JP3758851B2 - 紙押え機構及びこれを用いたプリンタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、スリップ紙やパーソナルチェック紙等の記録紙に対して印字を行うプリンタに関し、特に、記録紙の紙押え機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のプリンタにおいては、記録紙に対して印字を行う際に、図9(a)(b)に示すような紙押え機構を用いて記録紙を押え搬送するようにしている。
【0003】
図9(a)に示すように、この紙押え機構100は、図示しない駆動モータによって駆動される紙送りローラ101と、紙送りローラ101に対して押圧されることによって記録紙Sを押える紙押えローラ102とを有している。
【0004】
ここで、図9(b)に示すように、紙押えローラ102は、紙送りローラ101のローラ軸103と平行な支軸104を中心として回動自在に紙押えレバー105に支持される。そして、この紙押えレバー105は、紙送りローラ101のローラ軸103と平行に設けられた回動支軸106に回動自在に支持されている。
【0005】
また、紙押えローラ102は、ねじりコイルばね107の付勢力によって紙送りローラ101に対して押圧され、これにより紙送りローラ101との間に記録紙Sを挟んでこれを押えるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種のプリンタの紙押え機構100としては、例えば紙挿入口から挿入された記録紙を再度この紙挿入口から排出する場合等に対応するため、紙送りローラを正送り方向(矢印P方向)又は逆送り方向(矢印Q方向)に回転できるように構成されたものが知られているが、このような紙押え機構100においては、逆送り方向へ紙送りローラ101を回転させた場合に、紙押えローラ102と支軸104との間で発生する摩擦力Fの分力Nが、ねじりコイルばね107により与えられる所定の押え力に加えられ、さらに摩擦力Fが増大するといった悪循環が発生するという問題がある。したがって、紙送りローラ101を回転させて記録紙Sを逆方向に搬送する必要がある場合に大きい動力源が必要であった。
【0007】
また、装置の構成上、紙押えレバー105の回動支軸106の設ける位置は記録紙Sの搬送経路の近傍に設ける必要があるが、上記のような逆送り時の問題をなるべく回避するため、記録紙Sの搬送経路を自由に設定することができないという問題もある。
【0008】
このような問題を解決するためには、記録紙Sの搬送方向および記録紙の紙面に対して直交する方向に移動可能な紙押えローラを設けることも考えられる。
【0009】
しかしながら、そのような構成を採用した場合には構成が複雑になるため、装置の組立性が悪くなるという問題があった。
【0010】
また、紙を搬送する送り力を十分に紙に与えるためには、一般に比較的大きな押圧力を必要とするが、そのような大きな押圧力を与えたままで、紙押え機構の構成部品を組み立てる場合は、非常に組み立て性が悪いという問題があった。
【0011】
また、使用する記録紙の紙サイズが一定でなく、さまざまな紙幅の記録紙の使用に対応するプリンタの場合には、どのような紙サイズの紙を使用しても斜行、紙送りピッチの乱れ、紙ジャム等の問題が発生しないように十分な紙搬送力を設定しながら、装置の小型化のためには小さい動力源での駆動を可能にする必要がある。そのためには、紙サイズに応じて作用する各紙押えローラの最適な紙押圧力の設定が必要がある。従来技術では、紙搬送に必要な搬送能力は紙サイズや搬送中に記録紙に作用する搬送負荷によって異なるため、複数個の紙押えローラに最適な紙押圧力を与える機構を組み立てるためには複数種類の強さのばね等を用意する必要があり、容易に組み立てることが困難であった。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、紙押え部材の回転負荷を増加させることなく正逆方向に紙送りを行うことができるとともに、理想的な紙経路が得られ、しかも組立性に優れた紙押え機構及びこれを用いたプリンタを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、記録紙を上流側及び下流側の双方向へ搬送する紙送り部材と、記録紙を紙送り部材に対して押圧する押圧ユニット及び該押圧ユニットを付勢する付勢ユニットを有する紙押えユニットとを備えた紙押え機構であって、押圧ユニットは、紙送り部材に対して接離自在に設けられ、記録紙を紙送り部材に押圧して押える紙押え部材と、該紙押え部材を支持して紙送り部材の回動中心方向へ案内する案内支持部材と、付勢ユニットの付勢力を紙押え部材に伝達する付勢伝達部材とを有し、付勢ユニットは、弾性部材と、該弾性部材が取り付けられる取付部材とを有することを特徴とする紙押え機構である。
