JP3753158B2 - ガス検知体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、何人も簡単にガス漏れを検知できる上、安価に、しかも、ほとんど設置スペースを必要とせずに屋内、屋外を問わず設置でき、しかも、ガス漏れを迅速に検出できるようにしたガス検知体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
工業製品の製造工程では人の生理機能に障害を与える種々の有害物質が使用さたり、有害物質が発生したりすることが少なくない。又、大気中で引火し易い引火性物質や、大気中で引火して爆発する爆発性物質などが用いられたり、或いはこれらの物質が生成したりすることも少なくない。
【0003】
例えば半導体製造工程においては、シリコン系、砒素系、燐系、硼素系、金属水素系、フロン系、ハロゲンやハロゲン化物、窒素酸化物、その他の有害物質を含んだガスが使用されたり、あるいは生成する。
【0004】
シリコン系有害ガスとしては、シラン(SiH4)、ジクロルシラン(SiHCl2)、三塩化ケイ素(SiHCl3)、四塩化ケイ素(SiCl4)、四フッ化ケイ素(SiF4)、ジシラン(Si2H6)、TEOS〔Si(OC2H5)4〕などが代表的である。
【0005】
砒素系有害ガスとしては、アルシン(AsH3)、フッ化砒素(III)(AsF3) 、フッ化砒(V)(AsF5) 、塩化砒素(III)(AsCL3)、塩化砒素(V)(AsCL5)などが代表的であり、燐系有害ガスとしてはホスフィン(PH3) 、フッ化燐(III)(AsF3) 、フッ化燐(V)(AsF5) 、塩化燐(III)(PCl3) 、塩化燐(V)(PCl5) 、オキシ塩化燐(POCl3) などが代表的である。
【0006】
硼素系有害ガスとしては、ジボラン(B2H6)、三フッ化硼素(BF3) 、三塩化硼素(BCL3)、三臭化硼素(BBr3)などが代表的であり、金属水素系有害ガスとしては、セレン化水素(H2Se)、モノゲルマン(GeH4)、テルル水素(H2Te)、スチビン(SbH3)、水素化錫(SnH4)などが代表的であり、フロン系有害ガスとしては四フッ化メタン(CF4) 、三フッ化メタン(CHF3)、二フッ化メタン(CH2F2) 、六フッ化プロパン(C3H2F6)、八フッ化プロパン(C3F8)などがその例として挙げられる。
【0007】
有害ガスであるハロゲン及びハロゲン化物としては、フッ素(F2)、フッ化水素(HF)、塩素(Cl2) 、塩化水素(HCl) 、ホスゲン(COCI2)、四塩化炭素(CCl4)、臭化水素(HBr2)、三フッ化窒素(NF3) 、四フッ化硫黄(SF4) 、六フッ化硫黄(SF6) 、フッ化タングステン(VI)(WF6) 、フッ化モリブデン(MoF6)、四塩化ゲルマニウム(GeCl4) 、塩化錫(SnCl4) 、塩化アンチモン(V)(SbCl5) 、塩化タングステン(VI)(WCl6)、六塩化モリブデン(MoCl6) などが代表的である。
【0008】
有害ガスである窒素酸化物としは、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(N02) 、一酸化二窒素(N2O) なとが挙げられ、その他の有害ガスとしては、硫化水素(H2S) 、アンモニア(NH3) 、トリメチルアミン〔(CH3)3N]〕などをその例として挙げることができる。
【0009】
工員の安全のために、これらの有害ガス、引火性ガス、爆発性ガスなどの大気中への漏洩を防止することは必須の課題であり、この課題を解決するために、工場の有害ガス、引火性ガス、爆発性ガスなどが使用され、あるいは生成されるガス回路では、そのガス回路を流通するガスはガス供給源より、配管を経て、周囲から気密状に区画された処理室に供給され、この処理室での使用後には別の配管を経て無害化処理施設に送られる。そして、この無害化処理施設で無害な物質に変化させたり、活性を失わせたり、有害物を含んだ固形物や液体を除去したりしてから大気中に放出するようにしている。
【0010】
しかしながら、配管の接続部や、配管と処理室との接続部、あるいは処理室の壁、床、天井、観察窓、或いは腐食更に作業用手袋装着口などの継ぎ目において何等かの理由によってガス漏れが生じる危険を無視することは許されず、しかも、事前にこの有害ガスのガス漏れを発見することが極めて重要である。
【0011】
従って、次善策として、発生したガス漏れをできるだけ早期に発見し、補修、修理等の処置を行うことによって工員の身体及び生命の安全を図らざるを得ないことになる。
【0012】
従来、このようなガス漏れを検知する方法としては、処理室を配置した屋内にガス回路を流通するガスの中の特定の有害ガス等の成分を検知するガス検知装置を配置し、このガス検知装置を観察する方法が採用されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来の方法では、操業の便宜上、ガス検知装置が処理室から離れた位置に配置されることが多く、有害ガス等の検出がガス漏れの発生からかなり遅れて検出され、検出前に気密室に近付いた工員が有害ガス等を吸引したり、発火したり、爆発が発生するおそれがある。
【0014】
特に、屋外においては、自然の気流の影響が大きく、ほとんどの場合、多量のガスが漏洩しても検出できないから、ガス検知装置による有害ガスの検知すら行われていない。
【0015】
又、屋内であっても高価なガス検知装置を随所に設けることは経済的に困難な場合が多く、又、設置するためのスペースを確保しなければならないので、工場内の利用可能なスペースが狭くなるという問題もある。
【0016】
更に、ガス検知装置によって、ガス漏れがあると判断するためには、ガス検知装置の取扱に習熟する必要があり、誰でも簡単にガス漏れを発見できるわけではない。
【0017】
本発明は、前記技術的課題に鑑みて完成されたものであり、支持体がガス回路中に流通させるガスの成分と接触して変色する検知試薬を備えることにより、誰でも簡単にガス漏れを検出できる上、安価に、しかも、ほとんどスペースを必要とせずに屋内、屋外を問わず設置でき、しかも、ガス漏れを迅速に検出できるようにしたガス検知体を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るガス検知体は、前記の目的を達成するため、支持体と、この支持体の一部又は全部に担持され、ガス回路中に流通させるガスの成分と接触して変色する検知試薬とを備え、前記支持体の表面には通気性及び透光性を有する保護膜が積層されてなり、前記支持体、前記保護膜又は前記支持体と前記保護膜との間に有害成分吸収剤を担持させた、という技術的手段を講じている。
