JP3758101B2 - ハロゲン化銀写真感光材料の現像方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料の現像方法、特にX−レイ用ハロゲン銀写真感光材料の現像方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に使用される黒白ハロゲン化銀感光材料(X−レイ用、製版用、マイクロ用、ネガ用)は従来ハイドロキノンを現像主薬とし、補助現像主薬として3−ピラゾリドン系化合物またはアミノフェノール系化合物を含むアルカリ性現像液で現像された後、定着および水洗の各工程からなる現像処理によって画像が形成される。その中でも特にX−レイ写真用感光材料は比較的多量のハロゲン化銀を含有しており、しかもそれらを迅速に処理するために、現像主薬であるハイドロキノンを多量に含む高活性の現像液が使用されている。高い活性度を維持するためにこのような現像液が空気酸化に抗して多量に補充されてきた。しかしハイドロキノンも今やそれ自身の毒性、安全性が問題になりつつある。ハイドロキノンにかわる現像主薬として米国特許第2688549号、同5278035号、同5236816号、同5098819号、特開平3−249756号にアスコルビン酸およびその誘導体を用いる方法が記載されている。しかしこれらの現像液を用いて平板状ハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀写真感光材料を現像する方法については何ら記載されていない。また平板状ハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀写真感光材料の銀汚れの少ない現像方法については何ら記載されていない。さらにハロゲン化銀写真感光材料の単位面積当たりの少ない補充液量で現像する方法については知られていなかった。
【0003】
従来、ハロゲン化銀写真感光材料の単位面積当たりの補充液量を少なくすることが望まれてきた。しかし、単純に、補充液量を少なくするとハロゲン化銀写真感光材料から現像液中に溶出する銀量が増加して銀汚れが増加するという問題が深刻になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題はハロゲン化銀写真感光材料(特にX−レイ用)を、現像主薬としてハイドロキノンを使用しないで、かわりにアスコルビン酸およびその誘導体の1種以上を使用した現像液で現像処理するに際し、ハロゲン化銀写真感光材料の銀汚れを少なくすることができるハロゲン化銀写真感光材料の現像方法を提供することである。さらにはハロゲン化銀写真感光材料(特にX−レイ用)の単位面積当たりの補充量を少なくし、高い化学的酸素要求量(いわゆるC.O.D)および高い生物的酸素要求量(いわゆるB.O.D)を有する現像廃液の廃液処理の経済的負荷を小さくしたハロゲン化銀写真感光材料の現像方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、下記(1)〜(3)の特定事項によって達成される。
(1)アスペクト比3.0以上の平板状ハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上含有するハロゲン化銀乳剤層を少なくとも1層有し、膨潤率が130%〜250%であるハロゲン化銀写真感光材料を、アスコルビン酸またはその誘導体を現像主薬として含有し、さらに下記一般式(8a)、一般式(8b)および一般式(8c)で表される化合物の少なくとも1種を含有する現像液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の現像方法。
【化2】
(式(8a)において、R 10 はメルカプト基、水素原子、または任意の置換基を表し、Xは水溶性基もしくは水溶性基で置換された置換基を表す。式(8b)においてY 1 は水溶性基もしくは水溶性基で置換された置換基を表し、R 20 は水素原子または任意の置換基を表す。式(8c)においてY 2 は水溶性基もしくは水溶性基で置換された置換基を表し、R 30 は水素原子または任意の置換基を表す。ただし、R 10 およびY 1 がヒドロキシ基を表すことはない。)
(2)前記一般式(8a)および一般式(8b)で表される化合物の少なくとも1種を含有する(1)に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像方法。
(3) ハロゲン化銀写真感光材料1m2当たりの現像液の補充液量が200ml以下である上記(1)または(2)のハロゲン化銀写真感光材料の現像方法。
【0006】
【化2】
【0007】
[式(I)中、Z1 はNおよびCとともに5員もしくは6員の含窒素芳香族ヘテロ環を形成するのに必要な非金属原子団を表し、X1 は水素原子またはカチオンを表す。またZ1 より任意の水素原子1個を除いた式(I)の残基2個が結合してビス構造を形成してもよい。]
(2) 式(I)中、Z1 には水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子、窒素原子もしくは硫黄原子が結合位置となる置換基(ただし、硫黄原子が結合位置となる置換基には−SX1 が含まれる)が結合する上記(1)のハロゲン化銀写真感光材料の現像方法。
(3) ハロゲン化銀写真感光材料1m2当たりの現像液の補充液量が200ml以下である上記(1)または(2)のハロゲン化銀写真感光材料の現像方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
本発明では、アスコルビン酸およびその誘導体(「アスコルビン酸類」ともいう。)のうちの1種以上を現像主薬とする現像液を用いて、特にX−レイ用等のハロゲン化銀写真感光材料(「感光材料」、「感材」等ともいう。)を処理するが、現像液には一般式(8a)、一般式(8b)および一般式(8c)で表される化合物の少なくとも1種で表される化合物を含有させる。
【0010】
本発明では、アスコルビン酸類を現像主薬とする現像液に一般式(8a)、一般式(8b)および一般式(8c)で表される化合物の少なくとも1種を含有させることによって、平板状ハロゲン化銀粒子を含有する感光材料に対し、長期に亘るランニング処理を行っても銀汚れの発生を防止することができる。これは、感光材料中のハロゲン化銀粒子の表面に一般式(8a)、一般式(8b)および一般式(8c)で表される化合物の少なくとも1種が吸着し、ハロゲン化銀が現像液中に溶解することを抑制するためと考えられる。このため、現像液の補充液量を減少させることができる。この結果、廃液量が減少し、廃液処理コストを節減することができる。
次に、一般式(8a)、一般式(8b)および一般式(8c)で表される化合物について詳細に説明する。
【0011】
本発明に用いる感光材料は、後に詳述するが、アスペクト比3.0以上の平板状ハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上含有するハロゲン化銀乳剤層を少なくとも1層有し、膨潤率が130%〜250%のものであり、高感度である。
【0053】
【化12】
【0054】
式(8a)において、R10はメルカプト基、水素原子、または任意の置換基を表し、Xは水溶性基もしくは水溶性基で置換された置換基を表す。式(8b)においてY1は水溶性基もしくは水溶性基で置換された置換基を表し、R20は水素原子または任意の置換基を表す。式(8c)においてY2は水溶性基もしくは水溶性基で置換された置換基を表し、R30は水素原子または任意の置換基を表す。ただし、R10およびY1がヒドロキシ基を表すことはない。
【0055】
次に一般式(8a)、一般式(8b)および一般式(8c)で表されるピリミジン誘導体について詳しく説明する。
【0056】
式(8a)において、R10はメルカプト基、水素原子または任意の置換基を表す。ただしR10がヒドロキシ基を表すことはない。
【0057】
ここで任意の置換基とは、ハロゲン原子、または炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で環に結合する置換基を挙げることができる。具体的にはハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、ヒドロキシアミノ基、N−置換の飽和もしくは不飽和の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、等が挙げられる。置換基が複数存在するとき、2個の置換基が結合して環を形成してもよい。
これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
R10として好ましくは、メルカプト基、水素原子、または総炭素数0〜15の、以下の置換基から選ばれる基である。すなわち、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基等が挙げられる。
【0058】
式(8a)においてXは水溶性基もしくは水溶性基で置換された置換基を表す。ここに水溶性基とはスルホン酸もしくはカルボン酸の塩、アンモニオ基のような塩、またはアルカリ性の現像液によって一部もしくは完全に解離しうる解離性基を含む塩のことで、具体的にはスルホ基(またはその塩)、カルボキシ基(またはその塩)、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アンモニオ基、スルホンアミド基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基、活性メチン基、またはこれらの基を含む置換基を表す。なお本発明において活性メチン基とは、2つの電子吸引性基で置換されたメチル基のことで、具体的にはジシアノメチル、α−アセチル−α−シアノメチル、α−シアノ−α−エトキシカルボニルメチル、α−アセチル−α−エトキシカルボニルメチル等の基が挙げられる。
【0059】
式(8a)のXで表される置換基とは、上述した水溶性基、または上述の水溶性基で置換された置換基であり、その置換基としては、総炭素数0〜15の置換基で、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、スルファモイルアミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、スルファモイル基、アミノ基等が挙げられ、好ましくは、総炭素数1〜10のアルキル基(特にアミノ基で置換されたメチル基)、アリール基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基等の基である。
【0060】
式(8a)で表されるピリミジン誘導体の中で、さらに好ましいものは次の式(8a−A)で表される。
【0061】
【化13】
【0062】
式(8a−A)中、R11は式(8a)のR10と同義の基であり、その好ましい範囲も同じである。R12、R13は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。ただしR12およびR13の少なくとも一方は、少なくとも1つの水溶性基を有する。ここに水溶性基とは、式(8a)のXが有すべき水溶性基と同じものであり、好ましくはスルホ基(またはその塩)、カルボキシ(またはその塩)、ヒドロキシ基、アミノ基等の基が挙げられる。
