施例では、タグと反応する分子、好ましくは抗体が、直接的又は間接的に蛍光を発生する免疫蛍光法を利用して標的細胞の表面上のタグGDNFを検出する。蛍光は顕微鏡で観察するかあるいは蛍光活性化細胞選別法によりタグGDNF保有細胞を隔離する。本発明は色素生産性タグや触媒作用性タグ等の他の種類のタグを検出する方法も提供する。抗GDNFR抗体をプローブとして使用することもできる。特定のタグの検出方法はタグからシグナルを発生させるための条件によるが、当業者にとっては明らかであろう。
GDNFRα変異体は、使用される分析法によって認識できるもの、例えば抗GDNFRα抗体等であれば、例えばELISA、RIA又はRRA等のGDNFRα検定法における基準や照準として使用できる。
通常、動物においてポリクローナル抗体は、該当する抗原及びアジュバントを数回皮下又は腹腔内注射することで発生させる。好ましいエピトープはGDNFRαのECD内にあるため、GDNFRαECD又はECDを含む分子(例えば、GDNFRαイムノアドヘシン等)を抗原としてポリクローナル及びモノクローナル抗体を発生させることが望ましい。抗原を、例えばマレイミドベンゾイルスルホサクシニミドエステル(システイン残基による抱合)、Nヒドロキシサクシニミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl又はRN=C=NR(ここで、R及びRは異なるアルキル基である)等の二機能性又は誘導体化剤を使用してキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又は大豆トリプシンインヒビターを免疫化する種にとって免疫原性のタンパク質に抱合することが有効である。
動物は、ペプチド又は抱合体を(ウサギ又はマウスにそろぞれ)、1mg又は1μgを3倍量のフロイント完全アジュバントと混合して得た溶液を複数の部位に皮内注射することで抗原、免疫原性抱合体又は誘導体に対して免疫化する。一ヶ月後、動物をフロイント完全アジュバントで希釈したペプチド又は抱合体を元の1/5から1/10の量を複数の部位に皮下注射して追加免疫する。7日から14日後、動物から採血し、血清を検定して抗体価を求める。抗体価がプラトーするまで追加免疫する。望ましくは、動物は同一の抗原の抱合体で追加免疫するが、他のタンパク質に及び/又は他の架橋試薬によって抱合する。抱合体はタンパク質融合体として組換え細胞培養中で形成できる。又、免疫反応を増強するためミョウバン等の凝集剤を使用する。
モノクローナル抗体は実質的に均質の抗体集団から得る、すなわち集団を構成する各抗体は、僅かに存在する突然変異を除いて同一である。つまり、モノクローナルという語句は抗体の特徴として別々の抗体の混合体ではないことを示す。
モノクローナル抗体は、例えばKohlerほか, Nature, 256:495 (1975)において初めて記されたハイブリドーマ法又は組換えDNA法(上記Cabillyほか)によって生成できる。
ハイブリドーマ法では、マウス又はハムスター等の適当な宿主動物を上述する方法で免疫化することで、免疫化に用いるタンパク質に特異的に結合する抗体を生成するかあるいは生成する機能を有するリンパ球を誘発する。又、リンパ球を試験管内で免疫化することもできる。次いで、ポリエチレングリコール等の適当な融合剤を用いてリンパ球を骨髄腫細胞に融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する。(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))
こうして準備されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは無融合の親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻止する一種以上の物質を含有する適切な培地で播種し、育てる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素のヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠けていると、ハイブリドーマの培地は通常ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)等のHGPRT欠乏性細胞の成長を阻止する物質を含む。
効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体生成をサポートし、HAT培地のような培地に対して敏感である骨髄腫細胞が望ましい。その内、望ましい骨髄腫株化細胞として、米国カリフォルニア州、サンディエゴのSalk Institute Cell Distribution Centerより購入可能であるMOPC−21及びMPC−11マウス腫や米国メリーランド州、ロックヴィルのAmerican Type Culture Collectionより購入可能であるSP−2細胞から得られるようなマウス骨髄腫株がある。ヒトモノクローナル抗体を生成するためのヒト骨髄腫株化細胞やマウス・ヒト異種骨髄腫株化細胞も記されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984)、Brodeurほか, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が成長している培地を抗原に対するモノクローナル抗体の生成について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降又はラジオイムノアッセイ(RIA)や酵素結合免疫測定法(ELISA)等の試験管内結合アッセイ法によって求める。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunsonほか, Anal. Biochem., 107:220 (1980)によるスキャッチャード分析法によって求める。
所望の特異性、親和性及び/又は活性を示す抗体を生成するハイブリドーマ細胞が確認されたら、クローンを制限希釈工程を経てサブクローニングし、通常の方法で育てることができる。(上記Goding)この目的を達成するための適当な培地としては、例えばD−MEMやRPMI−1640倍地等がある。更に、ハイブリドーマ細胞は動物の生体内で腹水腫として育てることもできる。
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えばプロテインAセファロース法、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー法、ゲル電気泳動法、透析法又はアフィニティクロマトグラフィー法等の従来の免疫グロブリン精製方法によって培地、腹水液又は血清から適切分離する。
MAbのGDNFと受容体との結合を阻止する能力は、入手可能な試薬(GDNFRαを発現する安定性形質移入CHO株化細胞であるrhGDNFr−IgG)を用いてELISA及び生物アッセイによって評価できる。中和作用は神経細胞生存率アッセイによって評価できる。
GDNFR特異性MAbは、例えば受容体イムノアドヘシン及び形質移入株化細胞を使用して、アゴニストやアンタゴニストとして利用できるGDNFR特異性MAbを生成するための免疫化プロトコルを導入する目的や免疫組織化学、免疫細胞化学又はアッセイ開発のために利用できる。免疫化動物の融合により生成されるMAbは生物アッセイ(例えば、神経細胞生存率アッセイ、シグナル伝達やリン酸化、腎細胞生存率アッセイ)又はELISAやFACS(GDNF−GDNFR結合の機能的ブロッキング)によってスクリーニングできる。適切な方法は、例えばLucasほか, J. Immunol. 145:1415-1422 (1990)、Hoogenraadほか, J. Immunol. Methods 6:317-320 (1983)、Moksほか, Eur. J. Biochem. 85:1205-1210 (1986)、Laemmli, Nature (London) 227:680-685 (1970)及びTowbinほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:4350-4354 (1979)等に記されている。
モノクローナル抗体をコードするDNAは通常の方法によって(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブ等を使用して)単離及び配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい起源である。一度単離されたら、DNAは発現ベクター内に設けることができ、その発現ベクターは、大腸菌、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞等のその他に免疫グロブリンタンパク質を生成しない宿主細胞に形質移入することで、組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成を達成できる。細菌における抗体をコードするDNAの組換え発現に関する論文として、Skerraほか, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262 (1993)及びPluckthunほか, Immunol. Revs., 130:151-188 (1992)が挙げられる。
更なる実施形態では、McCaffertyほか, Nature, 348:552-554 (1990)による方法を利用して、抗体又は抗体片を、産生された抗体ファージライブラリーから単離できる。Clacksonほか, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarksほか, J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991)は、それぞれファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記す。その後の文献では、鎖シャッフリングによる高親和性(nM領域)ヒト抗体の産生(Markほか, Bio/Technology, 10:779-783 (1992))や大規模のファージライブラリーを構成するために組み合わせ感染及び生体内組換えを利用すること(Waterhouseほか, Nuc. Acids. Res. 21:2265-2266 (1993))が記されている。これらの方法は従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ法に代わるモノクローナル抗体を単離するための方法である。
DNAは、例えば相同的なマウス配列をヒトの重鎖及び軽鎖定常ドメインで置換すること(上記Cabillyほか、Morrisonほか, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81:6851 (1984))や免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の一部又は全部を共有結合することで変更できる。
通常そのような非免疫グロブリンポリペプチドは抗体の定常ドメインの代わりに置換するか、抗体の一つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換し、ある抗原に対する特異性を有する抗原結合部位及び他の抗原に対する特異性を有する他の抗原結合部位を含むキメラ性二価抗体を産生する。
キメラ性やハイブリッド抗体は架橋剤を用いるものを含む合成タンパク質化学における既知の方法を使用して試験管内で調整することができる。例えば、ジスルフィド交換反応を引き起こすこと又はチオエーテル結合を作成することで免疫毒素を構成できる。この目的に適する試薬としてイミノチオレート及びメチル1−4−メルカプトブチリミデート等がある。
非ヒト抗体をヒト化する方法は周知である。一般的に、ヒト化抗体は非ヒト由来のアミノ酸残基が一つ以上導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、通常移入物可変ドメインから得られる移入残基として知られる。ヒト化は基本的にげっ歯類のCDR又はCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することでウインター等(Jonesほか, Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmannほか, Nature, 332:323-327 (1988)、Verhoeyenほか, Science, 239:1534-1536 (1988))の方法を使用して行える。よって、ヒト化抗体とは、ヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の該当する配列で置換されたキメラ性抗体(上記Cabillyほか)である。実際には、ヒト化抗体は通常ある程度のCDR残基及び場合によってはFR残基がげっ歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。
