JP3749144B2 - 水冷式ストーカ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼却炉内で固形燃料を燃焼させる際に、その固形燃料を投入位置から焼却炉奥まで搬送する水冷式ストーカに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な水冷式ストーカが特開平11−51359号公報に記載されており、図5にその概略側面図が示されている。この水冷式ストーカ50は、焼却炉60内で固形燃料Rを支持する複数本の水冷管52を備えており、これらの水冷管52が固形燃料Rの投入位置62から灰溜部64の位置まで傾斜した状態で設置されている。水冷管52の下には、可動部材54がその水冷管52に沿って移動できるように設置されており、その可動部材54に形成された複数の突部54tが各々の水冷管52の間から上方に突出している。焼却炉60の外部には、可動部材54を移動させるシリンダ56が設置されており、そのシリンダ56と可動部材54とがリンク部材58によって連結されている。
シリンダ56が動作して可動部材54が水冷管52に沿って移動すると、水冷管52上の固形燃料Rは可動部材54の突部54tによって灰溜部64の方向に押圧される。これによって、固形燃料Rは水冷管52上を灰溜部64まで搬送される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した水冷式ストーカ50は、固形燃料Rを機械的な搬送手段によって灰溜部64まで搬送する方式のため、搬送構造が複雑である。さらに、搬送手段の可動部分である可動部材54及びリンク部材58等は水冷が困難なため、水冷管52に比べて温度上昇が大きく、摩耗し易い。このため、水冷式ストーカ50の耐久性が低いという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、水冷式ストーカの可動部分を大幅に減少させて、構造を簡単化するとともに、水冷可能範囲を増加させて、水冷式ストーカの耐久性向上を図ることを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、焼却炉内で固形燃料を燃焼させる際に、その固形燃料を焼却炉前部の投入位置から後部の焼却炉奥まで搬送する水冷式ストーカであって、前記焼却炉の前部側壁に形成された前部開口から前端部が外側に突出しており、前記焼却炉内で前側が高く、後側が低くなるように傾斜した状態で、前記投入位置から前記焼却炉奥に至るまで配置されている板状の傾斜部材と、前記焼却炉の外部に設置されており、前部開口から外側に突出した前記傾斜部材の前端部を昇降させてその傾斜部材の傾斜角度を調整するとともに、所定の振動周波数で前記傾斜部材の前端部を上下方向に振動させる振動昇降装置とを有しており、前記振動昇降装置で前記傾斜部材を所定の振動周波数で上下振動させることにより、前記焼却炉内に投入されてその傾斜部材の上面で受けられた前記固形燃料を前記投入位置から斜め下方の前記焼却炉奥まで重力を利用して搬送する構成であることを特徴とする。
【0005】
本発明によると、振動昇降装置により傾斜部材を振動させ、重力を利用してその傾斜部材により固形燃料を斜め下方の焼却炉奥まで導く方式のため、固形燃料を機械的に搬送する可動部材等が不要になり、水冷式ストーカの構造が簡単になる。また、可動部材等が存在しないため、傾斜部材の水冷が容易になり、その傾斜部材の温度上昇を効率的に抑えることができる。このため、水冷式ストーカの耐久性が向上する。なお、振動昇降装置は焼却炉の外部に設置されているため、熱による損傷を受けることがない。
また、振動昇降装置により、傾斜部材の傾斜角度を固形燃料の形状やサイズに応じた適正角度に設定することが可能になる。このため、固形燃料の種類等を適宜変更することが可能になる。
【0007】
また、請求項2に示すように、複数本の水冷管と、各々の水冷管の間を塞ぐように配置された板材とから傾斜部材を構成し、その板材に複数の開口を設けるようにすれば、それらの開口を通って燃焼空気が下方から上方に抜けるようになる。これによって、固形燃料及び灰等が燃焼空気によって押上げられ、その固形燃料及び灰等が傾斜部材上をスムーズに移動できるようになる。ここで、開口の寸法は固形燃料が落下しない寸法に設定されているため、未燃焼の固形燃料が焼却炉の底部に落下するような不都合はない。さらに、傾斜部材が振動するので開口の目詰まりが発生し難い。
【0008】
また、請求項3に示すように、傾斜部材の上面には、固形燃料の投入位置から焼却炉奥の方向に延びる溝が形成されているため、固形燃料は前記溝によりガイドされて前記投入位置から焼却炉奥まで効率的に導かれる。さらに、傾斜部材が振動しても前記溝の働きで固形燃料が傾斜部材の幅方向に移動し難くなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図1から図4に基づいて、本発明の実施形態1に係る水冷式ストーカ及びその水冷式ストーカを備える焼却炉の説明を行う。ここで、図1は水冷式ストーカの一部破断斜視図であり、図2は水冷式ストーカの側面図である。また、図3は水冷式ストーカを備える焼却炉の縦断面図、図4は図3のIV- IV矢視断面図である。ここで、焼却炉の幅方向をX方向、焼却炉の前後方向をY方向及び高さ方向をZ方向として以下の説明を行う。
