JP3755749B2 - 微細孔内被膜除去方法、その装置、インクジェットヘッドのノズルプレート、インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタ - Google Patents
微細孔内被膜除去方法、その装置、インクジェットヘッドのノズルプレート、インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微細孔内被膜除去方法、微細孔内被膜除去装置、インクジェットヘッドのノズルプレート、インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタに関するものであり、特にインクジェットヘッドのノズルプレートにおけるノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去する方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5(1)にインクジェット式プリンタのインクジェットヘッド1の断面図を示す。インクジェット式プリンタのヘッド1には、インク2を噴射するため、多数の微細なノズル3が微小間隔を隔てて形成されている。
【0003】
インクジェット式プリンタでは、図5(2)に示すように、ヘッド1のノズルプレート4の表面4aに、インク5が付着することがある。そして、その後に噴射されたインク6が付着インク5に接触すると、付着インク5の表面張力や粘性等の影響を受けて、インク6の噴射軌道が曲げられてしまい、所定の位置にインクを塗布することができなくなるという問題がある。従って、ノズルプレート4の表面4aに、インク5の付着を防止するための処理をしておく必要がある。
【0004】
そこで本願出願人は、図6(1)に示すように、ノズルプレート4の表面に撥インク膜8を形成することにより撥インク処理を行う方法を開発し、特許出願している。具体的には、PFC(パーフルオロカーボン)ガスとCF4(四フッ化炭素)ガスとの混合ガスをプラズマ化して、フッ素樹脂重合膜8を形成する。この方法は、従来のフッ素樹脂とニッケルとの共析メッキによる撥インク処理方法に比べて、高い撥インク性を発揮しうるものである。
【0005】
ところで、ノズルプレート4の表面に撥インク膜8を形成する際に、図6(2)に示すように、ノズル3内に撥インク膜8aが付着することがある。この場合、インクジェットヘッド1に噴射すべきインク2を供給しても、撥インク膜8aにより、ノズル3内へのインクの流入が妨げられ、インク2の噴射が困難になるという問題がある。従って、ノズル3内に付着した撥インク膜8aを除去する必要がある。
【0006】
そこで本願出願人は、プラズマ化した酸素を微細孔内に流入させることにより、微細孔内のフッ素樹脂を除去する方法を開発し、特許出願している。この方法は、従来の有機溶剤を用いた超音波洗浄方法が、ノズルプレートの表面に形成したフッ素樹脂重合膜をも除去してしまうという問題点を解決するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
近時インクジェットヘッドは、民生用プリンタのみならず、液晶表示装置用カラーフィルタの製造などへの工業応用が検討されている。そして、民生用プリンタの場合には水性インクを使用するが、工業応用の場合には有機溶媒を含むインクを使用する場合が多くなる。ところが上述したフッ素樹脂重合膜は、インクを吸収し膨潤して弱くなり、ノズルプレート表面に付着したインクを除去するためのワイピングにより、簡単に剥がれてしまう。これにより、親インク性を有するステンレス製のノズルプレートが露出し、当該部分にインクが付着する。その結果、その後に噴射されたインクの軌道が曲げられてしまい、所定の位置にインクを塗布することができなくなるという問題があった。
【0008】
そこで本願出願人は、フッ素樹脂重合膜の代わりに、シリコーン樹脂重合膜を形成して撥インク処理を行う方法を開発した。その成膜状態は、図6(1)と同様である。シリコーン樹脂の分子構造の骨格は、無機材料のシロキサン結合であるため、耐薬品性に優れた撥インク膜を形成することができるのである。
【0009】
ところで、ノズルプレートの表面にシリコーン樹脂重合膜を形成する場合には、図6(2)に示すように、ノズル内にシリコーン樹脂重合膜が付着することがある。そこで従来と同様に、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の撥インク膜を除去する必要がある。ところが、シリコーン樹脂重合膜はケイ素原子を含むため、従来のように活性化した酸素を供給しても、固体である二酸化ケイ素が形成され、そのままノズル内に残留することになる。従って、シリコーン樹脂重合膜を除去することができないという問題がある。
