JP3755985B2 - 軸締結具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は軸締結具、特に、軸を挿入させる筒部に外嵌する締め付けリングを軸線方向に締め付けることにより、前記筒部と軸とをトルク伝達状態に固着する軸締結具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種軸締結具として、すでに、特開昭61−112823号に開示される軸継手を提案した。
この軸継手は、図7に示すように、伝動すべき2軸(D)(D)を直列状態に連結する為の軸継手で、外周面がテーパ面となった筒部(11)(11)を軸線方向の両端に具備させた筒状部材と、前記筒状部材の前記筒部(11)(11)の中間部にて連結一体化された外筒体(1) と、前記外筒体(1) の両端と前記筒部(11)との間の環状空所(13)に収容される締め付けリング(2)(2)と、これら締め付けリング(2)(2)を軸線方向に締め付ける複数の締め付けボルト(3)(3)とからなる。なお、締め付けリング(2) (2) の分解のために前記締め付けリング(2) (2) に螺合して環状空所(13)の底壁に対向する分解用ボルト(4) (4) が設けられている。
【0003】
この先行技術のものでは、少なくとも前記筒部(11)の外周面が先端に向かって直径が縮小するテーパ面(12)となっており、前記環状空所(13)内に収容される前記締め付けリング(2) が前記テーパ面(12)にテーパ嵌合状態に外嵌し、締め付けボルト(3)(3)によって両側の締め付けリング(2)(2)が軸線方向に締め付けられることにより、前記筒部(11)(11)がこれらに挿入される軸(D)(D)に加圧される。一方、締め付けリング(2) が軸線方向に押し込まれることから、これにより締め付けリング(2) 自体の直径が拡大する傾向となり、締め付けリング(2)(2)の外周面が外筒体(1) の両側の内周面に押し付けられる。そして、筒部(11)から締め付けリング(2) を経て前記筒部(11)と一体的に結合された外筒体(1) を介してもトルクが伝達される。従って、外筒体(1) のないものに比べて大きなトルクを伝達できる。
【0004】
ところが、このような軸締結具では、前記筒部(11)を所定の精度で形成するには、筒状部材の端面に環状空所(13)を十分な精度で切削形成する必要があるが、筒状部材の端面に環状空所(13)を切削加工によって形成することが困難である。例えば、前記軸(D) を挿通させる為の穴と前記筒部(11)との同心精度を確保することは困難である。また、前記筒部(11)が前記筒状部材と一体になっているから、締め付けボルト(3) (3) により、締め付けリング(2) を環状空所(13)に押し込むように締め付けたとき、前記筒部(11)が前記締め付けリング(2) とのテーパ嵌合作用による直径を縮小させようとする傾向に対して抵抗が大きい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、『被締結体には軸(D) を挿通させる筒部(11)の外周に前記筒部(11)と同軸の環状空所が設けられ、前記環状空所内に前記筒部(11)に外嵌する締め付けリング(2) が挿入され、軸線方向の押し込み手段によって前記締め付けリング(2) が前記環状空所内に圧入されることにより前記筒部(11)が前記軸(D) をトルク伝達状態に締め付ける軸締結具』において、前記環状空所の形成を容易にすると共に、締め付け状態にある締め付けリング(2) から付与される筒部(11)の軸締め付け力が大きくなるようにすることをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決するために講じた本発明の解決手段は『前記被締結体の前記環状空所における内周側の前記筒部(11)を前記被締結体とは別体の部材とし、
前記筒部 (11) は外周面がテーパ面であるテーパ筒部とこれの最大径部に続いて平行筒部が連続する構成であり、前記平行筒部が前記被締結体の環状空所の底壁に続き且軸挿通孔に続く平行孔部 (161) に圧入されている』ことである。
上記解決手段はつぎのように作用する。
【0007】
上記解決手段において前記締め付けリング(2) は前記環状空所内に押し込まれることから、このとき前記締め付けリング(2) による前記筒部(11)の締め付け力が生じることとなり、前記軸(D) をトルク伝達状態に締め付ける。このとき、前記筒部(11)は被締結体とは別体に形成されているから、両者が一体的に結合されている場合に比べて、前記締め付けリング(2) による前記筒部(11)の締め付け力が効果的に軸締付け力に変換される。
