JP3749927B2 - エアゾール装置のノズル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はエアゾール装置のノズルに関する。さらに詳しくは、薬液などを空中に飛散させず、対象物の狭い範囲にのみ適用することができるノズルに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にエアゾール装置は図8に示すように耐圧性の容器51と、その容器51の上端に取り付けられたエアゾールバルブ(以下、バルブという)52とを有する。容器51内には薬効成分を含有する原液と、その原液を噴出させるために容器内に圧力を与える噴射剤(たとえば液化石油ガス(LPG)など)とを充填している。また容器51内の上部には、噴射剤のガス成分が充満する気相部53がある。バルブ52は外部への放出通路と操作部材とを兼ねるステム54を有しており、ステム54の上端にはノズル55を備えた押しボタン56が嵌着されている。
このようなエアゾール装置は、通常は空気中や対象物に広く霧状に散布するいわゆる「スプレー」タイプのものである。しかし発泡状態で噴口から吐出する「フォーム」タイプのものもある。
【0003】
スプレータイプのものは、液体が図9に示すノズル55のオリフィス(噴口)58を高速で通過するときに生ずる乱流および急激な減圧(静圧の減少)に基づく霧化作用、すなわち液体を微粒子に分離する作用を利用するものである。この作用は液体と液化ガスとの混合物あるいは液中に加圧ガスが溶け込んでいる場合に奏されるほか、液体のみを噴出させる場合でも奏される。たとえば可撓性の内袋に薬液を充填し、外容器と内袋の間に噴射剤を充填させておくいわゆる二重エアゾール装置の場合でも、前記噴口から出た直後に周りの空気を巻き込むので、霧化されてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで傷薬などの外用薬を塗布する場合は、周囲の大気を汚染し、使用者が薬剤を吸引する虞があるので、前記スプレータイプのエアゾール装置は好ましくない。他方、ゴキブリなどの害虫の通路に殺虫剤や忌避剤を塗布する場合も、従来のスプレータイプでは狭い範囲や細い線状に塗布できないので、薬剤が無駄になりがちとなり、好ましくない。
【0005】
また二重エアゾール装置のようにガス成分をほとんど含まないエアゾール製品を用いて噴口の口径を大きくすれば棒状に液体を吐出させうるが、薬剤の適用には好ましくない。
本発明は、かかる従来のエアゾール装置の問題を解消し、空気中への飛散を防止することができ、狭い範囲に正確に薬液を適用しうるエアゾール装置用のノズルを提供することを目的としている。
【0006】
本発明のエアゾール装置用のノズルは、基部の内径が0.5〜4.0mmであり、先端に進むにつれて次第に細くなり、先端の内径が0.1〜0.6mmであり、流れ方向の半径の勾配が1/50〜1/3で、かつその勾配が先端に向かって次第に小さくなっており、液化ガスを含むエアゾール組成物を棒状に噴射することを特徴としている。このようなノズルでは、前記半径の勾配が1/20〜1/5であるものが好ましい。さらにテーパー部の長さが5〜20mmであるノズルが好ましい。
【0007】
本発明のノズルは、常温大気圧下で液体の「液成分」と、常温大気圧下では気体で容器内では液体の「ガス成分」とを、液成分/ガス成分の比が0/100〜70/30の範囲となるように含む均一性の内容物と、該内容物を加圧状態で収容する容器と、該容器から内容物を放出させるためのエアゾールバルブと、該エアゾールバルブの出口に連通する放出通路とを備えたエアゾール装置における前記放出通路の末端にとりつけるのが好ましい。なお均一性の内容物としているのは、不溶解物を分散させているものを含む意味である。また液成分が0の場合を含めているのは、ガス成分自体に有用性がある場合(冷却用など)があるからである。
【0008】
【作用】
