JP3754143B2 - モータ駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ駆動トランジスタをパルス幅制御方式によって制御して、モータコイルに目標値に応じたコイル電流を供給するモータ駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種モータ、例えばステッピングモータのモータ駆動装置などにおいて、従来よりパルス幅制御方式(以下PWM制御方式という)によってモータコイルに流すコイル電流を制御する駆動装置が知られている。また、PWM制御方式としては、モータコイルにコイル電流を供給する電源側と接地側の駆動トランジスタの内いずれか一方のみをPWM制御する片側チョッピング方式(片側駆動)と、電源側と接地側の駆動トランジスタの両方をPWM制御する両側チョッピング方式(両側駆動)の2種類が知られている。
【0003】
以下、この2つの駆動方式について図5および図6を用いて説明する。
【0004】
図5は、片側チョッピング方式の場合の駆動例を示しており、この例では電源側のモータ駆動トランジスタをPWM制御している。片側チョッピング方式の場合、例えば図5(a)に示すように、所定のトランジスタオン期間には、ある相のコイルLMのモータ駆動トランジスタQ1〜Q4のうち、電源側の駆動トランジスタQ3と接地側の駆動トランジスタQ2がオン制御され、これにより実線矢印で示すようにモータコイルLMにコイル電流IMが流れる。
【0005】
オン期間が終了してオフ期間となると、トランジスタQ2については、そのままオン状態が維持され、トランジスタQ3のみが図5(c)に示すようなPWM制御信号によってオフ制御される。ここで、モータ駆動トランジスタがオフ制御されても、モータコイルLMがさらに電流を流そうとするため、ダイオードD4がオンし、点線矢印で示すように、ダイオードD4からモータコイルLMおよびオン状態のトランジスタQ2を通り、さらにコイル電流検出用の抵抗Rdecを通ってコイル電流IMがアースに向かって流れる。
【0006】
このコイル電流IMは、図5(b)に示すようにそのオフ期間中に徐々に減少し、オフ期間が一定時間経過して再び電源側または接地側の一方のモータ駆動トランジスタがオン制御される(ここでは、電源(VBB)側のトランジスタQ3がオン制御される)と、コイル電流IMは、実線矢印で示すように流れ、その電流量は急激に増加する。
【0007】
このように、例えば電源側のトランジスタQ3を所定のタイミングでPWM制御することにより、コイル電流は、図5(d)に示すような波形でモータコイルLMに流れることとなる。
【0008】
次に、両側チョッピング方式では、図6(a)に示すように、モータ駆動トランジスタのオン期間中については、まず、片側チョッピングと同様に電源側と接地側の両方のモータ駆動トランジスタQ3、Q2がオン制御され、実線矢印で示すようにコイル電流IMが流れる。そして、モータ駆動トランジスタのオフ期間においては、電源側および接地側のモータ駆動トランジスタQ3およびトランジスタQ2のいずれもが、図6(c)に示すようなPWM制御信号によってオフ制御される。従って、オフ期間には、ダイオードD4とD1とがオンし、図6(a)に点線矢印で示すようにアースから電源VBBに向けてコイル電流IMが流れることとなる。
【0009】
このように、両側チョッピング方式の場合には、トランジスタのオフ期間中に電源側と接地側の両方のトランジスタがオフ制御されることにより、図6(b)に示されるように、このオフ期間中におけるコイル電流は、片側チョッピング方式と比較するとより急激に減少する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記2つの方式の内の片側チョッピング方式では、図5(b)から明らかなように、オフ期間におけるコイル電流の減少が緩やかになる。このため、コイル電流波形のリップル成分は少なくなるが、オフ期間を一定として駆動トランジスタをPWM制御するため、一定のオフ期間中に十分コイル電流が減少せず、図5(d)に示すように、設定した目標波形(図の点線)に対して、実際のコイル電流波形がずれてしまうという問題があった。
