JP3753710B2 - アナログ/デジタル変換装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、アナログ/デジタル変換装置に関し、特に、フラッシュ型のアナログ/デジタル変換器の増幅器列の端部の不整合の影響を低減する手段を備えたアナログ/デジタル変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フラッシュ(Flash)型のアナログ/デジタル変換器(A/D変換器)は、主にトランスコンダクタンス増幅器(増幅器)、比較器、デコード回路から構成される。ここで増幅器は、電流源、電界効果トランジスタでなるコモンソース構成等の差動対トランジスタ、負荷抵抗からなり、これらの回路素子はいずれもA/D変換器の入力オフセットの発生要因となる。
【0003】
図11は、フラッシュ型A/D変換器の第1の従来例の構成を示す図である。通常のフラッシュ型A/D変換器は2−1個(N:デジタル出力のビット数)の増幅器を有する。一方の入力端子にアナログ入力VIN、他方の入力端子に抵抗Rrの直列接続回路でレファレンス信号(電圧)VRT、VRBを分圧して発生した基準電圧Vref(1)〜Vref(n)をそれぞれ入力する2−1個の差動増幅器amp1〜amp(n)と、その出力端子間に接続した抵抗回路網とから構成される(特許文献1参照)。
【0004】
入力オフセットを緩和する方法として隣接する複数の増幅器の出力間に抵抗回路網でなる平均化抵抗回路網により平均化して出力するように構成したものである。このように平均化抵抗回路網を接続する方法では、増幅器が無限に並んではいないので、端の増幅器は、出力電圧が無限に並んでいる時と比べてA/D変換器の遷移点がシフトする。つまり、増幅器の個数は有限であることから端部側の増幅器の入力オフセットが増大するという影響が生じる。この結果、デジタル出力の微分直線性及び積分直線性に悪影響が生じ変換特性が劣化する。
【0005】
したがって、かかる構成ではモノリシックチップとしてA/D変換器を構成しても高精度な規格を満足できるデバイスの数は期待されているよりもずっと少なくなることが起こり得ることから、モノリシックチップとしての歩留まりが極端に低くなることがある。また、図11に示すフラッシュ型A/D変換器の前述の影響を回避するために、A/D変換器の増幅器の個数を2−1個より増やすように構成する等、平均抵抗回路網の終端の回路に関し幾つかの試みがなされてきている。
【0006】
図12は、フラッシュ型A/D変換器の第2の従来例の構成を示す図である。第1の従来例のフラッシュ型A/D変換器の2−1個の差動増幅器amp1〜amp(n)の両終端側に余分なダミー増幅器amp0、amp(n+1)を搭載し、さらに平均化抵抗R2と異なる値の抵抗Rxで端部の増幅器との間を結ぶように構成した終端回路を用いて前述の影響を緩和するものである(非特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第5,175,550号明細書
【非特許文献1】
IEEE Journal of Solid-State Circuits, Vol.37, No.12, Dec 2002 p1599-1609
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フラッシュ型A/D変換器に対する従来の試みの結果は満足のいくものではなかった。それは、かかる構成では平均化抵抗回路網の終端側において、依然として終端及びその近傍の部分には、それ以外の部分とは異なるインピーダンスが見え、当該終端側の増幅器に異なる電流値が与えられ、無限に増幅器が並んでいる場合と同じ出力電圧を得ることはできないためである。また、第2の従来例の構成でも単一のダミー増幅器のみでは、充分良好な特性を実現できないことがあり、1ないし複数のダミー増幅器を塔載すると回路電流・面積の面で不利であるという問題もあった。
【0009】
(目的)
