JP3754321B2 - 結晶シート製造装置 - Google Patents
結晶シート製造装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3754321B2 JP3754321B2 JP2001151124A JP2001151124A JP3754321B2 JP 3754321 B2 JP3754321 B2 JP 3754321B2 JP 2001151124 A JP2001151124 A JP 2001151124A JP 2001151124 A JP2001151124 A JP 2001151124A JP 3754321 B2 JP3754321 B2 JP 3754321B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- substrate holder
- substrate
- sheet
- melt
- heat
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E10/00—Energy generation through renewable energy sources
- Y02E10/50—Photovoltaic [PV] energy
Landscapes
- Silicon Compounds (AREA)
- Liquid Deposition Of Substances Of Which Semiconductor Devices Are Composed (AREA)
- Photovoltaic Devices (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池の結晶シリコン基板などの結晶シートを製造するために好適に実施することができる結晶シート製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術における結晶シート製造技術の一例として、太陽電池セルの基板に用いられる多結晶シリコンの代表的な製造手順について述べる。炉内に封止される高温の不活性ガス雰囲気中で、容器に入れた低コスト精製シリコンなどのシリコン原料に、リンまたはボロンなどのドーパントを添加して加熱溶融し、その融液を鋳型に流し込み、冷却して固化することによって、多結晶シリコンインゴットを製造する鋳造法またはキャスト法と呼ばれる手法が採用されている。
【0003】
この多結晶シリコンインゴットは、スライシング工程においてブレードソーまたはワイヤーソーによって切断され、複数のシリコンウエハに分割される。こうして作製されたシリコンウエハは、洗浄工程、拡散工程および電極形成工程などを経て、多結晶シリコン太陽電池セルが製造される。
【0004】
このような従来の技術では、多結晶シリコンインゴットを得るための鋳造工程に加え、多結晶シリコンインゴットをスライシングするスライス工程が必要である。このスライス工程で、シリコンウエハを1枚切断するたびに、ブレードまたはワイヤの厚み(約0.2mm)と、砥粒の粒径(約0.1mm)とを加えた切り代(約0.3mm)に相当する材料が、切断粉として除去されてしまうため、歩留まりが悪く、太陽電池の製造コストに対する低コスト化を図る上で、大きな障害になっている。
【0005】
他の従来の技術では、上記の従来の技術の問題を解決するために、溶融シリコンから直接、シリコンシートを作製する方法および装置が提案され、試みられつつある。この従来の技術は、炉内の不活性ガス雰囲気中で、シート生成基板を、シリコン融液中に一定時間浸漬させ、該シート生成基板の表面にシリコンを付着、成長させてシリコンシートを作製する。
【0006】
図12は、従来のシリコンシート製造装置210の一例の概略構成を示す側面断面図である。シリコンシート製造装置210は、回転軸213と一体に回転する基板保持体211の外周部に、シート生成基板202が周方向に間隔をあけて配置され、これらの下方に、シリコン融液216が貯留された坩堝217を上下移動させる昇降台218が配置されて構成されている。また、基板保持体211の内部には、シリコンシート製造装置210外部から冷却媒体を導入する冷却回路212が設けられ、回転軸213内にシリコンシート製造装置210外部から冷却媒体を導入する管路214と、管路214の外周に該管路214を覆うように管路215とが設けられている。冷却媒体としては、基板保持体11の下部にはシリコン融液216が貯留された坩堝217があるので、安全上N2ガスを用いることが好ましい。
【0007】
シート生成基板201は、基板保持体211が回転軸213の軸線まわりに回転駆動され、坩堝217に貯留されたシリコン融液216中に順次浸漬され、該シート生成基板201の表面にシリコンが付着する。この間、シリコン融液216に浸漬されたシート生成基板201から基板保持体211に伝達された熱は、管路214から冷却回路212内に送込まれる冷却媒体によって吸収され、該冷却媒体は管路215から外部へ流される。このようにしてシート生成基板201から伝達された基板保持体211の熱を効率よく外部に放出して抜熱することによって、該シート生成基板201の表面に付着したシリコンが凝固成長する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような従来の技術では、シート生成基板201から最も離れた回転軸213付近から基板保持体211が除熱されるので、シート生成基板201の冷却効果は低いという問題がある。
【0009】
また、外部から冷却媒体を基板保持体211内部に導入して再び外部へ導出するための構造を設けなければならないので、シリコンシート製造装置210の構成が複雑になるという問題がある。
【0010】
さらに、基板保持体11は、回転軸213に常に固定された状態で使用され、下部からの高温の融液216に常に暴露されるので、基板保持体11だけでなく回転軸213の構造材料も耐熱性材料に限定され、その耐熱性材料によって回転軸213の機械的強度をも維持することは困難である。したがって、機械的強度を維持するために頻繁にメンテナンスが必要で、その複雑な装置構成とも相まってさらにメンテナンス費用がかかるという問題もある。
【0011】
本発明の目的は、融液への浸漬による結晶シートの製造において、簡単な装置構成で装置への熱負荷を軽減して信頼性および生産を向上した結晶シート製造装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、製造されるべき結晶シートの原料を加熱溶融した融液が貯留される容器と、前記容器内の融液に浸漬して融液を付着させ、この付着した融液の凝固によって結晶シートを生成するシート生成基板と、前記シート生成基板を保持し、冷却媒体を封入した流路を有する基板保持体とを含むことを特徴とする結晶シート製造装置である。
【0013】
本発明に従えば、融液に浸漬されるシート生成基板を保持する基板保持体の内部に冷却媒体を封入した流路を有するので、基板保持体を効果的に冷却することができ、基板保持体が本体装置に装着される構造部分への熱移動によって機械的強度の維持が困難になるなどの熱的問題が発生することがない。また、冷却媒体は基板保持体内部の流路に封入するので、簡単な構成により、低コストで結晶シート製造装置を作製することができるとともに、複雑な装置構成によってメンテナンス費用がかかるという問題も生じない。
【0014】
また本発明は、前記基板保持体は、1以上のシート生成基板を保持して、本体装置の略水平な回転軸線まわりに転動可能に備えられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に従えば、1以上のシート生成基板を保持する基板保持体が本体装置の略水平な回転軸線まわりに転動可能に配設されているので、基板保持体を転動することよって、シート生成基板を融液に浸漬し、シート生成基板の表面に融液を付着させることができる。シート生成基板の表面に付着した融液は、時間経過に伴う温度低下によって凝固し、シート生成基板の表面に結晶シートが生成される。特に複数のシート生成基板を保持して基板保持体の転動によって各シート生成基板を順次融液に浸漬する場合でも、前記流路の冷却媒体によって、基板保持体が取付けられた本体装置の回転軸を含む構造部分への熱移動により該構造部分付近が絶えず高温に暴露されることを防ぐことができる。
【0016】
また本発明は、前記基板保持体は、本体装置の回転軸に着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、シート生成基板を保持したまま基板保持体を取外したり取付けたりすることができるので、本体装置内の浸漬位置または高温の余熱のある位置でシート生成基板から生成されたシートの剥離を行う場合と異なり、本体装置外できわめて安定した状態で、取外した基板保持体に保持されているシート生成基板から剥離作業を行うことが可能である。また、シート生成基板を浸漬した状態で基板保持体を1回転または複数回転した後は、基板保持体を融液の容器上から移動して取外すので、基板保持体は、シート生成基板を浸漬した状態で基板保持体を1回転または複数回転する限られた時間だけ高温の融液からの熱を受け、熱負荷が軽減される。
【0018】
また本発明は、前記流路は、冷却媒体の量を調整して封入可能に設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、流路へ封入する冷却媒体の量を調整することによって、生成するシート厚に対応する浸漬時間によって基板保持体に必要な冷却能力を調整して確保することができ、結晶シートの高品質化および歩留まり向上に大きく寄与することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体1の概略構成を示す正面図である。図2は、図1の切断面腺I−Iから見た断面を示す。基板保持体1は、円筒状耐熱材7の外周部に、周方向に支持基板3を介して複数のシート生成基板2を備える。該円筒状耐熱材7の内部に、周方向に流路4が設けられている。流路4内には、その一部を占めるように冷却媒体8が封止カバー6で封入されている。前記円筒状耐熱材7の軸部分には、基板保持体取付け穴5として空洞が設けられている。冷却媒体8としては、水、油などの液体を用いることができる。本実施形態においては、水を用いる。