【0010】
本発明は上記問題点に着目し、微細孔内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することが可能な微細孔内被膜除去方法およびその装置の提供を目的とする。また、製造コストの削減が可能な微細孔内被膜除去方法およびその装置の提供を目的とする。さらに、上記の各目的を達成可能なインクジェットヘッドのノズルプレート、インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタの提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る微細孔内被膜除去方法は、活性化した処理ガスを微細孔内に流入させることにより、前記微細孔内に付着した被膜を除去する方法であって、フッ素を含むガスおよび酸素ガスを活性化した処理ガスを前記微細孔の一側に供給し、前記微細孔の他側から前記処理ガスを吸引して、シリコーン樹脂からなる前記被膜を除去する構成とした。活性化したフッ素を含むガスがシリコーン樹脂のケイ素原子と反応し、活性化した酸素がその他の原子と反応する。従って、微細孔内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。しかも、微細孔の一側に供給した処理ガスを他側から吸引するため、処理ガスを微細孔内に効率的に流入させることができ、微細孔内に流入する活性化した処理ガスの流量を増加させることができる。従って、微細孔内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる
【0012】
また前記活性化は、前記処理ガスをプラズマ化することにより行う構成とした。これにより多くの活性化粒子が形成され、微細孔内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。
【0013】
なお前記プラズマ化は、大気圧またはその近傍の圧力下で行う構成とするのが好ましい。これにより真空装置が不要となり、製造コストを削減することができる。
なお前記プラズマ化は、前記処理ガスをヘリウムガスに混合して行う構成とするのが好ましい。これにより、高周波電源の出力を下げた状態で放電を維持することができる。従って、製造コストを削減することができる。
【0014】
また前記活性化は、処理ガスに紫外線を照射することにより行う構成とした。これにより、製造コストを削減することができる。
【0015】
また、インクジェットヘッドのノズルプレートにおけるノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去する方法であって、前記ノズルプレートのインク供給面側に存在する活性化したフッ素を含むガスおよび活性化した酸素を、前記ノズルプレートのインク噴射面側から吸引することにより、前記ノズル内に流入させる構成とした。これにより未反応の処理ガスが、ノズルプレートのインク噴射面に形成したシリコーン樹脂の被膜と反応することはない。従って、微細孔内に付着したシリコーン樹脂の被膜のみを除去することができる。
【0016】
一方、第1実施形態に係る微細孔内被膜除去装置は、内面にシリコーン樹脂からなる被膜が付着した微細孔を有するワークの一方面側に処理ガスとしてフッ素を含むガスおよび酸素ガスを供給する処理ガス供給手段と、供給された前記処理ガスを活性化する活性化手段と、活性化された前記処理ガスを前記ワークの他方面側から吸引して前記微細孔内に流入させる吸引手段とを有する構成とした。これにより、微細孔内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。
【0017】
なお、処理ガスとしてのフッ素を含むガスおよび酸素ガスを予め活性化する活性化手段と、内面にシリコーン樹脂からなる被膜が付着した微細孔を有するワークの一方面側に活性化された前記処理ガスを供給する活性化ガス供給手段と、活性化された前記処理ガスを前記ワークの他方面側から吸引して前記微細孔内に流入させる吸引手段とを有する構成としてもよい。これにより、微細孔内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去する際に、ワークに与えるダメージを低減することができる。
【0018】
また前記活性化手段は、前記処理ガスをプラズマ化するプラズマ発生手段である構成とした。これにより多くの活性化粒子が形成され、微細孔内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。
【0019】
また前記活性化手段は、前記処理ガスをプラズマ化するプラズマ発生手段であり、前記プラズマ発生手段は、高周波電極と接地電極とを有し、前記接地電極は、金属製の多孔質板で構成される構成とした。これにより接地電極を吸引手段としても機能させることが可能となり、製造コストを削減することができる。