本発明の主な目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、改善された技術を用いることによって増幅器列の平均化インピーダンス回路網の終端側の不整合の影響を実用上問題とならないレベルまで低減することを可能とすることにある。
本発明の他の目的は、終端に電流源を付加することにより、理想的な出力電圧を得、ダミー増幅器等の数を減らした若しくは全く用いないアナログ/デジタル変換装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のアナログ/デジタル変換装置は、出力端子間に出力を平均化するインピーダンス回路網(例えば図1のR)を備え、アナログ入力信号(例えば図1のVIN)とレファレンス信号(例えば図1のVRT+1/2VLSB、VRB−1/2VLSB)とを入力する増幅器列(例えば図1のamp1〜amp(n))を有するアナログ/デジタル変換装置において、入出力特性が2乗特性を有する2乗回路(例えば図1、図5、図6)を有し、アナログ信号とレファレンス信号の合成信号を前記2乗回路に入力し、前記2乗回路の出力を前記増幅器列の端部の増幅器(例えば図1のamp1、amp(n))の出力端子に印加したことを特徴とし、前記2乗回路は、前記増幅器の入力が無信号時に、前記増幅器の負荷抵抗に比例し、前記増幅器のトランスコンダクタンスに比例し、前記増幅器の出力端子間の抵抗に反比例する電流を出力する特性(例えば図9、▲3▼式)を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のアナログ/デジタル変換装置は、出力端子間に出力を平均化するインピーダンス回路網を備え、アナログ入力信号とリファレンス信号とを入力する増幅器列を有するアナログ/デジタル変換装置において、前記増幅器列の端部の増幅器の出力端子に、前記増幅器の負荷抵抗に比例し、前記増幅器のトランスコンダクタンスに比例し、前記増幅器の出力端子間の抵抗に反比例する定電流を出力する定電流回路(例えば図9)の出力を印加したことを特徴とする。
【0012】
また、前記増幅器列の端部の増幅器はダミー増幅器(例えば図7、図10)であることを特徴とし、前記増幅器列の各増幅器は、それぞれ一方の入力端子にアナログ入力信号を入力し他方の入力端子に量子化ステップだけ順次異なる基準電圧を入力する差動対トランジスタを有する差動増幅器であることを特徴とする。
【0013】
更に、前記レファレンス信号は、前記増幅器列の端部の増幅器の基準電圧に対し量子化ステップの略1/2だけ異なる電圧であることを特徴とし、前記基準電圧は、両端の抵抗の抵抗値が他の抵抗の抵抗値の略1/2の複数の抵抗の直列接続でなる抵抗回路により、正負の2つのリファレンス信号を分圧することにより発生されることを特徴とする。
【0014】
また、前記差動対トランジスタは、それぞれソース電極が共通接続されてテール電流源が接続され、ゲート電極が前記各入力端子に接続され、ドレイン電極が前記出力端子に接続されたMOS型トランジスタ(例えば図4)で構成されていることを特徴とする。
【0015】
そして、前記2乗回路は、それぞれのソース電極に第1のテール電流源が共通接続され、ゲート電極間にアナログ入力信号とレファレンス信号の合成信号(例えば図5のV)が入力された第1及び第2のMOS型トランジスタ(例えば図5のQ1、Q2)と、それぞれのソース電極に第2のテール電流源が共通接続され、ゲート電極間にアナログ入力信号とレファレンス信号の合成信号が入力された第3及び第4のMOS型トランジスタ(例えば図5のQ3、Q4)と、第1及び第4のMOS型トランジスタ(例えば図5のQ1、Q4)のドレイン電極の共通接続点と第2及び第3のMOS型トランジスタ(例えば図5のQ2、Q3)のドレイン電極の共通接続点にそれぞれ接続された第3及び第4の定電流源と、前記第3及び第4の定電流源と前記ドレイン電極との接続点にそれぞれ設けた出力端子と、を有することを特徴とし、又は、それぞれのソース電極に第1のテール電流源が共通接続され、それぞれのゲート電極にアナログ入力信号とレファレンス信号の合成信