JP3753076B2 - 3次モードの5倍高調波を利用する表面弾性波素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイヤモンドを含む表面弾性波素子に関するものであり、特に、GHz帯以上の高周波領域においても良好な動作特性を有する表面弾性波素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイヤモンドを含む表面弾性波素子としては、特開平10−276061号公報に記載されるように、ダイヤモンド層の上にZnO層を形成し、このZnO層の上に表面弾性波の励振及び受信を行う櫛形電極を形成し、更に、ZnO層の上に櫛形電極を覆うようにしてSiO2層を形成した表面弾性波素子が知られている。この表面弾性波素子は、2次モードの表面弾性波を利用する場合に櫛形電極の厚さ、ZnO層の厚さ及びSiO2層の厚さを最適な組み合わせとすることにより、良好な伝播特性、電気機械結合特性及び周波数温度特性を実現し、更に低い伝播損失を実現しようとするものであり、伝播速度8000〜10000m/sにおいて、周波数温度特性が−15〜+15ppm/℃であり、電気機械結合係数が0.1〜1.3%を実現している。
【0003】
また、特開2001−185989号公報には、ダイヤモンド層の上にZnO層を積層し、その上に櫛形電極を配置した構造を有する表面弾性波素子が記載されている。この表面弾性波素子は1次モードないし5次モードの表面弾性波を利用する場合に、ZnO層の厚さを最適にすることにより、良好な伝播特性および電気機械結合特性を得ようとするもので、伝播速度が5500m/s以上で電気機械結合係数が0.5%以上の特性を実現している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来の表面弾性波素子にあっては、10GHz程度の高周波帯に用いようとすると、伝播速度を10000m/sの高速なものとしても、櫛形電極の線幅と線間を合わせて0.5μm程度とし、線幅を0.25μm程度の細さにする必要がある。このため、量産化には問題がある。
【0005】
一方、表面弾性波素子において、高周波帯では電気機械結合係数が小さくなるという問題もある。例えば、水晶では、基本波で0.1%であるが、5倍波では0.025%と小さくなる。電気機械結合係数が小さいと、低損失のフィルタを実現できなくなる。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、量産性に適し、高周波領域で動作特性に優れる表面弾性波素子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に係る表面弾性波素子は、ダイヤモンド層と、ダイヤモンド層の上に形成された厚さtzのZnO層と、ZnO層の上に形成され表面弾性波の励振及び受信を行う櫛形電極と、櫛形電極を覆いZnO層の上に形成された厚さtsのSiO2層を備え、表面弾性波の3次モードの基本波の波長をλとしたときに、kh1=5・2π・(tz/λ)、kh2=5・2π・(ts/λ)で与えられるkh1及びkh2が、横軸にkh1、縦軸にkh2を与える二次元直交座標グラフにおいて、座標(kh1=2.68、kh2=8.00)で与えられる点Aと、座標(kh1=2.60、kh2=7.80)で与えられる点Bと、座標(kh1=2.40、kh2=7.38)で与えられる点Cと、座標(kh1=2.20、kh2=6.90)で与えられる点Dと、座標(kh1=2.10、kh2=6.60)で与えられる点Eと、座標(kh1=2.02、kh2=5.90)で与えられる点Fと、座標(kh1=2.10、kh2=5.25)で与えられる点Gと、座標(kh1=2.40、kh2=4.82)で与えられる点Hと、座標(kh1=2.80、kh2=4.80)で与えられる点Iと、座標(kh1=3.20、kh2=4.88)で与えられる点Jと、座標(kh1=3.60、kh2=5.10)で与えられる点Kと、座標(kh1=4.00、kh2=5.58)で与えられる点Lと、座標(kh1=4.40、kh2=6.26)で与えられる点Mと、座標(kh1=4.80、kh2=7.18)で与えられる点Nと、座標(kh1=4.80、kh2=7.40)で与えられる点Pと、座標(kh1=4.50、kh2=8.00)で与えられる点Qと、A点とを順に線分で結ぶ16本の線分からなる領域ABCDEFGHIJKLMNPQAの16本の線上を含む内部に与えられ、表面弾性波の3次モードの5倍高調波が用いられることを特徴とする。
