JP3749886B2 - エンジンのリコイルスタータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンのリコイルスタータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジンのリコイルスタータとして、特許文献1に記載されたものがある。これは次のように構成されている。
始動ロープが巻回されたリコイルリールに、入力側一方向回転伝動手段・入力輪・動力蓄積用うず巻きばね・出力輪・出力側一方向回転伝動手段を順に介して、エンジンのクランク軸を連動連結する。
上記入力輪は、固定部に枢支されるとともに、逆回転防止手段によりその逆転が防止されるように構成する。
そして、このリコイルスタータには、上記出力輪の回転を阻止するロック機構と、動力蓄積用うず巻きばねの巻き取り回数を計測するばね巻き取り回数計測手段と、動力蓄積用うず巻きばねの巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに、上記ロック機構を解除するロック解除手段とが設けられている。
【0003】
この特許文献1に記載の従来技術においては、動力蓄積用うず巻きばねの蓄力を解放するためにレバーの切換等の特段の手動操作を要さず、動力蓄積用うず巻きばねの巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに自動的に蓄力が解放されるようになっているため、ユーザーの利便性が向上する等の利点がある。
【0004】
【特許文献1】
実公平7−17810号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この特許文献1に記載の従来技術では、ばね巻き取り回数計測手段が目標巻き取り回数相当位置に達しなければロック機構が解除されないため、次のような問題が生じる。
【0006】
すなわち、動作不良等により、ばね巻き取り回数計測手段が計測した動力蓄積用うず巻きばねの巻き取り回数の計数値と、現実に動力蓄積用うず巻きばねを巻き取った回数とがずれた場合、上記従来技術では、かかる不一致を簡便に矯正する手立てがない。
【0007】
かかる不一致のうち、ばね巻き取り回数計測手段の計数値が現実に動力蓄積用うず巻きばねを巻き取った回数よりも少ない値を示している場合には、上述のように、ロック機構を解除するためにはばね巻き取り回数計測手段が目標巻き取り回数相当位置に達するまで上記うず巻きばねを巻き取らねばならないため、うず巻きばねが限界まで巻き取られることがある。動力蓄積用うず巻きばねが限界まで巻き取られた場合、始動ロープの引き操作はそれ以上不可能になり、無理に操作すると故障や破損等の事故を招く。
【0008】
一方、ばね巻き取り回数計測手段の計数値が現実に動力蓄積用うず巻きばねを巻き取った回数よりも多い値を示している場合には、ばね巻き取り回数計測手段の計数値が目標巻き取り回数に達したとしても、現実にはそれに相当する蓄力がなされていないため、蓄力不足によりエンジンの始動に失敗するおそれがある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決することを目的として、次のように構成される。
請求項1の発明は、
リコイルリール(1)に始動ロープ(34)を巻回し、
このリコイルリール(1)に、入力側一方向回転伝動手段(2)・入力輪(3)・動力蓄積用弾性体(4)・出力輪(5)・出力側一方向回転伝動手段(6)を順に介して、エンジンの始動軸(7)を連動連結し、
上記入力輪(3)の逆転を防止する逆回転防止手段(8)と、
上記出力輪(5)の回転を阻止するロック機構(10)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数を計測する弾性体巻き取り回数計測手段(11)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに上記ロック機構(10)を解除するロック解除手段(12)と、
を設けたエンジンのリコイルスタータにおいて、
上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)をリセットする計測リセット手段(70)を設けるとともに、前記ロック機構(10)を手動で解除する手動解除レバー(90)を設け、
前記計測リセット手段 (70) は、リコイルリール ( 1 ) が始動ロープ (34) を巻き戻す巻き戻し回転に連動して前記弾性体巻き取り回数計測手段 (11) をリセットするように構成した、ことを特徴とする。
【0010】
上記請求項1の発明では、動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに自動的にロック機構(10)を解除するロック解除手段(12)とは別に、手動でロック機構(10)を解除する手動解除レバー(90)を設けたので、動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したとき以外でも手動でロック機構(10)を解除することができる。このため、例えば、弾性体巻き取り回数計測手段(11)による動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数の計数値が、現実に動力蓄積用弾性体(4)を巻き取った回数よりも少ない値を示しているために動力蓄積用弾性体(4)を限界近くまで巻き取ったとしても、手動解除レバー(90)によりロック機構(10)を手動で解除すれば、動力蓄積用弾性体(4)の蓄力が解放され、始動ロープ(34)をそれ以上引けなくなるといった事態を回避することができる。また、この請求項1の発明には、弾性体巻き取り回数計測手段(11)をリセットする計測リセット手段(70)が設けられているので、この計測リセット手段(70)により弾性体巻き取り回数計測手段(11)の計数値をリセットすれば、上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)を初期状態に戻すことができる。このようにして、弾性体巻き取り回数計測手段(11)の目盛(計数値)と現実に動力蓄積用弾性体(4)を巻き取った回数とを一致させることができる。
