JP3751440B2 - 粒子線治療装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、陽子線・重粒子線(炭素線、アルゴン線など)で代表される粒子線を照射して患者の体内に存在する腫瘍などの疾患を治療する粒子線治療装置、及び粒子線治療装置による粒子線治療を行うための治療計画策定用のX線CT装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の粒子線治療装置は、例えば1994年に発刊されたアバゾフ(V.M.Abazov)他、JINR出版物、E−18−94−112「JINR陽子線ファソトロンビームを用いた放射線治療のための医療設備(Medical Facility for Radiation Therapy with JINR Proton Phasotron Beams)」に記載されている。
【0003】
図15は、上記アバゾフ他に開示された粒子線治療装置を示す斜視図である。図において、1は図示しない加速器から照射される陽子線のビーム、2は照射に必要な細いビームを作るためのコリメータ、3はビーム1のエネルギーを低下させて、所定の体内深さでビームを止めるためのエネルギー・ディグレーダ(滅衰器)、4はエネルギー・ディグレーダ3のギャップ間隔を図示しない計算機で制御するマニピュレータ、5はコリメータ2とエネルギー・ディグレーダ3、マニピュレータ4を設置するスタンドである。
【0004】
また、6は治療する患者であり、この例では食道がんを陽子線で治療する。陽子線のエネルギーを検出する検出器(図示せず)が患者の食道に挿入されている。7は検出器に接続されたチューブ、8は検出器の出力をモニタするモニタ、9は患者が座る治療用椅子である。10は治療用椅子9を上下・左右方向に回転・並進運動させる駆動機構、11は治療用椅子9のスタンドである。
【0005】
次に動作について説明する。
検出器をチューブ7を介して食道に挿入して治療用椅子9に患者6が座ると、駆動機構10により患者6を垂直方向及び水平方向に並進移動させて陽子線のビーム1に患部が正確に当たるように患者位置の調整が行われる。患者6の位置の調整が完了すると、加速器から陽子線のビーム1が照射され、コリメータ2でビーム1の太さが絞られ、エネルギー・ディグレーダ3でビーム1のエネルギー出力が減衰され、患者6に照射される。実際の治療においては、治療用椅子9を水平面内で回転させながらビーム1を照射する。この時、常にがん部位に高い線量が吸収されるようにビーム1のエネルギーをエネルギー・ディグレーダ3で連続的に可変調整する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の粒子線治療装置は以上のように構成されているので、患者の治療できる部位は頭から上腹部までと限定されていた。したがって、他の部位の癌等の疾患は治療できないという課題があった。
【0007】
また、粒子線治療を行うに先立って治療部位を確定するためにX線CT撮影を行う必要があるが、従来のX線CT装置では患者を斜めの位置にしてCT画像を撮影することができなかった。そのため、水平の仰臥位置と斜めの位置とでは患者の臓器位置が異なってしまうため、正確な治療部位を確定することが困難であるという課題があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、全身の癌をはじめとする各種疾病を治療できる粒子線治療装置を得ることを目的とする。
【0009】
また、この発明は、患者を斜めの位置にしてX線CT撮影を行うことのできるX線CT装置を得ることを目的とする。
【0010】
また、この発明は、患者を斜めの位置にして患者の水平方向のスライス画像を撮影できるX線CT装置を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る粒子線治療装置は、粒子線の発生手段により発生された粒子線の進行方向とベッド上の患者の体軸方向のなす角度を任意角度に設定するベッド角度設定手段と、前記ベッド角度設定手段で設定された角度を維持しつつ、前記ベッドを支持する手段を少なくとも水平面内で回転させる第1の駆動機構と、ガントリを該ガントリの中心軸方向に平行移動させるガントリ駆動手段と、前記ガントリの中心軸を回転させる回転駆動手段とを備えたものである。
【0012】
この発明に係る粒子線治療装置は、ガントリ駆動手段が、ガントリの中心軸の方向を、患者の体軸方向と近似的に一致させて前記ガントリを前記中心軸方向に並行移動させるものである。
【0013】
この発明に係る粒子線治療装置は、ガントリ駆動手段の角度とは無関係にガントリを回転できるように支持する支持手段を更に備えたものである。
【0014】
この発明に係る粒子線治療装置は、ベッドを支持する手段を水平面内で並進運動させる第2の駆動機構を備えたものである。