【0011】
一方の両側チョッピング方式の場合には、オフ期間におけるコイル電流の低下が急峻であるため、片側チョッピング方式のように目標波形に対してずれが生ずるという問題は発生しないが、常にトランジスタオフ期間における電流量の低下が大きいことから、図6(d)に示されるようにコイル電流波形のリップル成分が大きくなってしまうという問題があった。
【0012】
そこで、これら2つの方式の両方を切り換えて実行して、リップルを低く抑えると共にオフ期間におけるコイル電流の減少量を大きくして設定波形からのずれをなくすことが提案されている。しかしながら、このような2つの方式の切換を適切に切り換える方法については、具体的な提案はなされていない。特に、IC化が進むモータ駆動装置として、IC上で上記方式切換を適切なタイミングでかつ簡単に行う装置は、全く知られていない。
【0013】
例えば、切換方式のモータ駆動装置として、2つのチョッピング方式の切換を外付け回路などの別回路で作成することが考えられるが、このような外付け回路によって切り換えを実行する場合には、別途外部回路が必要とされ、またこの外部回路を調整するという作業が要求されるため好ましくない。
【0014】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされ、簡単な構成でかつ適切なタイミングで容易に2つのPWM制御方式を切り換えてモータコイルを駆動することが可能なモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るモータ駆動装置は以下のような特徴を有する。
【0016】
即ち、電源側と接地側のモータ駆動トランジスタのいずれか一方をパルス幅制御して、モータコイルに所望のコイル電流を供給するモータ駆動装置であって、前記コイル電流を減少させるための電流オフ指令期間において、モータ駆動トランジスタのオフ期間を一定とすると共に前記オフ期間中に前記モータ駆動トランジスタの両側駆動と片側駆動とを切り換えて実行するミックスモードと、前記コイル電流のレベルが所定のオフ目標値まで低下するまで前記オフ期間を継続するレベル優先モードと、が設定可能である。前記ミックスモードでは、前記モータ駆動トランジスタのオフ期間の開始から前記コイル電流のレベルが所定レベルまで低下するまでの間、前記電源側と接地側のモータ駆動トランジスタの両方をオフ制御して両側駆動を行い、前記コイル電流のレベルが前記所定レベル以下となると前記電源側または接地側のモータ駆動トランジスタのいずれか一方のみをオフ制御する片側駆動に切り換える。前記レベル優先モードでは、前記コイル電流が減少して前記オフ目標値に到達するまで、前記モータ駆動トランジスタのオフ期間を終了させるためのオフ期間経過信号の発生を停止する。
【0017】
このように、本発明では、コイル電流を減少させなければならない期間において、コイル電流のレベルが所定のレベルに低下した時点を基準として、両側駆動、つまり電源側と接地側の両方のモータ駆動トランジスタのオフ制御から通常の片側駆動、つまり電源側と接地側のモータ駆動トランジスタのいずれか一方のみのオフ制御に切り換える。
【0018】
更に、レベル優先モードも設定可能とすることで、コイル電流の低電流制御が確実となる。また、駆動するモータなどに応じて、ミックスモード及びレベル優先モードを設定し実行することにより、条件に応じた適切なモータ駆動制御を容易に行うことが可能となる。
【0019】
また、上記制御を実行するにあたり、より具体的な構成としては、コイル電流を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段で検出された電流量を目標値と比較して目標値以上になると、目標到達信号を発生する目標値比較手段と、前記目標到達信号の発生から一定期間経過後にオフ期間経過信号を発生するオフ期間計測手段と、前記目標到達信号に応じて前記コイル電流を供給するモータ駆動トランジスタをオフ制御し、前記オフ期間経過信号に応じて前記モータ駆動トランジスタをオン制御することにより前記モータ駆動トランジスタをパルス幅制御する出力ドライブ部と、前記コイル電流のレベルに応じた信号を切換基準値と比較し、この切換基準値より低くなると切換信号を発生する切換基準比較手段と、を備える。そして、電流オフ指令期間において、ミックスモードでは、前記目標到達信号に基づいて前記電源側と接地側のモータ駆動トランジスタを両側駆動し、前記切換基準比較手段からの切換信号に応じて前記電源側と接地側のモータ駆動トランジスタの片側駆動へ切り換える。