【0011】
【0012】
上記請求項1の発明では、リコイルリール(1)が始動ロープ(34)を巻き戻す巻き戻し回転に連動して前記弾性体巻き取り回数計測手段(11)がリセットされるので、弾性体巻き取り回数計測手段(11)をリセットするために始動ロープ(34)の巻き戻し以外の特段の操作が不要になり、ユーザーの利便性が向上する。
【0013】
請求項2の発明は、上記請求項1の発明において、次のように構成したことを特徴とする。
すなわち、前記手動解除レバー(90)とロック機構(10)とを別体に構成するとともに、この手動解除レバー(90)を少なくとも解除位置(R)と非解除位置(D)とに手動で切換可能に構成して、上記手動解除レバー(90)が解除位置(R)にあるときには、前記ロック機構(10)を解除するように構成し、上記手動解除レバー(90)が非解除位置(D)にあるときには、上記ロック機構(10)の動作と干渉しないように構成したことを特徴とする。
【0014】
この請求項2の発明では、手動解除レバー(90)とロック機構(10)とを別体に構成するとともに、手動解除レバー(90)が非解除位置(D)にあるときにはロック機構(10)の動作と干渉しないようにしたので、通常の始動操作時には手動解除レバー(90)を非解除位置(D)にしておけば、ロック機構(10)から手動解除レバー(90)への動力伝達を遮断することができ、ロック機構(10)の動作に連動して手動解除レバー(90)が動くことを防止することができる。
【0015】
請求項3の発明は、上記請求項2の発明において、前記手動解除レバー(90)をばね(93)によって非解除位置(D)に付勢したことを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明では、手動解除レバー(90)をばね(93)によって非解除位置(D)に付勢したので、手動解除レバー(90)が不用意に解除位置(R)に切り換えられて出力輪(5)のロックが解除される事態を避けることができる。
【0017】
請求項4の発明は、次のように構成したことを特徴とする。
すなわち、上記請求項2または3に記載のリコイルスタータをスタータケース(33)に収納し、
このスタータケース(33)をエンジン機体(30)に着脱自在に構成し、
前記手動解除レバー(90)が少なくとも非解除位置(D)にあるときには、上記スタータケース(33)をエンジン機体(30)から取り外せないようにした、ことを特徴とする。
【0018】
動力蓄積用弾性体(4)にすでに蓄力がなされた状態のままでスタータケース(33)をエンジン機体(30)から取り外した場合、何かのはずみでロック機構(10)が解除されれば出力輪5が急回転するため、その取扱いには注意を要する。
しかし、請求項4の発明のように構成すれば、手動解除レバー(90)が非解除位置(D)にあるときには、上記スタータケース(33)をエンジン機体(30)から取り外せないので、動力蓄積用弾性体(4)に蓄力がなされた状態のままではスタータケース(33)をエンジン機体(30)から取り外せないことになる。したがって、メンテナンス時等における安全を確保できる。
【0019】
上記請求項4の発明は、請求項5に記載したように、手動解除レバー(90)を解除位置(R)に切り換えたときに、前記スタータケース(33)をエンジン機体(30)から取り外せるようにすることが好ましい。
さらに、請求項6に記載したように、前記手動解除レバー(90)をスタータケース(33)側に付設するとともに、前記エンジン機体(30)側に取り外し規制部(94)を設け、上記スタータケース(33)をエンジン機体(30)に取り付けた状態で上記手動解除レバー(90)が非解除位置(D)にあるときには、上記取り外し規制部(94)が手動解除レバー(90)の離脱を規制することにより上記スタータケース(33)がエンジン機体(30)から取り外せないようにすることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態の縦断正面図、図2(A)は図1のII−II線矢視断面図、図2(B)は図2(A)におけるB−B線矢視断面図、図3は図1のIII−III線矢視断面図であり、ばね巻き取り回数計測手段が初期位置にある状態を示す。図4は図3からロック手段21を取り除いた図、図5は図4から第2のラチェット爪52を取り除いた図である。図6は図3の状態から始動ロープ34を引いて計測用爪車15を爪一つ分刻み送りした状態を示す図、図7は手動解除レバー90が解除位置Rにあるときの状態を示す図、図8は図3におけるVIII−VIII線矢視断面図、図9は図3におけるIX−IX線矢視断面図、図10は図3におけるX−X線矢視拡大図、図11はスタータケース33をステー36(エンジン機体)から取り外す際の手動解除レバー90の動きを説明するための図、図12(A)は入力輪3の正面図、図12(B)は図12(A)におけるB−B線矢視断面図、図13(A)は、ばね巻き取り回数計測手段11をエンジン側から見た図(但し、ロック手段21と第1のラチェット爪51は省略してある)、図13(B)は図13(A)の要部を示し、送り爪14の動きを示す図である。なお、本明細書では、図1の紙面に向かって右方を前方、左方を後方と定める。
【0021】
図1において、符号7は強制空冷式4サイクルガソリンエンジンのクランク軸、符号31はフライホイルファンである。フライホイルファン31は、エンジン機体の一部を構成するファンケース30に収納されている。
【0022】
このクランク軸7の一端にスタータプーリ32が設けられる。このスタータプーリ32はクランク軸7に固定され、クランク軸7と一体に回転する。
【0023】
本発明の実施形態たるリコイルスタータは、上記クランク軸7の一端側に設けられるスタータケース33を有する。このスタータケース33は、ファンケース30に固定された環状のステー36にボルト37によって着脱自在に組み付けられる。このスタータケース33の内部に、上記クランク軸7と同軸上に配置される固定部9を有する。
