JP3755272B2 - 高強度・高導電性銅合金の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度・高導電性銅合金の製造方法に係り、特に、半導体機器のリード材、端子、コネクタなどに用いられる高強度・高導電性銅合金の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ICやLSI等の半導体装置のリード材には、Fe−Ni合金である42合金や、銅合金が用いられている。近年におけるICやLSIの高集積化・高速化の潮流は、半導体チップでの発熱量を増大させることとなるため、現在、半導体パッケージにおける合理的な放熱(放熱性の向上)が考えられている。
【0003】
半導体パッケージの放熱経路としては、絶縁モールドを通しての放散や、積極的にヒートシンクを取り付けるといった方法の他、リード材を通した配線基板への放熱などが挙げられる。この場合、リード材の材質自体の熱伝導率(導電率の値で評価)が高いことが、直接、半導体パッケージの放熱性に影響してくることになる。
【0004】
この放熱性に関して言えば、42合金は導電率が極めて低い(約3%IACS)ため、42合金からなるリード材を用いた半導体パッケージを設計する上では、この放熱性が大きな問題となっている。
【0005】
このため、リード材の材質として42合金ではなく、銅合金を用いるようになってきており、より高導電率の材料を指向する傾向にある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年においては、200ピンを超えるようなLSIパッケージが製造されるようになっているため、リード材の厚さはより薄く、かつ、インナーリードおよびアウターリードの幅はより狭くという傾向が強くなっており、リード材自体の強度も重要視されてきている。
【0007】
銅合金は42合金に比べて導電性が良好であるため、熱放散性には優れているものの、強度が比較的低いため、強度が高い銅合金の開発がなされている。強度が高い銅合金として、Cu−Ni−Si系合金、Cu−Sn系合金、Cu−Cr系合金、Cu−Fe−P系合金(特公昭61−46534号公報)などが挙げられる。この場合、銅合金に要求される特性としては、導電性が高いということに加えて、一般的なリード材としての特性を有していると共に、42合金とほぼ同等の強度を有していることが挙げられる。
【0008】
しかし、Cu−Sn系合金は、SnをCu母相に固溶させることによって強度を上昇させているため、導電率が30%IACS程度であり、また、Cu−Ni−Si系合金も導電率は50%IACS程度にしかならない。
【0009】
Cu−Cr系合金は、70%IACS以上の高い導電率を有しているが、強度の点でやや不十分であり、かつ、Crが難溶解材であると共に、耐火材であるカーボンと反応し易いことにより、溶解および鋳造が難しく、製造コストの上昇を招くといった問題がある。
【0010】
Cu−Fe−P系合金は、Cu−Ni−Si系合金、Cu−Sn系合金、Cu−Cr系合金などに比べて導電率が良好(80%IACS以上)であると共に、製造コストが低いという特長を有しているものの、強度が不十分であり、圧延上がりの硬質材においても42合金に匹敵するような引張強度(600N/mm2 (約600MPa)以上)は得られていない。
【0011】
そこで本発明は、上記課題を解決し、引張強度が42合金と略同等であると共に、導電率が70%IACS以上であり、かつ、製造コストが低い高強度・高導電性銅合金の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、化学組成が、
Fe:0.3〜1.0mass%、
P:0.1〜0.2mass%、
Zn:0.1〜1.0mass%、
Mg:0.05〜0.2mass%、
残部:Cu及び不可避不純物であり、かつ、FeとPとの重量比(Fe/P)が3〜5である銅合金を、700℃以上に加熱した後、25℃/min以上の冷却速度で300℃以下の温度まで冷却し、その後、第1冷間圧延加工を施した後、400〜550℃の温度で0.5〜5hrの熱処理を施し、その後、第2冷間圧延加工を施すことにより、588MPa以上の引張強度および70%IACS以上の導電率を有する銅合金を得る高強度・高導電性銅合金の製造方法を要旨とするものである。
【0013】
以上の構成によれば、0.3〜1.0mass%のFe、0.1〜0.2mass%のP、0.1〜1.0mass%のZn、0.05〜0.2mass%のMg、残部がCu及び不可避不純物という化学組成を有し、かつ、FeとPとの重量比(Fe/P)が3〜5である銅合金を、700℃以上に加熱した後、25℃/minの冷却速度で300℃以下の温度まで冷却し、その後、冷間圧延を施した後、400〜550℃の温度で0.5〜5hrの熱処理を施し、その後、再び冷間圧延を施しているため、引張強度が42合金と略同等であると共に、導電率が70%IACS以上であり、かつ、製造コストが低い高強度・高導電性銅合金を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