【0008】
また本発明に係る表面弾性波素子は、ダイヤモンド層と、ダイヤモンド層の上に形成された厚さtzのZnO層と、ZnO層の上に形成され表面弾性波の励振及び受信を行う櫛形電極と、櫛形電極を覆いZnO層の上に形成された厚さtsのSiO2層を備え、表面弾性波の3次モードの基本波の波長をλとしたときに、kh1=5・2π・(tz/λ)、kh2=5・2π・(ts/λ)で与えられるkh1及びkh2が、横軸にkh1、縦軸にkh2を与える二次元直交座標グラフにおいて、座標(kh1=3.50、kh2=7.98)で与えられる点Aと、座標(kh1=3.40、kh2=7.80)で与えられる点Bと、座標(kh1=3.20、kh2=7.46)で与えられる点Cと、座標(kh1=3.00、kh2=6.90)で与えられる点Dと、座標(kh1=2.80、kh2=6.45)で与えられる点Eと、座標(kh1=3.00、kh2=6.00)で与えられる点Fと、座標(kh1=3.20、kh2=5.92)で与えられる点Gと、座標(kh1=3.60、kh2=6.25)で与えられる点Hと、座標(kh1=3.80、kh2=6.60)で与えられる点Iと、座標(kh1=4.00、kh2=6.98)で与えられる点Jと、座標(kh1=4.20、kh2=7.62)で与えられる点Kと、座標(kh1=4.30、kh2=7.95)で与えられる点Lと、A点とを順に線分で結ぶ、12本の線分からなる領域ABCDEFGHIJKLAの12本の線上を含む内部に与えられ、表面弾性波の3次モードの5倍高調波が用いられることを特徴とする。
【0009】
また本発明に係る表面弾性波素子は、前述の表面弾性波の中心周波数をf0、伝播速度をvとしたときに、伝播速度vが4800〜5850m/sであり、櫛形電極の電極線幅をdm、電極間隔をdfとしたとき、電極ピッチ(dm+df)がdm+df=(5・v)/(2・f0)で与えられることを特徴とする。
【0010】
また本発明に係る表面弾性波素子は、前述の表面弾性波の中心周波数をf0、伝播速度をvとしたときに、伝播速度vが4800〜5580m/sであり、櫛形電極の電極線幅をdm、電極間隔をdfとしたとき、電極ピッチ(dm+df)がdm+df=(5・v)/(2・f0)で与えられることを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る表面弾性波素子は、前述の櫛形電極の電極線幅が0.5μm以上であり、表面弾性波の中心周波数が5.0〜14.6GHzであることを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る表面弾性波素子は、前述の櫛形電極の電極線幅が0.5μm以上であり、表面弾性波の中心周波数が5.0〜13.9GHzであることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明に係る表面弾性波素子は、前述の櫛形電極の電極線幅が0.5μm以上であり、表面弾性波の中心周波数が9.5〜10.5GHzであることを特徴とする。
【0014】
これらの発明によれば、表面弾性波の3次モードの5倍高調波を用いることにより、高周波領域で良好な伝播特性、電気機械結合係数、周波数温度特性を得ることができる。また、櫛形電極の電極部分の線幅を大きくできるため、量産性の向上が図れる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。尚、各図において同一要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0016】
図1に本実施形態に係る表面弾性波素子の断面図を示す。本図に示すように、本実施形態に係る表面弾性波素子1は、シリコン製の基板2の上にダイヤモンド層3を備えている。ダイヤモンド層3を構成するダイヤモンドとしては、天然型ダイヤモンド、合成ダイヤモンドのいずれであってもよい。また、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド又は非晶質ダイヤモンドのいずれを用いてもよい。なお、図1では、シリコンの基板2上に薄膜としてダイヤモンド層3を形成しているが、ダイヤモンド単体を用いてもよい。合成ダイヤモンドの場合は、CVD、イオンプレーテイング法、PVD、熱フイラメント法など、どの製造方法を用いてもダイヤモンド層を形成することができる。
