JP3749938B2 - 一方向クラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内輪もしくは軸と外輪との間に配置された複数のトルク伝達部材の楔作用を利用した一方向クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のトランスミッション等に用いられる一方向クラッチにおいては、一般に、内輪もしくは軸(以下、内輪等と称する)の外周面と、外輪の内周面との間に形成される環状空間内に、ローラやスプラグ等からなる複数のトルク伝達部材が配置され、その各トルク伝達部材が内輪等と外輪との間で楔作用によって噛み込むことにより、内輪等と外輪との間の一方向への相対回転時にはロックしてそのトルクを伝達し、他方への回転時には空転するように構成されている。
【0003】
このような一方向クラッチにおいては、内輪等と外輪の軸心を常に一致させ、これらの間の環状空間の径方向寸法(Jスペースと称される)を周方向に一様に適正に保つ必要がある。このJスペースを適正に保つために、従来、環状空間内に複数のブロックベアリング(センタリングブロックとも称される)をトルク伝達部材と交互に配置して、これらを内輪等と外輪のいずれか一方に対して周方向に支持し、他方に対しては摺動接触させることで、内輪等と外輪とのセンタリングを行う構成が、特にトルク伝達部材としてローラを用いた一方向クラッチにおいて多用されている。
【0004】
このようなブロックベアリングの支持方法としては、従来、図5(A)または(B)にそれぞれ要部断面図を示すような方法が一般に採用されている。図5(A)に示す方法は、ブロックベアリング101の形状を、両側面にそれぞれ段部101aを設けた略T字形状とするとともに、外輪102の内周面に溝102aを形成して、ブロックベアリング101の段部101aよりも上方部分をその溝102a内に挿入して周方向への支持を行う。また、保持器103にポケット103aを設けて、そのポケット103aの周方向寸法をブロックベアリング101の段部101aより上方部分の周方向寸法Aよりも小さくし、そのポケット103a内にブロックベアリング101の段部101aよりも下方部分を挿入することにより、ブロックベアリング101を径方向に支持している。
【0005】
また、図5(B)に示す支持方法においては、ブロックベアリング101の形状を、上記と同様に、両側面にそれぞれ段部101aを設けた略T字形とするとともに、保持器103には、その段部101aよりも上方部分におけるブロックベアリング101の周方向寸法Aよりも周方向寸法が小さいポケット103aを設けて、この保持器103によってブロックベアリング101を周方向および径方向に支持している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上のような従来のブロックベアリングを用いた一方向クラッチにおいては、いずれも、ブロックベアリング101の両側面に支持用の段部101aを設ける必要があるため、その段差の分だけ周方向への最大寸法Aが大きくなってしまう。このブロックベアリング101の周方向最大寸法Aの増大は、内輪等と外輪間に形成される環状空間に配置し得るブロックベアリングおよびトルク伝達部材の個数が制約される結果に繋がり、設計の自由度が制限されるという問題がある。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、従来のブロックベアリングに比してその周方向寸法を短くすることができ、もって環状空間内に配置可能なブロックベアリングおよびトルク伝達部材の数を増大させることができ、設計の自由度を向上させることのできる一方向クラッチの提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の一方向クラッチは、内輪もしくは軸の外周面と外輪内周面との間に形成される環状空間内に、内輪もしくは軸と外輪間で楔作用により噛み込んでトルクを伝達する複数のトルク伝達部材と、その各トルク伝達部材を一方向へ付勢するバネ部材と、上記各トルク伝達部材を当該環状空間内で周方向一定の間隔で保持する保持器と、内輪もしくは軸の外周面と外輪内周面間の径方向寸法を一定に保つための複数のブロックベアリングが設けられてなる一方向クラッチにおいて、上記各ブロックベアンリングの内輪もしくは軸の外周面との対向面に凹部が形成されているとともに、上記保持器は、軸方向両端部に配置される2枚のリング状の板状部材で構成され、その一方の板状部材に一体的に形成された支持片が上記ブロックベアリングの凹部内に挿入された後、その支持片の先端は他方の板状部材を抱き込むように外側に屈曲して2枚の板状部材が相互に一体化されていることによって特徴づけられる。
【0009】
