JP3750048B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

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Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷凍、空調用の冷媒圧縮機、空気やその他のガス圧縮機に係り、油上り低減に好適なスクロール圧縮機に関する。
【０００２】
【従来の技術】
先願に係る特願平１０−３４１２２２号には、圧縮機部のフレーム外側にガス流体の吐出室のある上部空間と吐出管を取付けた中部空間とを連通するフレーム外周通路を、また、電動機部のステータ外側に中部空間と底部に油溜りを有する下部空間とを連通する固定子外周通路を設け、密閉容器の内壁面とコイルエンドの外周面との間に形成される環状空間部位に両通路を互いに接続する断面コ字状のガス案内通路枠を取付け配置し、ガス案内通路枠の側面部であってコイルエンド上端面より低い位置に密閉容器内壁周方向出口を開口させ、該出口に対面して少なくとも一枚の衝突板を設けると共に、該衝突板の上端部に中部空間へのガス流体の流れを阻止する整流板を設け、固定子外周通路方向出口は、流路断面を絞って形成したもの（以下「先行例」という）が示されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
前記先行例における油を分離するガス案内通路枠の固定子外周通路方向出口は、ガス案内通路枠の底板と密閉容器内壁との間の隙間で形成され、その隙間幅は底板の両端まで一定であった。また、ガス案内通路枠が、密閉容器に当接する部分は、ガス案内通路枠両側の鍔部のみであった。ガス案内通路枠は、密閉容器内壁にガス案内通路枠の鍔部を押し付けて、溶接接合される。この取付けの際に、強く押し付けるとガス案内通路枠両側の鍔部が広がるように変形し、底板と密閉容器内壁で形成する固定子外周通路方向出口の隙間が狭くなり、開口面積が小さくなる恐れがあった。また押し付け力が小さ過ぎると、ガス案内通路枠と密閉容器の鍔部の密着が悪くなり固定子外周通路方向出口の隙間が広くなって開口面積が大きくなる恐れがあった。このように、取り付け時の押し付け力の調整が困難であるとともに、固定子外周通路方向出口の開口面積が所定値にならないため、油上り量も不安定であるという問題があった。
【０００４】
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題点を解決し、油上り低減と電動機冷却とを両立させた信頼性の高いスクロール圧縮機を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によるスクロール圧縮機は、特許請求の範囲の各請求項に記載されたところを特徴とするものであるが、特に独立項としての請求項１に係る発明によるスクロール圧縮機は、密閉容器の内部に、固定スクロール、旋回スクロール及びフレームを組合せてなる圧縮機部と、コイルエンドを有する固定子及び回転子からなる電動機部とを収納配設し、前記圧縮機部のフレーム外側に、圧縮ガス流体が吐出される密閉容器内上部空間とガス流体の吐出管を取付けた電動機上側の密閉容器内中部空間とを連通するフレーム外周通路を備えると共に、前記電動機部の固定子外側に、前記密閉容器内中部空間と底部に油溜りを有する電動機下側の密閉容器内下部空間とを連通し、１本は前記フレーム外周通路に対面する複数本の固定子外周通路を備え、前記密閉容器内壁に対する溶接取付け用の両側鍔部、両側面部、正面部及び密閉容器内壁との間における一定巾隙間としての固定子外周通路方向出口を有する底板により構成される断面コ字状ガス案内通路枠を前記フレーム外周通路とこれに対面する前記固定子外周通路を互いに接続するように、前記密閉容器の内壁面と、前記電動機部上側コイルエンドの外周面との間に形成される