【0017】
ダイヤモンド層3の上には、ZnO層4が形成されている。ZnO層4は、構成するZnOがc軸配向性ZnOであることが望ましい。ここで、「c軸配向」であるとは、ZnO膜の(001)面が基板と平行であるように形成されていることをいう。形成されたZnO膜がc軸配向であり、また多結晶であれば、ZnOの本来有する圧電性を十分に利用した表面弾性波素子を実現することが可能となる。
【0018】
ZnO層4の上には、櫛形電極5が形成されている。櫛形電極5は、表面弾性波の励振及び受信を行うものである。図2に示すように、櫛形電極5は、例えば、シングル電極タイプとされ、電極51と電極52を備えて構成される。電極51と電極52は、相対向して設けられ、それそれ他方へ向けて突出する櫛歯状の電極指53を多数形成している。ここで電極指の線幅をdm、電極の線間隔をdfとすると、電極指53のピッチ(線幅dm+線間df)は、表面弾性波の3次モードの5倍高調波の中心周波数をf0、伝播速度をvとすると、次の式(1)により与えられる。
【0019】
dm+df=(5・v)/(2・f0) ‥‥(1)
また、伝播速度vが4800〜5850m/sである場合、電極指53は、その線幅dmを0.5μm以上として形成される。このため、電極指53がある程度の線幅を有するため、櫛形電極5の製造が容易となり、表面弾性波素子1の量産が容易となる。
【0020】
なお、図2では、シングル電極タイプのものを示したが、櫛形電極5としては、二本の電極指53を一組として突出させるダブル電極タイプのものであってもよい。また、櫛形電極5を挟み込むように、両側に反射器電極(グレーテイング反射器等)を配置し、入出力電極間を伝播する表面弾性波を反射器電極の間で多重反射させ定在波を発生させる表面弾性波共振器の構成をとってもよい。櫛型電極5などを構成する材料は、導電性材料であればよく、加工性等の点からはアルミニウムが好ましく用いられる。
【0021】
ZnO層4の上には、櫛形電極5を覆うようにしてSiO2層6が形成されている。SiO2層6は、表面弾性波素子1における温度特性を良好にする機能を有し、また、圧電体及び櫛型電極5に対する保護膜としても機能し、外部環境からの湿気及び不純物等の影響を著しく低減させるものである。このSiO2層6は、非晶質SiO2からなることが望ましい。また、SiO2層6の表面弾性波の伝播速度の温度変化は、ダイヤモンド層3及びZnO層4の温度変化と異符号となっている。このため、例えば表面弾性波素子1の温度が上昇すると、SiO2層6中の表面弾性波の伝播速度は増大するが、ダイヤモンド層3及ぴZnO層4中の表面弾性波の伝播速度は減少する。したがって、SiO2層6がダイヤモンド層3及びZnO層4における伝播速度の温度変化を相殺し、その結果、表面弾性波の伝播速度が温度変化に対し安定したものとなる。
【0022】
【実施例】
次に、本実施形態に係る表面弾性波素子1の実施例を説明する。この実施例では、圧電体であるZnO層4の厚さtzと保護層であるSiO2層6の厚さtsを変えて表面弾性波素子1を製造し、最適な伝播速度v、電気機械結合係数K2及び周波数温度特性TCFを与えるようなZnO層4の厚さtz及びSiO2層6の厚さtsの最適化を行った。
【0023】
(第一実施例)
本実施例の表面弾性波素子は、以下のように製造した。10mm×10mm×1mmのシリコン基板上にマイクロ波プラズマCVD法を用いて多結晶ダイヤモンドを厚さ50μmまで成膜した後、ダイヤモンド表面をダイヤモンドコート研磨機を用いて膜厚20μmまで研磨した。多結晶ダイヤモンドの原料には、CH4をH2で100倍に希釈したガスを用いた。
【0024】
そして、このダイヤモンドの上にZnO多結晶薄膜を、Arと酸素の混合ガスでスパッ夕する方法により形成した。スパッタ条件は、基板温度400℃、RFパワー160W、圧力2.7Paとした。スパッタの時間を変えることにより、ZnOの膜厚を変化させることができる。そして、kh1=2.0〜4.8となるように、ZnO層の膜厚tzを変えたものを作製した。ここで、kh1は、ZnO層の厚さを表面弾性波の3次モードの基本波の波長λに対して相対的に表現するためのパラメータであり、次の式(2)により表されるものである。