また前記活性化手段は、前記処理ガスに紫外線を照射する紫外線照射手段である構成とした。これにより、製造コストを削減することができる。
【0020】
一方、本発明に係るインクジェットヘッドのノズルプレートは、請求項1ないし7のいずれかに記載の微細孔内被膜除去方法を使用して製造した構成とした。これにより、上記の各効果を達成可能なインクジェットヘッドのノズルプレートを提供することができる。
【0021】
一方、本発明に係るインクジェットヘッドは、請求項13に記載のインクジェットヘッドのノズルプレートを使用して製造した構成とした。これにより、上記の各効果を達成可能なインクジェットヘッドを提供することができる。
【0022】
一方、本発明に係るインクジェットプリンタは、請求項14に記載のインクジェットヘッドを備えた構成とした。これにより、上記の各効果を達成可能なインクジェットプリンタを提供することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に係る微細孔内被膜除去方法、本発明に係る微細孔内被膜除去方法を用いたインクジェットヘッドのノズルプレート、インクジェットヘッドおよびインクジェットプリンタの好ましい実施の形態を、添付図面にしたがって詳細に説明する。なお以下に記載するのは本発明の実施形態の一態様にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
最初に、第1実施形態について説明する。図3に第1実施形態に係る微細孔内被膜除去装置の説明図を示す。第1実施形態に係る微細孔内被膜除去装置100は、インクジェットヘッドのノズルプレート28のインク供給面31側に処理ガス40を供給する処理ガス供給手段39と、供給された処理ガス40をプラズマ化するプラズマ発生手段(50,44)と、プラズマ化された処理ガス40bをノズルプレート28のインク噴射面32側から吸引してノズル70内に流入させる吸引手段73とを有するものである。
【0025】
図1にインクジェットヘッドの側面断面図を示す。インクジェットヘッド10の基板80はシリコン材料等からなり、その内部および表面にインク通路82が形成されている。さらに基板80の表面に、ステンレス材料やシリコン材料等で構成したノズルプレート28を接着する。そして基板80のインク通路82に連続するように、ノズルプレート28を貫通する複数のノズル70を形成する。ノズルプレート28の厚さは80μm程度とし、ノズル70の先端部分の直径は数十μm程度とする。なお、基板80と熱膨張率が同等の材料でノズルプレート28を構成すれば、インク通路82とノズル70との位置ずれを防止することができる。
【0026】
なお、インク通路82の壁面の一部を振動板(不図示)で形成するとともに、その外側に励振電極(不図示)を設ける。そして励振電極に電圧を印加すると、静電気力により振動板が静電吸引されて振動する。この振動板の振動により、インク通路82に内圧変動が発生し、ノズル70からインクを噴射することができる。このインクジェットヘッドを用いて、図7に示すインクジェットプリンタを形成する。
【0027】
ノズルプレート28の表面32には、撥インク膜としてシリコーン樹脂重合膜68を形成する。シリコーン樹脂重合膜として、図2(1)の化学式で表されるポリジメチルシロキサンの薄膜、または図2(2)の化学式で表されるポリジフェニルシロキサンの薄膜を形成する。シリコーン樹脂重合膜の分子構造の骨格は無機材料のシロキサン結合であり、良好な耐薬品性を確保することができる。また、ノズルプレート28との密着性も確保することができる。さらに、ポリジメチルシロキサンではメチル基を、ポリジフェニルシロキサンではベンゼン環をそれぞれ有しているため、有機材料と同等の接触角を得ることができる。なお、メチル基またはベンゼン環をフッ素で置換すれば、極めて大きな接触角を得ることができる。加えて、インクジェットヘッドに本来必要な撥インク性とは、インクの流れ易さを示すインク移動性であり、シリコーン樹脂重合膜では、良好なインク移動性を確保することができる。
【0028】
一方、図3に示すように、ノズルプレート28のノズル70内に付着したシリコーン樹脂重合膜69を除去するため、処理ガスとしてフッ素を含むガスおよび酸素ガスを使用する。フッ素を含むガスとして、CF4ガスやC2F6ガス等のフロン系ガスを使用する。またPFCガスとして、CHF3等のガスを使用することもできる。さらにその他のフッ素を含むガスとして、SF6、NF3等のガスを使用することも可能である。CF4ガスは、水蒸気を添加した上で使用してもよいし、添加しないで使用してもよい。水蒸気を添加した場合には、活性化されたCF4ガスが水蒸気と反応してフッ素イオンが生成され、さらにシリコーン樹脂中のケイ素原子と反応してSiF4を形成する。一方、水蒸気を添加しない場合でも、CF4ガスを活性化することによりフッ素ラジカルが生成され、同様にシリコーン樹脂中のケイ素原子と反応する。