環状空間部位において前記密閉容器内壁に溶接取付けしてなるスクロール圧縮機において、前記ガス案内通路枠の前記側面部において前記コイルエンド上端面より低い位置に前記密閉容器内壁周方向出口を開口させ、前記密閉容器内壁周方向出口に対面して該周方向出口と高さを同じくする少なくとも一枚の衝突板を設けると共に、該衝突板の上端部に前記中部空間へのガス流体の流れを阻止する整流板を設け、さらに、前記ガス案内通路枠に、前記固定子外周通路方向出口の開口面積がほぼ所定値になるようにするための位置決め手段を設け、該位置決め手段は、前記ガス案内通路枠を前記密閉容器内壁に溶接取付けするに当り、前記固定子外周通路方向出口の周方向両端の位置において前記密閉容器内壁に当接するように設けられている前記ガス案内通路枠底板の一部をなす突出部であることを特徴とするものである。
【０００６】
【作用】
ガス案内通路枠の底板両端に密閉容器内壁に当接する突出部を設けることにより、ガス案内通路枠を強く押し付けても底板両端の突出部が密閉容器内壁面に当接するため固定子外周通路方向出口の隙間が狭くなることがなく、またガス案内通路枠を密閉容器に強く押し当てられるので鍔部の密着も良くなり固定子外周通路方向出口の開口面積のばらつきが少ない安定した製造が可能となり、油上り量のばらつきも小さくすることができる。なお、底板両端の突出部は密閉容器内壁面に対し直角にあたるため作用力は材料の座屈方向であり変形しにくい。
【０００７】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のスクロール圧縮機の実施例について説明する。
【０００８】
図１は、スクロール圧縮機の縦断面図である。密閉容器７内には、上方の圧縮機部１０と下方の電動機部６とを回転軸３を介して連結した電動スクロール圧縮機が配設されている。したがって、圧縮機部１０と電動機部６とにより、密閉容器７内は、圧縮機部１０より上の上部空間７０４と、圧縮機部１０と電動機部６との間の中部空間７０５と、電動機部６より下の下部空間７０６との三つの空間に分割される。
【０００９】
圧縮機部１０では、台板１０１に渦巻き状のラップ１０２を直立した固定スクロール１と、台板２０１に渦巻き状のラップ２０２を直立した旋回スクロール２を、ラップ１０２, ２０２を互いに噛み合わせて圧縮機構が形成され、固定スクロール１には吸入口１０３、吐出口１０４が設けられている。
【００１０】
上記回転軸３は、フレーム４の軸受４０１および４０２に支持され、先端にはクランクピン３０１を備え、該クランクピン３０１は旋回スクロール２の台板２０１の下方に突設したボス２０３に挿入されて、旋回スクロール２に係合されている。旋回スクロール２の背面には、オルダム継手５が配設されている。該オルダム継手５は、旋回スクロール２を固定スクロール１に対し自転することなく旋回運動させる、自転防止機構としての役割を担っている。
【００１１】
電動機部６は、回転軸３を嵌合して固定した回転子６０８と、回転子６０８を取り囲む固定子６０７とを有する。
【００１２】
フレーム４には、フレーム外周通路４０３が設けられており、フレーム外周通路４０３の直下の中部空間７０５には、密閉容器の内壁面と電動機部上側コイルエンドの外周面との間に形成される環状空間部位に、ガス案内通路枠８が設けられている。
【００１３】
図２にガス案内通路枠８の斜視図を示す。ガス案内通路枠８には、固定子外周通路方向出口８０１ａと突出部８０１ｂを有する底板８０１、密閉容器内壁周方向出口８０２ａを有する側面部８０２、該両側側面部８０２と底板８０１とを覆う正面部８０３、密閉容器内壁周方向出口８０２ａに対面する衝突板８０５、該衝突板８０５の上面を覆う整流板８０６及び側面部８０２から密閉容器内壁周方向に沿って延びる鍔部８０４が設けられている。
【００１４】