号が差動的に入力された第1及び第2のMOS型トランジスタ(例えば図6のQ1、Q2)と、それぞれのソース電極に第1のテール電流源が共通接続され、ゲート電極に固定信号(例えば図6のVcom)が入力された第3及び第4のMOS型トランジスタ(例えば図6のQ3、Q4)と、第1及び第2のMOS型トランジスタ(例えば図6のQ1、Q2)のドレイン電極の共通接続点に接続した第2の定電流源と、前記第2の定電流源と前記ドレイン電極との接続点に設けた出力端子と、第3及び第4のMOS型トランジスタ(例えば図6のQ3、Q4)のドレイン電極の共通接続点に設けた出力端子と、を有することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のアナログ/デジタル変換装置の第1の実施の形態を示す図である。増幅器列の出力の平均化を行うため、出力間にインピーダンス回路網を備えたアナログ/デジタル変換装置において、増幅器列の両端部(両終端)に、入力信号を2乗した出力信号を出力する特性を有する2乗回路を備え、アナログ信号とレファレンス信号とを加算した信号を前記2乗回路に入力し、2乗された出力を両終端の増幅器の出力に印加する構成としたものである。
【0017】
第1の実施の形態は、一方の入力端子にアナログ入力VIN、他方の入力端子に両端の抵抗Rr/2と、その間の複数の抵抗Rr(レファレンス抵抗)の直列接続回路によりレファレンス信号VRT+VLSB/2、VRT−VLSB/2を分圧して発生した基準電圧Vref(1)〜Vref(n)をそれぞれ入力するn(=2−1)個の差動増幅器amp1〜amp(n)と、その出力端子間に接続した抵抗R2の回路網とから構成される増幅器と、終端に2つの2乗回路であって、入力VINとレファレンス信号VRT+VLSB/2、入力VINとレファレンス信号VRT−VLSB/2をそれぞれ入力する2乗回路を設け、それぞれの2乗回路の出力電流Iを終端の増幅器amp1、amp(n)に印加する構成でなる。
【0018】
図2は、図1に示す回路の増幅器をトランジスタレベルで表記した回路を示す図である。増幅器は一例として、電流の供給を受けて差動信号を入力し、それに応じた信号を出力する回路である。例えば、2つのエンハンス型の絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(MOS型トランジスタ)を使用し、それぞれのソース電極を共通接続し、電流値Itailのテール電流源を介して第1の基準電位(アース)と接続し、それぞれのゲート電極を入力端子とし、それぞれのドレイン電極を負荷抵抗Rを介して第2の基準電位(電源)に接続した差動対トランジスタでなるトランスコンダクタンス増幅器(増幅器)である。
【0019】
更に本実施の形態においては、前述の2乗回路の入出力特性として、入力電圧V、出力電流Iとし、次式の特性を有する2乗回路とする。
【0020】
【数1】
Figure 0003753710
ここでパラメータa、bは、
【0021】
【数2】
Figure 0003753710
で与えられる値に設計される。ここで、Itailは差動対のテール電流、β=μ(Cox/2)(W/L)は差動対トランジスタのトランスコンダクタンスパラメータである。
【0022】
2乗回路の入力は、アナログ入力信号として電圧VINと、レファレンス信号として電圧VRT+VLSB /2とが与えられる。ここで、VLSBはアナログ信号に対する1量子化ステップに相当する電圧である。このため、端部のレファレンス抵抗は他の抵抗値の半分の値に設定されている。
【0023】
2乗回路の出力は、前記条件での出力電流Iを電流I20とすると次式▲1▼で与えられる。
【0024】
【数3】
Figure 0003753710
【0025】
第1の実施の形態を説明するために回路解析用の補助回路を使用する。
図3は、本実施の形態の補助回路を示す図であり、図4は、本実施の形態を構成する差動対回路の構成を示す図である。図3に示す補助回路の構成は、図2に示す回路の終端回路部(点線で囲ってある部分)を無限個並列に接続された増幅器列に置き換えたものである。