本発明のノズルを常用される内圧(2〜 6kg/cm2(35 ℃において3 〜8kg/cm2 ))のエアゾール装置に用いると、噴口から少なくとも5cmまで棒状のまま噴出させることができる。5cm以遠では、条件によりさらに遠くまで棒状のまま届く場合もあるが、流速を失って比較的大きい流体粒子に分離し、最終的に霧状になって落下する場合もある。かかる作用は、薬液と噴射剤が混合され、一部溶解している一液型エアゾール装置でも、薬液を噴射剤とは別個に収容した二重エアゾール装置でも同様に達成しうる。
【0009】
そのような作用の流体力学的な原理は必ずしも明確でないが、ノズル内で圧力(静圧)が進行方向に沿って徐々に低減し、それによって乱流の発達が抑制されて層流が維持されるためと推測される。
かかる作用に基づき、対象物に対し、5cm以内に噴口までの距離を維持しながら噴射すれば、周囲の大気を汚染することなく、薬液ないし有用ガスを線状に適用しうる。
【0010】
【実施例】
つぎに図面を参照しながら本発明のノズルの実施例をおよびそれを用いたエアゾール装置を説明する。
図1は本発明のノズルの一実施例を示す断面図である。図1のノズル1は、その基部2が従来のノズル(たとえば図8の55)と実質的に同じ内径 0.5〜4.0 mm(好ましくは0.5 〜2.0mm )の円柱状である。そしてテーパ部2aでは先端の噴口3に向かって次第に細くなり、噴口3では内径0.1 〜0.6mm (好ましくは0.1 〜0.3mm )となっている。またテーパ部2aの長さは5 〜 20mm 程度である。さらに図1のノズル1は、その半径の勾配(軸方向の長さに対する半径の減少の比率:tan θ) の大きさが1/50〜1/3の範囲(好ましくは1/20〜1/5) で先端に向かって次第に小さくなっている。
このようなノズル1は、たとえば図2に示すように、基部2と同径のポリエチレンなどの合成樹脂製のチューブ4を部分的に加熱しながら引き伸ばし(矢印P)、もっとも細くなっている部分Mで切り離し、さらに適当な長さ(たとえば5 〜20mm)に切断することによりうることができる。ただし本発明のノズルを製造する方法としてはこれに限られるものではなく、量産の場合は射出成型などによって形成するのが好ましい。
【0011】
図1のノズル1を図5に示すように通常のエアゾール装置51の押しボタン56に取りつけて噴射させると、約5cm以上の距離Lまで棒状ないし液柱状の噴射を行うことができる。また内圧、原液の粘度、原液と噴射剤の混合比率、噴射剤の種類などによってはさらに遠くまで棒状噴射の状態が維持され、その距離を超えると霧化が始まる。
【0012】
なお図1のノズル1は内径が連続的に変化しており、先端に向かって次第に内径が細くなっており、しかも先端に向かって勾配が次第に小さくなっている。図3に示すように階段状に内径が減少しているノズル5は、本発明に含まれない。また図4に示すように、直線状に半径が減少しているノズル6や、勾配が次第に大きくなっているノズル(図4の想像線7)は、本願発明に含まれないものであり、霧化が始まる距離Lが短い。
【0013】
図5は本発明のノズルを取り付けたエアゾール装置の一実施例を示しており、前述したように、通常のエアゾール装置51のノズルを図1のノズル1に変えただけのものである。
このものに用いる薬液としては、ペルメトリン、フタルスリンなどのピレスロイド系の殺虫剤、あるいはジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤を、灯油、水、アルコールなどで希釈したものなどがあげられる。すなわちこのような粘度の低いもの(0.1 〜100 cps )でも棒状噴射が可能である。
【0014】
噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)などが用いられる。噴射剤と薬液との比率は、100/0〜30/70の範囲が採用される。たとえば冷却用スプレーなどで内容物がガス成分のみ(あるいはほとんどガス成分)で構成されている場合でも、約5cmの距離までは棒状噴射が可能である。
【0015】
