JP3755198B2 - インクジェット記録用媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、スチルカメラやコンピュータなどのOA機器の普及に伴い、それらの画像を紙面等に記録するためのハードコピー技術が急速に発達した。ハードコピーの記録方式には、銀塩写真によって画像を表示したディスプレイを直接撮影するもののほか、昇華型熱転写方式、インクジェット方式、静電転写型方式など多種多様の方式が知られている。
【0003】
インクジェット方式によるプリンタは、フルカラー化が容易なことや印字騒音が低いことなどから、近年めざましい普及を遂げている。インクジェット方式はノズルから被記録材に向けて液滴を高速で射出するものであり、インク中に多量の溶媒を含む。このためインクジェットプリンタ用の被記録材は、速やかにインクを吸収し、しかも高い色濃度を有することが要求される。
【0004】
このような場合、普通の紙では充分な色濃度や解像度が得られず、基材の上に無機の多孔質層を形成した記録シートや記録用紙を用いることが必要である。例えば、基材上に擬ベーマイトからなるインク受容層を設けた記録シートが知られている(特開平2−276670、特開平2−276671等参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのようにインク吸収性のない基材の上に擬ベーマイトからなる多孔質インク受容層を形成させた場合、このインク受容層単独で単位面積あたりに印字されるインク量に相当する細孔容積を有することが必要である。
【0006】
したがってインク受容層は、その細孔特性にもよるが、通常のプリンタに対しては20g/m2 以上の塗工量が必要となり、インク量の多いものについてはさらに多くの塗工量が必要となり、結果として製造面などを考慮してもかなり高価になる。そこで高画質化かつコストダウンを図るためには、インク吸収性のよい基材を用いることが1つの解決策と考えられる。
【0007】
ところが、フォーム紙のような吸収性のよい基材に擬ベーマイト層を設けても、それほどの吸収性の向上は図れなかった。そのため、PETフィルムを基材に用いた場合に比べて、高い色濃度を維持したまま、大きく吸収性を向上させたり、擬ベーマイト層の塗工量を減らしたりできず、コストも期待したほど低減できなかった。
【0008】
本発明は、インク受容層が同じ塗工量で、色濃度が高く、かつインク吸収性が大きいインクジェット記録用媒体を提供することを目的とする。換言すれば、同じインク吸収性と色濃度を有する記録用媒体でも、インク受容層の塗工量が少ないインクジェット記録用媒体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、インク吸収性を有する基材上に、平均細孔半径5〜30nm、かつ、細孔容積0.3〜2.0cc/gである多孔質のインク受容層を形成したインクジェット記録用媒体であって、上記基材は、シリカを含有したポリエチレンからなるフィルム状の微孔性物質である合成紙であり、細孔半径がインク受容層の平均細孔半径の3倍以下の細孔を、基材の単位面積あたりの容積として2〜1000cc/m2で有し、かつ、ブリストー法により、粘度が2.5cP、表面張力が30dyn/cmである水系インクを用いた測定で、接触時間が0.05秒までの吸液量が10cc/m2以上である、インクジェット記録用媒体である。
【0010】
表面にインク受容層を有する基材の細孔半径が、インク受容層の平均細孔半径に比べ極端に大きい場合、インク受容層の毛細管力が基材の毛細管力を大きく上回り、インクは受容層から基材に移行しにくくなることが判明した。上記した通常のフォーム紙などを基材に用いた場合に、インク吸収性が顕著に増大しない原因がこのためであることが判明した。
【0011】
そこで本発明では、基材に、細孔半径がインク受容層の平均細孔半径の3倍以下の細孔を有するものを用いる。基材の有する細孔は、インク吸収性を有するように相互に連通しており、また表面に開口している。なかでも、本発明における基材の細孔半径は、5〜30nmの範囲であることが好ましい。
【0012】
基材がインク受容層に比べ過度に大きな細孔半径を有する場合は、インク受容層から基材へのインクの移行性が低下するので好ましくない。本発明では、基材がインク受容層とほぼ同じ細孔半径の細孔を有する場合、基材はインク受容層と同じ程度の毛細管力であり、インクは受容層から基材に速やかに吸収されるので、特に好ましい。
【0013】