【0026】
以下、第1の実施の形態の動作を図1〜図4を参照して詳細に説明する。
回路解析の為にMOS型トランジスタの飽和領域でのドレイン電流を考えると、ドレイン電流IDは、ID=β(VGS−VTH)で与えられる。ここで、β=μ(Cox/2)(W/L)はトランジスタのトランスコンダクタンスパラメータ、VGSはゲートソース間電圧、VTHはスレッショルド電圧である。図4に示すようにテール電流Itailが供給されMOS差動対回路の差動入力を入力電圧Vとすると、MOS差動対回路の差動出力電流ΔIDは、
【0028】
【数4】
Figure 0003753710
で与えられる(例えば、トリケップス企画部編集「携帯無線端末のCMOS化のためのアナログ回路設計技術」、1999年12月16日、株式会社トリケップス発行、P108〜109参照)。
【0029】
よって、n番目の差動対回路の入力電圧は、VINとVRT−(n−1)VLSBであり、差動電圧はVIN−VRT+(n−1)VLSBであるので、テール電流をItailとすると、差動対回路の出力電流IDnは次のように求められる。
【0030】
【数5】
Figure 0003753710
ここで増幅器は無限に並んでいるので、増幅器の出力電圧は、Rが非常に大きく実質的にR→∞の極限での出力電圧と等しいと考えることができる。
すると、
【0032】
【数6】
Figure 0003753710
2に流れる電流I2nは、
【0033】
【数7】
Figure 0003753710
であるので、I2nは、
【0034】
【数8】
Figure 0003753710
となる。上式をnに関して2次で近似し、
【0035】
【数9】
Figure 0003753710
を用いて、
【0036】
【数10】
Figure 0003753710
となる。ここで、次の公式、
【0037】
【数11】
Figure 0003753710
をもちいて、
【0038】
【数12】
Figure 0003753710
と表せる。ここで、
【0039】
【数13】
Figure 0003753710
であるので、
【0040】
【数14】
Figure 0003753710
よって、R2に流れる電流は、以下で与えられる。
【0041】
【数15】
Figure 0003753710
端部の抵抗R2、つまりn=0の場合の電流I20は、以下で与えられる。
【0042】
【数16】
Figure 0003753710
ここで式▲1▼と式▲2▼を比較すると、等しい電流値になっている。すなわち、図2に示す回路と図3に示す回路で、電流I20が等しく、終端部以外の回路は等価であるため、増幅器の出力は等しくなることが分かる。
【0043】
図2に示す回路の出力は、図3に示す回路の出力と等しいため、無限に増幅器が並んでいる場合と同じ出力電圧が得られ、理想的な出力電圧を得ることができる。
次に、本発明の実施の形態に適用可能な2乗回路の具体例について説明する。
図5は、本実施の形態に適用可能な2乗回路の例を示す図である。第1、第2のMOS型トランジスタQ1とQ2と、第3及び第4のMOS型トランジスタQ3とQ4で構成された差動対トランジスタと、第1ないし第4の定電流源I0で構成されている。この2乗回路は、それぞれテール電流源I0を備える2対のMOS不平衡差動対回路の構成でなり、各差動対回路は、それぞれ2つのMOS型トランジスタQ1とQ2及びQ3とQ4で構成され、各差動対回路を構成するMOS型トランジスタQ1とQ2及びQ3とQ4はソース電極が共通接続され、ゲート電極間に入力Vが印加され、ドレイン電極は互いに他の差動対回路の逆相関係にあるMOS型トランジスタのドレイン電極と交叉接続されている。更に交叉接続されたドレイン電極同士は、テール電流源と同一の電流値を有する電流源I0が接続され、各ドレイン電極から合成電流が出力される。つまり、各差動対回路を構成するMOS型トランジスタの出力電流が加算され、差動的な出力である2つの出力電流Iout 、Iout を出力する2乗回路が実現される。