【0019】
以下、本発明について更に詳細に説明するが、本発明において、色とは、白色、灰色、黒色などの無彩色と、赤色、青色、黄色などの有彩色とが含まれる。又、色の変化又は変色とは、無彩色から有彩色への変化(着色又は発色)、有彩色から無彩色への変化(脱色)、一つの有彩色から他の有彩色への変化(色相の変化)、無彩色又は同じ有彩色における明度の変化、同じ有彩色における彩度の変化とを含み、特に、無彩色又は同じ有彩色における明度の変化、同じ有彩色における彩度の変化、即ち、色の強弱・濃淡の変化を色調の変化という。
【0020】
本発明で用いられる支持体としては、後述する検知試薬を担持できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えばフィルム状、シート状、布状、テープ状、帯状、紐状、網製の袋状或いは多孔質の袋状に形成されているものが挙げられる。
【0021】
本発明において、支持体がフィルム状、シート状、布状、テープ状又は帯状に形成されており、しかもこれに検知試薬が担持されているものであると、配管の接続部等に至極簡単且つ直接張り付けることができるので、ガス漏れを至極早期に発見できる結果、安全性を著しく高めることができる。フィルム状やシート状のものには葉書も含まれるのであり、また布状のものには織布や不織布が含まれる。
【0022】
勿論、本発明においては、紐状の支持体を用い、これに検知試薬を担持し、これを室内に張り巡らすと、どの辺が安全領域で、またどの辺が危険領域であるかをしごく容易に判別できるので好ましい。
【0023】
又、吸着体、例えばゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ或いはパーライト等に検知試薬を担持させ、これを網製の袋体或いは多孔質の袋体に入れ、配管の接続部等の周辺や室内の色々な箇所に吊り下げると、どの辺が安全領域で、またどの辺が危険領域であるかをしごく容易に判別できるので好ましい。
【0024】
本発明の支持体としては、具体的には、例えば濾紙、上質紙、コート紙、アート紙などの紙、又はポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成樹脂をベースとした合成紙やフィルムないしシート、或いはポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどの合成樹脂フィルムをラミネートしたラミネート紙、更に、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンなどの合成樹脂製フィルム、シート、テープ又は帯が挙げられる。
【0025】
又、他の支持体としては、天然繊維や合成繊維更に半合成繊維、或いは複数種の天然繊維の混用、複数種の合成繊維の混用、1種又は複数種の天然繊維と1種又は複数種の合成繊維の混用で形成された紙、不織布又は織布等の布、或いは天然繊維や合成繊維更に半合成繊維、或いは複数種の天然繊維の混用、複数種の合成繊維の混用、1種又は複数種の天然繊維と1種又は複数種の合成繊維の混用で形成された紐、更に合成樹脂で形成された紐等が挙げられる。
【0026】
なお、これらの合成樹脂製の支持体としては、検知試薬の担持を容易にするために、親水性のもの、発泡体を含む多孔質のものが好ましい。又、支持体は後に詳述する判定基準表示部の着色を容易にすると共に、検知試薬の変色を観察し易くするために、透明あるいは白色であることが好ましい。
【0027】
この支持体の一部又は全部に担持させる検知試薬は、ガス回路中を流通するガス成分と接触して変色するものであればよい。
【0028】
この場合、検出されるガスがガス回路中を流通するガス成分の中から選択された任意の成分であれば良く、検知試薬はこの成分と接触して変色するものであればよい。
【0029】
即ち、ガス回路中を流通するガス成分は必ずしも一種類とは限らず、複数種類の場合も多々有るが、このガス成分の総てを検出する必要はなく、複数のガス成分のうち一種類を検出するだけで、当然にガス漏れを確認できるのである。
【0030】
本発明において、検出されるガス成分は、ガス漏れが生じていることを検出できればよいので、ガス回路を流通するガスに含まれ、かつ、大気中に通常は含まれていない成分であればよいが、ガス漏れを検出する目的がガス漏れによる被害の防止にあることに鑑みれば、ガス回路を流通するガスに含まれた有害成分、又は引火性成分、もしくは爆発性成分を選択することが好ましい。
【0031】
又、選択される成分の数は1つに限らず、複数の成分を検出するようにしてもよい。複数の成分を検出する場合には、複数の選択された成分に接触して色が変化する単一の検知試薬を支持体に担持させてもよく、又、選択された各成分に接触して色が変化する複数種の検知試薬を支持体に担持させてもよい。そして、複数種の検知試薬を支持体に担持させる場合には、各検知試薬の混色を避け、各検知試薬の変色を認識し易くするために、複数種類の検知試薬が互いに全面的に重複することなく支持体に担持させることが好ましい。
【0032】
検知試薬は支持体の全面に担持させてもよく、又、その一部に担持させてもよいのであるが、検知試薬を支持体の全部又は一部に担持させる場合には、検知試薬が、選択された成分と接触して、検知成分を表現する文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されるように、例えば「砒素系」又は「ハロゲン化物」等の文字、「TEOS」等のマーク、或いは「AsH3」や「COCI2」等の記号が表示されるように、支持体に担持させるのが望ましい。
【0033】
この場合には、検知試薬の変色と同時に検知試薬が形どる文字やマーク更に記号によってもガス漏の発生を認識することができ、ガス漏れの発見が色覚障害者にも容易に判別できるので有利である。
【0034】