このような作用が奏されるのは、ノズル1の断面積の変化が緩やかで乱流が生じにくいこと、そのため周りの空気を巻き込みにくいことが原因と考えられる。なお同じ形状のノズルを使用する場合でも、図6のIで示すように下向きで噴射すると棒状噴射の距離Lが長くなり、IIで示すように上向きで噴射すると短くなる傾向がある。
【0016】
つぎに具体的な実施例をあげて説明する。
実施例1
内径1mm、外径3mmのポリエチレンチューブを図2に示す方法で引き伸ばし、噴口3の内径が0.3mm 、テーパ部の長さ2aが13mm(全長15mm)のノズルを製造し、これを実施例1とした。このものの内径の変化の様子を表1および図7に示す。なお図7では変化の状態をわかりやすくするため、半径r(100 倍)を距離S(10倍)の10倍にしているが、同じ倍率で表したのものも下方に示した。
【0017】
【表1】
実施例2
噴口の内径を0.2 mmとし、内径の変化を図7に示すようにしたほかは実施例1と同じノズルを実施例2として製造した。
【0018】
比較例1
図9の形状を有し、通路内径(d0 ) 1.0mm 、噴口内径0.3mm 、噴口部の長さ0.8mm 、全体の長さ5 〜20mmの従来のノズルを比較例1とした。
【0019】
比較例2
内径1mm、外径3mm、長さ5mmのポリエチレンチューブをそのまま比較例2のノズルとした。
【0020】
[実験方法]
以上のようにしてえられた各ノズルを、それぞれ通路内径(図9のd1 )2 mmの通路を有する押しボタンに取り付け、さらに内容量400ml のブリキ製エアゾール容器に取りつけた。
エアゾール容器の内容物は、殺虫剤を灯油に溶解してなる原液100gと液化石油ガスからなる噴射剤110gである。このときの内圧は4.0kg/cm2 であった。
それぞれのノズルを用いた場合について、エアゾール装置を垂直方向に保持し、5cm離れた壁に向かって水平方向に噴射した。その結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
さらに実施例1および実施例2のノズルについて、壁面までの距離Lを変えて噴射したときの結果を表3に示す。
【0022】
【表3】
表2および表3によれば、比較例1のノズルでは広く霧状に散布され、比較例2のノズルでは遠くまで到達しないが、実施例1のノズルでは噴口から約15cmの範囲まで棒状噴射が達成され、それを越えると大きい粒子の霧状になることがわかる。
また実施例2のノズルは、約30cmまで棒状噴射が達成され、それを越えると霧状になることがわかる。
【0023】
【発明の効果】
叙上のごとく本発明のノズルによれば、噴口から少なくとも5cmの距離まで棒状噴射が達成される。そのため本発明のエアゾール装置は周囲の空気を汚染せず、必要な箇所のみに薬液ないしガスを線状で適用しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエアゾール装置用ノズルの一実施例を示す断面図。
【図2】図1のノズルの製造方法の一例を示す断面図。
【図3】 参考用のノズルを示す断面図。
【図4】 参考用のノズルを示す断面図。
【図5】本発明のノズルを用いたエアゾール装置の一実施例を示す要部側面図。
【図6】本発明のノズルを用いたエアゾール装置の使用状態を示す説明図。
【図7】本発明のエアゾール装置用ノズルの内径の変化状態を示すグラフ。
【図8】従来のエアゾール装置の一例を示す要部断面図。
【図9】図8のエアゾール装置における押しボタンの拡大断面図。
【符号の説明】
1 ノズル
2 基部
3 噴口
5、6、7 ノズル
51 エアゾール装置
Claims (3)
- 基部の内径が0.5〜4.0mmであり、先端に進むにつれて次第に細くなり、先端の内径が0.1〜0.6mmであり、流れ方向の半径の勾配が1/50〜1/3で、かつその勾配が先端に向かって次第に小さくなる、液化ガスを含むエアゾール組成物を棒状に噴射するエアゾール装置のノズル。
- 前記半径の勾配が1/20〜1/5である請求項1記載のノズル。
- テーパー部の長さが5〜20mmである請求項1記載のノズル。
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