本発明の高強度・高導電性銅合金は、0.3〜1.0mass%のFeと0.1〜0.2mass%のPをFeとPの重量比(Fe/P)が3〜5の範囲内で添加すると共に、0.1〜1.0mass%のZnと0.05〜0.2mass%のMgを添加し、残部がCu及び不可避不純物からなるものである。
【0016】
上記した化学組成範囲の規定には2つの要点がある。
【0017】
第1の要点は、Fe、Pの添加量およびFeとPの重量比を所定の範囲に規定することで強度と導電率を好ましい値に調整する点である。
【0018】
Feは、Pと化合物を形成して析出し、強度および導電率を向上させる効果を持つ。前記した特開昭61−46534号公報においては、Feの添加量を0.25〜0.50mass%、Pの添加量を0.10〜0.14mass%の範囲に規定することで、良好な導電性、強度、耐軟化性を得ている。
【0019】
本発明においても、同様の効果を得るためにFeとPを加えているが、より高い強度を得るべく化学組成を検討した結果、Feの添加量を0.3〜1.0mass%、Pの添加量を0.1〜0.2mass%に規定すると共に、FeとPの重量比を3〜5の範囲に規定した。
【0020】
Pの添加量を0.1〜0.2mass%に規定するのは、添加量が0.1mass%より少ないと強度を向上させる効果が不十分になるためであり、添加量が0.2mass%より多いと導電率の低下を招きやすくなると共に、鋳造時にP化合物の偏析に起因する鋳塊割れが起こる可能性があるためである。
【0021】
良好な強度と導電率を得るためには、P化合物を形成させることなく、Cu母相中に残存するFeとPの量を少なくする必要がある。0.1〜0.2mass%のPと効果的に化合物を形成し、かつ、FeおよびPの残存量を少なくするためには、Feの添加量を0.3〜1.0mass%に規定し、かつ、FeとPの重量比を3〜5の範囲に規定する必要がある。
【0022】
Feの添加量を0.3〜1.0mass%に規定するのは、Feの添加量がこの規定範囲を外れた場合、FeまたはPのいずれかがCu母相中に過剰に残存し、銅合金の導電率の低下を引き起こすためである。
【0023】
次に、第2の要点は、FeおよびPと共に、ZnおよびMgを銅合金母材中に一定量添加して効果的に強度を向上させる点である。
【0024】
前述したように、従来のCu−Fe−P系合金は、強度が不十分であるという問題があったため、新たな元素を添加して強度を改善していた。一般的に、新たな元素を副成分として添加した場合、強度は向上するものの、熱伝導性、導電性、および加工性は低下するという問題がある。
【0025】
前記した特開昭61−46534号公報においても、副成分の添加については導電性の低下を考慮し、Ag、Al、B、Be、Co、Cr、In、Mg、Ni、Sb、Si、Sn、Ti、Zn、Zr、As、Seおよびミッシュメタルの内の1種以上を少量(望ましくは合計0.1mass%以下)添加してもよいとしているが、この程度の添加量では強度向上に対する効果は不十分であった。
【0026】
本発明の高強度・高導電性銅合金では、厳密に選定した副成分元素を十分な効果が得られる量だけ添加することによって、導電率の低下を最小限に抑えながら効果的に強度の向上を図ることを検討した。
【0027】
種々の元素を添加して強度向上効果を調べた結果、Mgを0.05〜0.2mass%の範囲で添加することによって、導電率や加工性をほとんど低下させることなく強度を向上させることができるという知見を得た。
【0028】
また、Znを0.1〜1.0mass%の範囲で添加した場合、導電率は若干低下するものの強度の向上に効果があると共に、半導体機器のリード材として必要なハンダ付け性も大幅に改善されることを確認した。
【0029】
MgおよびZnの添加量が、上記した規定範囲より多いと導電率を害するおそれが生じ、また、逆に規定範囲より少ないと強度向上の効果が十分に得られない。
【0030】
すなわち、本発明の高強度・高導電性銅合金によれば、FeおよびPの添加量及びその重量比を所定範囲に規定すると共に、副成分元素であるZnおよびMgの添加量も所定範囲に規定しているため、引張強度が42合金と略同等であると共に、導電率が70%IACS以上であり、かつ、加工性およびハンダ付け性に優れた高強度・高導電性銅合金を得ることができる。
【0031】
また、Fe、P、Zn、およびMgは、容易に溶解すると共に、耐火材であるカーボンと容易に反応するということがないため、溶解および鋳造が容易であると共に、低コストで高強度・高導電性銅合金を得ることができる。
【0032】
