JP3749213B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の空燃比制御装置に関し、特に適応制御器を用いて空燃比を制御するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関に供給する混合気の空燃比を、適応制御器を用いて制御する制御装置は、例えば特許文献1に示されている。この装置によれば、機関の排気系に設けられた空燃比センサにより検出される空燃比が、目標空燃比と一致するように、適応制御器により、適応補正係数KSTRが算出される。そして、この適応補正係数KSTRにより機関に供給する燃料量が補正される。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−73206号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年のCO2排出量低減要求に応えるために、最近の内燃機関は、摩擦の低減がなされ、さらに回転系の慣性モーメントも低減されている。このため、機関の低負荷運転状態において、応答速度が速い適応制御器により算出される適応補正係数KSTRを用いて燃料供給量を制御すると、空燃比変化による微少なトルク変化に起因して機関回転数が変動し、その回転数変動が検出空燃比の過剰な変化を生み、空燃比制御系を共振させるという課題が生じた。特に、吸気弁及び排気弁の開弁作動位相を変化させる可変バルブタイミング機構を備えている機関では、バルブタイミングの変動がこの共振を助長することがあった。
図7(a)は、このような共振が発生する過程を示すタイムチャートである。同図において、NEは機関回転数であり、KACT及びKCMDは、それぞれ検出空燃比及び目標空燃比を、当量比に変換したものである。機関回転数NEの僅かな変化によって検出当量比KACTが変化し、適応補正係数KSTRも同様に変化して、共振が発生している。
【0005】
本発明は、この課題を解決するためになされたものであり、適応制御器を用いて空燃比制御を行う場合に、制御系の共振を確実に防止し、安定した制御を行うことができる空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気系に設けられた空燃比センサ(14)と、前記機関をモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータ(θ)を同定する同定手段(42)、及び該空燃比センサ(14)により検出される空燃比(KACT)が目標空燃比(KCMD)と一致するように、前記モデルパラメータ(θ)を用いて前記機関に供給する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段(41)を含む適応制御手段(31)と、前記機関のアイドル状態において前記機関の回転数を所定回転数に維持する制御を行う回転数制御手段とを備える内燃機関の空燃比制御装置において、前記同定手段(42)は、前記回転数制御手段が作動している場合には、前記機関のアイドル状態において前記回転数制御手段が作動していない場合と比較して前記モデルパラメータ(θ)の更新速度(GMA1〜GMA5)を大きく設定することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、機関回転数を所定回転数に維持する制御を行う回転数制御手段が作動している場合には、アイドル状態において回転数制御手段が作動していない場合と比較してモデルパラメータの更新速度が大きく設定される。回転数制御手段が作動しているときは、機関回転数の変動が抑制されるので、制御系の共振は起きない。したがって、モデルパラメータの更新速度を比較的大きく設定することにより、適応制御の応答速度を高めることができる。一方回転数制御手段が作動していないときは、作動してるときに比べて、モデルパラメータの更新速度を小さくすることにより、制御系の共振を確実に防止することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、内燃機関の排気系に設けられた空燃比センサ(14)と、前記機関をモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータ(θ)を同定する同定手段(42)、及び該空燃比センサにより検出される空燃比(KACT)が目標空燃比(KCMD)と一致するように、前記モデルパラメータ(θ)を用いて前記機関に供給する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段(41)を含む適応制御手段(31)とを備える内燃機関の空燃比制御装置において、前記同定手段(42)は、前記機関の負荷を示す負荷パラメータ(NTI)が所定閾値(GMANTIL)より小さい低負荷運転状態においては、前記負荷パラメータ(NTI)が前記所定閾値(GMANTIL)以上であるときより、前記モデルパラメータ(θ)の更新速度(GMA1〜GMA5)をより小さな値に設定するとともに、前記低負荷運転状態においては、前記機関により駆動される車両の発進時から所定時間(TMGMALSV)内は、該所定時間(TMGMALSV)経過後より、前記モデルパラメータの更新速度(GMA1〜GMA5)をより大きな値に設定することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、機関の負荷を示す負荷パラメータが所定閾値より小さい低負荷運転状態においては、負荷パラメータが前記所定閾値以上であるときより、モデルパラメータの更新速度がより小さな値に設定される。機関負荷が小さいときは、排気量が減少するため、空燃比センサにおけるガス交換速度が低下し、空燃比の検出精度が低下する。具体的には、検出された空燃比の変化幅が、実際の空燃比変化幅より大きくなる。そのため、制御系の共振が起きやすいので、低負荷運転状態において、モデルパラメータの更新速度を低下させることにより、制御系の共振を確実に防止することができる。さらに低負荷運転状態においては、前記機関により駆動される車両の発進時から所定時間内は、該所定時間経過後より、前記モデルパラメータの更新速度を高められる。車両発進時は、機関が一時的に低負荷運転状態となるため、モデルパラメータの更新速度が低められる場合がある。しかし、車両発進時は、低負荷運転状態の後、直ちに排気量が増大する高負荷運転状態となるため、空燃比センサの検出精度の低下時間が短く、またその低下度合も小さい。したがって、モデルパラメータの更新速度を高めて適応制御の応答速度を向上させることにより、空燃比の変動が生じ易い車両発進時の空燃比制御の制御性を高め、触媒浄化率を向上させることができる。