【0063】
R12およびR13は、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、R12およびR13がアルキル基を表す時、アルキル基としては総炭素数1〜4の、置換もしくは無置換のアルキル基が好ましく、その置換基としては水溶性基、特にスルホ基(またはその塩)、カルボキシ基(またはその塩)、ヒドロキシ基、またはアミノ基が好ましい。R12およびR13がアリール基を表すとき、アリール基としては総炭素数6〜10の、置換もしくは無置換のフェニル基が好ましく、その置換基としては水溶性基、特にスルホ基(またはその塩)、カルボキシ基(またはその塩)、ヒドロキシ基、またはそのアミノ基が好ましい。
【0064】
R12およびR13がアルキル基またはアリール基を表す時、これらは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。また環状構造により飽和のヘテロ環を形成してもよい。
【0065】
式(8b)においてY1は水溶性基もしくは水溶性基で置換された置換基を表し、式(8a)のXと同義のものである。ただしY1がヒドロキシ基を表すことはない。R20は水素原子または任意の置換基を表す。Y1で表される水溶性基で置換された置換基とは、具体的にはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基(Nで置換される含窒素ヘテロ環基を含む)、アミノ基、(アルキル、アリール、またはそのヘテロ環)アミノ基、(アルキル、アリール、またはヘテロ環)チオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、これらは水溶性基で置換されている。水溶性基としては、式(8a)のXが有すべき水溶性基と同じものであり、好ましくはスルホ基(またはその塩)、カルボキシ基(またはその塩)、ヒドロキシ基、アミノ基等の基である。
【0066】
式(8b)においてY1は好ましくは総炭素数3〜8の活性メチン基、総炭素数1〜15の水溶性基で置換されたアルキル基もしくはアリール基、総炭素数1〜10の水溶性基で置換されたアルキルアミノ基もしくはアリールアミノ基、総炭素数1〜10の水溶性基で置換されたアルキルチオ基もしくはアリールチオ基、総炭素数1〜10の水溶性基で置換されたアルコキシ基もしくはアリールオキシ基であり、ここに水溶性基として特に好ましくはスルホ基(またはその塩)、カルボキシ基(またはその塩)、またはヒドロキシ基である。
【0067】
Y1として特に好ましくは、ヒドロキシ基、カルボキシ基(またはその塩)、またはスルホ基(またはその塩)で置換された、総炭素数1〜10の(アルキル、アリール、もしくはヘテロ環)アミノ基であり、−N(R01)(R02)基で表される。ここにR01、R02は、それぞれ式(8a−A)のR12、R13と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。
【0068】
R20は水素原子または任意の置換基を表すが、ここで任意の置換基とは、一般式(8a)のR 10 の置換基について説明したものと同じものが挙げられる。R20として好ましくは、水素原子、または総炭素数0〜15の、以下の置換基から選ばれる基である。すなわち、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヒドロキシルアミノ基等が挙げられる。R20として最も好ましくは水素原子である。
【0069】
式(8c)においてY2は水溶性基、または水溶性基で置換された置換基を表し、R30は水素原子または任意の置換基を表す。式(8c)におけるY2、R30は、それぞれ式(8b)のY1、R20と同義の基であり、その好ましい範囲もまた同じである。
【0070】
次に本発明における、一般式(8a)、一般式(8b)または一般式(8c)で表される化合物の具体例および後述する実施例で採用する比較化合物を示すが、これらに限定されるものではない。
【0071】
【化3】
【0073】
【化4】
【0074】
【化5】
【0075】
【化6】
【0076】
【化7】
【0077】
【化8】
【0078】
【化9】
【0079】
【化10】
【0080】
【化11】
【0081】
【化12】
【0082】
【化13】
【0083】
【化26】
【0084】
本発明の一般式(8a)、一般式(8b)または一般式(8c)で表される化合物であって以下に示される特許文献およびそれに引用された特許文献等の文献に記載された化合物も採用できる。すなわち特開平4−301837号、同5−61159号、同6−230525号、特開昭58−169147号、同62−56959号、米国特許第3212892号、特開平3−53244号、同3−282457号、同5−61159号、同5−303179号、同4−362942号、特公昭46−11630号、特開平6−175302号、同6−258783号、特開平8−6215号等である。
【0085】
本発明の一般式(8a)、一般式(8b)または一般式(8c)で表される化合物は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。これらの化合物の現像液における添加量は、現像液1リットル当り0.01ミリモル〜10ミリモルの範囲が好ましく、0.1ミリモル〜5ミリモルの範囲が特に好ましい。添加量が少ないと本発明の実効がなく、多すぎると、写真感度の低下および最大黒化濃度の低下をもたす。
【0086】
さらに一般式(8a)、一般式(8b)または一般式(8c)で表される化合物は、ハロゲン化銀写真感光材料に添加してもよく、この場合は、バック層または最上の保護層等非感光性層に添加することが好ましい。この場合の添加量は感光材料1m2当たり1×10-6モル〜5×10-3モルの範囲が好ましく、1×10-5モル〜1×10-3モルの範囲が特に好ましい。
【0087】
本発明の現像液に用いるアスコルビン酸またはその誘導体としては下記式(II)で表されるものが好ましい。
【0088】
【化27】
【0089】
式(II)中、R1 は水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
【0090】
式(II)で表されるアスコルビン酸またはその誘導体について詳細に説明する。
【0091】
式(II)中、R1 で表されるアルキル基は炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、アリール基は炭素数6〜10のアリール基であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などであり、ヘテロ環基は炭素原子、窒素原子、酸素原子、あるいは硫黄原子から構成される5〜6員環のヘテロ環基で、例えば、1,3−ジオキソラニル基、1,3−ジオキソラン−2−オン基、1,3−ジオキソラン−4−オン基、1,3,2−ジオキソチオラン−2−オキシ基、フリル基、ベンゾフリル基、ピラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、チエニル基、イソチアゾリル基などである。これらの基は置換基を有してもよく、その置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルフィニルオキシ基、カルボキシル基(塩を含む)、スルホ基(塩を含む)、ヒドロキシアミノ基、ヒドラジノ基を挙げることができる。
【0092】
さらに詳しく置換基の例を示す。アルキル基としては炭素数1〜16、好ましくは炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、これらの基はR1 の置換基として挙げた基で置換されていてもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、ヒドロキシメチルなどを挙げることができる。アルケニル基としては炭素数2〜16、好ましくは炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖のアルケニル基であり、これらの基はR1 の置換基として挙げた基で置換されていてもよく、例えば、エテニル、プロぺニル、3−ブテニル、4−ヒドロキシ−3−ブテニルなどを挙げることができる。アリール基としては炭素数6〜10のアリール基で、これらの基はR1 の置換基として挙げた基で置換されていてもよく、例えば、フェニル、ナフチル、p−メチルフェニルなどである。アルコキシ基としては炭素数1〜19、好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基で、これらの基はR1 の置換基として挙げた基で置換されていてもよく、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、2−メトキシエトキシなどを挙げることができる。アリールオキシ基としては炭素数6〜10のアリールオキシ基で、これらの基はR1 の置換基として挙げた基で置換されていてもよく、例えば、フェノキシ、p−ヒドロキシフェノキシ、3,4−ジヒドロキシフェノキシ、o−カルボキシフェノキシ、o−スルホフェノキシなどを挙げることができる。アルキルチオ基としては炭素数1〜16、好ましくは炭素数1〜8のアルキルチオ基で、これらの基はR1 の置換基として挙げた基で置換されていてもよく、例えば、メチルチオ、オクチルチオなどである。アリールチオ基としては炭素数6〜10のアリールチオ基で、これらの基はR1 の置換基として挙げた基で置換されていてもよく、例えば、フェニルチオ、4−ヒドロキシフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ、4−ブトキシフェニルチオなどを挙げることができる。アシルオキシ基としては炭素数1〜17、好ましくは炭素数1〜8のアシルオキシ基で、これらの基はR1 で置換基として挙げた基で置換されていてもよく、例えばアセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、カルボキシアセトキシ、3−スルホプロパノイルオキシなどを挙げることができる。
【0093】
アルキルアミノ基としては炭素数1〜6のアルキルアミノ基で例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどである。カルボンアミド基としては炭素数1〜6のカルボンアミド基で例えば、アセトアミド基、プロピオンアミド基である。スルホンアミド基としては炭素数1〜6のスルホンアミド基で例えば、メタンスルホンアミド基である。ウレイド基としては炭素数1〜6のウレイド基で例えば、ウレイド、メチルウレイドである。アシル基としては炭素数1〜6のアシル基で例えばアセチル、ベンゾイルなどである。オキシカルボニル基としては炭素数1〜8のオキシカルボニル基で例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルである。カルバモイル基としては炭素数1〜6のカルバモイル基で例えば、カルバモイル、N,N−ジメチルカバモイルである。スルフィニルオキシ基としては炭素数1〜6のスルフィニルオキシ基で例えば、メタンスルフィニルオキシ基である。