【0024】
この固定部9に、前方から順に、リコイルリール1と入力輪3と出力輪5とがそれぞれ回転自在に外嵌される。このうち、リコイルリール1には始動ロープ34が巻回される。そして、リコイルリール1とスタータケース33との間にはリール巻き戻し用うず巻きばね35が設けられ、始動ロープ34を引っ張ったときに、このリール巻き戻し用うず巻きばね35の復元力により始動ロープ34がリコイルリール1に巻き戻されるように構成されている。なお、本明細書では、図2に示すように、始動ロープ34の引き操作によりリコイルリール1が回転する方向Xをリコイルリール1の正転方向とし、このリコイルリール1の正転が伝達されて入力輪3さらには出力輪5が回転する方向X(図3参照)をそれぞれ入力輪3または出力輪5の正転方向とする。
【0025】
リコイルリール1と入力輪3との間には、図2に示すように、入力側一方向回転伝動手段2が介装されている。この入力側一方向回転伝動手段2は、リコイルリール1の後端面(入力輪3側の端面)に設けられた爪38と、入力輪3の前端面(リコイルリール1側の端面)の周縁に設けられた突合縁39とを備える。この爪38は図示しないばねにより外方に向けて付勢され、始動ロープ34の引き操作時には、この爪38と突合縁39とが突合してリコイルリール1の回転は入力輪3に伝達されるが、始動ロープ34の巻き戻し作動時には、上記の爪38と突合縁39との突合が解け、リコイルリール1の回転が入力輪3に伝達されないようになっている。
【0026】
上記入力輪3は、また、図2に示すように、間欠係合式の逆回転防止手段8により逆転が防止されるようになっている。この間欠係合式逆回転防止手段8は、固定部9側に設けられた逆止用爪車24と、入力輪3側に設けられた逆止用爪25とを備える。上記逆止用爪車24は、固定部9に回転不能に外嵌されるとともに、その中心部から外方に向けて4つの逆止用係合部41を延出している。各逆止用係合部41は略90度の間隔を置いて十字状に配設されている。各逆止用係合部41は、図2(B)に示すように、略三角形断面を有し、入力輪3が正転するときに(すなわちX方向回転時に)逆止用爪25を逃すための傾斜をつけた逃し面41aと、入力輪3が逆転するときに(すなわちY方向回転時に)逆止用爪25と係合する係合面41bとを備える。逆止用爪車24は、リコイルリール1の後端面と入力輪3の前端面との間の空間に収容される。一方、逆止用爪25は、入力輪3の前端面から出没自在に構成され、入力輪3とともに回転するようになっている。本実施形態では、逆止用爪25は2つ設けられている。各逆止用爪25は、入力輪3の回転中心を間に挟んで略点対称な位置に配置されている。
【0027】
このような構成の結果、逆止用爪25は、入力輪3がX方向へ正転しようとするときには、上記の逃し面41aによって入力輪3内に退入するため、入力輪3の正転を可能にするが、入力輪3がY方向へ逆転しようとするときには、突出状態を保ったまま逆止用係合部41の係合面41bと係合して入力輪3の逆転を阻止する。但し、各逆止用係合部41が90度の間隔を置いて配置されているためと、逆止用爪25が入力輪3の回転中心に対して略点対称な位置に配置されているために、逆止用爪25が係合面41bと係合するまでには、入力輪3は最大で約90度逆転し得る。
【0028】
この第1実施形態の動力蓄積用弾性体4はうず巻きばねとして構成される。この動力蓄積用うず巻きばね4は、入力輪3と出力輪5の間の空間に収容され、その外端部は入力輪3に固定され、その内端部は出力輪5に固定される。
【0029】
出力輪5とクランク軸7との間には、出力側一方向回転伝動手段6が介装されている。この出力側一方向回転伝動手段6は、出力輪5の回転をクランク軸7に伝達するもので、図1と図3とに示すように、遠心式クラッチ機構として構成されている。すなわち、前記クランク軸7と一体回転するスタータプーリ32に、ばね43で内方に付勢された遠心爪44が枢支され、一方、出力輪5の後端面に、この遠心爪44と係合可能な爪受部45が設けられる。そして、クランク軸7の回転速度が所定速度に達するまでは、遠心爪44と爪受部45とは係合状態にあるが、クランク軸7の回転が所定速度以上になったときには、遠心爪44はクランク軸7の回転による遠心力で外方に揺動し、遠心爪44と爪受部45との係合は解除されるようになっている。
【0030】
本実施形態に係るリコイルスタータには、出力輪5の回転を阻止するロック機構10が設けられている。このロック機構10は、出力輪5に設けられたロック部20と、このロック部20に係脱自在なロック手段21とを備える。上記ロック部20は、出力輪5の後端面に設けられた凹部として構成される。この凹部は、出力輪5の後端面の周縁に等間隔で設けられる。図3から5に示すように、本実施形態では、かかる凹部が4つ設けられており、このうち、出力輪5の回転中心を挟んで点対称の位置にある2つの凹部には、取り付け/取り外し自在な閉塞部材26がネジ止めされて上記凹部を塞いでいる。このため、ロック部20として機能するのは、この閉塞部材26によって塞がれていない2箇所である。このロック部20として機能する凹部も出力輪5の回転中心を挟んで点対称の位置にある。本実施形態では、閉塞部材26によって上記凹部を適宜塞ぐことにより、ロック手段21がロック部20に係合するまでには、出力輪5が180度近く回転(約半回転)できるようになっている。
【0031】
一方、ロック手段21は、スタータケース33に固定された第1の枢支軸47に揺動自在に枢支される。ロック手段21は、ロック位置とロック解除位置とに切換可能に構成され、上記ロック手段21がロック位置にあるときにはロック部20と係合して出力輪5の回転を阻止するのに対し、上記ロック手段21がロック解除位置にあるときにはロック部20を解放して出力輪5の回転を自由にするように構成される。第1の枢支軸47はスタータケース33内でその前後方向に架設されている。
【0032】
上記ロック手段21は、ロック位置付勢手段48によってロック位置方向に付勢されている。本実施形態におけるロック位置付勢手段48は引っ張りばねによって構成され、この引っ張りばね48は、その一端がスタータケース33側に係止され、その他端がロック手段21に係止される。