【0012】
請求項に記載の発明は、内燃機関の排気系に設けられた空燃比センサ(14)と、前記機関をモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータ(θ)を同定する同定手段(42)、及び該空燃比センサ(14)により検出される空燃比(KACT)が目標空燃比(KCMD)と一致するように、前記モデルパラメータ(θ)を用いて前記機関に供給する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段(41)を含む適応制御手段(31)とを備える内燃機関の空燃比制御装置において、前記同定手段(42)は、前記機関により駆動される車両の発進時から所定時間(TMGMALSV)内は、該所定時間(TMGMALSV)経過後より、前記モデルパラメータの更新速度(GMA1〜GMA5)がより大きな値に設定されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、前記機関により駆動される車両の発進時から所定時間内は、該所定時間経過後より、モデルパラメータに更新速度がより大きな値に設定される。車両の発進時から所定時間内は、一旦、排気量が少ない状態となるものの、直ちに排気量が十分増加するため、空燃比センサの検出精度が低下しない。詳しくは、制御系の共振周期は、約3秒程度であり、発進時に排気量が少ない条件が成立する時間は、1.5秒以内であるので、モデルパラメータの更新速度を高める時間を1.5秒以内とすれば、共振は発生しない。したがって、モデルパラメータの更新速度を高めて適応制御の応答速度を向上させることができる。車両の発進時は、空燃比の制御性が低下しやすいため、適応制御の応答速度を高めることにより、良好な排気特性を維持することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)及びその制御装置の構成を示す図であり、例えば4気筒のエンジン1の吸気管2の途中にはスロットル弁3が配されている。スロットル弁3にはスロットル弁開度(TH)センサ4が連結されており、当該スロットル弁3の開度に応じた電気信号を出力して電子コントロールユニット(以下「ECU」という)5に供給する。
【0015】
吸気管2にはスロットル弁3をバイパスする補助空気通路17が接続されており、補助空気通路17の途中には補助空気量を制御する補助空気制御弁18が設けられている。補助空気制御弁18は、ECU5に接続されており、ECU5によりその開弁量が制御される。
【0016】
燃料噴射弁6は吸気管2内に燃料を噴射するように各気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にECU5に電気的に接続されてECU5からの信号により燃料噴射弁6の開弁時間が制御される。
一方、スロットル弁3の直ぐ下流には、吸気管内圧力検出手段としての吸気管内絶対圧(PBA)センサ7が設けられており、この絶対圧センサ7により電気信号に変換された絶対圧信号はECU5に供給される。また、その下流には吸気温(TA)センサ8が取付けられており、吸気温TAを検出して対応する電気信号を出力してECU5に供給する。
【0017】
エンジン1の本体に装着されたエンジン水温(TW)センサ9はサーミスタ等から成り、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力してECU5に供給する。
ECU5には、エンジン1のクランク軸(図示せず)の回転角度を検出するクランク角度位置センサ10が接続されており、クランク軸の回転角度に応じた信号がECU5に供給される。クランク角度位置センサ10は、エンジン1の特定の気筒の所定クランク角度位置でパルス(以下「CYLパルス」という)を出力する気筒判別センサ、各気筒の吸入行程開始時の上死点(TDC)より所定クランク角度前のクランク角度位置で(4気筒エンジンではクランク角180度毎に)TDC信号パルスを出力するTDCセンサ及びTDCパルスより短い一定クランク角周期(例えば30度周期)で1パルス(以下「CRKパルス」という)を発生するCRKセンサから成り、CYLパルス、TDCパルス及びCRKパルスがECU5に供給される。これらのパルスは、燃料噴射時期、点火時期等の各種タイミング制御及びエンジン回転数(エンジン回転速度)NEの検出に使用される。
【0018】
エンジン1の各気筒毎に設けられた点火プラグ11は、ECU5に接続されており、点火プラグ11の駆動信号、すなわち点火信号がECU5から供給される。
三元触媒16はエンジン1の排気管12に配置されており、排気中のHC,CO,NOx等の成分の浄化を行う。排気管12の三元触媒16の上流側には、比例型空燃比センサ14(以下「LAFセンサ14」という)が装着されており、このLAFセンサ14は排気中の酸素濃度(空燃比)にほぼ比例する検出信号を出力しECU5に供給する。三元触媒16の下流側には、排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ(以下「O2センサ」という)15が設けられている。O2センサ15は、その出力が理論空燃比の前後において急激に変化する特性を有し、その出力は理論空燃比よりリッチ側で高レベルとなり、リーン側で低レベルとなる。O2センサ15は、ECU5に接続されており、その検出信号はECU5に供給される。
【0019】
エンジン1は、吸気弁及び排気弁のバルブタイミングを、エンジンの高速回転領域に適した高速バルブタイミングと、低速回転領域に適した低速バルブタイミングとの2段階に切換可能なバルブタイミング切換機構30を有する。このバルブタイミングの切換は、弁リフト量の切換も含み、さらに低速バルブタイミング選択時は2つの吸気弁のうちの一方を休止させて、空燃比を理論空燃比よりリーン化する場合においても安定した燃焼を確保するようにしている。