次に、本発明の製造方法を説明する。
【0033】
本発明では、上述した化学組成範囲の規定に加えて、その銅合金の優れた特性値を十分に引き出すための製造方法を次のように確立した。
【0034】
本発明の高強度・高導電性銅合金の製造方法は、上述した化学組成範囲にある銅合金を素材とし、700℃以上に加熱した後、25℃/min以上の冷却速度で300℃以下の温度まで冷却し、その後、第1冷間圧延加工を施した後、400〜550℃の温度で0.5〜5hrの熱処理を施し、その後、第2冷間圧延加工を施すものである。
【0035】
ここで、700℃以上の温度から25℃/min以上の冷却速度で300℃以下の温度まで冷却する熱処理は、均一な化合物形成を行う前処理であり、一旦、合金元素をCu母相中に固溶させる目的を有している。冷却前の温度を700℃以上に規定しているのは、合金元素を十分にCu母相中に固溶させるためであり、加熱温度が700℃よりも低いとCu母相中への合金元素の固溶が不十分となる。
【0036】
冷却速度を25℃/min以上と規定しているのは、冷却速度を25℃/minよりも遅くした場合、固溶した合金元素が再び化合物を形成してしまうためである。十分な固溶状態を維持するためには、25℃/min以上の冷却速度で300℃以下の温度まで冷却する必要がある。
【0037】
冷却後に第1冷間圧延加工を施しているのは、Cu母相中に、次工程の熱処理において化合物相形成の起点となる格子欠陥を導入し、次工程の熱処理における微細な化合物相の形成を促進するためである。
【0038】
400〜550℃の温度で0.5〜5時間保持する熱処理(二次熱処理)は、FeとPの化合物相をCu母相中に均一に微細な形状で形成させる目的を有している。規定した条件範囲より低温・短時間であると、化合物相の形成が十分に進まず、良好な強度および導電率が得られない。また、規定した条件範囲より高温・長時間であると、強度の向上効果が少ない粗大な化合物相が形成されると共に、結晶粒径が大きくなって銅合金の強度や曲げ加工性に悪影響を及ぼす。
【0039】
二次熱処理後に第2冷間圧延加工を施しているのは、第2冷間圧延加工による加工硬化によって銅合金の強度が向上し、より望ましい特性の材料を得ることができるためである。
【0040】
すなわち、本発明の高強度・高導電性銅合金の製造方法によれば、所定の化学組成を有した銅合金材に、順次、合金元素をCu母相中に固溶させるための熱処理、第1冷間圧延加工、FeとPの化合物相をCu母相中に均一に微細な形状で形成させるための熱処理、第2冷間圧延加工を施しているため、引張強度が42合金と略同等であると共に、導電率が70%IACS以上の高強度・高導電性銅合金を得ることができる。
【0041】
【実施例】
先ず、化学組成がそれぞれ異なる銅合金の鋳塊割れの有無、引張強さ(MPa)、及び導電率(%IACS)について評価を行う。
【0042】
(実施例1)
無酸素銅母材中に、0.3mass%のFeおよび0.1mass%のP(Fe/P=3.0)、0.3mass%のZn、0.1mass%のMgを添加してなる銅合金を高周波溶解炉で溶製し、直径30mm、長さ250mmの銅インゴットを鋳造する。
【0043】
次に、この銅インゴットを850℃に加熱すると共に押出加工を施して幅20mm、厚さ8mmの銅板を形成した後、冷間圧延加工を施して厚さ0.7mmの銅薄板を形成する。
【0044】
その後、この銅薄板を800℃に加熱した後、水中に投入して300℃/minの冷却速度で室温(約20℃)まで冷却する。
【0045】
次に、冷却した銅薄板に、厚さ0.3mmまで第1冷間圧延加工を施した後、450℃の温度で120分加熱する熱処理を施す。
【0046】
その後、熱処理後の銅薄板に、厚さ0.15mmまで第2冷間圧延加工を施して高強度・高導電性銅合金を作製する(試料No.1)。
【0047】
(実施例2)
無酸素銅母材中に、0.5mass%のFeおよび0.1mass%のP(Fe/P=5.0)、0.3mass%のZn、0.1mass%のMgを添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして高強度・高導電性銅合金を作製する(試料No.2)。
【0048】
(実施例3)
無酸素銅母材中に、0.6mass%のFeおよび0.2mass%のP(Fe/P=3.0)、0.3mass%のZn、0.1mass%のMgを添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして高強度・高導電性銅合金を作製する(試料No.3)。
【0049】
(比較例1)
無酸素銅母材中に、0.3mass%のFeおよび0.1mass%のP(Fe/P=3.0)を添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.4)。
【0050】
(比較例2)