【0094】
これらの置換基は、さらに置換されていてもよい。
【0095】
式(II)のR1 にて表されるアルキル基は、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基で、R1 の置換基として挙げた基によって置換されたものも含み、より好ましくは、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、オキシカルボニル基、カルボキシル基(塩を含む)、スルホ基(塩を含む)で置換されたアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、1,2−ジヒドロキシエチル、1,2−ジヒドロキシプロピル、1,2,3−トリヒドロキシプロピル、1,2,3,4−テトラヒドロキシブチル、1,2−ジメトキシエチル、1,1−ジメトキシ−2−ヒドロキシエチル、1,2−ジエトキシエチル、1,2−ジアセトキシエチル、ヒドロキシカルボキシメチル、アセトキシカルボキシメチル、1−メチルチオ−2−ヒドロキシエチル、1−フェニルチオ−2−ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシ−2−オクチルチオエチル、1−ヒドロキシ−2−フェニルチオエチル、1−ヒドロキシ−2−アミノエチル、1−ヒドロキシ−2−フェノキシエチル、1−ヒドロキシ−2−スルホエチルなどを挙げることができる。これらの置換基は、さらに置換されていてもよい。
【0096】
式(II)のR1 にて表されるアリール基は、好ましくは、フェニル基で、R1 の置換基として挙げた基によって置換されたものも含み、例えば、フェニル、p−メチルフェニル、アニシル、p−カルボキシフェニル、p−スルホニルフェニルなどである。
【0097】
式(II)のR1 にて表されるヘテロ基は、好ましくは、1,3−ジオキソラニル基、1,3−ジオキソラン−2−オン基、1,3−ジオキソラン−4−オン基、1,3,2−ジオキソチオラン−2−オキシ基、フリル基、ピリジル基、トリアゾリル基で、R1 の置換基として挙げた基によって置換されたものも含み、例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、シクロヘキサンスピロ−2−ジオキソラン、2,2−メチルエチル−1,3−ジオキソラン、2,2−メチルイソプロピル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキソラン−2−オン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−オンもしくは1,3,2−ジオキソチオラン−2−オキシドから誘導される基、または、フリル、5−メチルフリル、ベンゾフリル、ピリジル、5−クロロピリジル、3−カルボキシピリジル、5−スルホピリジル、1−フェニルトリアゾリルなどである。
【0098】
式(II)のR1 は、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、1,3−ジオキソラニル基であり、これらの基は他の置換基によって置換されたものも含み、その置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基を挙げることができ、より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基は、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アシルオキシ基であり、アリール基はフェニル基である。これらの置換基は、さらに置換されていてもよい。
【0099】
式(II)で表される化合物の中でも、下記式(IIa)で表される化合物が最も好ましい。
【0100】
【化28】
【0101】
式(IIa)中、R11は下記式(IIb)または(IIc)により表される基を表す。
【0102】
【化29】
【0103】
式(IIb)中、nは1〜4の整数を表す。
【0104】
【化30】
【0105】
式(IIc)中、R5 、R6 は同一でも異なっていてもよく、各々水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基を表し、R5 とR6 とは互いに連結して環を形成してもよい。ここで、アルキル基、アリール基、アルケニル基は、他の置換基によって置換されたものも含み、その置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、カルボキシル基(塩を含む)、スルホ基(塩を含む)、ヒドロキシアミノ基を挙げることができる。
【0106】
式(IIc)中の、R5 、R6 は好ましくは、炭素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜7のアルケニル基であり、特に好ましくは、水素原子、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基であり、最も好ましくは、水素原子または炭素数1〜7のアルキル基であり、R5 、R6 で表されるアルキル基は連結して環構造を形成してもよい。これらの基はR5 、R6 の置換基として挙げた基によって置換されたものも含み、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、クロロメチル基、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、1−ヒドロキシアミノ−1−メチル−エチル基、2−カルボキシエチル基である。R5 とR6 とが連結して形成される環としてはシクロペンチル環、シクロヘキシル環などを挙げることができる。これらの基は、さらに置換されていてもよい。
【0107】
式(II)で表される化合物はいわゆるエノール体で記述されているが、これが異性化したケト体も事実上同じ化合物であり、水素原子が異性化した化合物も本発明の範囲内である。
【0108】
アスコルビン酸類の具体例として下記化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
【化31】
【0110】
【化32】
【0111】
【化33】
【0112】
【化34】
【0113】
【化35】
【0114】
【化36】
【0115】
【化37】
【0116】
【化38】
【0117】
【化39】
【0118】
【化40】
【0119】
式(II)で表される化合物は、E.S.H.EL.Ashry,A.Mousaad,and N.Rashed,Advances in Heterocyclic Chemistry,vol.53,233-302 、特開昭57−188586号、特開昭64−45383号、特開平2−288872号、特開平4−29985号、特開平4−364182号、特開平5−112594号などの一般式合成法に準じて合成可能である。これらのアスコルビン酸系現像主薬は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0120】
アスコルビン酸系現像主薬は補助現像主薬と併用することが好ましい。
【0121】
本発明の現像液に用いる補助現像主薬の1−フェニル−3−ピラゾリドン類としては、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−5−メチル−3−ピラゾリドンなどがある。
【0122】
p−アミノフェノール類としては、N−メチル−p−アミノフェノール、N−(β−ヒドロキシエチル)−p−アミノフェノール、N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン、2−メチル−p−アミノフェノール、p−ベンジルアミノフェノールなどがあるが、なかでもN−メチル−p−アミノフェノールが好ましい。
これらの補助現像主薬は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0123】
アスコルビン酸系現像主薬と1−フェニル−3−ピラゾリドン類またはp−アミノフェノール類等の補助現像主薬を組合せて使用する場合には前者を0.05モル/リットル〜0.5モル/リットル、後者を0.001モル/リットル〜0.06モル/リットル(特に0.003モル/リットル〜0.06モル/リットル)の量で用いるのが好ましい。なお、アスコルビン酸系現像主薬を単独使用するときは通常0.1モル/リットル 〜0.3モル/リットル の量とする。
【0124】
本発明の現像液に用いる亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムなどがある。亜硫酸塩は0.01モル/リットル以上、特に0.03モル/リットル以上が好ましい。上限は2. 5モル/リットルまで、特に1.2モル/リットルまでとするのが好ましい。
【0125】
本発明の現像液には現像促進のために米国特許第5474879号に記載の化合物を含有させてもよい。さらにはアミノ化合物を含有させてもよく、特に特開昭56-106244 号、特開昭61-267759 号、特願平1-29418 号に記載のアミノ化合物を用いてもよい。
【0126】
本発明に用いる現像液のpH値は11.0以下であることが好ましい。特に10.5以下であることが好ましい。pH値の設定のために用いるアルカリ剤には通常の水溶性無機アルカリ金属塩、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムを用いることができる。特に炭酸塩としては0.3モル/リットル以上、特に0.4モル/リットル以上用いることが好ましい。
【0127】
本発明の現像液にはその他、ホウ酸、ホウ砂、第二リン酸ナトリウム、第二リン酸カリウム、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウムのようなpH緩衝剤、さらには特開昭60-93433号に記載のpH緩衝剤を用いることができる;臭化カリウム、沃化カリウムのような現像抑制剤、ジメチルホルムアミド、メチルセロソルブ、ヘキシレングリコール、エタノール、メタノールのような有機溶剤;ベンツトリアゾール誘導体としては5−メチルベンツトリアゾール、5−ブロムベンツトリアゾール、5−クロルベンツトリアゾール、5−ブチルベンツトリアゾール、ベンツトリアゾール等があるが、特に5−メチルベンツトリアゾールが好ましい。ニトロインダゾールとしては5−ニトロインダゾール、6−ニトロインダゾール、4−ニトロインダゾール、7−ニトロインダゾール、3−シアノ−5−ニトロインダゾール等があるが、特に5−ニトロインダゾールが好ましい。
【0128】
更に必要に応じて色調剤、界面活性剤、硬水軟化剤、硬膜剤などを含んでもよい。色調剤としては特願平7−176909号に記載のものを用いることができる。
【0129】