図３に、ガス案内通路枠８と電動機部６の固定子外周通路６０１との位置関係を示す。図３は、電動機部６を上部から見た図である。電動機の固定子６０７には、ガス案内通路枠８の直下に電動機の固定子外周通路６０１ａが、他にガス案内通路枠８の直下以外に複数個の通路６０１ｂが設置されている。
【００１５】
図１において、圧縮機の作動について説明する。圧縮機部１０は、電動機部６に連結した回転軸３の回転によりクランクピン３０１が偏心回転すると、旋回スクロール２がオルダム継手５の自転防止機構により固定スクロール１に対し自転せずに旋回運動を行い、ガス流体を吸入管７０１及び吸入口１０３を介してスクロールラップ１０２および２０２で形成される密閉室に、吸入する。上記旋回運動により、密閉室は中央部へ移動しながら容積を減少してガス流体を圧縮し、圧縮ガス流体を吐出口１０４より密閉容器７内に吐出する。
【００１６】
背圧室４０４は、圧縮途中の密閉室と背圧穴２０４を介して連通しており、吸入圧力と吐出圧力の中間の圧力に保たれている。圧縮機部１０の軸受４０１, ４０２には、吐出圧力に等しい密閉容器７内の圧力と、背圧室４０４の圧力と、の差圧で、油溜り７０３の油が給油される。背圧室４０４に到達した油は、背圧穴２０４を介して密閉室に流入する。流入した油は、ガス流体とともに吐出口１０４より再び上部空間７０４に吐出される。
【００１７】
吐出されたガス流体と油は、フレーム４に設けられた溝状のフレーム外周通路４０３を通り、ガス案内通路枠８に導かれる。ガス流体と油の一部は、図２に示した密閉容器内壁周方向出口８０２ａから出て、中部空間７０５の密閉容器７内壁に沿って、電動機の回転方向に吐出される。油滴は、密閉容器内壁周方向出口８０２ａを出るとすぐに衝突板８０５に衝突することで大きくなり、密閉容器７内壁に遠心力で付着しながら流れることで、ガス流体と分離される。
【００１８】
分離された油は、固定子外周通路６０１ｂから下へ落下し、下部空間７０６に滴下し、油溜り７０３へ戻る。ガス流体は、吐出管７０２から圧縮機外へ放出される。
【００１９】
一方、ガス案内通路枠８に入ったガス流体と油の残りは、固定子外周通路方向出口８０１ａから出て、固定子外周通路６０１ａに流れ下部空間７０６へ流入し、油は油溜り７０３に戻る。ガス流体は、電動機を冷却しながらガス案内通路枠８直下以外の固定子外周通路６０１ｂ及び回転子と固定子の隙間（以後、エアギャップと称する。）６０５を通って上昇する。
【００２０】
固定子外周通路６０１ｂを上昇するガス流体の流量は、油の下降流を阻害しない程度に微量に抑える必要がある。この流量設定は、固定子外周通路方向出口８０１ａの開口面積で決まる。上昇したガス流体は中部空間７０５に到達し、吐出管７０２から圧縮機外へ放出される。
【００２１】
図４に、ガス案内通路枠８の固定子外周通路方向出口８０１ａの拡大図を示す。ガス案内通路枠８は、鍔部８０４を密閉容器７の内壁に密着して溶接にて固定されている。固定子外周通路方向出口８０１ａは、底板８０１と密閉容器内壁とで形成される隙間である。
【００２２】
固定子外周通路方向出口８０１ａの周方向の両端で、底板８０１の一部に位置決め手段として突出部８０１ｂが設けられており、密閉容器内壁に当接している。取付け時は、ガス案内通路枠８に矢印の力が作用するが突出部８０１ｂが密閉容器内壁に当接すると、該突出部８０１ｂが支えとなって位置決めができるので、固定子外周通路方向出口８０１ａの開口面積が小さくなることなしにほぼ所定値に取り付けられる。
【００２３】
従来は突出部８０１ｂがないため、溶接取付け時に押付ける力が適正であれば図５（Ａ）に示すようになるが、溶接取付け時に押付ける力が強いと、図５（Ｂ）に示すようにガス案内通路枠８が変形し、固定子外周通路方向出口８０１ａの開口面積が小さくなることがあった。また、逆に溶接取付け時の押付ける力が弱いと、適正時の図６（Ａ）に対し図６（Ｂ）に示すように鍔部８０４と密閉容器の密着が悪くなるとともに固定子外周通路方向出口８０１ａの開口面積が大きくなることがあった。
【００２４】