【0014】
請求項1記載の発明の場合、紙押え部材が紙送り部材の回動中心方向へ案内支持されるように構成されているため、紙送り部材を正逆のいずれの方向へ回転させた場合であっても、紙押圧力の増大現象がなく、紙送り部材の軸受け部の回転負荷が増大することはない。したがって、本発明によれば、紙送り部材の駆動源として動力の小さいもので十分対応することができる。
【0015】
また、本発明によれば、従来技術のような紙押えレバーの回動支軸の設ける位置の制約がないため、記録紙の搬送経路を自由に設定することができ、理想的な紙経路を形成することができる。
【0016】
しかも、本発明によれば、紙押え部材と、紙押え部材を支持して紙送り部材の回動中心方向へ案内する案内支持手段と、付勢ユニットの付勢力を紙押え部材に伝達する付勢伝達部材とをユニット化すると共に、弾性部材と、該弾性部材が取り付けられる取付部材もユニット化したことから、装置本体と紙押え機構のユニット部分とを別の工程で組み立てることができ、組立作業における組立性を向上させることが可能になる。
【0017】
この場合、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の発明において、付勢ユニットは、押圧ユニットが本体フレームに取り付けられた後に、該本体フレームに取り付けられるように構成されていることも効果的である。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、一般に組立作業の困難なばね等の弾性部材を有する付勢ユニットを後から取り付けることができるため、より一層組立性を向上させることが可能になる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1又は2のいずれか1項に記載の発明において、付勢ユニットは、その取付部材が本体フレームに対してラッチ方式によって係止可能に構成されていることも効果的である。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、押圧ユニットと付勢ユニットとを別の工程で組み立てることができ、組立性を更に向上させることができることに加え、本体フレームに対する付勢ユニットの取り付けも簡単な作業で済む。したがって、比較的大きい押圧力を与える必要がある紙押え機構の組み立てを容易にすることができる。
【0021】
さらに、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明において、付勢伝達部材は、紙押え部材を移動可能に支持する支持部材に紙押え部材を支持部材の所定の位置に掛止しつつ摺動可能に支持されることを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明によれば、付勢伝達部材が、紙押え部材を支持部材から外れないようにしているため、さらに組み立て性が向上する効果がある。
【0023】
さらに、請求項5記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発明において、紙押え部材、付勢伝達部材及び弾性部材は、それぞれ、記録紙の搬送方向と直交する紙幅方向に各々独立して複数設けられると共に、複数の弾性部材の各々は、対応する付勢伝達部材に当接する作用位置とその反力を受ける掛止位置との取付部位置が成す取付長さがそれぞれ異なって前記取付部材に取り付けられることを特徴とすることも効果的である。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、使用する記録紙の紙サイズが一定でなく、さまざまな紙幅の記録紙を使用する場合に、紙サイズに対応して、複数の紙押え部材の押圧力を最適に設定することができるため、斜行、紙送りピッチの乱れ、紙ジャム等が発生せず、軸受け部での無駄な駆動負荷の発生がないため、小さい動力源での駆動を可能にすることができ、装置の小型化を実現できる。また、紙送り部材に対し、同じ弾性部材を用いて異なる付勢力を得ることができるため、部品の種類を削減することが可能になる。
【0025】