【0020】
バルブタイミング切換機構30は、バルブタイミングの切換を油圧を介して行うものであり、この油圧切換を行う電磁弁及び油圧センサ(図示せず)がECU5に接続されている。油圧センサの検出信号はECU5に供給され、ECU5は電磁弁を制御してエンジン1の運転状態に応じたバルブタイミングの切換制御を行う。
【0021】
ECU5には、エンジン1によって駆動される車両の走行速度(車速)VPを検出する車速センサ21及び大気圧PAを検出する大気圧センサ22が接続されており、これらのセンサの検出信号がECU5に供給される。
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定レベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)、該CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路、前記燃料噴射弁6、点火プラグ11などに駆動信号を供給する出力回路等から構成される。
【0022】
ECU5のCPUは、上述した各種センサの検出信号に基づいて、種々のエンジン運転状態を判別するとともに、該判別されたエンジン運転状態に応じて、次式(1)に基づき、TDC信号パルスに同期して開弁作動する燃料噴射弁6による燃料噴射時間TOUTを演算する。
TOUT=TI×KCMD×KAF×K1+K2…(1)
【0023】
ここに、TIは燃料噴射弁6の基本燃料噴射時間であり、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定されたTIマップを検索して決定される。TIマップは、マップ上のエンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに対応する運転状態において、エンジン1に供給される混合気の空燃比がほぼ理論空燃比になるように設定されている。
【0024】
KCMDは目標空燃比係数であり、エンジン回転数NE、吸気管内絶対圧PBA、エンジン水温TW等のエンジン運転パラメータ及びO2センサ15の検出信号に応じて設定される。目標空燃比係数KCMDは、空燃比A/Fの逆数、すなわち燃空比F/Aに比例し、理論空燃比のとき値1.0をとるので、目標当量比ともいう。
【0025】
KAFは、LAFセンサ14の検出空燃比から算出される検出当量比KACTが目標当量比KCMDに一致するように適応制御またはPID(比例積分微分)制御により算出される空燃比補正係数である。なお、LAFセンサ14の検出空燃比に応じたフィードバック制御を行わないときは、無補正値(1.0)または学習値に設定される。適応制御により適応補正係数KSTRが算出され、PID制御によりPID補正係数KPIDが、算出される。
【0026】
K1及びK2は夫々各種エンジンパラメータ信号に応じて演算される他の補正係数および補正変数であり、エンジン運転状態に応じた燃費特性、エンジン加速特性等の諸特性の最適化が図れるような所定値に決定される。
【0027】
ECU5のCPUはさらに、下記式(2)により点火時期IGLOGを算出する。
IGLOG=IGMAP+IGFB+IGFPI (2)
ここで、IGMAPは、エンジン回転数NE及び吸気管内絶対圧PBAに応じて設定されたIGマップを検索して得られる点火時期の基本値、すなわち上死点からの進角量で示される点火時期である。またIGFPIは、エンジン1の暖機運転中の急速暖機制御実行時においてエンジン回転数NEが目標回転数NEFIRと一致するように負の値に設定される急速暖機遅角補正項であり、IGFBは、暖機完了後のアイドル運転状態において、エンジン回転数NEが目標回転数NOBJと一致するように負の値に設定されるアイドル回転遅角補正項である。
【0028】
ECU5のCPUは上述のようにして求めた燃料噴射時間TOUTに基づいて,燃料噴射弁6を駆動する信号を燃料噴射弁6に供給するとともに、点火時期IGLOGに基づいて点火プラグ11を駆動する信号を点火プラグ11に供給する。さらにECU5のCPUは、エンジン運転状態に応じて補助空気制御弁18の開弁量を制御するための開弁制御量ICMDを算出し、開弁制御量ICMDに応じた駆動信号を補助空気制御弁18に供給する。ECU5のCPUは、下記式(3)により開弁制御量ICMDを算出する。補助空気制御弁18を介してエンジン1の吸入される空気量は、この開弁制御量ICMDに比例するように構成されている。
Figure 0003749213
【0029】
ここで、IFIRは急速暖機制御実行時に使用される急速暖機制御項、IFBは、エンジン1の暖機完了後のアイドル運転状態においてエンジン回転数NEが目標回転数NBJに一致するように設定されるフィードバック制御項、ILOADはエンジン1に加わる電気負荷、空調装置のコンプレッサ負荷、パワーステアリング負荷などのオンオフあるいは自動変速機がインギヤか否かに応じて設定される負荷補正項、KIPA及びIPAは共に大気圧PAに応じて設定される大気圧補正係数及び大気圧補正項である。
【0030】
上記急速暖機制御は、エンジン1の冷間始動時において排気系に設けれられた三元触媒16の昇温を促進するために実行される制御であり、急速暖機制御項IFIRにより、補助空気制御弁18の開弁制御量ICMDを増加させる(吸入空気量を増加させる)とともに、点火時期IGLOGを、急速暖機遅角補正項IGFPIにより遅角させて、エンジン回転数NEを目標回転数NEFIRに維持する制御を行う。この急速暖機制御の詳細は、例えば特開平10−299631号公報に示されている。
【0031】
また暖機完了後のアイドル回転数制御は、補助空気制御弁18の開度を、フィードバック制御項IFBによりフィードバック制御するとともに、点火時期IGLOGを、アイドル回転遅角補正項IGFBによりフィードバック制御することにより行われる。この場合、補助空気制御弁18の開弁制御量ICMDによるフィードバック制御の応答速度は、点火時期IGLOGによるフィードバック制御の応答速度より遅くなるように設定される。アイドル回転数制御により、エンジン回転数NEは、目標回転数NOBJに維持される。このアイドル回転数制御の詳細は、例えば特許第2605371号公報に示されている。