又、本発明においては、検知試薬を支持体の全部又は一部に担持させる場合には、検知試薬が、選択された成分と接触して、危険を表現する文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されるように、「ガス漏れ発生」、「危険」などの文字、髑髏のマーク、+やX等の記号が表示されるように、支持体に担持させるのが望ましい。
【0035】
この場合、検知試薬の変色と同時に検知試薬が形どる文字やマーク更に記号によってもガス漏の発生を認識することができるから、ガス漏れの発見が色覚障害者にも容易になる上、ガス漏れの発生と同時に安易なガス漏れ発生箇所への接近が危険であることが検知試薬によって知らされる結果、安全性を高める上で一層有利になる。
【0036】
本発明のガス検知体において、フィルム状、シート状、布状、テープ状又は帯状のものを用いる場合には、例えば配管継手、配管と気密室との接続部等のガス漏れが発生し易い箇所又はその近傍に張り付けたり、又、紐状のガス検知体を用いる場合には室内に張り巡らしたり、更に、吊り下げるタイプのガス検知体を用いる場合には、配管の接続部等の周辺や室内の色々な箇所に吊り下げて取り付けられる。そして、ガス漏れが発生すれば、検知試薬の色が変化するので、この色の変化を認識するだけで、即ち、ガス検知体の色がガス漏れ発生前の色と変わったと認識するだけでガス漏れを検出できる。従って、何人も簡単にガス漏れを検出できる。
【0037】
しかも、ガス漏れの発生とほぼ同時にガス検知体の色の変化が生じるので、迅速にガス漏れを検出できる結果、その対策を遅滞無く行うことができるから、一層安全な操業を行うことができる。
【0038】
又、本発明のガス検知体は、前記支持体に検知試薬を後述するように、例えば含浸、印刷又は配合等の種々の方法で担持させたものであるから、非常に安価である上、薄肉であり、これを前記のガス漏れが発生し易い箇所又はその近傍に取り付けてもほとんど設置のためのスペースを必要としないのであり、しかも、前記のガス漏れが発生し易い箇所が屋内か屋外かを問わずに張り付けたり、張り巡らしたり、或いは吊り下げることができる。
【0039】
検知試薬を支持体に担持させる方法は、特に限定されず、含浸、浸漬、刷毛塗、ローラ塗、スプレーなどの塗布、凹版印刷、凸版印刷、グラビア印刷、植写印刷等の印刷や、素材配合段階での配合などの方法を自由に選択することができる。これらのうち、印刷による方法は担持量の制御、担持領域の制御及び担持の均一性を高める上で有利である。
【0040】
本発明に使用される検知試薬としては、具体的には、硼素の分析に用いられるエチルヘキサンジオール溶液、アルミニウムの分析に用いられるエリオクロムシアニンR 溶液、湿度指示に用いられる塩化コバルト溶液、アクリルアルデヒドの検出に使用される3%塩化銀(II)・エタノール溶液、ホスフィン(PH3) の検出に用いられる塩化パラジウム(II)(PdCl2) 溶液、硼素、モリブデン、タングステン、鉛、ジルコニウム、セリウムの検出に用いられるカルミン酸・硫酸溶液、アルカリ、濃硫酸の検出に用いられるキナリザリン溶液、硼素の分析に用いられる0.01%キナリザリン・硫酸溶液、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウムなどの検出、定量などに用いられる0.01%キナリザリン・エタノール溶液、オゾン、パーオキシダーゼ、シアンイオン、銅イオンの検出に用いられるグアヤクチンキ、シアン化水素の検出するグアヤクチンキ・硫酸銅試験紙に用いられるグアヤクチンキ及び硫酸銅、シアン化水素、銅の検出に用いられる1%グアヤコール溶液、亜硝酸性窒素の検出に用いられるグリース−ロミイン亜硝酸試薬、硝酸性窒素の検出に用いられるグリース−ロミイン硝酸試薬、硼素の検出に用いられる0.1%クルクミン・酢酸溶液、硼素、ジルコニウムなどを検出するクルクマ試験紙に用いられるクルクミンのエタノール溶液、酸塩基指示薬として用いられるm−クレゾールパープル指示薬、o−クレゾールフタレイン指示薬、硼素の検出に用いられる1,1−ジアントリミド・硫酸溶液、塩化物イオンの検出に用いられる0.02N硝酸水銀(II)溶液、フッ化物の検出に用いられる1mM硝酸セリウム(III) 溶液、遊離塩素の検出に使用される0-トリジン溶液、二酸化窒素、トリクロロニトロメタン(CCl3NO2) 、有機燐化合物、亜硝酸の検出に用いられるN−1−ナフチルエチレンジアミン溶液、ヨウ素、臭素の検出試薬に用いられるα−ナフトフラボン溶液、パラジウム(II)、過塩素酸イオン、塩化水素ガス、フェノール類の検知試薬であるp−ニトロジメチルアニリン溶液、塩酸基の検出に用いられるp−ニトロフェノール指示薬、硫化物イオンの検出に用いられる5%ニトロプルシドナトリウム溶液、ケトンの検出に用いられるロテラ吉川変法検知試薬、ナトリウム、カリウムなどの検出に用いられるビオルル酸溶液、錫(IV)、ゲルマニウムの検出に用いられるフェニルフルオロン溶液、アンモニア性窒素の検出に用いられる1−フェニル−3メチル−5−ピラゾロン(モノピラロゾン)溶液、シアンの検出に用いられるピラロゾン・ピリジン溶液、塩化物イオン、臭化物イオンの分析に用いられるフェノサフラニン溶液、アンモニア性窒素の検出に用いられる5%アルカリ性フェノール溶液、硝酸イオンの検出に用いられるフェノール・硫酸溶液、アンモニア性窒素の検出に用いられるフェノール・ニトロプルシッド溶液、硝酸、亜硝酸イオンの検出に用いられるフェノール標準液、金、銅、カドミウム、シアン、酸塩基の検出に用いられるフェノールフタレイン指示薬、硼素の検出に用いられるプルプリン溶液、希土類金属の検出に用いられる0.055ブロモピロガロールレッド・エタノール溶液、銀の検出に用いられる0.1mMブロモピロガロールレッド溶液、塩化物イオン、ヨウ化物イオンの検出に用いられるブロモフェノールブルー指示薬、カリウム、ルビジウム、セシウム、アンモニウムイオンの検出に用いられるヘキサニトロコバルト(III) 酸ナトリウム溶液、砒素の検出に用いられるベッテンドルフ試薬、硝酸イオンの検出に用いられるメチルウンベリフェロン検知試薬、塩素、臭素の検出に用いられるメチルオレンジ指示薬、水銀、金、ガリウムなどの検出に用いられるメチルグリーン溶液、酸塩基指示薬として用いられるメチルバイオレット指示薬、酸塩基指示薬として用いられるメチルレッド指示薬、過塩素酸イオン、タンタルの検出に用いられるメチレンブルー溶液、フッ化物イオンの検出に用いられるランタン溶液、ゲルマニウム、セリウム、硫酸イオン、燐酸イオンの検出に用いられる硝酸キニーネ溶液、アンチモン、タングステン、ガリウム、金、タリウムの検出に用いられるローダミンB溶液などをその例として挙げることができる。又、この他にも、暗所ないし冷暗所で使用される場合には、アンモニアガス、アンモニウムイオンの検出に用いられるネスラー試薬を用いることができる。