【0021】
図3は、図1のシート生成基板2を融液21に浸漬するようすを示す部分断面図である。基板保持体1の下方に、上下移動可能な昇降台26上に載置された容器20が配置される。容器20は、坩堝によって実現され、シート生成基板2の表面に成膜する結晶シート材料を過熱溶融した融液21を貯留する。シート生成基板2の素材としては、融液21の温度よりも融点が高く、融液との反応性の少ない黒鉛、炭化ケイ素、石英、窒化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウムなどから融液材料に応じて適した材料を選択する。本実施形態においては、融液21としてシリコン融液を使用し、シート生成基板2として耐熱性に優れた黒鉛材料を用いる。
【0022】
結晶シート生成時には、基板保持体1の外周部に配設された複数の黒鉛材料からなるシート生成基板2のうち、最も下方に配置されるシート生成基板2がシリコンの融液21に浸漬される位置まで、昇降台26を上昇させて、基板保持体1を軸線周りに矢符A方向に回転して各シート生成基板2を順次的に融液21に浸漬し、各シート生成基板2の表面にシリコンを付着させて、シリコンシートを生成する。
【0023】
その間、シート生成基板2は、融液21への浸漬時に高温の融液21から直接的に加熱され、当該シート生成基板2を固定している基板保持体1の円筒状耐熱材7に熱が伝達される。その熱の一部は、基板保持体1内に周方向に設けられた流路4に封入された冷却媒体8によって吸熱される。冷却媒体8としての水は、吸熱して蒸気となって、流路4内の上部に移動する過程で、または、上部に到達して、流路4内部上方で蒸気は冷却されて水滴となって滴下する。冷却媒体8としての水は、シート生成基板2から基板保持体1に伝達される熱量に応じて、相当する量の蒸気となって流路4内を上方に移動する。たとえば伝達される熱量が多いと、水は大量の蒸気となって流路4内を上方に移動するので、伝達熱量が多くても、すばやく基板保持体1全体に熱が分散移動される。具体的には、生成するシート厚に対応して浸漬時間によって、基板保持体内に封じ込める冷却媒体の量を調整することで、基板保持体の温度制御が可能である。
【0024】
図4は、本発明の第1実施形態による結晶シート製造装置の概略構成を示す平面断面図である。本実施形態の結晶シート製造装置は、図1および図2に示した基板保持体1を用いることを特徴とし、該基板保持体1は、基板保持体取付け穴5で結晶シート製造装置に着脱可能に装着される。結晶シート製造装置は、装置本体100、第1搬送装置65、供給装置60、取出し装置50および第2搬送装置55を含む。この製造装置は、結晶シートの製造方法を実施するために用いられ、本実施の形態では、結晶シートの一例として、太陽電池の多結晶シリコン基板を製造する場合について説明する。
【0025】
前記装置本体100は、円筒状の周壁32と、この周壁32内に周壁32と同軸の回転軸線L1まわりに回転自在に設けられる回転体33とを含む。回転体33は、周壁32よりその半径が小さい円筒状の中央璧部34と、その外周部に周方向等間隔で周壁32に近接するように突出する4本の側壁部35とを有する。周壁32の内周面は、回転体33の側壁部35の突出する先端と、回転体3の回転を許容し得る程度の微小な間隔をあけて離間している。周壁32および回転体33は、熱膨張率の小さく耐熱性で断熱性の材料、たとえば多孔質セラミックで構成される。したがって、各断熱室29a〜29dは、相互間の自由な雰囲気ガスの移動を許容しない、いわば遮蔽状態とされる。
【0026】
周壁32内側は、回転体33の中央璧部35外側および側壁部35によって、4つの断熱室36a,36b,36c,36dに仕切られる。回転体33の中央璧部35の外周部には、両側の側壁部35に挟まれる略中央に、各保持体1a,1b,1c,1d(総称する場合には、基板保持体1と記す場合がある)が各回転軸37a,37b,37c,37dに取付けられる。したがって、各基板保持体1は、各断熱室36a〜36dに収納される。
【0027】
回転軸37a〜37dは、各基板保持体1a〜1dを軸周りに回転させるため、回転体33の中央壁部35内で、各々クラッチ38a〜38dに結合され、クラッチより回転体33の中心部で、その同軸上に回転軸傘歯車41a〜41dが配設されている。回転軸傘歯車41a〜41dは、回転体33の中央部に設けられ、基板保持体駆動モータ39に連結する駆動傘歯車40にそれぞれ噛合わされ、軸周りに回転する。
【0028】
前記断熱室36a〜36dは、回転体33の回転方向Fに沿って、各基板保持体1を回転軸37a〜37dに順次的に装着する供給行程、回転体33を回転方向Fに90°回動した位置でシート生成基板2が予備加熱される予備加熱行程、基板保持体1に保持される各シート生成基板2を容器20に貯留される融液21に浸漬する浸漬行程、および浸漬行程において各シート生成基板2に融液21が付着・凝固した基板保持体1を装置本体100から周壁32の外方へ取出す取出し行程にそれぞれ対応して、90°毎に振分けられた供給位置P1、予備加熱位置P2、浸漬位置P3および取出し位置P4にそれぞれ設けられている。
【0029】
浸漬位置P3の断熱室36c内で、容器20は、回転体33の回転軸線L1まわりの回転によって移動する基板保持体1の移動経路の下方に設けられる。この断熱室29cには、たとえば酸化などのように融液が不純物材料と反応することを避けるため、不活性ガス雰囲気とされる。この不活性ガスとしては、たとえばArガスが用いられる。
【0030】
供給位置P1に配置される周壁部分には、供給側透孔が形成され、この供給側透孔は、シート生成基板2を備える基板保持体1が遊通することができ、開閉可能に設けられる扉45で塞がれる。また、取出し位置P4に配置される周壁部分には、取出し側透孔が形成され、この取出し側透孔には、結晶シリコン膜が生成されたシート生成基板2を備える基板保持体1が遊通することができ、開閉可能に設けられる扉46で塞がれる。
【0031】
供給位置P1の扉45の外側方(図1の上方)には、供給装置60が設けられる。この供給装置60は、第1搬送装置65によって矢符B方向に搬送されてきた基板保持体1を、供給位置P1に配置されている断熱室36a内に供給して、回転軸37aに装着する着脱装置62と、供給位置P1に配置される周壁部分に気密に接合され、着脱装置62が収容される中空直方体状の封止カバー体61とを含む。封止カバー体61の一側部には、第1搬送装置65によって矢符B方向に搬送されてきた基板保持体1が、着脱装置62によって把持された状態で、封止カバー体61の前記空間内へ通過することができる搬入孔が形成され、開閉可能な扉64によって塞がれる。供給側の着脱装置62は、略鉛直な回転軸線L2まわりに矢符D1,D2方向に回動する回動部と、回動部から一半径線方向に突出し、先端部を基板保持体1の基板保持体取付け穴に挿入して把持することができるアーム63とを有する。
【0032】
取出し装置40は、封止カバー体51と、封止カバー体51内に収容され、矢符E1,E2方向に回動する着脱装置52とを有する。封止カバー体51は、周壁32の取出し位置P4に配置される周壁部分に、開閉可能な扉46によって塞がれる取出し側透孔を外囲して、気密に接続される。着脱装置52は、略鉛直な回転軸線L3まわりに矢符E1,E2方向に回動する回動部と、回動部から一半径線方向に突出し、先端部を基板保持体1の基板保持体取付け穴5に挿入して把持することができるアーム53とを有する。この取出し側の着脱装置52は、前記供給側の着脱装置62と同様の構成を有する。封止カバー体51の一側部には、着脱装置52によって把持された基板保持体1が、第2搬送装置55内へ通過することができる搬入孔が形成され、開閉可能な扉54によって塞がれる。
【0033】
次に、本実施形態の結晶シート製造装置の動作について、図3をも参照して説明する。基板保持体1cは、供給位置P1から予備加熱位置P2を経て、浸漬位置P3の断熱室36cに配置される。
【0034】
まず、浸漬位置P3の断熱室36cでは、基板保持体1cが容器20上に位置するまでは、容器20は下方にある。基板保持体1cが容器20上に位置するまで移動して停止すると、図示しない昇降台昇降モータの駆動により、基板保持体1cの外周部に配設された複数のシート生成基板2のうち最も下方に配置されたシート生成基板2が、容器20内のシリコンの融液21に浸漬される位置まで、昇降台26を上昇させる。
【0035】
昇降台26の上昇によって、その最も下方のシート生成基板2を浸漬すると、基板保持体駆動モータ39を回転させ、かつ基板保持体1cの回転軸37cと連結しているクラッチ38cを動作させる。駆動傘歯車40による駆動力が、回転軸傘歯車41c、クラッチ38c、基板保持体1cへ回転力として伝達され、基板保持体1cを矢符A方向に1回転または複数回転させる。この回転によって、各シート生成基板2を順次的に融液21に浸漬し、各シート生成基板2の表面にシリコンを付着させる。
【0036】
この浸漬時に、シート生成基板2は高温の融液21から直接的に加熱され、当該シート生成基板2を固定している基板保持体1に熱が伝達される。その熱の一部は、基板保持体1内に周方向に設けられた流路4に封入された冷却媒体8としての水によって吸熱される。吸熱して水は蒸気となって流路4内の上部に移動し、その蒸気は流路4内部上方で冷却されて水滴となって滴下する。水が蒸気となって流路4内の上部に移動する過程で基板保持体1全体にすばやく熱を分散することによって、融液21から直接的に加熱されたシート生成基板2および該シート生成基板2の近傍の基板保持体1の温度が下げられ、シート生成基板2に凝固成長したシリコンシートが形成される。