無酸素銅母材中に、0.3mass%のFeおよび0.1mass%のP(Fe/P=3.0)、2.0mass%のZn、0.1mass%のMgを添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.5)。
【0051】
(比較例3)
無酸素銅母材中に、0.3mass%のFeおよび0.1mass%のP(Fe/P=3.0)、0.3mass%のZn、0.5mass%のMgを添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.6)。
【0052】
(比較例4)
無酸素銅母材中に、1.5mass%のFeおよび0.1mass%のP(Fe/P=15.0)、0.3mass%のZn、0.1mass%のMgを添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.7)。
【0053】
(比較例5)
無酸素銅母材中に、0.1mass%のFeおよび0.1mass%のP(Fe/P=1.0)、0.3mass%のZn、0.1mass%のMgを添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.8)。
【0054】
(比較例6)
無酸素銅母材中に、0.3mass%のFeおよび0.2mass%のP(Fe/P=1.5)、0.3mass%のZn、0.1mass%のMgを添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.9)。
【0055】
(比較例7)
無酸素銅母材中に、0.9mass%のFeおよび0.3mass%のP(Fe/P=3.0)、0.3mass%のZn、0.1mass%のMgを添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.10)。
【0056】
(比較例8)
無酸素銅母材中に、0.1mass%のFeおよび0.03mass%のP(Fe/P=3.3)、0.3mass%のZn、0.1mass%のMgを添加してなる銅合金を用いる以外は、実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.11)。
【0057】
試料No.1〜3の高強度・高導電性銅合金および試料No.4〜11の銅合金の化学組成(mass%)を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
試料No.1〜3の高強度・高導電性銅合金および試料No.4〜11の銅合金における鋳塊割れの有無、引張強さ(MPa)、及び導電率(%IACS)について評価を行った。その評価結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示すように、実施例1〜3における試料1〜3は、全てにおいて鋳塊割れがなく、かつ、約600MPaの引張強さと70%IACS以上の導電率が得られた。
【0062】
これに対して、比較例1における試料4は、ZnおよびMgを添加していないため、良好な導電率(82.2%IACS)は得られているものの、引張強さが低くなり(530MPa)、十分な値が得られない。
【0063】
比較例2および3における試料5および6は、ZnまたはMgの添加量が規定範囲(それぞれ0.1〜1.0mass%、0.05〜0.2mass%)より多い(それぞれ2.0mass%、0.5mass%)ため、良好な引張強さ(608MPa、614MPa)は得られているものの、導電率が悪化し(59.0%IACS、60.0%IACS)、十分な値が得られない。
【0064】
比較例4、5における試料7、8は、Feの添加量が規定範囲(0.3〜1.0mas s%)外である(それぞれ1.5mass%、0.1mass%)ため、引張強さ(530MPa、498MPa)および導電率(62.8%IACS、57.6%IACS)が共に良好でなく、十分な値が得られない。
【0065】
比較例6における試料9は、FeおよびPの添加量は規定範囲内であるものの、FeとPの重量比が規定範囲(3〜5)より小さい(1.5)ため、引張強さ(520MPa)および導電率(54.2%IACS)が共に良好でなく、十分な値が得られない。
【0066】
比較例7における試料10は、Pの添加量が規定範囲(0.1〜0.2mass%)より多い(0.3mass%)ため、引張強さ(610MPa)および導電率(74.4%IACS)は共に良好であるものの、鋳塊割れが生じていた。
【0067】
比較例8における試料11は、Feの添加量およびPの添加量が規定範囲(それぞれ0.3〜1.0mass%、0.1〜0.2mass%)より少ない(それぞれ0.1mass%、0.03mass%)ため、良好な導電率(84.0%IACS)は得られているものの、引張強さが低くなり(540MPa)、十分な値が得られない。