抗原性を軽減するには、ヒト化抗体を産生するために使用するヒトの軽及び重可変ドメインの両方の選択が重要である。いわゆるベストフィット法では、げっ歯類抗体の可変領域の配列を現在知られてるヒト化変配列ライブラリー全体に対して比較する。げっ歯類のものと最も類似するヒトの配列をヒト化抗体のヒトフレームワーク(FR)として認める(Simsほか, J. Immunol., 151:2296 (1993)、Chothiaほか, J. Mol. Biol., 196:901 (1987))。他の方法では、軽又は重鎖の特定のサブグループのヒト抗体全てのコンセンサス配列から引き出す特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを複数の異なるヒト化抗体に使用できる。(Carterほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992)、Prestaほか, J. Immunol. 151:2623 (1993))
更に、抗体は、抗原に対する高親和性や他の好ましい生物学的特徴を保持した状態でヒト化することが重要である。この目標を達成するべく、好ましい方法では、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析工程を経てヒト化抗体を調整する。三次元免疫グロブリンモデルは容易に入手可能であり、当業者には知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元高次構造的構造を図解し、表示するコンピュータープログラムは購入可能である。これら表示を見ることで、候補免疫グロブリン配列の作用における残基の役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンの抗原と結合する能力に影響を及ぼす残基の分析を可能とする。このようにして、例えば標的抗原に対する高親和性等の望ましい抗体特徴が得られるように、FR残基をコンセンサス及び移入配列から選択し、組み合わせることができる。
その他、現在では、免疫化することで、内在性免疫グロブリンが生成されない状態でもヒト抗体の完全リパートリーを生成することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)を産生することが可能である。例えば、キメラ性及び生殖系列変異性のマウスにおける抗体重鎖結合領域(J)のホモ接合性削除は内在性抗体生成の完全阻止を招くことが記されている。そのような生殖系列変異マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列を移すと、抗原による誘発はヒトの抗体の生成を引き起こす。例えば、Jakobovitsほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993)、Jakobovitsほか, Nature, 362:255-258 (1993)、Bruggermanほか, Year in Immuno., 7:33 (1993)等を参照。ヒト抗体はファージ表示ライブラリー(Hoogenboomほか, J. Mol. Biol., 227:381 (1991)、Marksほか, J. Mol. Biol., 222:581 (1991))によって産生することもできる。
二特異性抗体(BsAb)とは、二つ以上の異なる抗原に対して結合特異性を有する抗体である。BsAbは腫瘍のターゲティング剤又はイメージング剤又はGDNFRαを含む細胞に対する標的酵素や毒素等として利用できる。そのような抗体は、抗体の全長又は抗体片(例えばF(ab’)二特異性抗体)から得られる。本発明によると、BsAbはGDNFRαと結合する一アーム及びサイトカイン又はTPO、EPO、G−CSF、IL−4、IL−7、GH、PRL等の受容体、IL−3、GM−CSF、IL−5、IL−6、LIF、OSM又はCNTF受容体のα又はβサブユニット、又はIL−2受容複合体のα、β又はγサブユニット等の他のサイトカイン受容体(又はそのサブユニット)と結合する別のアームを有することがある。
二特異性抗体を生成する方法は当該技術分野において周知である。従来の全長二特異性抗体生成方法は、鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖―軽鎖対の共発現(Millsteinほか, Nature, 305:537-539 (1983))に基づく。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖のランダムな混合により、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子を生成でき、その内一種のみが妥当な二特異性構造を有する。妥当な分子の精製は、親和性クロマトグラフィー工程によって行われるが、厄介であり、しかも収率は低い。同様な方法は1993年5月13日発行のWO 93/08829及びTrauneckerほか, EMBO J., 10:3655-3656 (1991)に開示されている。
他のより好ましい方法によれば、所望の結合特異性(抗体―抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。融合は、好ましくは少なくともヒンジ部、CH2部及びCH3部の一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインにおいて起きる。少なくとも一つの融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在することが望ましい。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、そして望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に形質共移入する。これは、構成に使用する三つのポリペプチド鎖が不等の比で使われる時に最高の収率が得られる形態において、三つのポリペプチド片の比率を調整するための柔軟性をもたらす。しかし、二つ以上のポリペプチド鎖が同比率で発現すると高収率が得られる場合や比率が特に重要ではない場合には、一つの発現ベクターに二つ又は三つのポリペプチド鎖のコード配列を挿入しても良い。
この方法の好適な形態では、二特異性抗体は、一方のアームに第一結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖を持ち、他方のアームにハイブリッド免疫グロブリン重鎖―軽鎖対(第二の結合特異性を有する)を持つ。このような非対称的構造は、二特異性分子の一半分にのみ免疫グロブリン軽鎖が存在すると容易に分解できるので、所望の二特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分解し易くすることが見出された。この方法は1994年3月3日発行のWO 94/04690によって開示された。二特異性抗体を生成するための具体的な内容については、Sureshほか, Methods in Enzumology, 121:210 (1986)を参照。
二特異性抗体とは架橋抗体やヘテロ抱合抗体を含む。例えば、ヘテロ抱合体の一方の抗体がアビジンと結合し、他方はビオチンと結合していても良い。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を不要な細胞に対してターゲティングさせること(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療(WO 91/00360、WO 92/200373及びEP 03089)等の用途が提案されてる。ヘテロ抱合抗体は適当な架橋方法によって生成できる。当技術分野においては、適切な架橋剤は周知であり、それらは複数の架橋法と共に米国特許第4,676,980号に記されている。
二特異性抗体を抗体片から作り出す方法も開示されている。下記方法は、特に二特異性ではなくても、二価抗体片の生成に用いることができる。これらの方法によれば、Fab’−SH片を大腸菌から回収し、化学的に結合させて、二価抗体を生成する。Shalabyほか, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)には、完全にヒト化されたBsAbF(ab’)分子の生成が記されている。大腸菌から別々に分泌された各Fab’片は、試験管内で指導しながら、化学結合し、BsAbを形成した。こうして得られたBsAbはHER2受容体を過剰に発現する細胞や正常のヒトT細胞に結合し、ヒト乳腫瘍に対し、ヒト細胞障害性リンパ球の溶解活性を誘発した。Rodriguesほか, Int. J. Cancers, (Suppl.) 7:45-50 (1992)を参照。
組換え細胞培養から二価抗体片を直接生成し、隔離する様々な方法も記されている。例えば、ロイシンジッパーを使用して二価ヘテロ二量体が生成された。Kostelnyほか, J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合によって二つの異なる抗体と結合させた。抗体ホモ二量体はヒンジ領域において還元してモノマーとし、再酸化して抗体へテロ二量体を得た。Hollingerほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)に示すダイアボディー技術はBsAbフラグメントを生成するための他の方法を提供する。フラグメントは、同じ鎖において二つのドメイン間の対合が許されないほど短いリンカによって結合される重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)からなる。従って、一つのフラグメントのVドメインとVドメインは他のフラグメントの対応するV及びVドメインと対合することになり、二つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体を利用してBsAbフラグメントの生成方法も報告されている。Gruberほか, J. Immunol., 152:5368 (1994)参照。
本発明のGDNFRαアゴニスト(GDNF及びGDNF/可溶性GDNFRα複合体を含む)及びアゴニストGDNFRα抗体は、化学療法又は放射能療法及び移植を受けた患者の血液細胞系譜の再増殖を可能とし、脾臓の造血を促進する。一般的に、アゴニスト又は抗体は脾臓内で造血細胞の増殖及び/又は分化(特に増殖)を促進させるように働く。理論に縛られずに考えると、GDNFRアゴニストは脾臓内の造血細胞の成長、生存又は分化因子として直接働くか、及び/又は脾臓の間質性環境に間接的に働き(脾臓の神経支配に関わる神経細胞)、造血系譜の維持に関与する他の因子を生成すると思われる。いずれの場合であっても、ここで教示するように、GDNFを含むGDNFRアゴニストは、放射能療法又は化学療法後の骨髄の脾臓的移植の容易化や、貧血(赤血球)、慢性感染(好中球)、骨髄不全(全系譜)及び免疫不足(リンパ球)による赤血球生成の増加が要求される状況における(げっ歯類では通常であるがヒトにおいては通常起きない)脾臓内の延髄外造血を刺激するために治療的効果を有する。同様に、アゴニストは赤血球の減少を特徴とする病の治療に有用である。これら病の例としては、貧血(大赤血球性及び再生不良性貧血を含む)、血小板減少症、発育不全、免疫(自己免疫)血小板減少性紫斑病(ITP)及びHIV誘発のITPがある。又、アゴニストは出血の患者の治療にも使用できる。
GDNF又はGDNFRα中和抗体の治療適用例としては、GDNFRα発現における代謝病及び細胞腫瘍、特にGDNFRαの過剰発現に特徴を有する腫瘍等がある。
治療的応用においては、本発明のGDNF又はGDNFRα抗体は、大量瞬時投与、経時的に連続注入するヒト静脈内投与、又は筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、経口、局所的及び吸入投与等の生理的に許容される投与形態で哺乳類、好ましくはヒトに、投与される。抗体は、腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内、病巣周囲又はリンパにも適切投与することで、局所的及び全身的治療効果を発揮する。