【0041】
本発明において、検知試薬の変色によるガス漏れの検出を認識し易くするために、特に支持体の一部には少なくとも検知試薬の変色の前又は後の色が表示される判定基準表示部を設けることが好ましい。
【0042】
変色前の検知試薬の色を表示する判定基準表示部を設ける場合には、例えばガス漏れの発生により検知試薬を担持させた部分の色が変化するのに対して、判定基準部の色は変わらないので、支持体の表面に色違いの二つの領域ができる結果、ガス漏れの発生を認識し易くなる。
【0043】
ここで、支持体の一部には、ガス回路中に流通させるガスの成分と接触して、検知成分を表現する文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されるように検知試薬が担持されている一方、その文字、マーク又は記号がどのような成分であるかを表示する判定基準表示部が隣接して支持体に設けるのが望ましい。
【0044】
この場合、ガス漏れ検出時に表示される文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種とその周囲との違いによって当該文字等が識別できるようになるので、ガス漏れの発生を色覚障害者でも容易に認識できる結果、至極有利である。
【0045】
又、本発明において、支持体の一部には、ガス回路中に流通させるガスの成分と接触して、危険を表現する文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されるように検知試薬が担持されている一方、その検知試薬の変色前の色を表示する判定基準表示部が隣接して支持体に設けられていることにより、ガス漏洩箇所への接近の危険性を報知できるので、安全性を高める上でも好ましい。
【0046】
又、変色後の検知試薬の色を表示する判定基準表示部を設ける場合には、ガス漏れ発生前には支持体の表面に変色前の検知試薬を担持した領域と変色後の色を表示する領域とが色違いの二つの領域として存在するのに対して、ガス漏れが発生すれば検知試薬を担持した領域が変色するので、これら二つの領域が同色になり、ガス漏れの発生を認識し易くなる。
【0047】
本発明において、支持体の一部には検知成分の濃度により色調が変化する検知試薬を担持する一方、判定基準表示部には、この検知試薬の色調の変化に対応させて、段階的に色調を異ならせた複数色が表示されているものが、検知成分の濃度が容易に把握できるので望ましい。
【0048】
つまり検知試薬はガスの漏洩量に対応して色の強度・濃淡、即ち、明度及び/又は彩度が変化するものが多く、このことを考慮すれば、本発明においては、ガス漏洩の程度を容易に認識できるようにするために、検出成分の濃度により色調が変化する検知試薬を支持体に担持させ、判定基準表示部には、この検知試薬を担持した支持体の部分の色調の変化に対応させて段階的に色調を異ならせた複数色を表示することが好ましい。
【0049】
又、この場合には、その程度を例えば数値的に把握できるようにするために、判定基準表示部には、複数色のうちの少なくとも1色の表示に隣接して、又は重複して、その色で表現される検出成分の濃度を表現する数字、文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されていることが好ましい。
【0050】
本発明においては、ガス検知体の機械的強度や表面強度を強化するために、支持体の表面に通気性及び透光性の保護膜を形成する。
【0051】
ここで、透光性とは実質的に保護膜を通して支持体の少なくとも検知試薬を担持した部分を視覚できればよいという意味であって、例えば透孔を形成した不透明の膜からなる保護膜を用いてもよい。
【0052】
又、この保護膜は、通気性を有することによって、ガス漏れを早期に発見することができるのであり、ガス漏れの発生から出来るだけ短時間で漏洩ガスが支持体に到達することが好ましくい。
【0053】
通気性を有する透明の保護膜の材質としては、特に限定されないが、例えば延伸、特定成分の溶出、発泡、パンチングなどにより表裏両面に連通する多数の透孔を形成した合成樹脂製のフィルム状、シート状、テープ状又は帯状更に薄く梳いた紙などを用いることができる。
【0054】
なお、この保護紙と支持体との積層の方法は、特に限定されず、例えば接着剤を用いて貼り合わせたり、融着したりする方法の他、ラミネーション技術によってもよい。
【0055】
本発明において、保護膜を形成する場合には、保護膜の表面又は裏面に少なくとも各検知試薬の変色の前後の色が表示される判定基準表示部を設けることができるのであり、特にその表面に判定基準表示部を設けた場合には、判定基準表示部を最も直接的に視覚することができる点で有利であり、裏面に設けた場合には、判定基準表示部がこの保護膜で保護される点で有利である。
【0056】
この保護膜の表面又は裏面に判定基準表示部を設ける場合、検知試薬の変色によるガス漏れの検出を一層認識し易くするために、判定基準表示部には、検知試薬の変色後の色の表示に隣接して、検知成分を表現する文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種を表示することができる。この場合、色の種類や変化によって検知成分を特定したり、又、前述のように、文字、マーク又は記号によって検知成分を特定しても良いのである。
【0057】
又、この場合には、ガス漏洩の程度を容易に認識できるようにするために、検知成分の濃度により色調が変化する検知試薬を支持体に担持させる一方、判定基準表示部には、その検知成分の濃度に対応させて、段階的に色調を異ならせた複数色が表示されていることが一層好ましい。
【0058】