【0025】
但し、λMは、5倍高調波の波長であり、λ/5である。
【0026】
次に、ZnO層の上にAlを抵抗加熱法により蒸着し、櫛形電極を形成した。櫛形電極は、フオトリソグラフィー及びエッチングにより、シングル電極構造の持つさまざまな線幅のものを形成した。
【0027】
そして、櫛形電極を覆うようにして、ZnO層の上に非晶質SiO2膜を形成した。非晶質SiO2膜の形成は、基板温度150℃、RFパワー200W、Ar:O2=1:1の混合ガス、圧力0.01Torr、ターゲットSiO2の条件の下でスパッタリングより行った。スパッタの時間を変えることにより、SiO2の膜厚を変化させることができる。そして、kh2=4.0〜8.0となるように、SiO2層の膜厚tsを変えたものを作製した。
【0028】
ここで、kh2は、SiO2層の厚さを表面弾性波の3次モードの基本波の波長λに対して相対的に表現するためのパラメータであり、次の式(3)により表されるものである。
【0029】
このようにして、図1に示すような構造を有し、ZnO層4及びSiO2層6の厚さの異なる表面弾性波素子を製造した。
【0030】
そして、これらの各表面弾性波素子について、入力電極51と52の間に高周波電力を印加して表面弾性波を励起させ、v=f0λM(f0:中心周波数)の関係から、励起された表面弾性波の3次モードの5倍高調波の伝播速度を求めた。
【0031】
各表面弾性波素子の電気機械結合係数K2は、ネットワークアナライザ(横河ヒューレットパッカード社製、8791A)を用いて3次モードにおいて測定された各表面弾性波素子の櫛形電極の放射コンダクタンスの実部Gに基づき、次の式(4)により求めた。
【0032】
K2=G/(8・f0・C・N) ‥‥(4)
但し、f0は中心周波数、Cは櫛形電極の全静電容量、Nは櫛形電極の対の数である。
【0033】
周波数温度特性TCFは中心周波数と温度の関係から求めた。すなわち、表面弾性波素子を室温から80℃までヒーターで加熱し10℃おきに中心周波数を測定したところ、直線関係が得られ、この直線の傾きからTCFを求めた。
【0034】
また、表面弾性波素子のZnO層の正確な厚さtz及びSiO2層の正確な厚さtsは、上述した各パラメータを測定した後、表面弾性波素子を切断し、切断面をSEMで観察することにより求めた。そして、厚さtz、tsに基づいて、パラメータkh1及びkh2を求め、表面弾性波素子の諸特性に及ぼすそれらの効果を評価した。
【0035】
図3は、本実施例により製造された表面弾性波素子について、ZnO層の厚さとSiO2層の厚さに対する電気機械結合係数K2の関係を二次元直交座標グラフとして示したものである。図3のグラフにおいて、横軸はZnO層の厚さに関するパラメータkh1(上述の式(2)参照)であり、縦軸はSiO2層の厚さに関するパラメータkh2(上述の式(3)参照)である。また、グラフの各曲線に付随する数値は、曲線に対応する電気機械結合係数K2の値である。これらの単位は%である。
【0036】
図4は、本実施例により製造された表面弾性波素子について、ZnO層の厚さとSiO2層の厚さに対する伝播速度vの関係を二次元直交座標グラフとして示したものである。図4のグラフにおいて、横軸はZnO層の厚さに関するパラメータkh1、縦軸はSiO2層の厚さに関するパラメータkh2である。また、グラフの各曲線に付随する数値は、曲線に対応する伝播速度vの値である。伝播速度vの単位は、m/sである。
【0037】
図5は、本実施例により製造された表面弾性波素子について、ZnO層の厚さとSiO2層の厚さに対する周波数温度特性TCFの関係を二次元直交座標グラフとして示したものである。図5のグラフにおいて、横軸はZnO層の厚さに関するパラメータkh1、縦軸はSiO2層の厚さに関するパラメータkh2である。また、グラフの各曲線に付随する数値は、曲線に対応する周波数温度特性TCFの値である。周波数温度特性TCFの単位は、ppm/℃である。
【0038】