現像液中にはキレート剤としては下記化合物が挙げられる。すなわちエチレンジアミンジオルトヒドロキシフェニル酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,3−ジアミノプロパノール四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1,1−ジホスホノエタン−2−カルボン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシ−1−ホスホノプロパン−1,3,3−トリカルボン酸、カテコール−3,5−ジスルホン酸、ピロリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムが挙げられ、特に好ましくは例えばジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3−ジアミノプロパノール四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1,1−ジホスホノエタン−2−カルボン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ジホスホン酸、1−アミノエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸やこれらの塩がある。
【0130】
その他に本発明の現像液にはジアルデヒド系硬膜剤またはその重亜硫酸塩付加物を含ませてもよい。その具体例を挙げればグルタルアルデヒド、α−メチルグルタルアルデヒド、β−メチルグルタルアルデヒド、マレインジアルデヒド、サクシンジアルデヒド、メトキシサクシンジアルデヒド、メチルサクシンジアルデヒド、α−メトキシ−β−エトキシグルタルアルデヒド、α−n−ブトキシグルタルアルデヒド、α,α−ジメトキシサクシンジアルデヒド、β−イソプロピルサクシンジアルデヒド、α,α−ジエチルサクシンジアルデヒド、ブチルマレインジアルデヒド、またはこれらの重亜硫酸塩付加物などがある。ジアルデヒド化合物は処理される写真層の感度が抑えられない程度に、また乾燥時間が著しく長くならない程度の量で用いられる。具体的には現像液1リットル当たり1〜50g 、好ましくは3〜10g である。なかでもグルタルアルデヒドまたはその重亜硫酸塩付加物が最も一般的に使用される。ただしジアルデヒド系硬膜剤の重亜硫酸塩付加物が用いられた場合には、この付加物の重亜硫酸塩も現像液中の亜硫酸塩として計算される。
【0131】
この他、L.F.A.メイソン著「フォトグラフィック・プロセシング・ケミストリー」、フォーカル・プレス刊(1966年)の226〜229頁、米国特許第2193015号、同2592364号、特開昭48−64933号などに記載の添加剤を用いてもよい。
【0132】
本発明では、上記のような現像液を感光材料1m2当たり200ml以下、特に50ml〜200mlの範囲で補充しながら現像処理を行う。
【0133】
現像当初に自現機の現像槽に注入する現像液としては、上記の現像液と同じ組成の液を用いてもよいし、一部の組成を変えた液を用いてもよい。
【0134】
上記のような現像液と組み合わせて用いる定着液はチオ硫酸塩を含む水溶液であり、pH3.8以上、好ましくは4.2〜6.0を有する。
【0135】
定着剤としてはチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどがある。定着剤の使用量は適宜変えることができ、一般には約0.1〜約3モル/リットルである。
【0136】
定着液には硬膜剤として作用する水溶性アルミニウム塩を含んでもよく、それらには、例えば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリ明ばんなどがある。
定着液には、酒石酸、クエン酸、グルコン酸あるいはそれらの誘導体を単独であるいは2種以上用いることができる。これらの化合物は定着液1リットルにつき0.005モル以上含むものが有効で、特に0.01モル/リットル〜0.03モル/リットルが特に有効である。
【0137】
定着液には所望により保恒剤(例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩)、pH緩衝剤(例えば、酢酸、ホウ酸)、pH調整剤(例えば、硫酸)、硬水軟化能のあるキレート剤や特開昭62−78551号記載の化合物を含むことができる。
【0138】
定着液は市販のものを用いてもよく、例えば富士写真フイルム(株)製Fuji-F、CE-F1 、RF-10 、HiRen-Fix などが挙げられる。
【0139】
本発明における処理方法では、現像、定着工程の後、水洗水または安定化液で処理され、次いで乾燥される。
【0140】
感材処理用の自動現像機(自現機)としてはローラー搬送型、ベルト搬送型等種々の形式のものを用いることができるが、ローラー搬送型の自現機が好ましい。また特開平1−166040号や特願昭63−18631号記載のような開口率が小さい現像タンクの自現機を用いることにより、空気酸化や蒸発が少なくなり、処理環境に安定な稼働が可能になり、さらに補充液量を低減することができる。
【0141】
水洗水の補充液量を少なくする方法として、古くより多段向流方式(例えば2段、3段など)が知られている。この多段向流方式を適用すれば定着後の感光材料は徐々に清浄な方向、つまり定着液で汚れていない処理液の方に順次接触して処理されていくので、さらに効率の良い水洗がなされる。
【0142】
上記の節水処理または無配管処理には、水洗水または安定化液に防ばい手段を施すことが好ましい。
【0143】
防ばい手段としては、特開昭60−263939号に記された紫外線照射法、同60−263940号に記された磁場を用いる方法、同61−131632号に記されたイオン交換樹脂を用いて純水にする方法、特開昭61−115154号、同62−153952号、特願昭61−63030号、同61−51396号に記載の防菌剤を用いる方法を併用することができる。
【0144】
さらには、L.F.West, "Water Qulity Criteria" Photo.Sci.& Eng.,Vol.9, No.6(1965)、 M.W.Beach,"Microbiological Growths in Motion-picture Processing"SMPTE Journal Vol.85(1976) 、R.D.Deegan,"Photo Processing Wash Water Biocides" J.Imaging Tech.,Vol.10,No.6(1984) および特開昭57−8542号、同57−58143号、同58−105145号、同57−132146号、同58−18631号、同57−97530号、同57−157244号などに記載されている防菌剤、防ばい剤、界面活性剤などを併用することもできる。
【0145】
さらに、水洗浴または安定化浴には、R.T.Kreiman 著、J.Image.Tech.,10 (6)242 頁(1984)に記載されたイソチアゾリン系化合物、Research Disclosure 第205 巻、 No.20526(1981 年5 月号) 、掲載されたイソチアゾリン系化合物、同第228 巻、 No.22845(1983 年、4月号) に記載されたイソチアゾリン系化合物、特願昭61−51396号に記載された化合物などを防菌剤(Microbiocide)として併用することもできる。
【0146】
その他、「防菌防黴の化学」堀口博著、三井出版(昭和57)、「防菌防黴技術ハンドブック」日本防菌防ばい学会、博報堂(昭和61)に記載されているような化合物を含んでもよい。
【0147】
少量の水洗水で水洗するときには特開昭63−18350号に記載のスクイズローラー洗浄槽を設けることがより好ましい。また、特開昭63−143548号のような水洗工程の構成をとることが好ましい。
【0148】
さらに、水洗または安定化浴に防ばい手段を施した水を処理に応じて補充することによって生ずる水洗または安定化浴からのオーバーフローの一部または全部は特開昭60−235133号に記載されてるようにその前の処理工程である定着能を有する処理液に利用することもできる。
【0149】
本発明において「現像工程時間」または「現像時間」とは、処理する感光材料の先端が自現機の現像タンク液に浸漬してから次の定着液に浸漬するまでの時間、「定着時間」とは定着タンク液に浸漬してから次の水洗タンク液(安定液)に浸漬するまでの時間、「水洗時間」とは水洗タンク液に浸漬している時間をいう。
【0150】
また「乾燥時間」とは、通常自現機には、35℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃の熱風が吹きつけられる乾燥ゾーンや、150℃〜500℃の輻射物体で乾燥する乾燥ゾーン、あるいは90℃〜120℃の伝熱体で乾燥する乾燥ゾーンなどが設置されており、その乾燥ゾーンにはいっている時間をいう。なお、輻射物体や伝熱体の乾燥ゾーンについては特開平5−173279号、同4−159550号、同3−253855号等に記載されている。
【0151】
本発明における現像処理では、現像時間が5秒〜1分、好ましくは8秒〜30秒、その現像温度は18℃〜50℃が好ましく、20℃〜40℃がより好ましい。
【0152】
定着温度および時間は約18℃〜50℃で5秒〜1分が好ましく、20℃〜40℃で6秒〜30秒がより好ましい。この範囲内で十分な定着ができ、残色を生じない程度に増感色素を溶出させることができる。
【0153】
水洗(または安定浴)における温度および時間は0〜50℃で6秒〜1分が好ましく、15℃〜40℃で6秒〜30秒がより好ましい。
【0154】
現像、定着および水洗(または安定化)された感光材料は水洗水をしぼり切る、すなわちスクイズローラーを経て乾燥される。乾燥は約40℃〜約100℃で行われ、乾燥時間は周囲の状態によって適宜変えられるが、通常は約5秒〜1分でよく、特により好ましくは40〜80℃で約5秒〜30秒である。
【0155】
本発明の感材/処理システムで全処理時間(Dry to Dry)が100秒以下の迅速処理をするときには、迅速処理特有の現像ムラを防止するために特開昭63−151943号公報に記載されているようなゴム材質のローラを現像タンク出口のローラに適用することや、特開昭63−151944号公報に記載されているように現像タンク内の現像液攪拌のための吐出流速を10m/分以上にすることやさらには、特開昭63−264758号公報に記載されているように、少なくとも現像処理中は待機中より強い攪拌をすることがより好ましい。さらに迅速処理のためには、特に定着タンクのローラーの構成は、定着速度を速めるために、対向ローラーであることがより好ましい。対向ローラーで構成することによって、ローラーの本数を少なくでき、処理タンクを小さくできる。すなわち自現機をよりコンパクトにすることが可能となる。
【0156】
本発明の現像処理を行うのに適した自動現像機としては、富士写真フイルム(株)製FPM-9000、CEPROS-M2 、CEPROS-30 、CEPROS-S、FPM-800A、FL-IMDなどが挙げられる。
【0157】
本発明に用いるハロゲン化銀写真感光材料は、アスペクト比3.0以上の平板状ハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子の投影面積50%以上、好ましくは60%〜90%含有するハロゲン化銀乳剤層を少なくとも1層有するものである。このような乳剤層を設けることで高感度になる。これに対し上記の投影面積が50%未満となると感度が低下する。