また、基材の細孔容積は記録用媒体のインク吸収能を規定するが、本発明では基材の単位面積あたりの容積として2〜1000cc/m2 、なかでも、5〜500cc/m2 であるのが好ましい。
【0014】
本発明の一態様として、基材が、インク受容層の平均細孔半径の2倍以下の細孔半径を有する細孔を、基材の単位面積あたりの容積として2〜40cc/m2 を有するものが挙げられる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明において基材は、合成紙が使用される。本発明では、基材を形成する物質(高分子物質)に無機微粒子が配合され、この無機微粒子によって、平均細孔半径が制御され、上記した範囲の細孔半径および細孔容積を有するようにされる。基材に含有される無機微粒子は、基材の厚さ方向全体に内填されていても、インク受容層との境界部に偏在していてもよい。
【0016】
基材に無機微粒子を内填させる方法としては、パルプに混合して抄紙する方法および紙に無機微粒子を含む水分散液を含浸させる方法、高分子物質に混合してフィルム状にする方法などが挙げられる。含浸の方法としては、ディップ法や吸引濾過法、吹き付け法、さらにはコーターによる塗工法等が好ましく採用できる。基材中の無機微粒子の内填量は、基材に対して0.1〜85重量%(外掛け基準)が好ましく、特に1〜80重量%(外掛け基準)であるのが好ましい。
【0017】
無機微粒子としては、平均粒子直径が20〜200nmのものが好ましく使用され、なかでも、アルミナゾル、シリカゾルなどのように微細な粒子として分散したゾルから得られるものが好ましい。こうしたゾルを乾燥して得られるキセロゲルは微細な細孔を多く含むので、比較的少量の添加で充分に効果があがる。基材中にはバインダー成分やその他の添加成分が含まれていてもよい。ただし含浸法で無機微粒子を内填する場合、ゾルの粘度が高くなると無機微粒子が基材中に充分浸透しないので、バインダー成分を含まない水分散液の使用が好ましい。
【0018】
多孔質のインク受容層は、無機微粒子がバインダーで結合された構成であることが好ましい。インク受容層の無機微粒子としてはアルミナ水和物が好ましく、特に色素を良く吸収定着することから擬ベーマイトが好ましい。ここで擬ベーマイトはAl2 O3 ・nH2 O(n=1〜1.5)の組成式で表されるアルミナ水和物の凝集体である。
【0019】
多孔質のインク受容層を製造する際に用いられるバインダーとしては、デンプンまたはその変性物、ポリビニルアルコール(PVA)またはその変性物、スチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックス、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の有機物を使用できる。
【0020】
バインダーの使用量は、無機微粒子の5〜50重量%、特には5〜15重量%を採用することが好ましい。バインダーの使用量が5重量%未満の場合はインク受容層の強度が不充分になり、50重量%超の場合にはインクの吸収性が不充分になるのでそれぞれ好ましくない。
【0021】
インク受容層は、平均細孔半径5〜30nm、好ましくは5〜15nm、細孔容積0.3〜2.0cc/g、好ましくは0.5〜1.5cc/gである場合、充分なインク吸収性を有しかつインク受容層の透明性も良好であるので好ましい。インク受容層の透明性が高いほど、色濃度が高く高品質な画像が得られる。
【0022】
基材上に、インク受容層を形成する方法としては、無機微粒子にバインダーと溶媒を加えて好ましくはゾル状塗工液にし、これを基材に塗布した後乾燥する方法が好ましい。無機微粒子の原料としてアルミナゾルを用いる場合は、透明性の良好な擬ベーマイトのインク受容層が形成できるので好ましい。
【0023】
塗布方法には、例えば、ダイコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーターなどの塗布方法、さらには転写法かキャスト法などの塗工面が平滑になる塗工法も使用できる。また、塗工面はカレンダリングにより平滑にすることもできる。塗工液の溶媒としては水系、非水系のいずれも採用できる。
【0024】
インク受容層の塗工量としては、使用するプリンタの種類などによって適宜選択されるが、一般には乾燥状態で2〜60g/m2 が好ましい。塗工量が2g/m2 未満の場合は、鮮明な色を発現しないおそれがある。塗工量が60g/m2 超の場合は、不必要に材料を消費したりインク受容層の強度が低下するおそれがある。インク受容層の塗工量が5〜25g/m2 の場合は特に好ましい。