【0032】
図2は、適応補正係数KSTRの算出方法を説明するためのブロック図である。なお、この図に示すブロック31,41,及び42は、具体的には、ECU5のCPUによる演算処理により実現される。
適応補正係数KSTRは、適応制御器31により算出される。適応制御器31は、逆伝達関数コントローラ41及びパラメータ調整機構42とからなる。パラメータ調整機構42は、検出当量比KACT及び適応補正係数KSTRに基づいて、モデルパラメータベクトルθを算出する。モデルパラメータベクトルθは、後述する制御対象モデルを定義する複数のモデルパラメータを要素とするベクトルである。逆伝達関数コントローラ41は、目標当量比KCMD、検出当量比KACT及び適応補正係数KSTRの過去値に基づき、モデルパラメータベクトルθを用いて、制御対象モデルの伝達関数の逆伝達関数により適応補正係数KSTRを算出する。
【0033】
適応制御器31は、制御対象であるエンジン1をモデル化した制御対象モデルに基づいて、適応補正係数KSTRの算出を行う。制御対象モデルは下記式(4)により、3制御サイクルのむだ時間を有するDARXモデル(delayed autoregressive model with exogeneous input:外部入力を持つ自己回帰モデル)として定義されている。
Figure 0003749213
ここで、b0,r1,r2,r3,s0は、パラメータ調整機構42により同定されるモデルパラメータである。またkは、特定の気筒の燃焼サイクルに対応する離散化された制御時刻(サンプル時刻)を示す。
【0034】
モデルパラメータを要素とするモデルパラメータベクトルθ(k)を下記式(5)で定義すると、モデルパラメータベクトルθ(k)は、下記式(6)及び(7)により算出される。
θ(k)T=[b0,r1,r2,r3,s0] (5)
θ(k)=SGMθ(k-1)+dθ(k) (6)
dθ(k)=KP(k)ide(k) (7)
【0035】
式(6)のSGMは、下記式(8)により定義される忘却係数行列であり、式(8)のσは、0から1の間の値に設定される忘却係数である。dθ(k)は、モデルパラメータベクトルθの更新ベクトルである。また式(7)のKP(k)は、下記式(9)により定義されるゲイン係数ベクトルであり、式(9)のP(k)は、下記式(10)により定義される5次の正方行列(以下「ゲイン係数行列」という)である。またide(k)は下記式(11)により定義される同定誤差であり、式(11)のKACTHAT(k)は、下記式(12)により、最新のモデルパラメータベクトルθ(k-1)を用いて算出される推定当量比である。
【数1】
Figure 0003749213
ide(k)=KACT(k)−KACTHAT(k) (11)
KACTHAT(k)=θ(k-1)Tζ(k) (12)
【0036】
上記式(9)、(10)及び(12)のζ(k)は、下記式(13)で定義される、制御出力(KACT)及び制御入力(KSTR)を要素とするベクトルである。
Figure 0003749213
【0037】
式(10)の係数λ1,λ2の設定により、式(6)〜(13)による同定アルゴリズムは、以下のような4つの同定アルゴリズムのいずれかになる。
λ1=1,λ2=0 固定ゲインアルゴリズム
λ1=1,λ2=1 最小2乗法アルゴリズム
λ1=1,λ2=λ 漸減ゲインアルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
λ1=λ,λ2=1 重み付き最小2乗法アルゴリズム(λは0,1以外の所定値)
【0038】
本実施形態では、λ1=1,λ2=0として、固定ゲインアルゴリズムを採用しているが、他のアルゴリズムを採用してもよい。固定ゲインアルゴリズムを採用した場合、ゲイン係数行列Pは、下記式(14)に示すように、定数GMA1,GMA2,GMA3,GMA4,及びGMA5を対角要素とする対角行列(非対角要素がすべて「0」である行列)となる。
【数2】
Figure 0003749213
【0039】
なお、モデルパラメータのドリフトがほとんど起きない場合には、忘却係数行列SGMを含まない下記式(6a)により、モデルパラメータベクトルθ(k)を算出してもよい。
θ(k)=θ(k-1)+dθ(k) (6a)
【0040】
逆伝達関数コントローラ41は、下記式(15)が満たされるように、制御入力としての適応補正係数KSTR(k)を決定する。
KCMD(k)=KACT(k+3) (15)
式(4)を用いると、式(15)の右辺は、以下のようになる。
KACT(k+3)=b0×KSTR(k)+r1×KSTR(k-1)+r2×KSTR(k-2)+r3×KSTR(k-3)+s0×KACT(k)
【0041】
したがって、これより適応補正係数KSTR(k)を求めると、下記式(16)が得られる。
Figure 0003749213
すなわち逆伝達関数コントローラ41は、式(16)により適応補正係数KSTR(k)を算出している。
【0042】
図3は、検出当量比KACTに応じた空燃比補正係数KAFの算出処理のフローチャートである。この処理は、ECU5のCPUにおいてTDCパルスの発生に同期して実行される。
ステップS11では、図4に示すモデルパラメータ演算処理を実行し、モデルパラメータベクトルθ、すなわちモデルパラメータb0,s0,r1〜r3が算出され、さらに各パラメータの移動平均値b0AV,s0AV,r1AV,r2AV,r3AVが算出される。
【0043】
ステップS12では、図5に示す安定性判別処理を実行し、モデルパラメータが安定であると判別されたときは、安定判別フラグFSTRCHKが「0」に設定され、モデルパラメータが不安定であると判別されたときは、安定判別フラグFSTRCHKが「1」に設定される。
【0044】
ステップS13では、安定判別フラグFSTRCHKが「1」であるか否かを判別し、FSTRCHK=1であってモデルパラメータが不安定であるときは、初期化完了フラグFSTRINIを「0」に設定し(ステップS14)、カウンタCSTRONの値を「0」にリセットし(ステップS15)、ステップS19に進む。初期化完了フラグFSTRINIは、モデルパラメータの初期化が完了したとき「1」に設定され、モデルパラメータが不安定となったときやエンジンが停止したときなど、モデルパラメータの初期化が必要となるとき「0」に戻される。カウンタCSTRONは、モデルパラメータの初期化が行われた後の演算回数をカウントする。