【0158】
このようなハロゲン化銀写真感光材料としては、特に限定はないが、好ましくは、医療用の直接もしくは間接撮影用X−レイフィルム、医療用CRT画像用写真材料、工業用X−レイ写真材料、X−レイ用デュープ写真材料、グラフィックアーツの超硬調写真材料など白黒ハロゲン化銀写真材料が好ましい。それらについては、特開平5−232639号、特開昭63−136043号、特開平4−328737号、同4−107442号、同5−72679号、同7−77781号、同7−13306号、同7−84343号等に記載されている。
【0159】
本発明に用いるハロゲン化銀粒子のアスペクト比が3.0以上であるハロゲン化銀写真感光材料について説明する。このような平板状乳剤粒子と同一体積の球の直径は0.2μm 以上2.0μm 未満であることが好ましく、特に0.5μm 以上1.5μm 未満であることが好ましい。また粒子が粒子厚みの3倍以上の平板状粒子は本発明に対し好ましく用いられる。アスペクト比の上限は15であることが好ましい。詳しくは、RESEARCH DISCLOSURE 225巻、Item 22534 p.20〜p.58、1月号、1983年および特開昭58−127921号、同58−113926号公報に記載されている。平板状ハロゲン化銀粒子の製法としては当業界で知られた方法を適宜、組み合わせることにより成し得る。平板状ハロゲン化銀乳剤は特開昭58−127921号、特開昭58−113927号、特開昭58−11392号、米国特許第4439520号に記載された方法を参照すれば容易に調製できる。
【0160】
本発明の効果を有効に利用するためには、セレン増感剤としては、従来公知の特許に開示されているセレン化合物を用いることができる。本発明で用いられる非不安定型セレン化合物としては特公昭46−4553号、特公昭52−34492号および特公昭52−34491号に記載の化合物が用いられる。非不安定型セレン化合物としては例えば亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類、セレナゾール類の四級塩、ジアリールセレニド、ジアリールジセレニド、ジアルキルセレニド、ジアルキルジセレニド、2−セレナゾリジンジオン、2−セレノオキサゾリジンチオンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0161】
本発明で用いることができるハロゲン化銀溶剤としては、米国特許第3271157号、同第3531289号、同第3574628号、特開昭54−1019号、同54−158917号等に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号等に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号に記載された(d)イミダゾール類、(e)亜硫酸塩、(f)チオシアネート等が挙げられる。特に好ましい溶剤としては、チオシアネートおよびテトラメチルチオ尿素がある。また用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、例えばチオシアネートの場合、好ましい量はハロゲン化銀1モル当たり1×10-4モル以上1×10-2モル以下である。
【0162】
本発明に用いるハロゲン化銀写真乳剤は、化学増感において硫黄増感および/または金増感を併用することによりさらに高感度、低カブリを達成することができる。硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間撹拌することにより行われる。また、金増感は、通常、金増感剤を添加して、高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間撹拌することにより行われる。上記の硫黄増感には硫黄増感剤として公知のものを用いることができる。例えばチオ硫酸塩、チオ尿素類、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニンなどが挙げられる。その他、米国特許第1574944号、同第2410689号、同第2278947号、同第2728668号、同第350313号、同第3656955号各明細書、ドイツ特許1422869号、特公昭56−24937号、特開昭55−45016号公報等に記載されている硫黄増感剤も用いることができる。硫黄増感剤の添加量は、乳剤の感度を効果的に増大させるのに十分な量でよい。この量は、pH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で相当の範囲にわたって変化するが、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-7モル以上5×10-4モル以下が好ましい。
【0163】
上記の金増感の金増感剤としては金の酸化数が+1価でも+3価でもよく、金増感剤として通常用いられる金化合物を用いることができる。代表的な例としては塩化金酸塩、カリウムクロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールドなどが挙げられる。金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり1×10-7モル以上5×10-4モル以下が好ましい。
【0164】
本発明の効果を有効に利用するためには、特開平2−68539号のように乳剤調製工程中の化学増感の際に、ハロゲン化銀1モル当たり0.5ミリモル以上のハロゲン化銀吸着性物質を存在させることが好ましい。このハロゲン化銀吸着性物質は、粒子形成中、粒子形成直後、後熟開始前後時などいずれの時期に添加してもよいが、化学増感剤(例えば、金や硫黄増感剤)の添加されるより前、もしくは化学増感剤と同時に添加されることが好ましく、少なくとも化学増感が進行する過程で存在している必要がある。ハロゲン化銀吸着性物質の添加条件として、温度は30℃〜80℃の任意の温度でよいが、吸着性を強化する目的で、50℃〜80℃の範囲が好ましい。pH、pAg も任意でよいが、化学増感を行う時点ではpH5〜10、pAg 7〜9であることが好ましい。
【0165】
ここで、ハロゲン化銀吸着性物質とは増感色素、もしくは写真性能安定化剤の類を意味する。すなわちアゾール類{例えばベンゾチアゾリウム塩、ベンゾイミダゾリウム塩、イミダゾール類、ベンズイミダゾール類、ニトロインダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、テトラゾール類、トリアジン類など};メルカプト化合物{例えばメルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトイミダゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトベンゾオキサゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトオキサジアゾール類、メルカプトテトラゾール類、メルカプトピリミジン類、メルカプトトリアジン類など};例えばオキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類{例えばトリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類など);のようなカブリ防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物をハロゲン化銀吸着物質として挙げることができる。さらに、プリン類または核酸類、あるいは特公昭61−36213号、特開昭59−90844号、等に記載の高分子化合物、なども利用しうる吸着性物質である。
【0166】
ハロゲン化銀吸着性物質として、増感色素は、好ましい効果を実現しうる。増感色素として、シアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等を用いることができる。本発明に使用される有用な増感色素は例えば米国特許3522052 号、同3619197 号、同3713828 号、同3615643 号、同3615632 号、同3617293 号、同3628964 号、同3703377 号、同3666480 号、同3667960 号、同3679428 号、同3672897 号、同3769026 号、同3556800 号、同3615613 号、同3615638 号、同3615635 号、同3705809 号、同3632349 号、同3677765 号、同3770449 号、同3770440 号、同3769025 号、同3745014 号、同3713828 号、同3567458 号、同3625698 号、同2526632 号、同2503776 号、特開昭48-76525号、ベルギー特許第691807号などに記載されている。
【0167】
本発明における感光材料の写真乳剤層または他の親水性コロイド層には塗布助剤、帯電防止、スベリ性改良、乳化分散、接着防止および写真特性改良(例えば、現像促進、硬膜剤、増感)等種々の目的で、種々の界面活性剤を含んでもよい。
【0168】
本発明に用いる感光材料の乳剤層や中間層および表面保護層に用いることのできる結合剤または保護コロイドとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。例えばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等のような誘導体、アルギン酸ソーダ、デキストラン、澱粉誘導体などの糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは共重合体のような多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンや酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。これらの中でもゼラチンとともに平均分子量5万以下のデキストランやポリアクリルアミドを併用することが好ましい。特開昭63−68837号、同63−149641号に記載の方法は本発明でも有効である。
【0169】
本発明の写真乳剤および非感光性の親水性コロイドには無機または有機の硬膜剤を含有してよい。例えばクロム塩(クロム明ばん、酢酸クロムなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタールアルデヒドなど)、N−メチロール化合物(ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントインなど)、ジオキサン誘導体(2,3−ジヒドロキシジオキサンなど)、活性ビニル化合物(1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビス(ビニルスルホニル)メチルエーテル、N,N′−メチレンビス−〔β−(ビニルスルホニル)プロピオンアミド〕など、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジンなど)、ムコハロゲン酸類(ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸など)、イソオキサゾール類、ジアルデヒドでん粉、2−クロル−6−ヒドロキシトリアジニル化ゼラチンなどを、単独または組合せて用いることができる。なかでも、特開昭53−41221号、同53−57257号、同59−162546号、同60−80846号に記載の活性ビニル化合物および米国特許第3325287号に記載の活性ハロゲン化物が好ましい。