【0037】
浸漬終了後、容器20を昇降台昇降モータの駆動により昇降台26を下方に移動させ、結晶シートを形成した基板保持体1cを、回転体33と一体に矢符F方向に回転移動させ、隣接する取出し位置P4の基板保持体1dで示す位置に配置する。断熱室36cも断熱室36dで示す位置に移動されることになる。
【0038】
次いで、取出し位置P4に配置された基板保持体1cを取出す。シート生成基板2の表面に生成した結晶シートを1枚ずつ剥離回収することも可能であるが、本実施形態では基板保持体1を取出す。周壁32に設けられた扉46を開き、取出し装置50では、着脱装置52がアーム53の先端部を一半径線方向に突出して基板保持体1cの基板保持体取付け穴5に挿入して把持する。着脱装置52は、基板保持体1cを把持したまま、その先端部を突出前の位置まで引込んで、基板保持体1aを回転軸37cから抜去し、回転軸線L3まわりに矢符E1方向に回動し、扉54に対峙する位置で停止する。このとき扉46を閉鎖するとともに扉54が開き、基板保持体1cを把持した先端部を一半径線方向に突出し、第2搬送装置55の基板保持体1eで示す位置に装着させた後、先端部を突出前の位置まで引込む。
【0039】
第2搬送装置55では、扉54を塞いで矢符C方向に基板保持体1cが搬送される。搬送された基板保持体1cは、別途剥離装置で、その基板保持体取付け穴5が回転可能に保持され、シート生成基板2から結晶シートが剥離回収される。この作業は本体装置100の制約された中で、かつ前工程である浸漬工程での高温の余熱がある取出し位置P4に位置する断熱室36の中で行う場合に比べ、きわめて安定した状態で作業することが可能である。
【0040】
次いで、取出し位置P4で基板保持体1cが取外された回転体33を矢符F方向に回動させ、基板保持体1cが取外された断熱室36cを、断熱室36aで示す位置、すなわち供給位置P1に配置する。
【0041】
第1搬送装置60では、基板保持体1fが矢符B方向に搬送されてくる。着脱装置62は、アーム63の先端部を回転軸線L2まわりに矢符D2で示す時計方向に略90°回動し、扉64に対峙する位置で停止する。このとき扉64が開き、アーム63の先端部を一半径線方向に突出し、基板保持体1fの基板保持体取付け穴5に挿入して把持し、そのまま先端部を突出前の位置まで引込み、扉64が塞がれる。
【0042】
着脱装置62は、アーム63の先端部が基板保持体1fを把持したまま、その先端部を回転軸線L2まわりに矢符D1で示す反時計方向に略90°回動し、扉45に対峙する位置で停止する。装置本体100の扉45が開かれ、着脱装置62は、基板保持体1fが把持された先端部を一半径線方向に突出し、周壁2を通過して、基板保持体1cが取外されて供給位置P1の断熱室36aで示す位置に配置された断熱室36cの回転軸37cに基板保持体1fを装着する。その後、先端部を突出前の位置まで引込み、扉45が塞がれる。
【0043】
次いで、供給位置P1で基板保持体1fが装着された回転体33を矢符F方向に回動させ、基板保持体1fが装着された断熱室36cを、断熱室36bで示す位置、すなわち予備加熱位置P2に配置する。予備加熱位置P2の基板保持体1bで示す位置に移動され、予備加熱装置44の上方に配置された基板保持体1fは、基板保持体駆動モータ39を回転させ、クラッチ38cを動作させて駆動傘歯車40による駆動力が、回転軸傘歯車41から回転力として伝達されて矢符A方向に回転される。基板保持体1fが回転することによって、基板保持体1fの外周部に備えられたシート生成基板2が均一に予備加熱される。予備加熱温度は、使用される溶融材料の材質および作製する結晶シート厚さなどにより異なるが、本実施形態による結晶シート製造装置においては400〜1200℃に加熱可能である。本実施形態による結晶シート製造装置は、予備加熱位置P2および浸漬位置P3のように、加熱する空間が断熱壁で仕切られて限定されているので、加熱時の熱損失を最小に押さえることができる。
【0044】
次いで、予備加熱位置P2で予備加熱された基板保持体1fが装着された回転体33を矢符F方向に回動させ、基板保持体1fが装着された断熱室36cを、再び浸漬位置P3に配置して、前述の動作を繰返す。
【0045】
以上の動作説明においては、断熱室36c内に設けられ基板保持体1cが浸漬位置P3に配置された状態から、回転体3を矢符F方向に360°回動し、再び浸漬位置P3に戻るまでの、浸漬位置P3、取出し位置P4、供給位置P1、予備加熱位置P2における各動作について説明した。各断熱室36a,36b,36dに設けられた基板保持体1についても、動作時期が異なること以外は断熱室36cに設けられた基板保持体1が配置される浸漬位置P3、取出し位置P4、供給位置P1、予備加熱位置P2における動作と全く同様である。
【0046】
本実施形態による結晶シート製造装置の本体装置100に装着される各基板保持体1は、その内部に冷却媒体を封入した流路を設けて必要な冷却能力を有しているので、本体装置100を連続的に稼動させても本体装置100の回転軸37への熱移動による熱的問題は発生することがなく、内部構造体の設計が容易になるとともに、簡潔に構成することができる。このような構成により装置をコンパクトにすることができる。特に、第1実施形態による結晶シート製造装置のような構成において、基板保持体は、断熱室36cで最も熱負荷を受けるが、図12に示した従来装置において常時、融液216からの熱負荷を受ける基板保持体211と比較して、基板保持体1が熱負荷を受けるのは、外周部のシート生成基板2を浸漬した状態で1回転または複数回転する限られた時間のみであり、当該基板保持体1を装着した装置に対する熱負荷も軽くなる。また、浸漬位置P3、取出し位置P4、供給位置P1、予備加熱位置P2における動作は独立に、かつ並行して行う場合に、熱的問題が発生することなく連続稼動させることができるので、きわめて高い生産性が得られる。
【0047】
図5は、本発明の第2実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体1の概略構成を示す正面図である。図6は、図5の切断面線II−IIから見た断面を示す。第2実施形態における基板保持体101は、図1に示した第1実施形態における基板保持体1の冷却媒体流路の形状を応用した例である。したがって、基板保持体101は、第1実施形態の基板保持体1と同様、図4に示したような結晶シート製造装置において用いられる。
【0048】
基板保持体101は、円筒状耐熱材107の外周部に、周方向に支持基板103を介して複数のシート生成基板102を備える。該円筒状耐熱材107の内部に、半径の異なる2本の円周状流路104a,104bが周方向に設けられ、これらの流路間を複数本のスリット状流路104cで半径方向に連結している。連結された流路内には、その一部を占めるように冷却媒体108が封止カバー106で封入されている。円筒状耐熱材107の軸部分には、基板保持体取付け穴105として空洞が設けられている。円筒状耐熱材107,シート生成基板102および支持基板103の材質ならびに冷却媒体108は、第1実施形態と同様である。
【0049】
次に、基板保持体101の外周部に備えたシート生成基板102に結晶シートを形成する動作について説明する。
【0050】
基板保持体101の外周部に配設されたシート生成基板102には、第1実施例と同様にして結晶シートが形成される。その間、シート生成基板102は、融液への浸漬時に高温の融液から直接的に加熱され、円筒状耐熱材107に熱が伝達され、その一部が、円周状流路104a,104bおよびスリット状流路104cに封入された冷却媒体108によって吸熱される。冷却媒体108としての水は、吸熱して蒸気となって、円周状流路104aからスリット状流路104cを経て円周状流路104bへ、または円周状流路104a内を上方へ移動する。移動した蒸気は、円周状流路104bまたは円周状流路104a内の上方で冷やされて水滴となり、円周状流路104bからスリット状流路104cを経て円周状流路104aに、または円周状流路104aの上方から下方へ滴下する。
【0051】
基板保持体101においては、円周状流路104a,104bおよびスリット状流路104cを設けたので、冷却媒体108としての水の蒸発量をより広範に拡散させることができるとともに、より多くの冷却媒体108を密封することができる。このような基板保持体101は、たとえば、基板保持体101を低速で回転させて厚めのシートを作製する際に、より多量の熱を融液から受けるような結晶シート生成条件においても、多量の伝達熱量に対応して基板保持体101の円筒状耐熱材107下部の温度上昇を抑えることができる。
【0052】
図7は、本発明の第3実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体111の概略構成を示す正面図である。図8は、図7の切断面線III−IIIから見た断面を示す。基板保持体111は、板状耐熱材117の下端に支持基板113を介してシート生成基板112を連結固定している。該板状耐熱材117に、流路114aと、その上部に円周状流路114bとを設け、これらの流路114aおよび114bの間をスリット状流路114cで連結している。連結された流路内には、その一部を占めるように冷却媒体118が封止カバー116で封入されている。板状耐熱材117において円周状流路114bの軸部分には、基板保持体取付け穴115として貫通孔が設けられている。板状耐熱材117の材質は第1実施形態の円筒状耐熱材7と同様であり、シート生成基板112および支持基板113の材質ならびに冷却媒体118についても、第1実施形態と同様である。該基板保持体111は、図4に示したような結晶シート製造装置において用いられる。
【0053】
図9は、図7のシート生成基板112を融液21に浸漬するようすを示す部分断面図である。基板保持体111は、基板保持体取付け穴115を、たとえば図4に示した結晶シート製造装置の回転軸37へ挿入して、着脱自在に取付けられる。したがって、基板保持体111の下方に、上下移動可能な昇降台26上に載置され、結晶シート材料を過熱溶融した融液21を貯留する容器20が配置されることになる。