ここで、図3において電気機械結合係数K2が0.2%以上であり、図4において伝播速度vが4800m/s以上を満たし、かつ、図5において周波数温度特性TCFが−20〜+20ppm/℃を満たすkh1及びkh2の数値範囲を図6に示す。図6は、図3〜図5と同様に、横軸をkh1、縦軸をkh2とした二次元直交座標グラフである。本図において、電気機械結合係数K2が0.2%以上であり、伝播速度vが4800m/s以上であり、かつ、周波数温度特性TCFが−20〜+20ppm/℃であるkh1及びkh2の数値は、本図中の点A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、P、Q、Aを順に線分で結んでなる領域(各線分上を含む)で与えられる。ここで、点Aは座標(kh1=2.68、kh2=8.00)で与えられ、点Bは座標(kh1=2.60、kh2=7.80)で与えられ、点Cは座標(kh1=2.40、kh2=7.38)で与えられ、点Dは座標(kh1=2.20、kh2=6.90)で与えられ、点Eは座標(kh1=2.10、kh2=6.60)で与えられ、点Fは座標(kh1=2.02、kh2=5.90)で与えられ、点Gは座標(kh1=2.10、kh2=5.25)で与えられ、点Hは座標(kh1=2.40、kh2=4.82)で与えられ、点Iは座標(kh1=2.80、kh2=4.80)で与えられ、点Jは座標(kh1=3.20、kh2=4.88)で与えられ、点Kは座標(kh1=3.60、kh2=5.10)で与えられ、点Lは座標(kh1=4.00、kh2=5.58)で与えられ、点Mは座標(kh1=4.40、kh2=6.26)で与えられ、点Nは座標(kh1=4.80、kh2=7.18)で与えられ、点Pは座標(kh1=4.80、kh2=7.40)で与えられ、点Qは座標(kh1=4.50、kh2=8.00)で与えられる。すなわち、表面弾性波の3次モードの5倍高調波を用い、図6に示す点A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、P、Q、Aを順に線分で結んでなる領域(各線分上を含む)で与えられるkh1及ぴkh2の数値をとることにより、電気機械結合係数K2が0.2%以上であり、伝播速度vが4800m/s以上であり、かつ、周波数温度特性TCFが−20〜+20ppm/℃である表面弾性波素子が得られる。
【0039】
また、表面弾性波の伝播速度vが4800〜5850m/sである場合、上述の式(1)により、櫛形電極の電極部の線幅を0.5μm以上として形成することができる。このため、櫛形電極の製造が容易となり、表面弾性波素子の量産が容易となる。また、櫛形電極の電極部の線幅を0.5μm以上とし、表面弾性波の中心周波数を5.0〜14.6GHzとした場合又はより好ましくは表面弾性波の中心周波数を9.5〜10.5GHzとした場合でも、上述した電気機械結合係数K2、伝播速度v及び周波数温度特性TCFの特性が得られる。
【0040】
(第二実施例)
本実施例の表面弾性波素子は、第一実施例と同様な手法を用い、条件を変更して10GHz付近の中心周波数で動作する表面弾性波素子を製造した。ZnOの膜厚tzを変化させてパラメータkh1が2.0〜4.8となるように表面弾性波素子を製造した。また、SiO2の膜厚tsを変化させてパラメータkh2が4.5〜8.0となるように表面弾性波素子を製造した。そして、第一実施例と同様に、ZnO層の厚さとSiO2層の厚さに対する電気機械結合係数K2、伝播速度v及び周波数温度特性TCFの関係を表した二次元直交座標グラフを作成し、それらの二次元直交座標グラフに基づいて、電気機械結合係数K2が0.4%以上を満たし、伝播速度vが4800m/s以上を満たし、かつ、周波数温度特性TCFが−20〜+20ppm/℃を満たすkh1及びkh2の数値範囲を二次元直交座標グラフとして表した。その二次元直交座標グラフを図7に示す。
【0041】
図7において、横軸はkh1、縦軸はkh2である。本図において、電気機械結合係数K2が0.4%以上であり、伝播速度vが4800m/s以上であり、かつ、周波数温度特性TCFが−20〜+20ppm/℃であるkh1及びkh2の数値は、本図中の点A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、Aを順に線分で結んでなる領域(各線分上を含む)で与えられる。