JP3758635B2 - タービン可変静翼の支持構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可変サイクルエンジンのタービン可変静翼の支持構造に係り、特に、熱伸びに差があるタービン可変静翼の支持構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガスタービンエンジンは、全負荷時における効率が良好となるように設計されていることから、部分負荷時の効率があまり良好でない。このため、部分負荷時の効率を良好とすべく、タービンノズルの開度面積を変更可能な可変サイクルエンジンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
航空用可変サイクルエンジンは、図3に示すように、流体の流れ方向上流側から順に設けられるファン31、高圧圧縮機(以下、HPCと表す)32、燃焼器33、高圧タービン(以下、HPTと表す)34、及び低圧タービン(以下、LPTと表す)35で主に構成されており、可変機構の一つとして可変低圧タービンノズル(以下、LPTVGと表す)36を備えている。
【0004】
LPTVG36は、そのスロートエリアの開口面積の大きさを所定範囲内で制御することにより、HPT34とLPT35の仕事配分の調整を可能とするものである。つまり、全負荷時には、LPTVG36を開放してHPC32の仕事を増加させると共に、ファン31の仕事を減少させることで、バイパス比を小さくし、最大出力を得るようにしている。また、部分負荷時には、LPTVG36を絞ってファン31の仕事を増加させると共に、HPC32の仕事を減少させることで、バイパス比を大きくし、良好な効率を維持したまま出力を抑えるようにしている。
【0005】
一方、再生式舶用可変サイクルエンジンは、図4に示すように、流体の流れ方向上流側から順に設けられる圧縮機41、燃焼器42、ガスジェネレータタービン(GGT)43、パワータービン(以下、PTと表す)44、及び熱交換器45で主に構成されており、可変パワータービンノズル(以下、PTVGと表す)46を備えている。
【0006】
PTVG46は、そのスロートエリアの開口面積の大きさを所定範囲内で制御することにより、エンジン内を流れる流体の流量を調整可能とするものである。つまり、全負荷時には、PTVG46を開放して熱交換器45の入口温度およびPT44の仕事を所定の値として、最大出力を得るようにしている。一方、部分負荷時には、PTVG46を絞って、熱交換器45の入口温度を所定の温度に維持したままPT44の仕事を減少させることで、再生熱交換量を大きくし、良好な効率を維持したまま出力を抑えるようにしている。
【0007】
【特許文献1】
特開昭48−78310号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来、PTVG46(又はLPTVG36)の開放度、即ちスロートエリアの開口面積の大きさの制御は、静翼の取付け角度を機械的に変えることで行っている。具体的には、図5に示すように、筒状のタービンシュラウド51の内壁に、周方向に沿って、PT(又はLPT)の可変静翼52の軸端部53を設け、タービンシュラウド51を覆う筒状のケーシング54の内壁に、周方向に沿って、トルク伝達軸55を設ける。また、トルク伝達軸55の一端部は操作レバー56に連結し、トルク伝達軸55の他端部は可変静翼52の軸端部53にボルト57等でリジッドに係合する。その後、操作レバー56を回動することで、操作レバー56に連結された駆動リング(図示せず)が回動し、各トルク伝達軸55を介して可変静翼52の軸端部53に回転トルクが伝達され、翼角調整がなされる。
【0009】
ところで、この可変静翼の支持構造においては、可変静翼52の軸端部53の長さが長いことから、ガス力などのモーメント荷重の影響が大きくなる。このため、モーメント荷重に抗するべく、可変静翼52の軸端部53が十分な強度を持つよう、強度上の配慮が必要であった。
【0010】
また、シュラウド51の内部は高温の主流ガスGが流れることから、シュラウド51における可変静翼52の軸端部53の支持部分61の温度は約900℃の高温となる。これに対して、ケーシング54におけるトルク伝達軸55の支持部分62の温度は約300℃と比較的低温である。つまり、各支持部分61,62においては、約600℃の温度差があることから、熱伸びに差が生じる。ここで、シュラウド51と可変静翼52は一体に動くように設けている関係上、各支持部分61,62の位置にずれが生じてしまう。この位置ずれによって、可変静翼52の軸端部53に過大な力が作用し、可変静翼52の回転及び軸端部53の強度に問題が生じてしまう。このため、従来においては、各支持部分61,62にピストンリング(図示せず)を設け、この位置ずれを吸収するようにしていた。