【0044】
この回路の出力電流Iout 、Iout は、
【0045】
【数17】
Figure 0003753710
の時、以下で与えられる(例えば、トリケップス企画部編集「携帯無線端末のCMOS化のためのアナログ回路設計技術」、1999年12月16日、株式会社トリケップス発行、P106〜107参照)。
【0046】
【数18】
Figure 0003753710
Vi=VIN−VRT−VLSB/2を代入し、
【0047】
【数19】
Figure 0003753710
ここでK、I0はパラメータであるが、
電流I20(式▲1▼)とIout+を等しいと置くと、
【0048】
【数20】
Figure 0003753710
上式より、K、I0は一意に決定されるため、式▲1▼に等しい電流源が実現される。
【0049】
図6は、本発明の実施の形態に適用可能な他の2乗回路の例を示す図である。第1及び第2のMOS型トランジスタQ1とQ2で構成された差動対トランジスタと、ドレイン−ソース間が並列接続された第3及び第4のMOS型トランジスタQ3とQ4でなる回路と、第1及び第2の定電流源I0で構成されている。
【0050】
この2乗回路は、テール電流源I0を備える2つのMOS型トランジスタQ1とQ2で構成したMOS平衡差動対回路と、該差動対回路のテール電流を共用するソース電極とそのドレイン電極とを互いに並列接続したMOS型トランジスタQ3とQ4とで構成される。2つのMOS型トランジスタQ1とQ2とで構成された差動対回路は、ソース電極が共通接続され、ゲート電極には互いに逆相関係の入力Vcom+V/2とVcom−V/2が印加され、ドレイン電極が共通接続され、該共通接続されたドレイン電極に、テール電流源と同一の電流値を有する電流源I0が接続され、その接続点が一方の電流出力となる。更に互いに並列接続したMOS型トランジスタQ3とQ4には、固定信号Vcomが共通接続され、ドレイン電極から合成電流が出力される。つまり、差動対回路には基準電位に対し互いに逆相関係の信号Vcom+V/2とVcom−V/2が印加され、ドレイン及びソースの共通接続回路のゲート電極にはその固定信号Vcom印加され、それぞれのドレイン電極から逆相関係の2つの出力電流Iout 、Iout が出力され2乗回路が実現される。
この回路の出力電流Iout 、Iout は、
【0051】
【数21】
Figure 0003753710
の時、以下で与えられる(例えば、トリケップス企画部編集「携帯無線端末のCMOS化のためのアナログ回路設計技術」、1999年12月16日、株式会社トリケップス発行、P118〜119参照)。
【0052】
【数22】
Figure 0003753710
Vi=VIN−VRT−VLSB/2を代入し、
【0053】
【数23】
Figure 0003753710
ここで、β2、I0はパラメータであるが、I20とIout+が等しいと置くと、
【0054】
【数24】
Figure 0003753710
上式より、β、Iは一意に決定されるため、式▲1▼に等しい電流源を実現できる。
【0055】
図5及び図6に示す2乗回路の出力電流Iout 、Iout は、複数の差動増幅器でなる増幅器列の端部の増幅器の差動出力の各出力端子に、例えば図1に示すようにそれぞれ印加される。つまり、レファレンス電圧VRTが入力される増幅器amp1の出力に印加される出力電流Iout+、Iout−は、ドレイン電流の変化が同相となる側のMOS型トランジスタのドレイン電極側に出力電流Iout+を印加され、ドレイン電流の変化が逆相となる側のMOS型トランジスタのドレイン電極側に出力電流Iout−を印加される。また、レファレンス電圧VRBが入力される増幅器amp(n)の出力に印加される出力電流Iout+、Iout−は、ドレイン電流の変化が同相となる側のMOS型トランジスタのドレイン電極側に出力電流Iout−を印加され、ドレイン電流の変化が逆相となる側のMOS型トランジスタのドレイン電極側に出力電流Iout+を印加される。
【0056】
