JP3753974B2 - ガラス溶融炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融槽内でガラス原料、例えば特殊ガラス用ガラス原料を溶融し、保持するガラス溶融炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガラス原料を溶融槽で溶融し、保持するガラス溶融炉は、例えば図2に示す要部の断面図のように構成されている。すなわち、図2において、ガラス溶融炉の溶融槽1は、槽底部分を構成する多層に設けた底煉瓦2と、槽側壁部分を構成する種瓦3、種瓦3の上方に隙間4を設けて配設された上部側壁部材5、上部側壁部材5上に設けられた上部壁6と、さらに上部壁6上に設けた抱き煉瓦7によって支持された槽上部を覆う天井部8とを備えたものとなっている。また、種瓦3の外壁面と上部側壁部材5の下面にはそれぞれ水冷ジャケット9が設けられている。
【0003】
そして、このように構成されたガラス溶融炉では、図示しないが溶融槽1内にガラス原料が投入され、バーナの燃焼に伴う輻射熱によって槽内が加熱され、ガラス原料が溶融し、溶融ガラス10が槽内に保持される。
【0004】
しかし、例えばバリウムやホウ素、リチウム、弗素等を多く含むガラスを溶融した場合には、ソーダ石灰ガラスや鉛ガラスなどの一般的なガラスを溶融した場合に比べて浸蝕性が強く、種瓦3の内壁面、特に溶融ガラス10の表面部分が接触する部位での浸蝕が著しく、早期に、例えば数ヶ月で浸蝕が種瓦3を貫通するまでの事態となってしまう虞があった。このため、上記のようにガラス溶融炉の種瓦3を水冷ジャケット9で冷却する構成とし、種瓦3に接触する溶融ガラス10の温度を低下せしめ、浸蝕を抑制するようにしているが、その効果は小さくて、種瓦3が、例えば図2に浸蝕部分を破線領域Xで示すように、数mm残る程度まで浸蝕されてしまい、ガラスのセルフライニングで溶融槽1が保持されている状態であった。
【0005】
このような状況のため、ガラス溶融炉の溶融槽1の寿命が短く、修理は冷間修理となってしまうので、生産ロスが大きいものとなっていた。また炉材浸蝕が速いことから浸蝕された炉材が多く混入してガラス不良をまねく虞があった。
【0006】
一方、特開昭60−108323号公報には、種瓦の上端面に周方向の堰を形成し、また堰の内側の上端面をフラットな棚とし、さらに堰の外側にクーラを取付け、棚にガラス素地が浅く入り込むようにすることで種瓦の浸蝕を防止するようにしたものが示されている。しかし、このような構成とした場合には、棚に浅く入り込んだガラス素地だけが冷やされるのみで、種瓦内壁面の上部近傍には高温のガラス素地が存在し、この高温のガラス素地によって種瓦の内壁面上部が浸蝕される虞があり、種瓦内壁面の上部浸蝕を低減することが難しいものとなっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは、溶融槽内の溶融ガラスによる槽側壁部の種瓦の浸蝕が低減でき、炉材修理の回数を減らせることから、生産ロスを小さなものとすることができ、さらに長寿命化させることができ、また炉材浸蝕によりガラス不良となる虞を少なくすることができるガラス溶融炉を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のガラス溶融炉は、溶融槽の側壁部を形成する種瓦の上方に、上部側壁部材を備えてなるガラス溶融炉において、前記上部側壁部材が、前記種瓦の内壁面より槽内方に突出するよう設けられていることを特徴とするものであり、
さらに、種瓦と上部側壁部材との間に所定寸法の隙間が設けられていると共に、前記隙間に冷却装置が配設されていることを特徴とするものであり、
さらに、前記冷却装置が、上部側壁部材に配設されていることを特徴とするものであり、
さらに、上部側壁部材が、槽内側下端部分に下方に突出する凸状部を有することを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を、図1を参照して説明する。図1は要部の断面図である。
【0010】
図1において、ガラス溶融炉の溶融槽11は、図示しないバーナの燃焼に伴う輻射熱等によって槽内が所定温度に保持されるよう構成されていて、投入されたガラス原料が溶融して、槽内に溶融ガラス12が保持されるようになっている。また溶融槽11は、槽底部分が多層に設けた底煉瓦13によって構成され、槽側壁部分の下部が種瓦14によって構成されており、種瓦14の外壁面には、例えば水冷ジャケットでなる第1の冷却装置15が取り付けられ、種瓦14の冷却が外方側から行なわれるようになっている。
【0011】
さらに、槽側壁部分は、種瓦14の上方に所定間隙寸法の隙間16を設けるようにして、種瓦14よりも厚さ寸法の大きい上部側壁部材17が配設されている。この種瓦14上方の上部側壁部材17は、槽内方側部分18が種瓦14の内壁面19よりも槽内方向に突出するように設けられており、その槽内方側下端部分には、炉全周もしくは必要個所に周方向に沿って、凸状部20が溶融ガラス12の上面に向け突出するように設けられている。
【0012】