【0029】
なお上述した処理ガスは、プラズマ等により活性化する。その際、処理ガスを大気圧下でプラズマ化するため、処理チャンバ22内に不活性ガスを供給する。なお、上述した処理ガスを予め不活性ガスに混合して供給すれば、処理ガスを効率的にプラズマ化することができる。不活性ガスとして、分子量の小さいヘリウムガスを使用する。なお理論上は、ヘリウムガスの代わりにアルゴンガス等の不活性ガスを使用することも可能である。もっとも分子量が大きくなると、放電された電子と容易に衝突し、放電を広げて維持することが困難となる。なお、高周波電源の出力を上げて周波数を下げれば放電は実現するが、ワークに対するダメージが大きくなる。従って、分子量の小さいヘリウムガスを使用するのが最適である。
【0030】
そして第1実施形態に係る微細孔内被膜除去装置は、上記のようにノズルプレートのノズル内に付着したシリコーン樹脂重合膜を除去するものである。
図3に示すように、微細孔内被膜除去装置100として、まずノズルプレート28を内部に配置可能な処理チャンバ22を形成する。そして、そのノズルプレート28のインク供給面31側に処理ガス40を供給する、処理ガス供給手段39を設ける。上述したように、処理ガス40としてフッ素を含むガスおよび酸素ガスを使用するので、これらの供給源39aを設けるとともに、供給配管39bを介して処理チャンバ22に接続する。同様に、ヘリウムガス供給手段37を設け、供給配管を介して処理チャンバ22に接続する。なお、各供給配管には流量制御弁(不図示)を設ける。
【0031】
処理チャンバ22内の上方には、高周波電極50を設置して高周波電源52に接続する。高周波電源52は、その出力および周波数の調整が可能なものを使用する。なお、後述する金属製の多孔質板を接地して、接地電極44として使用することにより、高周波電極50および接地電極44をプラズマ発生手段として機能させる。これにより、供給された処理ガス40をプラズマ化することができる。なお、大気圧下でのプラズマを実現させるため、高周波電極50と接地電極44との電極間距離は1mm程度とする。
【0032】
一方、処理チャンバ22内の下方には、吸引台73aを設置する。吸引台73aは、ノズルプレート28を載置可能な大きさに形成する。吸引台73aの底面および側面は密閉し、上面には金属製の多孔質板を設ける。なおこの多孔質板は接地して、接地電極44としても利用する。そして、この吸引台73aに真空ポンプ73bを接続することにより、吸引手段73として機能させる。これにより、多孔質板を設けた吸引台73aの上面から、処理チャンバ22内のガスを吸引することができる。
【0033】
なお上述した装置では、処理チャンバ22内にプラズマ発生手段を設けて、供給された処理ガス40を処理チャンバ22内でプラズマ化する構成としたが、処理チャンバ22外にプラズマ発生手段を設けて、いわゆるリモートプラズマにより予め処理ガスを活性化した後に、処理チャンバ内に供給する構成としてもよい。この場合には、高周波電極50を処理チャンバ内に設ける必要がなく、また多孔質板を接地する必要もない。
【0034】
次に、上述した微細孔内被膜除去装置を使用した、微細孔内被膜除去方法について、図3を用いて説明する。第1実施形態に係る微細孔内被膜除去方法は、ノズルプレート28のインク供給面31側に処理ガス40を供給し、供給した処理ガスをプラズマ化し、プラズマ化した処理ガス42をノズルプレート28のインク噴射面32側から吸引することにより、ノズル70内に流入させるものである。
【0035】
最初に、インクジェットヘッドのノズルプレート28を、吸引台73aの上に配置する。その際、シリコーン樹脂重合膜68を形成したインク噴射面32を吸引台73a側に向けて配置する。次に、処理ガス供給手段39により処理チャンバ22内に処理ガス40を供給する。処理ガスの供給量は、例えば50cc/分とする。同時に、ヘリウムガス供給手段37によりヘリウムガス38を供給する。ヘリウムガスの供給量は、例えば10L/分とする。処理ガス40およびヘリウムガス38は、ノズルプレート28のインク供給面31側に供給する。
【0036】
次に、供給した処理ガス40およびヘリウムガス38に対して、高周波電極50により高周波電圧を印加する。すると、高周波電極50から放電された電子がヘリウムガス38と衝突して、ヘリウムガスをプラズマ化する。さらに、プラズマ化されたヘリウムガスが処理ガス40の分子と衝突して、処理ガスをプラズマ化する。このように、活性化エネルギーの低いヘリウムガス等の不活性ガスを介して放電を行うことにより、大気圧またはその近傍の圧力下で、処理ガスをプラズマ化することができる。フッ素を含むガスは活性化されて、フッ素イオンやフッ素ラジカル等の励起活性種を生じる。また酸素ガスは活性化されて、酸素イオンや酸素ラジカル等の励起活性種を生じる。