これら投与形態は、本来無毒性及び無治療性である生理的に許容されるキャリアを含む。このようなキャリアの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸塩等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩類、又は硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド性シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質及びPEG等の電解液がある。GDNF又はGDNFRα抗体の局所的又はゲル型形態のキャリアとしては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース又はメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン―ポリオキシプロピレンブロックポリマ、PEG及び木質ワックスアルコール等がある。全ての投与形態において、従来からの適当なデポ形態を使用する。その形態は、例えばミクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、硬膏剤、吸入形態、点鼻スプレー、舌下錠及び徐放性製剤等を含む。抗体は、通常0.1mg/mlないし100mg/mlの濃度で媒体内に調剤される。
徐放性製剤の適例としては、GDNF又はGDNFRα抗体を含む固体疎水性重合体の半透性マトリックスがあり、マトリックスはフィルム状又はミクロカプセル状等の形付けられた物である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、上記Langerほか及び上記Langerに示すような(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル―メタクリレート)等)ヒドロゲル、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸の共重合体(上記Sidmanほか)、非分解性エチレン―酢酸ビニル(上記Langerほか)、Lupron Depot(商標)(乳酸―グリコル酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注入可能な微粒子)等の分解性乳酸―グリコール酸共重合体及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン―酢酸ビニルや乳酸―グリコール酸などの重合体は100日以上も分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短時間に及んでタンパク質を放出する。カプセル化される場合、抗体は体内に長時間残存するので、37℃で水分に曝されることで、変性し又は凝集し、生理活性を失ったり、免疫原性が変化する可能性がある。かかる機構によって安定性を得るための合理的な処置が考えられる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換による分子間S―S結合であることが分かったら、スルフヒドリル残基を変更し、酸性溶液から凍結乾燥し、水分量を調整し、適当な添加物を使用し、特定の重合体マトリックス化合物を開発することで安定性を保証することができる。
徐放性GDNF又はGDNFRα抗体組成物とは、リポソーム的に包括された抗体も含む。抗体を含むリポソームは、Epsteinほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688 (1985)、Hwangほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030 (1980)又は米国特許第4,485,045号及び4,544,545号等に示す当業者に周知である方法によって製剤する。通常、リポソームは、脂質含有量が約30モル%以上コレステロールであり、選択される割合が最良の抗体治療を得るように調整された微小(約200−800オングストローム)な単層状のものである。米国特許第5,013,556号は、循環時間が増強されたリポソームを開示する。
病の防止や治療に使用する場合、GDNF又はGDNFRα抗体の投与量は上述するように病の種類、病の重傷度及び経路、抗体が防止目的か治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の病歴及び手当てをする医師の指示等による。抗体は一度に、又は一連の治療過程において適切投与される。
病の種類及び重傷度によって、患者への最初の投与量としてGDNF又はGDNFRα抗体を、一度か複数の投与又は連続注入のいずれであれ、1μg/kgないし15mg/kg投与する。上述する因子によって、通常の一日量は1μg/kgから100mg/kgの範囲内である。数日間以上の繰り返し投与の場合、状態によって、病の症状が望ましい程度抑えられるまで治療を維持する。一方、他の投与量計画も有効になる可能性もある。この治療の進行状態は従来の方法やアッセイ法で容易に調べることができる。
本発明の化合物や方法による効果を評価するための動物モデルがある。例えば、成長に影響する組成物(Tobak, 1997、Tobackほか, 1997)を損傷した腎臓の治療に使用した場合の効果を評価ため、ラットに、体重1kgにつきHgClの形態で水銀を1.0ないし1.1mg与え、急性非乏尿性急性腎不全の可逆症候群を引き起こした。一日後、血清尿素の窒素濃度(SUN)とナトリウム及びタンパク質の尿中排泄、近位尿細管の壊死が大幅に増加した。二日目には、リン脂質、DNA及びRNAの合成や分裂指数が増加し、細胞再生が開始したこと示した。三日目には、SUNが最大値に達し、細管の基低膜に扁平上皮細胞が出現する。五日目には、SUNが正常値に戻り、リン脂質合成が最大速度に達し、より成熟した細胞が細管に復帰する。自己分泌成長因子の組成物の注入の腎臓構造に対する効果を、上述の昇コウ誘発急性細管壊死症候群の経過において、無処置ラット及びキャリアのみ注入した動物と比較した。
本発明の抗体は親和性精製剤としても有用である。この工程では、対GDNFRα抗体を、当分野では周知な方法によって、セファデックス樹脂や濾過紙等の適当な支持体に固定する。次に、固定された抗体と、精製するべきGDNFRαを含有するサンプルとを接触させ、その後固定された抗体に結合したGDNFRα以外、サンプル内の物質を実質的に全て除去する適当な溶媒で、支持体を洗浄する。最後に、pH5.0のグリシン緩衝液のような、GDNFRαを抗体から離脱させる他の適当な溶媒で再度洗浄する。
GDNFRα抗体は、GDNFRαの診断用アッセイ、例えば特定の細胞、組織又は血清において発現を検出するためにも使用できる。診断に適用する場合、抗体は通常検出可能な成分によって標識する。この検出可能成分は、直接的に又は間接的に検出可能なシグナルを発生するものであれば、どんなものでも良い。例えば、検出可能成分は、H、14C、32P、35S又は125I等の放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン又はルシフェリン等の蛍光性又は化学発光性化合物、125I、32P、14C又はH等の放射性同位元素標識、又はアルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ又は西洋わさびペルオキシダーゼ等の酵素であっても良い。
Hunterほか, Nature, 144:945 (1962)、Davidほか, Biochemistry, 13:1014 (1974)、Painほか, J. Immunol. Meth., 40:219 (1981)及びNygrenほか, J. Histochem. and Cytochem., 30:407 (1982)等、ポリペプチド変異体を検出可能成分に別々に接合できる、当分野において周知な方法ならいずれも使用できる。
本発明の抗体は、競合的結合検定、直接的又は間接的サンドイッチ検定、及び免疫沈降検定等の周知の検定方法であれば、どんなものにも適用できる。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp. 147-158 (CRC Press, Inc., 1987)。
競合的結合検定では、被試験サンプル分析物と共に限定された量の抗体に競合的に結合させた場合の標識された標準物質の結合能力を観測する。例えば、被試験サンプル内のGDNFRα量は抗体に結合する標準物質の量と反比例する。結合される量を測定し易くするため、競合前又は競合後に抗体を不溶性化させて、抗体に結合しなかった標準物質及び分析物を、結合した標準物質及び分析物から簡便に分離できるようにする。
サンドイッチ検定では、検出するべきタンパク質の異なる免疫原性部分又はエピトープにそれぞれ結合する二つの抗体を用いる。サンドイッチ検定では、被試験分析物を固体支持体に固定される第一抗体と結合させ、その後分析物に第二抗体を結合させ、不溶性の三部複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号を参照。第二抗体は、それ自体を検出可能部分で標識する(直接サンドイッチ検定)か、検出可能部分で標識される抗免疫グロブリン抗体を使用して測定する(間接サンドイッチ検定)。例えば、サンドイッチ検定の一種はELISAであり、この場合には検出可能部分は酵素である。後述する本発明の具体的実施例は、発明を説明するための例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
本出願において述べる文献、特許及び特許出願の開示内容を全てここにおいて引用し、取り込む。
〔実施例〕
〔実施例1〕
〔GDNFRαのクローニング〕
GDNF応答性のドーパミン作動性ニューロンを含むE14ラット胎仔の前中脳組織を用いて、サイトメガロウィルス系発現ベクター中にcDNAライブラリーを作成した(Holmesほか, Science, 253: 1278-1280 (1991))。1500のcDNAクローンのプールをCOS7細胞中にトランスフェクトし、推定上のGDNF受容体タンパク質の発現を、細胞にヨウ素化GDNFを結合させてオートラジオグラフィーにより、あるいは結合性の非標識GDNFをGDNF抗体で染色することによって(Gearingほか, EMBO J., 8: 3667-3676 (1989))、検出した。330のcDNAプールをスクリーニングした。単一の陽性のプールを同定した。このプールをより小さなプールに繰返して細分して、単一のcDNAクローンが単離されるまで各プールをスクリーニングした。
cDNA(図1A−1Eに示される核酸配列)は、468のアミノ酸のシステインに富む新規なタンパク質(全長の「GDNFRα」と称す)をコードすることが分かった。このタンパク質は、そのアミノ末端にシグナルペプチドを含み、そのカルボキシ末端に23の疎水性アミノ酸の伸展を含んでいる(図2参照)。グリコシル化能を有する3つの部位が示されている(図2)。カルボキシ末端の疎水性配列の上流側には、GPI連結タンパク質に対する切断/結合部位となる(Micanovicほか, Proc. Mat;. Acad. Sci. USA, 87: 157-161 (1990); Moranほか, J. Biol. Chem., 266: 1250-1257 (1991))一群の小さいアミノ酸(アラニン セリン セリン)が隣接している。30個のシステインが、サイトカイン受容体ファミリーにおけるシステインスペーシング(Bazan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 6934-6938 (1990))に類似した形で配置されている。細胞外ドメイン(「ECD」)の脇にはシグナルペプチドとGPI結合部位が位置している。
発現クローニングによって単離したcDNAに加えて、9の他のcDNAを、GDNFRαcDNAをプローブとして用いてラット(4)とマウス(5)のcDNAライブラリーから単離した;これらのうち、8のcDNAがGDNFRαと同一のオープンリーディングフレームを含む一方、一つのラットcDNAが158のアミノ酸の更に短いオープンリーディングフレームをコードしており、これがこのタンパク質の異常型又は分泌型を表している。
クローン26と称する一つの独立したcDNAは、全長のGDNFRαのオープンリーディングフレームを含んでいるが、プローブとしてラットのGDNFRαcDNAを用いてマウスのcDNAライブラリーからこれを単離した。マウスのGDNFRαクローン(一又は複数)の5’末端の配列は、以下のように下線が付された翻訳メチオニンの開始コドンを備えている:
Figure 2009148258
又、マウスのGDNFRα配列のC末端をコードする配列は、以下のように下線が付されたC末端セリンコドンを備えている:
Figure 2009148258