【0054】
結晶シート生成時には、基板保持体111の下部で連結固定されたシート生成基板2がシリコンの融液21に浸漬される適正な位置まで、昇降台26を上昇させて、容器26の上昇により融液21が納められた容器26が浸漬適正な位置まで上昇する。回転軸37に取付けられた基板保持体111は、α位置から矢符H方向に回動し、融液21中にシート生成基板112が浸漬した後、β位置で停止する。これによりシリコンがシート生成基板112に付着生成する。シート生成条件により、たとえば厚いシートを生成する場合には、さらにG方向に逆回転させる。シート生成厚みにより、この時計の振り子運動を複数回以上繰返す場合もある。
【0055】
前述のようにしてシート生成基板112にシリコンが付着生成する間、シート生成基板112は、融液への浸漬時に高温の融液から直接的に加熱され、板状耐熱材117に熱が伝達され、その一部が、流路114aに封入された冷却媒体118によって吸熱される。冷却媒体118としての水は、吸熱して蒸気となって、流路114aからスリット114cを経て円周状流路104bへ移動することによって、すばやく板状耐熱材117上部に熱が分散移動する。移動した蒸気は、円周状流路104b内で冷やされて水滴となり、円周状流路104bからスリット状流路104cを経て流炉104aに滴下する。
【0056】
次に、基板保持体111を備える結晶シート製造装置の動作について、第1実施形態と異なる動作を主として簡単に説明する。
【0057】
結晶シート製造装置において、基板保持体111は第1実施形態と同様にして本体装置100の供給位置P1で回転軸37に取付けられ、該基板保持体111が取付けられた回転体33は、矢符F方向に回動して予備加熱位置P2に位置する。予備加熱位置P2に位置する断熱室36内で、基板保持体111は、たとえばα位置からβ位置までの傾きで回転摺動して当該基板保持体111のシート生成基板112が均一に予備加熱される。予備加熱後、回転体33は矢符F方向に回動して予備加熱された基板保持体111は浸漬位置P3に位置し、前述のように、図9に示した浸漬動作において、流路114a,円周状流路114b、スリット状流路114c内で冷却媒体118が作用し、シート生成基板112に結晶シートが生成する。結晶シートを形成した基板保持体111は、回転体33がさらにF方向に回動して取出し位置P4に位置し、第1実施形態と同様にして基板保持体111が取出される。回転体33が矢符F方向に回動し、基板保持体111が取出された断熱室36が再び供給位置P1に配置されて、前述の動作を繰返す。
【0058】
図10は、本発明の第4実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体121の概略構成を示す正面図である。図11は、本発明の第5実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体131の概略構成を示す正面図である。第4および第5実施形態における基板保持体121,131は、いずれも図7に示した第3実施形態における基板保持体111の冷却媒体118を封入する流路形状をアレンジした例である。
【0059】
第4実施形態の基板保持体121において、冷却媒体128を封入する流路は、板状耐熱材127に下部の流路124a、上部の流路124cが水平方向に配置され、これらの流路を2本のスリット状流路124bで連結している。これらの流路124a,124c,124bで囲まれた板状耐熱材127に基板保持体取付け穴125が設けられる。第5実施形態の基板保持体131において、冷却媒体138を封入する流路は、板状耐熱材137の外周に沿った形状で外周より内側に一本の閉じられた流路134として形成されている。
【0060】
基板保持体121,131は、第3実施形態の基板保持体111と同様の結晶シート製造装置において用いられ、その浸漬動作においても、基板保持体121,131の流路124,134に封じ込められた冷却媒体128,138は、基板保持体111における冷却媒体118と同様に作用して、結晶シートを生成する。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、融液に浸漬されるシート生成基板を保持する基板保持体の内部に冷却媒体を封入した流路を有することによって、簡単な構成で基板保持体を効果的に冷却して装置への熱負荷を軽減し、低コストで熱的問題が発生することがない結晶シート製造装置を提供することができる。
【0062】
また本発明によれば、前記冷却媒体を封入した基板保持体を、着脱可能に本体装置の回転軸線まわりに転動可能に配設したので、転動により基板保持体が保持するシート生成基板を融液に浸漬した後、基板保持体を取外して本体装置外でシートを剥離するようにして、基板保持体が高温の融液からの熱負荷を受ける時間を軽減して、信頼性および生産性を向上した結晶シート製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体1の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1の切断面腺I−Iから見た断面を示す。
【図3】図1のシート生成基板2を融液21に浸漬するようすを示す部分断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による結晶シート製造装置の概略構成を示す平面断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体1の概略構成を示す正面図である。
【図6】図5の切断面線II−IIから見た断面を示す。
【図7】本発明の第3実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体111の概略構成を示す正面図である。
【図8】図7の切断面線III−IIIから見た断面を示す。
【図9】図7のシート生成基板112を融液21に浸漬するようすを示す部分断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体121の概略構成を示す正面図である。
【図11】本発明の第5実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体131の概略構成を示す正面図である。
【図12】従来のシリコンシート製造装置210の一例の概略構成を示す側面断面図である。
【符号の説明】
1,101,111,121,131 基板保持体
2,102,112,122,132 シート生成基板
3,103,113,123,133 支持基板
4,104a〜c,114a〜c,124a〜c,134 流路
5,105,115,125,135 基板保持体取付け穴
6,106,116 封止カバー
7,107 円筒状耐熱材
8,108,118,128,138 冷却媒体
20 容器
21 融液
24 誘電加熱装置
26 昇降台
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池の結晶シリコン基板などの結晶シートを製造するために好適に実施することができる結晶シート製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術における結晶シート製造技術の一例として、太陽電池セルの基板に用いられる多結晶シリコンの代表的な製造手順について述べる。炉内に封止される高温の不活性ガス雰囲気中で、容器に入れた低コスト精製シリコンなどのシリコン原料に、リンまたはボロンなどのドーパントを添加して加熱溶融し、その融液を鋳型に流し込み、冷却して固化することによって、多結晶シリコンインゴットを製造する鋳造法またはキャスト法と呼ばれる手法が採用されている。
【0003】
この多結晶シリコンインゴットは、スライシング工程においてブレードソーまたはワイヤーソーによって切断され、複数のシリコンウエハに分割される。こうして作製されたシリコンウエハは、洗浄工程、拡散工程および電極形成工程などを経て、多結晶シリコン太陽電池セルが製造される。
【0004】
このような従来の技術では、多結晶シリコンインゴットを得るための鋳造工程に加え、多結晶シリコンインゴットをスライシングするスライス工程が必要である。このスライス工程で、シリコンウエハを1枚切断するたびに、ブレードまたはワイヤの厚み(約0.2mm)と、砥粒の粒径(約0.1mm)とを加えた切り代(約0.3mm)に相当する材料が、切断粉として除去されてしまうため、歩留まりが悪く、太陽電池の製造コストに対する低コスト化を図る上で、大きな障害になっている。
【0005】
他の従来の技術では、上記の従来の技術の問題を解決するために、溶融シリコンから直接、シリコンシートを作製する方法および装置が提案され、試みられつつある。この従来の技術は、炉内の不活性ガス雰囲気中で、シート生成基板を、シリコン融液中に一定時間浸漬させ、該シート生成基板の表面にシリコンを付着、成長させてシリコンシートを作製する。
【0006】
図12は、従来のシリコンシート製造装置210の一例の概略構成を示す側面断面図である。シリコンシート製造装置210は、回転軸213と一体に回転する基板保持体211の外周部に、シート生成基板202が周方向に間隔をあけて配置され、これらの下方に、シリコン融液216が貯留された坩堝217を上下移動させる昇降台218が配置されて構成されている。また、基板保持体211の内部には、シリコンシート製造装置210外部から冷却媒体を導入する冷却回路212が設けられ、回転軸213内にシリコンシート製造装置210外部から冷却媒体を導入する管路214と、管路214の外周に該管路214を覆うように管路215とが設けられている。冷却媒体としては、基板保持体11の下部にはシリコン融液216が貯留された坩堝217があるので、安全上N2ガスを用いることが好ましい。