一方、請求項6記載の発明は、記録紙に対して所定の印字を行う印字手段と、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の紙押え機構とを備えたことを特徴とするプリンタである。
【0026】
請求項6記載の発明によれば、理想的な紙経路が得られるとともに組立性に優れ、しかも駆動源の動力の小さい小型のプリンタを得ることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明に係る読取装置の好ましい実施の形態を説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態のプリンタ1の全体の内部構成を示す概略構成図である。
【0029】
このプリンタ1は、例えばチェック紙に磁気インクで印刷されたMICR文字を読み取る機能と、スリップ紙やチェック紙等の記録紙Sに印字する機能を有するものである。
【0030】
図1に示すように、プリンタ1においては、例えば、樹脂等からなる本体カバー2の内部の後方にロール紙Rが配置され、その前方側にロール紙Rを搬送するための紙搬送部3が設けられる。
【0031】
一方、紙搬送部3の前方側には、ロール紙R等に印字等を行うための印字部(印字手段)4が紙搬送部3に隣接して配置され、この印字部4は、樹脂等からなる本体前カバー5によって覆われている。
【0032】
印字部4は、公知のインクジェット方式により印字を行うものであり、印字部4は、不図示の本体フレームに取り付けられたガイドレール7に沿ってその両側部間を移動自在となるように構成される。かかる構成により、本プリンタ1においては、紙送り方向又はこれと直交する紙幅方向のいずれの方向に対しても印字が可能な構成となっている。
【0033】
そして、図1に示すように、この印字部4は、印字を行うための印字ヘッド4aが紙搬送部3に設けられたプラテン部8と対向するように配置される。
【0034】
一方、ロール紙Rは、巻芯部9と平行に配置された一対の支持ローラ10、11によって回転自在に支持され、装置本体の下方側から上方に向かってその先端部が引き出されるように構成される。
【0035】
紙搬送部3においては、ロール紙Rの搬送経路が形成される。すなわち、紙搬送部3は、紙案内部12及び搬送ローラ13によってロール紙Rの送り方向を反転し、搬送ローラ14により、本体上カバー15に設けられた排出口16から印字後のロール紙Rを排出するように構成される。
【0036】
図1に示すように、本体上カバー15は、支軸17を中心として回動自在に取り付けられており、ロール紙Rを装置本体に装填できるように構成される。
【0037】
また、本体の上部中央には、本体上カバー15と本体前カバー5とによって、チェック紙Pを排出するための排出口18が形成される。この排出口18の近傍には、一対の上ローラ19、20が設けられる。さらに、紙搬送部3と印字部4との間に、相互に対向する後述の紙送りローラ(紙送り部材)21及び紙押えローラ(紙押え部材)22が設けられるとともに、印字部4の下方に一対の下ローラ23、24が設けられる。また、一対のガイド部材25、26が装置の前部分から下ローラ23、24及び搬送ローラ21、紙押えローラ22を経由して上ローラ19、20に向って延びるように設けられ、これにより紙挿入口27が形成されるとともに、記録紙Sの搬送経路が形成されている。
【0038】
図2は、本実施の形態の紙押え機構の外観構成を示す平面図、図3は、本実施の形態の押圧ユニットの要部構成を示す組立斜視図、図4は、本実施の形態の付勢ユニットの構成を示す斜視図である。
【0039】
また、図5は、本実施の形態の押圧ユニットの構成を示す正面図、図6は、本実施の形態の押圧ユニット及びねじりコイルばねの位置関係を示す正面図、図7は、本実施の形態の要部を示す構成図、図8は、本実施の形態の組立手順の要部を示す説明図である。
【0040】
図2に示すように、本実施の形態の紙押え機構60は、記録紙を搬送するための紙送りローラ21と、紙押えユニット50とを有している。また、本実施の形態の紙押えユニット50は、図3に示す押圧ユニット30と、図4に示す付勢ユニット40とから構成されている。
【0041】
図2に示すように、搬送ローラ21は、例えばステンレス等の金属材料を用いて一体的に形成されたもので、記録紙Sの搬送方向に対して直交する方向に延びるローラ軸210上に所定の間隔をもって3つの搬送部21a、21b、21cが形成されている。ここで、搬送ローラ21の搬送部21a、21b、21cは、ローラ軸210の外径より大きく、かつ、それぞれが同一の直径を有するように形成されている。