【0015】
この発明に係る粒子線治療装置は、ベッド角度設定手段が設定する粒子線の進行方向とベッド上の患者の体軸方向のなす角度が20度以上80度以下であるものである。
【0016】
この発明に係る粒子線治療装置は、粒子線を患者に照射する際に、第1の駆動機構が、患者を斜めの位置を保ったまま水平方向に回転させながら同時に前記患者を垂直方向に移動させるものである。
【0017】
この発明に係る粒子線治療装置は、粒子線を患者に照射する際に、第1の駆動機構が、患者を斜めの位置を保ったまま水平方向に回転させながら同時に前記患者を垂直方向に移動させながらさらに同時に前記患者を水平面内で並進運動させるものである。
【0018】
この発明に係る粒子線治療装置は、粒子線を偏向させる偏向手段を更に備えたものである。
【0019】
この発明に係る粒子線治療装置は、偏向手段として電磁石を用いたものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による粒子線治療装置を示す斜視図である。図において、1は陽子線のビーム、12は陽子線の発生手段であり、例えばサイクロトン加速器である。20は斜め(好ましくは20度〜80度)に設置されたベッド、22はベッド20上に斜めに寝かされた患者、24は患者22の下腹部に生じている腫瘍、26a,26bは患者22の両肩を固定する固定具、28a,28bは患者22の両手を固定する握り、29a,29bは患者22の足を固定する固定具である。
【0021】
また、30はベッド20を水平面内方向に回転させる回転駆動機構(第1の駆動機構)、32はベッド20を支持する支持台である。なお、この実施の形態1で用いる回転駆動機構30は公知の種々の回転駆動機構を用いる事ができる。例えば、回転駆動機構30として、ギアを用いた場合を説明する。
【0022】
図2は、回転駆動機構30の駆動機構部分を示す斜視図である。図において、33,35は回転力を伝達するギア(第1の駆動機構)、37はギア35を支持し、ギア35に回転力を伝達するシャフト(第1の駆動機構)、38はモータ(第1の駆動機構)である。
ギア35はシャフト37を介してモータ38に接続され、ギア35と噛合するギア33に伝達された回転力により、ベッド20が回転する。
【0023】
次に動作について説明する。
モータ38が回転するとその回転力はシャフト37、ギア35を介してギア33に伝達され、このギア33の回転によりベッド20が患者22を斜めに保持したまま水平方向に回転する。このとき、発生手段12は陽子の粒子線ビーム1を強度を連続的に変更しながら患者22の腫瘍24に照射する。
【0024】
この実施の形態1によれば、患者22の体をビーム1の進行方向に対して斜めに傾けたので、治療部位の制約はほとんど解消される。実際の治療においては、回転駆動機構30によりベッド20を一定速度でゆっくり回転させながら、従来例と同様に、照射するビーム1のエネルギーを連続可変させ、常に腫瘍24の位置で陽子が停止するようにする。この結果、腫瘍24に高い放射線線量を吸収させることができる。さらに、患者22を回転させながら、ビーム1を照射するために、腫瘍24以外の正常組織の吸収する放射線線量をきわめて低減でき、副作用がほとんどない治療を実現できる。なお、ベッド20は、1周1分程度のゆっくりとした定速回転で回転させる。これにより、患者22にめまいなどの不快な症状は生じない。また、回転がゆっくりで、患者22の臓器にかかる加速度は無視できるために、回転中に臓器が移動するおそれはない。さらに、加速器のビーム出力は水平固定照射でよいために、直径が8m程度の大がかりな回転ガントリ構造体を設置する必要もなく、装置のコストを大きく低減できる。
【0025】
図3は、患者22をベッド20の上で斜めに回転させてビーム1を照射することにより形成される患者22の体内放射線線量分布を示す図である。図において、29は患者22の身体の腫瘍24のある位置での断面、25は断面29での腫瘍24の断面で腫瘍領域を表す。また、27aは高い線量が照射される高線量領域、27bは低い線量が照射される低線量領域である。
【0026】
説明を簡単化するために、ここでは患者22の身体のある断面29で考える。陽子線のビーム1は患者22の周囲360度方向から照射される。ただし、脊髄などの重要臓器がある場合は、その方向だけは照射を停止する。照射停止には、加速器内部で停止する方法(イオン源の遮断など)、加速器出口以降でブロックする方法(キッカ磁石によるビームの偏向)などがあり、いずれも公知の方法である。脊髄に対応する体表面に金属などから成る棒などを置いて、その部位を遮蔽する方法も公知である。種々の方向からビーム1を照射した結果、腫瘍領域25には高線量領域27aが形成され、周囲の正常組織には低線量領域27bが形成される。
【0027】