【0037】
次に、真空ポンプ73bを運転する。すると、ノズルプレート28のインク供給面31側に存在する活性化された処理ガスが、インク噴射面32側に設けた吸引台73aにより吸引され、ノズルプレート28のノズル70内に流入する。そしてノズル内に付着したシリコーン樹脂重合膜69と反応する。まず活性化された酸素が、シリコーン樹脂重合膜の炭素原子および水素原子と反応し、CO2およびH2Oを生じる。さらに活性化されたフッ素を含むガスが、シリコーン樹脂重合膜のケイ素原子と反応し、SiF4を生じる。これら反応生成物はいずれも気体であり、吸引台73aにより吸引されてノズル70内から排出される。以上により、ノズル70内に付着したシリコーン樹脂重合膜69が除去される。
【0038】
なお、活性化された処理ガスの一部は、未反応のままノズル70から流出するが、流出後直ちに吸引台73aにより吸引されるので、ノズルプレート28のインク噴射面32に形成したシリコーン樹脂重合膜68と反応することはない。従って、インク噴射面32に形成したシリコーン樹脂重合膜68が除去されることはない。
【0039】
次に、ノズル70内に付着したシリコーン樹脂重合膜69が除去されているか確認するため、レーザ顕微鏡を用いた検査を行う。まず、ノズルプレートのインク噴射面を、レーザ顕微鏡(不図示)に相対して配置する。次に、ノズルプレートのインク供給面側からインクを供給し、ノズル内に流入させる。ここで図6(2)の場合と同様に、ノズル内に撥インク性を有するシリコーン樹脂重合膜が残存していれば、その位置でインクの流入が停止する。そこでレーザ顕微鏡により、インク表面の位置を計測する。インク表面の位置が、ノズルプレートのインク噴射面の位置とほぼ同等であれば、ノズル内に付着したシリコーン樹脂重合膜が除去されていると判断することができる。
【0040】
上述した第1実施形態に係る微細孔内被膜除去方法では、フッ素を含むガスおよび酸素ガスを処理ガスとして使用し、活性化した処理ガスをノズル内に流入させることにより、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去する構成とした。活性化したフッ素を含むガスがシリコーン樹脂のケイ素原子と反応し、活性化した酸素がその他の原子と反応する。従って、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。
【0041】
また活性化は、処理ガスをプラズマ化することにより行う構成とした。これにより多くの活性化粒子が形成され、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。
【0042】
なおプラズマ化は、大気圧またはその近傍の圧力下で行う構成とするのが好ましい。これにより真空装置が不要となり、製造コストを削減することができる。なおプラズマ化は、処理ガスをヘリウムガスに混合して行う構成とするのが好ましい。これにより、高周波電源の出力を下げた状態で放電を維持することができる。従って、製造コストを削減することができる。また、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去する際に、ノズルプレートに与えるダメージを低減することができる。
【0043】
また、ノズルプレートの一方面側に存在する活性化した処理ガスを、ノズルプレートの他方面側から吸引することにより、ノズル内に流入させる構成とした。これにより、ノズル内に流入する活性化した処理ガスの流量を増加させることができる。従って、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。
【0044】
また、ノズルプレートのインク供給面側に存在する活性化した処理ガスを、ノズルプレートのインク噴射面側から吸引することにより、ノズル内に流入させる構成とした。これにより未反応の処理ガスが、ノズルプレートのインク噴射面に形成したシリコーン樹脂の被膜と反応することはない。従って、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜のみを除去することができる。
【0045】
一方、第1実施形態に係る微細孔内被膜除去装置は、ノズルプレートの一方面側に処理ガスとしてフッ素を含むガスおよび酸素ガスを供給する処理ガス供給手段と、供給された処理ガスを活性化する活性化手段と、活性化された処理ガスをノズルプレートの他方面側から吸引してノズル内に流入させる吸引手段とを有する構成とした。これにより、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。
