JP3750052B2 - シールドマシンにおけるカッタビットの交換方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールドマシンにおけるカッタビットの交換を好適に実施するための交換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シールドマシンによるトンネルの長距離施工では、カッタヘッドの前面に配置されている複数のカッタビットの摩耗・欠損が生じやすいため、施工の途中段階においてこれらカッタビットの交換が必要になる場合が多い。これまでに、複数のカッタビットを一連のカートリッジと見立て、カートリッジごと交換する方法や球体式シールドマシンを利用し、カッタヘッドを切羽側から坑内側に回転させて摩耗・欠損が生じているカッタビットを交換する等の方法が採用されている。しかし、カートリッジ式では交換の必要がないカッタビットも同時に交換されることとなる、カッタヘッドの回転式ではシールドマシン自体がコスト高となる等、デメリットが生じる。このような中、もっとも多く実施されている方法は、切羽を含む広い範囲を地盤改良し、シールドマシンから地山部に位置するカッタヘッド前面に作業員が出て、摩耗・欠損が生じているカッタビットを作業員の手により交換する方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、カッタビットの交換には様々な方法が採用されているが、それぞれ一長一短ある場合が多く、現状でもっとも一般的に用いられている方法で、カッタヘッド前面の地山部において作業員が交換作業を行う方法は効率的であるが、作業員の安全の確保が困難であり、安全確保のために切羽の地盤改良範囲を大きくとる必要がある等、経済的とはいえなかった。
【0004】
本発明は上述する課題を解決するもので、カッタヘッド前面で作業員が交換作業を行う方法において、地盤改良範囲を低減するとともに、作業員が地山部に出るときの安全性を向上させることのできるシールドマシンにおけるカッタビットの交換方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、切羽を地盤改良し、その後カッタヘッドをスキンプレートの前部に設けた貫入リング内に収まるように縮径させ、次いで貫入リングを回転させつつ前進させて前記地盤改良した地盤改良体に貫入させ、貫入リング内の切羽に位置している前記カッタヘッドを坑内側へ後退させて、貫入リング内の切羽とカッタヘッドの間に空間を形成し、この空間を利用してカッタヘッドの前面に設置されているカッタビットの交換を行うことを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1および図2は、本発明に係るシールドマシンの実施形態、および同シールドマシンにおけるカッタビットの交換方法を順を追って示す。図中、符号1はシールドマシン、2は貫入リング、3はカッタヘッド、4はコピーカッタを示している。また、図3は、シールドマシン1の前部に位置するカッタヘッド3の詳細を示すものである。通常のトンネル掘進時には(a)に示すようにコピーカッタ4がシールドマシン1のスキンプレート5と同じ場所に位置しているが、カッタビット9の交換作業時には貫入リング2の内径に収まる位置にまでスキンプレート5の半径方向に伸縮移動している。
【0009】
図4は、切羽12が不安定で切羽崩壊の防止手段を講じる必要が生じた際に、シールド工法毎による切羽崩壊の防止手段を示したものである。
【0010】
本発明のシールドマシン1は、切羽12を掘削するためのカッタヘッド3と、カッタヘッド3を後方から支持するシールド本体6と、シールド本体6に設けられた貫入リング2と、シールド本体6の後方に連なる筒状のスキンプレート5、から構成される。
【0011】
前記スキンプレート5は、カッタヘッド3の後方に円筒状に連なるものであり、カッタヘッド3とスキンプレート5は外径が同一となっている。このスキンプレート5の内側には、セグメントが順次覆工されていく。
【0012】
前記シールド本体6内のスキンプレート5の内側には、押圧ジャッキ(図示しない)が備えられている。この押圧ジャッキは、スキンプレート5の内側に順次覆工されていくセグメントを押圧し、その反力でシールドマシンを掘進させるものである。
【0013】
前記カッタヘッド3は、円盤形状をなし、その前面に配置された切羽12を掘削するカッタビット9と、スキンプレート5の半径方向に伸縮が可能な伸縮ジャッキ7を介してカッタヘッド3の外縁部に設置されてトンネルの外周部を掘削するコピーカッタ4、カッタヘッドを前後方向へスライドさせるカッタヘッドスライド装置26、から構成される。
【0014】
該カッタヘッド3が回転することにより、切羽12と対向する位置に設けられたカッタビット9によって坑を掘進するようになっている。カッタヘッド3の前面には土砂25をシールド本体6内に取り込むための孔(図示省略)が設けられている。
【0015】
トンネル掘削時は、伸縮ジャッキ7が延伸された状態で、コピーカッタ4がスキンプレート5と同位置にあり、スキンプレート5とカッタヘッド3が同断面となっているが、カッタビット9交換時には、伸縮ジャッキ7が収縮されて、コピーカッタ4は前記貫入リング2の内径部に位置し、カッタヘッド3全体が該貫入リング2内に収まるように縮径される。