以上、第1の実施の形態により、端部の増幅器の出力側に2乗回路からI=−aV +bの電流を供給することにより、無限に増幅器が並んでいる場合と同じ出力電圧が得られ、理想的な出力電圧が得るように構成した例を示したが、本発明は、かかる構成に加えて従来の端部への付加回路を併用したり、精度誤差を勘案して前記電流の近似的な電流を使用する等、以下のような実施の形態を構成することが可能である。
(第2の実施の形態)
図7は、本発明の第2の実施の形態を示す図である。本実施の形態はアナログ/デジタル変換における比較用の増幅器としては不要である、ダミーの差動対トランジスタ構成の増幅器(ダミー増幅器)amp0及びamp(n+1)を増幅器列の端部に設け、更にダミー増幅器に対して2乗回路を有し、アナログ入力信号とレファレンス信号の合成(加算)信号を2乗回路に入力し、その出力をダミー増幅器の出力端子に供給する構成としたものである。ダミー増幅器を追加することにより、レファレンス信号としてVRT+(3/2)VLSBとVRT−(3/2)VLSBに設定している。増幅器列の終端回路として不整合の影響を抑制する2つの回路手段を設けた構成となり、回路電流と配置(面積)等が問題とならないかぎり特性上は一層の改善を図ることができる。
【0057】
(第3の実施の形態)
図8は、本発明の第2の実施の形態を示す図である。第1の実施の形態における基準電圧を発生する直列接続構成の抵抗回路のうち、端部の抵抗R/2は、必ずしも他の抵抗値の半分の値になっている必要はない。つまり、端部の抵抗を他の抵抗と同じ値にしレファレンス信号をVRT+1VLSBとVRT−1VLSBに設定したものである。第3の実施の形態は、精度誤差が比較的大きくても問題ない場合や第2の実施の形態にようにダミー増幅器等の従来の付加回路を併用する場合には、レファレンス信号が供給される端部の抵抗の抵抗値は変更してよく、Rr/2〜Rrの範囲で適宜設定することが可能である。
【0058】
(第4の実施の形態)
図9は、本発明の第4の実施の形態を示す図である。終端回路として、増幅器の負荷抵抗に比例し、増幅器のトランスコンダクタンスに比例し、平均化抵抗に反比例する定電流回路を接続する構成としたものである。
例えば、第4の実施の形態の終端回路の定電流回路として、
【0059】
【数25】
Figure 0003753710
で与えられる電流値を出力するように設計する。ここで、gは増幅器のトランスコンダクタンス、Rは増幅器の負荷抵抗である。ここで、Itailを差動対のテール電流、β=μ(Cox/2)(W/L)を差動対トランジスタのトランスコンダクタンスパラメータとする。
第1〜第3の実施の形態は増幅器のトランスコンダクタンスgが入力信号により変化する前提で計算したが、一定であると近似してもアナログ/デジタル変換装置としての精度に問題ない場合は、
【0060】
【数26】
Figure 0003753710
としてよいので、上記定電流回路の電流値は、
【0061】
【数27】
Figure 0003753710
に近似することが可能である。
【0062】
図3に示す補助回路の電流式▲2▼と比較すると、式▲3▼は式▲2▼の近似になっている。
本実施の形態では、2つの定電流回路を使用し、各定電流回路の出力電流Iは複数の差動増幅器でなる増幅器列の端部の増幅器の差動出力の各出力端子に図9に示す方向にそれぞれ印加される。つまり、レファレンス電圧VRTが入力される増幅器amp1の出力に印加される各出力電流Iは、入力Viの変化に対し、ドレイン電流の変化が同相となる側のMOS型トランジスタのドレイン電極側に出力電流Iを吐出する方向に印加され、ドレイン電流の変化が逆相となる側のMOS型トランジスタのドレイン電極側に出力電流Iを吸い込む方向に印加される。また、レファレンス電圧VRBが入力される増幅器amp(n)の出力に印加される各出力電流Iは、入力Viの変化に対し、ドレイン電流の変化が同相となる側のMOS型トランジスタのドレイン電極側に出力電流Iを吸い込む方向に印加され、ドレイン電流の変化が逆相となる側のMOS型トランジスタのドレイン電極側に出力電流Iを吐出する方向に印加される。