更に、このように判定基準表示部に検知試薬を担持した支持体の部分の色調の変化に対応させて段階的に色調を異ならせた複数色が表示される場合には、その程度を例えば数値的に把握できるようにするために、判定基準表示部には、前記複数色のうちの少なくとも1色の表示に隣接して、その色で表現される検出成分の濃度を表現する数字、文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されているものが更に好ましい。
【0059】
なお、本発明において、ガス検知体の機械的強度を強化するために、支持体の裏面に通気性の有る補強膜を形成することができる。この場合には、ガス検知体の表面強度は強化されないが、支持体の検知試薬の色を直接に視認できるようになる点で有利になる。
【0060】
この補強膜の材質は、保護膜と同様にすればよく、又、その形成方法も通気性を有する保護膜を形成する方法と同様にすればよい。
【0061】
もちろん、本発明において、ガス検知体の機械的強度と表面強度とを強化するために、支持体の表面に通気性を有する透明の保護膜を形成すると共に、支持体の裏面に通気性を有する補強膜を形成することは可能である。
【0062】
本発明においては、本発明のガス検知体を所要の箇所に取り付ける作業を簡単に且つ容易にするために、支持体の裏面には粘着剤層が部分的に形成したり、或いは補強膜の裏面には粘着剤層が部分的に形成されていることが望ましい。
【0063】
本発明においては、本発明のガス検知体を所要の箇所に取り付ける作業を簡単に且つ容易にするために、支持体或いは補強膜の裏面に通気性を有する粘着剤層が形成されることが好ましい。
【0064】
この粘着剤層に通気性を持たせる方法としては、支持体の全面にわたって、或いは部分的に発泡した粘着剤層を付着させたりする方法を挙げることができる。
【0065】
支持体の裏面に部分的に粘着剤を付着する方法としては、支持体の縁部、あるいは中央部に集中して付着させることもできるが、表面の形状及び大きさが種々異なる被着体に対して同じように簡単に貼着できるようにするために、例えば印刷、あるいは、転写により、支持体の裏面全面にわたって縦縞、横縞、斜縞、波状縞などの縞状に付着させたり、格子状に付着させたり、市松模様に付着させたり、格子点に付着させたり、粘着剤の塗布に使用されるスプレーを支持体の裏面又はこの裏面に形成された補強膜の裏面に沿って円あるいは楕円を描きながら一方向に移動させたり、ジグザグに移動させたりするなど適宜二次元方向に運行させて、支持体の裏面全体に平均的に分散して付着させることが好ましい。
【0066】
なお、本発明において、支持体の裏面に補強膜が形成される場合には、この補強膜の支持体と反対側の面に粘着剤層を付着させればよい。
【0067】
本発明において使用される粘着剤の組成は、特に限定されるものではなく、一般に粘着剤として従来より多用されているゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤を用いることができ、更に、シリコーン系粘着剤或いはホットメルト系粘着剤を用いることができる。
【0068】
これらのうち、ホットメルト系粘着剤は、初期タック力が強く、低温ないし常温での粘着性が非常に優れ、しかも、発泡によって表裏両面間にわたる連続気泡を簡単に形成できるので有利である。
【0069】
ホットメルト系粘着剤とは、ホットメルト系高分子物質を含有する粘着剤のことであり、このホットメルト系高分子物質としては、A−B−A型ブロック共重合体、飽和ポリエステル系高分子物質、アクリル系高分子物質、ウレタン系高分子物質、ポリアミド系高分子物質、ポリオレフィン系高分子物質、ポリオレフィン系共重合体、あるいは、これらの変性体、もしくはこれらの中の2種類以上のものを混合したものがその例として挙げられる。
【0070】
ここで、変性体とは、ホットメルト型高分子の性質、例えば粘着性や安定性などを改善するために、ホットメルト型高分子物質の一部を他の成分に置き換えたものをいう。
【0071】
また、A−B−A型ブロック共重合体において、Aブロックはスチレン、メチルスチレン等のモノビニル置換芳香族化合物で、非弾性重合ブロックであり、Bブロックはブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンの弾性重合体ブロックであり、具体的には、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられるのであり、又、これらを混合して用いてもよいのである。
【0072】
なお、A−B−A型ブロック共重合体の市販品としてはシェル化学製のカリフレックスTR−1101、カリフレックスTR−1107、カリフレックスTR−1111など、フィリップペトロリアム製のソルプレン418などがその例に挙げられる。
【0073】
本発明において使用されるホットメルト系粘着剤は、ホットメルト型高分子物質を含有するものであれば良く、従って、他の成分、例えば他の粘着剤、粘着賦与剤、老化防止剤、充填剤、粘着調整剤、粘着改良剤、着色剤、消泡剤、増加粘剤、防黴剤、抗菌剤、殺菌剤、消臭剤、脱臭剤などが配合されているものも含まれる。
【0074】
特に、粘着剤の特性として重要な粘着力は、ホットメルト系高分子物質と例えば脂環族系石油樹脂などの粘着性賦与剤とを配合することにより、容易にコントロールできるようになる。
【0075】
この脂環族系石油樹脂は、環状骨格を持った石油系樹脂であり、具体的には、ロジン、脱水素ロジン、脱水素ロジンのグリセリンエステル類、ガムロジンのグリセリンエステル類、水添ロジン、水添ロジンのメチルエステル類、水添ロジンのグリセリンエステル類、水添ロジンのペンタエリトリットロジン類、重合ロジン、重合ロジンのグリセリンエステル類、クマロンインデン樹脂、水添石油樹脂、無水マレイン酸変性ロジン、ロジン誘導体、C5系石油樹脂等がその例として挙げられ、これらは単味で使用されたり、これらの中の2種以上を組み合わせて使用されたりする。
【0076】
なお、この脂環族系石油樹脂の市販品の例としては、荒川化学製のアルコンP−100、アルコンP−125など、日本ゼオン製のクイントン、エクソン製のエスコレッツ3000などが挙げられる。
【0077】
この粘着賦与剤を用いる場合には、更に軟化剤を添加してホットメルト系高分子物質を溶解ないし分散させて軟化し、適度の保形性、柔軟性及び粘着力を発現させることが好ましい。
【0078】