【0170】
本発明の写真感光材料中の親水性コロイド層はこれらの硬膜剤により水中での膨潤率が250%以下に硬膜されていることが好ましい。水中での膨潤率は凍結乾燥法により測定される。すなわち、写真材料を25℃60%RH条件下で7日経時した時点で親水性コロイド層の膨潤率を測定する。乾燥層厚(a)は切片の走査型電子顕微鏡により求める。膨潤膜層厚(b)は、写真材料を21℃の蒸留水に3分間浸漬した状態を液体窒素により凍結乾燥したのち走査型電子顕微鏡で観察することで求める。膨潤率は{(b)−(a)}の値を(a)で除して100倍した値(%)である。この場合の膨潤率の下限は130%である。そして好ましい膨潤率は150%〜230%である。膨潤率を130%〜250%とすることで高感度になる。膨潤率が130%未満となると感度が低くなり、膨潤率が250%をこえたものは乾燥性の観点から現実的でない。膜を傷つけてしまうからである。
【0171】
写真感光材料の乳剤層には圧力特性を改良するためポリマーや乳化物などの可塑剤を含有させることができる。例えば英国特許第738618号には異節環状化合物を同738637号にはアルキルフタレートを、同738639号にはアルキルエステルを、米国特許第2960404号には多価アルコールを、同3121060号にはカルボキシアルキルセルロースを、特開昭49−5017号にはパラフィンとカルボン酸塩を、特開昭53−28086号にはアルキルアクリレートと有機酸を用いる方法等が開示されている。本発明のハロゲン化銀写真感光材料の乳剤層のその他の構成については特に制限はなく、必要に応じて種々の添加剤を用いることができる。例えば、Research Disclosure 176巻22〜28頁(1978年12月)に記載されたバインダー、界面活性剤、その他の染料、塗布助剤、増粘剤、などを用いることができる。
【0172】
なお、両側に写真乳剤層を備えたハロゲン化銀写真感光材料においては、クロスオーバー光による画質の劣化が発生しやすいとの問題がある。このクロスオーバー光とは、感光材料の両側に配置されたそれぞれの増感スクリーンから放出され、感光材料の支持体(通常170〜180μm 程度の厚いものが用いられる)を透過して反対側の感光層に届く可視光で、画質(特に鮮鋭度)の低下をもたらす光である。
【0173】
クロスオーバーは少ない程、よりシャープな画像が得られる。クロスオーバーを減少させる方法は種々あるが、最も好ましい方法は、支持体と感光層との間に、現像処理により、脱色可能な染料を固定化することである。米国特許第4803150号で教示している、微結晶状の染料を用いると、固定化が良いことと、脱色性も良く、多量の染料を含ませることができ、クロスオーバーを減少させるのに非常に好ましい。この方法によると、固定化不良による減感もなく、また迅速処理での染料の脱色も可能でクロスオーバーを15%以下にできる。
【0174】
更に好ましい、クロスオーバー減少のための染料層は、可能な限り高密度に染料を配置したものが良い。バインダーとして用いるゼラチン塗布量を減らし、染料層の膜厚として0.5μ以下にすることが好ましい。しかしながら極端な薄層化は密着不良が生じ易くなり、最も好ましい染料層の膜厚は0.05μm 〜0.3μm である。
【0175】
塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、沃臭化銀または塩沃臭化銀乳剤等の乳剤はP. Glafkides(グラフキデ)著の「写真の化学と物理」(ポール・モンテル社、1967年)、G. F. Duffin(ダフィン)著の「写真乳剤の化学」(フォーカル・プレス社、1966年)、V. L. Zelikman(ツエリックマン)等著の「写真乳剤の調製と塗布」(フォーカル・プレス社、1964年)等に記載された方法を応用して調製することができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよいが、特に酸性法、中性法は本発明においてカブリを少なくする点で好ましい。また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させてハロゲン化銀乳剤を得るのにいわゆる片側混合法、同時混合法またはそれらの組み合わせのいずれを用いてもよい。粒子を銀イオン過剰の条件下において形成させるいわゆる逆混合法を用いることもできる。本発明に好ましい単分散粒子の乳剤を得るには同時混合法を用いることが好ましい。同時混合法の一つの形式として、ハロゲン化銀の生成する液相中の銀イオン濃度を一定に保つ方法、すなわちいわゆるコントロールド・ダブル・ジェット法を用いることはさらに好ましい。この方法を用いると、ハロゲン化銀結晶形状が規則的で粒子サイズ分布が狭いハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
【0176】
高塩化銀粒子を形成させるには、特開平2−32号、同3−137632号、同4−6546号、同5−127279号、同5−53231号等に記載のビスピリジニウム化合物を用いる方法や、特開昭62−293536号、特開平1−155332号、特開昭63−2043号、同63−25643号、米国特許第4400463号、同5061617号等に記載の方法を好ましく用いることができる。
【0177】
このようなハロゲン化銀の粒子形成または物理熟成の過程において、カドミウム塩、亜鉛塩、鉛塩、タリウム塩、あるいは前述のようなイリジウム塩またはその錯塩、ロジウム塩またはその錯塩、鉄塩またはその錯塩を共存させてもよい。
【0178】
粒子形成時または形成後に、ハロゲン化銀溶剤(例えば、公知のものとして、アンモニア、チオシアン酸塩、米国特許第3271157号、特開昭51−12360号、特開昭53−82408号、特開昭53−144319号、特開昭54−100717号あるいは特開昭54−155828号等に記載のチオエーテル類およびチオン化合物)を用いてもよく、前述の方法と併用すると、ハロゲン化銀結晶形状が規則的で粒子サイズ分布が狭いハロゲン化銀乳剤を得ることができる。
【0179】
白黒写真感光材料には、親水性コロイド層にフィルター染料として、あるいはイラジエーション防止その他種々の目的で水溶性染料を含有していてもよい。このような染料には、オキソノール染料、ヘミオキソノール染料、スチリン染料、メロシアニン染料、シアニン染料およびアゾ染料が包含される。なかでもオキソノール染料、ヘミオキソノール染料およびメロシアニン染料が有用である。
【0180】
写真感光材料の支持体としては、150〜250μm の厚さを有している必要がある。これは医療用シャーカステン上で観察する際の取扱い性の点で必須である。また、材質としてはポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に青色に着色していることが好ましい。
【0181】
支持体は親水コロイド層との密着力を向上させるために、その表面をコロナ放電処理、あるいはグロー放電処理あるいは紫外線照射処理する方法が好ましい。あるいは、スチレンブタジエン系ラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス等からなる下塗層を設けてもよく、またその上層にゼラチン層を更に設けてもよい。
【0182】
また、ポリエチレン膨潤剤とゼラチンを含む有機溶剤を用いた下塗層を設けてもよい。
【0183】
これらの下塗層は表面処理を加えることで更に親水コロイド層との密着力を向上することもできる。
【0184】
本発明の写真感光材料に用いられる各種添加剤等については以下の該当箇所に記載のものを用いることができる。
【0185】
【0186】
本発明の好ましい実施の形態は前記したものも含め以下のとおりである。
1. 請求項1に用いられる現像液が1液濃縮液である現像剤。
2. 請求項1に用いられる現像液中の全カチオンのうちカリウムイオンが80モル%以上(通常98モル%以下)である現像剤。
3. 写真感光材料の両側に塗布された銀量が1m2当たり3.5g以下(通常0.1g 以上)であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる請求項1の現像方法。
4. ハロゲン化銀粒子の塩化銀が10〜100モル%、臭化銀が10〜100モル%、沃化銀が0〜5モル%であるハロゲン化銀写真感光材料を用いる請求項1の現像方法。
5. 全処理時間(Dry to Dry) が20秒〜100秒である請求項1の現像方法。
6. 自動現像機の乾燥部に赤外線乾燥手段を有する自動現像機を用いて処理する請求項1の現像方法。
7. 自動現像機にケミカルミキサーを内蔵する際、現像液と定着液のカートリッジが同時に使い終わる機構を有する自動現像機を用いた請求項1の現像方法。
8. 自動現像機の現像タンクの開口率が0.04cm-1以下(0cm-1以上)である請求項1の現像方法。
9. 現像濃縮液と定着濃縮液が1パートから成り各濃縮液と水とが各タンク内で使用液に希釈されて、補充液として供給される(直前混合希釈方式)処理方法。
10. 現像濃縮液と定着濃縮液の容器が一体型包材である処理方法。
11. 現像槽と定着槽間および定着槽と水洗槽間にリンス槽およびリンスローラー(クロスオーバーローラー)を設置した自動現像機を用いる処理方法。
12. 各種水アカ防止剤(防菌剤)が水洗槽およびリンス槽に供給される水のストック槽が設置された自動現像機を用いる処理方法。
13. 水洗槽の排水口に電磁弁が設置された自動現像機を用いる処理方法。
14. 粉体である現像剤から調液される請求項1の現像方法。
15. 現像剤と定着剤が使用液型である処理方法。
16. 自動現像機の水洗槽が多室槽および多段向流水洗方式の槽を有する処理方法。
17. 酸素透過性が50ml/m2・atm・day(20℃65%RH)以下[0ml/m2・atm・day 以上]である容器に請求項1の液体現像剤を保存して処理する方法。
【0187】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の実施例はこれに限定されるものではない。
【0188】
【0189】