【0020】
上述のように、電流オフ指令期間内のモータ駆動トランジスタのオフ期間において、両側駆動と片側駆動を切換制御することにより、制御の結果得られるコイル電流の波形にリップル成分をそれほど増大させることなく、コイル電流を急速にかつ十分に減少させることが容易になる。
【0021】
また、本発明においては、前記電流オフ指令期間において、前記レベル優先モードでは、前記切換基準比較手段の出力を禁止して前記モータ駆動トランジスタの両側駆動と片側駆動との切換動作を停止し、かつ、前記モータ駆動トランジスタのオフ期間開始後、前記コイル電流のレベルが前記オフ目標値まで低下するまで前記オフ期間計測手段の前記オフ期間経過信号の発生を禁止する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るモータ駆動装置のICの概略ブロック図を示している。
【0025】
本実施形態のモータ駆動装置において、その基本制御方式としては、電源側と接地側のモータ駆動トランジスタQ1,Q3とQ2,Q4のいずれか一方をPWM制御する片側駆動方式を採用している(本実施形態では電源側のモータ駆動トランジスタを制御)。
【0026】
各モータコイルに所望のコイル電流IMを供給するモータ駆動トランジスタQ1〜Q4のスイッチングは、出力ドライブ部22からの制御信号によって行っている。出力ドライブ部22におけるモータ駆動トランジスタQ1〜Q4のオン、オフのPWM制御において、まずモータ駆動トランジスタのオフ期間のスタートタイミングは、第1コンパレータ12が動作指令に応じた目標値V1と検出コイル電流とを比較して、出力される目標到達信号によって決定されている。またオフ期間の終了、つまりモータ駆動トランジスタのオン期間のスタートタイミングは、ワンショット回路14から出力されるオフ期間経過信号によって決定されている。
【0027】
上記トランジスタのオフ期間のスタートを決定する第1コンパレータ12は、その一方の入力端子にモータ駆動制御部10が接続されており、他方の入力端子は、接地側のモータ駆動トランジスタQ2,Q4のエミッタとコイル電流検出用抵抗Rdecとの間に接続されている。また、モータ駆動制御部10は、その入力端子INに供給されるモータの駆動指令に応じ、上記第1コンパレータ12の一方の入力端子に、モータコイルLMに供給すべきコイル電流の目標波形(目標値V1)を供給する。なお、この目標波形は、動作指令に応じてモータ駆動制御部10が作成した波形であってもよく、また、動作指令が目標波形を示している場合にはこの動作指令を目標波形として用いることも可能である。
【0028】
第1コンパレータ12は、モータ駆動制御部10より供給されるこのような目標波形の目標値V1と、上記コイル電流検出用抵抗Rdecによって検出された検出コイル電流とを比較し、検出コイル電流が目標値V1に到達すると目標到達信号を発生する。目標到達信号は、ワンショット回路14を介して出力ドライブ部22に供給され、出力ドライブ部22は、この目標到達信号に応じて所定のモータ駆動トランジスタのオフ制御を開始する。
【0029】
ワンショット回路14は、CR端子に外付けのコンデンサC1を備える構成を有しており、第1コンパレータ12から目標到達信号が供給されるとこれに応じてコンデンサC1に対する充電を停止して、コンデンサC1を所定の速度で放電させる。そして、上記放電開始から一定期間経過後に、コンデンサC1からの出力電圧が所定レベル以下になるとこれを検出し、オフ期間経過信号を発生する。オフ期間経過信号は、出力ドライブ部22に供給され、出力ドライブ部22は、この信号に応じて、所定のモータ駆動トランジスタのオフ制御を終了して再びオン期間を開始する。
【0030】