【0011】
しかし、このような軸係合構造では、トルク伝達軸55から可変静翼52の軸端部53に伝達可能な回転トルクの大きさに限界があった。また、例えば、可変静翼52の軸端部53の支持部分61で3mm、トルク伝達軸55の支持部分62で1mmの、軸方向伸びがあった場合、2mmの熱伸び差が生じてしまい、係合部に圧縮力が働いて、曲げや囓りが生じるおそれがあり、結果的に、トルク伝達軸55の回転が可変静翼52の軸端部53に伝達されないおそれがあった。さらに、各支持部分61,62の空気シール性及びピストンリングの寿命を考慮しなければならないという問題があった。
【0012】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、シュラウド部とケーシング部の熱伸びに差があっても、トルク伝達軸から可変静翼の軸端部に確実に回転トルクを伝達できるタービン可変静翼の支持構造を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係るタービン可変静翼の支持構造は、筒状のタービンシュラウド内壁に周方向に沿ってタービン可変静翼を取付け、そのタービン可変静翼の回転軸端部をトルク伝達軸を介して操作レバーに連結し、その操作レバーの回動により翼角を調整自在としたタービン可変静翼の支持構造において、上記可変静翼の回転軸端部とトルク伝達軸とを、トルク伝達する自在継手を介して連結したものである。
【0014】
また、請求項2に示すように、上記自在継手は、両端部に互いに直交するキー又はキー溝を有するオルダム継手であることが好ましい。
【0015】
また、請求項3に示すように、上記オルダム継手を、回転軸端部とトルク伝達軸との間に隙間を有した状態で係合すると共に、コイルバネで回転軸端部側に付勢して支持することが好ましい。
【0016】
また、請求項4に示すように、上記キーは、延長方向両端部をR部に形成することが好ましい。
【0017】
以上の構成によれば、タービン可変静翼の回転軸端部及び可変静翼に回転トルクを伝達するトルク伝達軸に、熱伸びに伴って曲げ・圧縮応力が作用することがなく、トルク伝達軸から可変静翼の回転軸端部に確実に回転トルクを伝達することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0019】
本発明に係るタービン可変静翼の支持構造の断面概略図を図1に、図1における2−2線断面図を図2に示す。尚、図5と同様の部材には同じ符号を付している。
【0020】
本発明に係るタービン可変静翼の支持構造は、例えば、図4に示した再生式舶用可変サイクルエンジンのPTVG46(又は図3に示した航空用可変サイクルエンジンのLPTVG36)に適用される。
【0021】
具体的には、図1、図2に示すように、本発明に係るタービン可変静翼12の支持構造は、筒状のタービンシュラウド51の内壁に、周方向に沿って、PT(又はLPT)の可変静翼12の軸端部13を設け、タービンシュラウド51を覆う筒状のケーシング54の内壁に、周方向に沿ってトルク伝達軸15を設け、そのトルク伝達軸15の一端部を操作レバー56に連結し、トルク伝達軸15の他端部と可変静翼の12の軸端部13とをオルダム継手21を介して連結したものである。操作レバー56には駆動リング(図示せず)が連結される。また、タービンシュラウド51と軸端部13との間にはブッシュ26が配置され、ケーシング54とトルク伝達軸15との間にはブッシュ27が配置される。
【0022】
図2に示す軸端部13とオルダム継手21との係合部23では、軸端部13の上端にキー(又はキー溝)3が、オルダム継手本体20の下面20aにキー溝(又はキー)4が形成されている。また、図1に示すオルダム継手21とトルク伝達軸15との係合部24では、オルダム継手本体20の上面20bにキー(又はキー溝)5が、トルク伝達軸15の下端にキー溝(又はキー)6が形成されている。このキー3とキー溝4及びキー5とキー溝6は互いに直交しており、これらがそれぞれ係合することによって自在継手を構成する。また、キー3,5の各延長方向(図1中のキー3の矢印A方向および図2中のキー5の矢印B方向)両端部は、それぞれR部に形成されている。また、各係合部23,24は、可変静翼12の軸方向の伸縮を許容するように、それぞれ隙間Sを有した状態で係合されている。