パートA300mlとパートB60mlとパートC60mlとを混合し、さらに水を加えて1リットルとしてpH=10.20に合わせたものを現像補充液No. 1とする。現像補充液No. 1に化合物C−(4)を1ミリモル/リットル加えたものを現像補充液No. 2とする。同様に現像補充液No. 1に本発明の化合物C−(23)を1ミリモル/リットル加えたものを現像補充液No. 3とする。同様に現像補充液No. 1に本発明の化合物C−(36)を1ミリモル/リットル加えたものを現像補充液No. 4とする。現像補充液No.1に化合物C−(77)を1ミリモル/リットル加えたものを現像補充液No.5とする。現像補充液No.1に化合物C−(79)を1ミリモル/リットル加えたものを現像補充液No.6とする。現像補充液No.1に化合物C−(114)を1ミリモル/リットル加えたものを現像補充液No.7とする。現像補充液No.1、No.2、No.3、No.4、No.5、No.6、No.7に対してスターターとして1リットル当たり臭化カリウム6.0g 、酢酸5.0g を加えたものをそれぞれ現像母液No.1、No.2、No.3、No.4、No.5、No.6、No.7とした。
【0190】
現像母液No. 1と現像補充液No. 1のような表1に示す組み合わせで、以下に示すような感光材料A〜Dに対し富士Medical Film Processor CEPROS-M2を用いて1日当たりフィルムを10m2処理し各現像補充液を150ml/m2 の割合で補充しながら2ケ月ランニングテストを行った。なお、定着液としては富士写真フイルム(株)製CE−F1を用いた。このとき現像は温度35℃で13.4秒行い、トータルの処理時間(dry to dry)は45秒とした。得られた結果を表1に示す。
【0191】
感光材料A:アスペクト比3.0以上の平板状ハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子の投影面積の80%含有する(表中には「平板状粒子の占める割合」で示す。)ハロゲン化銀乳剤層を有し、膨潤率が180%であるもの。
【0192】
感光材料B:感光材料Aの上記のように平板状ハロゲン化銀粒子を含有するハロゲン化銀乳剤層をアスペクト比3.0以上の平板状ハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子の投影面積の40%含有するハロゲン化銀乳剤層にかえ、膨潤率を感光材料Aと同様に180%としたもの。
【0193】
感光材料C:感光材料Aにおいて、このものと同様に、アスペクト比3.0以上の平板状ハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子の投影面積の80%含有するハロゲン化銀乳剤層を有し、膨潤率を100%にかえたもの。
【0194】
感光材料D:感光材料Aにおいて、膨潤率を280%にかえたもの。
【0195】
上記の感光材料A、B、C、Dは平板状ハロゲン化銀粒子の製法として当業界で知られた方法(特開昭58−127921号、同58−113927号、同58−11392号、米国特許第4439520号)を適宜組み合わせて調製したハロゲン化銀乳剤を用い、硬膜剤の量を調節することにより膨潤率を調整して作成したものである。
【0196】
なお、表中の感度は現像母液No. 1で黒化濃度1.0を得るに必要な露光量の逆数を100として相対値で示した。銀汚れは2ケ月のランニングにより処理済フィルムおよび自動現像機の現像タンクを目視で評価した。この場合「1」はフィルム上に銀汚れが一部分付着して故障に相当するもの、「3」はフィルム上の銀汚れはないが、自動現像機の現像タンクの底壁ラック等に銀汚れがあり、さらに長期間ランニングするとフィルム上に銀汚れの故障を起こすおそれがあり、この時点で現像タンクおよびラックを洗浄する必要があるもの、「5」は現像タンクの底壁ラックの銀汚れが全くなく、自動現像機現像タンク、ラック等の洗浄が不要でこのまま継続可能なものとし、「1」と「3」との中間にあるものを「2」、「3」と「5」との中間にあるものを「4」として5段階にて目視評価した。
【0197】
【表1】
【0198】
表1中、化合物(8)は、一般式(8a)、一般式(8b)および一般式(8c)で表される化合物を示している(後述する表2についても同じ)。表1の結果が示すように、実験番号1に対して本発明の現像方法である実験番号5、6、7の場合には銀汚れを著しく改良している。また感光材料Aは高感度のものであるが、感度の低下もなく処理性能上の問題もない。これに対し、乳剤層におけるアスペクト比3.0以上の平板状ハロゲン化銀粒子の割合が40%の感光材料Bや膨潤率が100%の感光材料Cは感光材料Aに比べ感度が低く、性能の劣るものである。感光材料Dは感度が高いものの銀汚れが改良されない。
【0199】
また、感光材料Bに比べて感光材料Aにおける銀汚れの改良効果が著しいことがわかる。
【0200】
実施例2
乳剤E:{100}を主平面とする(以下に、単に{100}ということあり。)高塩化銀平板状粒子乳剤の調製
反応容器にゼラチン水溶液1582ml(ゼラチン−1:メチオニン含率が約40μモル/gの脱イオン化アルカリ処理骨ゼラチン)19.5g 、HNO3 lN液7.8mlを含む水溶液。pH4.3)、NaCl−1液(水100ml中にNaCl 10g を含む)を13ml入れ、温度を40℃に保ちながら、Ag−1液(水100ml中にAgNO3 20g を含む)とX−1液(水100ml中にNaCl 7.05g を含む)を62.4ml/分で15.6mlずつ同時混合添加した。3分間攪拌した後、Ag−2液(水100ml中にAgNO3 2g を含む)とX−2液(水100ml中にKBr 1.4g を含む)を80.6ml/分で28.2mlずつ同時混合した。3分間攪拌した後、Ag−1液とX−1液を62.4ml/分で46.8mlずつ同時混合添加した。2分間攪拌した後、ゼラチン水溶液203ml(ゼラチン−1 13g 、NaCl 1.3g 、pH6.5にするためのNaOH 1N液を含む水溶液)を加え、pClを1.75とした後、温度を63℃に昇温し、その後、過酸化水素水をゼラチン1g に対し6×10-4モル添加し、pClを1.70に合わせ、3分間熟成した。その後、AgCl微粒子乳剤(平均粒子直径0.1μm )をAgCl 2.68×10-2モル/分の添加速度で20分添加した。添加終了後40分間熟成した後、下記沈降剤−1を加え、温度を35℃に下げ、沈降水洗した。アルカリ処理ゼラチン水溶液を加え、60℃でpH6.0に調節した。得られた粒子のレプリカのTEM像を観察した。得られた粒子は、銀を基準としてAgBrを0.44モル%含む塩臭化銀{100}平板状粒子であった。
【0201】
【化41】
【0202】
得られた粒子の形状特性値は、以下のとおりである。
【0203】
(アスペクト比3.0以上の{100}平板状粒子の全投影面積/全ハロゲン化銀粒子の投影面積和)×100=al=93%
(アスペクト比3.0以上の{100}平板状粒子の平均アスペクト比(平均直径/平均厚さ))=a2=14.0
(アスペクト比3.0以上の{100}平板状粒子の全投影面積直径)=a3=1.40μm
(アスペクト比3.0以上の{100}平板状粒子の主面縁長比)=a4=0.90
(アスペクト比3.0以上の{100}平板状粒子の厚さ)=a5=0.10μm
(アスペクト比3.0以上の{100}平板状粒子の厚さ分布の変動係数(厚さの標準偏差/平均厚さ)=a6=0.11
(アスペクト比3.0以上の{100}平板状粒子で粒子のコーナー部より伸びる2本の転位線が、透過型電子顕微鏡にて観察できる粒子の投影面積和/アスペクト比3.0以上の{100}平板状粒子で粒子の投影面積和)×100=a7=85%
(2本の転位線のなす角の平均角度)=a8=56°
また、この平板状粒子を直接TEM像で観察したところ塗布後の乳剤でも、投影面積の57%の粒子に前記転位線を観察することができた。
【0204】
比較乳剤Fの調製
本発明の乳剤Eで、AgCl微粒子乳剤を添加する代わりにAg−3液(100ml中にAgNO350g を含む)とX−3液(100ml中にNaCl 17.6g を含む)をpClを1.4に保ちながら、C.D.J(controlled double jet)でAg−3液の添加量が182mlとなるまで20分間一定流量で添加した。この方法によりアスペクト比が3.0以上の平板状粒子の割合が40%の比較乳剤Fを作成した。
【0205】
化学増感
以上のように調製した粒子を攪拌しながら56℃に保った状態で化学増感を施した。まず、チオスルホン酸化合物−1をハロゲン化銀1モル当たり1×10-4モル添加し、次に平均粒子直径0.10μm のAgBr微粒子を全銀量に対して1.0モル%添加し、5分後、1重量%のKI溶液をハロゲン化銀1モル当たり1×10-3モル添加し、さらに3分後、二酸化チオ尿素を1×10-6モル/モルAg添加し、22分間そのまま保持して還元増感を施した。次に4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデンを3×10-4モル/モルAgと下記増感色素−1、2、3を下記量それぞれ添加した。さらに塩化カルシウムを1×10-2モル/モルAg添加した。さらに塩化金酸1×10-5モル/モルAgおよびチオシアン酸カリウム3.0×10-3モル/モルAgを添加し、引き続きチオ硫酸ナトリウム(6×10-6モル/モルAg)および下記セレン化合物−1(4×10-6モル/モルAg)を添加した。さらに3分後に核酸(0.5g /モルAg)を添加した。40分後に下記水溶性メルカプト化合物−1を添加し、35℃に冷却した。こうして乳剤の調製(化学熟成)を終了した。
【0206】
【化42】
【0207】
(乳剤層塗布液の調製)
化学増感を施した上記乳剤に対してハロゲン化銀1モル当たり下記の薬品を添加して乳剤塗布液とした。
【0208】
・ゼラチン(乳剤中のゼラチンも含めて) 50.0g
・デキストラン(平均分子量3.9万) 10.0g
・ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量40万) 5.1g
・ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(平均分子量60万) 1.2g
・沃化カリウム 78mg
・硬膜剤 1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン
(膨潤率が表2の値となるように添加量を調整)
・化合物(A−1) 42.1mg
・化合物(A−2) 10.3g
・化合物(A−3) 0.11g
・化合物(A−4) 8.5mg
・化合物(A−5) 0.43g
・化合物(A−6) 0.04g
・化合物(A−7) 70g
・染料乳化物a(染料固形分として) 0.50g
・染料乳化物m(染料固形分として) 30mg
(NaOHでpH6.1に調整)
上記における化合物(A−1)〜(A−7)は以下に示すものである。
【0209】
【化43】
【0210】
また、ここで用いた染料乳化物a、mは以下のように調製したものである。
【0211】
(染料化合物aの調製)
下記染料−1を60g および2,4−ジアミルフェノールを62.8g 、ジシクロヘキシルフタレートを62.8g および酢酸エチル333g を60℃で溶解した。次にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5重量%水溶液65mlとゼラチン94g 、水581mlを添加し、ディソルバーにて60℃で30分間乳化分散した。次にp−ヒドロキシ安息香酸メチルを2g および水6リットルを加え、40℃に降温した。次に旭化成製限外濾過ラボモジュールACP1050を用いて、全量が2kgとなるまで濃縮し、p−ヒドロキシ安息香酸メチルを1g 加えて染料乳化物aとした。