【0042】
また、搬送ローラ21は、図示しない駆動モータの駆動力が伝達されることによって、正逆いずれの方向にも回転するように構成されている。
【0043】
一方、図2に示すように、本実施の形態の紙押えユニット50は、上記搬送ローラ21の各搬送部21a、21b、21cに対応する紙押えローラ22(22a、22b、22c)を有している。
【0044】
紙押えユニット50は、例えば金属からなる紙押えフレーム31を有し、この紙押えフレーム31に、ゴム等の弾性材料からなる紙押えローラ22a、22b、22cが取り付けられている。
【0045】
図3に示すように、紙押えフレーム31は、長尺の四角形状の平板部材からなるもので、その所定の位置に孔部31(31a、31b、31c)が形成されるとともに、各孔部31a、31b、31cの両側部に、各紙押えローラ22a、22b、22cを案内支持するための案内支持部32(32a、32b、32c)が、紙押えフレーム31の正面31A側に突出するように一体的に折曲形成されている。
【0046】
ここで、各案内支持部32a、32b、32cには、紙押えフレーム31の正面Aに対して直交する方向に延びる案内支持手段としての長孔33(33a、33b、33c)が形成され、各長孔33a、33b、33cには、各紙押えローラ22a、22b、22cを貫通して固定される支持部材としてのローラ軸220(220a、220b、220c)が係合するようになっている。
【0047】
そして、このような構成により、各紙押えローラ22a、22b、22cは、各案内支持部32a、32b、32cの長孔33a、33b、3cに沿って紙押えフレーム31の正面31Aに対して直交する方向へ案内されるとともに、各ローラ軸220a、220b、220cを中心として回動自在の状態で紙押えフレーム31に支持されるように構成されている。
【0048】
図2、図3及び図5に示すように、紙押えフレーム31の一方の縁部(図中下方側縁部)には、上述した案内支持部32a、32b、32cと反対側の背面31B側に突出するように複数の回動支持部34a、34b、34cが一体的に折曲形成されている。ここで、各回動支持部34a、34b、34cには、それぞれ係合孔35a、切欠部35b、係合孔35cが形成されている。そして、紙押えフレーム31とほぼ同じ長さを有する支軸36が回動支持部34aの係合孔35aを貫通するとともに、回動支持部34bの切欠部35bと係合し、さらに支軸36の先端に形成された先細の位置決め支持部36aが回動支持部34cの係合孔35cと係合する。
【0049】
図2に示すように、この支軸36には、付勢伝達部材である付勢伝達レバー37(37a、37b、37c)が、各紙押えローラ22a、22b、22cに対応して複数個設けられ、各付勢伝達レバー37a、37b、37cは、支軸36に回動自在に支持されている。
【0050】
本実施の形態の場合、各付勢伝達レバー37a、37b、37cは同一の形状を有し、各付勢伝達レバー37a、37b、37cには、一対の付勢部370(370a、370b、370c)が折曲形成されている。図2に示すように、各付勢伝達レバー37a、37b、37cの付勢部370a、370b、370cは、各紙押えローラ22a、22b、22cの長さより若干幅広の間隔でもって平行に対向するように形成され、紙押えフレーム31の孔部31a、31b、31cを介してその背面31B側から各紙押えローラ22a、22b、22cのローラ軸220a、220b、220cの両端部に当接するように構成されている。
【0051】
さらに、付勢レバー37の両側の折曲された両側面370cは紙押えフレームの孔部31a、31b、31cに角にもうけられたスリット部70a、70b、70cで摺動可能に案内されている。したがって、紙押えローラ22a、22b、22cの記録紙Sを押圧する方向の動作に追従することができ、紙押えローラ22a、22b、22cの回転軸に平行な方向の位置規制を行うことができる。
【0052】
図8に示すように、紙押えユニット50は、本体フレーム38に対してネジ等で固定される。
【0053】
図4に示すように、この付勢ユニット40は、紙押えフレーム31とほぼ同じ長さの支軸41と、この支軸41に回動自在に支持される付勢フレーム42とを有し、この支軸41には、押圧ユニット30の各付勢伝達レバー37a、37b、37cの背面部371a、371b、371cを押圧するためのねじりコイルばね43(43a、43b、43c)が所定の位置に回動自在に支持されている。ここで、各ねじりコイルばね43a、43b、43cには、各付勢伝達レバー37a、37b、37cの背面部370a、370b、370cに当接しうる長さのレバー部430(430a、430b、430c)が折曲形成されている。