これらの配列は、アミノ酸と核酸の双方のレベルで図1A−1Eのものと高度に相同的である。
本発明において用いられる他の配列、特にヒト変異体を含む更なるGDNFR配列を同定するためのプローブとして用いる他の配列は、以下のye83h05.rlと称するヒトEST由来の配列又はその断片:
Figure 2009148258
;及び以下のyl70a10.rlと称するヒトEST由来の配列又はその断片:
Figure 2009148258
を含むか、それらからなる。
又興味があるものは、上記の二配列由来の配列断片、及びこれらの断片を含んでなる核酸又はこれらの断片によってコードされるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であり、例えば:
Figure 2009148258
および
Figure 2009148258
である。
〔実施例2〕
〔GDNFRαはGDNFに結合する〕
GDNFとGDNFRαとの間の相互作用の性質を決定するために、GDNFRαを安定して発現するチャイニーズハムスターの卵巣細胞を用いて架橋及び競合結合実験を実施した。GDNFRαを安定して発現するチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞又は無関係なタンパク質を、PIPLC(2ug/ml)の有、無の何れかの条件下で37℃で1時間インキュベートし、ついで1mMのフェニルメチルスルホニルフロリドと50pM125I−標識GDNFを含む氷冷のL15培地中に1−2x10/mlの密度で再懸濁させ、2時間の間4℃でインキュベートした。30分かけて室温で4%の最終濃度になるまでホルムアルデヒドを加えた。この細胞を1mlのリン酸緩衝食塩水で3回洗浄した。ついで、この細胞をサンプルバッファー(SDS−ポリアクリルアミドゲル上に80mMのトリス−HCl[pH6.8]、10%[v/v]のグリセロール、1%[w/v]のSDS、0.025%のブロムフェノールブルーを載せたもの)に溶解させた。およそ85kD、180kD及び200kDの3種のタンパク質が、GDNFRαを発現する細胞中においてI125GDNFに架橋していることが検出された(図3)。これらのタンパク質は、過剰の非標識GDNFが有る状態で架橋反応が起こるとき、又はI125GDNFが無関係な細胞表面タンパク質を発現する細胞に架橋したときは、存在しない(図3)。〜80−85kDaのタンパク質バンドはおそらくは58kDaのGDNFRαと15kDaのGDNFモノマーの複合体を表しており、更に高分子量のバンドは、I125GDNF、GDNFRα及びRet(以下を参照)のような推定上のシグナル伝達分子の間の相互作用を表しているか、I125GDNF/GDNFRα複合体の二量体化を表しているのであろう。I125GDNFの架橋は、GPI結合(図3)を特異的に切断する酵素であるホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC(PIPLC)によって処理することによって事実上消滅し、GDNFRαがいかにも高親和性のGPI連結GDNF結合タンパク質であるという知見を裏付けている。
競合結合実験は、更に、GDNFがGDNFRα発現細胞に特異的かつ可逆的に結合することを示している。平衡結合分析のために、細胞を前のようにプロセシングし、50pMのI125標識GDNFと種々の濃度の非標識GDNFでインキュベートした。Kを決定するためにIGORプログラムを用いた。GDNFRαを安定して発現するチャイニーズハムスターの卵巣細胞にI125GDNFを競合結合させることにより、GDNFがGDNFRαに特異的かつ可逆的に結合すること、又2つの細胞がおよそ63pMのKで相互作用をすること(図4;スキャッチャード解析挿入)が証明された。
GPI連結に対するコンセンサス配列が有ることから予想されるように、GDNFRαを提示するファックスソート細胞のPIPLC処理により、GDNF結合が減少した(図5)。ファックスソートにおいては、GDNFRαを安定して発現するチャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞又は無関係の対照タンパク質を、SV40のプロモーターの制御下で、PIPLC(2ug/ml)の有、無の何れかの条件下で37℃で1時間インキュベートした(Kokeら, Prot. Exp. Purification, 2: 51-58 (1991))。GDNF(100ng/ml)と抗GDNFモノクローナル抗体(60/c;100ug/ml)を次に添加し、細胞を更なる30分の間インキュベートした。ついで蛍光抗IgGモノクローナル抗体(Vector Inc.)を添加し、細胞をフローサイトメーター細胞ソーターを用いてファックスソートした。平衡結合GDNFがGDNFRα発現細胞に特異的かつ可逆的に結合することを示している。GDNFRαを発現する細胞に対する125IGDNFの平衡結合は、PIPLCでの処理で90%を越えて減少した。これらの結果は、GDNFRαが高親和性のGDNF結合タンパク質であることを示している。
〔実施例3〕
〔GDNFRαの組織分布〕
GDNFRαmRNAの組織分布をノーザンブロット法並びにインサイツハイブリダイゼーション解析を用いて調べた。成体ラット細胞におけるGDNFRα転写物のノーザンブロット分析を実施した。ノーザンブロット法は、商業的に利用できる多重組織ブロット(Clontech, Palo Alto, CA)を用いて実施した。およそ3.7kbの転写物が厳密な条件下で成体の脳、肝臓及び腎臓において検出された。
中矢印部(midsagittal section)、前中脳、脊髄及び腎臓領域を含んだE14ラットの胎仔組織に対するGDNFRαプローブのインサイツハイブリダイゼーションを実施した。インサイツハイブリダイゼーションでは、組織を4%の冷ホルムアルデヒドに浸漬して固定し、20%のスクロースで平衡化させ、20μmの切片とし、GDNFRαの全コード領域をプローブとして用いて先に記載されたようにして(Fonnum, J. Neurochem., 24: 407-409 (1975))プロセシングを行なった。又、E15.5ラットの胎仔のインサイツハイブリダイゼーションを行なった。胎仔を4%のパラホルムアルデヒド中で4℃にて一晩浸漬固定し、ついで15%のスクロース中で一晩凍結保護した。成体ラットの脳と脊髄を新鮮凍結した。組織を16μmの切片とし、記載されたように(Hendersonほか Science 266: 1062-1064 (1994))33P−UTP標識RNAプローブを用いてインサイツハイブリダイゼーションのプロセシングを行なった。センス及びアンチセンスプローブをT7ポリメラーゼを用いてGDNFRαのN末端領域から引き出した。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応分析を、記載されているようにして(Hendersonほか Science 266: 1062-1064 (1994))実施した。
GDNFRα転写物は、前中脳(ドーパミン作動性ニューロン)、前脊髄(脊髄運動ニューロン)を含む、GDNF応答性のニューロンが存在する領域中、及びGDNF依存性の後根神経節(DRG)ニューロンの亜集団中に存在していた。E14ラットの胎仔の神経系には、GDNFRαのmRNAが、GDNF応答性のドーパミン作動性及び運動ニューロンが存在する前中脳と前脊髄のような領域において見出され、又橋、延髄、脈絡叢、小脳原基、間脳及び網膜において見出された。GDNFRαの転写物は、ウィスカー濾胞、皮筋、舌、腎臓、食道、中腸、胃、精巣、生殖結節と肛門管にも又見出された。GDNFRαの転写物は、E15.5ラットの中脳蓋の外層、脈絡叢、小脳原基、嗅上皮、ウィスカーパッド、生殖結節、泌尿生殖器洞、精巣、椎間板及び気管に見出された。成体ラット神経系において、GDNFRαのmRNAが、後根神経節、前角、網膜、外側中隔、皮質の内層の錐体及び顆粒細胞、膝状核、前中脳、上小脳、視床、橋、及び延髄において検出された。GDNF欠乏マウスでは腎臓と腸内神経系が発育しないという知見(以下の実施例を参照)と一致して、高レベルのGDNFRαのmRNAが、発育しているニューロン中及び食道、腸及び胃の腸内神経系の回りの胚平滑筋と横紋筋中に存在する。GDNFRα転写物が、又、下垂体、泌尿生殖器路及び膵臓原基を含む非ニューロン組織中に見出された。運動ニューロンはGDNFRαとc−retの双方を発現する。Ret抗血清での免疫組織化学的染色により、発育しているネフロン中にRetが存在することが明らかになった。腸において、GDNFとGDNFRαは、腸内神経系に隣接する内側輪状平滑筋と外側縦走平滑筋の間、そして恐らくは腸内神経系内に存在する一方、Retは腸内神経系中にのみ存在する。
〔実施例4〕
〔GDNFRαがGDNFに対する応答を媒介する〕
GDNFRαタンパク質がGDNFの必須の生理学的メディエーターであることを決定するために、一次胚性、頭蓋感覚及び運動ニューロンを、GPI連結タンパク質を特異的に切断する(Shukla, Life Sci., 10: 1323-1335 (1982); Rheeほか, Science, 244: 546-550 (1989))ホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼ(PIPLC)によって処理し、GDNF又は他の因子の存在下でのそれらの生存をモニターした。胚性ニワトリの結節、三叉神経節及び交感神経節ニューロン(Buj-Belloほか, Neuron 15: 821-828 (1995))、E14ラットの運動ニューロン(Hendersonほか, Science 266: 1062-1064 (1994))及びE14ラットのドーパミン作動性ニューロン(Bazan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 6934-6938 (1990))を単離し、三つ組のウェルプレートに蒔き、生育させた。表示された成長因子の添加前1−2時間、並びに添加後12時間及び24時間に表示サンプルにPIPLC(2−4ug/ml)を添加し、生存しているニューロンの数を30時間及び72時間後に決定した。飽和濃度のGDNFの存在下で生存している胚性ニワトリの結節及び三叉神経節又は交感神経節ニューロンの数は、PIPLC処理の後に50−70%減少した。PIPLCの存在下では、これらのニューロンの脳由来の神経栄養因子(BDNF)又は神経成長因子(NGF)に対する応答には変化が観察されなかった(図6及び9A)。同様に、PIPLC処理は、BDNF又はTGFβ3の存在下でニューロンを生存させることないで、GDNFの存在下で生存したE14脊髄運動ニューロン又はドーパミン作動性ニューロンの数を50−90%減少させた(図7及び図9A)。これらの異なる系で、PIPLCは10pg/mlと低いGDNF濃度でGDNFの生存促進効果を減少させており、GPI連結受容体分子がGDNFに対する高親和性応答に対して必要であることを示唆している。加えて、GDNFが結節感覚ニューロン(ニワトリの結節ニューロンに対するEC50が6.1ng/mlである;BujBelloほか, Neuron, 15: 821-828 (1995))に対して1ug/ml(EC50より2x10倍多い)及び運動ニューロンに対して0.1pg/ml(Henderson, Science, 266: 1062-1064 (1994))で適用されたときでさえ、PIPLCが効果的であった。これらの高い濃度はPIPLC処理の効果を逆転させず(図6、7及び9A)、GPI連結タンパク質が、細胞膜からのその放出に続いて、GDNFを結合し、その有効濃度を減少させる可能性を排除する(図9A)。
GDNFRαに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを、一次胚性運動及び頭蓋感覚ニューロン中におけるGDNFRαの発現を阻止するために用いた。オリゴデオキシヌクレオチドを図1に示すGDNFRαの領域に対して合成した。GDNFが対照培養及び有意オリゴヌクレオチドを含む培養におけるこれらのニューロンの生存を促進したが、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む培養においてGDNFに対する応答は観察されなかった。これに対して、BDNFの生存促進効果はGDNFRαのアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む培養と対照培養において同じであった。