以上のように、この実施の形態1によれば、患者の全身に陽子線のビームを照射できると共に、腫瘍位置のみに高線量領域を形成できる効果が得られる。
【0028】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による粒子線治療装置を示す斜視図である。以下の全ての実施の形態に関する図において、その図より前に説明した図中に示した実施の形態の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付けて、重複した説明を省略する。
【0029】
図4において、36は患者22とベッド20との間に設けられた、公知の患者固定用のベッドマット、41はベッドマット36内の空気を抜くための排気口、42は真空ポンプ、40はベッドマット36の排気口41と真空ポンプ42の吸引口とを結ぶチューブ、34はベッド20を垂直方向に回転させるための回転軸、21は患者22が足を乗せるための足台である。
【0030】
ベッドマット36の内部には直径数ミリメートルのポリスチレン球が多数詰められており、これを真空ポンプ42でチューブ40、排気口41を介して、真空引きすることにより、患者の体型に沿った硬いベッドマットを形成することができる。
【0031】
次に動作について説明する。
患者22を水平にされたベッド20上に寝かせ、真空ポンプ42でベッドマット36内の空気を吸引して患者22をベッド20上に固定した後、ベッド20は回転軸34の回りに回転し患者22を斜めの位置にする。このようにして患者22を回転させながらビーム1を患者22に照射する。
【0032】
陽子線の照射中は回転駆動機構30が水平面内でゆっくり回転し、これにより患者22は斜めになったまま回転する。ベッドマット36を真空引きする時期は、回転軸34を回転させたあとでもよい。また、図1に示した種々の患者固定具を併用してもよい。さらに、真空ポンプ42は掃除機を用いてもよい。
【0033】
図5は、この実施の形態2において、陽子線のビーム1の照射中にベッド20を種々の方向に回転または並進運動させる様子を示す図である。図において、43はベッド20を全体的に並進移動させるための移動台(第2の駆動機構)、50は水平面内での回転運動、52は上下運動、54は図の左右方向への並進移動、56は図の前後方向への並進移動、58はベッド20の長手方向に設定した回転軸の周りの回転運動、60はベッド20の横方向に設定した回転軸の周りの回転運動を表す。
【0034】
図5の回転又は並進運動のうち特に重要な運動は水平面内での回転運動50と上下運動52、並びに左右及び前後への並進運動54及び56である。回転運動50は腫瘍部分に常に高い放射線吸収線量を与えつつ、回転により周囲の正常組織の受ける線量を低減するために重要である。また、照射するビーム1は通常10mm程度の直径を有するので、腫瘍がそれより大きい場合には、ベッド20を上下に移動させる必要がある。すなわち、ベッドのある高さで腫瘍を水平360度方向から照射し、次にベッドの高さを変化させて、同様な照射を繰り返す必要がある。この場合、回転運動50を行いながら、ゆっくりした上下運動52を同時に行うことも有効である。なぜならば、この方法によれば、複雑な形状をしている腫瘍の表面形状により一致した放射線線量を形成できるからである。
【0035】
この様子を図6及び図7に示す。いずれの図においても、実線が腫瘍24の形状を表わし、点線が高線量領域例えば、最大値の90%以上の線量を付与する体積を示す。図6はベッド20のある高さで腫瘍24を水平360度方向から照射し(照射領域I)、次にベッド20の高さを変化させて、同様な照射を照射領域II,III,IVとさらに3回繰り返す場合であり、60,62,64,66の各×点はそれぞれの腫瘍部分領域の幾何学的な重心位置を示す。このように照射するためには、図5の移動方向では、回転運動50を行った後、上下運動52と同時に並進運動54と56を行い、腫瘍領域25の幾何学的な重心の水平位置と、ベッド20の回転運動50の回転軸の水平位置を一致させる必要がある。
【0036】
図7は回転運動50、上下運動52、並進運動54と56をすべて同時に実行した場合の90%以上の線量が付与された体積(点線)と腫瘍形状(実線)を表す。腫瘍の各水平面内における幾何学的な重心位置は一点鎖線で示されている。複雑な形状をしている腫瘍の表面形状によく一致した放射線照射の高線量領域を形成できることが理解できる。なお、腫瘍の各水平面内における幾何学的な重心の水平位置がほとんど同じ動かない場合、すなわち、患者22をベッド20上に斜めに寝かせた位置で腫瘍の幾何学的な重心の水平位置を結んだ直線がほぼ垂直となる場合、並進運動54,56は不要になる。
【0037】
以上のように、この実施の形態2によれば、患者の全身に粒子線を照射できると共に、腫瘍位置のみに高線量領域を形成できる効果が得られる。
【0038】
実施の形態3.