ここで、点Aは座標(kh1=3.50、kh2=7.98)で与えられ、点Bは座標(kh1=3.40、kh2=7.80)で与えられ、点Cは座標(kh1=3.20、kh2=7.46)で与えられ、点Dは座標(kh1=3.00、kh2=6.90)で与えられ、点Eは座標(kh1=2.80、kh2=6.45)で与えられ、点Fは座標(kh1=3.00、kh2=6.00)で与えられ、点Gは座標(kh1=3.20、kh2=5.92)で与えられ、点Hは座標((kh1=3.60、kh2=6.25)で与えられ、点Iは座標(kh1=3.80、kh2=6.60)で与えられ、点Jは座標(kh1=4.00、kh2=6.98)で与えられ、点Kは座標(kh1=4.20、kh2=7.62)で与えられ、点Lは座標(kh1=4.30、kh2=7.95)で与えられる。すなわち、図7に示す点A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、Aを順に線分で結んでなる領域(各線分上を含む)で与えられるkh1及びkh2の数値をとることにより、電気機械結合係数K2が0.4%以上であり、伝播速度vが4800m/s以上であり、かつ、周波数温度特性TCFが−20〜+20ppm/℃である表面弾性波素子が得られる。
【0042】
また、表面弾性波の伝播速度vが4800〜5850m/sである場合、上述の式(1)により、櫛形電極の電極部の線幅を0.5μm以上として形成することができる。このため、櫛形電極の製造が容易となり、表面弾性波素子の量産が容易となる。また、櫛形電極の電極部の線幅を0.5μm以上とし、表面弾性波の中心周波数を5.0〜13.9GHzとした場合又はより好ましくは表面弾性波の中心周波数を9.5〜10.5GHzとした場合でも、上述した電気機械結合係数K2、伝播速度v及び周波数温度特性TCFの特性が得られる。
【0043】
第一実施例において、電気機械結合係数K2が0.2%以上であり、伝播速度vが4800m/s以上であり、かつ、周波数温度特性TCFが−20〜+20ppm/℃であるような、kh1およびkh2の範囲を図6に示した。また第二実施例において、電気機械結合係数K2が0.4%以上であり、伝播速度vが4800m/s以上であり、かつ、周波数温度特性TCFが−20〜+20ppm/℃であるような、kh1およびkh2の範囲を図7に示した。これらの実施例において周波数温度特性TCFがさらに良好な−10〜+10ppm/℃である表面弾性波素子を得るには、図5に示した周波数温度特性のグラフからTCFが−10〜+10ppm/℃となるようなkh1およびkh2の領域を読み取り、これをそれぞれ図6(第一実施例)または図7(第二実施例)に重ねて、両者が重なり合う領域を求めればよい。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、表面弾性波の3次モードの5倍高調波を用いることにより、高周波領域で良好な伝播特性、電気機械結合係数、周波数温度特性を得ることができる。また、櫛形電極の電極部分の線幅を大きくできるため、量産性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る表面弾性波素子の説明図である。
【図2】 図1の表面弾性波素子における櫛形電極の説明図である。
【図3】 第一実施例に係る表面弾性波素子における電気機械結合係数を示すグラフである。
【図4】 第一実施例に係る表面弾性波素子における伝播速度を示すグラフである。
【図5】 第一実施例に係る表面弾性波素子における周波数温度特性を示すグラフである。
【図6】 第一実施例に係る表面弾性波素子におけるパラメータkh1及びkh2の範囲を示すグラフである。
【図7】 第二実施例に係る表面弾性波素子におけるパラメータkh1及びkh2の範囲を示すグラフである。
【符号の説明】
1…表面弾性波素子、2…基板、3…ダイヤモンド層、4…ZnO層、5…櫛形電極、6…SiO2層、51、52…電極、53…電極指。
Claims (7)
- ダイヤモンド層と、
前記ダイヤモンド層の上に形成された厚さtzのZnO層と、
前記ZnO層の上に形成され表面弾性波の励振及び受信を行う櫛形電極と、
前記櫛形電極を覆い前記ZnO層の上に形成された厚さtsのSiO2層と、を備え、
前記表面弾性波の3次モードの基本波の波長をλとしたときに、kh1=5・2π・(tz/λ)、kh2=5・2π・(ts/λ)で与えられる前記kh1及び前記kh2が、横軸に前記kh1、縦軸に前記kh2を与える二次元直交座標グラフにおいて、
座標(kh1=2.68、kh2=8.00)で与えられる点Aと、
座標(kh1=2.60、kh2=7.80)で与えられる点Bと、
座標(kh1=2.40、kh2=7.38)で与えられる点Cと、
