JP3759046B2 - 光学ピックアップ装置用レンズホルダ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク装置に内蔵され、光学的記録媒体(光ディスク)の再生を行なう光学ピックアップ装置に関し、特に、光学ピックアップ装置の光学ベースに組み込まれるレンズを嵌め込んだレンズホルダに関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、光学ピックアップ装置(以下「OPU」とも呼ぶ。)は、光源である半導体レーザから出射されたレーザ光を対物レンズによって光ディスクの信号記録面に集光し、その信号記録面からの戻り光を光検出手段である光検出器で検出する装置である。
【0003】
ところで、光学ピックアップ装置は、各種光学部品によって構成されるが、それらは光学ベースに組み込まれている。それら光学部品を構成する1つとしてビームスプレッドレンズと呼ばれるレンズがある。
【0004】
光学ピックアップ装置(OPU)を組立てる際、組立て誤差による光学特性の悪化(劣化)を補正するために、ビームスプレッドレンズの位置を調整した後、接着固定するという方法が良く採用されている。ビームスプレッドレンズは円筒形状をしているが、円筒形状のままではビームスプレッドレンズの位置を調整することが困難である。そこで、ビームスプレッドレンズを、位置調整し易い形状を持つレンズホルダに嵌め込んで、レンズホルダの位置を調整することにより、結果としてビームスプレッドレンズの位置を調整する方法が取られることが多い。
【0005】
以下、図面を参照して、本発明が適用される光学ピックアップ装置について説明する。図1乃至図3は、それぞれ、光学ピックアップ装置の光学系を示す斜視図、平面図、および正面図である。
【0006】
光学ピックアップ装置は、半導体レーザ(レーザダイオード)LDと、回折格子GRTと、ハーフミラーHMと、コリメートレンズCLと、立上げミラーBMと、対物レンズOLと、ビームスプレッドレンズBSLと、光検出器(受光素子)PDと、フロントモニタFMとを有する。これら光学部品は後述するように光学ベースに組み込まれている。尚、Discは光ディスクである。
【0007】
図示の光学ピックアップ装置において、ピックアップ下面に対する立上げミラーBMの反射面の立上げ角θは45°より小さくなっている。そして、図3に示されるように、半導体レーザLD、光検出器PD、回折格子GRT、コリメートレンズCL、ビームスプレッドレンズBSL、およびフロントモニタFMの光学部品を、ピックアップ下面から下方へはみださないように、光学ベース(後述する)に対して傾けた状態で配置している。
【0008】
図4に、立上げミラーBMの反射面の立上げ角θの関係を図示する。立上げミラーBMの反射面の立上げ角θは45°より小さいので、立上げミラーBMに入射するレーザ光およびこの立上げミラーBMから反射する戻り光の光軸は、ピックアップ下面に対して角度αだけ上方に傾いている。この角度αは、α=90°−2θで表される。
【0009】
次に、図1乃至図3に示した光学ピックアップ装置の動作について説明する。
【0010】
手前に配置されている半導体レーザLDからの、水平面(ピックアップ下面)に対して角度αだけ下方に傾いた状態で前方向へ出射された1本のレーザ光は、回折格子GRT(図1、図2)で3本のレーザ光に分離され、ハーフミラーHMで直角に折り曲げられて、水平面に対して角度αだけ下方に傾いた状態で左方向へ進む。尚、ハーフミラーHMは、入射したレーザ光を反射光と透過光とに一定割合で分離する。例えば、ハーフミラーHMは、入射したレーザ光の80%を反射し、20%を透過するように構成される。フロントモニタFM(図1、図2)は、このハーフミラーHMを透過してきたレーザ光の光量をモニタする。この水平面に対して角度αだけ下方に傾いて左方向へ進むレーザ光は、コリメートレンズCLで平行光にされた後、立上げミラーBMの反射面で反射されて鉛直上方へ進み、対物レンズOLを介して光ディスクDiscの信号記録面へ集光(照射)される。
【0011】
光ディスクDiscの信号記録面からの反射光(戻り光)は、鉛直下方向へ進み、対物レンズOLを通過し、立上げミラーBMの反射面で反射されて、水平面に対して角度αだけ上方に傾いた状態で(図4)右方向へ進み、コリメートレンズCL、ハーフミラーHM、ビームスプレッドレンズBSLを通して光検出器PDで検出される。