【0054】
また、図2、図4及び図6に示すように、各ねじりコイルばね43a、43b、43cには、各レバー部430a、430b、430cに対して所定の角度で背面側に延びるように係止部431a、431b、431cが形成される。そして、各ねじりコイルばね43a、43b、43cの係止部431a、431b、431cの先端部は付勢フレーム42の係止部42a、42b、42cに係止され、これにより各ねじりコイルばね43a、43b、43cの係止部431a、431b、431cが一方向にのみ回転するようになっている。
【0055】
ここで、付勢フレーム42の係止部42a、42b、42cは、各紙押えローラ22a、22b、22cに必要な押圧力に応じて高さを変えるように構成されている。図4に示すように、本実施の形態の場合は、ねじりコイルばね43a、43bに対応する位置に所定の高さHを有する係止部42a、42bが折曲形成され、各ねじりコイルばね43a、43bの係止部431a、431bがそれぞれ係止部42a、42bに係止されるようになっている。
【0056】
さらに、図4に示すように、付勢フレーム42の後方側縁部には、その下面側に突出する係止爪420が設けられ、この係止爪420が本体フレーム38の係止溝(図示せず)と係合した状態で、支軸41が、本体フレーム38に設けられた支持板39の切欠部39aに、ラッチ方式によって、すなわち、クリック感をもって係止されるように構成されている。
【0057】
このような構成を有する本実施の形態においては、押圧ユニット30と、付勢ユニット40とを別々に組み立てる。そして、本体フレーム38に押圧ユニット30を取り付けた後に、付勢ユニット40を本体フレーム38に取り付ける。
【0058】
この場合、図8に示すように、付勢フレーム42に設けた係止爪420を本体フレーム38の係止溝に係合し、この部分を中心として付勢ユニット40を矢印A方向へ回転することにより、付勢ユニット40の支軸41を、本体フレーム38の支持板39の切欠部39aに係止する。
【0059】
また、上記にラッチ方式により付勢ユニットが固定された状態を仮固定状態とし、さらにネジ等の固定手段を用いて付勢ユニット40をさらに強固に固定することもできる。一般に、記録紙の搬送力を十分に得るためには紙押えローラによる記録紙の紙送りローラへの押圧力はかなり大きい荷重が必要である。この場合には、上記のラッチ式の方法での仮固定がされていないと、ネジ等で固定する作業時にばね力に抗した状態での固定作業が必要になるため、非常に作業が困難になってしまうが、本発明を利用すれば押圧力の反力はラッチ部で支持されているためネジ固定時に別に押圧力を保持する必要がなく非常に組み立てが容易になる。
【0060】
このように付勢ユニットが組み立てられた結果、図7及び図8に示すように、押圧ユニット30の付勢伝達レバー37a、37b、37cの背面部371a、371b、371cが、付勢ユニット40の各ねじりコイルばね43a、43b、43cのレバー部430a、430b、430cの付勢力によって押圧され、ローラ軸220a、220b、220cが紙押えフレーム31の各案内支持部32a、32b、32cの長孔33a、33b、3cに沿って紙送りローラ21の回動中心方向(矢印B方向)へ案内され、各紙押えローラ22a、22b、22cが紙送りローラ21の各搬送部21a、21b、21cに押し当てられる。
【0061】
本実施の形態においては、ねじりコイルばね43a、43bの係止部431a、431bが、所定の高さHを有する付勢フレーム42の係止部42a、42bに係止されていることから、これらのねじりコイルばね43a、43bはねじりコイルばね43cより大きくたわみ、その結果、付勢伝達レバー37a、37bに対し、付勢伝達レバー37cより大きな付勢力が作用する。
【0062】