【0008】
また、筒部(11)が別体であるから、環状空所を形成するに際しては、前記筒部(11)の無い態様の孔部を形成した後、この孔部に前記筒部(11)を組付けることで環状空所が形成されるから、従来のように、筒状部材等の被締結体の端面から突切りバイトによる加工のような面倒な加工が不要になる。
例えば、予め形成された軸挿通用の孔部を所定の度合い拡大するように切削加工したあと、これに筒部(11)を組み込むことで環状空所が形成される。
また、前記筒部 (11) は外周面がテーパ面であるテーパ筒部とこれの最大径部に続いて平行筒部が連続する構成であり、前記平行筒部が前記被締結体の環状空所の底壁に続き且軸挿通孔に続く平行孔部 (161) に圧入されているので、前記筒部 (11) の被締結体に対する同軸性が確保され易い。
【0009】
【発明の効果】
本発明は次の特有の効果を有する。
筒部(11)が被締結体とは別体に形成されているから、締め付けリング(2) による筒部(11)の変形能が、被締結体と一体の従来のものに比べて大きく、筒部(11)による最終締め付け状態での軸締付け力が前記従来のものよりも大きくなる。
【0010】
また、予め形成された軸挿通用の孔部に連続するように所定の形状の孔部を形成した後、これに筒部(11)を組み込むことで環状空所が形成されるから、この環状空所の形成が容易である。
また、筒部(11)と環状空所の同心性が確保され易い。
[その他]
*a項
上記した課題解決手段において、『締め付けリング (2) は、外周面もテーパ面であり、前記環状空所の外周壁には、前記締め付けリング (2) の外周面に形成されたテーパ面に一致するテーパのテーパ面が形成されている』ものの場合、筒部 (11) が被締結体と一体のものに比べて、前記同軸性、同心性が確保し易い。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示す実施の形態1は、従来の軸継手と同様の軸締結具に関するものであり、筒状の主体の両側に環状空所(13)(13)が形成され、これら環状空所(13)(13)の内周側が前記筒部(11)となっている。そして、前記筒部(11)の外周面が両端側に向かって直径が縮小するテーパ面(12)となっている。この例では、前記環状空所(13)に於ける外側の内周壁もテーパ面(14)となっている。前記環状空所(13)に収容される締め付けリング(2)(2)の内周面は前記テーパ面(12)に一致したテーパ面となり、外周面は前記テーパ面(14)に一致したテーパ面となっており、前記テーパ面(14)のテーパ値は前記テーパ面(12)のテーパ値よりも小さく設定されている。
【0012】
そして、締め付けボルト(3) (3) を締め付けない状態では、同図のように締め付けリング(2) の外周面と前記テーパ面(14)との間に間隙(G) が生じ、前記締め付けボルト(3)(3)の締め付けによって前記締め付けリング(2) が最終位置に押し込められると、前記外周面が前記テーパ面に密着するように、前記テーパ面(12)、(14)のテーパ値、及び前記間隙(G) 等が所定の値に設定されている。
【0013】
前記締め付けリング(2) の夫々には、図3に示すようにスリット部が形成され、この例では、前記締め付けリング(2) の半径方向の幅及び軸線方向の幅全域にわたって開削された完全分離部(S0)となっている。従って、この締め付けリング(2) は、前記完全分離部(S0)に於ける周方向の間隔が変化する態様で弾性変形可能であり、この締め付けリング(2) が外嵌する筒部(11)のテーパ面(12)に対して締め付けリング(2) の内周面の直径が小さ目に設定された場合でも前記完全分離部(S0)の幅が大きくなるように変形(直径が拡大)してこの締め付けリング(2) が筒部(11)に馴染んだ形状に変形する。なお、この図3では貫通孔(21)(21)を具備する締め付けリング(2) を図示しているが、他方の締め付けリング(2) では前記貫通孔(21)に代えてネジ孔(22)が形成される。
【0014】
前記筒状の主体には、前記環状空所(13)(13)の間の隔壁(16)に所定のピッチで複数の貫通孔(15)(15)が設けられる。また、一方の前記締め付けリング(2) には前記貫通孔(15)(15)に合わせて同様の貫通孔(21)(21)が形成され、他方の前記締め付けリング(2) には前記貫通孔(15)(15)に合わせてネジ孔(22)(22)が貫通形成されている。
【0015】