本実施形態では、以上のような構成に加えて、同一IC内に、コンデンサC1の出力と所定の切換基準値V2とを比較する第2コンパレータ16を備えている。また、この第2コンパレータ16の出力側には第2コンパレータ16の動作を後述するモードに応じて制御するゲート回路18と、設定されるモードによってゲート回路18からの出力を制御する切換回路20とが設けられている。但し、ゲート回路18は、第2コンパレータ16の出力側に限らず、第2コンパレータ16の内部や第2コンパレータ16への入力側に設けられていてもよい。
【0031】
ここで、第2コンパレータ16の一方の入力端子には、外付け抵抗Rref1、Rref2によって設定される切換基準値V2が供給されている。また、他方の入力端子には、コンデンサC1の充電電圧(CR出力波形)を示すCR端子に接続されており、この第2コンパレータ16は、コイル電流のレベルに対応するCR端子からのCR出力波形と、モード切換基準値V2とを比較して、CR出力波形がモード切換基準電圧V2以下となると、切換検出信号を出力する。そして、この切換検出信号は、電流オフ指令期間内におけるトランジスタオフ期間に、モータ駆動トランジスタに対する両側オフ制御から、片側オフ制御に切り換えるタイミングを決めている。
【0032】
なお、上述のモータ駆動制御部10は、動作指令から、例えばこの動作指令に応じたコイル電流の目標波形を作成すると共に、駆動装置における動作モードを判定し、判定結果に基づいて、ワンショット回路14に制御信号を供給している。さらに、図1では、ゲート回路18および切換回路20に上記制御信号が外部から直接供給される構成となっているが、これに限らず、上記モータ駆動制御部10より制御信号を供給する構成としてもよい。
【0033】
ここで、本実施形態において、設定されている動作モードとして特徴的なモードは、モータ駆動トランジスタのオフ開始から一定期間経過後にオフ制御すると共に、このオフ期間中にモータ駆動トランジスタに対する両側制御と片側制御を切り換えて実行するミックスモードである。また、もう一つのモードとして、検出したコイル電流が所定レベルに低下するまでトランジスタのオフ制御期間を継続するレベル優先(センス優先)モードが設定可能となっている。
【0034】
[ミックスモードにおける動作]
動作モードとしてミックスモードが選択されている場合においても、コイル電流のオン指令期間中と、オフ指令期間のトランジスタオン期間中には、本実施形態のモータ駆動装置は通常動作する。つまり、これらの期間には、モータ駆動トランジスタQ1〜Q4の電源側または接地側のいずれか一方のみをPWM制御してコイル電流を制御する片側駆動が行われる。
【0035】
一方、電流オフ指令期間のトランジスタオフ期間においては、このオフ期間の開始と共に電源側と接地側の両方のモータ駆動トランジスタをオフ制御してコイル電流を急速に減少させる。コイル電流のレベルが、一定レベル(具体的にはCR出力波形が切換基準値V2)まで低下したところで一方のモータ駆動トランジスタのみをオフ制御して、いわゆる片側駆動状態に戻す。
【0036】
以下、図2および図3をさらに用いてミックスモード時におけるモータ駆動装置の動作について具体的に説明する。
【0037】
図3(a)に示す波形は、サイン波を用いた場合のコイル電流の目標波形であり、コイル電流の電流オフ指令期間は、この波形の斜線の部分が相当することとなる。そして、この電流オフ指令期間は、例えば図示しないマイクロコンピュータからモータ駆動制御部10に対して、図3(b)に示すような制御信号が動作指令として供給されることにより決定される。もしくは、モータ駆動制御部10が動作指令に基づいて図3(b)のような制御信号を作成することにより決定される。
【0038】
このような電流オフ指令が与えられた場合において、所定のモータ駆動トランジスタがオン制御されると、図2(a)に示すように、このトランジスタオン期間は、検出コイル電流IMが目標値V1を超えるまで継続する。第1コンパレータ12が目標値V1を超えたところで目標到達信号(この例では、Lレベル出力)を発生するので、これによりオフ期間が開始する。そこで、電源側と接地側の両方のモータ駆動トランジスタがオフ制御される。なお、このときの両側駆動は、例えば切換回路20、もしくはゲート回路18を介して第2コンパレータ16からの両側駆動信号を出力する構成としておくことにより実行される。また、モータ駆動制御部10が出力ドライブ部22に対して同様な両側駆動信号を出力する構成であってもよい。