【0016】
一方、前記カッタヘッド3の回転動力部には、カッタヘッドスライド装置26が設けられている。該カッタヘッドスライド装置26は、該カッタヘッド3全体縮径されて該貫入リング2内に収まる状態時において、該カッタヘッドスライド装置26に設けられたジャッキの伸縮により、該カッタヘッド3をシールド本体6の前面からチャンバー11aの間でシールド本体6の前後方向に移動させるものである。
【0017】
前記貫入リング2は、切羽12の切削を補助する切削用補助リング18と、該切削用補助リング18をシールドマシン1から前方に押し出す押し出しリング19、とからなり、これらが断面鉤型に組み合わさって貫入リング2を構成している。該貫入リング2は、スキンプレート5の前部に配置され、前端に切羽12を切削する貫入用カッタビット17を有するとともに、前記スキンプレート5に対して回転可能、かつ前後方向への移動可能となっている。
【0018】
スキンプレート5の内周面には、貫入リング2を格納するリング室15が設けられて、通常のトンネル掘削時では、前記貫入リング2は該リング室15に格納されている。該リング室15の出入り口部には、リング室内15に土砂25が入り込まないように、出入り口の隙間を覆う土砂シール21が取り付けられている。
【0019】
また、該貫入リング2の内周面、詳しくは切削用補助リング18の内周面において、シールドマシン1の回転軸方向に数本の嵌合溝8が設けられており、貫入リング2内に収まるように縮径された前記カッタヘッド3のコピーカッタ4を該嵌合溝8に嵌合することにより、カッタヘッド3が回転すると、貫入リング2も連動して回転するよう構成されている。ただし、該貫入リング2が前記シールドマシン1の前後方向に移動する際には、コピーカッタ4は定位置のままで貫入リング2のみが該嵌合溝8をスライドして、単独で前後に移動することとなる。
【0020】
さらに、該貫入リング2をシールドマシン1から押し出す押出し手段は、貫入リング2の一部を構成している前記押し出しリング19の後部で、リング室15の外側に設置されている押し出し用ロッド20と、押し出し用ロッド20を介して押し出しリング19をシールドマシン1の前後方向へスライドさせる、スキンプレート5の内周面で回転軸方向に固定されたリングスライドジャッキ16、から構成されている。
【0021】
次に、上記構成のシールドマシン1を設けたトンネルの施工方法を説明する。まず、シールドマシン1の前進方向で地盤改良を実施する範囲を決定し、地盤改良の実施個所とシールドマシン1の躯体前面との間に薬液注入を行う際のバルクヘッド14を設けた後、薬液柱入管をカッタヘッド3の前面で土砂25をシールド本体6内に取り込むための孔(図示省略)から地盤改良の実施個所に差し込み、薬液注入による地盤改良を行う(図1(a))。
【0022】
前記薬液注入管13を取り除いて地盤改良体10までシールドマシン1により掘進し、シールドマシン1が地盤改良体10に達した時点で掘進を停止する(図1(b))。前記カッタヘッド3の外縁部に設置されているコピーカッタ4の伸縮ジャッキを縮小させ、コピーカッタ4の設置位置をスキンプレート5から前記貫入リング2の内径部へ伸縮移動させる。前記貫入リング2を切羽12方向へ一定距離押し出し、前記貫入リング2の内径部に設けられている嵌合溝8へ前記コピーカッタ4を嵌合させた後(図1(b))、前記カッタヘッド3を回転させて貫入リング2を回転させるとともに、リングスライドジャッキ16を延伸させて貫入リング2を切羽方向に押し出しながら、地盤改良体10を切削する。
【0023】
リングスライドジャッキ16は延伸することにより、前記押し出し用ロッド20がリング室15内に格納されている前記押し出しリング19を切羽12側に押し出して、前記貫入リング2全体をスキンプレート5より前方に突出させる(図1(c))。
【0024】
ある一定距離で切削を停止した後、地盤改良体10内に押し込まれている前記貫入リング2の周囲に対して、貫入リング2を構成する前記押し出しリング19にあらかじめ取り付けられた、図示しない止水材注入管を用いて止水材を注入した後、止水状況を確認する。
【0025】
止水状況を確認した後、カッタヘッドスライド装置26を短縮させて、切羽12に位置しているカッタヘッド3を貫入リング2の前記嵌合溝8にスライドさせながらシールドマシン1の躯体内に後退させ、該貫入リング2内において切羽12とカッタヘッド3の間に空間11を設ける(図2(e))。作業員はシールドマシン1の躯体内より該貫入リング2内の空間11、ないしシールドマシン1のチャンバー11aの中に出てカッタヘッド3の前面に設置されているカッタビット9の摩耗・欠損状況を確認するとともに、劣化が認められるカッタビット9について、交換作業を行う。
【0026】
このとき、切羽12の安定に問題がない場合には、地盤改良のみで前記貫入リング2を用いてカッタビット9の交換作業を行うが、切羽12が安定しない場合にはカッタビット9の交換作業用に切羽12と前記カッタヘッド3の間にあけた空間11に圧気22を供給し、図4(a)に示すように切羽12に圧気22による圧力をかける。もしくは図4(d)に示すように前記カッタヘッド3のカッタスリット(図示しない)から山止めジャッキ23を出す等の措置を行い、切羽12を安定させる。