【0033】
このロック手段21は、腕部21aを備える。この腕部21aは、後述の第2の枢支軸57に向けて延出され、ロック手段21がロック位置に切り換えられたときに、第2の枢支軸57に懸架するようになっている。この腕部21aは、第2の枢支軸57に懸架することによりロック手段21のロック位置方向への一定以上の揺動を規制する。
【0034】
このロック手段21には第1の受動部22と第2の受動部23と設けられている。このうち、第1の受動部22はロック手段21の腕部21aの途中部から下方に向けて垂設されている。一方、第2の受動部23は、ロック手段21の先端部に設けられている。ロック手段21は、この第1の受動部22または第2の受動部23において後述のロック解除手段12と当接し、その駆動を受けるようになっている。
【0035】
このリコイルスタータは、動力蓄積用うず巻きばね4の巻き取り回数を計測するばね巻き取り回数計測手段11を備える。このばね巻き取り回数計測手段11は、入力輪3に設けた送り爪14と、この送り爪14によって刻み送りされる計測用爪車15と、この計測用爪車15を各計数位置に置き残すラチェット機構49とを備える。さらに、このラチェット機構49は、上記計測用爪車15と一体回転する残置用爪車50と、この残置用爪車50に係止する第1のラチェット爪51および第2のラチェット爪52を備える。
【0036】
このうち、入力輪3に設けられる送り爪14は次のように構成される。すなわち、図12と図13とに示すように、この送り爪14は、入力輪3の外周面に設けられた凹部に収容され、起伏自在に枢支されるとともに、ねじりばね55によって入力輪3の半径方向外方に向けて付勢される。そして、入力輪3が動力蓄積用うず巻きばね4を蓄力する方向Xに回転するとき(すなわち、入力輪3の正転時)には、この送り爪14は起立して後述の計測用爪車15を刻み送りするのに対し、入力輪3がその逆方向Yに回転するときには、この送り爪14は計測用爪車15との当接により倒伏するように構成される。
【0037】
上記計測用爪車15と残置用爪車50は、スタータケース33に固定された第2の枢支軸57に回転自在に枢支され、一体に回転するように構成される。この第2の枢支軸57は、スタータケース33内でその前後方向に架設され、前記第1の枢支軸47と略平行になるようにしてある。
【0038】
本実施形態では、図2に示すように、2つの送り爪14が入力輪3の外周面に設けられているため、入力輪3の1回転により計測用爪車15は爪2つ分刻み送りされる。
【0039】
上記残置用爪車50には、ロック解除手段12が設けられている。このロック解除手段12は、動力蓄積用うず巻きばね4の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに前記ロック機構10を解除し、また、弾性体巻き取り回数計測手段11が初期位置にあるときにロック機構10を解除するようになっている。
【0040】
具体的には、上記ロック解除手段12は残置用爪車50(および計測用爪車15)と一体に回動し、計測用爪車15が送り爪14によって刻み送りされて目標巻き取り回数に達したときに、前記ロック手段21に設けられた第1の受動部22に当接してこれを駆動し、ロック手段21をロック位置からロック解除位置に切り換えるようになっている。また、後述する計測リセット手段70により計測用爪車15が初期位置に復帰したときには、上記ロック解除手段12が上記第2の受動部23を駆動してロック手段21をロック位置からロック解除位置に切り換えるようになっている。そして、本実施形態では、始動ロープ34の引き操作により入力輪3が回転し、計測用爪車15が初期位置から爪一つ分刻み送りされたときに、ロック手段21がロック部20に係合し得るようになっている(図6参照)。
【0041】
なお、本実施形態では、このロック解除手段12を残置用爪車50と一体に構成したが、別体として構成してもよい。また、計測用爪車15にロック解除手段12を設けてもよい。
【0042】
第1のラチェット爪51と第2のラチェット爪52は、前記第1の枢支軸47に枢支され、リコイルスタータの前方から第1のラチェット爪51・第2のラチェット爪52・ロック手段21の順に並設されている。このうち、第1のラチェット爪51は、引っ張りばね61によって前記残置用爪車50に係止する方向に付勢されている。この引っ張りばね61は、一端が第1のラチェット爪51に係止され、他端がスタータケース33側に係止されている。
【0043】
一方、第2のラチェット爪52は、引っ張りばね62によって残置用爪車50に係止する方向に付勢されている。この引っ張りばね62は、一端が第2のラチェット爪52に係止され、他端が前記ロック手段21に係止されている(図3・図4参照)。この第2のラチェット爪52には、また、入力部52aが設けられ、この入力部52aは、ロック手段21に設けられた切り欠き部21cとの係合によりロック手段21の揺動を第2のラチェット爪52に伝達するようになっている。すなわち、前記ロック解除手段12がロック手段21の第1の受動部22または第2の受動部23に当接しこれを押動することによりロック手段21をロック位置からロック解除位置に切り換えたときに、このロック手段21の揺動は上記切り欠き部21cと入力部52aとの係合を介して第2のラチェット爪52に伝達され、第2のラチェット爪52を揺動起立させることにより第2のラチェット爪52と残置用爪車50との係止を解除する。また、ロック手段21がロック解除位置にある場合には、第2のラチェット爪52も入力部52aと切り欠き部21cとの係合を介して残置用爪車50との係止を解除する係止解除姿勢を維持する。他方、ロック手段21がロック解除位置からロック位置に切り換えられたときには、第2のラチェット爪52も入力部52aを介してこれに連動し残置用爪車50に係止するようになっている。
【0044】