これまでの実施の形態1,実施の形態2では陽子線の発生手段12から出射された陽子線のビーム1は照射室の空間座標に対して固定されて照射され、患者22のベッド20だけが移動していた。これに対して、この実施の形態3による粒子線治療装置は陽子線のビームを水平方向及び/又は垂直方向に偏向させて、患者のベッドの動きを少なくしたものである。
【0039】
図8は実施の形態3による粒子線治療装置のビームを偏向させる偏向手段の配置を示す図である。図において、70aはビーム1を垂直方向に偏向させる電磁石(偏向手段)、70bはビーム1を水平方向に偏向させる電磁石(偏向手段)である。
【0040】
図9は実施の形態3における腫瘍24とビーム1の照射スポットとの関係を示す図である。図において80はビーム1の照射スポットである。
【0041】
次に動作について説明する。
陽子線のビーム1は電磁石70a及び70bにより任意の方向に偏向される。ベッド20は水平方向のみに回転させる。これにより、図9に示すように、腫瘍24の全ての位置にビーム1の照射スポット80を設定してスキャニングする。したがって、高線量領域を腫瘍部位全体に形成することができる。なお、この場合はベッド20を回転駆動機構30により水平方向のみ回転させることは必要である。図3に示したように、ベッド20を回転させることにより始めて腫瘍部分だけに高い線量を付与し、周囲の正常組織の線量を小さくできるからである。
【0042】
なお、ビーム1を水平方向にだけ偏向させ、ベッド20を回転運動50と共に上下運動52させてもよい。この場合には、電磁石を水平方向の偏向用に1台だけ用意すればいいという効果が得られる。
【0043】
以上のように、この実施の形態3によれば、ビームを腫瘍形状に正確に一致させて照射できる効果が得られる。
【0044】
実施の形態4.
以上の実施の形態1から実施の形態3においては、本発明の粒子線治療装置に関して説明した。しかし、実際の治療においては、本発明の粒子線治療装置を用いて治療する前に患者のCT画像を取得して、照射位置別に陽子線ビームのエネルギーを計算しておく必要がある。陽子線のエネルギーの増減により治療できる体表面からの深さが制御できるからである。この発明の粒子線治療装置ではベッドを斜めに配置しているので、この状態でCT画像を取得することが望ましい。なぜならば、人間の体内の臓器は体の傾きにより移動するからである。したがって、通常のCT装置では高精度な治療計画が立てられないこととなる。この発明の実施の形態4によるX線CT装置は、斜めの位置に寝かせた患者のCT画像を撮影できるようにしたものである。
【0045】
図10はこのような目的に適した実施の形態4によるX線CT装置を示す斜視図である。図において、44はX線発生源および人体を通過後のX線強度を検出する検出器を含むX線ビーム照射・検出用のガントリ、45はガントリ44をガントリ44の中心軸方向に平行移動するガントリ駆動手段、46はガントリ44とガントリ駆動手段45全体を回転させるための回転駆動手段であり、内部に例えば図2に示したギア33,35、シャフト37、モータ38のような機構が構成されている。47は回転駆動手段46を支持するスタンド、48はこのX線CT装置全体を支持する支持台である。
【0046】
図11はガントリ駆動手段45の具体的な構成を示す図である。図において、90は直線型のギア(ガントリ駆動手段)、91は円形のギア(ガントリ駆動手段)、92はモータ(ガントリ駆動手段)である。
【0047】
次に動作について説明する。
図12は患者22をベッド20に寝かせてこのX線CT装置を用いて患部の断層写真を撮影する状態を示す測面図である。図に示すように、患者22を実際に治療する姿勢に粒子線治療装置により設定した状態で、実施の形態4のX線CT装置のガントリ44を患者22に被せて、モータ92でギア91,90を駆動して、ガントリ44を患者22の周りで上下動させてCT画像を撮影する。CT画像を撮影した後、粒子線治療装置の支持台32ごとベッド20を治療室に移動させ、粒子線治療を行う。
【0048】
以上のように、この実施の形態4によれば、高精度な治療計画(照射位置ごとに決めるビームのエネルギーなどの条件を決めること)を達成できる。
【0049】
実施の形態5.