そして、前記一方の締め付けリング(2) の貫通孔(21)から貫通させた締め付けボルト(3) を前記貫通孔(15)を介して他方の締め付けリング(2) のネジ孔(22)に貫通螺合させる。そして、筒部(11)(11)内に軸(D)(D)を挿入して前記締め付けボルト(3)(3)を締め付けると前記締め付けリング(2) が環状空所(13)内に押し込まれて前記筒部(11)(11)が直径縮小傾向となり、軸(D)(D)は前記筒部(11)(11)によって締め付けられて軸締結状態となる。このとき、前記環状空所(13)(13)の直径及び横断形状と各締め付けリング(2) に於ける対応部分との各寸法精度及び同心精度が不十分であったとしても、各締め付けリング(2) には前記完全分離部(S0)があることから、前記締め付けリング(2) が前記テーパ面(12)に馴染んだ形状に変形する。従って、締め付けリング(2) が環状空所(13)に押し込まれた状態で前記締め付けリング(2) がこじ入れられた状態になりにくい。
【0016】
前記締め付けリング(2) の外周面の大きさ及びテーパ値は、外筒体(1) の内周面(環状空所(13)の外側の周壁)のそれらと所定の寸法関係に設定されているから、上記したように締め付けボルト(3) (3) が締め付けられて各締め付けリング(2) が最終の締め付け位置に押し込められた状態では、前記締め付けリング(2) の直径が拡大して上記間隙(G) がなくなり、締め付けリング(2) の外周面はテーパ面(14)に密着された状態となり、締め付けリング(2) の外周面、外筒体(1) 相互の摩擦結合関係によってもトルクが伝達される。
【0017】
前記筒部(11)は、同図に示すように、筒部(11)の部分が前記隔壁(16)から分離され、前記隔壁(16)に形成した平行孔部(161) に前記筒部(11)の基端部に形成した平行筒部(111) が密に嵌入する構成となっている。
従って、締め付けリング(2) を軸線方向から締め付けた時に前記筒部(11)の直径が上記した従来の例(筒部(11)が隔壁(16)と一体のもの)に比べて縮小し易くなるから締め付けボルト(3)(3)を締め付けた時の軸締付け力が大きくなる。
【0018】
また、この例では、前記平行筒部(111) が前記平行孔部(161) に密に嵌入する構成であるから、この筒部(11)と環状空所及びテーパ面(14)との同心精度が高いものとなる。さらに、前記環状空所(13)は、軸(D) を挿通させるための軸孔の周壁を切削によって拡大することにより形成された拡大孔部に前記筒部(11)を密に嵌入することによって形成されている。そして前記拡大孔部は、前記軸孔に続くように、平行孔部(161) が形成され、さらに、これに続いて、内周面がテーパ面(14)となりこの小径側端部に環状空所(13)の底壁が続くように切削によって加工形成されるものであるから、従来のように環状空所(13)を直接加工形成するものに比べて加工し易い。また加工精度も良い。
【0019】
なお、図1に示す実施の形態では、図2に示すように、分解用ボルト(4) (4) が対称に配置されて、これが、各締め付けリング(2) に螺合されてその先端が前記隔壁(16)に対向しているから、この分解用ボルト(4) (4) をねじ込むことにより締め付けボルト(3) (3) を緩めた状態で、締め付けリング(2) を緩め易く、連結状態にある軸(D) (D) を分離する為の作業が簡単である。
【0020】
なお、前記締め付けリング(2) のスリット部は周方向に伸縮できる構成であれば他の構成としてもよい。またこのスリット部の無い締め付けリング(2) を用いても、上記した本発明の作用、効果に変りは無い。
図1、2に示す軸継手においては環状空所(13)の外側の周壁をテーパ面(14)としたが、これを、図4のようにテーパ値がゼロの平行孔部にしても良い。この場合、締め付けリング(2) の外周面も母線が平行な円柱面となる。この場合もテーパ面(12)のテーパ値及び間隙(G) 等を所定の値に設定することにより、最終締め付け時点で締め付けリング(2) の外周面が環状空所(13)の外側の周壁に密着することとなり、同様の効果がある。
【0021】
なお、上記各例は、一対の環状空所(13)(13)が対称に設けられたものであるが、これを、図5に示すように、一方に環状空所(13)を形成した締結具とすることもできる。
この例では、板バネ式の自在継手の一方の軸締結具に本発明を採用しており、軸(D) に外嵌する筒状主体(10)の板バネ(6) を連結するためのフランジ部(61)側の端面の内周側に上記環状空所(13)を形成し、ここに締め付けリング(2) を押し込むようにしている。そして、前記筒状主筒(10)に貫通させた複数の締め付けボルト(3)(3)を前記締め付けリング(2) に螺合させてこの締め付けリング(2) を軸線方向に締め付けるようにしたものである。
【0022】