【0007】
シート生成基板201は、基板保持体211が回転軸213の軸線まわりに回転駆動され、坩堝217に貯留されたシリコン融液216中に順次浸漬され、該シート生成基板201の表面にシリコンが付着する。この間、シリコン融液216に浸漬されたシート生成基板201から基板保持体211に伝達された熱は、管路214から冷却回路212内に送込まれる冷却媒体によって吸収され、該冷却媒体は管路215から外部へ流される。このようにしてシート生成基板201から伝達された基板保持体211の熱を効率よく外部に放出して抜熱することによって、該シート生成基板201の表面に付着したシリコンが凝固成長する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述のような従来の技術では、シート生成基板201から最も離れた回転軸213付近から基板保持体211が除熱されるので、シート生成基板201の冷却効果は低いという問題がある。
【0009】
また、外部から冷却媒体を基板保持体211内部に導入して再び外部へ導出するための構造を設けなければならないので、シリコンシート製造装置210の構成が複雑になるという問題がある。
【0010】
さらに、基板保持体11は、回転軸213に常に固定された状態で使用され、下部からの高温の融液216に常に暴露されるので、基板保持体11だけでなく回転軸213の構造材料も耐熱性材料に限定され、その耐熱性材料によって回転軸213の機械的強度をも維持することは困難である。したがって、機械的強度を維持するために頻繁にメンテナンスが必要で、その複雑な装置構成とも相まってさらにメンテナンス費用がかかるという問題もある。
【0011】
本発明の目的は、融液への浸漬による結晶シートの製造において、簡単な装置構成で装置への熱負荷を軽減して信頼性および生産を向上した結晶シート製造装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、製造されるべき結晶シートの原料を加熱溶融した融液が貯留される容器と、前記容器内の融液に浸漬して融液を付着させ、この付着した融液の凝固によって結晶シートを生成するシート生成基板と、前記シート生成基板を保持し、冷却媒体を封入した流路を有する基板保持体とを含むことを特徴とする結晶シート製造装置である。
【0013】
本発明に従えば、融液に浸漬されるシート生成基板を保持する基板保持体の内部に冷却媒体を封入した流路を有するので、基板保持体を効果的に冷却することができ、基板保持体が本体装置に装着される構造部分への熱移動によって機械的強度の維持が困難になるなどの熱的問題が発生することがない。また、冷却媒体は基板保持体内部の流路に封入するので、簡単な構成により、低コストで結晶シート製造装置を作製することができるとともに、複雑な装置構成によってメンテナンス費用がかかるという問題も生じない。
【0014】
また本発明は、前記基板保持体は、1以上のシート生成基板を保持して、本体装置の略水平な回転軸線まわりに転動可能に備えられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に従えば、1以上のシート生成基板を保持する基板保持体が本体装置の略水平な回転軸線まわりに転動可能に配設されているので、基板保持体を転動することよって、シート生成基板を融液に浸漬し、シート生成基板の表面に融液を付着させることができる。シート生成基板の表面に付着した融液は、時間経過に伴う温度低下によって凝固し、シート生成基板の表面に結晶シートが生成される。特に複数のシート生成基板を保持して基板保持体の転動によって各シート生成基板を順次融液に浸漬する場合でも、前記流路の冷却媒体によって、基板保持体が取付けられた本体装置の回転軸を含む構造部分への熱移動により該構造部分付近が絶えず高温に暴露されることを防ぐことができる。
【0016】
また本発明は、前記基板保持体は、本体装置の回転軸に着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、シート生成基板を保持したまま基板保持体を取外したり取付けたりすることができるので、本体装置内の浸漬位置または高温の余熱のある位置でシート生成基板から生成されたシートの剥離を行う場合と異なり、本体装置外できわめて安定した状態で、取外した基板保持体に保持されているシート生成基板から剥離作業を行うことが可能である。また、シート生成基板を浸漬した状態で基板保持体を1回転または複数回転した後は、基板保持体を融液の容器上から移動して取外すので、基板保持体は、シート生成基板を浸漬した状態で基板保持体を1回転または複数回転する限られた時間だけ高温の融液からの熱を受け、熱負荷が軽減される。
【0018】
また本発明は、前記流路は、冷却媒体の量を調整して封入可能に設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、流路へ封入する冷却媒体の量を調整することによって、生成するシート厚に対応する浸漬時間によって基板保持体に必要な冷却能力を調整して確保することができ、結晶シートの高品質化および歩留まり向上に大きく寄与することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体1の概略構成を示す正面図である。図2は、図1の切断面腺I−Iから見た断面を示す。基板保持体1は、円筒状耐熱材7の外周部に、周方向に支持基板3を介して複数のシート生成基板2を備える。該円筒状耐熱材7の内部に、周方向に流路4が設けられている。流路4内には、その一部を占めるように冷却媒体8が封止カバー6で封入されている。前記円筒状耐熱材7の軸部分には、基板保持体取付け穴5として空洞が設けられている。冷却媒体8としては、水、油などの液体を用いることができる。本実施形態においては、水を用いる。
【0021】
図3は、図1のシート生成基板2を融液21に浸漬するようすを示す部分断面図である。基板保持体1の下方に、上下移動可能な昇降台26上に載置された容器20が配置される。容器20は、坩堝によって実現され、シート生成基板2の表面に成膜する結晶シート材料を過熱溶融した融液21を貯留する。シート生成基板2の素材としては、融液21の温度よりも融点が高く、融液との反応性の少ない黒鉛、炭化ケイ素、石英、窒化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウムなどから融液材料に応じて適した材料を選択する。本実施形態においては、融液21としてシリコン融液を使用し、シート生成基板2として耐熱性に優れた黒鉛材料を用いる。
【0022】
結晶シート生成時には、基板保持体1の外周部に配設された複数の黒鉛材料からなるシート生成基板2のうち、最も下方に配置されるシート生成基板2がシリコンの融液21に浸漬される位置まで、昇降台26を上昇させて、基板保持体1を軸線周りに矢符A方向に回転して各シート生成基板2を順次的に融液21に浸漬し、各シート生成基板2の表面にシリコンを付着させて、シリコンシートを生成する。
【0023】
その間、シート生成基板2は、融液21への浸漬時に高温の融液21から直接的に加熱され、当該シート生成基板2を固定している基板保持体1の円筒状耐熱材7に熱が伝達される。その熱の一部は、基板保持体1内に周方向に設けられた流路4に封入された冷却媒体8によって吸熱される。冷却媒体8としての水は、吸熱して蒸気となって、流路4内の上部に移動する過程で、または、上部に到達して、流路4内部上方で蒸気は冷却されて水滴となって滴下する。冷却媒体8としての水は、シート生成基板2から基板保持体1に伝達される熱量に応じて、相当する量の蒸気となって流路4内を上方に移動する。たとえば伝達される熱量が多いと、水は大量の蒸気となって流路4内を上方に移動するので、伝達熱量が多くても、すばやく基板保持体1全体に熱が分散移動される。具体的には、生成するシート厚に対応して浸漬時間によって、基板保持体内に封じ込める冷却媒体の量を調整することで、基板保持体の温度制御が可能である。
【0024】
図4は、本発明の第1実施形態による結晶シート製造装置の概略構成を示す平面断面図である。本実施形態の結晶シート製造装置は、図1および図2に示した基板保持体1を用いることを特徴とし、該基板保持体1は、基板保持体取付け穴5で結晶シート製造装置に着脱可能に装着される。結晶シート製造装置は、装置本体100、第1搬送装置65、供給装置60、取出し装置50および第2搬送装置55を含む。この製造装置は、結晶シートの製造方法を実施するために用いられ、本実施の形態では、結晶シートの一例として、太陽電池の多結晶シリコン基板を製造する場合について説明する。
【0025】
前記装置本体100は、円筒状の周壁32と、この周壁32内に周壁32と同軸の回転軸線L1まわりに回転自在に設けられる回転体33とを含む。回転体33は、周壁32よりその半径が小さい円筒状の中央璧部34と、その外周部に周方向等間隔で周壁32に近接するように突出する4本の側壁部35とを有する。周壁32の内周面は、回転体33の側壁部35の突出する先端と、回転体3の回転を許容し得る程度の微小な間隔をあけて離間している。周壁32および回転体33は、熱膨張率の小さく耐熱性で断熱性の材料、たとえば多孔質セラミックで構成される。したがって、各断熱室29a〜29dは、相互間の自由な雰囲気ガスの移動を許容しない、いわば遮蔽状態とされる。
【0026】
周壁32内側は、回転体33の中央璧部35外側および側壁部35によって、4つの断熱室36a,36b,36c,36dに仕切られる。回転体33の中央璧部35の外周部には、両側の側壁部35に挟まれる略中央に、各保持体1a,1b,1c,1d(総称する場合には、基板保持体1と記す場合がある)が各回転軸37a,37b,37c,37dに取付けられる。したがって、各基板保持体1は、各断熱室36a〜36dに収納される。
【0027】