【0039】
図1の実線で示すようにコイル電流IMを流す場合には、電源側および接地側の両方のモータ駆動トランジスタQ3、Q2がオン制御される。そして、電流オフ指令期間に、第1コンパレータ12にて目標到達信号が発生してトランジスタオフ期間が開始すると、出力ドライブ部22は、まず、この目標到達信号に応じて2つのトランジスタQ3,Q2の両方をオフ制御、つまり両側制御を開始する。これにより、コイル電流はダイオードD4、D1を介して図1の点線のように流れ、従来の両側チョッピング方式と同様に、コイル電流は急速に減少していく(図2(a)参照)。
【0040】
ワンショット回路14は、図2(b)のように第1コンパレータ12から目標到達信号に応じてコンデンサC1の放電を開始するため、CR端子での波形は図2(c)のようにトランジスタのオフ期間の開始と共に所定の一定速度で低下する。
【0041】
第2コンパレータ16は、この図2(c)のCR出力波形が切換基準レベルV2まで減少すると、図2(e)に示すように、切換信号(ここでは、Lレベル出力)を発生する。切換信号は、ゲート回路18および切換回路20を介して出力ドライブ部22に供給され、出力ドライブ部22は、これに応じて、例えば図1に示すように両側駆動によりオフ制御していた電源側と接地側のモータ駆動トランジスタQ3,Q2の内の一方(ここでは、モータ駆動トランジスタQ3)をオフ制御して、片側駆動に切り換える。
【0042】
この片側駆動への切換により、電流は図1の一点鎖線に示すような流れとなり、従来の片側チョッピング方式と同様に、コイル電流の減少は両側駆動の期間と比べて緩やかになる。
【0043】
また、上記ワンショット回路14は、トランジスタのオフ開始からCR出力波形が所定のオフ終了レベルV3になるとオフ期間経過信号(ここでは、Lレベル出力)を出力する(図2(d)参照)。ここで、図2(c)に示すCR出力波形は、コンデンサC1の放電開始から一定の速度で減少していくため、このCR出力波形に基づいてオフ期間終了タイミングを決定することにより、オフ期間は一定に制御される。
【0044】
ワンショット回路14よりオフ期間経過信号が出力されると、出力ドライブ部22は、トランジスタのオフ期間を終了してオン制御を開始する。このため、コイル電流はオン制御開始から再び上昇する。
【0045】
オン制御によりこのコイル電流が増加して次のタイミングでの目標値V1に到達すると、再び第1コンパレータ12が目標到達信号を発生し、上記同様にモータ駆動トランジスタがオフ制御され、このオフ期間中において、両側駆動から片側駆動への切換制御が行われる。
【0046】
なお、電流オン指令期間においては、図3(a)、(b)に示すように、従来と同様にコイル電流のリップル成分を小さくすることが可能な片側駆動方式によってコイル電流を制御する。そして、上述のように電流オフ指令期間についてのみ、そのトランジスタオフ期間中において両側駆動と片側駆動とのミックス駆動を行う。この電流オフ指令期間中のトランジスタオフ期間においてミックス駆動することにより、電流オフ指令期間において迅速にコイル電流を減少させることができる。
【0047】
なお、本実施形態において、両側駆動から片側駆動への切り換えタイミングは検出したコイル電流ではなく、このコイル電流レベルに対応しているCR出力波形と切換基準レベルV2との比較により決定することとした。必ずしもCR出力波形との比較により決定する必要はないが、図2(c)に示すように、コンデンサC1の充電出力はコイル電流のレベルに関わらず一定の範囲内にあるので、このCR出力波形を利用することにより、抵抗Rref1とRref2とで定められる一定のレベルV2を常に切換基準として用いることが可能となる。
【0048】
