JP3749649B2 - 磁気抵抗素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ドラム等の位置を検出する磁気センサー等に使用される磁気抵抗素子に関し、更に詳しくは、通電時における磁気抵抗素子の感磁部と温度補償部間の中点電圧を一定に保持するための改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気抵抗素子は、強磁性体の異方性磁気抵抗が電流と磁力線とが平行になった時に抵抗値が最大になり、直交した時に最少となるという強磁性体の異方性磁気抵抗効果を利用して検出信号を生成するものである。このような素子は、例えば、特許第2589457号公報に開示されている。この公報に開示の磁気抵抗素子は、図4に示すように、駆動電圧Vccに接続される電極42と、接地される電極46と、温度補償部43と、感磁部45と、温度補償部43および感磁部45を相互に接続している配線部44から構成されている。
【0003】
磁気抵抗素子41の感磁部45および温度補償部43の配線パターンは同一強磁性体薄膜から形成されており、感磁部45の配線パターンは、上下方向につづら折れ状とされ、磁気抵抗素子41の温度補償部43の配線パターンは、直交する方向、すなわち、左右方向につづら折れ状とされている。
【0004】
この構成の磁気抵抗素子では、一般に、その感磁面において感磁部の配線パターンを温度補償部の配線パターンに比べてその形成領域を広くすることにより、検出感度を高めている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、感磁部および温度補償部の配線パターンの形成領域が相互に異なっていると、すなわち、その形状あるいは面積が相違していると、それらの間の発熱量および熱拡散量も異なったものとなる。この結果、通電時におけるそれぞれの熱収支(単位面積当たりの発熱量と熱拡散量の差)が違ってくる。
【0006】
よって、感磁部と温度補償部を通る電流の大きさにより、各部の温度差が生じて内部抵抗に差が生じ、感磁部と温度補償部との間の中点電位が変動してしまう。通電時の発熱により感磁部と温度補償部間の中点電位が変動すると、その変動量が、磁力線の方向の変化による感磁部と温度補償部間の電圧変化量に加算され、精度のよい検出動作が保証されなくなってしまう。
【0007】
本発明の課題は、この点に鑑みて、検出動作中において感磁部と温度補償部の中点電位が変動することのない磁気抵抗素子を提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、強磁性体薄膜の配線パターンからなる感磁部と、強磁性体薄膜の配線パターンからなる温度補償部と、これらを相互に接続している配線部とを有する磁気抵抗素子において、前記感磁部および前記温度補償部のそれぞれにおける配線パターンの通電時の熱収支が同一であり、前記感磁部の配線パターンの形成領域の形状及び前記温度補償部の配線パターンの形成領域の形状は五角形であることを特徴としている。
【0009】
これら感磁部および温度補償部の熱収支を同一とするための典型的な構成は、前記感磁部の配線パターンと前記温度補償部の配線パターンを、材質、膜厚、幅、長さが同一の配線から形成すると共に、これらの配線パターンの形成領域も同一形状(従って、同一面積)とすることである。
【0010】
望ましい形態は、前記感磁部の配線パターンの形成領域の形状と、前記温度補償部の配線パターンの形成領域の形状とを、駆動電圧側電極(Vcc)と接地電極(GND)の中間線に対して対称とすることである。
【0011】
次に感磁部および温度補償部の熱収支を同一とするために、配線パターンの形成領域の形状が同一ならば、前記感磁部の配線パターンと前記温度補償部の配線パターンの幅、長さが異なる配線としてもよい。つまり、感磁部は検出感度を高めるために温度補償部よりパターンの幅を広くする。温度補償部は、感磁部よりパターンの幅を狭くし、また、長さを長く調整することで感磁部と内部抵抗を同一とする。感磁部の配線パターンと温度補償部の配線パターンは、折り返しでのパターン間のギャップを感磁部は狭く、温度補償部は広く形成することにより形成領域を同一形状とすることで、熱収支を同一とすることができる。
【0012】