回転軸37a〜37dは、各基板保持体1a〜1dを軸周りに回転させるため、回転体33の中央壁部35内で、各々クラッチ38a〜38dに結合され、クラッチより回転体33の中心部で、その同軸上に回転軸傘歯車41a〜41dが配設されている。回転軸傘歯車41a〜41dは、回転体33の中央部に設けられ、基板保持体駆動モータ39に連結する駆動傘歯車40にそれぞれ噛合わされ、軸周りに回転する。
【0028】
前記断熱室36a〜36dは、回転体33の回転方向Fに沿って、各基板保持体1を回転軸37a〜37dに順次的に装着する供給行程、回転体33を回転方向Fに90°回動した位置でシート生成基板2が予備加熱される予備加熱行程、基板保持体1に保持される各シート生成基板2を容器20に貯留される融液21に浸漬する浸漬行程、および浸漬行程において各シート生成基板2に融液21が付着・凝固した基板保持体1を装置本体100から周壁32の外方へ取出す取出し行程にそれぞれ対応して、90°毎に振分けられた供給位置P1、予備加熱位置P2、浸漬位置P3および取出し位置P4にそれぞれ設けられている。
【0029】
浸漬位置P3の断熱室36c内で、容器20は、回転体33の回転軸線L1まわりの回転によって移動する基板保持体1の移動経路の下方に設けられる。この断熱室29cには、たとえば酸化などのように融液が不純物材料と反応することを避けるため、不活性ガス雰囲気とされる。この不活性ガスとしては、たとえばArガスが用いられる。
【0030】
供給位置P1に配置される周壁部分には、供給側透孔が形成され、この供給側透孔は、シート生成基板2を備える基板保持体1が遊通することができ、開閉可能に設けられる扉45で塞がれる。また、取出し位置P4に配置される周壁部分には、取出し側透孔が形成され、この取出し側透孔には、結晶シリコン膜が生成されたシート生成基板2を備える基板保持体1が遊通することができ、開閉可能に設けられる扉46で塞がれる。
【0031】
供給位置P1の扉45の外側方(図1の上方)には、供給装置60が設けられる。この供給装置60は、第1搬送装置65によって矢符B方向に搬送されてきた基板保持体1を、供給位置P1に配置されている断熱室36a内に供給して、回転軸37aに装着する着脱装置62と、供給位置P1に配置される周壁部分に気密に接合され、着脱装置62が収容される中空直方体状の封止カバー体61とを含む。封止カバー体61の一側部には、第1搬送装置65によって矢符B方向に搬送されてきた基板保持体1が、着脱装置62によって把持された状態で、封止カバー体61の前記空間内へ通過することができる搬入孔が形成され、開閉可能な扉64によって塞がれる。供給側の着脱装置62は、略鉛直な回転軸線L2まわりに矢符D1,D2方向に回動する回動部と、回動部から一半径線方向に突出し、先端部を基板保持体1の基板保持体取付け穴に挿入して把持することができるアーム63とを有する。
【0032】
取出し装置40は、封止カバー体51と、封止カバー体51内に収容され、矢符E1,E2方向に回動する着脱装置52とを有する。封止カバー体51は、周壁32の取出し位置P4に配置される周壁部分に、開閉可能な扉46によって塞がれる取出し側透孔を外囲して、気密に接続される。着脱装置52は、略鉛直な回転軸線L3まわりに矢符E1,E2方向に回動する回動部と、回動部から一半径線方向に突出し、先端部を基板保持体1の基板保持体取付け穴5に挿入して把持することができるアーム53とを有する。この取出し側の着脱装置52は、前記供給側の着脱装置62と同様の構成を有する。封止カバー体51の一側部には、着脱装置52によって把持された基板保持体1が、第2搬送装置55内へ通過することができる搬入孔が形成され、開閉可能な扉54によって塞がれる。
【0033】
次に、本実施形態の結晶シート製造装置の動作について、図3をも参照して説明する。基板保持体1cは、供給位置P1から予備加熱位置P2を経て、浸漬位置P3の断熱室36cに配置される。
【0034】
まず、浸漬位置P3の断熱室36cでは、基板保持体1cが容器20上に位置するまでは、容器20は下方にある。基板保持体1cが容器20上に位置するまで移動して停止すると、図示しない昇降台昇降モータの駆動により、基板保持体1cの外周部に配設された複数のシート生成基板2のうち最も下方に配置されたシート生成基板2が、容器20内のシリコンの融液21に浸漬される位置まで、昇降台26を上昇させる。
【0035】
昇降台26の上昇によって、その最も下方のシート生成基板2を浸漬すると、基板保持体駆動モータ39を回転させ、かつ基板保持体1cの回転軸37cと連結しているクラッチ38cを動作させる。駆動傘歯車40による駆動力が、回転軸傘歯車41c、クラッチ38c、基板保持体1cへ回転力として伝達され、基板保持体1cを矢符A方向に1回転または複数回転させる。この回転によって、各シート生成基板2を順次的に融液21に浸漬し、各シート生成基板2の表面にシリコンを付着させる。
【0036】
この浸漬時に、シート生成基板2は高温の融液21から直接的に加熱され、当該シート生成基板2を固定している基板保持体1に熱が伝達される。その熱の一部は、基板保持体1内に周方向に設けられた流路4に封入された冷却媒体8としての水によって吸熱される。吸熱して水は蒸気となって流路4内の上部に移動し、その蒸気は流路4内部上方で冷却されて水滴となって滴下する。水が蒸気となって流路4内の上部に移動する過程で基板保持体1全体にすばやく熱を分散することによって、融液21から直接的に加熱されたシート生成基板2および該シート生成基板2の近傍の基板保持体1の温度が下げられ、シート生成基板2に凝固成長したシリコンシートが形成される。
【0037】
浸漬終了後、容器20を昇降台昇降モータの駆動により昇降台26を下方に移動させ、結晶シートを形成した基板保持体1cを、回転体33と一体に矢符F方向に回転移動させ、隣接する取出し位置P4の基板保持体1dで示す位置に配置する。断熱室36cも断熱室36dで示す位置に移動されることになる。
【0038】
次いで、取出し位置P4に配置された基板保持体1cを取出す。シート生成基板2の表面に生成した結晶シートを1枚ずつ剥離回収することも可能であるが、本実施形態では基板保持体1を取出す。周壁32に設けられた扉46を開き、取出し装置50では、着脱装置52がアーム53の先端部を一半径線方向に突出して基板保持体1cの基板保持体取付け穴5に挿入して把持する。着脱装置52は、基板保持体1cを把持したまま、その先端部を突出前の位置まで引込んで、基板保持体1aを回転軸37cから抜去し、回転軸線L3まわりに矢符E1方向に回動し、扉54に対峙する位置で停止する。このとき扉46を閉鎖するとともに扉54が開き、基板保持体1cを把持した先端部を一半径線方向に突出し、第2搬送装置55の基板保持体1eで示す位置に装着させた後、先端部を突出前の位置まで引込む。
【0039】
第2搬送装置55では、扉54を塞いで矢符C方向に基板保持体1cが搬送される。搬送された基板保持体1cは、別途剥離装置で、その基板保持体取付け穴5が回転可能に保持され、シート生成基板2から結晶シートが剥離回収される。この作業は本体装置100の制約された中で、かつ前工程である浸漬工程での高温の余熱がある取出し位置P4に位置する断熱室36の中で行う場合に比べ、きわめて安定した状態で作業することが可能である。
【0040】
次いで、取出し位置P4で基板保持体1cが取外された回転体33を矢符F方向に回動させ、基板保持体1cが取外された断熱室36cを、断熱室36aで示す位置、すなわち供給位置P1に配置する。
【0041】
第1搬送装置60では、基板保持体1fが矢符B方向に搬送されてくる。着脱装置62は、アーム63の先端部を回転軸線L2まわりに矢符D2で示す時計方向に略90°回動し、扉64に対峙する位置で停止する。このとき扉64が開き、アーム63の先端部を一半径線方向に突出し、基板保持体1fの基板保持体取付け穴5に挿入して把持し、そのまま先端部を突出前の位置まで引込み、扉64が塞がれる。
【0042】
着脱装置62は、アーム63の先端部が基板保持体1fを把持したまま、その先端部を回転軸線L2まわりに矢符D1で示す反時計方向に略90°回動し、扉45に対峙する位置で停止する。装置本体100の扉45が開かれ、着脱装置62は、基板保持体1fが把持された先端部を一半径線方向に突出し、周壁2を通過して、基板保持体1cが取外されて供給位置P1の断熱室36aで示す位置に配置された断熱室36cの回転軸37cに基板保持体1fを装着する。その後、先端部を突出前の位置まで引込み、扉45が塞がれる。
【0043】
次いで、供給位置P1で基板保持体1fが装着された回転体33を矢符F方向に回動させ、基板保持体1fが装着された断熱室36cを、断熱室36bで示す位置、すなわち予備加熱位置P2に配置する。予備加熱位置P2の基板保持体1bで示す位置に移動され、予備加熱装置44の上方に配置された基板保持体1fは、基板保持体駆動モータ39を回転させ、クラッチ38cを動作させて駆動傘歯車40による駆動力が、回転軸傘歯車41から回転力として伝達されて矢符A方向に回転される。基板保持体1fが回転することによって、基板保持体1fの外周部に備えられたシート生成基板2が均一に予備加熱される。予備加熱温度は、使用される溶融材料の材質および作製する結晶シート厚さなどにより異なるが、本実施形態による結晶シート製造装置においては400〜1200℃に加熱可能である。本実施形態による結晶シート製造装置は、予備加熱位置P2および浸漬位置P3のように、加熱する空間が断熱壁で仕切られて限定されているので、加熱時の熱損失を最小に押さえることができる。
【0044】
次いで、予備加熱位置P2で予備加熱された基板保持体1fが装着された回転体33を矢符F方向に回動させ、基板保持体1fが装着された断熱室36cを、再び浸漬位置P3に配置して、前述の動作を繰返す。
【0045】
以上の動作説明においては、断熱室36c内に設けられ基板保持体1cが浸漬位置P3に配置された状態から、回転体3を矢符F方向に360°回動し、再び浸漬位置P3に戻るまでの、浸漬位置P3、取出し位置P4、供給位置P1、予備加熱位置P2における各動作について説明した。各断熱室36a,36b,36dに設けられた基板保持体1についても、動作時期が異なること以外は断熱室36cに設けられた基板保持体1が配置される浸漬位置P3、取出し位置P4、供給位置P1、予備加熱位置P2における動作と全く同様である。