可溶性GDNFRαタンパク質を産生し、PIPLC処理運動及び感覚ニューロンにおけるGDNF応答を回復させるために用いた。過去の研究では、可溶性形態のGPI連結CNTF受容体(CNTFRα)の添加によりCNTFに対する応答性が得られることが証明されている(Davisほか, Science, 259: 1736-1739 (1993); Panayotatosほか, Biochem., 33: 5813-5818 (1994))。今回の場合、上述のように、GDNFだけでは多くのPIPLC処理運動ニューロンの死亡を防止できないが、100ng/mlで可溶性GDNFRαを添加すると、PIPLC処理の、一次運動及び感覚ニューロンにおけるGDNFの生存促進効果を完全に回復した(図9B)。従って、GDNFRαはGDNF応答性ニューロンに発現され、CNTF(Davisほか, Science, 253: 59-63 (1991); Ipほか, Neuron, 10: 89-102 (1993))及びエンドトキシン(LPS)(Leeほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 9930-9934 (1993))に対する受容体のように、グリコシルホスファチジルイノシトール(「GPI」)連結(Lowほか, Science, 239: 268-275 (1988))によって細胞膜に結合される。
神経突起成長活性をPC12細胞で決定した。クロム親和細胞腫は、無血清培地における生存に対して神経栄養因子に依存性であり、低いレベルのRet(ここにデータを示す)を発現するが、GDNF、可溶性GDNFRαあるいは双方の存在下で血清なしに成長し、7日後に調べた。可溶性GDNFRαは、ヒト胚性腎臓293細胞においてカルボキシ末端Hisタグタンパク質としてつくり、記載されたようにして(Moranほか, J. Biol. Chem., 166: 1250-1257 (1991))Ni−NTAクロマトグラフィーにより精製した。PC12細胞は、10%のウマの血清と5%のウシ胎仔を補填したRPMI培地中においてコラーゲンポリオルニチン被覆35mm皿上に播種した。付着に続いて、細胞を無血清培地に切り替え、ついで示したように(図9C)GDNF(100ng/ml)と可溶性GDNFRα(sRα)に暴露した。顕微鏡視野当たりの生存神経突起を担持する明相細胞の数を、記載されたようにして(Micanovicほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 157-161 (1990))7日後に決定した。GDNF又は可溶性GDNFRαだけでは、ほんの僅かの神経突起担持、明相の生存細胞が見つかっただけであった。これに対して、PC12細胞がGDNFと可溶性GDNFRαの双方に曝露されると、神経突起を持つ生存細胞の数の増加が観察された(図9C)。可溶性GDNFRα(sRα)とGDNFの組合せにより、PC12細胞の神経突起成長応答を誘発した。可溶性GDNFRαはPC12細胞にGDNF応答性を付与した。GDNFRαは従ってGDNFシグナル伝達カスケードの重要な成分であり、機能GDNF受容体のリガンド結合サブユニットに予想される性質を有している。
〔実施例5〕
〔GDNFRαとRetはGDNF−受容体複合体を形成する〕
GDNFRαは細胞の外表面に結合しているので、GDNFRαへの結合に続くGDNFシグナルの伝達は更なる膜貫通タンパク質に関与している。GPI連結結合タンパク質を有する、TGFβタンパク質スーパーファミリーの他のメンバーは、そのGDNFがメンバーであるが、膜貫通セリンスレオニンキナーゼ受容体も又有している(レビューには、Massaqueほか, J. Biol. Chem., 266: 20767-20772 (1991); Cheifetzほか , J. Biol. Chem., 266: 20767-20772 (1991)を参照)。GDNFRαの構造は、CNTF(Davisほか, Science, 260: 1805-1809 (1993))及びエンドトキシン(LPS)(Leeほか, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 9930-9934 (1993))に対する受容体複合体のように、GDNFの受容体複合体は、リガンド結合成分(ここに開示されているGDNFRα)とgp130のような膜貫通性シグナル伝達分子を含むサブユニットからなることを示している。オーファンチロシンキナーゼ受容体c−ret(Schuchardtほか, Nature 367: 380-383 (1994); Durvecほか, Nature 381: 789-793 (1996)により最近確認された)を欠損するマウスの表現型は、初めて作成しここで調べたGDNF欠乏マウスの表現型に驚くべき類似性を有している。又、Retの細胞分布は(Pachnisほか, Development 119: 1005-1017 (1993); Avantaggiatoほか, Cell Growth Diff. 5: 305-311 (1994); Tsuzukiほか, Oncogene 10: 191-198 (1995) ; Davisほか, Science 259: 1736-1739 (1993))GDNFRαに対するもの(データは示していない)と類似していた。GDNFが、GDNFRαと複合化してGDNF応答をシグナル伝達し媒介する膜貫通受容体、すなわちRetを有していることを確認するために、GDNFRαとRetの物理的相互作用を決定した。内因性c−retを発現する株化細胞である、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SHとマウス神経芽細胞腫Neuro−2aはGDNF単独、又は可溶性GDNFRαと組み合わせられたGDNFに5分間暴露し、Retチロシンリン酸化のレベルを決定した。Retのチロシンリン酸化を検定するために、細胞をPIPLCとともに又はPIPLCなしに37℃で1時間インキュベートし、37℃で5−10分間種々の濃度のGDNFと可溶性GDNFRαにさらした。ついで、細胞をPBS中に含めた2mMのEDTAでプレートから取り除き、氷冷バッファー(10mMのリン酸ナトリウム[pH7.0]、100mMのNaCl、1%のNP40、5mMのEDTA、100mMのバナジン酸塩、2mMのPMSF及び0.2単位のアプロチニン)で溶解し、Retの19アミノ酸カルボキシ末端に対してとられ、プロテインAセファロースに結合させて、抗血清での免疫沈降に用いた。免疫沈降タンパク質はSDSサンプルバッファー中で煮沸することによって放出させ、8%のSDS−ポリアクリルアミドゲル上に分離し、ニトロセルロース膜に移し、抗ホスホチロシン抗体(Upstate Biotechnology, Inc.)と反応させた;検出はECLウェスタンブロット検出システム(Amersham Life Science)で行った。Retの量を増大させるために、SK−N−SH細胞をGDNFの添加の12時間前に10nMのレチノイン酸で処理した。
GDNFはこれらの2つの株化細胞ではRetの穏やかなリン酸化を誘導した(図10A)が、ヒトRetを安定に発現するNIH3T3細胞では誘導しなかった(データは示さず)。Retリン酸化はGDNFがGDNFRαとともに加えられたときは更に増加したが、GDNFRαが単独で加えられたときは増加しなかった(図10A、データは示さず)。Retチロシンリン酸化の誘導がGDNFRαの存在に依存するかどうかを決定するために、Neuro−2a細胞とSK−N−SH細胞をPIPLCで処理し、GDNFに対するRetの応答を調べた。GDNFに対する生存応答はGDNFRαの存在を必要とするという知見に一致して、Retに対するチロシンリン酸化の誘導はGDNFだけが存在する場合にはこれらPIPLC処理細胞中に検出されなかった。これに対して、170kDaのRetタンパク質のチロシンリン酸化の刺激は、GDNFが可溶性のGDNFRαとともに加えられたときにはPIPLC処理Neuro−2aとSK−N−SH細胞において即座に観察された(図10A、データは示さず)。
GDNFはRetのチロシンリン酸化を刺激したが、RetへのGDNFの高親和性結合は、高レベルの内因性Retを発現するNeuro−2a細胞又は組換えRetタンパクを発現する細胞中では検出されなかった(図10B、データは示さず)。GDNFRαによって媒介される、免疫沈降性のRet/GDNF複合体の形成として定まる、RetとGDNFの間の物理的相互作用を決定した。ヒト胚性腎臓293細胞に、c−retを含む発現ベクターを、又はc−retとGDNFRαの発現ベクターの組み合わせを一過性にトランスフェクトし、GDNFにさらし、穏やかな界面活性剤で溶解した(Davisほか, Science 259: 1736-1739 (1993))。GDNFと複合体を形成したタンパク質をGDNFに対するポリクローナル抗体で免疫沈降させ、Retに対するポリクローナル抗体を用いてウェスタンブロット法で分析した。Retだけ、あるいはGDNFRαだけを発現する細胞においては、免疫沈降Retタンパク質を検出することはできなかった。これに対して、Retは、RetとGDNFRαの双方を発現する細胞からのGDNF抗体によって即座に免疫共沈降させた(図10C)。更にGDNFRαとRet間の複合体の性質を決定するために、293細胞にc−retの発現ベクターとエピトープタグ付GDNFRαを一過性にトランスフェクトし、GDNFが有る場合と無い場合についてGDNFRA/Retタンパク複合体の有無を分析した。細胞を示したようにGDNFで刺激し、記載されたように(Davisほか, Science, 259: 1736-1739 (1993))Brij96界面活性剤(Sigma)で溶解した。推定上の免疫複合体を、ニトロセルロースフィルター上に移したGDNF(図10C)又はRet(図10D)に対するポリクローナル抗体で免疫沈降させ、ついでRet(図10C)又はエピトープタグ付GDNFRα(図10D)に対するポリクローナル抗体で検定した。Retだけあるいはタグ付GDNFRαだけを発現させた細胞では、GDNFが有る場合も無い場合もいずれの場合にも有意な量のタンパク複合体は検出できなかった(図10D)。これに対して、エピトープタグ付GDNFRAとRetの双方を発現する細胞では、GDNFにさらした後双方のタンパク質を含むタンパク複合体が即座にGDN検出された(図10D)。これらの発見は、GDNF、GDNFRα及びRetが、GDNFがある場合に、細胞表面上に複合体を形成し、Retが機能性GDNF受容体の成分であり、GDNFRαがGDNFとRet間の相互作用に必要な中間物質であるという考えに一致している。
〔実施例6〕
マウスのGDNF遺伝子を胚性幹(「ES」)細胞中で相同的組換えによって分裂させ、標的クローンを胚盤胞中に注入してGDNF突然変異体マウスを作成した。標的作成物から失われた、GDNFの成熟した生物学的活性部分(図1)のアミノ酸103−211により対立遺伝子が崩壊した。GDNFの52−102のアミノ酸をコードする3KbのSphI−EcoRIゲノム断片をlacZ遺伝子にインフレームで溶解した。PGKプロモーターの制御下でneo遺伝子を、又GDNF遺伝子の3’末端からの3.1kbのBglII−BamHI断片をlacZ遺伝子のすぐ下流に挿入した。突然変異体の129λライブラリーからGDNF遺伝子断片を得た。標的作成物ES−D3細胞内に電気穿孔した。G418(400マイクログラム/ml)の抵抗性クローンを単離した。ES被標的クローンをBALB/c未分化胚芽細胞中に注入し、単一のクローンを生殖系列を通じて伝達した。単一のESクローンにおける相同性組換え事象をサザンハイブリダイゼーションによって決定した。サザンブロットを用いて崩壊を確認した。野生型(+/+)、ヘテロ接合性(+/−)及びホモ接合性(−/−)の動物の遺伝形質分析をPCRによって決定した。分析においては、観測された上方のバンドがneo遺伝子に対して特異的であり、下方のバンドが野生型GDNF遺伝子に対して特異的であった。
突然変異体マウスを調べた。GDNFmRNAが、正常なE15.5のマウスの腎臓、腸、前中脳及び骨格筋に見出されたが、変異誘発遺伝子(GDNF−/−)に対してホモ接合性の同腹仔にはGDNF転写物は検出できなかった。ホモ接合性マウスはサイズが正常で、その野生型(WT)同腹仔とは区別できなかった。これに対して、GDNF−/−マウスは乳を飲むことができ、正常な肢と体の動きを示していたが、生後1−1.5日で死亡した。