【0012】
尚、半導体レーザLD、回折格子GRT、ハーフミラーHM、コリメートレンズCL、立上げミラーBM、ビームスプレッドレンズBSL、光検出器PD、およびフロントモニタFMなどの光学部品は、後述するような光学ベースに保持されている。また、対物レンズOLは、レンズホルダ(図示せず)によって保持され、レンズホルダは、光学ベースに対して微動可能に支持されている。ピックアップ下面は、光学ベース下面である。
【0013】
図5および図6に従来の光学ピックアップ装置の外観を示す。光学ピックアップ装置10は、前述した光学ベース12を有し、この光学ベース12には前述した光学部品が組み込まれる。
【0014】
図5に示されるように、ビームスプレッドレンズBSLは従来のレンズホルダ14に嵌め込まれている。このレンズホルダ14は、図6に示されるように、押さえバネ16で上方から押さえつけられ、光学ベース12に取り付けられている。レンズホルダ14は、図5中の矢印Aで示す方向にのみ自由度を持ち、レンズホルダ14をA方向に移動させることができる。
【0015】
一方、レンズホルダ14は、図7に示されるように、その裏面(下面)に調整溝14aが切ってある。この溝14aには、図8に示されるような、調整治具18の調整ピン18aが挿入される。ここで、調整治具18の本体は円柱形状をしており、その先端部に偏心して調整ピン18aが取り付けられている。
【0016】
図9に、レンズホルダ14の調整溝14aに調整治具18の調整ピン18aが挿入された様子を示す。
【0017】
図10を参照して、光学ベース12と従来のレンズホルダ14と押さえバネ16との配置関係について説明する。図10において、(A)はレンズホルダ14の部分を図5の矢視方向Bから見た断面図、(B)はレンズホルダ14の部分を裏面から見た図である。
【0018】
図10(A)に示されるように、光学ベース12は、底板122と、この底板122から垂直に上方へ延在する垂直壁124とを有する。レンズホルダ14は、この底板122と垂直壁124とで形成されるコーナー部に配置されている。詳述すると、レンズホルダ14は、略矩形断面を有する4角柱の形状をしており、上面141、下面142、右面143、および左面144を持つ。レンズホルダ14の右面143が垂直壁124の一方の垂直面124aと摺接し、下面142が底板122の表面(上面、水平面)122aと摺接している。レンズホルダ14の右面143と摺接する垂直壁124の一方の垂直面124aはX基準面とも呼ばれ、レンズホルダ14の下面142と摺接する底板122の表面(上面、水平面)122aはY基準面とも呼ばれる。
【0019】
一方、押さえバネ16は、垂直壁124の上端で底板122と平行に左方向へ延在しており、その先端161は下方へ「く」の字に曲げられている。押さえバネ16の先端161は、図10(A)に示されるように、レンズホルダ14の上面141と左面144とが交差する角部と当接し、これにより、レンズホルダ14の右面143および下面142をそれぞれX基準面124aおよびY基準面122aへ押しつけ力fで押し付けている。すなわち、レンズホルダ14は、押さえバネ16で押さえつけられ、X方向(X基準面124aと直交する左右方向)およびY方向(Y基準面122aと直交する上下方向)へのレンズホルダ14の移動が規制されている。
【0020】
図10(B)に示されるように、光学ベース12の底板122には、レンズホルダ14が搭載される部分に円形穴122bが空けられており、この円形穴122bからレンズホルダ14の調整溝14aが露出している。調整溝14aは左右方向(X方向)に延在している。この調整溝14aの幅と調整治具18の調整ピン18aの直径とはほぼ同じである。
【0021】
図11に示されるように、調整治具18の調整ピン18aを円形穴122bを介してレンズホルダ14の調整溝14aに入れて、調整治具18をこじる(回動する)ことより、レンズホルダ14を光検出器PDから遠ざける方向(図11(A))又は光検出器PDに近づける方向(図11(B))に光軸OA(矢印Aの方向、Z方向)に沿って移動させることができる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、レンズホルダ14はX基準面124aおよびY基準面122aに常に摺いながら光軸OAの方向(Z方向)にのみ移動しなくてはならない。
【0023】