【0046】
本実施形態による結晶シート製造装置の本体装置100に装着される各基板保持体1は、その内部に冷却媒体を封入した流路を設けて必要な冷却能力を有しているので、本体装置100を連続的に稼動させても本体装置100の回転軸37への熱移動による熱的問題は発生することがなく、内部構造体の設計が容易になるとともに、簡潔に構成することができる。このような構成により装置をコンパクトにすることができる。特に、第1実施形態による結晶シート製造装置のような構成において、基板保持体は、断熱室36cで最も熱負荷を受けるが、図12に示した従来装置において常時、融液216からの熱負荷を受ける基板保持体211と比較して、基板保持体1が熱負荷を受けるのは、外周部のシート生成基板2を浸漬した状態で1回転または複数回転する限られた時間のみであり、当該基板保持体1を装着した装置に対する熱負荷も軽くなる。また、浸漬位置P3、取出し位置P4、供給位置P1、予備加熱位置P2における動作は独立に、かつ並行して行う場合に、熱的問題が発生することなく連続稼動させることができるので、きわめて高い生産性が得られる。
【0047】
図5は、本発明の第2実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体1の概略構成を示す正面図である。図6は、図5の切断面線II−IIから見た断面を示す。第2実施形態における基板保持体101は、図1に示した第1実施形態における基板保持体1の冷却媒体流路の形状を応用した例である。したがって、基板保持体101は、第1実施形態の基板保持体1と同様、図4に示したような結晶シート製造装置において用いられる。
【0048】
基板保持体101は、円筒状耐熱材107の外周部に、周方向に支持基板103を介して複数のシート生成基板102を備える。該円筒状耐熱材107の内部に、半径の異なる2本の円周状流路104a,104bが周方向に設けられ、これらの流路間を複数本のスリット状流路104cで半径方向に連結している。連結された流路内には、その一部を占めるように冷却媒体108が封止カバー106で封入されている。円筒状耐熱材107の軸部分には、基板保持体取付け穴105として空洞が設けられている。円筒状耐熱材107,シート生成基板102および支持基板103の材質ならびに冷却媒体108は、第1実施形態と同様である。
【0049】
次に、基板保持体101の外周部に備えたシート生成基板102に結晶シートを形成する動作について説明する。
【0050】
基板保持体101の外周部に配設されたシート生成基板102には、第1実施例と同様にして結晶シートが形成される。その間、シート生成基板102は、融液への浸漬時に高温の融液から直接的に加熱され、円筒状耐熱材107に熱が伝達され、その一部が、円周状流路104a,104bおよびスリット状流路104cに封入された冷却媒体108によって吸熱される。冷却媒体108としての水は、吸熱して蒸気となって、円周状流路104aからスリット状流路104cを経て円周状流路104bへ、または円周状流路104a内を上方へ移動する。移動した蒸気は、円周状流路104bまたは円周状流路104a内の上方で冷やされて水滴となり、円周状流路104bからスリット状流路104cを経て円周状流路104aに、または円周状流路104aの上方から下方へ滴下する。
【0051】
基板保持体101においては、円周状流路104a,104bおよびスリット状流路104cを設けたので、冷却媒体108としての水の蒸発量をより広範に拡散させることができるとともに、より多くの冷却媒体108を密封することができる。このような基板保持体101は、たとえば、基板保持体101を低速で回転させて厚めのシートを作製する際に、より多量の熱を融液から受けるような結晶シート生成条件においても、多量の伝達熱量に対応して基板保持体101の円筒状耐熱材107下部の温度上昇を抑えることができる。
【0052】
図7は、本発明の第3実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体111の概略構成を示す正面図である。図8は、図7の切断面線III−IIIから見た断面を示す。基板保持体111は、板状耐熱材117の下端に支持基板113を介してシート生成基板112を連結固定している。該板状耐熱材117に、流路114aと、その上部に円周状流路114bとを設け、これらの流路114aおよび114bの間をスリット状流路114cで連結している。連結された流路内には、その一部を占めるように冷却媒体118が封止カバー116で封入されている。板状耐熱材117において円周状流路114bの軸部分には、基板保持体取付け穴115として貫通孔が設けられている。板状耐熱材117の材質は第1実施形態の円筒状耐熱材7と同様であり、シート生成基板112および支持基板113の材質ならびに冷却媒体118についても、第1実施形態と同様である。該基板保持体111は、図4に示したような結晶シート製造装置において用いられる。
【0053】
図9は、図7のシート生成基板112を融液21に浸漬するようすを示す部分断面図である。基板保持体111は、基板保持体取付け穴115を、たとえば図4に示した結晶シート製造装置の回転軸37へ挿入して、着脱自在に取付けられる。したがって、基板保持体111の下方に、上下移動可能な昇降台26上に載置され、結晶シート材料を過熱溶融した融液21を貯留する容器20が配置されることになる。
【0054】
結晶シート生成時には、基板保持体111の下部で連結固定されたシート生成基板2がシリコンの融液21に浸漬される適正な位置まで、昇降台26を上昇させて、容器26の上昇により融液21が納められた容器26が浸漬適正な位置まで上昇する。回転軸37に取付けられた基板保持体111は、α位置から矢符H方向に回動し、融液21中にシート生成基板112が浸漬した後、β位置で停止する。これによりシリコンがシート生成基板112に付着生成する。シート生成条件により、たとえば厚いシートを生成する場合には、さらにG方向に逆回転させる。シート生成厚みにより、この時計の振り子運動を複数回以上繰返す場合もある。
【0055】
前述のようにしてシート生成基板112にシリコンが付着生成する間、シート生成基板112は、融液への浸漬時に高温の融液から直接的に加熱され、板状耐熱材117に熱が伝達され、その一部が、流路114aに封入された冷却媒体118によって吸熱される。冷却媒体118としての水は、吸熱して蒸気となって、流路114aからスリット114cを経て円周状流路104bへ移動することによって、すばやく板状耐熱材117上部に熱が分散移動する。移動した蒸気は、円周状流路104b内で冷やされて水滴となり、円周状流路104bからスリット状流路104cを経て流炉104aに滴下する。
【0056】
次に、基板保持体111を備える結晶シート製造装置の動作について、第1実施形態と異なる動作を主として簡単に説明する。
【0057】
結晶シート製造装置において、基板保持体111は第1実施形態と同様にして本体装置100の供給位置P1で回転軸37に取付けられ、該基板保持体111が取付けられた回転体33は、矢符F方向に回動して予備加熱位置P2に位置する。予備加熱位置P2に位置する断熱室36内で、基板保持体111は、たとえばα位置からβ位置までの傾きで回転摺動して当該基板保持体111のシート生成基板112が均一に予備加熱される。予備加熱後、回転体33は矢符F方向に回動して予備加熱された基板保持体111は浸漬位置P3に位置し、前述のように、図9に示した浸漬動作において、流路114a,円周状流路114b、スリット状流路114c内で冷却媒体118が作用し、シート生成基板112に結晶シートが生成する。結晶シートを形成した基板保持体111は、回転体33がさらにF方向に回動して取出し位置P4に位置し、第1実施形態と同様にして基板保持体111が取出される。回転体33が矢符F方向に回動し、基板保持体111が取出された断熱室36が再び供給位置P1に配置されて、前述の動作を繰返す。
【0058】
図10は、本発明の第4実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体121の概略構成を示す正面図である。図11は、本発明の第5実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体131の概略構成を示す正面図である。第4および第5実施形態における基板保持体121,131は、いずれも図7に示した第3実施形態における基板保持体111の冷却媒体118を封入する流路形状をアレンジした例である。
【0059】
第4実施形態の基板保持体121において、冷却媒体128を封入する流路は、板状耐熱材127に下部の流路124a、上部の流路124cが水平方向に配置され、これらの流路を2本のスリット状流路124bで連結している。これらの流路124a,124c,124bで囲まれた板状耐熱材127に基板保持体取付け穴125が設けられる。第5実施形態の基板保持体131において、冷却媒体138を封入する流路は、板状耐熱材137の外周に沿った形状で外周より内側に一本の閉じられた流路134として形成されている。
【0060】
基板保持体121,131は、第3実施形態の基板保持体111と同様の結晶シート製造装置において用いられ、その浸漬動作においても、基板保持体121,131の流路124,134に封じ込められた冷却媒体128,138は、基板保持体111における冷却媒体118と同様に作用して、結晶シートを生成する。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、融液に浸漬されるシート生成基板を保持する基板保持体の内部に冷却媒体を封入した流路を有することによって、簡単な構成で基板保持体を効果的に冷却して装置への熱負荷を軽減し、低コストで熱的問題が発生することがない結晶シート製造装置を提供することができる。