【0010】
焼却炉1は、固形燃料、例えば、ゴミ固形燃料(RDF)やプラスチック固形燃料あるいは木質固形燃料等を燃焼させる炉であり、図3、図4に示すように、炉本体10と、その炉本体10上に設置されたボイラ本体20と、炉本体10で発生した排ガスを吸引する排気装置18とから構成されている。
炉本体10は耐熱炉材12によって略直方体の容器状に形成されており、底部13と、ガス化部14と、燃焼部15及び煙道部16とから構成されている。ここで、炉本体10の内部圧力は、排気装置18の排気ファン18dの吸引力を受けることで、ガス化部14及び燃焼部15等において約−10mmAq(ミリアキュア)、底部13で約+5mmAqとなる。
【0011】
炉本体10の底部13には、奥側(後側)(図3において右側)に灰溜室13hが形成されており、その灰溜室13h内にプッシャ式の幅方向灰出部材13pが設置されている。灰溜室13hは一定高さの隔壁13kによって底部13の前室13fと仕切られており、その前室13fに灰を掻き出す掻出部材13yが設置されている。掻出部材13yの一部は炉本体10の外部に突出しており、その突出部分に掻出部材13yを動作させるシリンダ13cが連結されている。前室13fに溜まった灰は掻出部材13yによって掻き出されてピット13xに落される。
【0012】
炉本体10の底部13の側壁には、図4に示すように、複数の下部ノズル13nが設けられており、それらの下部ノズル13nに分岐燃焼空気配管3aが接続されている。分岐燃焼空気配管3aは燃焼ブロア2と連通する第1空気配管3mから分岐されており、その第1空気配管3mに燃焼空気量を調節する調節弁3vが取付けられている。即ち、調節弁3vで第1空気配管3mに流す燃焼空気量を調節することで、下部ノズル13nから炉本体10の底部13に供給する燃焼空気量を調整することができる。
【0013】
炉本体10の底部13の上方にはガス化部14が位置している。ガス化部14は、炉本体10に投入された固形燃料Rを移動させながら熱分解してガス化させる部分であり、燃料供給フィーダ30と水冷式ストーカ40とを備えている。さらに、ガス化部14の前部には、図示されていない着火バーナ等も設けられている。
【0014】
燃料供給フィーダ30は、固形燃料Rを連続して炉本体10の内部に投入する装置であり、固形燃料Rを溜めるホッパ32を有している。ホッパ32の下には燃料投入管34が設置されており、その燃料投入管34の端部が炉本体10の前面(図4において左面)に形成された燃料投入口12mに接続されている。燃料投入管34の内部には、ホッパ32から落下した固形燃料Rを炉本体10の内部に送るスクリュー36が装着されており、そのスクリュー36の回転軸36hにモータ37の回転軸が接続されている。これによって、モータ37の回転数を制御することにより、炉本体10の内部に投入する固形燃料Rの量を調整することができる。
【0015】
水冷式ストーカ40は、燃料供給フィーダ30によって投入された固形燃料Rを受けてその固形燃料Rを投入位置11から灰溜室13hまで重力を利用して搬送する装置であり、傾斜部材42と振動昇降装置48とから構成されている。
傾斜部材42は、炉本体10のガス化部14と底部13とを上下に仕切る板状部材であり、炉本体10の前側(投入位置11側)で高く、後側(灰溜室13h側)で低くなるように傾斜した状態で配置される。傾斜部材42の前後方向(Y方向)には、図1(A)に示すように、複数本の水冷管43が平行に設けられており、各々の水冷管43の間が帯状の板材44によって塞がれている。即ち、傾斜部材42の上面には、複数本の水冷管43と板材44とによって前後方向に延びる複数の溝Mが形成されている。なお、板材44は水冷管43の外周面に、例えば、溶接等により固定される。
【0016】
傾斜部材42の板材44には多数の小孔44hが水冷管43に沿って形成されており(図1(A)参照)、それらの小孔44hの内径が固形燃料Rのサイズよりも小さく設定されている。これによって、傾斜部材42上の固形燃料Rが炉本体10の底部13に落下することがない。さらに、ガス化部14の炉内圧力は底部13の炉内圧力よりも低いため、燃焼空気が小孔44hを通って下から上(底部13からガス化部14)に抜けるようになる。傾斜部材42の材料には、例えば、耐熱性の特殊鋼が使用される。なお、小孔44hの代わりに、図1(B)に示すように、水冷管43に沿ってスリット44sを形成することも可能である。
即ち、小孔22h、スリット44sが本発明の開口に相当する。
【0017】
傾斜部材42の前端部には、図2、図3に示すように、幅方向(X方向)に第1ヘッダ45が設けられており、その第1ヘッダ45に各々の水冷管43の前端が接続されている。また、傾斜部材42の後端部には、幅方向(X方向)に第2ヘッダ46が設けられており、その第2ヘッダ46に各々の水冷管43の後端が接続されている。