本実施形態のリコイルスタータには、リコイルリール1が始動ロープ34を巻き戻す方向に回転することに基づいて、弾性体巻き取り回数計測手段11が計測した動力蓄積用弾性体4の巻き取り回数の計数値をリセットする計測リセット手段70が設けられている。この計測リセット手段70は、前記計測用爪車15を初期位置に付勢する初期位置付勢手段71と、リコイルリール1に設けられたリセット用主動部72と、前記第1のラチェット爪51に設けられたリセット用従動部73と、を備える。
【0045】
このうち、初期位置付勢手段71は、図1と図8とに示すように、第2の枢支軸57に巻回された第1のねじりばねとして構成され、この第1のねじりばね71の一端はスタータケース33側に固定され、その他端は計測用爪車15に固定される。この初期位置付勢手段71は、前記第1のラチェット爪51と第2のラチェット爪52の両方が残置用爪車50との係止を解除されたときに、計測用爪車15を初期位置に回動復帰させる。なお、図3から5に示すように、スタータケース33に設けられたブラケット76によって、上記初期位置付勢手段71による計測用爪車15の一定以上の回動復帰は規制されており、このブラケット76と計測用爪車15とが当接する位置を計測用爪車15の初期位置と定める(図3から図5参照)。
【0046】
上記リセット用主動部72は、リコイルリール1の後端面の周縁に等間隔に突設された凸部として構成される。一方、リセット用従動部73は、一端が第1のラチェット爪51に係止された第2のねじりばね78の他端部として構成され、この他端部は解放端となっている。この第2のねじりばね78は、前記第1の枢支軸47に巻回されたうえ、リセット用従動部73として機能するその解放端を下方に延出して、リコイルリール1の回転時にリセット用主動部72と当接してその駆動を受けるようになっている。これにより、リコイルリール1の回転がリセット用主動部72とリセット用従動部73との当接を通じて第1のラチェット爪51に伝達される。但し、リコイルリール1の正転時Xには、リセット用主動部72がリセット用従動部73と当接してこれを駆動しても、この駆動力は第2のねじりばね78を介して第1のラチェット爪51を残置用爪車50に係止させる方向に作用するため、第1のラチェット爪51と残置用爪車50との係止は維持されるが、リコイルリール1の逆転時Y(リコイルリール1が始動ロープ34を巻き戻す巻き戻し回転時)には、リセット用主動部72がリセット用従動部73を駆動することにより第1のラチェット爪51を揺動起立させ、第1のラチェット爪51と残置用爪車50との係止が解除されるようになっている。
【0047】
本実施形態のリコイルスタータには、図3・図6・図7・図8に示すように、前記ロック機構10を手動で解除する手動解除レバー90が設けられている。この手動解除レバー90は、ロック手段21とは別体に構成され、図9と図10とに示すように、スタータケース33の内面に固定(本実施形態ではスポット溶接)されたブラケット91に挿通された枢支軸92に揺動自在に枢支される。この手動解除レバー90の把持部90aは、スタータケース33の窓部33aを通してスタータケース33外に露出するようになっている。
【0048】
この手動解除レバー90は、前記ロック手段21を手動でロック解除位置に切り換えるためのもので、図7に示す解除位置Rと、図3または図6に示す非解除位置Dとに切換可能に構成され、この手動解除レバー90が解除位置Rにあるときには、上記ロック手段21を押動してこれをロック解除位置に切り換え、一方、上記手動解除レバー90が非解除位置Dにあるときには、上記ロック手段21に当接しない位置に離間している。つまり、上記手動解除レバー90が非解除位置Dにあるときには、ロック手段21の動作と干渉しないようになっている。この手動解除レバー90は、ねじりばね93によって非解除位置Dに付勢されている。
【0049】
一方、スタータケース33が取り付けられるエンジン機体30側のステー36には、図10と図11とに示すように、切り込み部94が設けられ、手動解除レバー90が非解除位置Dにあるときにはこの切り込み部94に進入し、手動解除レバー90が解除位置Rにあるときには切り込み部94から進出し解放されるようになっている。この切り込み部94は、スタータケース33をステー36に取り付けた状態で手動解除レバー90が非解除位置Dにあるときには、スタータケース33をステー36から取り外せないようにするためのものである。本実施形態では、手動解除レバー90が非解除位置Dにあるときには、切り込み部94に進入して手動解除レバー90の離脱が規制されるため、たとえボルト37を外してもスタータケース33がステー36から取り外せないようになっており、手動解除レバー90を解除位置Rに切り換えて初めてスタータケース33を取り外せるようになっている(図11参照)。本実施形態では、この切り込み部94が、スタータケース33の取り外しの際に手動解除レバー90の離脱を規制する取り外し規制部として機能する。
【0050】
本実施形態のリコイルスタータは次のように作動する。まず、通常の始動操作について説明する。通常の始動操作の際には、原則として、手動解除レバー90を使用する必要はない。
いま、エンジンは停止しており、これからエンジンを始動させる場合を想定する(図3から図5参照)。始動ロープ34はリコイルリール1に巻き取られており、また、計測用爪車15は初期位置にあるものとする。第1のラチェット爪51は、引っ張りばね61の付勢力によって残置用爪車50に係止している。
【0051】
このとき、ロック手段21は、図3に示すように、ロック解除手段12によって第2の受動部23を押動されてロック解除位置に保持されている。したがって、出力輪5のロックは解除された状態にあり、動力蓄積用うず巻きばね4には何ら蓄力がなされていない。また、第2のラチェット爪52は、切り欠き部21cと入力部52aとの係合を介して残置用爪車50との係止を解除する姿勢にある。
【0052】
ここで、出力側一方向回転伝動手段6の遠心爪44が爪受部45に係合していなかったものとする。この場合において、始動ロープ34を引っ張ると、リコイルリール1が正転方向Xへ回転し、このリコイルリール1の回転が入力側一方向回転伝動手段2・入力輪3・動力蓄積用うず巻きばね4を介して出力輪5に伝達され、出力輪5をX方向に回転させる。この結果、出力輪5に設けられた爪受部45も回転し、遠心爪44と爪受部45との係合が可能となる。