【0062】
また本発明によれば、前記冷却媒体を封入した基板保持体を、着脱可能に本体装置の回転軸線まわりに転動可能に配設したので、転動により基板保持体が保持するシート生成基板を融液に浸漬した後、基板保持体を取外して本体装置外でシートを剥離するようにして、基板保持体が高温の融液からの熱負荷を受ける時間を軽減して、信頼性および生産性を向上した結晶シート製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体1の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1の切断面腺I−Iから見た断面を示す。
【図3】図1のシート生成基板2を融液21に浸漬するようすを示す部分断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による結晶シート製造装置の概略構成を示す平面断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体1の概略構成を示す正面図である。
【図6】図5の切断面線II−IIから見た断面を示す。
【図7】本発明の第3実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体111の概略構成を示す正面図である。
【図8】図7の切断面線III−IIIから見た断面を示す。
【図9】図7のシート生成基板112を融液21に浸漬するようすを示す部分断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体121の概略構成を示す正面図である。
【図11】本発明の第5実施形態による結晶シート製造装置に備えられる基板保持体131の概略構成を示す正面図である。
【図12】従来のシリコンシート製造装置210の一例の概略構成を示す側面断面図である。
【符号の説明】
1,101,111,121,131 基板保持体
2,102,112,122,132 シート生成基板
3,103,113,123,133 支持基板
4,104a〜c,114a〜c,124a〜c,134 流路
5,105,115,125,135 基板保持体取付け穴
6,106,116 封止カバー
7,107 円筒状耐熱材
8,108,118,128,138 冷却媒体
20 容器
21 融液
24 誘電加熱装置
26 昇降台
Claims (4)
- 製造されるべき結晶シートの原料を加熱溶融した融液が貯留される容器と、
前記容器内の融液に浸漬して融液を付着させ、この付着した融液の凝固によって結晶シートを生成するシート生成基板と、
前記シート生成基板を保持し、冷却媒体を封入した流路を有する基板保持体とを含むことを特徴とする結晶シート製造装置。 - 前記基板保持体は、1以上のシート生成基板を保持して、本体装置の略水平な回転軸線まわりに転動可能に備えられていることを特徴とする請求項1記載の結晶シート製造装置。
- 前記基板保持体は、本体装置の回転軸に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の結晶シート製造装置。
- 前記流路は、冷却媒体の量を調整して封入可能に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか記載の結晶シート製造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001151124A JP3754321B2 (ja) | 2001-05-21 | 2001-05-21 | 結晶シート製造装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001151124A JP3754321B2 (ja) | 2001-05-21 | 2001-05-21 | 結晶シート製造装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002338225A JP2002338225A (ja) | 2002-11-27 |
JP3754321B2 true JP3754321B2 (ja) | 2006-03-08 |
Family
ID=18996030
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001151124A Expired - Fee Related JP3754321B2 (ja) | 2001-05-21 | 2001-05-21 | 結晶シート製造装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3754321B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4535959B2 (ja) * | 2005-07-26 | 2010-09-01 | シャープ株式会社 | 固相シート製造方法および固相シート製造装置 |
NL1030285C2 (nl) * | 2005-10-27 | 2007-05-01 | Rgs Dev B V | Werkwijze en inrichting voor het fabriceren van metalen folies met een patroon. |
KR101461458B1 (ko) * | 2006-04-19 | 2014-11-13 | 도레이 카부시키가이샤 | 성형부재용 2축 배향 폴리에스테르 필름 |
-
2001
- 2001-05-21 JP JP2001151124A patent/JP3754321B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002338225A (ja) | 2002-11-27 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI531691B (zh) | 從熔融材料製作半導體薄體的方法和裝置 | |
JP2001247396A (ja) | 結晶シートの製造方法およびその製造装置ならびに太陽電池 | |
CN101218176A (zh) | 硅的再利用方法及利用该方法制造的硅和硅锭 | |
EP2248152A1 (en) | Methods of making an unsupported article of pure or doped semiconducting material | |
JP2011184250A (ja) | シリコン結晶成長用ルツボ、シリコン結晶成長用ルツボ製造方法、及びシリコン結晶成長方法 | |
JP3754321B2 (ja) | 結晶シート製造装置 | |
WO2009104049A1 (zh) | 硅片和其制造方法及裝置 | |
WO2010132644A1 (en) | Methods of making an article of semiconducting material on a mold comprising particles of a semiconducting material | |
JP4011335B2 (ja) | 固相シートの製造方法 | |
US20030060044A1 (en) | Liquid phase growth method and liquid phase growth apparatus | |
KR100553659B1 (ko) | 결정 박판의 제조 방법 및 결정 박판을 사용한 태양전지 | |
US20110212630A1 (en) | Method for preparing a self-supporting crystallized silicon thin film | |
KR20130126643A (ko) | 열적 활성 몰드를 이용한 반도체 물질의 지지되지 않은 제품의 제조방법 | |
CN101565852B (zh) | 晶体连续生产设备及使用该设备连续生产多晶硅的方法 | |
JP3754306B2 (ja) | 結晶シート製造装置および結晶シート製造方法 | |
JP2000351616A5 (ja) | ||
JP4693932B1 (ja) | 筒状シリコン結晶体製造方法及びその製造方法で製造される筒状シリコン結晶体 | |
JP2002283044A (ja) | 結晶シートの製造装置および方法 | |
US20240035198A1 (en) | Systems and methods for forming single crystal silicon ingots with crucibles having a synthetic liner | |
JP2002057116A (ja) | 結晶シートの製造装置及び製造方法 | |
JP2004143006A (ja) | シリコン結晶シート製造方法および製造装置 | |
JP2003054932A (ja) | 半導体基板の製造装置、半導体基板およびその製造方法ならびに太陽電池 | |
KR20030052467A (ko) | 실리콘 잉곳 성장용 흑연 도가니 | |
JP2002175996A (ja) | 結晶シート製造装置および結晶シート製造方法 | |
KR101401255B1 (ko) | 잉곳 제조장치 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20051017 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20051213 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20051215 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |