JP3753121B2 - レーダ装置およびレーダシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビーム走査レーダにおいて、運動特性から予めその軌道が予測できる目標を探知・追尾するビーム走査方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12は、例えば「電波技術ハンドブック」(松尾優編、P.338)等に基づく従来のレーダ装置の機能系統図であり、図において、1は目標、2は電子ビーム、3は素子アンテナ、4はサーキュレータ、5は高出力増幅器、6は低雑音増幅器、7は送受切換スイッチ、8は移相器、9は4〜8により構成される送受信モジュール、10は分配器、11は送信機、12は受信機、13は目標検出回路、14は目標追尾回路、17はビーム制御回路、18はプリセットビーム走査回路、31は3〜18を備えたレーダ装置である。
【0003】
次に、動作について説明する。送信機11で発生された送信RF信号はサーキュレータ4を経由して分配器10により、各送受信モジュール9に入力される。各送受信モジュール9において、ビーム制御回路17により所要の移相量が設定された移相器8及び送信側に切り換えられた送受切換スイッチ7を経由して高出力増幅器5により所定の出力の送信RF信号が生成される。この送信RF信号はサーキュレータ4および素子アンテナ3を経由して各送受信モジュール9毎に空間に発射され、空間で合成された電波は所定の方向に指向された電子ビーム2となる。
【0004】
この電子ビーム2は、時間的に指向する方向が変わるように制御され、予め設定された所定の領域(以下、覆域と呼ぶ)101を、図13(a)に示すように、電子ビーム2が軌跡105を描くよう走査する(捜索モード)。目標1(例えば、航空機)に指向した場合、電波が反射され、各素子アンテナで受信される。この受信電波はサーキュレータ4を経由して低雑音増幅器6で所要の出力まで増幅された後、受信側に切り換えられた送受切換スイッチ7及び移相器8を経由して各送受信モジュール9の出力は分配器10により合成される。捜索モードは予め設定された覆域を走査し終わるまで続けられ、途中で目標が見つかったとしてもそこから追尾モードには移らず、残りの覆域内に他の目標が存在するか捜索を続ける。
【0005】
一方、目標から反射された受信RF信号はサーキュレータ4を経由して受信機12に入力され、目標検出回路13により目標からの反射信号として検出される。送受信にかかった時間から目標1までの距離が、電子ビーム2が目標に指向方向から角度(レーダ基準の方位角、仰角)が得られる。目標が航空機等の場合、おのずからその移動速度は推定されるため、捜索モード時に発見した目標位置と時間から目標の存在する範囲が目標追尾回路14で推定される。
【0006】
この推定結果に基づき、電子ビーム2が目標に指向するようにビーム制御回路17により移相器8の移相量が設定され、目標を所定の時間だけ追尾する。追尾時は、特定の時間間隔で電子ビーム2を複数回照射し、反射エコーを受信することで、複数の時間における目標の位置を測定する。これらの目標捜査から追尾までの一連の動作はプリセットビーム走査回路18において予め決められたスケジュールに沿って行われる。即ち、図13(b)に示すように、所定の空間をくまなく電子ビーム走査する捜索時間Tsと、上記より検出された目標のその後の複数の時刻における位置を推定し、その推定される方向に電子ビームを指向して詳細な位置を測定する追尾時間Tt(追尾モードと呼ぶ)は予め決められており、交互に繰り返すスケジュールに沿ってレーダは動作する。
【0007】
これら捜索モードと追尾モードとを繰り返すことで、目標の位置情報の精度を上げることができるため、複数の目標に追尾しながら、精度の高い位置情報を得ることができる。
【0008】
以上により、航空機等の不規則に移動する方向が変化する目標について所定の覆域における初期探知および追尾を行う。なお、上記は個々の送受信モジュール9に高出力増幅器5および低雑音増幅器6を備えたアクティブ・フェーズド・アレイレーダを例としたが、これらを有しないパッシブ・フェーズド・アレイレーダでも同様である。また、高精度の角度検出を行うために、モノパルス測角等の機能を有するレーダでも同様である。
【0009】
従来のレーダ装置は以上のように構成されているので、目標の運動特性に対応した電子ビーム走査がなされていない。例えば、地球周回軌道上の物体のように、追尾結果に基づいて軌道を計算・予測でき、電子ビームの指向方向を規定できる目標についても、上述の予め決められたスケジュールに沿って電子ビーム走査がなされていた。
【0010】
ここで、アンテナの角度測定精度は、一般的にビーム幅によって与えられ、ビーム幅が狭いほどその角度精度は向上する。ここで、アンテナの電子ビームはビームの照射方向によっても変化し、その変化は下式のように与えられる。
θB(θs)=θ/cosθs
ここで、θB:ビーム幅、
θs:ビームの走査角、
θ:アンテナ正面方向のビーム幅である。
従って、アンテナ正面方向で追尾する方が角度精度が向上され、正面方向から外れるほどビーム幅は広くなり角度精度は劣化する。
【0011】
このため、捜索・追尾モードを予め定められたタイムスケジュールにのみ従って衛星等の規則的な周回運動をする目標に適用した場合、アンテナ正面方向を目標が通過する等で高精度の位置情報が得られると予測される時でも捜索モードで覆域を走査していたり、逆に覆域の端部を目標が通過しているため、ビーム幅が広がり角度精度が低い時に、追尾モードになる場合がある等、目標追尾精度の劣化、また、有効な追尾が行われないといった問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の問題点を解決するためになされたものであり、目標が地球の衛星軌道上を周回運動する等の運動特性に合わせて柔軟に捜索・追尾モードの切換を行うことで、追尾効率が良く、精度の高い位置測定を行うレーダ装置を得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願発明に係るレーダ装置は、電波の指向方向を制御する方向制御手段と、当該方向制御手段の制御する方向にアンテナを介して電波を送信する送信手段と、当該電波の反射エコーを前記アンテナを介して受信する受信手段と、受信した反射エコーから目標を検出し、目標の位置を測定する目標検出手段と、当該検出した目標の複数の時刻における位置を測定する目標追尾手段と、当該複数の時刻における目標の位置を通る楕円軌道を近似計算する軌道計算・予測手段と、当該計算結果に基づいて前記目標を再追尾するタイミングを決定するモード制御手段を備えるものである。
【0014】
また、前記目標の軌道計算結果から目標と前記アンテナ開口面の法線との角度を算出し、当該角度が最小になる軌道上の点を前記目標が通過するタイミングを再追尾タイミングとするモード制御手段を備えるものである。
【0015】
また、前記目標の軌道予測結果から前記アンテナ開口面までの距離を算出し、当該距離が最小となる軌道上の点を前記目標が通過するタイミングを再追尾タイミングとするモード制御手段を備えるものである。
【0016】
また、電波の指向方向を制御する方向制御手段と、当該方向制御手段の制御する方向に送信用アンテナを介して電波を送信する送信手段と、当該電波の反射エコーを受信用アンテナを介して受信する受信手段と、受信した反射エコーから目標を検出し、目標の位置を測定する目標検出手段と、当該検出した目標の複数の時刻における位置を測定する目標追尾手段と、当該複数の時刻における目標の位置を通る楕円軌道を近似計算する軌道計算・予測手段と、当該計算結果に基づいて前記目標を再追尾するタイミングを決定するモード制御手段を備えるものである。
【0017】
また、本発明に係るレーダシステムは、上記レーダ装置を複数備え、目標の再追尾タイミングを決定するとともに、当該複数のレーダ装置中のどのレーダ装置が当該目標の再追尾を行うかを決定するサイト間制御装置を備えるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係るレーダ装置について説明する。本願発明に係るレーダ装置は、例えば、地球周回軌道を規則的に運動する衛星等を対象とするものである。
【0019】
図1は本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を表すブロック図である。1は目標(例えば、地球周回軌道上の物体)、2は電子ビーム、3は素子アンテナ、4はサーキュレータ、5は高出力増幅器、6は低雑音増幅器、7は送受信切換スイッチ、8は移相器、9は4〜8により構成される送受信モジュール、10は分配器、11は送信機、12は受信機、13は目標検出回路、14は目標追尾回路、15は軌道計算・予測回路、16はモード制御回路、17はビーム制御回路、30は3〜17を備えたレーダ装置である。軌道計算・予測回路15およびモード制御回路16が加わった以外は従来と同様である。
【0020】
次に動作について説明する。送信機11で発生された送信RF信号が目標1にて反射され、目標検出されるまでは従来と同様である。目標が検出された場合、従来ではそのまま捜索モードを継続し、終了後に改めて目標を追尾して位置測定をしていたが、本発明の場合、直ちに捜索モードから追尾モードにモードを切り換えて目標を一時的に追尾して、複数の時刻における目標の位置を測定する。当該目標の位置情報とはレーダ装置からの距離、方位角、仰角のことである。
【0021】
目標が航空機等で、自己がその運動を予測できない場合と異なり、衛星のように規則的な運動をする目標の場合には、運動方向や運動特性を測定し、軌道計算を行い、その結果、上述したように出来るだけアレーアンテナ開口面の正面方向を近い部分を目標が通過する角度のタイミングで目標を再追尾して位置測定をした方が追尾効率が良くなり位置特定の精度も高くなる。目標の運動特性として、例えば、ケプラー軌道6要素である、軌道長半径、軌道離心率、軌道傾斜角、昇交点赤経、近地点引数および平均近点離角などがある。
【0022】
軌道計算回路15では複数の時刻で測定された衛星の位置を結んで楕円に近似して目標の周回軌道を予測する。当然、このデータが多ければ多いほど、より正確な軌道予測ができる。この予測した楕円軌道の上記ケプラーの軌道6要素を算出する。その後、再追尾を繰り返すごとに算出したケプラーの軌道6要素に修正を加え、より正確な衛星軌道を得る。なお、軌道は外乱や自己の軌道修正などで変化することがあるため、その際には、また新たな軌道予測および軌道6要素の計算を行う。
【0023】
図2はケプラーの軌道6要素を説明するための図である。図2に示すように、ケプラーの6要素とは、まず衛星の軌道面を昇交点経度Ωと、軌道傾斜角Iの2つの角度で表し、次にその面上での衛星の楕円運動を残り4つの量、即ち軌道長半径A、軌道離心率ε、近地点引数ω、およびある時刻における平均近点角M0で表現する。なお、地球の重心を原点として、X軸を赤道面上の春分点方向、Z軸を地球の自転軸方向にとる。
【0024】
衛星の軌道面の空間内における向きは地球の赤道を基準とする2つの角度によって表される。その第一は、衛星の軌道面が地球の赤道面と交わる角度である軌道傾斜角Iである。また、もう一方は衛星が南から赤道面を横切る点(昇交点)が、赤道面上で春分点方向(赤道座標系のX軸方向)となす角度である昇交点赤経度Ωである。
【0025】
衛星はこのような軌道面上で、等しい面積速度で楕円運動をしている。そこで楕円の大きさ並びにその向き、さらにある時刻において衛星がどの位置にいたか、が分かると衛星の運動が全て決定されたことになる。
【0026】
地球の重心(楕円の焦点)から近地点へ引いた直線が、地球重心と昇交点を結んだ直線となす角を近地点引数とよびωで表す。この角度によって楕円が軌道面上でどの向きにあるかが決定される。
【0027】
次に、楕円の大きさと形は、軌道楕円の長半径Aと離心率εで決定できる。楕円の短半径Bとこれらの量との間には、
ε={(A2−B2)/A2}1/2
の関係がある。
最後に、ある時刻における衛星の位置を平均近点角M0という量で定義する。軌道予測・計算回路では以上の6つのパラメータを予測した軌道から計算する。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の捜索・追尾モードの切換方法について示した図である。図3(a)は捜索・追尾モードの際の電子ビームの動きについて示した図、図3(b)は捜索モードと追尾モードの切換タイミングを示す図である。図3(a)において、100は衛星軌道、101は本発明のレーダ装置の捜索モード時の覆域、102は初期追尾モード時の電子ビームの軌跡、103は再追尾モード時の電子ビームの軌跡である。図3(a)のように、覆域101を捜索中に点A、時間Ts’において目標1を初期探知した場合、すぐに追尾モードに切り換えて時間Tt’だけ軌跡102のように追尾して複数の時刻における位置を測定する。そして、再び捜索モードにて電子ビーム走査を行った後、再び追尾モードに切り換えて目標が存在すると予測される領域に対して軌跡103のような電子ビーム走査によって追尾測定を行う。このように、1つの目標軌道について離れた2つの範囲における位置情報を得ることで、1つの範囲における複数点の位置情報から軌道予測をするよりも高精度の軌道計算・予測を行い、さらに軌道6要素の算出を行う。これを一つのシーケンスとして繰り返す。
【0029】
目標の角度精度は従来の技術において述べたようにビーム幅によって与えられ、ビーム幅が狭いほど角度精度が向上する。そのため、再追尾を行う範囲およびタイミングは、目標ができるだけビーム幅が狭いアンテナ正面方向に近い部分を通過する角度のタイミングおよび電子ビームの照射方向を捜索・追尾モード制御器16が決定し、ビーム制御回路17を介して電子ビームを制御する。
【0030】
上記のように、予測軌道に対して柔軟なビーム走査を行うようにモード制御することで、目標位置の高精度探知が可能となる。なお、上記では一つのシーケンス内の追尾モードの時刻を制御する場合を示したが、捜索モードにおいて目標が探知されない場合は、追尾モード分の余剰時間で引き続き捜索を繰替えしてもよく、また、他の遠距離探知等の目的等に使用することも可能である。また、1シーケンスの時間枠にとらわれず、1シーケンス以上後に追尾モードを設定しても良い。
【0031】
また、電子ビーム走査は仰角、方位角の両方について行う2次元電子ビーム走査でも、仰角、方位角のいずれかについて行う1次元電子ビーム走査の場合でも同様である。
【0032】
以上のように、本願発明の実施の形態1に係るレーダ装置は、衛星等の地球の周りを規則的な周回運動を行う目標を対象とし、当該目標の軌道を予測し、その予測した軌道からアンテナのビーム幅が狭くなる角度範囲を通過する際に追尾モードに切り換えるため、目標の追尾効率が向上し、また、アンテナの位置測定精度を向上することができる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、捜索モード時に発見される目標は1つの場合について説明したが、当然のことながら発見される目標は一つとは限らず、複数の目標に対して、それぞれ上記のような捜索・追尾モードの切換を行うものである。
【0034】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、目標とアンテナとの角度を考慮して捜索・追尾モードを切り換えるレーダ装置について示したが、目標までの距離に基づき捜索・追尾モードを切り換える構成としてもよい。
【0035】
本実施の形態2に係るレーダ装置の構成は、図1で示された上記実施の形態1に係るレーダ装置の構成と同様である。ただし、モード制御回路16のモード切換の条件が異なる。即ち、目標の角度精度は一般にS/Nによっても与えられ、S/Nが大きいほど角度精度は向上する。ここで、図4に示すように、レーダ装置からある高度Hの軌道までの距離Rは、レーダ装置からの見込みの仰角θELによって異なる。即ち、θEL=90°(天頂方向)の図中点Cが最短でR=Hであり、図中点Dのように仰角が低くなるに従って距離は長くなる。当然のことながら、距離が短いほど目標からの反射電力は大きいので、S/Nは大きくなる。従って、より天頂に近い地点で目標を再追尾するように設定をすることで、角度精度は向上する。
【0036】
このように、予測軌道に対して柔軟なビーム走査を行うようにモード制御することで、目標位置の高精度探知が可能になる。
【0037】
また、上記実施の形態1と組み合わせ、目標とアンテナとの角度と、目標とアンテナとの距離とを合わせて考慮して捜索・追尾モードを切り換える構成としてもよい。
【0038】
実施の形態3.
上記実施の形態1、2においては、フェーズドアレイアンテナ1面で送受信を行い、目標追尾を行う方法を示したが、図5に示したように、フェーズドアレイアンテナを2面用意し、目標を追尾するようにしても良い。
【0039】
図5は本発明の実施の形態3の構成を表すブロック図である。図1と同じ構成要素には同じ符号を付す。本実施の形態3に係るレーダ装置は図のようにアンテナ面AおよびBを備え、これらはそれぞれ異なる方向に向いている。アンテナ面Aの目標追尾回路14aおよびアンテナ面Bの目標追尾回路14bで得られた目標追尾結果はともに軌道計算・予測回路15に入力され、軌道が予測される。この予測された軌道から上記実施の形態1、2に示したモード制御方法に基づいて捜索・追尾のモード切換を行う。その際、アンテナ面A、Bいずれの面が目標の軌道に対して位置精度の高い追尾が行えるかを判断し、追尾を行うアンテナ面を決定する。
【0040】
図6はアンテナの捜索範囲、図7はアンテナ面A、Bの捜索・追尾モードのタイミングを示す図である。図6において100は目標となる衛星の軌道、101aはアンテナ面Aの捜索範囲、101bはアンテナ面Bの捜索範囲、102aはアンテナ面Aの追尾測定の測定結果、103bはアンテナ面Aによる再追尾測定の測定結果、104はアンテナ面Bの追尾測定の測定結果である。また、図7において、201はアンテナ面Aの捜索モード時、202はアンテナ面Bの捜索モード時、203はアンテナ面Aの追尾モード時、204はアンテナ面Bの追尾モード時を表す。
【0041】
図6において衛星が衛星軌道100に沿ってアンテナ面Aの捜索範囲に進入してきた場合について説明する。図7の捜索モード201a中のあるタイミングにおいて、図6の点Cに目標である衛星1aが発見された場合、実施の形態1で示したように、すぐに追尾モード202aに切り換えて追尾測定を行い、所定の時間だけ衛星を追尾測定して測定結果102aを得る。
【0042】
その後、適当な時間経過後のタイミング203bにおいて再追尾を行い、さらに測定結果103bを得る。これらの測定結果102a、103bはともに軌道計算・予測回路15に入力され、適当な楕円をフィッティングすることで衛星1aの軌道予測計算が行われる。
【0043】
次に、この計算結果はモード制御回路16に出力され、アンテナ面Bの覆域に進入する場合、その進入するタイミング204aでアンテナ面Bが再追尾測定を行うようにアンテナ面Bの捜索・追尾モード切換制御を行う。
【0044】
このように本実施の形態3では、アンテナ面を複数備える構成とし、1つの軌道予測・計算回路15および1つモード制御回路16が複数のアンテナ面からの情報を統合的に扱うことで、初期探知、追尾、および再追尾の役割配分、時間割当を柔軟に行う。これによって、捜索範囲が広がり、より多数の目標に対応することができる。
【0045】
なお、上記のようなモノスタティックレーダに限らず、図8に示したように送信用レーダと受信用レーダが離れた2地点に存在するバイスタティックレーダに本願発明を適用することもできる。図9はこのようなバイスタティックレーダの装置構成例を表す図である。動作については本実施の形態3に係るレーダ装置と同様である。一般的なバイスタティックレーダでは、受信用アンテナの電子ビームを制御して目標の測定を行うことが多いが、その場合には受信用アンテナからの距離または角度から目標の再追尾タイミングを決定する。送信用アンテナの電子ビームを制御する場合には、送信用アンテナからの距離または角度から目標の再追尾タイミングを決定する。
【0046】
その他、図10に示したように異なる複数点において独立したレーダ装置30eおよび30f(この場合2点)を統合して捜索を行うマルチスタティックレーダに本願発明を適用することもできる。
【0047】
マルチスタティックレーダの構成例としては、例えば図11に示したように第一のレーダ装置30eを高緯度のある地点に配置し、第二のレーダ装置30fを低緯度のある地点に配置し、衛星軌道の軌道傾斜角が大きい衛星については第一のレーダ装置30eで担当し、一方、第二のレーダ装置30fでは軌道傾斜角の小さな衛星について追尾測定を担当する。この際のそれぞれのレーダ装置は実施の形態1に示したものと同様な動作を行ってそれぞれの目標の追尾測定を行う。
【0048】
また、衛星の軌道が第一および第二のレーダ装置30e、30fにまたがるような場合には、それぞれの覆域において最もアンテナ正面方向に近づく角度のタイミングで、もしくは最も距離が近づくタイミングでそれぞれ追尾測定を行い、より高い精度で位置測定を行う。以上のような、レーダ装置30e、30fの目標追尾の役割配分、時間割当はサイト間制御回路20が行う。
【0049】
以上のように、本発明に係るレーダ装置は、地球を周回運動する衛星等を対象とし、追尾測定した複数の位置から衛星の軌道を予測し、この予測結果に基づいて再追尾を行うタイミングを決定するため、追尾効率が向上し、また、位置測定精度が向上するものである。また、この予測した軌道から衛星と自己との角度を算出し、この角度に基づいて再追尾を行うタイミングを決定するため、追尾効率および位置特定精度が向上するものである。
【0050】
また、予測した軌道から衛星と自己との距離を算出し、この距離に基づいて再追尾を行うタイミングを決定するため、追尾効率および位置特定精度が向上するものである。
【0051】
また、アンテナを複数面備えた構成としたため、より捜索範囲が広くなるものである。
【0052】
また、送信用アンテナ装置と受信用アンテナ装置が異なる2地点に分離したバイスタティックレーダとしたため、より捜索範囲が広くなるものである。
【0053】
また、異なる複数の地点にそれぞれ独立したレーダ装置を備え、それらをサイト間制御装置で統合して1つのマルチスタティックレーダとしたため、より捜索範囲が広くなるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を表すブロック図である。
【図2】 ケプラーの軌道6要素を示す図である。
【図3】 本発明の実施の形態1に係るレーダ装置の目標追尾方法を示す図である。
【図4】 本発明の実施の形態2に係る目標追尾方法を示す図である。
【図5】 本発明の実施の形態3に係るレーダ装置の構成を表すブロック図である。
【図6】 本発明の実施の形態3に係るレーダ装置の目標追尾を行うアンテナ面の決定方法を示す図である。
【図7】 アンテナ面AおよびBのモード切換タイミングを示す図である。
【図8】 本発明の実施の形態3に係るバイスタティックレーダの装置の動作例を示す図である。
【図9】 本発明の実施の形態3に係るバイスタティックレーダの装置構成を表す図である。
【図10】 本発明の実施の形態3に係るマルチスタティックレーダ装置の構成例を示す図である。
【図11】 本発明の実施の形態3に係るマルチスタティックレーダ装置の配置例を示す図である。
【図12】 従来のレーダ装置の構成を示す図である。
【図13】 (a)捜索範囲を電子ビームで走査する方法を示す図である。
(b)従来のレーダ装置のモード切換タイミングを示す図である。
【符号の説明】
1 目標、2 電子ビーム、3 素子アンテナ、
4 サーキュレータ、5 高出力増幅器、6 低雑音増幅器、
7 送受切換スイッチ、8 移相器、9 送受信モジュール、10 分配器、
11 送信機、12 受信機、13 目標検出回路、14 目標追尾回路、
15 軌道計算・予測回路、16 モード制御回路、
17 ビーム制御回路、18 プリセットビーム走査、20 サイト間制御
100 目標予測軌道、101 a アンテナ面Aの捜索範囲、
101b アンテナ面Bの捜索範囲、
102a アンテナ面Aの目標追尾測定結果、
103b アンテナ面Aの目標再追尾測定結果、
104 アンテナ面Bの目標追尾測定結果、
201a、201b アンテナ面Aの捜索モード、
202a アンテナ面Bの捜索モード、
203a、203b アンテナ面Aの追尾モード、
204a アンテナ面Bの追尾モード。
Claims (7)
- 電波の指向方向を制御する方向制御手段と、当該方向制御手段の制御する方向にアンテナを介して電波を送信する送信手段と、当該電波の反射エコーを前記アンテナを介して受信する受信手段と、受信した反射エコーから目標を検出し、目標の位置を測定する目標検出手段と、当該検出した目標の複数の時刻における位置を測定する目標追尾手段と、当該複数の時刻における目標の位置を通る楕円軌道を近似計算する軌道計算・予測手段と、当該計算結果に基づいて前記目標を再追尾するタイミングを決定するモード制御手段を備えることを特徴とするレーダ装置。
- 前記目標の軌道計算結果から目標と前記アンテナ開口面の法線との角度を算出し、当該角度が最小になる軌道上の点を前記目標が通過するタイミングを再追尾タイミングとするモード制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
- 前記目標の軌道予測結果から前記アンテナ開口面までの距離を算出し、当該距離が最小となる軌道上の点を前記目標が通過するタイミングを再追尾タイミングとするモード制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
- 電波の指向方向を制御する方向制御手段と、当該方向制御手段の制御する方向に送信用アンテナを介して電波を送信する送信手段と、当該電波の反射エコーを受信用アンテナを介して受信する受信手段と、受信した反射エコーから目標を検出し、目標の位置を測定する目標検出手段と、当該検出した目標の複数の時刻における位置を測定する目標追尾手段と、当該複数の時刻における目標の位置を通る楕円軌道を近似計算する軌道計算・予測手段と、当該計算結果に基づいて前記目標を再追尾するタイミングを決定するモード制御手段を備えることを特徴とするレーダ装置。
- 前記目標の軌道計算結果から目標と前記送信アンテナ開口面または受信アンテナ開口面の法線との角度を算出し、当該角度が最小になる軌道上の点を前記目標が通過するタイミングを再追尾タイミングとするモード制御手段を備えることを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。
- 前記目標の軌道予測結果から前記送信アンテナ開口面または受信アンテナ開口面までの距離を算出し、当該距離が最小となる軌道上の点を前記目標が通過するタイミングを再追尾タイミングとするモード制御手段を備えることを特徴とする請求項4記載のレーダ装置。
- 請求項1乃至3に記載のレーダ装置を複数備え、目標の再追尾タイミングを決定するとともに、当該複数のレーダ装置中のどのレーダ装置が当該目標の再追尾を行うかを決定するサイト間制御装置を備えることを特徴とするレーダシステム。
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