実施の形態4のガントリ44は、図12に示すように、患者22の体側に対して直角にX線が照射されるように配置されているので、患者22の体側に対して直角方向の断面のスライス画像が得られる。一方、陽子線治療を行う場合には、図1に示すように、ビーム1は水平に患者22に照射されるため、患者22の体側に対しては斜めの断面に対して陽子線が照射されることとなる。陽子線照射のビームパラメータを計算するための患者22のX線CT画像も水平面内での断面画像であることが望ましく、実施の形態4では、直角方向の断面のスライス画像から計算により水平方向の断面のスライス画像に変換しており、精度的にやや劣ることは否めなかった。
【0050】
この発明の実施の形態5によるX線CT装置は患者22の水平面内の断面スライス画像を直接撮影することができるようにしたものである。
図13は実施の形態5によるX線CT装置の側面図(図13の(1))及びA−A断面図(図13の(2))である。図において、100はガントリ駆動手段45の長さ方向に摺動自在にガントリ44を支持するアーム(支持手段)、102a及び102bはガントリ44をアーム100に軸支する支持機構(支持手段)である。アーム100は、図11に示したガントリ駆動手段45のギア90,91及びモータ92によりガントリ駆動手段45の長さ方向に駆動され、支持機構102a、102bは図2に示したのと同様な回転駆動機構によってガントリ44を回転させることができる。
【0051】
次に動作について説明する。
図14は患者22をベッド20に寝かせてこのX線CT装置を用いて患部の断層写真を撮影する状態を示す測面図である。図に示すように、患者22を実際に治療する姿勢に粒子線治療装置により設定した状態で、ガントリ44を患者22に被せて、ガントリ駆動手段45によりアーム100を上下動させてガントリ44を患者22の治療部位に設定すると共に、支持機構102a,102bによりガントリ44を回転させて、ガントリ44の中心軸を鉛直方向に設定する。この状態で患者22のCT画像を撮影する。CT画像を撮影した後、粒子線治療装置の支持台32ごとベッド20を治療室に移動させ、粒子線治療を行う。
【0052】
以上のように、この実施の形態5によれば、実際に陽子線を照射する断面と同一断面のスライス画像を直接撮影することができ、高精度にビームパラメータを計算できる効果が得られる。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、粒子線の発生手段により発生された粒子線の進行方向とベッド上の患者の体軸方向のなす角度を任意角度に設定して粒子線を照射するように構成したので、患者の全身を粒子線治療できる効果がある。
【0054】
この発明によれば、ガントリの中心軸を回転させるように構成したので、斜めに寝かされた患者のCT画像を撮影することができ、粒子線治療の際の患部位置の正確な把握が可能となる効果がある。
【0055】
この発明によれば、ガントリの中心軸の方向を、患者の体軸方向と近似的に一致させてガントリを中心軸方向に並行移動させるように構成したので、斜めに寝かされた患者のより正確なCT画像を得ることができる効果がある。
【0056】
この発明によれば、ガントリ駆動手段の角度とは無関係にガントリを回転できるように支持する支持手段を更に備えるように構成したので、粒子線の照射面と同一の平面内のスライス画像を直接得ることができ、高精度でビームパラメータを計算できる効果がある。
【0057】
この発明によれば、ベッドを支持する手段を水平面内で並進運動させるように構成したので、より正確に高線量領域を治療する部位に限ることができる効果がある。
【0058】
この発明によれば、粒子線の進行方向とベッド上の患者の体軸方向のなす角度が20度以上80度以下であるように構成したので、患者の全身に渡って隈なく粒子線治療できる効果がある。
【0059】
この発明によれば、粒子線を患者に照射する際に、患者を斜めの位置を保ったまま水平方向に回転させながら同時に前記患者を垂直方向に移動させるように構成したので、治療部位の形状に応じて高線量領域を形成することができる効果がある。
【0060】
この発明によれば、粒子線を患者に照射する際に、患者を斜めの位置を保ったまま水平方向に回転させながら同時に前記患者を垂直方向に移動させながらさらに同時に前記患者を水平面内で並進運動させるように構成したので、より正確に治療部位の形状に応じて高線量領域を形成することができる効果がある。
【0061】
この発明によれば、粒子線を偏向させる偏向手段を備えるように構成したので、患者のベッドの動きを少なくでき、患者の治療部位の位置がずれてしまうことを予防できる効果がある。
【0062】