座標(kh1=2.20、kh2=6.90)で与えられる点Dと、
座標(kh1=2.10、kh2=6.60)で与えられる点Eと、
座標(kh1=2.02、kh2=5.90)で与えられる点Fと、
座標(kh1=2.10、kh2=5.25)で与えられる点Gと、
座標(kh1=2.40、kh2=4.82)で与えられる点Hと、
座標(kh1=2.80、kh2=4.80)で与えられる点Iと、
座標(kh1=3.20、kh2=4.88)で与えられる点Jと、
座標(kh1=3.60、kh2=5.10)で与えられる点Kと、
座標(kh1=4.00、kh2=5.58)で与えられる点Lと、
座標(kh1=4.40、kh2=6.26)で与えられる点Mと、
座標(kh1=4.80、kh2=7.18)で与えられる点Nと、
座標(kh1=4.80、kh2=7.40)で与えられる点Pと、
座標(kh1=4.50、kh2=8.00)で与えられる点Qと、
前記A点とを順に線分で結ぶ、16本の線分からなる領域ABCDEFGHIJKLMNPQAの前記16本の線上を含む内部に与えられ、
前記表面弾性波の3次モードの5倍高調波が用いられること、
を特徴とする表面弾性波素子。 - ダイヤモンド層と、
前記ダイヤモンド層の上に形成された厚さtzのZnO層と、
前記ZnO層の上に形成され表面弾性波の励振及び受信を行う櫛形電極と、
前記櫛形電極を覆い前記ZnO層の上に形成された厚さtsのSiO2層と、を備え、
前記表面弾性波の3次モードの基本波の波長をλとしたときに、kh1=5・2π・(tz/λ)、kh2=5・2π・(ts/λ)で与えられる前記kh1及び前記kh2が、横軸に前記kh1、縦軸に前記kh2を与える二次元直交座標グラフにおいて、
座標(kh1=3.50、kh2=7.98)で与えられる点Aと、
座標(kh1=3.40、kh2=7.80)で与えられる点Bと、
座標(kh1=3.20、kh2=7.46)で与えられる点Cと、
座標(kh1=3.00、kh2=6.90)で与えられる点Dと、
座標(kh1=2.80、kh2=6.45)で与えられる点Eと、
座標(kh1=3.00、kh2=6.00)で与えられる点Fと、
座標(kh1=3.20、kh2=5.92)で与えられる点Gと、
座標(kh1=3.60、kh2=6.25)で与えられる点Hと、
座標(kh1=3.80、kh2=6.60)で与えられる点Iと、
座標(kh1=4.00、kh2=6.98)で与えられる点Jと、
座標(kh1=4.20、kh2=7.62)で与えられる点Kと、
座標(kh1=4.30、kh2=7.95)で与えられる点Lと、
前記A点とを順に線分で結ぶ、12本の線分からなる領域ABCDEFGHIJKLAの前記12本の線上を含む内部に与えられ、
前記表面弾性波の3次モードの5倍高調波が用いられること、
を特徴とする表面弾性波素子。 - 前記表面弾性波の3次モードの5倍高調波の中心周波数をf0、伝播速度をvとしたときに、
前記伝播速度vが4800〜5850m/sであり、
前記櫛形電極の電極線幅をdm、電極間隔をdfとしたとき、電極ピッチ(dm+df)がdm+df=(5・v)/(2・f0)で与えられること、
を特徴とする請求項1に記載の表面弾性波素子。 - 前記表面弾性波の3次モードの5倍高調波の中心周波数をf0、伝播速度をvとしたときに、
前記伝播速度vが4800〜5580m/sであり、
前記櫛形電極の電極線幅をdm、電極間隔をdfとしたとき、電極ピッチ(dm+df)がdm+df=(5・v)/(2・f0)で与えられること、
を特徴とする請求項2に記載の表面弾性波素子。 - 前記櫛形電極の電極線幅dmが0.5μm以上であり、
前記表面弾性波の3次モードの5倍高調波の中心周波数が5.0〜14.6GHzであること、
を特徴とする請求項1に記載の表面弾性波素子。 - 前記櫛形電極の電極線幅dmが0.5μm以上であり、
前記表面弾性波の3次モードの5倍高調波の中心周波数が5.0〜13.9GHzであること、
を特徴とする請求項2に記載の表面弾性波素子。 - 前記櫛形電極の電極線幅が0.5μm以上であり、
前記表面弾性波の3次モードの5倍高調波の中心周波数が9.5〜10.5GHzであること、
を特徴とする請求項1または2に記載の表面弾性波素子。
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