開口面積が小さい場合には、電動機の冷却が不充分となる。開口面積が大きい場合には固定子外周通路６０１ｂからの上昇ガス流量が多くなり、油の下降を阻害し再飛散させるため、油上り量を悪化させる。本発明では、開口面積を所定値に設定できるので、品質の安定したスクロール圧縮機が提供可能となる。
【００２５】
【発明の効果】
本発明によれば、油上り低減と電動機の冷却とを両立させた信頼性の高いスクロール圧縮機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施例であり、スクロール圧縮機の縦断面図を示す。
【図２】本発明の実施例であり、ガス案内通路枠の斜視図を示す。
【図３】本発明の実施例であり、ガス案内通路枠と電動機の位置関係を示す。
【図４】本発明の実施例であり、ガス案内通路枠の固定子外周通路方向出口部の拡大図を示す。
【図５】従来実施例のガス案内通路枠の固定子外周通路方向出口部の拡大図を示す。
【図６】従来実施例のガス案内通路枠の固定子外周通路方向出口部の拡大図を示す。
【符号の説明】
１…固定スクロール
１０１…台板
１０２…ラップ
１０３…吸入口
１０４…吐出口
２…旋回スクロール
２０１…台板
２０２…ラップ
２０３…ボス
２０４…背圧穴
３…回転軸
３０１…クランクピン
４…フレーム
４０１…軸受
４０２…軸受
４０３…フレーム外周通路
４０４…背圧室
５…オルダム継手
６…電動機部
６０１…固定子外周通路
６０２…固定子コイル
６０５…エアギャップ
６０７…固定子
６０８…回転子
７…密閉容器
７０１…吸入管
７０２…吐出管
７０３…油溜り
７０４…上部空間
７０５…中部空間
７０６…下部空間
８…ガス案内通路枠
８０１…底板
８０１ａ…固定子外周通路方向出口
８０１ｂ…突出部
８０２…側面部
８０２ａ…密閉容器内壁周方向出口
８０３…正面部
８０４…鍔部
８０５…衝突板
８０６…整流板
１０…圧縮機部

Claims (1)

  1. 密閉容器の内部に、固定スクロール、旋回スクロール及びフレームを組合せてなる圧縮機部と、コイルエンドを有する固定子及び回転子からなる電動機部とを収納配設し、前記圧縮機部のフレーム外側に、圧縮ガス流体が吐出される密閉容器内上部空間とガス流体の吐出管を取付けた電動機上側の密閉容器内中部空間とを連通するフレーム外周通路を備えると共に、前記電動機部の固定子外側に、前記密閉容器内中部空間と底部に油溜りを有する電動機下側の密閉容器内下部空間とを連通し、１本は前記フレーム外周通路に対面する複数本の固定子外周通路を備え、前記密閉容器内壁に対する溶接取付け用の両側鍔部、両側面部、正面部及び密閉容器内壁との間における一定巾隙間としての固定子外周通路方向出口を有する底板により構成される断面コ字状ガス案内通路枠を前記フレーム外周通路とこれに対面する前記固定子外周通路を互いに接続するように、前記密閉容器の内壁面と、前記電動機部上側コイルエンドの外周面との間に形成される環状空間部位において前記密閉容器内壁に溶接取付けしてなるスクロール圧縮機において、
    前記ガス案内通路枠の前記側面部において前記コイルエンド上端面より低い位置に前記密閉容器内壁周方向出口を開口させ、前記密閉容器内壁周方向出口に対面して該周方向出口と高さを同じくする少なくとも一枚の衝突板を設けると共に、該衝突板の上端部に前記中部空間へのガス流体の流れを阻止する整流板を設け、さらに、前記ガス案内通路枠に、前記固定子外周通路方向出口の開口面積がほぼ所定値になるようにするための位置決め手段を設け、該位置決め手段は、前記ガス案内通路枠を前記密閉容器内壁に溶接取付けするに当り、前記固定子外周通路方向出口の周方向両端の位置において前記密閉容器内壁に当接するように設けられている前記ガス案内通路枠底板の一部をなす突出部であることを特徴とするスクロール圧縮機。
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