また、凸状部20は、溶融ガラス12と種瓦14の接触部分、特に溶融ガラス12の上面の接触部分近傍に対し、バーナからの一次的あるいは二次的な輻射熱を遮断するよう、その下端面と溶融槽11内に保持された溶融ガラス12の上面との間に、接触しない範囲での可能な限り近接した離間寸法が確保されていると共に、周方向に沿って溶融ガラス12と種瓦14の接触部分をカバーする形状となっている。
【0013】
またさらに、上部側壁部材17は、凸状部20よりも外側の下端面が、種瓦14の厚さ寸法より大きな平坦面21となっており、この平坦面21には、例えば水冷ジャケットでなる第2の冷却装置22が、一部、溶融ガラス12の上面を臨むようにして種瓦14の上端面に対向するよう取り付けられ、上部側壁部材17の冷却が平坦面21側から行なわれるようになっている。
【0014】
また、溶融槽11の槽側壁部分は、上部側壁部材17の上に上部壁23が設けられており、上部壁23の上には固定部材24を設けて抱き煉瓦25が固定されている。そして、抱き煉瓦25に支持されるようにしてアーチ状の天井部26が、槽上部を覆うように設けられている。
【0015】
そして、このように構成されたガラス溶融炉では、バーナによって加熱された溶融槽11内に図示しない投入口からガラス原料が投入され溶融して、溶融ガラス12が槽内に保持される。また溶融ガラス12が取り出され減量すると、ガラス原料が適宜投入補充され、常に所定量の溶融ガラス12が槽内に保持される。
【0016】
また、上記構成のガラス溶融炉は、溶融槽11の種瓦14に接触する溶融ガラス12のうち、その上面部分近傍に、上部側壁部材17の凸状部20によって輻射熱が遮断されることで、図1に破線で示すように低温溶融ガラス域Yが形成される。この結果、種瓦14の溶融ガラス12の上面近傍が接触する部分の浸蝕が抑制される。
【0017】
また、このため、ソーダ石灰ガラスや鉛ガラスなどの一般的なガラスに比べて浸蝕性が強い、例えばバリウムやホウ素、リチウム、弗素等を多く含むガラスを溶融した場合でも、種瓦14の浸蝕は抑制され、厚さが例えば75mmであった種瓦14の1年半経過後における残厚は約40mmで、2年以上の寿命を得ることができ、他の部材、例えば上部側壁部材17や上部壁23の有する2年の寿命と同等、もしくは越えるものとなり、寿命の点からバランスの取れたガラス溶融炉となる。なお、従来は4ヶ月程度で種瓦は浸蝕されて貫通してしまう状況であった。特に失透性の強いガラスでは、Y部分のガラスが失透・固化することで、セルフライニングの役割を果たし、浸蝕抑制作用を強化するほか、失透したガラスが固化することで槽側壁部に固化され、次工程へ流出して製品中のガラス不良となることがない利点もある。
【0018】
以上の通り構成することで、溶融槽11の寿命が向上し、溶融槽11内の溶融ガラス12による槽側壁部の種瓦14の浸蝕が低減できる。また、これに伴い炉材修理の回数を減らすことができ、生産ロスを小さなものとすることができ、さらに炉を長寿命化させることができる。またさらに、炉材浸蝕速度が遅くなるため、浸蝕により混入した炉材によるガラス不良の虞が少なくなる。
【0019】
なお、上記実施形態では、第2の冷却装置22を、溶融ガラス12の上面を臨むように取り付けたが、必ずしも溶融ガラス12上に第2の冷却装置22がオーバーハングする必要はなく、少なくとも種瓦14の上端面上に配設されていれば充分な効果がある。また、図1では種瓦14と第2の冷却装置22との間に隙間16が設けられているが、第2の冷却装置22を種瓦14の上端面に当接して設け、種瓦14を上面側からも冷却可能として種瓦14の浸蝕抑制効果を高めることもできる。
【0020】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、溶融槽内の溶融ガラスによる槽側壁部の種瓦の浸蝕が低減でき、炉材修理の回数を減らすことができて生産ロスを小さなものとすることができ、さらに長寿命化させることができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の要部を示す断面図である。
【図2】従来例の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
11…溶融槽
14…種瓦
16…隙間
17…上部側壁部材
20…凸状部
22…第2の冷却装置
Claims (4)
- 溶融槽の側壁部を形成する種瓦の上方に、上部側壁部材を備えてなるガラス溶融炉において、前記上部側壁部材が、前記種瓦の内壁面より槽内方に突出するよう設けられていることを特徴とするガラス溶融炉。
- 種瓦と上部側壁部材との間に所定寸法の隙間が設けられていると共に、前記隙間に冷却装置が配設されていることを特徴とする請求項1記載のガラス溶融炉。
- 前記冷却装置が、上部側壁部材に配設されていることを特徴とする請求項2記載のガラス溶融炉。
- 上部側壁部材が、槽内側下端部分に下方に突出する凸状部を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のガラス溶融炉。
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