さらに、感磁部および温度補償部の熱収支を同一とするためには、前記感磁部の配線パターンと前記温度補償部の配線パターンを、材質、膜厚、幅、長さのうちの少なくとも二つの要素が相互に異なる配線から形成してもよい。
【0013】
この構成の代わりに、あるいはこの構成に加えて、前記感磁部の配線パターンと前記温度補償部の配線パターンを、材質、膜厚、幅、長さのうち少なくとも一つの要素が相互に異なっている配線から形成すると共に、前記感磁部と前記温度補償部の配線パターンの形成領域を、それらの形状あるいは面積が相違するものとしてもよい。
【0014】
本発明の磁気抵抗素子においては、通電時における感磁部と温度補償部のそれそれの熱収支(単位面積当たりの発熱量と熱拡散量の差)が等しい。従って、感磁部と温度補償部の配線パターンの加熱状態が相違することに起因してそれらの内部抵抗が変動してしまうことを回避できる。よって、これらの間の中点電位を常に一定に保持することができるので、精度の良い検出動作が保証される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した磁気抵抗素子について説明する。
【0016】
(磁気抵抗素子の基本構成)
図1は本発明の対象となる磁気抵抗素子の感磁面に形成された感磁部と温度補償部の配線パターンの基本構成を示す説明図である。磁気抵抗素子11の感磁面には、感磁部12と温度補償部13が形成されており、感磁部12は、強磁性体薄膜を図面上下方向に等しい間隔でつづら折れ状に引き回した配線パターンからなっている。温度補償部13は、強磁性体薄膜を図面左右方向に等しい間隔でつづら折れ状に引き回した配線パターンからなっている。
【0017】
感磁部12および温度補償部13は配線部16を介して相互に接続されている。感磁部12は電極15を介して接地側に接続され、温度補償部13は電極14を介して駆動電圧Vccの側に接続される。
【0018】
ここで、本例では、感磁部12および温度補償部13の配線パターンを構成している強磁性体薄膜は同一の材質であり、膜厚、線幅、長さも同一とされている。また、感磁部12および温度補償部13の配線パターンの形成領域の形状が同一とされている(従って、双方が同一面積とされている。)。すなわち、駆動電圧側電極14と接地電極15の中間線、換言すると、これらの電極を結ぶ直線の垂直2等分線に対して、感磁部12および温度補償部13の配線パターンの形成領域の形状が対称とされている。
【0019】
このように構成した本例の磁気抵抗素子11では、感磁部12における単位面積当たりの発熱量と熱拡散量の差と、温度補償部13における単位面積当たりの発熱量と熱拡散量の差が等しいので、通電時に温度変化も同一である。また、同一材質、同一厚さおよび幅の配線からなるので、温度変化に伴う内部抵抗変化も同一である。従って、通電時における双方の中間電位が一定に保持される。
【0020】
よって、感磁部12と温度補償部13の間の電圧変化は磁力線の方向にのみ依存し、熱による電圧変化が生じず、検出精度の低下を招くことがない。
【0021】
(第1の実施例)
本発明の第1の実施例に係る磁気抵抗素子は、配線パターンの形成領域の形状が同一ならば、感磁部12の配線パターンと温度補償部13の配線パターンの幅、長さが異なる配線としてある。つまり、感磁部12は感度を得るために温度補償部13よりパターンの幅を広くする。温度補償部13は、感磁部12よりパターンの幅を狭くし、また、長さを長く調整することで感磁部12と内部抵抗を同一とする。感磁部12の配線パターンと温度補償部13の配線パターンは、折り返しでのパターン間のギャップを感磁部12は狭く、温度補償部13は広く形成することにより形成領域を同一形状とすることで、熱収支を同一とすることができる。
【0022】
(第2の実施例)
ここで、上記の各例では、感磁部12および温度補償部13の配線パターンの形成領域の形状が長方形であるが、本発明の第2の実施例に係る磁気抵抗素子では、感磁部12および温度補償部13の配線パターンの形成領域の形状を五角形としてある。
【0023】
すなわち、図2に示すように、磁気抵抗素子11の感磁面には、それぞれ五角形の感磁部12および温度補償部13が形成されており、感磁部12は、強磁性体薄膜を図面上下方向につづら折れ状に引き回した配線パターンからなっている。温度補償部13は、強磁性体薄膜を図面左右方向につづら折れ状に引き回した配線パターンからなっている。