【0045】
ステップS13でFSTRCHK=0であって、モデルパラメータが安定であるときは、初期化完了フラグFSTRINIを「1」に設定し(ステップS16)、カウンタCSTRONの値が所定値XCSTRON(例えば28)に達したか否かを判別する(ステップS17)。最初は、CSTRON<XCSTRONであるので、ステップS18に進み、カウンタCSTRONを「1」だけインクリメントする。カウンタCSTRONの値が所定値XCSTRONに達するまでは、モデルパラメータの値が最適値となっていないので、ステップS19に進み、適応補正係数KSTRではなく、PID補正係数KPIDを算出する。
【0046】
ステップS19では、検出当量比KACTと目標当量比KCMDとの偏差に応じたPID制御により、PID補正係数KPIDを算出する。次いで空燃比補正係数KAFを、PID補正係数KPIDに設定し(ステップS20)、本処理を終了する。
【0047】
カウンタCSTRONの値が所定値XCSTRONに達すると、ステップS17からステップS21に進み、下記式(16a)により、適応補正係数KSTRを算出する。式(16a)は、前記式(16)のモデルパラメータb0,r1,r2,r3,s0をそれぞれ移動平均値b0AV,r1AV,r2AV,r3AV,s0AVに置き換え、さらに制御時刻(サンプル時刻)kを制御時刻(サンプル時刻)nに置き換えたものである。制御時刻kは、特定の気筒の燃焼サイクル(クランク角度720度)に対応する制御時刻であり、制御時刻nはTDC周期(本実施形態ではクランク角度180度)に対応する制御時刻であり、制御時刻nは、制御時刻kの4倍の速さで進む。
Figure 0003749213
【0048】
ステップS22では、図6に示す適応補正係数KSTRのリミット処理を実行する。次いで、下記式(17)により、空燃比補正係数KAFを算出し(ステップS23)、本処理を終了する。
KAF=KSTR(n)/KCMD (17)
【0049】
適応補正係数KSTRは、検出当量比KACTが目標空燃比係数KCMDに一致するように演算され、目標空燃比係数KCMDに対応する要素を含むので、基本燃料量TIMに対して、目標空燃比係数KCMDに対応する要素が重複して乗算されないようにするために、式(17)により空燃比補正係数KAFが算出される。
【0050】
図4は、図3のステップS11で実行されるモデルパラメータ演算処理のフローチャートである。
ステップS31では、初期化完了フラグFSTRINIが「1」であるか否かを判別し、FSTRINI=0であるときは、モデルパラメータの初期化を行う(ステップS32)。具体的には、メモリに格納されているモデルパラメータb0の最新値及び過去値を全て「1.0」に設定するとともに、移動平均値b0AVを「1.0」に設定する。さらに、他のモデルパラメータr1〜r3,及びs0の最新値及び過去値を全て「0」に設定するとともに、対応する移動平均値r1AV,r2AV,r3AV及びs0AVを「0」に設定する。モデルパラメータの初期化終了後は、ステップS35に進む。
【0051】
ステップS31でFSTRINI=1であるときは、モデルパラメータの前回算出時から4TDC期間(TDCパルスの4周期分の期間、すなわち1燃焼サイクル)が経過したか否かを判別する(ステップS33)。前記式(4)で定義される制御対象モデルや、式(5)〜(16)により算出される制御入力が、ある特定の気筒の燃焼サイクルに対応する制御時刻(サンプル時刻)kを用いて定義されているため、本実施形態では、モデルパラメータベクトルθ、すなわちモデルパラメータb0,s0,r1〜r3の算出は、4TDC期間に1回、ある特定の気筒の燃焼サイクルに同期して行う。したがって、ステップS33の答が肯定(YES)であるときは、ステップS35〜S46を実行してモデルパラメータベクトルθの算出を行う一方、ステップS33の答が否定(NO)であるときは、モデルパラメータベクトルθを前回値保持とする(ステップS34)。すなわちステップS34では、モデルパラメータb0(n),s0(n),r1(n)〜r3(n)を、それぞれ前回値b0(n-1),s0(n-1),r1(n-1)〜r3(n-1)に設定する。その後ステップS47に進む。
【0052】
ステップS35では、安定判別フラグFSTRCHKが「1」であるか否かを判別し、FSTRCHK=1であってモデルパラメータが不安定であるときは、ゲイン係数行列Pを、安定化用行列PCHKに設定する(ステップS36)。すなわち、ゲイン係数行列Pの対角要素GMA1,GMA2,GMA3,GMA4,及びGMA5を、すべて安定化用所定値GAMMACHK(例えば0.05)に設定する。その後ステップS46に進む。
【0053】
ステップS35でFSTRCHK=0であってモデルパラメータが安定であるときは、アイドルフラグFIDLEKAFが「1」であるか否かを判別する(ステップS37)。アイドルフラグFIDLEKAFは、エンジン回転数NEが所定低回転数NEIDLより低くかつスロットル弁開度THが所定低開度THIDLより小さいとき「1」に設定される。FIDLEKAF=1であってエンジン1がアイドル状態にあるときは、アイドルフィードバック制御フラグFIGIDLが「1」であるか否かを判別する(ステップS41)。アイドルフィードバック制御フラグFIGIDLは、上述したアイドル回転数制御が実行されるとき「1」に設定されるフラグである。アイドルフィードバック制御フラグFIGIDLが「0」であるときは、急速暖機フィードバック制御フラグFFIRENEFBが「1」であるか否かを判別する(ステップS42)。急速暖機フィードバック制御フラグFFIRENEFBは、急速暖機制御実行中において、点火時期の急速暖機遅角補正項IGFPIによるエンジン回転数NEのフィードバック制御が実行されているとき「1」に設定される。
【0054】