しかしながら、従来のレンズホルダ14(の調整溝14a)の構成では、図12を参照して以下に詳細に説明するように、レンズホルダ14をZ方向にのみ移動させることは困難である。
【0024】
すなわち、理想的には、図12(B)の破線で示されるように、レンズホルダ14の調整溝14aはX方向(X基準面124aと直交する方向)に沿って延在する必要がある。しかしながら、実際には、製造上の誤差などから、図12(B)の実線で示されるように、X方向から角度θだけ傾いた方向へ延在してしまう場合がある。
【0025】
また、たとえ、レンズホルダ14の調整溝14aがX方向に沿って延在していたとしても、図8に示したように、調整治具18の構造上、調整ピン18aは調整治具18の中心軸から偏心しているので、調整治具18を回動させた場合、調整ピン18aの移動方向がレンズホルダ14を移動させるべき光軸OAの方向(Z方向)と一致しない場合がある。
【0026】
そのような事情のため、例えば、図12(B)のFで示すように、X基準面124aから離れるような、意図しない方向に、調整ピン18aからレンズホルダ14に対して力が作用してしまうことがある。
【0027】
このような作用力Fは、図12(B)に示されるように、X方向のX成分力Fxと、Z方向のZ成分力Fzとに分解することができる。X成分力Fxは、レンズホルダ14をX基準面124aから引き離す方向の力である。このため、調整ピン18aでレンズホルダ14を移動させている(力Fが作用している)瞬間に、図12(A)に示されるように、レンズホルダ14が矢印Dで示すようにX基準面124aから離れるようにずれて、レンズホルダ14(の右面143)とX基準面124aとの間にガタ(隙間)ができてしまうことがある。このときは、当然に、ビームスプレッドレンズBSLの中心軸CAは光軸OAからずれてしまう。
【0028】
この現象のせいで、ビームスプレッドレンズBSLの位置調整のためにモニタリングしている電気信号が不連続になってしまい、うまくビームスプレッドレンズBSLの位置を調整することができなくなってしまう。
【0029】
また、このビームスプレッドレンズBSLの位置調整後においても、押さえバネ16の押しつけ力f(図10(A))が、Y基準面122aとレンズホルダ14の下面142との間の静止摩擦に打ち勝つことができない場合がある。このような場合には、図12(A)に示す「ずれ」がそのまま残ったままになってしまう。その結果、光学ピックアップ装置の光学的特性が劣化したり、ビームスプレッドレンズBSLの位置調整不可能になったりしてしまう。
【0030】
それ故に本発明の課題は、レンズの位置調整時にレンズの中心軸が光軸からずれないようなレンズホルダを提供することにある。
【0031】
本発明の他の課題は、光学特性の良好な光学ピックアップ装置を生産することができるレンズホルダを提供することにある。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、光学ピックアップ装置(10)の光学ベース(12)に組み込まれるレンズ(BSL)を嵌め込んだレンズホルダ(14A)であって、光学ベースは底板(122)とこの底板から垂直に上方へ延在する垂直壁(124)とを有し、レンズホルダは、底板と垂直壁とで形成されるコーナー部に設置され、押さえバネ(16)によって常にコーナー部に押しつけられており、レンズホルダは、垂直壁と直交する方向へ延在する調整溝(14Aa)を持ち、底板に空けられた穴(122b)を介して調整ピン(18a)を調整溝に入れて調整ピンを動かすことにより、レンズホルダをレーザ光の光軸(OA)方向に沿って移動させ、これによりレンズの位置を調整できるようにしたレンズホルダであって、調整溝(14Aa)は、その幅が垂直壁に近付くにつれて狭く、垂直壁から離れるにつれて広がっているテーパ形状をしていることを特徴とする光学ピックアップ装置用レンズホルダが得られる。
【0033】
尚、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
図13を参照すると、本発明の一実施の形態によるレンズホルダ14Aは、調整溝の形状が従来のものと相違する点を除いて、従来のレンズホルダ14と同様の構成を有する。したがって、調整溝に参照符号14Aaを付してある。
【0036】
図示の調整溝14Aaは、図13(B)の実線で示されるように、その幅が垂直壁124に近付くにつれて狭く、垂直壁124から離れるにつれて広がっているテーパ形状をしている。