使用する記録紙の紙サイズが一定でなく、例えば、紙幅が70mm程度からA4サイズに相当する210mmまで対応するプリンタの場合には、どのような紙サイズの紙を使用しようしても斜行、紙送りピッチの乱れ、紙ジャム等の問題が発生しないように最適な紙搬送機構を設計する必要がある。また、磁気インクにより印刷されたMICR文字によって情報が記録されたパーソナルチェック等のチェック紙(小切手)の磁気信号を読み取る機能を有するプリンタにおいて、印字時に記録紙を搬送する機構をその磁気信号読取り時の紙搬送機構として兼用で使用する場合には、信号読取り用ヘッドに記録紙を押し付けながら記録紙を安定して搬送する必要がある。したがって、通常の印字のみを行うプリンタの場合より大きい紙搬送力が必要である。さらに上記の磁気インクにより記録された信号は紙の端面付近に印刷されているため、記録紙に与える搬送力と、上記の信号読取りヘッドとの摩擦力が搬送方向に対し同一直線上にない場合には、モーメント力が作用し記録紙の斜行が発生してしまう。そういった斜行を発生させないためには、一般に紙送りローラへ記録紙を押圧する紙押え力を高くする。こういった磁気インクで情報を記録したチェック紙の紙幅70mmから100mm程度のものであり、比較的狭い紙幅である。したがって、紙幅の広い記録紙を使用する場合にのみ作用する紙押えローラの押圧力は、チェック紙の磁気インク信号を読み取る場合に作用する紙押えローラの押圧力より低く設定すればよい。本発明の実施の形態によれば、紙押えローラを複数個設け、それぞれ独立に紙紙送りローラの中心方向に移動可能に支持されているため、各紙押えローラに最適な押圧力を与えることができため、さまざまな紙幅にあった最適の押え力を得ることができる。例えば、紙搬送経路の右側を基準として紙搬送経路を設けた場合に、使用されることが想定されるチェック紙の紙幅に適した位置範囲に設けられた紙押えローラには強い押圧力を与え、それより左側にある紙押えローラには印字時の紙搬送に必要な最小限の押圧力の設定をおこなえばよい。記録紙の押圧力は必要最小限で小さい方が紙送り機構の動力源が小さくでき、プリンタサイズを小型化するために有利である。
【0063】
さらに、本発明の実施の形態による付勢ユニットにおいては、上記説明のようにねじりコイルばねの係止部を支える付勢フレームの係止部の高さの設定を個々のねじりコイルばね毎に変えることが特徴であり、同一形状のねじりコイルばねを一種類だけ用意することで、各紙押えローラの押圧力を任意の荷重に設定できるため、部品の種類を削減することが可能になり非常に経済的である。
【0064】
以上述べたように本実施の形態によれば、各紙押えローラ22a、22b、22cが紙送りローラ21の回動中心方向へ案内支持されるように構成されているため、紙送りローラ21を正逆どちら方向へ回転させた場合であっても、紙押えローラ22a、22b、22cとローラ軸220a、220b、220cとの間で発生する摩擦力は紙押えフレーム31の案内支持部32a、32b、32cで支持することになり、従来例のような摩擦力による記録紙押圧方向の分力が、ねじりコイルばね43a、43b、43cにより与えられる所定の押え力にさらに加えられ、さらに摩擦力が増大するといった悪循環が発生することがない。
【0065】
したがって、本実施の形態によれば、紙送りローラ21の駆動源として動力の小さいもので十分対応することができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、従来技術のような紙押えレバーの回動支軸の設ける位置の制約がないため、記録紙Sの搬送経路を自由に設定することができ、理想的な紙経路を形成することができる。
【0067】
一方、本実施の形態によれば、押圧ユニット30と付勢ユニット40とからなる紙押えユニット50を用いたことから、これらを別の工程で組み立てることができ、組立性を向上させることができる。
【0068】
特に、本実施の形態の場合には、一般に組立作業の困難なねじりコイルばね43a、43b、43cをユニット化して後から取り付けることができるため、組立性を向上させることができる。
【0069】
また、本実施の形態においては、ラッチ方式によって付勢ユニット40を本体フレーム38に係止するようにしたことから、本体フレーム38に対する付勢ユニット40の取り付けも簡単な作業で済む。
【0070】
さらに、本実施の形態によれば、紙送りローラ21に対し、同じねじりコイルばね43を用いて異なる付勢力を与えることができるため、部品の種類を削減することができる。
【0071】
このように、本実施の形態によれば、理想的な紙経路が得られるとともに組立性に優れ、しかも駆動源の動力の小さい小型のプリンタを得ることができる。
【0072】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
【0073】
例えば、上述の実施の形態においては、押圧ユニット30に設けた長孔33に沿って紙押えローラ22のローラ軸220を案内支持するようにしたが、本発明はこれに限られず、紙押え部材を支持して紙送り部材の回動中心方向へ案内するものであれば、他の手段を用いることもできる。
