JP3750854B2 - 金型面へのマーキング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
各種プラスチック成形品と成形条件などのデータとの対比を容易にするためのマーキングに関する。
【0002】
【従来技術】
射出成形や圧縮成形により成形(製造)されたプラスチック成形品の精度、強度等の品質は、成形用金型の寸法精度は勿論、金型内の樹脂の流動状況、射出成形などの成形条件、成形時の環境温度と湿度、成形機の性能、作業者の熟練度或いはプラスチック材料の製造ロット間における性能のばらつきなどによって決まる。
【0003】
このようなことから、成形品の品質向上のための管理は、成形品の成形後直ちに、または一定時間恒温恒湿状態に保った後、寸法精度や強度が測定されて所望の品質条件に適合するかどうかを判定するのが通例である。
【0004】
しかし、その成形品が所望の性能を有するかどうかはユーザーにおいて使用している段階で判明するものであり、しばしばユーザーからのクレームとして該成形品が返却されることがある。成形業者は、この返却された成形品の不良原因を再度チェックするために過去に遡って当時の成形条件を照合することが必要となる。このために、一部の成形業者においては成形品を製造した現場において成形品1個、1個に製造日時などをゴム印等により記載することがなされているようであるが、非常に煩瑣な作業であり、比較的大型の成形品についてのみ、且つ、抜き取り的に実施されているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
成形工場で成形して出荷され、使用に供されてから相当の年月を経た成形品を一個単位で何時、誰が、何処で、どの金型で、どんな成形条件で、どんな材料を使用して成形したものかを特定することを容易にするためには、成形工場において詳細な成形データを管理、保存することが必要であると共に、個々の成形品がどのデータによって成形したものかを容易に特定できる機能を各成形品に付加することが必要で、その簡易な方法の開発が課題である。
【0006】
【課題を解決する手段】
本発明は、前記の課題を解決するために請求項1の発明においては文字、数字または識別模様等を刻設した印形に金属用腐蝕液を塗布し、この印形をプラスチック成形用金型のキャビティ面または/およびコア面に押印して該キャビティ面またはコア面に腐食面を現出することを手段として、その金型により生産される成形品に、そのデータとの照合可能な識別を現出せしめたものである。
【0007】
プラスチック成形品の成形年月日または/およびプラスチック材料の出所・品質、または/および成形条件、または/および金型・キャビティの特定を可能とする情報を文字、数字、識別記号、模様またはそれらの組合せを、プラスチック成形用金型のキャビティ面またはコア面にエッチング液で蝕刻することによりプラスチック成形品一個一個の表面または/および裏面に該腐蝕面を転写する金型となる。
【0008】
さらに、成形の年月日、製造者、プラスチック材料の出所・品番、成形条件、金型・キャビティとの照合を容易にする上方を成形品個々に転写できるものとなる。
【0009】
この金型キャビティ面または/およびコア面へのマーキング方法に使用する印形を、ゴムまたは軟質プラスチックによって作製することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下において本発明実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。プラスチックの成形方法には種々のものがあるが、本発明が対象とする成形用金型は主として射出成形、圧縮成形に適用するものであり、成形品に対する金型キャビティ面の転写性が良いブロー成形或いは圧空成形についても対象とする。
【0011】
上記成形用金型1(固定側型板、可動側型板)のキャビティ面2または/および望ましくはコア面3に情報は文字、数字、識別記号、模様またはそれらの組合せによりなる品質管理用等のマーク4を腐蝕液でもってマーキング(描写)する。しかも、その情報はプラスチックの成形の年月日または/および製造所(者)、または/およびプラスチック材料の出所・品番、または/および成形条件、または/およびどの金型か等を特定するに足りる表示であり、且つ、その事業者によってそのことが読みとれるものであれば良いことは勿論である。なお、図1において7はガイド穴、8はガイドピン、9はスプルーゲート穴を表示したものである。
【0012】