【0046】
なお、処理ガスとしてのフッ素を含むガスおよび酸素ガスを予め活性化する活性化手段と、ノズルプレートの一方面側に活性化された処理ガスを供給する活性化ガス供給手段と、活性化された処理ガスをノズルプレートの他方面側から吸引してノズル内に流入させる吸引手段とを有する構成としてもよい。これにより、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去する際に、ワークに与えるダメージを低減することができる。
【0047】
また活性化手段は、処理ガスをプラズマ化するプラズマ発生手段である構成とした。これにより多くの活性化粒子が形成され、ノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。
【0048】
また、活性化手段は処理ガスをプラズマ化するプラズマ発生手段であり、プラズマ発生手段は高周波電極と接地電極とを有し、接地電極は金属製の多孔質板で構成される構成とした。これにより接地電極を吸引手段としても機能させることが可能となり、製造コストを削減することができる。
【0049】
次に、第2実施形態について説明する。図4に第2実施形態に係る微細孔内被膜除去装置の説明図を示す。第2実施形態に係る微細孔内被膜除去装置300は、インクジェットヘッドのノズルプレート28の一方側に処理ガス40を供給する処理ガス供給手段39と、供給された処理ガス40に紫外線74を照射する紫外線照射手段60と、活性化された処理ガス40bをノズルプレート28の他方側から吸引してノズル70内に流入させる吸引手段73とを有するものである。なお、第1実施形態と同じ構成となる部分については、その説明を省略する。
【0050】
第2実施形態に係る微細孔内被膜除去装置300では、第1実施形態における高周波電極50の代わりに、処理チャンバ22内の上方に紫外線照射手段60を設置する。紫外線照射手段60から照射された紫外線74により、処理チャンバ22内に供給された処理ガス40を活性化することができる。なお紫外線の照射窓は、蛍石やフッ化マグネシウム等の透明なフッ化物で形成し、フッ素を含む処理ガスによる浸食を回避する。
【0051】
なお理論上は、紫外線照射手段の代わりに電子線照射手段を設置して、照射された電子線により、処理チャンバ22内に供給された処理ガス40を活性化することも可能である。この場合には電子線の照射窓を、電子線を取り出し可能な程度に薄く、なおかつ電子線照射手段の内部を真空状態に保持可能な程度の剛性を具備するように形成する。加えて、フッ素を含む処理ガスによる浸食を回避可能な材料で形成する必要がある。
【0052】
そして、上述した微細孔内被膜除去装置を使用して、ノズル70内に付着したシリコーン樹脂重合膜69を除去する。まず、処理チャンバ22内にノズルプレート28を配置する。次に、ノズルプレート28のインク供給面31側に処理ガス40を供給する。次に、供給した処理ガスに紫外線を照射して活性化する。そして、活性化した処理ガス40bをノズルプレート28のインク噴射面32側から吸引することにより、ノズル70内に流入させる。以上により、ノズル70内に付着したシリコーン樹脂重合膜69が除去される。
【0053】
上述した第2実施形態に係る微細孔内被膜除去方法は、処理ガスに紫外線を照射して活性化する構成とした。また第2実施形態に係る微細孔内被膜除去装置は、処理ガスを活性化する紫外線照射手段を有する構成とした。これにより、製造コストを削減することができる。
【0054】
図7に本発明を用いたインクジェットプリンタの一例を示す。本発明の撥インク処理を行ったノズルプレートを備えたものは、耐久性に優れており、耐有機溶剤性に優れた撥インク膜が形成されたものは工業用途にも応用される。
【0055】
【発明の効果】
活性化した処理ガスを微細孔内に流入させることにより、前記微細孔内に付着した被膜を除去する方法であって、フッ素を含むガスおよび酸素ガスを前記処理ガスとして使用することにより、シリコーン樹脂からなる前記被膜を除去する構成としたので、微細孔内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェットヘッドの側面断面図である。
【図2】(1)はヘキサメチルジシロキサンの化学式であり、(2)はポリジメチルシロキサンの化学式であり、(3)はヘキサフェニルジシロキサンの化学式であり、(4)はポリジフェニルシロキサンの化学式である。
【図3】第1実施形態に係る微細孔内被膜除去装置の説明図である。
【図4】第2実施形態に係る微細孔内被膜除去装置の説明図である。