【0023】
トルク伝達軸15の係合側端は、ケーシング54からタービンシュラウド51側に突出しており、この係合側端とケーシング54との段差部に、コイルバネ22の一端が着座・固定される。また、コイルバネ22の他端は、オルダム継手21の中間部に形成されたフランジ25に着座・固定される。この着座・固定の際、コイルバネ22によって、オルダム継手21を可変静翼12の軸端部13側に付勢した状態で支持する。
【0024】
本発明に係るタービン可変静翼の支持構造は、その適用を図4に示した再生式舶用可変サイクルエンジンや、図3に示した航空用可変サイクルエンジンに限定するものではなく、サイクル可変が要求されるガスタービン全てに適用可能であることは言うまでもない。
【0025】
次に、本発明に係る可変静翼12の支持構造の作用を、添付図面に基づいて説明する。
【0026】
可変サイクルエンジンの運転中、エンジンサイクルの変更が求められた場合、操作レバー56に連結された駆動リング(図示せず)を回動させることで、回転トルクが、トルク伝達軸15及びオルダム継手21を介して各可変静翼12の軸端部13に伝達され、これによって可変静翼12の翼角調整がなされる。その結果、図4に示したPTVG46のスロートエリアの開口面積の大きさが所定範囲内で制御され、ガスジェネレータタービン43とPT44の仕事配分の調整が可能となり、良好な効率を維持した状態で出力等の調整を行うことができる。
【0027】
この時、図5に示した従来の可変静翼の支持構造においては、トルク伝達軸55と可変静翼52の軸端部53とを直接連結するものであったため、軸端部53は、シュラウド51の内面部からケーシング54の内面部までに亘る長尺なものとなる。このため、ガス力などのモーメント荷重の影響を大きく受けることとなり、モーメント荷重に抗する十分な強度を持つよう、強度上の特別な配慮を必要としていた。これに対して、本発明に係る可変静翼12の支持構造においては、トルク伝達軸15と可変静翼12の軸端部13とをオルダム継手21を介して連結している。このため、軸端部13の長さが、図5に示した可変静翼52の軸端部53と比較して短くなり、ガス力などのモーメント荷重の影響を大きく受けることはなくなる。よって、軸端部13がモーメント荷重に抗する十分な強度を持つよう、材料選択等の強度上の特別な配慮を必要としなくて済む。その結果、従来と比較して、可変静翼12の軸端部13の強度をそれ程高くする必要がなくなり、より安価に製造することが可能となる。
【0028】
一方、シュラウド51の内部に高温の主流ガスGが流れると、前述したように、各支持部分61,62においては約600℃の温度差によって熱伸びに差が生じ、延いては各支持部分61,62の相対位置にずれが生じてしまう。
【0029】
そこで、本発明においては、各係合部23,24を自在継手、具体的には互いに直交するキー3及びキー溝4とキー5及びキー溝6とを有するオルダム継手で連結している。より具体的には、係合部23では、軸端部13のキー3がオルダム継手21のキー溝4に嵌合・係合しており、係合部24では、オルダム継手21のキー5がトルク伝達軸15のキー溝6に嵌合・係合している。これによって、係合部23は、図1中では矢印Aの方向、図2中では図面と垂直な方向に、また、係合部24は、図1中では図面と垂直な方向、図2中では矢印Bの方向に自在にスライドすることができ、可変静翼12の回転軸(軸端部13の回転軸)と直交する方向のスライド変位を許容することができる。
【0030】
また、各係合部23,24における各キー3,5の延長方向両端部をR部に形成していることから、可変静翼12の回転軸と直交する軸周りの軸端部13の回転変位は、トルク伝達軸15と軸端部13との間で伝達されない。よって、可変静翼12の回転軸周りの回転変位、つまり操作レバー56の回動による回転トルクだけを、トルク伝達軸15及びオルダム継手21を介して、確実に可変静翼12の軸端部13に伝達することができる。
【0031】
つまり、可変静翼12の軸端部13の支持部分61及びトルク伝達軸15の支持部分62に位置ずれが生じても、各係合部23,24においては、可変静翼12の軸方向と直交する方向のスライド変位を許容しつつ、確実に、かつ、殆ど伝達の損失を生じさせることなく、回転トルクだけを伝達することができる。その結果、可変静翼12の軸端部13に過大な曲げ応力が作用することはなく、可変静翼12の回転及び軸端部13の強度に問題が生じることもない。