【0025】
上記多孔質のインク受容層の上に球状粒子層を有する場合は、擬ベーマイト多孔質層単独の場合に比べて、耐擦傷性が向上するので好ましい。なかでも、球状粒子層がシリカゾルを塗工して得られるシリカゲル層である場合には、特に好ましい。インクが付与されたときには、このシリカゲル層をインクは通過する。
【0026】
シリカゲル層は、シリカゾルをバインダー溶液中に分散させて好ましくはゾル状塗工液にし、これを塗布した後、乾燥することによりシート表面に強固に付着させうる。塗布方法としては、ディップ法や転写法やコーターを用いる方法など通常の塗布方法を適宜採用できる。
【0027】
シリカゾルとしては、平均粒子直径5〜200nm、好ましくは10〜90nm、固形分濃度1〜20重量%のものを使用するのが好ましい。シリカゾルに混合するバインダーとしては擬ベーマイト多孔質層を形成するときに用いたものと同様のバインダーが使用でき、特にケイ酸含有ポリビニルアルコールなどのケイ素含有ポリマーを使用するのが好ましい。バインダーの使用量は、シリカゾルの固形分(Si02 換算)に対して1〜30重量%(外掛け基準)が好ましい。
【0028】
シリカゲル層の厚さは0.1〜30μmが好ましい。シリカゲル層の厚さが0.1μm未満の場合は、耐擦傷性改善の効果が不充分である。シリカゲル層の厚さが30μm超の場合は、インク受容層の透明性および吸収性が損なわれる。
【0029】
本発明において、基材、多孔質インク受容層およびシリカゲル層には種々の添加剤が含まれていてもよい。例えば、紫外線吸収剤、退色防止剤、にじみ防止剤、黄変防止剤のような耐久性向上を目的としたもの、消泡剤、減粘剤、ゲル化剤のような製造性向上を目的としたもの、さらには蛍光増白剤のような付加価値の付与を目的としたものなど、適宜必要に応じて添加できる。
【0030】
本発明のインクジェット記録用媒体は、ブリストー法による粘度が2.5cP、表面張力が30dyn/cmである水系インクを用いた測定で、接触時間が0.05秒までの吸液量が10cc/m2 以上、特には10〜500cc/m2 であるのが好ましい。
【0031】
ブリストー法の測定は常圧・常温で行う。使用する液体は、通常のインクジェット記録用のインクを用いる。着色剤として、直接染料や酸性染料等の水溶性のものが用いられる。通常、この染料の水溶液に、粘度や表面張力を制御するために多価アルコールなどの有機溶剤を加えてインクとする。また場合により、水溶性高分子物質や界面活性剤など添加剤を加えてもよい。
【0032】
本発明で、上記記録用媒体に対してインクジェット方式で印刷する方法は、通常の既知の方法が使用される。
【0033】
【実施例】
[例1(参考例)]
セルロースからなる市販のフォーム紙(68g/m2)を、アルミナゾル(固形分濃度20.7重量%、平均凝集粒子径187nm)に片面からディップした後、60℃のオーブンにて数分間乾燥した。この結果、パルプ繊維間にアルミナキセロゲルが15g/m2存在する基材が形成された。このとき、表面にはアルミナの析出はみられなかった。
【0034】
一方、アルミナゾル100重量部(固形分換算)にPVA11重量部(固形分換算)と水を加えて、総固形分濃度16.5重量%の塗工液を調製した。この塗工液を上記基材のアルミナゾルをディップした面にバーコーターを用いて塗布し、60℃のオーブンにて5分間、次いで140℃のドラム乾燥機で3分間乾燥して、乾燥時の担持量が10g/m2 の擬ベーマイトの多孔質層を形成した。
【0035】
さらに、球状シリカのゾル(平均粒子直径45nm)100重量部(固形分換算)に対してケイ酸含有PVA11重量部(固形分換算)と水を加えて、総固形分濃度3.0重量%の塗工液を調製した。この塗工液を、上記擬ベーマイト質多孔質層を形成した面にバーコーターを用いて塗布し、60℃のオーブンにて5分間乾燥して、乾燥時の担持量が0.9g/m2 のシリカゲル層を形成した。
【0036】
これと同様な擬ベーマイト多孔質層をPETフィルム上に形成して、窒素吸脱着法で細孔分布を測定したところ、平均細孔半径は11nm、細孔容積は0.9cc/gであった。また、上記基材のみについて窒素吸脱着法で細孔分布を測定したところ、基材の細孔半径33nm以下の細孔は、単位面積あたりの細孔容積14cc/m2 を有していた。
【0037】
また、上記のうちでも、細孔半径5〜30nmの細孔容積は10cc/m2 であり、細孔半径が22nm以下の細孔容積は14cc/m2 であった。なお、窒素吸着法による細孔分布の測定は、ガス吸着、脱着アナライザー(コールター社製、商品名:オムニソープ360)を用いた。