本発明に係る上記情報の金型キャビティへのマーキングは、ゴム(または軟質・半硬質のプラスチック)からなる印形(図示していない。)を使用し、その印面に腐蝕(エッチング)液を塗布して金型のキャビティ面2または/およびコア面3に押印することによって行う。このような柔軟な印形を使用することによって対象とする金型のキャビティ面、コア面が多少のアール面であっても明瞭な押印が可能である。適当な印形がなければ手書きの方法でエッチング液を塗布することも可能である。
【0013】
通常、プラスチック成形用金型のキャビティ面およびコア面は鏡面研磨ないしそれに近い研磨がなされている。この光沢面は前記の押印または手書きによって付着させた腐蝕液によりその印影部分の光沢が消失し、若干錆色に近い変色を生じることになる。このように艶消しされて変色したマーク4を有するコア3とキャビティ2との間にプラスチック成形機により溶融樹脂が射出充填され、または圧縮充填されて、その樹脂が冷却固化したとき、該成形品5の表面に腐食部分、すなわち、マーク4部分が艶消し状に転写される。これにより文字等のマーク6は他の光沢面から明瞭な区画をもって判読することができることになる(図2)。
【0014】
前記の印形に塗布する腐蝕液としては塩酸、硝酸またはその混合液、塩化第二鉄などの通常のエッチング液が使用できることは勿論、金型用素材としての鋼等に対する腐食性のある薬品であれば如何なるものであってもよい。
【0015】
この押印による腐蝕(エッチング)は、腐蝕液が乾燥するまでか、ないしはそれよりも短時間で行われる。従って、この程度のエッチング時間によってはごく僅かな深さのエッチングに止まる。このように、本発明の押印によるエッチングはキャビティ面、コア面の光沢除去処理と称すべき程度のものであり、且つ、これで十分なのである。
【0016】
すなわち、本発明に係る金型への腐蝕によるマーキング(データーとの照合手段)は、成形当日にプラスチック成形に先立って前記のゴム製印形(または手書きでも可)により文字、数字、記号、模様またはその組合せで金型のキャビティまたはコアの面に蝕刻される。そして、当日ないし予定数量の成形が終了すれば、該マーキング部分は研磨紙や研磨砥石などにより研磨して該変色部分を取り去り、翌日または次回の成形時におけるマーキング箇所とされる。従って、前記の蝕刻は研磨紙により容易に削り取られる程度の極めて浅いものであることがむしろ望ましいのである。
【0017】
このようなマーキングに対応する品質管理資料、例えば成形条件、成形材料、成形用金型、成形操作者などの詳細なデーターは成形業者において記録しておき、品質に関するクレームの発生時に容易に照合できるよう管理することが必要であることは勿論である。
【0018】
【発明の効果】
従来、市販されたプラスチック成形品が原因不明の状態で破損することがしばしば発生するが、このように成形して後、長期間使用した成形品の成形条件を究明することは殆ど不可能であった。本発明に係る金型へのマーキングによって総てのプラスチック成形品にデーターとの照合手段が転写されることになり、従って、過去の資料との照合が極めて容易になる。その結果、成形条件、成形担当者、成形材料、成形用金型の構造などの問題点を究明し、事後の品質管理に役立つことは云うまでもない。
【0019】
ゴム印等により、金型のキャビティまたはコア面に成形条件等の情報検索のためのマーキングが簡単にでき、且つ、該キャビティ面、コア面への腐蝕は極めて浅く、容易に消去ができるので金型を殆ど損傷せずに、きめ細かな品質管理が、場合によっては下請け管理が容易になる。
【0020】
成形品に上記の情報照合用マーキングを付したことによって、成形品の長期にわたる品質管理が徹底されているものとして、ユーザーからの信頼が得られることになる。
【0021】
従来、事後管理のために成形直後、インクを使用した押印によりマーキングがなされていたが、このようなインクは経時により、または薬品に触れることにより消失することがあったが、本発明のマーキングは金型からプラスチック成形品への直接的、且つ、形状的な転写であり、前記のような消失は皆無となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る腐蝕によるマーキングを施した金型の実施例を示した斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る腐蝕によるマーキングを施した金型により成形したハウジングの斜視図である。
【符号の説明】
1 金型
2 キャビティ面
3 コア面
4 マーク
5 成形品
6 マーク転写部
Claims (1)
- 文字、数字または識別模様等を刻設した印形に金属腐蝕液を塗布し、この印形をプラスチック成形用金型のキャビティ面またはコア面に押印することにより、該キャビティ面またはコア面に腐食面を現出することを特徴とする金型面へのマーキング方法。
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