また、図3(a)のようにサイン波のコイル電流波形ではなく、図3(c)に示すようなコイル電流波形を用いる場合には、電流オフ指令期間は、例えば、図3d)のような制御信号により、所定のコイル電流レベルから一段低いコイル電流レベルへと減少する期間として設定される。そして、この電流オフ指令期間中のトランジスタオフ期間においてミックス駆動すれば、上記同様の効果が得られる。さらに、コイル電流が一定レベルを維持する期間においては、片側駆動とすることにより、コイル電流のリップル成分を低いレベルに抑えることが可能となる。
【0049】
[センス優先モードにおける動作]
次に、センス優先モードにおける動作について説明する。
【0050】
本実施形態において、上記ミックスモードおよび電流オン指令期間のいずれの場合であっても、片側駆動を行う際に、モータ駆動トランジスタのオフ期間は、一定としている。これに対して、このセンス優先モードでは、トランジスタのオフ期間の終了タイミングをコイル電流が所定のレベルまで低下したかどうかを判定して決定する。そして、このセンス優先モードは、電流オフ指令期間において、コイル電流を十分低いレベルまで低減する場合に設定される。
【0051】
図4は、センス優先モードにおける図1のモータ駆動装置の動作を示している。センス優先モードが設定される場合には、このモード指令は、モータの動作指令もしくは、直接制御信号としてモータ駆動制御部10に供給され、またゲート回路18および切換回路20にも供給される。
【0052】
第1コンパレータ12は、図4(a)に示すように、モータ駆動制御部10から供給される動作指令に応じた目標波形と検出したコイル電流とを比較して検出値が目標値V1以上になると目標到達信号(ここでは、Lレベル出力)を発生する。なお、切換回路20およびゲート回路18が、センス優先モードに切り換えられているため、電流オフ指令期間のトランジスタオフ期間における第2コンパレータ16からの出力は禁止されている。
【0053】
従って、出力ドライブ部22は、上記目標到達信号に基づき、電源側または接地側のモータ駆動トランジスタのいずれか一方をオフ制御(片側駆動)する。これにより、例えば、図1の実線のコイル電流は一点鎖線のように流れることとなる。
【0054】
ワンショット回路14は、上記第1コンパレータ12からの目標到達信号に基づいて、オフ期間の計測を開始する。しかしモータ駆動制御部10からのセンス優先モード指令が供給されているため、図4(c)のCR出力波形に基づいて、図4(d)に点線で示すように一定期間経過した時点でオフ期間経過信号が得られても、出力は禁止される。
【0055】
ここで、第1コンパレータ12にはヒステリシス特性を設けており、このため、第1コンパレータ12は、検出コイル電流が上記動作目標V1になると例えばLレベル(目標到達信号)を出力し、また検出コイル電流が所望のオフ目標値V4以下になるとHレベル(オフ目標到達信号)を出力する。このため、まず、目標到達信号の発生によりモータ駆動トランジスタがオフ制御され、これによりコイル電流が減少して所定のオフ目標値V4以下になると、次に、第1コンパレータ12がオフ目標到達信号を出力することとなる。
【0056】
ワンショット回路14では、このオフ目標到達信号が供給されることによりオフ経過信号の出力が解除され、図4(d)に示すようなタイミングでオフ期間経過信号(ここでは、Lレベル出力)を発生し、出力ドライブ部22に供給する。よって、出力ドライブ部22は、モータ駆動トランジスタを再びオン制御する。
【0057】
なお、オフ目標値V4と検出コイル電流とを比較するコンパレータを別途設ける構成によっても、センス優先モードにおける制御は可能である。この場合には、第1コンパレータ12に上記のようなヒステリシス特性を設ける必要はない。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のモータ駆動装置によれば、電流オフ指令期間において、モータ駆動トランジスタのオフ期間に電源側および接地側の両方のモータ駆動トランジスタの両側駆動と、いずれか一方の片側駆動とを切り換えて行うことにより、一定のオフ期間内で、コイル電流を迅速に減少させることが可能となる。また、コイル電流のリップル成分は、両側駆動のみの場合と比べて十分低いレベルに低減することが可能となる。