【0053】
このように、本実施形態では、たとえ出力側一方向回転伝動手段6の遠心爪44と爪受部45とが当初は係合状態になかったとしても、始動ロープ34の引き操作により両者を係合させることができるので、出力輪5のロックが解除されて動力蓄積用うず巻きばね4の蓄力が解放されたときの両者の衝突を避けることができ、破損や騒音をなくすことができる。
【0054】
一方、始動ロープ34の引き操作により計測用爪車15が爪一つ分刻み送りされると、ロック手段21がロック位置に切り換えられる(図6参照)。これにより、動力蓄積用うず巻きばね4は蓄力可能な状態になり、その後の始動ロープ34の引き操作により入力輪3が回転した分だけ上記動力蓄積用うず巻きばね4は巻き取られることになる。
なお、計測用爪車15が爪一つ分刻み送りされてロック手段21がロック位置に切り換えられると、これに連動して第2のラチェット爪52も残置用爪車50に係止する(図6参照)。
【0055】
このような入力輪3の回転は、送り爪14によって計測用爪車15に伝達され、さらに計測用爪車15を刻み送りする。そして、動力蓄積用うず巻きばね4の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達すると、ロック解除手段12がロック手段21の第1の受動部22を押動し、ロック手段21をロック位置からロック解除位置に切り換える。これにより出力輪5のロックは解除され、動力蓄積用うず巻きばね4に蓄えられた蓄力が解放されて出力輪5が回転する。
【0056】
この出力輪5の回転は、出力側一方向回転伝動手段6によってクランク軸7に伝達される。前述のように、すでに遠心爪44と爪受部45とは係合状態にあるため、動力蓄積用うず巻きばね4の蓄力解放により両者が衝突したり、あるいは不快な騒音を発したりすることはない。このようにして、出力輪5の回転は爪受部45と遠心爪44とを介してスムーズにスタータプーリ32に伝達されてクランク軸7を回転させ、エンジンを始動させることになる。
【0057】
このように、本実施形態では、始動ロープ34の引き操作に連動して上記弾性体巻き取り回数計測手段11が所定位置に達したときに(爪一つ分送られたときに)、上記ロック機構10が作動して出力輪5がロックされるようになっている。このため、動力蓄積用弾性体4の目標巻き取り回数到達時における出力輪5のロック解除だけでなくロック投入も自動的に行われユーザーの利便性が向上する。
【0058】
エンジンが始動してクランク軸7の回転速度が所定速度以上になると、クランク軸7と一体回転するスタータプーリ32に設けられた遠心爪44が遠心力により外方に揺動し、爪受部45との係合が解除される。これによりクランク軸7と出力輪5との連繋は断たれる。
【0059】
一方、動力蓄積用うず巻きばね4の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達してロック手段21がロック位置からロック解除位置へと切り換えられたときには、これに連動して第2のラチェット爪52が揺動起立し、第2のラチェット爪52と残置用爪車50との係止が解除される。
【0060】
なお、リコイルリール1による始動ロープ34の巻き戻しが開始していない状態では、ロック解除手段12が第1の受動部22を介してロック手段21を押し上げている状態にあるため、ロック手段21はロック解除位置に保持され、また、第2のラチェット爪52は残置用爪車50との係止を解除された係止解除姿勢をとり続けることになる。
【0061】
この状態から、次に、始動ロープ34の巻き戻し作動が開始される。すなわち、リコイルリール1はリール巻き戻し用うず巻きばね35により始動ロープ34を巻き戻す方向Yに回転し始める。このリコイルリール1の逆転により、リセット用主動部72がリセット用従動部73を駆動し、この駆動力が第2のねじりばね78を介して第1のラチェット爪51に伝達され、これを揺動起立させて、第1のラチェット爪51と残置用爪車50との係止が解除される。
【0062】
この結果、計測用爪車15は、初期位置付勢手段71の付勢力により初期位置に回動復帰する。これに連動して、ロック解除手段12も回動してロック手段21の第1の受動部22から離れる。この結果、下からの支持を失ったロック手段21は、ロック位置付勢手段たる引っ張りばね48のばね力(および自重)により一旦はロック位置に切り換えられるが、計測用爪車15が初期位置に戻ると、ロック解除手段12が第2の受動部23を押動してロック手段21は再びロック解除位置に切り換えられることになる。
【0063】
なお、図3ないし図5および図8に示すように、第2の枢支軸57には第3のねじりばね80が巻回されている。この第3のねじりばね80の一端は残置用爪車50に係止され、その他端は解放端になっており、この解放端部は、計測用爪車15が入力輪3の正転に従動して刻み送りされてゆく度に上昇して、ロック手段21に下から当接する。そして、計測用爪車15が目標巻き取り回数相当位置にあるときには、ロック手段21を下から支持するようになっている。
【0064】
この第3のねじりばね80は、計測用爪車15の初期位置への復帰に連動してロック手段21がロック解除位置からロック位置へと切り換えられるときに、この切換動作に動作遅れを持たせるためのものである。すなわち、リコイルリール1の巻き戻し作動により第1のラチェット爪51が揺動起立し、これにより計測用爪車15は初期位置に回動復帰するが、この回動に連動して直ちにロック手段21がロック位置に切り換えられるとすると、出力輪5の回転が十分に停止していない状態でロック手段21がロック位置に切り換えられることも起こり得る。この結果、ロック手段21とロック部20とが衝突して、騒音や破損の原因となる。そこで、この第3のねじりばね80を設けることによりロック手段21のロック解除位置からロック位置への切り換えにタイムラグを持たせて、出力輪5の回転中にロック手段21がロック位置に切り換えられないようにしたものである。なお、図6では、図面が過度に複雑になるのを避けるために、第3のねじりばね80は省略されている。