【0027】
本発明は、機械堀式シールドの場合に適用したが、泥水加圧式、土圧式のいずれの場合のシールド工法においても採用することが可能である。ただし、切羽12が安定しないような現場においては、その安定措置の方法が異なる。
【0028】
各シールド工法における切羽12の安定措置としては、工法が泥水加圧式の場合には、図4(b)に示すように、カッタビット9の交換作業用に切羽12と前記カッタヘッド3の間にあけた空間11に対して、下半に泥水24を張るが、状況に応じてさらに圧気22を施す措置を執る。さらに土圧式の場合には、図4(c)に示すようにカッタビット9の交換作業用に切羽12と前記カッタヘッド3の間にあけた空間11に対して、下半に土砂25を残す、また状況に応じてさらに圧気22を施す等の補助工法を採用する。
【0029】
以上の手順により前記カッタヘッド3に配置されたカッタビット9の交換が終了次第、該カッタヘッド3を切羽12まで前進させるとともに、該貫入リング2を回転後退させながらシールドマシン1の躯体内に設けられたリング室15に収める。前記コピーカッタ4がシールドマシン1のスキンプレート5と同径になるよう、前記伸縮ジャッキ7を延伸移動させた後、掘進作業を再開する(図2(f)(g))。
【0030】
上述の構成によれば、従来のシールドマシン1に対して、前記貫入リング2、前記カッタヘッドスライド装置26、および前記コピーカッタ4を装備すれば良く、前記貫入リング2の回転動力についても、前記嵌合溝8に嵌合された状態の縮径されたカッタヘッド3を回転させることによって、貫入リング2を回転させることが可能であり、新たなモータも必要ないことから、簡略な構造で安全で確実なカッタビット9の交換作業を実施することができる。
【0031】
前記貫入リング2内で切羽12とカッタヘッド3の間にできる空間11を作業空間として、カッタヘッド3の前面に設置されているカッタビット9の交換作業を行うことが可能なため、地盤改良範囲を広くとる必要がなく経済的であるとともに、直に地山部に出て作業をする必要がなく、安全性が向上する。
【0032】
前記カッタビット9の交換作業は、必要に応じて上述した手順を繰り返し実施すれば良く、実施回数に制限がないため、本発明のシールドマシン1は長距離トンネルの施工に適した構造である。
【0033】
前記カッタビット9の交換について、現況を目視により確認しながら点検作業が行うことができるとともに、劣化したカッタビット9のみの交換が実施できることから、作業効率の良いメンテナンスが実現できることとなる。
【0034】
切羽12の地盤改良について、路上ないしトンネル坑内から行うが、その手法は薬液注入工法、噴射攪拌工法、凍結工法といった従来工法とすることにより、施工方法が簡便でカッタビットの交換作業に係る負担が少ない。
【0035】
【発明の効果】
請求項1のシールドマシンにおけるカッタビットの交換方法によれば、切羽を地盤改良し、その後カッタヘッドをスキンプレートの前部に設けた貫入リング内に収まるように縮径させ、次いで貫入リングを回転させつつ前進させて前記地盤改良した地盤改良体に貫入させ、貫入リング内の切羽に位置している前記カッタヘッドを坑内側へ後退させて、貫入リング内の切羽とカッタヘッドの間に空間を形成し、この空間を利用してカッタビットの交換を行うことから、カッタビットの交換作業実施のための地盤改良範囲を低減することが可能であるとともに、目視確認の後に劣化したカッタビットのみを交換することができ、かつカッタヘッド前面のあらゆるカッタビットを交換することが可能となる。さらには、カッタビット交換の際には同じ作業を繰り返し実施すれば良く、交換作業の回数に制限がないため、長距離トンネル施工への採用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るシールドマシンにおけるカッタビットの交換方法を示す手順図である。
【図2】 本発明に係るシールドマシンにおけるカッタビットの交換方法を示す手順図である(図1の続き)。
【図3】 本発明に係るシールドマシンのカッタヘッドを示す詳細図である。
【図4】 本発明に係るシールド工法毎の切羽崩壊防止工法を示す詳細図である。
【符号の説明】
1 シールドマシン
2 貫入リング
3 カッタヘッド
4 コピーカッタ
5 スキンプレート
6 シールド本体
7 伸縮ジャッキ
8 嵌合溝
9 カッタビット

Claims (1)

  1. 切羽を地盤改良し、その後カッタヘッドをスキンプレートの前部に設けた貫入リング内に収まるように縮径させ、次いで貫入リングを回転させつつ前進させて前記地盤改良した地盤改良体に貫入させ、貫入リング内の切羽に位置している前記カッタヘッドを坑内側へ後退させて、貫入リング内の切羽とカッタヘッドの間に空間を形成し、この空間を利用してカッタヘッドの前面に設置されているカッタビットの交換を行うことを特徴とするシールドマシンにおけるカッタビットの交換方法。
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