【0063】
本実施の形態によれば、端部の増幅器に無限に増幅器が並んでいる場合と近似的に等しい電流が供給されるため、無限に増幅器が並んでいる場合と近似的に等しい出力電圧が得られ、精度誤差が比較的大きくても問題ない場合には、ほぼ理想的な出力電圧を得ることができる。
【0064】
(第5の実施の形態)
図10は、本発明の第5の実施の形態を示す図である。第2〜第4の実施の形態の組合せ構成でなるものである。終端回路として定電流源を用いるとともにダミー増幅器をも用いた構成としている。ダミー増幅器との併用により増幅器amp1、amp(n)での不整合の影響はより改善され定電流回路等の使用による精度誤差の問題は解消される。
【0065】
以上の実施の形態の外に、ダミー増幅器との併用構成と基準電圧を発生する直列接続の抵抗回路の構成の組合せとして、増幅器列の端部の増幅器をダミー増幅器とし、2乗回路をダミー増幅器に設け、かつレファレンス信号は、前記増幅器列の端部の増幅器の基準電圧に対し量子化ステップだけ異なるようにする構成とすることも可能である。つまり、ダミー増幅器と抵抗回路の各抵抗を抵抗値Rrとする等の構成とすることが可能である。
また、以上の実施の形態では、増幅器列を構成する増幅器は差動対トランジスタ構成を例に説明したが、本発明は他の増幅器構成を有するアナログ/デジタル変換装置にも適用可能であり、増幅器の差動出力構成を必須とするものではなく、この場合は図5、6に示す2乗回路もその出力の差動信号の一方のみを使用することができる。
更に、図5、図6により式▲1▼に等しい電流源を実現できる2乗回路の回路例を示したが、同図の2乗回路はあくまでも例であり、本発明はかかる回路だけに限定されるものではないことは明らかである。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、増幅器列の出力は、2乗回路でなる電流源回路又は定電流回路の使用により、増幅器が無限に並んでいる場合と同じ出力電圧が得られるので、理想的な出力電圧を得ることが可能であり、ダミー増幅器を使用せず若しくは最小限の使用により、アナログ/デジタル変換装置を構成する増幅器列の終端側の不整合の影響を実用上問題とならないレベルまで低減することが可能である。
【0067】
また、ダミー増幅器を併用した場合には一層のアナログ/デジタル変換の精度の向上を図ることが可能であり、また、電流源回路を簡略化することが可能であり、繰り返し性の増幅器を有するモノリシック集積回路に適用して好適である。更に終端回路として2乗回路又は定電流回路のみを使用する構成とする場合には低消費電力・低面積の面で優れた集積回路が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】 第1の実施の形態のより具体的構成を示す図である。
【図3】 第1の実施の形態の動作説明のための補助回路を示す図である。
【図4】 増幅器をMOS型トランジスタで構成した差動対トランジスタを示す図である。
【図5】 2乗回路の構成例を示す図である。
【図6】 2乗回路の他の構成例を示す図である。
【図7】 本発明の第2の実施の形態を示す図である。
【図8】 本発明の第3の実施の形態を示す図である。
【図9】 本発明の第4の実施の形態を示す図である。
【図10】 本発明の第5の実施の形態を示す図である。
【図11】 従来技術を示す図である。
【図12】 他の従来技術を示す図である。
【符号の説明】
amp0〜amp(n+1) 増幅器(差動増幅器)
Q1〜Q4 MOS型電界効果トランジスタ(MOS型トランジスタ)
負荷抵抗
Rr、Rr/2、 抵抗
インピーダンス網(抵抗)
VIN アナログ入力信号
定電流源
tail テール電流
D0〜ID4 ドレイン電流
11〜I14 負荷電流
入力信号(電圧)
20〜I24、I2n 増幅器の出力端子間の電流

Claims (10)