この軟化剤としては、例えばヤシ脂、ひまし油、オリーブ油、ツバキ油、アーモンド油、パーシック油、落花生油、ゴマ油、大分油、ミンク油、綿実油、トウモロコシ油、サフラワー油、オレイン酸、流動パラフィンなどが挙げられる。
【0079】
具体的なホットメルト系粘着剤としては、粘着力、安定性、被着体からの剥離性などを考慮することが好ましく、この観点から、ホットメルト型高分子物質5〜40重量部、脂環族系石油樹脂5〜55重量部、軟化剤5〜55重量部からなるものが推奨されるのであり、特に、ホットメルト型高分子物質10〜30重量部、脂環族系石油樹脂10〜50重量部、軟化剤15〜45重量部からなるものが挙げられる。
【0080】
前記ホットメルト系粘着剤を用いる場合には、粘着剤を発泡させることにより通気性を有する粘着剤層を形成することができるのであり、このホットメルト系粘着剤を発泡させたもの(以下、粘着発泡体という。)は以下の理由で最も好ましいと考えられる。
【0081】
まず、この粘着発泡体は、発泡により体積が元の粘着剤の数倍に膨張されるので原料の削減を図れるにもかかわらず、形成される連続気孔や粘着面に開口した独立気孔の孔径が印刷、転写、スプレーの運行などによって形成されるので、粘着面の面積減少が少なく、本来の粘着性が殆ど損なわれない上、連続気孔や独立気孔が粘着面に開口して粘着面に適度の凹凸が形成されるので、多孔質面や粗荒面に対しても粘着性及びシール性が高められる。
【0082】
加えて、発泡率を制御することにより、容易に熱伝導性を制御することができるので、配管や処理室の壁から検知試薬及び支持体への熱伝導を制御して検知試薬の加熱による変化ないし変性を防止することが容易になる。
【0083】
ホットメルト系粘着剤を発泡させる方法としては化学的発泡方法と物理的発泡方法とが挙げられるのであり、化学的発泡方法とは無機系発泡剤または有機系発泡剤もしくはこれらの混合物を用い、その分解反応の際に発生する窒素ガスや炭酸ガスを利用して発泡させる方法であり、物理的発泡とは粘着剤に圧縮空気、圧縮窒素、圧縮炭酸ガスなどの気体の圧力などの物理力によって混入させる方法である。
【0084】
これらの発泡方法の中では、特に、特公昭60−3350号公報、特開昭62−87267号公報、特公昭63−17295号公報、特開平1−59023号公報に記載されている物理的発泡方法が以下に述べる理由により推奨される。
【0085】
前記各公報に記載されている物理的発泡方法によれば、大気圧中でノズルから噴出されるホットメルト系粘着剤に加圧気体を接触させることにより、粘着剤が繊細な繊維状に吹き散らかされてその間に粘着層の両面にわたる微小な通気路が形成されるとともに、加圧気体の一部分が粘着剤に混入し、この加圧気体が大気圧に減圧されるまで膨張することによりや無数の気泡が発生し、その無数のうちの一部が両面で大気中に連通することにより、粘着剤を貫通する多数の微細な連続気孔が形成される。
【0086】
その発泡率は粘着剤の粘度に関連する温度と、加圧気体の圧力とに依存するので、発泡剤を用いる場合に比べて、所要の発泡率の粘着剤発泡体を得るための温度条件及び圧力条件を設定し易い。
【0087】
また、この物理的発泡方法において、発泡率を安定させるためにはノズルからの粘着剤の噴出量ないし噴出速度と加圧空気の圧力とを安定させればよいので、均質な粘着剤発泡体を得ることが容易である。
【0088】
この物理的発泡方法を実施する場合、発泡率の制御精度を高めるためには、ノズルから噴出する粘着剤にできるだけ早く圧縮気体を接触させることが好ましいので、例えば、粘着剤を噴出する粘着剤噴出口の周囲に圧縮気体を噴出する噴気口を開口させ、粘着剤の噴出と同時に圧縮気体を粘着剤に接触させることが好ましい。
【0089】
又、粘着剤を噴出する粘着剤噴出口は、同時にできるだけ広範囲に粘着剤を噴出して、塗工時間を短縮するため、スリット状に形成したり、多数の粘着剤噴出口を列状に順に隣接させて設けたりすることが好ましい。
【0090】
更に、予め所定の形状寸法の膜状に発泡粘着体を形成した後、この発泡粘着体を支持体に粘着させてもよいのであるが、工程数の削減によるコストダウンを図るため、圧縮気体を接触させながら支持体の粘着層担持面に向かって粘着剤を噴射して、直接に粘着層担持面に形成する方法が好ましい。
【0091】
加えて、この粘着発泡体の粘着剤は架橋することは必要ではないが、熱安定性、加温時の粘着力維持及び加温時の保形性を高め、又、加温時のダレやべた付きを防止し、更に、剥離時の糊残りを減少させ、加えて、耐熱性を向上させるために、粘着剤を架橋することが好ましい。
【0092】
粘着剤を架橋する方法は、特に限定されず、化学的架橋剤を添加して化学的に架橋させることもできるが、例えば紫外線照射、電子線照射によって架橋する方法もある。
【0093】
この紫外線や電子線の照射による架橋は、支持体に粘着剤層を担持させた後に行ってもよく、予め形成された所定の形状寸法の膜状の粘着発泡体を架橋してからこの粘着発泡体を支持体に例えば転写などにより、担持させてもよい。
【0094】
この架橋は、具体的には例えば特公昭62−39184号公報に記載された方法に準じて行えばよく、紫外線の場合には通常、波長300〜680nmの紫外線を5〜30分間照射すればよく、電子線の場合には、通常1〜20Mradで、0.01〜5秒間照射すればよい。
【0095】
更に、粘着剤として、ホットメルト系粘着剤を用いる場合、ホットメルト型高分子物質だけではなく、例えばアクリル系粘着剤とホットメルト型高分子物質との混合物を用いる方が、これらの配合比を制御することによって粘着力や発泡状態の制御を容易に行えるようになるので有利である。
【0096】
この場合、ホットメルト型高分子物質とアクリル系粘着剤との混合比は、ホットメルト型高分子物質70〜99重量%とアクリル系粘着剤1〜30重量%との範囲で決定される。
【0097】
本発明のガス検知体は、ガス漏れの検知のみならず、漏洩した有害物が周囲に放散されることを防止するために、この有害物の周囲への放散防止を目的として、支持体、保護膜、支持体と保護膜との間に有害成分吸収剤を担持させるものであり、又、支持体と補強膜との間、補強膜、補強膜と粘着剤との間、支持体と粘着剤との間、粘着剤などに有害成分吸収剤を担持させることもできる。
【0098】