GDNFを、培養中(Linほか Science 260: 1130-1132 (1993))及び障害モデルのインビボで(Beckほか Nature 373: 339-341 (1995); Kearnsほか Brain res. 672:104-111 (1995); Strombergほか Exp. Neurol. 124: 401-412 (1993); Poulsenほか Neuron 13: 1245-1252 (1994))胚性ドーパミン作動性ニューロンの死亡を防ぐその能力によって最初に同定した。GDNFが正常な発育中においてドーパミン作動性の(DA)ニューロンに対して本質的な生存因子であるのかどうかを調べた。p1WTとGDNF−/−マウスにおける異なった神経節におけるニューロンの数を決定した。調べたニューロン型は、ドーパミン性、顔面運動、脊髄運動、ノルアドレナリン作動性、三叉神経、結節、DRG、錐体、前庭、及びSCGを含んでいた。動物をプロセシングし、ニューロンのカウントをJonesほか(Cell 76: 989-999 (1994))のようにして実施した。神経節の数を記録した。GDNF−/−マウスにおける線条体、前中脳、黒質、青斑核、及び顔面運動核を、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)での染色後に調べ、P1WT及びGDNF−/−マウスと比較した。THはドーパミン合成における律速酵素である。GDNF−/−マウスの線条体におけるTH線維の密度の減少が観測された。動物に麻酔をかけて0.1Mのリン酸塩緩衝液中の4%のパラホルムアルデヒドで灌流固定し、切除染色し、記載されているようにして(ほか)分析した。驚いたことに、前中脳におけるチロシンヒドロキシラーゼ陽性(TH+)のドーパミン作動性ニューロンの数と線条体に対するドーパミン作動性プロジェクションの密度はGDNF−/−とWT動物において同一であった。
哺乳類におけるDAニューロンの発育は遅延し出生後に続く(Coyleほか J. Neurochem. 27: 673-678 (1976); Spechtほか Comp. Neurol. 199: 255-276 (1981))ので、P42GDNF+/−ヘテロ接合性マウスのTH+細胞の数を比較した。結果を表1に示す。
〔表1〕
Figure 2009148258
表の説明:動物のプロセシングと黒質の全緻密部におけるTH免疫反応性細胞数のカウントが以前に記載されているようにして(Sauerほか Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 8935-8939 (1995))行なわれた。細胞カウントは、動物当りでセクション当りの細胞の平均数として表されている。青斑核におけるTH−IR細胞数のカウントは青斑核を含むあらゆる後脳セクションに存在するTH−IR細胞プロフィールの数をカウントすることによって行なった。細胞数は、各動物の両側についての累積カウントとして表される。顔面運動核のカウントはクレシルバイオレット染色部から自然のオブザーバーによってなされた。顔面運動核の全ての亜核における染色神経細胞体の全数を、脳幹の両側の各第3セクションにおいてカウントした。細胞数は動物当たりの総細胞カウント±SEMとして表される。全ての顕微鏡観察はx200倍で明視野照明下で実施された。Nは分析された神経節の数を表す。
驚くべきことに、ドーパミン作動性ニューロンの数(表1)あるいは線条体におけるTH+線維の複雑性の欠乏はGDNF+/−マウスにおいて検出されなかった。これらの結果は、以前に示唆されていたように(Linほか Science 260: 1130-1132 (1993); Beckほか Nature 373: 339-341 (1995); Kearns ほかBrain Res. 672: 104-111 (1995); Tomac ほかNature 373: 335-339 (1995))、GDNFが胚性ドーパミン作動性ニューロンに対する必要な生存因子ではなく、成体におけるドーパミン作動性ニューロンに対する制限生存要因ではないことを示している。
GDNFは、培養の胚性脊髄運動ニューロンに対する強力な神経栄養因子であり、破壊された運動ニューロンの死をインビボで防止する(Hendersonほか Science 266: 1062-1064 (1994); Yanほか Nature 373: 341-344 (1995); Oppenheimほか Nature 373: 344-346 (1995))。骨格筋に提示されたGDNFが胚形成の間に運動ニューロンの生存に対して必要とされるかどうかを決定した。小さな欠陥がP1GDNF−/−マウスの腰脊髄と三叉神経(<20%>には検出されたが、顔面核には検出されなかった。加えて、P42GDNF+/−動物では顔面運動核における欠陥は観察されなかった(表1)。これらの発見は、GDNFが天然に生じる細胞死の期間の間随意運動ニューロンに対する主要な神経栄養因子であるという可能性(Hendersonほか Science 266: 1062-1064 (1994); Yanほか Nature 373: 341-344 (1995); Oppenheimほか Nature 373: 344-346 (1995))に対して反駁するものである。
GDNFは、全動物において青斑核におけるノルアドレナリン作動性ニューロンの化学的に誘導される死を防ぎ、束状化と出芽を促進することが最近示されている(Arenasほか, Neuron 15: 1465-1473 (1995))。これらの発見は、GDNFが天然の神経栄養因子でアルツハイマー及びパーキンソン病において縮退するノルアドレナリン作動性ニューロンに対する強力な治療剤であろうことを示唆していた。調べた結果、ノルアドレナリン作動性の青斑核は、P1GDNFー/−及びP42GDNF+/−(表1)マウスの双方においてサイズと数は正常であることが分かった。同様に、GDNFは、化学的に誘発されたてんかん発作又は興奮性神経伝達物質の注射の後に海馬、皮質及び線条体中で上方制御されるけれども(Schmidt-Kastnerほか Brain Res. Mol. Brain res. 26: 325-330 (1994); Humpelほか Neuroscience 59: 791-795 (1994))、P1GDNFー/−マウスの小脳、前脳基底核、海馬体、線条体及び新皮質においてひどい欠陥は何ら同定されなかった。出生後1日(P1)で、脊髄運動ニューロンにほんの小さな欠陥が見られ(<20%)、ノルアドレナリン作動性又はドーパミン作動性のニューロンには欠陥は観察されなかった。この発見は、胚性CNS及び神経支配標的におけるGDNFの存在が、少なくとも部分的に、分化、軸索出芽の調節、シナプス形成、神経伝達物質の選択、伝導速度又はシナプス効果に関与していることを示唆している。
GDNFが培養におけるニワトリの胚性交感及び結節感覚性ニューロンの生存を促進するという知見(Buj-Belloほか Neuron 15: 821-828)と一致して、交感上頸神経節(<35%)結節ニューロン(<40%)並びに後根神経節(<40%)における数の減少が検出された。これに対して、三叉神経又は前庭神経節ニューロンの数の不足は見られなかった。
WTとGDNFー/−マウスにおける腸内神経系を調べた。WTとGDNFー/−マウスからの小腸をH&E又はニューロン特異的タンパク質ペリフェリンに対する抗体で染色した。WT動物における腸筋層間(Myn)及び粘膜下(Sub)ニューロンはGDNFー/−マウスにはなかった。動物を10%の中性緩衝ホルマリンで灌流固定し、パラフィンに埋め込み、光学顕微鏡分析用に5μmの薄切りにした。抗体染色は、ポリクローナル抗ペリフェリン抗体(Chemicon Inc.)を1:300の希釈で用いて(Jonesほか Cell 76: 989-999 (1994))に記載のようにして、実施した。腸筋層間(Auerbach)及び粘膜下(Meissner)叢をニューロン欠陥について調べた。これらの2叢に属する腸内神経系(ENS)ニューロンは、光学顕微鏡によって、並びにニューロン特異的マーカーペリフェリンに対する抗体で染色の後に、E13.5、E15.5及びP1WT及びGDNF+/―マウスにおける消化管の長さに沿って容易に可視できた。これに対して、これらのニューロンは年齢が一致したGDNF−/―同腹仔においては完全に欠落していた。更に、腸の筋肉壁はそのWT又はGDNF−/―同腹仔に対してGDNF−/―では薄くなっていた。ENSは後脳領域の神経冠細胞から主に由来するけれども、他の神経冠由来のニューロンに対する有意な効果は観察されなかった。これらの組み合わさった発見は、GDNFが腸内ニューロンが胚性腸に入ったすぐ後の腸内ニューロンの生存及び/又は発育に対して必須であり(Gershonほか J. Neurobiol. 2: 199-214 (1993))、GDNF誘導神経支配が腸における平滑筋の発育及び/又は維持に対して必要とされることを示唆している。ENSの無いことはオーファンチロシンキナーゼ受容体RETを欠くマウスにおいて以前に知られていた(Schuchardtほか Nature 367: 380-383 (1994))。GDNFは胚形成の間に腸の平滑筋層において豊富に発現されると報告され、胚性腎臓間充織中のGDNFmRNAの存在が報告されていた(例えば、Truppほか J. Cell Biol. 130: 137-148 (1995))。
WT、GDNF−/+及びGDNF−/―マウスを調べた。P1 WT、P1 GDNF−/+、P1GDNF+/―及びP42GDNF+/―マウスにおける腹部の低出力顕微鏡写真を得た。腎臓の位置はWTマウスでは副腎に隣接していた;しかしながら、GDNF−/―マウスでは存在せず、P1及びP30GDNF+/―マウスでは左側の腎臓がなかった。E13.5WT、E13.5GDNF−/―胚、E11.5WT、E11.5GDNF−/−における盆状部のH&E染色を実施した。卵巣(Ovr)は、副腎(Adr)の丁度尾側に、腎臓(Kid)によって正常に占有された空間に存在していた。示された年齢で殺し、10%の中性緩衝ホルマリンで灌流し、パラフィンに包埋し、連続的に薄切りにし、H&Eで染色して顕微鏡検定用とした。各パップ(pup)のGDNF遺伝形質をPCR分析によって決定し、性別を生殖腺の顕微鏡検査によって決定し、2−3の動物を各遺伝形質から各年齢において組織学的に分析した。
14/16のGDNF−/−マウスには、完全な両側性の腎臓と尿管の欠損があり、2つの腎臓の一方の部分的な発育が見られ、輸尿管は2つのGDNF−/−胚において観察された。ヘテロ結合性の胚、パップ及び両方の性の成体では、WTマウスに対して、片側性の腎臓欠損(7/26)又は発育不全(4/26)が増加して発生していた。初期胚段階におけるGDNF−/−マウスの分析で、E11.5と同じ早期に後腎がないことが明らかになった。胚性泌尿生殖器の中胚葉の他の派生物(副腎性及び生殖腺)、残りの内臓と全ての胸部組織は、GDNF+/−マウスとGDNF−/−マウスの双方において顕微鏡視的に正常であった。生殖器については、GDNF−/−マウスにおける単一の気づいた変化は、内臓に関連して卵巣の配向の逆転であった。この変化は、腎臓欠損に続く腹腔内の利用できる空間の増大あるいは体壁に卵巣を付着する中皮における変性を反映している。
加えて、GDNF−/−マウスは、活性な造血部位である赤脾髄に穏やかな多巣型壊死を示した。1日齢の(P1)GDNFの野生型と突然変異体GDNFノックアウト(KO)マウス並びに妊娠の16.5日(E16.5)、E15.5、E13.5及びE12.5での野生型KO胚を検査した。これらの検査の全ては、組織における形態学的変化を評価する標準的な方法を用い、10%の中性緩衝ホルマリンで固定し(14時間)、パラフィンに包埋し、5ミクロンに薄切りにし、それをヘマトキシリンとエオシンで染色して顕微鏡評価用とした。検査の全ての時点で、肝臓に造血性のエレメント(好中球、好酸球、リンパ球及びマクロファージを含む、赤血球系−赤血球系列−と骨髄球性−白血球系列)の生産があった。これは、生まれたときにマウスになお存在する発育期間中の正常な過程であり、野生型とKOマウスの双方において正常であるように見えた。赤血球系及び骨髄球性のエレメントの同様な生産が又赤脾髄において起こり、E13.5の周りに発達し、マウスの寿命を通じて持続する。しかしながら、E16.5KO(1動物)と3P1KOマウスには、しばしば血管に隣接して、赤色髄において多重に散在した壊死の病巣があった。(E16.5胚における病巣はP1マウスにおいて観察されたものよりも劇的ではなかった。)これらの病巣は発育する赤血球及び骨髄球の細胞によって囲まれており、活性な細胞増殖が起こる造血島に病巣が由来していることを示している。壊死のこれらの領域は、常にではないがしばしば実質の静脈に隣接していた。これらの静脈は成熟した赤血球と骨髄球の細胞が周囲の循環に入る部位である。血栓症の証拠もこれらの壊死の病巣に対して他の病因を示唆する感染の証拠もなかった。野生型同腹仔における任意の発育年齢における同様の病巣の不存在は、それが感染又はダム(dam)(一種の「環境」要因)における条件によるものではなく、KO遺伝子型に直接関係していることを示唆している。これらの病巣はE15.5とE13.5のKOマウスには観察できなかったが、これは、これらの妊娠性年齢における脾臓造血が丁度発育を始めているためである。E16.5では、生後の主要生産部位である骨髄腔内において造血が又開始する。E16.5又はP1KOマウスの骨髄内又はKOの肝臓内の壊死性病巣は、検査した如何なる妊娠性の年齢においても見られなかった。KOマウスの赤脾髄中の造血性島における壊死性病巣の存在は、GDNFが脾臓造血に効果を有していることを示唆している。