【0037】
このような構造の調整溝14Aaを持つレンズホルダ14Aでは、レンズホルダ14Aが調整ピン18aから受ける力は、常に、図13(B)中のF’で示すようになる。
【0038】
すなわち、この作用力F’は、図13(B)に示されるように、X方向のX成分力F’xと、Z方向のZ成分力F’zとに分解することができる。このX成分力F’xは、レンズホルダ14Aを常にX基準面124aに近づける(押しつける)方向の力である。このように、位置調整中、F’xという、X基準面124aに押しつける力を積極的に常に作用させることにより、位置調整の際に、ビームスプレッドレンズBSLの中心軸CAが光軸OAから位置ずれするのを防ぐことができる。
【0039】
図14にレンズホルダ14Aの外観を示す。
【0040】
本発明は上述した実施の形態に限定せず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更・変形が可能なのは勿論である。例えば、上述した実施の形態では、レンズとしてビームスプレッドレンズに適用された例について述べているが、光軸方向に位置を調整する必要のあるレンズに適用できるのは言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、調整溝の形状を幅が一定の従来のものからテーパ形状に変更するだけで、レンズの位置調整に起きるレンズの位置ずれを防止することができる。これによって、コストアップすることなしに、光学特性の良好な光学ピックアップ装置を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される光学ピックアップ装置の光学系を示す斜視図である。
【図2】図1に示す光学ピックアップ装置の光学系を示す平面図である。
【図3】図1に示す光学ピックアップ装置の光学系を示す正面図である。
【図4】図1に示す光学ピックアップ装置に使用される立上げミラーの反射面と立上げ角との関係を示す図である。
【図5】従来の光学ピックアップ装置の外観を示す斜視図である。
【図6】図5に示す従来の光学ピックアップ装置の外観を示す斜視図である。
【図7】図5に示す従来の光学ピックアップ装置の裏面側から見た斜視図である。
【図8】レンズホルダの調整溝に挿入される調整ピンを持つ調整治具の外観を示す斜視図である。
【図9】レンズホルダの調整溝に調整治具の調整ピンが挿入された様子を示す裏面図(A)および(A)のC−C断面図(B)である。
【図10】光学ベースと従来のレンズホルダと押さえバネとの配置関係を説明するための図で、(A)は従来のレンズホルダの部分を図5の矢視方向Bから見た断面図、(B)は従来のレンズホルダの部分を裏面から見た図である。
【図11】位置調整時の従来のレンズホルダの調整溝の動きを示す部分拡大裏面図である。
【図12】従来のレンズホルダの問題点を説明するための図10と同様の図である。
【図13】光学ベースと本発明の一実施の形態によるレンズホルダと押さえバネとの配置関係を説明するための、図10と同様の図である。
【図14】本発明の一実施の形態によるレンズホルダの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 光学ピックアップ装置
12 光学ベース
122 底板
124 垂直壁
14A レンズホルダ
14Aa 調整溝
16 押さえバネ
BSL ビームスプレッドレンズ
Claims (1)
- 光学ピックアップ装置の光学ベースに組み込まれるレンズを嵌め込んだレンズホルダであって、前記光学ベースは底板と該底板から垂直に上方へ延在する垂直壁とを有し、前記レンズホルダは、前記底板と前記垂直壁とで形成されるコーナー部に設置され、押さえバネによって常に前記コーナー部に押しつけられており、前記レンズホルダは、前記垂直壁と直交する方向へ延在する調整溝を持ち、前記底板に空けられた穴を介して調整ピンを前記調整溝に入れて前記調整ピンを動かすことにより、前記レンズホルダをレーザ光の光軸方向に沿って移動させ、これにより前記レンズの位置を調整できるようにした前記レンズホルダであって、
前記調整溝は、その幅が前記垂直壁に近付くにつれて狭く、前記垂直壁から離れるにつれて広がっているテーパ形状をしていることを特徴とする光学ピックアップ装置用レンズホルダ。
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