前記環状空所(13)の内周壁となる筒部(11)は、テーパ筒部の基端側に平行筒部(111) を連設して、これを軸挿通孔に続いて形成される平行孔部(161) に密に嵌入している。前記平行筒部(111) は、この例では、段付筒部になっており、前記平行孔部(161) もこれに合致した孔部にしてある。
この例でも、前記筒部(11)が被締結体としての筒状主体(10)とは別体に構成されているから、前記締め付けリング(2) による前記筒部(11)の締付け力が強くなること、及び、環状空所(13)の加工形成が容易であることの2点で上記した他の例と同様の作用、効果が得られる。
【0023】
なお、この例では、前記締め付けリング(2) には前記締め付けボルト(3) (3) を螺合するためのネジ孔(22)が形成されることとなる。
また図6に示すように対称位置に設けられる分解用ボルト(4) (4) は前記筒状主体(10)に螺合される。
前記板バネ(6) は、図6に示すように、輪郭が略正方形状に形成されたドーナッツ状の板状体で、バネ材からなる薄板を積層した構成であり、前記略正方形の一対の頂点部が一方のフランジ部(61)側の対称位置にネジ止め固定され、他方の一対の頂点部が他方のフランジ部(61)側の対称位置に固定される。前記板バネ(6) が屈曲自在で且トルク伝達可能な状態にあるから、各筒状主体(1) が装着される軸(D) (D) が交差した条件下でも、トルク伝達できる。
【0024】
上記何れの例でも、筒部(11)には軸線方向に延びる複数の開削部(112) (112) を形成しているが、この開削部(112) は必ずしも必要ではない。各例では、前記筒部(11)が被締結体から分離独立したものであるから、前記開削部(112) がなくても直径が伸縮する方向の弾性変形がしやすい。従って、前記開削部(112) がなくても良い。前記弾性変形を容易にするには前記開削部(112) は平行筒部(111) 側に開放する開削部するとよい。
【0025】
なお、上記何れの例の筒部(11)も、前記開削部(112) の有無の如何に関わらず、筒部(11)が全周的に連続する無端リングであっても、一部分断された有端リングであってもよい。後者の場合には、締め付けリング(2) による締め付け力が一層効率的に軸締付け力に変換される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の断面図であり、図2のX−X断面を示す。
【図2】実施の形態1の右側面図。
【図3】実施の形態1に用いる一方の締め付けリング(2) の斜視図。
【図4】実施の形態1の変形例の要部断面図。
【図5】実施の形態2の断面図。
【図6】実施の形態2のY−Y線部分断面右側面図。
【図7】従来例の説明図。
【符号の説明】
(D) :軸 (11):筒部
(1) :外筒体 (13):環状空所
(112) :開削部 (2) :締め付けリング
(3) :締め付けボルト (12):テーパ面
(14):テーパ面 (16):隔壁
(4) :分解用ボルト (S0):完全分離部
(21):貫通孔 (22):ネジ孔
(10):筒状主体 (6) :板バネ
(161) :平行孔部 (111) :平行筒部
(尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。)
Claims (2)
- 被締結体を軸(D)に締結する軸締結具であって、前記被締結体には軸(D)を挿通させる筒部(11)の外周に前記筒部(11)と同軸の環状空所が設けられ、前記環状空所内に前記筒部(11)に外嵌する締め付けリング(2)が挿入され、軸線方向の押し込み手段によって前記締め付けリング(2)が前記環状空所内に圧入されることにより前記筒部(11)が前記軸(D)をトルク伝達状態に締め付ける軸締結具において、前記被締結体の前記環状空所における内周側の前記筒部(11)を前記被締結体とは別体の部材とし、
前記筒部 (11) は外周面がテーパ面であるテーパ筒部とこれの最大径部に続いて平行筒部が連続する構成であり、前記平行筒部が前記被締結体の環状空所の底壁に続き且軸挿通孔に続く平行孔部 (161) に圧入されている軸締結具。 - 締め付けリング(2)は、外周面がテーパ面であり、前記環状空所の外周壁には、前記締め付けリング(2)の外周面に形成されたテーパ面に一致するテーパのテーパ面が形成されている請求項1に記載の軸締結具。
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JP05331698A JP3755985B2 (ja) | 1998-03-05 | 1998-03-05 | 軸締結具 |
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