【0038】
[例2(実施例)]
基材として細孔を持つ市販の合成紙(ピーピージー・インダストリーズ・インコーポレーテッド製、商品名TESLIN、厚さ178μm、シリカを含有したポリエチレンからなるフィルム状の微孔性物質)を用いた以外は、例1と同様にして記録用媒体を形成した。このときの擬ベーマイトの乾燥時の担持量は10g/m2、シリカゲルの乾燥時の担持量は0.9g/m2である。また同様に、上記基材のみについて窒素吸脱着法で細孔分布を測定したところ、細孔半径が33nm以下の細孔は、基材単位面積あたり細孔容積は96cc/m2であり、一方上記のうちでも細孔半径5〜30nmの範囲の基材単位面積あたりの細孔容積は93cc/m2であった。
【0039】
[例3(実施例)]
シリカゲル層を形成しない以外は、例2と同様にして記録用媒体を形成した。ただし、このときの擬ベーマイトの乾燥時の担持量は2g/m2である。
【0040】
[例4(比較例)]
アルミナゾルのディップ処理をせず、フォーム紙に直接アルミナゾル塗工液を塗布し擬ベーマイト多孔質層を形成した以外は、例1と同様にして記録用媒体を形成した。このときの擬ベーマイトの乾燥時の担持量は10g/m2 、シリカゲルの乾燥時の担持量は0.9g/m2 である。また同様に、上記基材のみについて窒素吸脱着法で細孔分布を測定したところ、細孔半径33nm以下の細孔および上記のうちでも細孔半径5〜30nmの範囲の細孔は、いずれも単位面積あたり細孔容積1.6cc/m2 であった。
【0041】
[例5(比較例)]
例2において、擬ベーマイト層およびシリカゲル層を形成せずに基材のみを用いた。
【0042】
[印字評価]
例1〜5の記録用媒体に、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン株式会社製、商品名:MJ−5000C)により、カラー印刷を行ってインク吸収性の定性評価を行った。評価には、濃いブルー(シアンとマゼンタの混色)を背景にしてマゼンタの微細な文字を印字するパターンを使用した。記録用媒体の吸収性が不足すると、ブルーの背景の縁の部分からマゼンタがにじみ出たり、マゼンタの文字部分にブルーがにじみ出たりする。印字評価をした結果、例1、例2、例3、例5の受像媒体はにじみ出しは見られなかったが、例4では大きなにじみ出しが見られた。
【0043】
[色濃度測定]
例1〜5の記録用媒体にインクジェットプリンタで印刷した記録画像について、色濃度計(GRETAG社製、商品名SPM100−II)を使用して、色濃度を測定したところ、表1のようになった。通常、色濃度が1.5以上で、鮮明な画像が得られる。
【0044】
[吸液量測定]
ブリストー法試験機(熊谷理機工業株式会社製、商品名No.207)を用いて、印字評価に用いたシアンインク(セイコーエプソン株式会社製、商品名MJIC2C)を使用して常温・常圧での吸液量を測定した。この吸液特性曲線より接触時間が0.05秒までの吸液量を測定したところ、表1のようになった。
【0045】
このとき、印字評価および吸液量測定に使用したシアンインクについて、常温での粘度と表面張力を、それぞれ粘度計(ブルックシールド エンジニアリングラボラトリーズ社製、商品名LVF)および表面張力計(協和科学社製、商品名ESB−V)を用いて測定したところ、粘度は2.5cP、表面張力は30dyn/cmであった。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
本発明のインクジェット用記録用媒体は、インクを速やかに吸収し、高い色濃度が得られる。このため、インクのにじみ出しがなくかつ画質は鮮明である。
Claims (2)
- インク吸収性を有する基材上に、平均細孔半径5〜30nm、かつ、細孔容積0.3〜2.0cc/gである多孔質インク受容層を形成したインクジェット記録用媒体であって、上記基材が、シリカを含有したポリエチレンからなるフィルム状の微孔性物質である合成紙であり、細孔半径がインク受容層の平均細孔半径の3倍以下の細孔を、基材の単位面積あたりの容積として2〜1000cc/m2で有し、かつ、ブリストー法により、粘度が2.5cP、表面張力が30dyn/cmである水系インクを用いた測定で、接触時間が0.05秒までの吸液量が10cc/m2以上である、インクジェット記録用媒体。
- インク受容層上に、平均粒子直径が5〜200nmである球状粒子層を有する請求項1に記載のインクジェット記録用媒体。
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