ここで、有害成分吸収剤とは、ガス回路中を流通する有害物を物理的に捕獲したり、化学的に吸収したり、収着したりして周囲への放散を防止するものであればよい。
【0099】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
図1に示すように、本発明の一実施例に係るガス検知体は、テープ状の白色濾紙1と、その表面の幅方向の中央部1/2にわたって印刷されたメチルオレンジ検知試薬2と、その表面の両側に無色(白色)部3a、褐色部3b及び黒色部3cの順に連続するように多色印刷された判定基準表示部3と、濾紙1の裏面の両側縁部に付着させたホットメルト系粘着剤層4とを備える。
【0101】
図2に示すように、このガス検知体Pを配管10のフランジ形配管継手11のフランジ11a・11bの外周囲に巻き付けるようにして粘着させた後、塩素を含有する加熱ガスを配管10に流通させた。この後、配管10に加熱ガスを流通させながら、フランジ形の管継手11のボルト11cを緩めて片側の配管10をごくわずか傾けて視認できない程度の隙間をフランジ11a・11bの間に形成し、ガス検知体Pの変色状態を観察した。
【0102】
その結果、隙間の形成とほぼ同時にこの隙間の近傍でメチルオレンジ検知試薬2を担持させた濾紙1の部分が橙赤色から脱色されて白色に変色しはじめ、次第に周方向両側に白色の部分が広がって行くのが観察された。この場合、判定基準表示部3が無色(白色)部3a、褐色部3b及び黒色部3cの順に連続するように多色印刷されているので、その色調の変化が極めて容易に認識できることが認められた。この変色はメチルオレンジ検知試薬2が塩素によって脱色されたことが原因であり、従って、塩素を含んだガスが管継手11の継目から漏洩したことを漏洩の開始から迅速に、且つ簡単に認識することができた。
【0103】
このメチルオレンジ検知試薬はメチルオレンジ0.1gを水100mIに溶かし、更に、これにポリアクリル酸ナトリウム1gを加えインキ状にしたものを用いた。
【0104】
(実施例2)
図3に示すように、本発明の他の実施例に係るガス検知体Pは、テープ状の白色濾紙1と、oークレゾールフタレインを濾紙1の表面に長手方向に適当な間隔を置いてX印の部分のみに印刷したoークレゾールフタレイン検知試薬5と、赤紫色のインクからなる判定基準表示部3と、濾紙1の裏面に縞状に付着させたホットメルト系粘着剤4とを備える。
【0105】
なお、このoークレゾールフタレイン検知試薬5はoークレゾールフタレイン0.1gを95容量%エタノール90mIに溶かし、水を加えて100mlに溶かし、更に、これにポリアクリル酸ナトリウム1gを加えインキ状にしたものを用いた。
【0106】
図4に示すように、このガス検知体Pを配管10のフランジ形配管継手11のフランジ11a・11bの外周囲に巻き付けるようにして粘着させた後、シアン化水素、水分などを含有するガスを配管10に流通させた。この後、配管10にガスを流通させながら、フランジ形の管継手11のボルト11cを緩めて片側の配管10をごくわずか傾けて視認できない程度の隙間をフランジ11a・11bの間に形成し、ガス検知体Pの変色の有無を観察した。
【0107】
その結果、隙間の形成とほぼ同時に隙間の近傍の部分でガス検知体PのX印の部分(oークレゾールフタレイン検知試薬)5が赤紫色から白色(濾紙の地色)に変化しはじめ、次第に周方向両側のX印の部分(oークレゾールフタレイン検知試薬)5に白色が広がって行くことが観察された。このX印の部分5の色の変化は濾紙に担持させたX印の部分(oークレゾールフタレイン検知試薬)5がシアン化水素で赤紫色から無色に変色したためであり、管継手10の継目からシアン化水素を含んだガスが漏洩したことが簡単に、しかも、迅速に観察できた。
【0108】
(実施例3)
図5に示すように、本発明の又他の実施例に係るガス検出紙Pは、マット状の白色濾紙1と、これの表面の上半分の上下方向中央部に横帯状に印刷されたフェノールフタレイン検知試薬2Aと、これの上下両側に印刷された赤色3bの判定基準表示部3と、濾紙1の下側半分の左右方向の中央部に印刷された赤色部5Aと、濾紙1の下側半分の左右両側部に、色調を段階的に異ならせて印刷された複数の赤色系の色3d〜3fと無色3gとの各部分からなる判定基準表示部3とを備え、図示はしないが、この濾紙1の裏面には全面わたって発泡させたホットメルト系粘着剤4を付着させてある。
【0109】
なお、このフェノールフタレイン検知試薬2Aは0.1%フェノールフタレインの水溶液に炭酸ナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウム1gを加えてインキ状に形成すると共に、赤色に調整したものを用いた。
【0110】
図6に示すように、気密室20の壁に形成したネジ孔21にゴムシート22で気密を保つようにして小ネジ23を締め込み、このネジ孔21の近傍にこのガス検知体Pを貼付けた後、酸化窒素及び酸化硫黄更に水分を含有するガスを気密室20に所定の圧力で充満させた。この後、小ネジ23を緩めながらガス検知体Pの変色状態を観察した結果、ガス検知体Pのフェノールフタレイン検知試薬2Aを印刷した部分は小ネジ23及びネジ孔21に近い部分から赤色から薄赤色更に無色になることが観察された。又、小ネジ23を緩めてから時間が経過するに従って、しだいに白色がガス検知体Pの検知試薬印刷部分2全体に広がって行くことが観察された。
【0111】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明のガス検知体によれば、支持体と、この支持体の一部又は全部に担持され、ガス回路中に流通させるガスの成分と接触して変色する検知試薬とを備え、前記支持体の表面には通気性及び透光性を有する保護膜が積層されてなり、前記支持体、前記保護膜又は前記支持体と前記保護膜との間に有害成分吸収剤を担持させたので、これをガス回路のガス漏れが発生し易い箇所又はその近傍に貼付けておけば、ガス漏れが発生した時にガス検知体の色が迅速に変わる。従って、この色がガス漏れしていない通常の時の色と異なることを認識することにより、何人でも簡単にガス漏れの発生を検出することができる。
【0112】
又、支持体とこれに担持させた検知試薬とで構成されているので、安価である上、ほとんどスペースを必要とせずに、又、屋内、屋外を問わず設置できる。
【0113】