【0024】
感磁部12および温度補償部13は配線部16を介して相互に接続されている。感磁部12は電極15を介して接地側に接続され、温度補償部13は電極14を介して駆動電圧Vccの側に接続される。
【0025】
ここで、本例では、感磁部12および温度補償部13の配線パターンを構成している強磁性体薄膜は同一の材質であり、膜厚、線幅、長さも同一とされている。また、本例では、感磁部12および温度補償部13の配線パターンの形成領域は五角形状であり、形状が同一とされている(従って、双方が同一面積とされている。)。すなわち、駆動電圧側電極14と接地電極15の中間線、換言すると、これらの電極を結ぶ直線の垂直2等分線に対して、感磁部12および温度補償部13の配線パターンの形成領域の形状が対称とされている。また、五角形状の配線パターンの形成領域の頂点のうち、前記中間線から一番離れた位置にある頂点部分は、前記中間線と平行な直線により僅かに切欠かれた形状となっている。更に、感磁部12と温度補償部13とはその形成方向が直交方向となっているので、磁石の回転に応じて感磁部12と温度補償部13とは入れ替わりながら検出動作をおこなうことができる。
【0026】
このように構成した本例の磁気抵抗素子11においても、たとえば、下側が感磁部の場合、感磁部12における単位面積当たりの発熱量と熱拡散量の差と、温度補償部13における単位面積当たりの発熱量と熱拡散量の差が等しいので、通電時に温度変化も同一である。また、同一材質、同一厚さおよび幅の配線からなるので、温度変化に伴う内部抵抗変化も同一である。従って、通電時における双方の中間電位が一定に保持され、また、感磁部12と温度補償部13が入れ替わっても一定に保持することができる。
【0027】
よって、感磁部12と温度補償部13の間の電圧変化は磁力線の方向にのみ依存し、熱による電圧変化が生じず、検出精度の低下を招くことがない。
【0028】
(第3の実施例)
図3は本発明の第3の実施例に係る磁気抵抗素子の感磁面に形成された感磁部と温度補償部の配線パターンを示す説明図である。
【0029】
本例の磁気抵抗素子21の感磁部22も、強磁性体薄膜を図面の上下方向に等しい間隔でつづら折れ状に引き回した配線パターンからなり、温度補償部23も同様に、強磁性体薄膜を図面の左右方向に等しい間隔でつづら折れ状に引き回した配線パターンからなっている。
【0030】
本例では、感磁部22と温度補償部23の配線は、それらの幅、厚さは同一であるが、材質が異なっている。すなわち、温度補償部23の強磁性体には、単位面積当たりの発熱量と熱拡散量の差が大きいNi−Coが使用され、感磁部22の強磁性体には、単位面積当たりの発熱量と熱拡散量の差が小さいNi−Feが使用される。
【0031】
そのため、感磁部22の強磁性体薄膜の配線パターンの形成領域の形状を広幅の長方形とし、温度補償部23の配線パターンの形成領域の形状を狭幅の長方形とし、これにより、双方の熱収差を等しくしてある。
【0032】
この結果、通電時における感磁部22の温度変化と、温度補償部23の温度変化が等しくなる。従って、通電時において感磁部22と温度補償部23の間を繋ぐ配線部26に現れる中間電位は変動せずに一定の保持される。よって、磁気抵抗素子21の検出精度が良好な状態に保持される。
【0033】
なお、強磁性体に用いる物質は、Ni−Co、Ni−Feに限定されるものではない。異なる材質を採用した場合には、それらの熱収支が等しくなるように、配線パターンの表面積、パターン輪郭形状等を適宜変更すればよい。
【0034】
(第3の実施例の変形例)
ここで、上記の磁気抵抗素子の感磁部と温度補償部の熱収差を等しくするためには、例えば次のようにしてもよい。
【0035】
すなわち、感磁部と温度補償部の配線の材質、線幅を同一とし、それらの配線の膜厚を異なったものとしてもよい。例えば、温度補償部の強磁性体の膜厚を薄くし、単位面積当たりの熱拡散量を小さくする。逆に、感磁部の強磁性体の膜厚を温度補償部の強磁性体の膜厚に比べて厚くし、単位面積当たりの熱拡散量を大きくする。
【0036】
双方の配線パターン形成領域の形状は、図3に示す場合と同様に、感磁部側の配線パターンの形成領域を広い長方形とし、他方の温度補償部の方を狭い長方形とする。