ステップS41またはS42の答が肯定(YES)であるとき、すなわちエンジン回転数NEを目標回転数NOBJまたはNEFIRに維持する制御が実行されているときは、ダウンカウントタイマTMGMLSを、所定時間TMGMALSV(例えば1.5秒)にセットしてスタートさせ(ステップS44)、ゲイン係数行列Pを、回転数維持制御用行列PIDに設定する(ステップS45)。すなわち、ゲイン係数行列Pの対角要素GMA1,GMA2,GMA3,GMA4,及びGMA5を、それぞれ回転数維持制御用所定値GAMMA1ID(例えば0.09),GAMMA2ID(例えば0.09),GAMMA3ID(例えば0.09),GAMMA4ID(例えば0.09),及びGAMMA5ID(例えば0.09)に設定する。その後ステップS46に進む。
【0055】
ステップS41及び42の答がともに否定(NO)であって、エンジン回転数NEを目標回転数に維持する制御が実行されていないときは、ゲイン係数行列Pを、低負荷運転用行列PLSに設定する。すなわち、ゲイン係数行列Pの対角要素GMA1,GMA2,GMA3,GMA4,及びGMA5を、それぞれ低負荷運転用所定値GAMMA1LS(例えば0.07),GAMMA2LS(例えば0.00),GAMMA3LS(例えば0.00),GAMMA4LS(例えば0.00),及びGAMMA5LS(例えば0.00)に設定する。その後ステップS46に進む。
【0056】
一方、FIDLEKAF=0であってエンジン1がアイドル状態以外の運転状態にあるときは、負荷パラメータNTIが所定閾値GMANTILより小さいか否かを判別する(ステップS38)。負荷パラメータNTIは、単位時間当たりの燃料噴射量に比例するパラメータであり、具体的は、燃料噴射時間TOUTにエンジン回転数NEを乗算することにより算出される。
【0057】
負荷パラメータNTIが所定閾値GMANTIL以上であるときは、ゲイン係数行列Pを、高負荷運転用行列PHLに設定する(ステップS40)。すなわち、ゲイン係数行列Pの対角要素GMA1,GMA2,GMA3,GMA4,及びGMA5を、それぞれ高負荷運転用所定値GAMMA1HL(例えば0.14),GAMMA2HL(例えば0.14),GAMMA3HL(例えば0.14),GAMMA4HL(例えば0.14),及びGAMMA5HL(例えば0.14)に設定する。その後ステップS46に進む。
【0058】
負荷パラメータNTIが所定閾値GMANTILより小さいときは、ステップS38からステップS39に進み、ステップS44でスタートされるダウンカウントタイマTMGMLSの値が「0」であるか否かを判別する。TMGMLS>0である間は、前記ステップS40に進み、TMGMLS=0となると、前記ステップS43に進む。
【0059】
タイマTMGMLSの値が「0」より大きいときは、当該車両の発進直後であり、車両発進後所定時間TMGMALSVが経過するまでは、高負荷運転用行列PHLが使用される。このように、NTI<GMANTILが成立する低負荷運転状態においては、ゲイン係数行列Pは、原則として低負荷運転用行列PLSに設定されるが、車両発進時から所定時間TMGMALSV内は、高負荷運転用行列PHLに設定される。
【0060】
上述したゲイン係数行列Pの対角要素GMA1〜GMA5として使用される各所定値は、例えば以下のように設定される。
1)低負荷運転用所定値GAMMA1LSは、回転数維持制御用所定値GAMMA1ID以下に設定され、かつ高負荷運転用所定値GAMMA1HLは、回転数維持制御用所定値GAMMA1IDより大きな値に設定される(GAMMA1LS≦GAMMA1ID<GAMMA1HL)。
【0061】
2)回転数維持制御用所定値GAMMA1ID,GAMMA2ID,GAMMA3ID,GAMMA4ID,及びGAMMA5IDは、いずれも低負荷運転用所定値GAMMA2LS,GAMMA3LS,GAMMA4LS,及びGAMMA5LSより大きな値に設定され、高負荷運転用所定値GAMMA1HL,GAMMA2HL,GAMMA3HL,GAMMA4HL,及びGAMMA5HLは、いずれも回転数維持制御用所定値GAMMA1ID,GAMMA2ID,GAMMA3ID,GAMMA4ID,及びGAMMA5IDより大きな値に設定される(GAMMA2LS〜GAMMA5LS<GAMMA1ID〜GAMMA5ID<GAMMA1HL〜GAMMA5HL)。
なお、低負荷運転用所定値GAMML2LS〜GAMML5LSは、いずれも例えば「0」に設定される。
【0062】
ステップS46では、下記式(6b),(7a),(9a),(11a),(12a),及び(13a)によるモデルパラメータベクトル、すなわちモデルパラメータb0,s0,r1〜r3の算出を行う。これらの式は、前記式(6),(8),(9),(11),(12),及び(13)の制御時刻kを制御時刻nに置き換えたものである。
【数3】
Figure 0003749213
【0063】
続くステップS47では、下記式(21)〜(25)により、移動平均値b0AV,s0AV,r1AV,r2AV,及びr3AVを算出する。
【数4】
Figure 0003749213
【0064】
移動平均化演算により得られるモデルパラメータb0AV,s0AV,r1AV,r2AV,及びr3AVを用いて適応補正係数KSTRを算出することにより、モデルパラメータベクトルを4TDC期間に1回の頻度で更新すること、及びLAFセンサ14のローパス特性に起因する適応制御の不安定化を防止することができる。
【0065】
以上のように図4の処理によれば、エンジン1のアイドル状態においてエンジン回転数NEを目標回転数NOBJまたはNEFIRに維持する制御が行われているときは、低負荷運転用所定値GAMMA1LS〜GAMMA5LS以上の回転数維持制御用所定値GAMMA1ID〜GAMMA5IDが適用される。すなわち、回転数維持制御(アイドル回転数制御または急速暖機制御)が実行されているときは、モデルパラメータの更新速度は、低負荷運転状態で通常適用される更新速度より大きな値に設定される。回転数制維持制御が実行されているときは、エンジン回転数NEの変動が抑制されるので、制御系の共振は起きない。したがって、モデルパラメータの更新速度を比較的大きく設定することにより、適応制御の応答速度を高めることができる。一方回転数維持制御が実行されていないときは、モデルパラメータの更新速度を小さくすることにより、制御系の共振を確実に防止することができる。
【0066】