【0065】
以上説明した通常の始動操作とは別に、次のような状況が生じたとする。
いま、動作不良等の何らかの不具合により、ばね巻き取り回数計測手段11の計数値が、現実に動力蓄積用うず巻きばね4を巻き取った回数よりも少ない値を示していたため、始動ロープ34の引き操作により動力蓄積用うず巻きばね4が限界まで巻き取られたとする。動力蓄積用うず巻きばね4が限界まで巻き取られると、それ以上始動ロープ34は引けなくなる。
【0066】
このような場合に手動解除レバー90を手動で解除位置Rに切り換えると、図7に示すように、ロック手段21がロック解除位置に切り換えられ、限界近くまで巻き取られた動力蓄積用うずまきばねの蓄力が解放される。なお、このロック手段21のロック解除位置への切り換えに連動して第2のラチェット爪52が揺動起立し残置用爪車50との係止が解除される。
【0067】
この状態で始動ロープ34を巻き戻すと、リコイルリール1の巻き戻し回転に連動して第1のラチェット爪51も揺動起立し残置用爪車50との係止を解除する。したがって、残置用爪車50には第1のラチェット爪51も第2のラチェット爪52も係止していない状態となり、計測用爪車15は初期位置付勢手段71の付勢力で初期位置に復帰する。
【0068】
このようにして、動力蓄積用うず巻きばね4に蓄えられた蓄力は解放される一方、ばね巻き取り回数計測手段11は初期位置に回動復帰する。この結果、ばね巻き取り回数計測手段11の目盛(計数値)と現実に動力蓄積用うず巻きばね4を巻き取った回数とを一致させることができる。
【0069】
本実施形態では、手動解除レバー90とロック手段21とを別体に構成するとともに、手動解除レバー90が非解除位置Dにあるときにはロック手段21の動作と干渉しないようにしたので、通常の始動操作時には手動解除レバー90を非解除位置Dにしておけば、ロック手段21から手動解除レバー90への動力伝達を遮断することができ、ロック手段21の動作に連動して手動解除レバー90が動くといった事態を避けることができる。
【0070】
また、手動解除レバー90をねじりばね93によって非解除位置Dに付勢したので、手動解除レバー90が不用意に解除位置Rに切り換えられて出力輪5のロックが解除されることを防止することができる。
【0071】
さらに、本実施形態では、手動解除レバー90が非解除位置Dにあるときには、たとえボルト37を外してもスタータケース33をステー36から取り外せず、手動解除レバー90を解除位置Rに切り換えたときにスタータケース33をステー36から取り外せるようにしたので、スタータケース33を取り外す前には必ず蓄力が解放されていることになる。このため、メンテナンス時等の安全を確保できる。
【0072】
本実施形態では、上述のように、逆回転防止手段8の各逆止用係合部41が90度の間隔を置いて配置されているためと、逆止用爪25が入力輪3の回転中心に対して略点対称な位置に配置されているために、逆止用爪25が係合面41bと係合するまでには、入力輪3は最大で約90度逆転し得る(図2参照)。このため、オペレータが始動ロープ34の引き操作を途中で止めた場合には、入力輪3が最大で上記角度だけ逆転する場合もあり得る。しかし、本実施形態の送り爪14は、入力輪3が逆転方向Yに回転するときには計測用爪車15との当接により倒伏するように構成されているので、送り爪14や計測用爪車15に衝撃荷重がかかることを防止することができる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、入力輪3の逆回転防止手段8は上記構成に限られるものではなく、他の構成のラチェット機構やワンウェイクラッチ等を用いて構成してもよい。上記実施形態では、動力蓄積用弾性体4がうず巻きばねの場合について説明したが、蓄力可能な弾性体であればよく、例えば、ねじりばねであってもよい。上記実施形態の出力側一方向回転伝動手段6は遠心クラッチとして構成されていたが、これに限定されるものではなく、ドッグクラッチその他のものでもよい。上記実施形態では、送り爪14を起伏自在に構成したが、可動部材としてではなく入力輪3に固定されていてもよい。上記実施形態における計測リセット手段70は、リコイルリール1が始動ロープ34を巻き戻す巻き戻し回転に基づいて、前記弾性体巻き取り回数計測手段11を初期位置に戻すように構成されていたが、かかる構成に限定されるものではない。上記実施形態では、出力輪5に4つの凹部が設けられていたが、4つに限られるものではなく、また、閉塞部材26で塞ぐ個所やその個数も実施例のものに限定されるわけではない。上記実施形態では、計測用爪車15が初期位置から爪一つ分刻み送りされたときに出力輪5がロックされるように構成したが、計測用爪車15が爪二つ以上刻み送りされたときに出力輪5がロックされるように構成してもよく、また、ロック手段21の構成から第2の受動部23を省略して、計測用爪車15が初期位置にあるときにはロック手段21がロック位置にあるように構成してもよい。さらに、上記実施形態では、単一のロック解除手段12によって、第1の受動部22または第2の受動部23が駆動されてロック手段21をロック位置からロック解除位置に切り換えるように構成されていたが、第1の受動部22と第2の受動部23とがそれぞれ別の部材によって駆動されるように構成してもよい。上記実施形態のラチェット機構49は第1のラチェット爪51と第2のラチェット爪52を備えていたが、第1のラチェット爪51のみを備えるようにしてもよい。上記実施形態では、手動解除レバー90がロック手段21と別体に構成されていたが、ロック手段21と一体に構成してもよい。また、上記実施形態では、手動解除レバー90がロック手段21に直接当接してこれを駆動するように構成されていたが、両者の間に他の部材を介在させて間接的にロック手段21をロック解除位置に切り換えるように構成してもよい。上記実施形態では、手動解除レバー90の切換位置を解除位置Rと非解除位置Dの2つとしたが、3つ以上の位置の間で切り換えられるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の縦断正面図である。