【0059】
また、レベル優先モードを設定可能とすることで、コイル電流の低電流制御を確実に実行することが容易となる。そして、両側駆動と片側駆動を行うミックスモードと、このレベル優先モードのいずれかを設定により実行可能とすることにより、駆動するモータの条件などに合わせてモードを選択でき、モータ駆動装置の適応性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るモータ駆動装置の概略構成を示す図である。
【図2】 本発明の実施形態でのミックスモードにおける動作を説明するためのタイムチャートである。
【図3】 本発明の実施形態でのコイル電流の目標波形と電流オフ指令期間との関係を説明するためのタイムチャートである。
【図4】 本発明の実施例でのセンス優先モードにおける動作を説明するためのタイムチャートである。
【図5】 従来のモータ駆動装置の片側チョッピング方式を説明する図である。
【図6】 従来のモータ駆動装置の両側チョッピング方式を説明する図である。
【符号の説明】
10 モータ駆動制御部、12 第1コンパレータ、14 ワンショット回路、16 第2コンパレータ、18 ゲート回路、20 切換回路、22 出力ドライブ部。
Claims (3)
- 電源側と接地側のモータ駆動トランジスタのいずれか一方をパルス幅制御して、モータコイルに所望のコイル電流を供給するモータ駆動装置であって、
前記コイル電流を減少させるための電流オフ指令期間において、
モータ駆動トランジスタのオフ期間を一定とすると共に前記オフ期間中に前記モータ駆動トランジスタの両側駆動と片側駆動とを切り換えて実行するミックスモードと、前記コイル電流のレベルが所定のオフ目標値まで低下するまで前記オフ期間を継続するレベル優先モードと、が設定可能であり、
前記ミックスモードでは、
前記モータ駆動トランジスタのオフ期間の開始から前記コイル電流のレベルが所定レベルまで低下するまでの間、前記電源側と接地側のモータ駆動トランジスタの両方をオフ制御して両側駆動を行い、前記コイル電流のレベルが前記所定レベル以下となると前記電源側または接地側のモータ駆動トランジスタのいずれか一方のみをオフ制御する片側駆動に切り換え、
前記レベル優先モードでは、
前記コイル電流が減少して前記オフ目標値に到達するまで、前記モータ駆動トランジスタのオフ期間を終了させるためのオフ期間経過信号の発生を停止することを特徴とするモータ駆動装置。 - 請求項1に記載のモータ駆動装置において、
前記コイル電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段で検出された電流量を目標値と比較して目標値以上になると、目標到達信号を発生する目標値比較手段と、
前記目標到達信号の発生から一定期間経過後にオフ期間経過信号を発生するオフ期間計測手段と、
前記目標到達信号に応じて前記コイル電流を供給するモータ駆動トランジスタをオフ制御し、前記オフ期間経過信号に応じて前記モータ駆動トランジスタをオン制御することにより前記モータ駆動トランジスタをパルス幅制御する出力ドライブ部と、
前記コイル電流のレベルに応じた信号を切換基準値と比較し、この切換基準値より低くなると切換信号を発生する切換基準比較手段と、
を備え、
前記電流オフ指令期間において、前記ミックスモードでは、
前記目標到達信号に基づいて前記電源側と接地側のモータ駆動トランジスタを両側駆動し、
前記切換基準比較手段からの切換信号に応じて前記電源側と接地側のモータ駆動トランジスタの両側駆動から片側駆動に切り換えることを特徴とするモータ駆動装置。 - 請求項2に記載のモータ駆動装置において、
前記電流オフ指令期間において、前記レベル優先モードでは、
前記切換基準比較手段の出力を禁止して前記モータ駆動トランジスタの両側駆動と片側駆動との切換動作を停止し、かつ、前記モータ駆動トランジスタのオフ期間開始後、前記コイル電流のレベルが前記オフ目標値まで低下するまで前記オフ期間計測手段の前記オフ期間経過信号の発生を禁止することを特徴とするモータ駆動装置。
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