本発明は、保持器によるブロックベアリングの径方向への支持を、側面に設けた段部で行うのではなく、内輪もしくは軸の外周面に対向する面に設けた凹部において行うことにより、所期の目的を達成しようとするものである。
【0010】
すなわち、本発明においては、ブロックベアリングは、その内輪もしくは軸の外周面に対向する面に設けられた凹部内に、保持器に一体的に形成された支持片を挿入することによって、保持器に対して径方向に支持される。そして、保持器は、2枚のリング状の板状部材によって構成し、その一方の板状部材に上記の支持片を一体に形成し、この支持片はブロックベアリングの凹部に挿入された後、その先端が他方の板状部材を抱き込むように外側に屈曲して2枚の板状部材を相互に一体化した構造を採用することで、一方の板状部材に一体に形成された支持片は、その先端が他方の板状部材に対して実質的に拘束ないしは保持された状態でブロックベアリングの凹部内に挿入されてこれを確実に支持することができる。この構成によれば、ブロックベアリングの両側面を平坦とすることができ、その周方向最大寸法を従来に比して短縮化することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の形態の正面図であり、図2はその要部拡大図である。また、ず3は図2のA−A拡大断面図であり、図4は同じく図2のB−B拡大断面図である。なお、これらの図においては、外輪1とともに環状空間3を形成する内輪もしくは軸についてはそれ自体の図示は省略し、その外周面2のみを想像線によって示している。
【0012】
外輪1の内周面と、内輪もしくは軸の外周面2の間に形成される環状空間3内に、トルク伝達部材としての複数のローラ4と、それと同数のブロックベアリング5、およびこれらを保持する保持器6が配置されている。各ローラ4とブロックベアリング5は、それぞれ保持器6に設けられたローラ用ポケット61およびブロックベアリング用ポケット62内に収容された状態で、環状空間3内にそれぞれが一定のピッチで、かつ、ローラ4とブロックベアリング5とが交互に配置されている。
【0013】
外輪1の内周面には、各ローラ4に対応して複数のカム面11が形成されており、この各カム面11の形状は、周方向一方側に向かうほど内輪もしくは軸の外周面2との間が狭くなる形状を有している。そして、各ローラ用ポケット61内に収容された各ローラ4は、保持器6に一端側が固着されたバネ7によって、カム面11と内輪もしくは軸の外周面2との間の狭い空間側、つまり楔作用を発揮する向きに付勢されている。この構成により、外輪1に対して内輪もしくは軸が図1中αで示す向きに相対的に回転しようとする際には、各ローラ4が外輪1に対して同方向、つまり狭い空間側に移動するため、楔作用によって内輪もしくは軸はロック状態となり、その逆方向に回転しようとする際には、各ローラは広い空間側に移動するため、内輪もしくは軸は空転する。
【0014】
さて、ブロックベアリング5は、軽量化のために全体として中空の略角柱形状を有し、その内輪もしくは軸の外周面との対向面は、当該内輪もしくは軸の外周面に対する摺動接触面51を形成しているとともに、その摺動接触面51の周方向中央部分に、軸方向に沿った一様な幅および深さを有する凹部52が形成されている。この各ブロックベアリング5は、外輪1の内周面に各カム面11と交互に形成された溝12内にその一部が挿入されることによって、外輪1に対する周方向への移動が規制された状態となって周方向に支持されている。
【0015】
また、保持器6は、それぞれが全体としてリング状をした金属製の第1および第2の板状部材6aおよび6bによって構成されており、正面側の第1の板状部材6aは略一様に平板状であって、裏面側の第2の板状部材6bは、ローラ用ポケット61およびブロックベアリング用ポケット62の形成部位以外の部位において、その内側の端縁部が正面側に直角に屈曲しているとともに、各ローラ用ポケット61の一端側には、その屈曲部分が更に外輪1側に屈曲してなる立ち上がり部61bが形成されており、この立ち上がり部61bに前記したバネ7の一端が取り付けられている。そして、この裏面側の第2の板状部材6bのブロックベアリング用ポケット62の形成部位における内側の端縁部の周方向略中央部には、正面側に直角に屈曲してブロックベアリング5の凹部52内に挿入されて正面側に至る支持片62bが一体形成されている。この支持片62bは、ブロックベアリング5の凹部52を経た後に、正面側の第1の板状部材6aの内側端縁部に形成させれた切欠部61aに挿入されて、この第1の板状部材6aを抱き込んだ状態で更に外輪1側に屈曲して、第1および第2の板状部材6aおよび6bを相互に一体化している。
【0016】
以上の構成により、各ブロックベアリング5は、内輪もしくは軸の外周面2に対向する面の周方向中央部に形成された凹部52内に、保持器6に一体形成された支持片62bが挿入されることによって径方向に支持されているとともに、外輪1の内周面に形成された溝12内に部分的に挿入されることによって周方向に支持されることになる。