また低負荷運転用所定値GAMMA1LS〜GAMMA5LSは、高負荷運転用所定値GAMMA1HL〜GAMMA5HLより小さな値に設定される。すなわちモデルパラメータの更新速度は、低負荷運転状態においては、より小さな値に設定される。エンジン負荷が小さいときは、排気量が減少するため、LAFセンサ14におけるガス交換速度が低下し、空燃比の検出精度が低下する。そのため制御系の共振が起きやすいので、低負荷運転状態において、モデルパラメータの更新速度を低下させることにより、制御系の共振を確実に防止することができる。
【0067】
ただし、負荷パラメータNTIが所定閾値GMANTILより小さい低負荷運転状態であっても、車両発進時から所定時間TMGMALSV内は、高負荷運転用所定値GAMMA1HL〜GAMMA5HLが適用される、すなわちモデルパラメータの更新速度が高められる。車両発進時は、エンジンが一時的に低負荷運転状態となるが、車両発進時から所定時間TMGMALSV内は、直ちに、排気量が十分に増加するため、LAFセンサ14の検出精度が低下しない。したがって、モデルパラメータの更新速度を高めて適応制御の応答速度を向上させることができる。
【0068】
図5は、図3のステップS12で実行される安定性判別処理のフローチャートである。
ステップS62では、モデルパラメータの移動平均値b0AV,s0AV,r1AV,r2AV,r3AVを、下記式(26),(27)に適用し、第1及び第2の安定判別パラメータCHKPAR1、CHKPAR2を算出する。
Figure 0003749213
【0069】
ステップS63では、第1の安定判別パラメータCHKPAR1が第1の判定閾値OKSTR1(例えば0.6)より小さいか否かを判別し、CHKPAR1<OKSTR1であるときは、さらに第2の安定判別パラメータCHKPAR2が第2の判定閾値OKSTR2(例えば0.4)より小さいか否かを判別する(ステップS64)。ステップS63及びS64の答がともに肯定(YES)であるときは、モデルパラメータは安定であると判定し、ダウンカウンタNSTRCHKに所定値NSTRSHK0(例えば4)をセットする(ステップS65)とともに、安定判別フラグFSTRCHKを「0」に設定する(ステップS66)。安定判別フラグFSTRCHKは、「0」に設定されるとモデルパラメータが安定であることを示す。
【0070】
ステップS63またはS64の答が否定(NO)であるときは、ダウンカウンタNSTRCHKの値が「0」以下か否かを判別する(ステップS67)。最初は、NSTRCHK>0であるので、ダウンカウンタNSTRCHKの値を「1」だけデクリメントし(ステップS68)、本処理を終了する。ダウンカウンタNSTRCHKの値が「0」となると、ステップS67からステップS69に進み、安定判別フラグFSTRCHKを「1」に設定する。
【0071】
図6は、図3のステップS22で実行されるリミット処理のフローチャートである。
ステップS72では、適応補正係数KSTRが、目標当量比KCMDに上限係数O2LMTH(例えば1.2)を乗算することにより得られる上限値O2LMTH×KCMDより大きいか否かを判別する。KSTR>O2LMTH×KCMDであるときは、適応補正係数KSTRをその上限値O2LMTH×KCMDに設定する(ステップS76)。そして、上限値または下限値に設定したことを示すために、リミットフラグFKSTRLMTを「1」に設定する(ステップS77)。
【0072】
ステップ72の答が否定(NO)であるときは、適応補正係数KSTRが、目標当量比KCMDに下限係数O2LMTL(例えば0.5)を乗算することにより得られる下限値O2LMTL×KCMDより小さいか否かを判別する(ステップS73)。KSTR<O2LMTL×KCMDであるときは、適応補正係数KSTRをその下限値O2LMTL×KCMDに設定し(ステップS75)、前記ステップS77に進む。
また、ステップS72及びS73の答がともに否定(NO)であって、適応補正係数KSTRが上限値と下限値の間にあるときは、リミットフラグFKSTRLMTを「0」に設定する(ステップS74)。
【0073】
図7(a)は、従来の適応制御器を用いた空燃比制御において、制御系の共振が発生する過程を示すタイムチャートである。すなわち、ゲイン係数行列Pが一定であったため、回転数維持制御が実行されない低負荷運転状態において、制御系の共振が発生していた。これに対し、本実施形態では上述したようなゲイン係数行列Pの対角要素の設定により、図7(b)に示すように、制御系の共振が発生せず、安定した制御を行うことができる。
【0074】
本実施形態では、ECU5が、同定手段、空燃比制御手段、適応制御手段、回転数制御手段を構成する。具体的には、図3のステップS11、すなわち図4の処理が同定手段に相当し、図3のステップS21が空燃比制御手段に相当し、図3のステップS11及びS21が適応制御手段に相当する。また、ECU5のCPUにより実行されるアイドル回転数制御及び急速暖機制御が、回転数制御手段に相当する。
【0075】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、エンジン負荷を示す負荷パラメータNTIを用いたが、吸入空気量センサを備えている場合には、吸入空気量センサにより検出される吸入空気量(流量)を負荷パラメータとして用いてもよい。
【0076】
また本発明は、クランク軸を鉛直方向とした船外機などのような船舶推進機用エンジンなどの制御にも適用が可能である。
【0077】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、機関回転数を所定回転数に維持する制御を行う回転数制御手段が作動している場合には、機関のアイドル状態において回転数制御手段が作動していない場合と比較してモデルパラメータの更新速度が大きく設定される。回転数制御手段が作動しているときは、機関回転数の変動が抑制されるので、制御系の共振は起きない。したがって、モデルパラメータの更新速度を比較的大きく設定することにより、適応制御の応答速度を高めることができる。一方回転数制御手段が作動していないときは、作動してるときに比べて、モデルパラメータの更新速度を小さくすることにより、制御系の共振を確実に防止することができる。