【0068】
次に、製造のための処理条件がそれぞれ異なる銅合金の引張強さ(MPa)および導電率(%IACS)について評価を行う。
【0069】
(実施例4)
FeとPの化合物相をCu母相中に均一に微細な形状で形成させるための熱処理を500℃×120分とする以外は実施例1と同様にして高強度・高導電性銅合金を作製する(試料No.12)。
【0070】
(実施例5)
FeとPの化合物相をCu母相中に均一に微細な形状で形成させるための熱処理を400℃×120分とする以外は実施例1と同様にして高強度・高導電性銅合金を作製する(試料No.13)。
【0071】
(比較例9)
合金元素をCu母相中に固溶させるための熱処理を650℃とする以外は実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.14)。
【0072】
(比較例10)
FeとPの化合物相をCu母相中に均一に微細な形状で形成させるための熱処理を450℃×10分とする以外は実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.15)。
【0073】
(比較例11)
FeとPの化合物相をCu母相中に均一に微細な形状で形成させるための熱処理を570℃×120分とする以外は実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.16)。
【0074】
(比較例12)
FeとPの化合物相をCu母相中に均一に微細な形状で形成させるための熱処理を350℃×120分とする以外は実施例1と同様にして銅合金を作製する(試料No.17)。
【0075】
試料No.1、12、13の高強度・高導電性銅合金および試料No.14〜17の銅合金における引張強さ(MPa)および導電率(%IACS)について評価を行った。その評価結果を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3に示すように、実施例1、4、5における試料1、12、13は、全てにおいて約600MPaの引張強さと70%IACS以上の導電率が得られた。
【0078】
これに対して、比較例9における試料14は、固溶熱処理の加熱温度が規定範囲(700℃以上)より低い(650℃)ため、Cu母相中への合金元素の固溶が不十分となっており、良好な導電率(75.4%IACS)は得られているものの、引張強さが低くなり(520MPa)、十分な値が得られない。
【0079】
比較例10における試料15は、化合物形成熱処理の加熱時間が規定範囲(0.5〜5hr)より短い(10分)ため、FeとPの化合物相の形成が十分に進んでおらず、引張強さ(544MPa)および導電率(63.0%IACS)が共に良好でなく、十分な値が得られない。
【0080】
比較例11における試料16は、化合物形成熱処理の加熱温度が規定範囲(400〜550℃)より高い(570℃)ため、粗大なFeとPの化合物相が形成されると共に、結晶粒径が大きくなっており、良好な導電率(72.4%IACS)は得られているものの、引張強さが低くなり(548MPa)、十分な値が得られない。
【0081】
比較例12における試料17は、化合物形成熱処理の加熱温度が規定範囲(400〜550℃)より低い(350℃)ため、FeとPの化合物相の形成が十分に進んでおらず、引張強さ(510MPa)および導電率(57.0%IACS)が共に良好でなく、十分な値が得られない。
【0082】
本発明の高強度・高導電性銅合金は、小型・多ピンのリードフレーム材として最適であるのみならず、電子機器用の材料として幅広く適用することができることは言うまでもない。
【0083】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、銅合金材の化学組成を所定の範囲に規定すると共に、その銅合金材に対する各種処理条件を規定することで、強度および導電性に優れた高強度・高導電性銅合金を得ることができるという優れた効果を発揮する。
Claims (1)
- 化学組成が、
Fe:0.3〜1.0mass%、
P:0.1〜0.2mass%、
Zn:0.1〜1.0mass%、
Mg:0.05〜0.2mass%、
残部:Cu及び不可避不純物であり、かつ、FeとPとの重量比(Fe/P)が3〜5である銅合金を、700℃以上に加熱した後、25℃/min以上の冷却速度で300℃以下の温度まで冷却し、その後、第1冷間圧延加工を施した後、400〜550℃の温度で0.5〜5hrの熱処理を施し、その後、第2冷間圧延加工を施すことにより、588MPa以上の引張強度および70%IACS以上の導電率を有する銅合金を得ることを特徴とする高強度・高導電性銅合金の製造方法。
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