【0017】
ここで、各ブロックベアリング5の凹部52の深さは、保持器6の支持片62bの肉厚よりも大であり、また、支持片62bは凹部52の表面に密着した状態で当該凹部52に挿入されているため、各ブロックベアリング5の内輪もしくは軸の外周面2との摺動接触面51にはその中央部分に空隙Gが形成されることになる。
【0018】
以上の本発明の実施の形態において特に注目すべき点は、各ブロックベアリング5が、その内輪もしくは軸の外周面2に対向する面の周方向中央部に形成された凹部52に保持器6に一体形成された支持片62bを挿入することによって径方向に支持されている点と、その凹部52の存在により、各ブロックベアリング5の内輪もしくは軸の外周面2との摺動接触面51の中央部分に空隙Gが形成される点であり、これにより、従来のブロックベアリングのように両側面に段部を形成する必要がなくなり、その周方向最大寸法を短縮化することができると同時に、摺動接触面51の中央部の空隙Gが油溜まりとして機能し、その摺動接触面51と内輪もしくは軸の外周面2との間の潤滑性能を従来に比して大幅に向上させることができる。
【0019】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、内輪もしくは軸の外周面と外輪の内周面との間の環状空間内に、複数のトルク伝達部材とともに複数のブロックベアリングを配置するとともに、そのブロックベアリングには、内輪もしくは軸の外周面との対向面に凹部を設け、その凹部に保持器に一体的に形成された支持片を挿入することによって各ブロックベアリングを径方向に支持しているので、各ブロックベアリングをその両側面のそれそれに設けた段部において警報項に支持する従来の一方向クラッチに比して、各ブロックベアリングの周方向最大寸法を短くすることができる結果、環状空間内に挿入可能なブロックベアリングおよびトルク伝達部材の数を増大させることが可能となって、設計の自由度を向上させることができるとともに、ブロックベアリング数を従来と同数とした場合においても、材料費の節約に寄与することができる。しかも、保持器は2枚のリング状の板状部材で構成し、一方の板状部材に一体に形成された支持片を、ブロックベアリングに形成された凹部に挿入した後、その先端が他方の板状部材を抱き込むように外側に屈曲して2枚の板状部材を相互に一体化した構成を採用しているため、支持片の先端は他方の板状部材により実質的に拘束・保持された状態でブロックベアリングを支持することになるため、その支持を確実なものとすることができる。
【0020】
また、ブロックベアリングの内輪もしくは軸との対向面に形成された凹部は、内輪もしくは軸の外周面その摺動接触面において油溜まりとしても機能させることが可能であり、潤滑性能の向上にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の正面図である。
【図2】 図1の要部拡大図である。
【図3】 図2のA−A拡大断面図である。
【図4】 図2のB−B拡大断面図である。
【図5】 従来の一方向クラッチにおけるブロックベアリングの支持方法の説明図で、(A)は、ブロックベアリング101を外輪102により周方向に支持し、保持器103により径方向に支持する例を示す図であり、(B)はブロックベアリング101を保持器103により周方向および径方向に支持する例を示す図である。
【符号の説明】
1 外輪
11 カム面
12 溝
2 内輪もしくは軸の外周面
3 環状空間
4 ローラ
5 ブロックベアリング
51 摺動接触面
52 凹部
6 保持器
61 ローラ用ポケット
62 ブロックベアリング用ポケット
6a 第1の板状部材
61a 切欠部
6b 第2の板状部材
61b 立ち上がり部
62b 支持片
7 バネ
Claims (1)
- 内輪もしくは軸の外周面と外輪内周面との間に形成される環状空間内に、内輪もしくは軸と外輪間で楔作用により噛み込んでトルクを伝達する複数のトルク伝達部材と、その各トルク伝達部材を一方向へ付勢するバネ部材と、上記各トルク伝達部材を当該環状空間内で周方向一定の間隔で保持する保持器と、内輪もしくは軸の外周面と外輪内周面間の径方向寸法を一定に保つための複数のブロックベアリングが設けられてなる一方向クラッチにおいて、
上記各ブロックベアンリングの内輪もしくは軸の外周面との対向面に凹部が形成されているとともに、上記保持器は、軸方向両端部に配置される2枚のリング状の板状部材で構成され、その一方の板状部材に一体的に形成された支持片が上記ブロックベアリングの凹部内に挿入された後、その支持片の先端は他方の板状部材を抱き込むように外側に屈曲して2枚の板状部材が相互に一体化されていることを特徴とする一方向クラッチ。
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