【0078】
請求項2に記載の発明によれば、機関の負荷を示す負荷パラメータが所定閾値より小さい低負荷運転状態においては、負荷パラメータが前記所定閾値以上であるときより、モデルパラメータの更新速度がより小さな値に設定される。機関負荷が小さいときは、排気量が減少するため、空燃比センサにおけるガス交換速度が低下し、空燃比の検出精度が低下する。具体的には、検出された空燃比の変化幅が、実際の空燃比変化幅より大きくなる。そのため、制御系の共振が起きやすいので、低負荷運転状態において、モデルパラメータの更新速度を低下させることにより、制御系の共振を確実に防止することができる。さらに低負荷運転状態においては、前記機関により駆動される車両の発進時から所定時間内は、該所定時間経過後より、前記モデルパラメータの更新速度を高められる。車両発進時は、機関が一時的に低負荷運転状態となるため、モデルパラメータの更新速度が低められる場合がある。しかし、車両発進時は、低負荷運転状態の後、直ちに排気量が増大する高負荷運転状態となるため、空燃比センサの検出精度の低下時間が短く、またその低下度合も小さい。したがって、モデルパラメータの更新速度を高めて適応制御の応答速度を向上させることにより、空燃比の変動が生じ易い車両発進時の空燃比制御の制御性を高め、触媒浄化率を向上させることができる。
【0080】
請求項に記載の発明によれば、前記機関により駆動される車両の発進時から所定時間内は、該所定時間経過後より、モデルパラメータに更新速度がより大きな値に設定される。車両の発進時から所定時間内は、一旦、排気量が少ない状態となるものの、直ちに排気量が十分増加するため、空燃比センサの検出精度が低下しない。詳しくは、制御系の共振周期は、約3秒程度であり、発進時に排気量が少ない条件が成立する時間は、1.5秒以内であるので、モデルパラメータの更新速度を高める時間を1.5秒以内とすれば、共振は発生しない。したがって、モデルパラメータの更新速度を高めて適応制御の応答速度を向上させることができる。車両の発進時は、空燃比の制御性が低下しやすいため、適応制御の応答速度を高めることにより、良好な排気特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関及びその空燃比制御装置の構成を示す図である。
【図2】適応制御器の構成を示す図である。
【図3】空燃比補正係数(KAF)を算出する処理のフローチャートである。
【図4】モデルパラメータ演算処理のフローチャートである。
【図5】モデルパラメータの安定性判別処理のフローチャートである。
【図6】適応補正係数(KSTR)のリミット処理のフローチャートである。
【図7】本発明の効果を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 吸気管
5 電子制御ユニット(同定手段、空燃比制御手段、適応制御手段、回転数制御手段)
6 燃料噴射弁
14 空燃比センサ
31 適応制御器(適応制御手段)
41 逆伝達コントローラ(空燃比制御手段)
42 パラメータ調整機構(同定手段)

Claims (3)

  1. 内燃機関の排気系に設けられた空燃比センサと、前記機関をモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータを同定する同定手段、及び該空燃比センサにより検出される空燃比が目標空燃比と一致するように、前記モデルパラメータを用いて前記機関に供給する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段を含む適応制御手段と、前記機関のアイドル状態において前記機関の回転数を所定回転数に維持する制御を行う回転数制御手段とを備える内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記同定手段は、前記回転数制御手段が作動している場合には、前記機関のアイドル状態において前記回転数制御手段が作動していない場合と比較して前記モデルパラメータの更新速度を大きく設定することを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
  2. 内燃機関の排気系に設けられた空燃比センサと、前記機関をモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータを同定する同定手段、及び該空燃比センサにより検出される空燃比が目標空燃比と一致するように、前記モデルパラメータを用いて前記機関に供給する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段を含む適応制御手段とを備える内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記同定手段は、前記機関の負荷を示す負荷パラメータが所定閾値より小さい低負荷運転状態においては、前記負荷パラメータが前記所定閾値以上であるときより、前記モデルパラメータの更新速度をより小さな値に設定するとともに、前記低負荷運転状態においては、前記機関により駆動される車両の発進時から所定時間内は、該所定時間経過後より、前記モデルパラメータの更新速度をより大きな値に設定することを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
  3. 内燃機関の排気系に設けられた空燃比センサと、前記機関をモデル化した制御対象モデルのモデルパラメータを同定する同定手段、及び該空燃比センサにより検出される空燃比が目標空燃比と一致するように、前記モデルパラメータを用いて前記機関に供給する混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段を含む適応制御手段とを備える内燃機関の空燃比制御装置において、
    前記同定手段は、前記機関により駆動される車両の発進時から所定時間内は、該所定時間経過後より、前記モデルパラメータの更新速度をより大きな値に設定することを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。
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