この発明によれば、偏向手段として電磁石を用いるように構成したので、簡便に粒子線を変更させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による粒子線治療装置を示す斜視図である。
【図2】 実施の形態1の回転駆動機構の駆動機構部分を示す斜視図である。
【図3】 実施の形態1において、患者をベッドの上で斜めに回転させてビームを照射することにより形成される患者の体内放射線線量分布を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態2による粒子線治療装置を示す斜視図である。
【図5】 実施の形態2において、陽子線のビームの照射中にベッドを種々の方向に回転または並進運動させる様子を示す図である。
【図6】 実施の形態2において粒子線の照射される腫瘍の形状と高線量領域を示す図である。
【図7】 実施の形態2において粒子線の照射される腫瘍の形状と高線量領域を示す図である。
【図8】 この発明の実施の形態3による粒子線治療装置のビームを偏向させる偏向手段の配置を示す図である。
【図9】 実施の形態3における腫瘍とビームの照射スポットとの関係を示す図である。
【図10】 この発明の実施の形態4によるX線CT装置を示す斜視図である。
【図11】 実施の形態4のガントリ駆動手段の具体的な構成を示す図である。
【図12】 実施の形態4のX線CT装置を用いて患部の断層写真を撮影する状態を示す測面図である。
【図13】 この発明の実施の形態5によるX線CT装置の側面図及びA−A断面図である。
【図14】 実施の形態5のX線CT装置を用いて患部の断層写真を撮影する状態を示す測面図である。
【図15】 従来の粒子線治療装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ビーム(粒子線)、12 発生手段、20 ベッド、22 患者、30 回転駆動機構(第1の駆動機構)、33,35 ギア(第1の駆動機構)、37 シャフト(第1の駆動機構)、38 モータ(第1の駆動機構)、43 移動台(第2の駆動機構)、44 ガントリ、45 ガントリ駆動手段、46 回転駆動手段、70a,70b 電磁石(偏向手段)、90,91 ギア(ガントリ駆動手段)、92 モータ(ガントリ駆動手段)、100 アーム(支持手段)、102a,102b 支持機構(支持手段)。

Claims (9)

  1. ベッド上に固定された患者に照射する粒子線を発生する発生手段と、
    該発生手段により発生された粒子線の進行方向と前記ベッド上の患者の体軸方向のなす角度を任意角度に設定するベッド角度設定手段と、
    前記ベッド角度設定手段で設定された角度を維持しつつ、前記ベッドを支持する手段を少なくとも水平面内で回転させる第1の駆動機構と、
    X線ビームを人体に照射しかつ前記人体を透過したX線ビームを検出するガントリと、
    該ガントリを該ガントリの中心軸方向に平行移動させるガントリ駆動手段と、
    前記ガントリの中心軸を回転させる回転駆動手段とを備えた粒子線治療装置。
  2. ガントリ駆動手段が、ガントリの中心軸の方向を、患者の体軸方向と近似的に一致させて前記ガントリを前記中心軸方向に並行移動させることを特徴とする請求項記載の粒子線治療装置。
  3. ガントリ駆動手段の角度とは無関係にガントリを回転できるように支持する支持手段を更に備えた請求項または請求項記載の粒子線治療装置。
  4. ベッドを支持する手段を水平面内で並進運動させる第2の駆動機構を備えたことを特徴とする請求項1から請求項のうちのいずれか1記載の粒子線治療装置。
  5. ベッド角度設定手段が設定する粒子線の進行方向とベッド上の患者の体軸方向のなす角度が20度以上80度以下であることを特徴とする請求項1から請求項のうちのいずれか1項記載の粒子線治療装置。
  6. 粒子線を患者に照射する際に、第1の駆動機構が、患者を斜めの位置を保ったまま水平方向に回転させながら同時に前記患者を垂直方向に移動させることを特徴とする請求項1から請求項のうちのいずれか1項記載の粒子線治療装置。
  7. 粒子線を患者に照射する際に、第1の駆動機構が、患者を斜めの位置を保ったまま水平方向に回転させながら同時に前記患者を垂直方向に移動させながらさらに同時に前記患者を水平面内で並進運動させることを特徴とする請求項1から請求項のうちのいずれか1項記載の粒子線治療装置。
  8. 粒子線を偏向させる偏向手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から請求項のうちのいずれか1項記載の粒子線治療装置。
  9. 偏向手段として電磁石を用いたことを特徴とする請求項記載の粒子線治療装置。
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