GDNFー/−マウスにおける生殖腺の本質的に正常な発育は、GDNFが前腎又は中腎(最終的な腎臓と生殖腺の双方の形成に参加する一過性の構造)の器官形成に必要とはされないことを示している(Saxen, Organogenesis of the kidney (P.W. Barlow, P.B. GreenとC.C. White編), Vol. 19, Cambridge University Press, Cambridge. UK (1987))。代わりに、GDNFは、尿管芽(中腎/ウォルフ管の外反)と中腎間充織(尾側中間中胚葉)との間の相互誘導作用が後腎永久腎臓の収集管(輸尿管)と濾過システム(腎小体と近位尿細管及び遠位尿細管)を生じる期間中は必須であると見られる。興味深いことに、TGF−βタンパクファミリーの他の一員である骨形成因子−7(BMP-7)は、輸尿管とネフロンの成長と生存に対して必須であるが、その誘導に対してそうではないことが示されており(Dudleyほか Genes & Develop. 9: 2795-2807 (1995))、TGF−βタンパクファミリーの複数のメンバーが腎臓の発育の明確な観点を調節することを示唆している。加えて、腎臓の発育(並びに他の器官)における欠陥が、オーファンチロシンキナーゼ受容体RETを欠損するマウス(Schuchardtほか Nature 367: 380-383 (1994))及びWillms腫瘍関連の、推定上の転写制御因子、WT-1を欠損するマウスにおいて(Kreidbergほか Cell 74: 679-691)観察された。従って、ここで証明したように、GDNFは腎臓器官形成に関与し(PattersonとDressler, Curr. Opin. Genet. Dev. 4(5): 696-702 (1994))、この器官における成長細胞分化とパターン形成を調節している。
多数の相対的に若い(週齢5−7)GDNFヘテロ結合性マウスは乏しい被毛と体重減少を伴うみだれたものであった。8匹のうち4匹が深刻な末期の腎疾患を煩っていたことが分かった。腎臓を検査すると、1又は2歳の年齢の腎臓の顕微鏡的外観を呈した(マウスには末期腎疾患が通常見られる)。破壊は主に糸球体由来であるように見られ、収縮した硬化性の糸球体と増加した糸球体マトリックスによって特徴付けられる(膜性糸球体腎炎)。一匹の動物は、糸球体アミロイド症を示唆する無細胞糸球体間質マトリックスを増大したが、特別な染色はアミロイドに対しては陰性であった。観察された二次変化は、尿細管の拡張とタンパク尿であった。終末の動物では、BUNとクレアチニン量が増加したが、これは、腎臓の質量の>70%が失われ場合、腎疾患で非常に末期に一般的に起こるものである。上記に示したように、いくつかのGDNFヘテロ結合体は一つのみの腎臓を有している;しかしながら、この深刻な腎疾患は1又は2の腎臓を持っていた動物(及び両方の性において)において見られた。この結果は、GDNFヘテロ結合体に存在する疾患は膜性糸球体腎炎であることを示している。
年齢が一致した7対のGDNF野生型でヘテロ接合性のマウスを臨床病理学、血液学、及び光学及び電子顕微鏡によってスクリーニングした。これらのマウスは21−23週齢で、ヘテロ接合体におけるBUN(34対25)の僅かな上昇を除いて腎疾患の証拠はなかった。最も高いBUN(44)のヘテロ接合体について電子顕微鏡観察を行なったが、一般に超微細構造的には正常であった。上皮椎弓根が融合した幾つかの領域があった。これらの動物は過去に剖検で調べたものよりも更に年をとっていたので、おそらくは腎疾患にはなりにくかった。
総括すると、ここに提供された研究は、GDNFが以前に示唆されたような胚形成の間のドーパミン作動性、運動、又はノルアドレナリン作動性ニューロンに対する必須の神経栄養因子ではないことを証明している。むしろ、GDNFは腸内神経系の生存と発育に対して、又中間中胚葉からの後腎腎臓と輸尿管の分化に対して必須であると思われる。
〔実施例7〕
〔抗GDNFモノクローナル抗体〕
5匹のBALB/cマウス(Charles River Laboratoris, Wilmington, DE)をRIBIアジュバント(RIBI Immunochem Research, Inc., Hamilton, MO)中の精製rhGDNFで過免疫した。固定化rhGDNFに対する最も高い抗体価を証明するマウスからの脾臓細胞を(Sierra BioSource, Inc., Gilroy, CA)マウスミエローマ細胞(SP2/0; American Type Culture Collection, Rockville, MD)と融合させた。10−14日後、上清を収穫し、抗体の産生と酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によるhGDNFの特異性試験のためにスクリーニングした。第2回のクローニングの後に最も高い免疫反応性を示す14の陽性のクローンを、MAbのインビボ生産のために、Pristaneで初回刺激を受けたマウス中に注射した。腹水流体をプールし、ブドウ球菌プロテインA(Pharmacia)上でアフィニティークロマトグラフィー(Pharmacia 高速タンパク液クロマトグラフィー(fast protein liquid chromatography) [FPLC]; Pharmacia, Uppsala, Sweden)によって精製した。精製した抗体調製物を無菌濾過し(0.2-μmポアサイズ;Nalgene, Rochester, NY)、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)中で4℃で貯蔵した。
マイクロタイタープレートを、pH9.6で0.05Mの炭酸塩緩衝液中において4℃で一晩かけて、100μl/ウェルのrhGDNF又はrhTGF−ベータ(Genentech, Inc.;1μg/mL)で被覆した。プレートをELISA洗浄バッファー(PBS/0.05%のTween20)で3回洗い、0.5%のウシ血清アルブミンと0.05%のTween20を含むPBS(PBS/BSA/T20)で少なくとも1時間の間遮断した.プレートを洗浄バッファーで再び3回洗浄し、100μLのサンプルと対照を外界温度で1−2時間の間に添加した。プレートを3回洗浄し、PBS/BSA/T20中に希釈したHRP抱合ヤギ抗マウスIgG(Fc特異的)(Sigma)とともに外界温度で1−2時間の間インキュベートした。ついでプレートを洗浄し、PBS中に含めたオルトフェニルジアミン(Sigma;12.5mLのPBS当り一錠の5mg錠剤;100μL/ウェル)で外界温度で10−20分間インキュベートした。反応を2,5NのH2SO4で停止させた。得られた吸光度(405nmの参照フィルターを用いて490nm)を自動プレートリーダー(UV Max, Molecular Devices, Palo Alto, CA)を用いて記録した。
精製MAbの等電点をPhast−System(Pharmacia)を製造者の手順書に従って用いて決定した。
SDS−PAGEは純度分析と免疫ブロットに用いることができる。一次元のSDS−PAGEを4−20%のトリス−グリシンゲル(Novex, Encinitas, CA)を用いてLaemmli法に従って実施した。rhGDNF(レーン当り1μg)と5μLのビオチン標識分子量標準物質(Bio-Rad)を適当なゲルレーンに添加し、125V(およそ32−35mA)で1.5−2時間電気泳動させた。そのゲルを免疫ブロットに用いた。rhGDNFを、還元剤の存在下(5%[v/v]のβメルカプトエタノール)と非存在下でサンプルバッファー(8%のSDS−40%のグリセロール−350mMのトリス-HCl−273mMのトリス塩基、0.5%[w/v]のキシレンシアノール及び0.5%[w/v]のブロムフェノールブルー)中において100μg/mLまで希釈した。還元サンプルを5分間90℃で加熱した。
免疫ブロット分析を実施した。移送後、膜を、外界温度で少なくとも1時間の間PBS/BSA/T20で遮断し、外界温度で1時間の間(PBS/BSA/T20中で1μg/mLまで希釈された)親和性精製MAbでインキュベートした。ついでシートをPBS−0.005%のT20で洗浄し、適当なHRP抱合体(ラット抗マウスIgG−HRP[Boehringer Mannheim]、1:5000;又はストレプトアビジン−HRP[Sigma, St. Louis, MO]、1:10000;それぞれPBS/BSA/T20中に希釈)を外界温度で1時間かけて添加した。ついでシートを洗浄し、攪拌しながら外界温度で1分間の間ルミノール基質(Amersham International, Amersham, UK)にさらし、X線フィルム(Eastman Kodak, Rochester, NY)におよそ15−60秒さらした。
固定されたrhGDNFと溶液中のrhGDNFの双方を結合することができる種々のアイソタイプの14のrhGDNFMAbが見つかった。そのMAbはrhTGFβとは交差反応をせず、非還元及び還元GDNFタンパクの双方を結合する。MAbの5つが免疫組織化学分析に適していた。MAb1694、1712、1717、1725及び1731がその推定上受容体と複合化したGDNFを結合することができる。他のMAbは1693、1695、1696、1709、1710、1711、1713、1714、1715及び1716とした。これら表記は各Mabを産生するハイブリドーマに割り当てられたものである。MAbのエピトープ特異性は交差ブロック分析によって決定することができる。
総括すると、GDNFに対する独特の受容体系がここに提供され、該系では、新規なGPI結合タンパクであるGDNFRαがリガンド結合成分であり、チロシンキナーゼ受容体Retがシグナル伝達成分である。GDNF受容体複合体は毛様神経栄養因子(Dacisほか, Science 259: 1736-1739 (1993))、菌体内毒素(Leeほか Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 9930-9934 (1993); Puginほか Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2744-2748 (1993))に対する受容体、及びGPI結合タンパクがリガンド結合成分となり、細胞質チロシンキナーゼがシグナル伝達成分となる免疫系の受容体(Brown, Curr. Opin. Immunol. 5: 349-354 (1993))に部分的に類似している。
GDNFは、セリンスレオニンキナーゼ受容体を用いる成長因子(このスーパーファミリーのTGFβブランチ)から、チロシンキナーゼ受容体を用いる成長因子(このスーパーファミリーの神経成長因子と血小板由来の成長因子ブランチ; McDonald ほかCell 73: 421-424 (1993))への、システインノット含有タンパクのスーパーファミリー内における進化移行を表わしているのであろう。ここに提供した、GDNFに依存性の更なるニューロン及び非ニューロン細胞及び器官の同定とGDNFに対する受容体及び関連する受容体系の発見は、細胞活性と生存を変調し制御する手段を提供する。これは医師が利用できる更なるかつ特定の治療方法を提供する。