【図5】インク噴射状態の説明図であり、(1)は正常なインク噴射状態であり、(2)はインクの噴射軌道が曲げられた状態である。
【図6】(1)は撥インク膜を形成した状態の説明図であり、(2)はノズル内に付着した撥インク膜がインクをせき止めている状態の説明図である。
【図7】インクジェットプリンタの斜視断面図である。
【符号の説明】
1………インクジェットヘッド、2………インク、3………ノズル、
4………ノズルプレート、4a………表面、5………付着インク、
6………インク、8,8a………シリコーン樹脂重合膜、
10………インクジェットヘッド、22………処理チャンバ、
28………ノズルプレート、31………インク供給面、
32………インク噴射面、37………ヘリウムガス供給手段、
38………ヘリウムガス、39………処理ガス供給手段、
39a………供給源、39b………供給配管、40………処理ガス、
40b………活性化した処理ガス、42………気体放電、
44………接地電極、50………高周波電極、52………高周波電源、
60………紫外線照射手段、68,69………シリコーン樹脂重合膜、
70………ノズル、73………吸引手段、
73a………吸引台、73b………真空ポンプ、74………紫外線、
80………基板、82………インク通路、100………微細孔内被膜除去装置、
300………微細孔内被膜除去装置
Claims (14)
- 活性化した処理ガスを微細孔内に流入させることにより、前記微細孔内に付着した被膜を除去する方法であって、フッ素を含むガスおよび酸素ガスを活性化した処理ガスを前記微細孔の一側に供給し、前記微細孔の他側から前記処理ガスを吸引して、シリコーン樹脂からなる前記被膜を除去することを特徴とする微細孔内被膜除去方法。
- 前記活性化は、前記処理ガスをプラズマ化することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の微細孔内被膜除去方法。
- 前記プラズマ化は、大気圧またはその近傍の圧力下で行うことを特徴とする請求項2に記載の微細孔内被膜除去方法。
- 前記プラズマ化は、前記処理ガスをヘリウムガスに混合して行うことを特徴とする請求項3に記載の微細孔内被膜除去方法。
- 前記活性化は、前記処理ガスに紫外線を照射することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の微細孔内被膜除去方法。
- インクジェットヘッドのノズルプレートにおけるノズル内に付着したシリコーン樹脂の被膜を除去する方法であって、前記ノズルプレートのインク供給面側に存在する活性化したフッ素を含むガスおよび活性化した酸素を、前記ノズルプレートのインク噴射面側から吸引することにより、前記ノズル内に流入させることを特徴とする微細孔内被膜除去方法。
- 内面にシリコーン樹脂からなる被膜が付着した微細孔を有するワークの一方面側に、処理ガスとしてフッ素を含むガスおよび酸素ガスを供給する処理ガス供給手段と、
供給された前記処理ガスを活性化する活性化手段と、
活性化された前記処理ガスを前記ワークの他方面側から吸引して、前記微細孔内に流入させる吸引手段と、
を有することを特徴とする微細孔内被膜除去装置。 - 処理ガスとしてのフッ素を含むガスおよび酸素ガスを、予め活性化する活性化手段と、
内面にシリコーン樹脂からなる被膜が付着した微細孔を有するワークの一方面側に、活性化された前記処理ガスを供給する活性化ガス供給手段と、
活性化された前記処理ガスを前記ワークの他方面側から吸引して、前記微細孔内に流入させる吸引手段と、
を有することを特徴とする微細孔内被膜除去装置。 - 前記活性化手段は、前記処理ガスをプラズマ化するプラズマ発生手段であることを特徴とする請求項8に記載の微細孔内被膜除去装置。
- 前記活性化手段は、前記処理ガスをプラズマ化するプラズマ発生手段であり、
前記プラズマ発生手段は、高周波電極と接地電極とを有し、
前記接地電極は、金属製の多孔質板で構成されることを特徴とする請求項7に記載の微細孔内被膜除去装置。 - 前記活性化手段は、前記処理ガスに紫外線を照射する紫外線照射手段であることを特徴とする請求項7または8に記載の微細孔内被膜除去装置。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の微細孔内被膜除去方法を使用して製造したことを特徴とするインクジェットヘッドのノズルプレート。
- 請求項12に記載のインクジェットヘッドのノズルプレートを使用して製造したことを特徴とするインクジェットヘッド。
- 請求項13に記載のインクジェットヘッドを備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
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