  1. 出力端子間に出力を平均化するインピーダンス回路網を備え、アナログ入力信号とレファレンス信号とを入力する増幅器列を有するアナログ/デジタル変換装置において、入出力特性が2乗特性を有する2乗回路を有し、アナログ信号とレファレンス信号の合成信号を前記2乗回路に入力し、前記2乗回路の出力を前記増幅器列の端部の増幅器の出力端子に印加したことを特徴とするアナログ/デジタル変換装置。
  2. 前記2乗回路は、前記増幅器の入力が無信号時に、前記増幅器の負荷抵抗に比例し、前記増幅器のトランスコンダクタンスに比例し、前記増幅器の出力端子間の抵抗に反比例する電流を出力する特性を有することを特徴とする請求項1記載のアナログ/デジタル変換装置。
  3. 出力端子間に出力を平均化するインピーダンス回路網を備え、アナログ入力信号とリファレンス信号とを入力する増幅器列を有するアナログ/デジタル変換装置において、前記増幅器列の端部の増幅器の出力端子に、前記増幅器の負荷抵抗に比例し、前記増幅器のトランスコンダクタンスに比例し、前記増幅器の出力端子間の抵抗に反比例する定電流を出力する定電流回路の出力を印加したことを特徴とするアナログ/デジタル変換装置。
  4. 前記増幅器列の端部の増幅器はダミー増幅器であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のアナログ/デジタル変換装置。
  5. 前記増幅器列の各増幅器は、それぞれ一方の入力端子にアナログ入力信号を入力し他方の入力端子に量子化ステップだけ順次異なる基準電圧を入力する差動対トランジスタを有する差動増幅器であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のアナログ/デジタル変換装置。
  6. 前記レファレンス信号は、前記増幅器列の端部の増幅器の基準電圧に対し量子化ステップの略1/2だけ異なる電圧であることを特徴とする請求項5記載のアナログ/デジタル変換装置。
  7. 前記基準電圧は、両端の抵抗の抵抗値が他の抵抗の抵抗値の略1/2の複数の抵抗の直列接続でなる抵抗回路により、正負の2つのリファレンス信号を分圧することにより発生されることを特徴とする請求項6記載のアナログ/デジタル変換装置。
  8. 前記差動対トランジスタは、それぞれソース電極が共通接続されてテール電流源が接続され、ゲート電極が前記各入力端子に接続され、ドレイン電極が前記出力端子に接続されたMOS型トランジスタで構成されていることを特徴とする請求項5、6又は7記載のアナログ/デジタル変換装置。
  9. 前記2乗回路は、それぞれのソース電極に第1のテール電流源が共通接続され、ゲート電極間にアナログ入力信号とレファレンス信号の合成信号が入力された第1及び第2のMOS型トランジスタと、それぞれのソース電極に第2のテール電流源が共通接続され、ゲート電極間にアナログ入力信号とレファレンス信号の合成信号が入力された第3及び第4のMOS型トランジスタと、第1及び第4のMOS型トランジスタのドレイン電極の共通接続点と第2及び第3のMOS型トランジスタのドレイン電極の共通接続点にそれぞれ接続された第3及び第4の定電流源と、前記第3及び第4の定電流源と前記ドレイン電極との接続点に設けた出力端子と、を有することを特徴とする請求項1ないし8の何れかの請求項記載のアナログ/デジタル変換装置。
  10. 前記2乗回路は、それぞれのソース電極に第1のテール電流源が共通接続され、それぞれのゲート電極にアナログ入力信号とレファレンス信号の合成信号が差動的に入力された第1及び第2のMOS型トランジスタと、それぞれのソース電極に第1のテール電流源が共通接続され、ゲート電極に固定信号が入力された第3及び第4のMOS型トランジスタと、第1及び第2のMOS型トランジスタのドレイン電極の共通接続点に接続した第2の定電流源と、前記第2の定電流源と前記ドレイン電極との接続点に設けた出力端子と、第3及び第4のMOS型トランジスタのドレイン電極の共通接続点に設けた出力端子と、を有することを特徴とする請求項1ないし8記載の何れかのアナログ/デジタル変換装置。
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