【0032】
また、各支持部分61,62で、数mmレベルの軸方向の熱伸びが生じたとしても、各係合部23,24は隙間Sを有した状態で係合されているため、軸方向伸び(変位)を許容することができる。この時、オルダム継手21が、常時、可変静翼12の軸端部13側に密接して係合するように、コイルバネ22によって、オルダム継手21を軸端部13側に付勢した状態で支持している。軸方向の伸びが生じると、先ずコイルバネ22が収縮し、オルダム継手21のキー5がトルク伝達軸15のキー溝6の奥部に向かってスライド、摺動し、係合部24側の隙間Sが縮まることで、軸方向の伸びが吸収される。これによって、各支持部分61,62に軸方向の伸びが生じても、各係合部23,24においては、圧縮応力が作用したり、囓りが生じるおそれがなく、可変静翼12の軸方向の伸び変位を許容しつつ、確実に、かつ、回転トルクを殆ど損失することなく伝達することができる。その結果、可変静翼12の軸端部13に過大な圧縮応力が作用することはなく、可変静翼12の回転及び軸端部13の強度に問題が生じることもない。ここで、オルダム継手21を、常時、可変静翼12の軸端部13側に密接させた状態で係合させているのは、係合部23,24においては、係合部24の方が温度が低いため、係合部23と比較して摺動摩擦係数の変化を小さく抑えられるからである。
【0033】
また、軸端部13及びトルク伝達軸15に、熱伸びに伴って曲げ・圧縮応力が作用することがなくなるため、軸端部13の耐久強度が向上し、各支持部分61,62に設けられる摺動材(軸端部13、トルク伝達軸15、及びブッシュ26,27)の寿命向上を図ることができる。
【0034】
また、軸端部13及びトルク伝達軸15に、熱伸びに伴って曲げ・圧縮応力が作用することがなくなるため、回転トルクの伝達損失が殆ど無くなり、可変静翼12の回転トルクの低減を図ることができる。これによって、アクチュエータ荷重の低減を図ることができ、延いては、アクチュエータの小型化を図ることができる。
【0035】
また、従来のように、各支持部分61,62にピストンリングを設ける必要がないことから、各支持部分61,62の空気シール性が良好となり、また、可変静翼12の支持構造物の寿命がピストンリングの寿命によって左右されることもない。
【0036】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0037】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、タービン可変静翼の軸端部及び可変静翼に回転トルクを伝達するトルク伝達軸に、熱伸びに伴って曲げ・圧縮応力が作用することがなく、トルク伝達軸から可変静翼の軸端部に確実に回転トルクを伝達することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るタービン可変静翼の支持構造の断面概略図である。
【図2】図1における2−2線断面図である。
【図3】航空用可変サイクルエンジンの断面概略図である。
【図4】再生式舶用可変サイクルエンジンの断面概略図である。
【図5】従来のタービン可変静翼の支持構造の断面概略図である。
【符号の説明】
3,5 キー
4,6 キー溝
12 可変静翼(タービン可変静翼)
13 軸端部(回転軸端部)
15 トルク伝達軸
20 オルダム継手本体(オルダム継手)
21 オルダム継手
22 コイルバネ
51 タービンシュラウド
56 操作レバー
S 隙間

Claims (4)

  1. 筒状のタービンシュラウド内壁に周方向に沿ってタービン可変静翼を取付け、そのタービン可変静翼の回転軸端部をトルク伝達軸を介して操作レバーに連結し、その操作レバーの回動により翼角を調整自在としたタービン可変静翼の支持構造において、上記可変静翼の回転軸端部とトルク伝達軸とを、トルク伝達する自在継手を介して連結したことを特徴とするタービン可変静翼の支持構造。
  2. 上記自在継手は、両端部に互いに直交するキー又はキー溝を有するオルダム継手である請求項1記載のタービン可変静翼の支持構造。
  3. 上記オルダム継手を、回転軸端部とトルク伝達軸との間に隙間を有した状態で係合すると共に、コイルバネで回転軸端部側に付勢して支持する請求項2記載のタービン可変静翼の支持構造。
  4. 上記キーは、延長方向両端部がR部に形成される請求項2又は3記載のタービン可変静翼の支持構造。
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