【0037】
この構成によっても、双方の部分の膜厚、双方の配線パターン形成領域の形状および面積を調整することにより、双方の部分の熱収支を等しくできる。これにより、通電による感磁部と温度補償部の温度変化を等しくできるので、通電時における感磁部および温度補償部の中間電位を一定に保持でき、精度の良い検出が保証される。
【0038】
なお、温度補償部の強磁性体の膜厚を厚くし、感磁部と温度補償部の配線パターン形成領域の面積差をより大きくする等して、双方の部分の熱収支を等しくすることも可能である。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁気抵抗素子においては、感磁部と温度補償部の強磁性体薄膜の材質、幅、膜厚、長さ、並びに、それらの部分の配線パターン形成領域の輪郭形状や面積を調整することににより、双方の部分の熱収支を等しくしている。
【0040】
従って、本発明によれば、動作時に、双方の部分の加熱状態の相違に起因して内部抵抗が変動して、それらの中点電位が変動してしまうことを回避できる。よって、精度の良い検出動作を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の対象となる磁気抵抗素子における感磁部および温度補償部の配線パターンの基本構成を示す説明図である。
【図2】 本発明の第2の実施例に係る磁気抵抗素子における感磁部および温度補償部の配線パターンを示す説明図である。
【図3】 本発明の第3の実施例に係る磁気抵抗素子における感磁部および温度補償部の配線パターンを示す説明図である。
【図4】 従来の磁気抵抗素子の配線パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
11、21 磁気抵抗素子
12、22 感磁部
13、23 温度補償部
14、15、24、25 電極
16、26 配線
Claims (5)
- 強磁性体薄膜の配線パターンからなる感磁部と、強磁性体薄膜の配線パターンからなる温度補償部と、これらを相互に接続している配線部とを有する磁気抵抗素子において、
前記感磁部および前記温度補償部のそれぞれの配線パターンにおける通電時の熱収支が同一であり、
前記感磁部の配線パターンの形成領域の形状及び前記温度補償部の配線パターンの形成領域の形状は五角形であることを特徴とする磁気抵抗素子。 - 請求項1において、
前記感磁部の配線パターンの形成領域の形状と、前記温度補償部の配線パターンの形成領域の形状とは、駆動電圧側電極と接地電極の中間線に対して対称であることを特徴とする磁気抵抗素子。 - 強磁性体薄膜の配線パターンからなる感磁部と、強磁性体薄膜の配線パターンからなる温度補償部と、これらを相互に接続している配線部とを有する磁気抵抗素子において、
前記感磁部および前記温度補償部のそれぞれの配線パターンにおける通電時の熱収支が同一であり、
前記感磁部の配線パターンと前記温度補償部の配線パターンは、配線パターンの形成領域の形状が同一であり、且つ、幅、長さが異なる配線から形成されていることを特徴とする磁気抵抗素子。 - 強磁性体薄膜の配線パターンからなる感磁部と、強磁性体薄膜の配線パターンからなる温度補償部と、これらを相互に接続している配線部とを有する磁気抵抗素子において、
前記感磁部および前記温度補償部のそれぞれの配線パターンにおける通電時の熱収支が同一であり、
前記感磁部の配線パターンと前記温度補償部の配線パターンは、材質、膜厚、幅、長さのうちの少なくとも二つが相互に異なる配線から形成されていることを特徴とする磁気抵抗素子。 - 強磁性体薄膜の配線パターンからなる感磁部と、強磁性体薄膜の配線パターンからなる温度補償部と、これらを相互に接続している配線部とを有する磁気抵抗素子において、
前記感磁部および前記温度補償部のそれぞれの配線パターンにおける通電時の熱収支が同一であり、
前記感磁部の配線パターンと前記温度補償部の配線パターンは、材質、膜厚、幅、長さのうちの少なくとも一つが相互に異なる配線から形成されており、前記感磁部と前記温度補償部のそれぞれの配線パターンの形成領域の形状および表面積が相違していることを特徴とする磁気抵抗素子。
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