しかも、検知試薬の変色はガス漏れの発生とほぼ同時に始まるので、ガス漏れを迅速に検出できるので、安全操業が可能になるなどの効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るガス検知体の展開図である。
【図2】本発明の一実施例に係るガス検知体の使用例を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施例に係るガス検知体の展開図である。
【図4】本発明の他の実施例に係るガス検知体の使用例を示す斜視図である。
【図5】本発明の又他の実施例に係るガス検知体の平面図である。
【図6】本発明の又他の実施例に係るガス検知体の使用例を示す斜視図である。
【符号の説明】
P ガス検知体
1 濾紙
2 メチルオレンジ検知試薬
2A フェノールフタレイン検知試薬
3 判定基準表示部
4 粘着剤
5 oークレゾールフタレイン指示薬
Claims (21)
- 支持体と、この支持体の一部又は全部に担持され、ガス回路中に流通させるガスの成分と接触して変色する検知試薬とを備え、前記支持体の表面には通気性及び透光性を有する保護膜が積層されてなり、前記支持体、前記保護膜又は前記支持体と前記保護膜との間に有害成分吸収剤を担持させたことを特徴とするガス検知体。
- 支持体がフィルム状、シート状、布状、テープ状、帯状、紐状、網製の袋状或いは多孔質の袋状に形成されている請求項1に記載のガス検知体。
- 検知されるガスがガス回路中に流通させるガスの成分の中から選択された少なくとも1種の成分である請求項1又は2に記載のガス検知体。
- 選択されたガス成分が有害物、又は引火性を有する物質、もしくは爆発性を有する物質であり、検知試薬がこの有害物、又は引火性物質、もしくは爆発性物質と接触して変色するものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 複数種類の検知試薬を互いに全面的に重複することなく支持体に担持させている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 検知試薬が、ガス回路中に流通させるガスの成分と接触して、検知成分を表現する文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されるように支持体に担持されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 検知試薬が、ガス回路中に流通させるガスの成分と接触して、危険を表現する文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されるように支持体に担持されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 支持体の一部には少なくとも検知試薬の変色の前又は後の色が表示される判定基準表示部が設けられている請求項1ないし7のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 支持体の一部には、ガス回路中に流通させるガスの成分と接触して、検知成分を表現する文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されるように検知試薬が担持されている一方、その文字、マーク又は記号がどのような成分であるかを表示する判定基準表示部が隣接して支持体に設けられている請求項7に記載のガス検知体。
- 支持体の一部には、ガス回路中に流通させるガスの成分と接触して、危険を表現する文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されるように検知試薬が担持されている一方、その検知試薬の変色前の色を表示する判定基準表示部が隣接して支持体に設けられている請求項8に記載のガス検知体。
- 支持体の一部には検知成分の濃度により色調が変化する検知試薬を担持する一方、判定基準表示部には、この検知試薬の色調の変化に対応させて、段階的に色調を異ならせた複数色が表示されている請求項8ないし10のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 判定基準表示部には、複数色のうちの少なくとも1色の表示に隣接して、又は重複して、その色で表現される検知成分の濃度を表現する数字、文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されている請求項11に記載のガス検知体。
- 保護膜の表面又は裏面の一部には少なくとも検知試薬の変色の前又は後の色が表示される判定基準表示部が設けられている請求項1ないし12のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 支持体の一部又は全部には検知成分の濃度により色調が変化する検知試薬を担持させる一方、判定基準表示部には、その検知成分の濃度に対応させて、段階的に色調を異ならせた複数色が表示されている請求項13に記載のガス検知体。
- 判定基準表示部には、複数色のうちの少なくとも1色の表示に隣接して、その色で表現される検知成分の濃度を表現する数字、文字、マーク又は記号から選ばれた少なくとも1種が表示されている請求項14に記載のガス検知体。
- 支持体の裏面に通気性を有する補強膜が形成されている請求項1ないし15のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 支持体の裏面には粘着剤層が部分的に形成されている請求項1ないし15のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 補強膜の裏面には粘着剤層が部分的に形成されている請求項16に記載のガス検知体。
- 支持体の裏面には通気性を有する粘着剤層が形成されている請求項1ないし15のいずれか1項に記載のガス検知体。
- 補強膜の裏面には通気性を有する粘着剤層が形成されている請求項16に記載のガス検知体。
- 粘着層又は支持体と粘着層との間に有害成分吸収剤を担持させている請求項17ないし20のいずれか1項に記載のガス検知体。
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