【図2】 図2(A)は図1のII−II線矢視断面図、図2(B)は図2(A)におけるB−B線矢視断面図である。
【図3】 図1のIII−III線矢視断面図であり、ばね巻き取り回数計測手段が初期位置にある状態を示す。
【図4】 図3からロック手段21を取り除いた図である。
【図5】 図4から第2のラチェット爪52を取り除いた図である。
【図6】 図3の状態から始動ロープ34を引いて計測用爪車15を爪一つ分刻み送りした状態を示す図である。
【図7】 手動解除レバー90が解除位置Rにあるときの状態を示す図である。
【図8】 図3におけるVIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】 図3におけるIX−IX線矢視断面図である。
【図10】 図3におけるX−X線矢視拡大図である。
【図11】 スタータケース33をステー36(エンジン機体)から取り外す際の手動解除レバー90の動きを説明するための図である。
【図12】 図12(A)は入力輪3の正面図、図12(B)は図12(A)におけるB−B線矢視断面図である。
【図13】 図13(A)は、ばね巻き取り回数計測手段11をエンジン側から見た図である(但し、ロック手段21と第1のラチェット爪51は省略してある)。図13(B)は図13(A)の要部を示し、送り爪14の動きを示す図である。
【符号の説明】
1…リコイルリール、2…入力側一方向回転伝動手段、3…入力輪、4…動力蓄積用弾性体(うず巻きばね)、5…出力輪、6…出力側一方向回転伝動手段、7…始動軸(クランク軸)、8…逆回転防止手段、10…ロック機構、11…弾性体巻き取り回数計測手段(ばね巻き取り回数計測手段)、12…ロック解除手段、30…エンジン機体(ファンケース)、33…スタータケース、34…始動ロープ、70…計測リセット手段、90…手動解除レバー、93…ばね(ねじりばね)、94…取り外し規制部(切り込み部)、R…解除位置、D…非解除位置。
Claims (6)
- リコイルリール(1)に始動ロープ(34)を巻回し、
このリコイルリール(1)に、入力側一方向回転伝動手段(2)・入力輪(3)・動力蓄積用弾性体(4)・出力輪(5)・出力側一方向回転伝動手段(6)を順に介して、エンジンの始動軸(7)を連動連結し、
上記入力輪(3)の逆転を防止する逆回転防止手段(8)と、
上記出力輪(5)の回転を阻止するロック機構(10)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数を計測する弾性体巻き取り回数計測手段(11)と、
上記動力蓄積用弾性体(4)の巻き取り回数が目標巻き取り回数に達したときに上記ロック機構(10)を解除するロック解除手段(12)と、
を設けたエンジンのリコイルスタータにおいて、
上記弾性体巻き取り回数計測手段(11)をリセットする計測リセット手段(70)を設けるとともに、前記ロック機構(10)を手動で解除する手動解除レバー(90)を設け、
前記計測リセット手段 (70) は、リコイルリール ( 1 ) が始動ロープ (34) を巻き戻す巻き戻し回転に連動して前記弾性体巻き取り回数計測手段 (11) をリセットするように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。 - 請求項1に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記手動解除レバー(90)とロック機構(10)とを別体に構成するとともに、この手動解除レバー(90)を少なくとも解除位置(R)と非解除位置(D)とに手動で切換可能に構成して、上記手動解除レバー(90)が解除位置(R)にあるときには、前記ロック機構(10)を解除するように構成し、上記手動解除レバー(90)が非解除位置(D)にあるときには、上記ロック機構(10)の動作と干渉しないように構成した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。 - 請求項2に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて、
前記手動解除レバー(90)をばね(93)によって非解除位置(D)に付勢した、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。 - 請求項2または3に記載のエンジンのリコイルスタータをスタータケース(33)に収納し、
このスタータケース(33)をエンジン機体(30)に着脱自在に構成し、
前記手動解除レバー(90)が少なくとも非解除位置(D)にあるときには、上記スタータケース(33)をエンジン機体(30)から取り外せないようにした、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。 - 請求項4に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて
前記手動解除レバー(90)を解除位置(R)に切り換えたときに、前記スタータケース(33)をエンジン機体(30)から取り外せるようにした、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。 - 請求項4または5に記載のエンジンのリコイルスタータにおいて
前記手動解除レバー(90)をスタータケース(33)側に付設するとともに、前記エンジン機体(30)側に取り外し規制部(94)を設け、上記スタータケース(33)をエンジン機体(30)に取り付けた状態で上記手動解除レバー(90)が非解除位置(D)にあるときには、上記取り外し規制部(94)が手動解除レバー(90)の離脱を規制することにより上記スタータケース(33)がエンジン機体(30)から取り外せないようにした、
ことを特徴とするエンジンのリコイルスタータ。
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