【0074】
また、紙送り部材及び紙押え部材の数は上述した実施の形態のものには限られず、任意のものとすることができる。ただし、上述の実施の形態のように構成すれば、チェック紙やスリップ紙等の種々のサイズの記録紙に対応することができるというメリットがある。
【0075】
さらに、本発明は上述したインクジェットプリンタに限られず、種々のプリンタや読取装置に適用しうるものである。
【0076】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、紙押え部材の回転負荷を増加させることなく正逆方向に紙送りを行うことができるとともに、どのような紙幅の紙を使用されても最適な紙押圧力を設定しているため、必要最小限の動力源を用意すればよく、また、理想的な紙経路を実現できることから、小型でしかも組立性に優れたプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態のプリンタの全体内部構成を示す概略構成図である。
【図2】 同実施の形態の紙押え機構の外観構成を示す平面図である。
【図3】 実施の形態の押圧ユニットの要部構成を示す組立斜視図である。
【図4】 同実施の形態の付勢ユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】 同実施の形態の押圧ユニットの構成を示す正面図である。
【図6】 同実施の形態の押圧ユニット及びねじりコイルばねの位置関係を示す正面図である。
【図7】 実施の形態の要部を示す構成図である。
【図8】 同実施の形態の組立手順の要部を示す説明図である。
【図9】 (a):従来の紙押え機構の要部を示す斜視図である。
(b):従来の紙押え機構の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
21 紙送りローラ(紙送り部材)
22 紙押えローラ(紙押え部材)
30 紙押えユニット
33 長孔(案内支持手段)
37 付勢伝達レバー(付勢伝達部材)
40 付勢ユニット
43 ねじりコイルばね
50 紙押えユニット
60 紙押え機構
220 ローラ軸(支持部材)
S 記録紙

Claims (6)

  1. 記録紙を上流側及び下流側の双方向へ搬送する紙送り部材と、前記記録紙を前記紙送り部材に対して押圧する押圧ユニット及び該押圧ユニットを付勢する付勢ユニットを有する紙押えユニットとを備えた紙押え機構であって、
    前記押圧ユニットは、前記紙送り部材に対して接離自在に設けられ、前記記録紙を前記紙送り部材に押圧して押える紙押え部材と、該紙押え部材を支持して前記紙送り部材の回動中心方向へ案内する案内支持部材と、前記付勢ユニットの付勢力を前記紙押え部材に伝達する付勢伝達部材とを有し、
    前記付勢ユニットは、弾性部材と、該弾性部材が取り付けられる取付部材とを有することを特徴とする紙押え機構。
  2. 前記付勢ユニットは、前記押圧ユニットが本体フレームに取り付けられた後に、該本体フレームに取り付けられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙押え機構。
  3. 前記取付部材は、前記本体フレームに対してラッチ方式によって係止可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の紙押え機構。
  4. 前記付勢伝達部材は、前記紙押え部材を移動可能に支持する支持部材に前記紙押え部材を前記支持部材の所定の位置に掛止しつつ摺動可能に支持されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紙押え機構。
  5. 前記紙押え部材、付勢伝達部材及び弾性部材は、それぞれ、前記記録紙の搬送方向と直交する紙幅方向に各々独立して複数設けられると共に、前記複数の弾性部材の各々は、対応する前記付勢伝達部材に当接する作用位置とその反力を受ける掛止位置との取付部位置が成す取付長さがそれぞれ異なるように前記取付部材に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の紙押え機構。
  6. 前記記録紙に対して所望の印字を行う印字手段と、前記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の紙押え機構とを備えたことを特徴とするプリンタ。
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