【0212】
【化44】
【0213】
(染料乳化物mの調製)
下記染料−2を10g 秤取し、トリクレジルフォスフェート10mlと、酢酸エチル20mlから成る溶媒に溶解した後、アニオン界面活性剤−1 750mgを含む15重量%ゼラチン水溶液100ml中に乳化分散することにより、染料乳化物mを調製した。
【0214】
【化45】
【0215】
(染料層塗布液の調製)
染料層各成分が、下記の塗布量となるように塗布液を調製した。
【0216】
・ゼラチン 0.25g/m2
・化合物(A−8) 1.4mg/m2
・ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(平均分子量60万)5.9mg/m2
・染料分散物i(染料固形分として) 20mg/m2
上記における化合物(A−8)は以下に示すものである。
【0217】
【化46】
【0218】
また染料分散物iは以下のようにして調製した。
【0219】
(染料分散物iの調製)
下記染料−3を乾燥させないでウェットケーキとして取り扱い、乾燥固形分で6.3g になるように秤量した。下記分散助剤Vは、25重量%の水溶液として扱い、乾燥固形分で染料固形分に対し30重量%になるように添加した。水を加えて全量を63.3g とし、よく混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニア製ビーズを100ml用意し、スラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/16Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて6時間分散し、染料濃度が8重量%となるように水を加えて染料分散液を得た。
【0220】
得られた分散物は、染料固形分が5重量%、写真用ゼラチンが染料固形分と等重量%となるように混合し、防腐剤として下記添加剤Dがゼラチンに対して2000ppmとなるように蒸留水を添加して冷蔵し、ゼリー状にて保存した。
【0221】
このようにして915nmに光吸収極大をもつ非溶出性の固体微粒子分散状の染料として染料分散物iを得た。
【0222】
染料分散物iの固体微粒子の平均粒子径は0.4μm であった。
【0223】
【化47】
【0224】
【化48】
【0225】
(表面保護層塗布液の調製)
表面保護層塗布液を、各成分が下記の塗布量となるように調製した。
【0226】
・ゼラチン 0.780g/m2
・ポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量40万) 0.025g/m2
・ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(平均分子量60万) 0.0012g/m2
・マット剤−1(平均粒径3.7μm ) 0.072g/m2
・マット剤−2(平均粒径0.7μm ) 0.010g/m2
・化合物(A−9) 0.018g/m2
・化合物(A−10) 0.037g/m2
・化合物(A−11) 0.0068g/m2
・化合物(A−12) 0.0032g/m2
・化合物(A−13) 0.0012g/m2
・化合物(A−14) 0.0022g/m2
・化合物(A−15) 0.030g/m2
・プロキセル(ICI社製) 0.0010g/m2
(NaOHでpH6.8に調整)
上記において用いたマット剤−1、−2、化合物(A−9)〜(A−15)は以下に示すものである。
【0227】
【化49】
【0228】
【化50】
【0229】
(支持体の調製)
(1)下塗層用染料分散物Bの調製
下記染料−4を特開昭63−197943号に記載の方法でボールミル処理した。
【0230】
【化51】
【0231】
水434mlおよびTriton X200(登録商標)界面活性剤(TX−200(登録商標))の6.7%水溶液791mlとを2リットルのボールミルに入れた。染料−4 20g をこの溶液に添加した。酸化ジルコニウム(ZrO2)のビーズ400ml(2mm径)を添加し、内容物を4日間粉砕した。この後、12.5%ゼラチン160g を添加した。脱泡した後、濾過によりZrO2ビーズを除去した。得られた染料分散物を観察したところ、粉砕された染料の粒径は0.05〜1.15μm にかけての広い分布を有していて、平均粒径は0.37μm であった。さらに、遠心分離操作を行うことで0.9μm 以上の大きさの染料粒子を除去した。こうして染料分散物Bを得た。
【0232】
(2)支持体の調製
二軸延伸された厚さ175μm のポリエチレンテレフタレートフィルム上にコロナ放電を行い、下記の組成より成る第1下塗液を塗布量が4.9ml/m2となるようにワイヤーコンバーターにより塗布し、185℃にて1分間乾燥し第1下塗層を設けた。
【0233】
次に反対面にも同様にして第1下塗層を設けた。使用したポリエチレンテレフタレートには染料−1(前記)が0.04重量%含有されているものを用いた。
【0234】
(第1下塗液)
・ブタジエン−スチレン共重合体ラテックス溶液
(固形分40%。ブタジエン/スチレン重量比=31/69) 158ml
・2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩4重量%溶液 41ml
・蒸留水 801ml
*ラテックス溶液中には、乳化分散剤として下記化合物(A−16)をラテックス固形分に対し0.4wt% 含有
【0235】
【化52】
【0236】
(3)下塗層の塗布
上記の両面の第1下塗層上に下記の組成からなる第2下塗層を塗布量が下記に記載の量となるように片側ずつ、両面にワイヤー・バーコーダー方式により塗布し、155℃で乾燥した。
【0237】
・ゼラチン 80mg/m2
・染料分散物B(染料固形分として) 50mg/m2
・化合物(A−17) 1.8g/m2
・化合物(A−18) 0.27mg/m2
・マット剤 平均粒径2.5μm ポリメチルメタクリレート 2.5mg/m2
上記における化合物(A−17)、(A−18)は以下に示すものである。
【0238】
【化53】
【0239】
(感光材料の調製)
前述のように準備した支持体上に先の染料層、乳剤層と表面保護層とを組み合わせ同時押し出し法により両面に塗布し、乾燥した。片面当たりの塗布銀量は1.4g/m2、片面当たりの全塗布ゼラチン量は1.8g/m2とした。このようにして、表2に示す平板状粒子の占める割合と膨潤率との組み合わせで、感光材料E、F、Gを得た。
【0240】
(現像液の調製)
下記処方のエリソルビン酸ナトリウムを現像主薬とする現像液を調製した。
【0241】
【0242】
【化54】
【0243】
水を加えて2リットルとする。
【0244】
水酸化ナトリウムでpH10.1に調整する。
【0245】
(現像補充液の調製)
上記現像液をそのまま、現像補充液として使用した。これを補充液No. 11とした。
【0246】
(現像母液の調製)
上記現像液2リットルをとり、下記組成のスターター液を現像液1リットル当たり20ml添加し、pH9.6の現像液を現像母液とした。これを母液No. 11とした。
【0247】
(スターター液の調製)
臭化カリウム 2.0g
酢酸 9.0g
水を加えて20mlとする。
【0248】
母液、補充液No. 11において、表2に示すように一般式(8a)、一般式(8b)または一般式(8c)で表される化合物であるC−(77)、C−(79)、C−(114)を各々1ミリモル/リットル加えた母液、補充液No. 12、13、14を調製した。
【0249】
(濃縮定着液の調製)
以下の処方の濃縮定着液を調製した。
【0250】
水 0.5リットル
エチレンジアミン 4酢酸・2ナトリウム・2水塩 0.05g
チオ硫酸ナトリウム 200g
重亜硫酸ナトリウム 30.0g
酢酸 90.0g
水酸化ナトリウム 10.0g
NaOHでpH5.0に調整し、水を加えて1リットルとする。
【0251】
(定着補充液の調製)
上記濃縮定着液を第1水洗水廃液で2倍希釈し、定着補充液として使用した。
【0252】
(定着母液の調製)
上記濃縮定着液2リットルを水で希釈し4リットルとした。
【0253】
(水洗水補充液)
グルタルアルデヒド 0.3g
ジエチレン−トリアミン−ペンタ−アセティック−アシッド 0.5g
蒸留水にて希釈し、かつNaOHでpH6.0に調整し、完成液1リットルを得た。
【0254】
(写真材料の処理工程)
富士写真フイルム(株)製CEPROS−Sを改造し、水洗槽を2段向流水洗として、第2水洗層に水洗水補充を行った。また、現像槽、定着槽の開口率は、0.02cm-1に改良した。水洗槽の容量は、いずれも6リットルである。また、乾燥は、ヒートローラー方式(ローラー表面温度85℃)を用いた。
【0255】
上記現像母液および定着母液、水洗水補充液を用いて、現像補充液および定着補充液、水洗水補充液をいずれも感光材料1m2当たり100ml補充しながら処理した。
【0256】
工 程 温 度 処理時間
現 像 35℃ 8秒
定 着 35℃ 7秒
水 洗 第1 30℃ 5秒
水 洗 第2 25℃ 5秒
乾 燥 3秒
合 計 28秒
【0257】
1日当たり10m2の感光材料を処理しながら2カ月間ランニング処理を行った。得られた結果を表2に示す。
【0258】
表2の中で感度は現像母液No. 12で黒化濃度1.0を得るのに必要な露光量の逆数を100として相対値で示した。銀汚れの評価は実施例1、表1の場合と同様に「1」〜「5」として5段階にて目視評価した。
【0259】
【表2】
【0260】
表2の結果が示すように実験番号12に対して本発明の現像方法である実験番号13、14、15の場合には感度が高くかつ銀汚れを著しく改良している。乳剤層におけるアスペクト比3.0以上の平板状ハロゲン化銀粒子の割合が40%の感光材料Fや膨張率が70%の感光材料Gでは感度が低く性能が劣るものである。銀汚れの改良効果は感光材料Fに比べて感光材料Eの方が著しい。
【0261】
【発明の効果】
本発明によれば、低補充量とした長期ランニングにおいても高感度で安定であり、かつ銀汚れを著しく少なくすることができる。
Claims (3)
- アスペクト比3.0以上の平板状ハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子の投影面積の50%以上含有するハロゲン化銀乳剤層を少なくとも1層有し、膨潤率が130%〜250%であるハロゲン化銀写真感光材料を、アスコルビン酸またはその誘導体を現像主薬として含有し、さらに下記一般式(8a)、一般式(8b)および一般式(8c)で表される化合物の少なくとも1種を含有する現像液で処理することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の現像方法。
- 前記一般式(8a)および一般式(8b)で表される化合物の少なくとも1種を含有する請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像方法。
- ハロゲン化銀写真感光材料1m2当たりの現像液の補充液量が200ml以下である請求項1または2のハロゲン化銀写真感光材料の現像方法。
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