図1Aから1Eは、全長のGDNFRαをコードするcDNAの有意鎖(sense strand)の塩基配列及びGDNFRαの推定アミノ酸配列を示す。有意鎖の初めからヌクレオチドに番号をふった。アミノ酸残基はアミノ酸配列の初めから番号をふった。 図1Aから1Eは、全長のGDNFRαをコードするcDNAの有意鎖(sense strand)の塩基配列及びGDNFRαの推定アミノ酸配列を示す。有意鎖の初めからヌクレオチドに番号をふった。アミノ酸残基はアミノ酸配列の初めから番号をふった。 図1Aから1Eは、全長のGDNFRαをコードするcDNAの有意鎖(sense strand)の塩基配列及びGDNFRαの推定アミノ酸配列を示す。有意鎖の初めからヌクレオチドに番号をふった。アミノ酸残基はアミノ酸配列の初めから番号をふった。 図1Aから1Eは、全長のGDNFRαをコードするcDNAの有意鎖(sense strand)の塩基配列及びGDNFRαの推定アミノ酸配列を示す。有意鎖の初めからヌクレオチドに番号をふった。アミノ酸残基はアミノ酸配列の初めから番号をふった。 図1Aから1Eは、全長のGDNFRαをコードするcDNAの有意鎖(sense strand)の塩基配列及びGDNFRαの推定アミノ酸配列を示す。有意鎖の初めからヌクレオチドに番号をふった。アミノ酸残基はアミノ酸配列の初めから番号をふった。 図2は、GDNFRαのアミノ酸配列及びその特徴を表す。シグナルペプチドは下線で、シグナルペプチドの仮想切断部位は矢印で、グリコシル化能を有する部位は箱型で、GPI 結合部位の疎水性領域は二重下線で、下線を施した3つのアミノ酸(A-S-S)は、GPI−アンカー切断/結合部位を、システインは太字で示した。細胞外ドメイン(「ECD」)は、シグナルペプチド及びGPI結合領域の脇に位置する。 図3は、架橋実験のPAGE結果を示す。I125 GDNF とGDNFRαを提示する細胞(レーン1、2)又は対照細胞(レーン3、4)との架橋、あるいは過剰な非標識GDNFの有(レーン2、4)無(レーン1、3)での架橋を示す。非標識GDNF と交換可能な架橋タンパク(〜85kD、〜180kD、〜200kD)が、GDNFRα提示においては見られたが、対照細胞では見られなかった。 図4は、I125GDNFのGDNFRα提示細胞との結合及び、非標識GDNFによる置換を示す。図中のスキャッチャードプロット(Scatchard representation)から、IGORプログラムによりKd値は63pMと決定された。 図4は、I125GDNFのGDNFRα提示細胞との結合及び、非標識GDNFによる置換を示す。図中のスキャッチャードプロット(Scatchard representation)から、IGORプログラムによりKd値は63pMと決定された。 図5は、PIPLC処理後のGDNFRαを提示する細胞のファックスソート分析(fax-sort analysis)結果を表示す。グラフはサンプル毎に表示されている。「コントロール」は、表面にコントロール細胞の表面タンパクを提示する細胞を表す。破線(GDNF+PIPLC)は、2ug/mlのPIPLC、37oCで1時間処理したGDNFRαを提示する細胞を表す。丸(GDNF)は、PIPLCで処理していないGDNFRαを提示する細胞を表す。右側への移動はGDNFへの結合を表す。GDNFRαを提示する細胞をPIPLCで処理することによってGDNF結合が90%以上減少する。 図6は、PIPLC処理の前後におけるニワトリの知覚ニューロン節E6のGDNFに対する応答を表した。PIPLC処理はGDNF存在下における細胞の生存を50%以上減少させる。それに対して、PIPLCはBDNFに対する応答に変化を与えない。ニワトリのガングリアニューロン節E6を単離して、以前に記載された(Buj-Bello et al. Neuron 15:821-828 (1995))ように調製し、3つのウェルに蒔き成長させた。図中に示したサンプルに対しては、GDNF(10 ng/mlあるいは記載されている場合はその量)及びBDNF(1 ng/ml)の添加に先立ち、予め1時間、12時間あるいは24時間前にPIPLC (4ug/ml)を添加した。 図7は、PIPLC処理の前後におけるE14ラットの脊髄の運動ニューロンのGDNFに対する応答を表した。PIPLC処理は、GDNF存在下における運動ニューロンの生存率を、BDNFに対する応答に変化を与えることなく、90%以上減少させる。文献に記載されている方法(Bloch-Gallegoほか, Development, 111:221-232 (1991); Camu ほか, J. Neurosci. Meth., 44:59-70 (1992)); Henderson et al., Nature, 363:266-270 (1993))で、ラット胎児の運動ニューロンを調製し、培養した。実験は3回行い、50時間培養後の運動ニューロンの平方センチメートルあたりの数を数えた。GDNF(記載した濃度の)添加の1時間あるいは15時間前に運動ニューロンを記載された量のPIPLCで処理した。CNTF(10ng/ml)、白血病阻害因子(LIF)(10 ng/ml)あるいはBDNF(1 ng/ml)。 図8は、PIPLC 処理の前後における、NGF応答性の標準的な神経初代培養のGDNFに対する応答を示す。PIPLCによる処理はNGFに対する応答を変化させること無く、GDNF存在下でのニューロンの生存を50%以上低下させる。 図9A,9B及び9Cは、特異的なニューロンにおける、GDNF誘導GDNFRα依存性の生存率を示す。図9Aは、ニワトリ胚のニューロン節、三叉ニューロン、知覚及び交感ニューロン、ラットの脊髄運動ニューロン、ラットのドーパミン作動性のニューロンの、 GDNFあるいは他の成長因子に対するPIPLC 処理後の生存応答を示す。PIPLCは、BDNF,NGF あるいはTGFβに対する応答を変化させずにGDNFあるいはCNTF存在下で、細胞の生存を50%ないし90%減少させる。 図9A,9B及び9Cは、特異的なニューロンにおける、GDNF誘導GDNFRα依存性の生存率を示す。図9Bは、PIPLC 処理された、運動ニューロンのGDNFに対する応答を回復させられる可溶性GDNFRα(sRα)の存在下で、PIPLC処理された運動ニューロンの生存率が上がることを示す。GDNFRαだけでの栄養活性から、これらの実験ではGDNFの量が少なかったためGDNFがこの調製物と複合体を作ったためではないかと考えられる。 図9A,9B及び9Cは、特異的なニューロンにおける、GDNF誘導GDNFRα依存性の生存率を示す。図9Cは、可溶性GDNFRα(sRα)とGDNFの組み合わせによる、PC12細胞の軸索突起成長部の応答を示す。GDNFRαはPC12細胞にGDNF応答性を付与する。顕微鏡の視野内における軸索突起を有する生きた細胞の数が表示されている。 図10A、10B、10C及び10Dは、GDNFに対する応答に関するRetの影響を表したものである。図10AはGDNFRαに依存するRetのGDNF誘導チロシン自己リン酸化を示す。Retチロシンリン酸化のあまり強くない刺激がGDNFに単独で(左に2レーン)接した後にPIPLC処理されなかったニューロ2及びSK-N-SH(SK)細胞において観察された。Retのリン酸化は可溶性GDNFRα(+sRα)の存在下において更に向上する。PIPLC処理された(+PIPLC)細胞に関してはGDNFRαとともにGDNFが添加された場合(+PIPLC+sRα)以外はRetリン酸化は観測されなかった。 図10A、10B、10C及び10Dは、GDNFに対する応答に関するRetの影響を表したものである。図10Bは、GDNFRα又はRetを発現する細胞に対する125I GDNFの競合的結合を示す。GDNFはRetと高い親和性で結合するわけではない。 図10A、10B、10C及び10Dは、GDNFに対する応答に関するRetの影響を表したものである。図10Cは、細胞の表面に形成された、GDNF、GDNFRα及びRetの複合体の免疫沈降を示す。(Co)トランスフェクトされていない細胞。(Ret)Retのみによってトランスフェクトされた細胞。(Rα+Ret)Ret及びGDNFRαによってトランスフェクトされた細胞。いずれの場合においても細胞はGDNF(100ng/ml)にさらした後GDNF抗血清との沈降処理を行った。GDNF とRetの間の免疫複合体の存在はRet抗血清を用いたウエスタンブロットによって同定された。GDNF/Ret複合体は、GDNFRαの存在下においてのみ形成された。 図10A、10B、10C及び10Dは、GDNFに対する応答に関するRetの影響を表したものである。図10Dは、GDNFRα/Ret複合体の免疫沈降を示す。GDNFによって複合体の形成が刺激される。(Rα)はエピトープで標識されたGDNFRαでトランスフェクトされた細胞、(Ret)はRetのみでトランスフェクトされた細胞、(Rα+Ret)は、Retとエピトープで標識されたGDNFRαでトランスフェクトされた細胞である。トランスフェクションに続き、細胞はGDNFで処理されるか(+)あるいは処理されず(−)、続いて、Ret抗血清によって免疫沈降処理を行った。RetとGDNFRα間の免疫複合体は、次に、エピトープで標識したGDNFRαに対してウエスタンブロットによって測定された。GDNFRαとRet間の免疫複合体はGDNFの存在下においてのみ形成された。

Claims (40)

  1. (a)GDNFRα細胞外ドメインアミノ酸配列;
    (b) (a)の対立形質変異体又は哺乳類相同体;
    (c) (a)又は(b)をコードする核酸に厳密な条件下でハイブリダイズする核酸によりコードされる配列;
    (d) (a)又は(b)のアミノ酸配列の一あるいは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加によって(a)又は(b)から得られる配列、
    からなる群から選ばれる配列を含んでなるポリペプチド。
  2. 配列番号2のGDNFRαECDのアミノ酸配列を含んでなる、請求項1のポリペプチド。
  3. 配列番号2の成熟GDNFRαのアミノ酸配列を含んでなる、請求項2のポリペプチド。
  4. GDNFを特異的に結合する、請求項3のポリペプチド。
  5. 血清半減期を増加させる分子に抱合又は融合されている、請求項4のポリペプチド。
  6. 可溶性GDNFRαである、請求項1のポリペプチド。
  7. 請求項1のポリペプチドと生理学的に許容可能な担体を含んでなる組成物。
  8. キメラGDNFRαである、請求項1のポリペプチド。
  9. 免疫グロブリン配列に融合したGDNFRαアミノ酸配列を含む、請求項8のキメラGDNFRα。
  10. エピトープタグ配列に融合したGDNFRαアミノ酸配列を含む、請求項8のキメラGDNFRα。
  11. GDNFRαに結合する分子を同定する方法において、GDNFRαをそれに結合すると思われる分子に曝露し、分子のGDNFRαへの結合を決定する方法。
  12. GDNFRαが可溶性GDNFRαである、請求項11の方法。
  13. GDNFRαを活性化する分子を同定する方法において、GDNFRαを活性化しうると思われる分子にGDNFRαをさらし、GDNFRαの活性化を測定する方法。
  14. GDNFRαに結合する分子を精製する方法において、固相に固定化されたGDNFRαに分子を吸着させ、固定化されたGDNFRαから分子を回収する方法。
  15. GDNFRαがキメラGDNFRαである請求項14の方法において、免疫グロブリン定常ドメイン配列へGDNFRα細胞外ドメイン配列を融合する方法。
  16. 請求項1のGDNFRαに特異的に結合する抗体。
  17. 17. モノクローナル抗体である、請求項16の抗体。
  18. 請求項17の抗体と生理学的に許容可能な担体を含んでなる組成物。
  19. サイトカイン又は神経栄養性因子を更に含んでなる、請求項18の組成物。
  20. GDNFRαを、GDNFRαを活性化するのに有効な請求項16のアゴニスト抗体にさらす、GDNFRαを活性化する方法。
  21. GDNFに対する細胞の生理的応答を変調する方法において、細胞のGDNFへの応答を変調するのに有効な量のGDNFRαと細胞を接触させる方法。
  22. GDNFRαの存在の決定方法において、GDNFRαを含むと思われる試料サンプルを請求項16の抗体にさらし、該抗体の試料サンプルへの結合を決定する方法。
  23. 請求項1のGDNFRαをコードする核酸配列を含む核酸分子。
  24. 核酸分子に作用可能に結合したプロモーターを更に含む、請求項23の核酸分子。
  25. 核酸配列がGDNFRαECDをコードする、請求項23の核酸分子。
  26. 核酸配列がキメラGDNFRαをコードする、請求項23の核酸分子。
  27. 請求項23の核酸分子を含む発現ベクターであって、該ベクターで形質転換される宿主細胞によって認識される対照配列に作用可能に結合したベクター。
  28. 請求項15のベクターを含む宿主細胞。
  29. GDNFRαから少なくとも18の近接ヌクレオチドの核酸配列を含む核酸。
  30. GDNFRαをコードしてGDNFRαを産生する核酸分子の使用方法において、GDNFRαの発現を許容する条件下で請求項28の宿主を培養する方法。
  31. 更に宿主細胞培養物からGDNFRαを回収する、請求項30の方法。
  32. GDNFRαポリペプチドをコードする核酸を発現する細胞を含む、非ヒト遺伝子組換え動物。
  33. 変更したGDNFRα遺伝子を持つ細胞を含む、非ヒトノックアウト動物。
  34. 治療が必要な患者に、GDNF又はGDNFRαの治療的有効量を投与することを含む、腎臓病の治療方法。
  35. GDNFがヒトGDNFである、請求項34の方法。
  36. GNDFRαを投与することを更に含む、請求項34の方法。
  37. 腎臓病が糸球体腎炎に関与している、請求項34の方法。
  38. 腸内神経系関与疾患を治療する方法において、そのような治療を必要とする患者に、治療的に有効量のGDNF又はGDNFアゴニストを投与することを含む方法。
  39. GDNFがヒトGDNFである、請求項38の方法。
  40. GDNFRαの投与を更に含む、請求項38の方法。
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