傾斜部材42の後端部に設けられた第2ヘッダ46は底部13の隔壁13k上に載置されており、傾斜部材42の前部が炉本体10の前部開口12hを通って炉本体10の外側に突出している。そして、傾斜部材42の前端部に設けられた第1ヘッダ45が振動昇降装置48によって下方から支持されている。
【0018】
振動昇降装置48は、傾斜部材42の第1ヘッダ45を昇降させてその傾斜部材42の傾斜角度を調整するとともに、傾斜部材42を所定振動周波数で、例えば上下方向に振動させる働きをする。なお、振動昇降装置48は予め決められた範囲内で振動周波数を変更することが可能である。即ち、振動昇降装置48が本発明の振動手段、角度調整手段に相当する。
傾斜部材42の第1ヘッダ45は図示されていないロータリジョイント及び伸縮管21を介して後記するボイラ本体20の上昇管22に接続されている。また、傾斜部材42の第2ヘッダ46は同じく図示されていないロータリジョイントを介してボイラ本体20の降水管23に接続されている。これによって、ボイラ本体20から降水管23によって供給された冷却水は、傾斜部材42の第2ヘッダ46、水冷管43、第1ヘッダ45を通過してその傾斜部材42を冷却した後、上昇管22を通って再びボイラ本体20に戻される。
【0019】
炉本体10のガス化部14の側壁には、図4に示すように、複数の中部ノズル14nが設けられており、それらの中部ノズル14nから固形燃料Rのガス化に必要な燃焼空気が供給される。中部ノズル14nは、分岐燃焼空気配管4a、第2空気配管4mを介して燃焼ブロア2と連通しており、その第2空気配管4mに燃焼空気量を調節する調節弁4vが取付けられている。
【0020】
ガス化部14の上方には燃焼部15が位置している。燃焼部15は、ガス化部14でガス化された固形燃料Rのガス化成分を火炎燃焼させる部分であり、ガス化部14と連通した状態で形成されている。ガス化部14の後半部と燃焼部15の後半部とは、図3に示すように、輻射熱防止壁14bによって上下に仕切られており、ガス化がほぼ完了した固形燃料Rの温度が輻射熱で上昇しすぎないように配慮されている。
【0021】
燃焼部15の側壁には、図4に示すように、複数の上部ノズル15nが設けられており、それらの上部ノズル15nから固形燃料Rのガス化成分の燃焼に必要な燃焼空気が供給される。上部ノズル15nは、分岐燃焼空気配管5a、第3空気配管5mを介して燃焼ブロア2と連通しており、その第3空気配管5mに燃焼空気量を調節する調節弁5vが取付けられている。
ここで、燃焼部15には燃焼ブロア2から圧送される全燃焼空気の約70%が供給され、上記したガス化部14には約20%、底部13には約10%が供給される。
【0022】
燃焼部15の上部は天井壁15yで塞がれており、その天井壁15yの上にボイラ本体20が設置されている。天井壁15yの後端部には、図3に示すように、垂下壁15tが形成されており、その垂下壁15tと輻射熱防止壁14bとの間に燃焼部出口15dが形成される。燃焼部15は燃焼部出口15dを介して炉本体10の後部に設けられた煙道部16に接続されている。
煙道部16は、横壁16kによって上部煙道16uと下部煙道16dとに分割されており、その下部煙道16dが燃焼部15に接続される。
【0023】
上記したボイラ本体20は水(缶水)を溜める略円筒形をした密閉容器であり、その密閉容器の上部に前述の上昇管22が接続され、密閉容器の下部に前述の降水管23が接続されている。
ボイラ本体20には密閉容器を長手方向(Y方向)に貫通して複数本の煙管25,27が設けられている。煙管25,27は、ボイラ本体20の中央よりも上側と下側とに分けられており、下側の煙管25(第1煙管25)の前開口と上側の煙管27(第2煙管27)の前開口とがガス室29を介して連通している。また、第1煙管25の後開口は煙道部16の下部煙道16dに接続されており、第2煙管27の後開口が煙道部16の上部煙道16uに接続されている。
【0024】
このため、炉本体10の燃焼部15で発生した排気ガスは、燃焼部出口15d、下部煙道16d、ボイラ本体20の第1煙管25、ガス室29及び第2煙管27を通過して上部煙道16uから排気装置18の排気管18aに吸引される。そして、排気ガスがボイラ本体20の第1煙管25及び第2煙管27を通過する過程で、排気ガスと缶水との間で熱交換が行われる。
なお、ボイラ本体20には、そのボイラ本体20で発生した蒸気を使用場所まで導く蒸気配管が接続されているが、図では省略されている。
【0025】
次に、上記した焼却炉1の動作説明を行う。
先ず、固形燃料Rの種類に応じて水冷式ストーカ40の振動昇降装置48が動作し、傾斜部材42の傾斜角度が調整されるとともに、その傾斜部材42に所定周波数の上下振動が加えられる。ここで、傾斜部材42の傾斜角度及びその傾斜部材42に加えられる振動周波数は、固形燃料Rが投入位置11から灰溜室13hまで、例えば30分程度で移動できるように調整される。
【0026】
また、下部ノズル13nから炉本体10の底部13に供給される燃焼空気量が全体の約10%、中部ノズル14nから炉本体10のガス化部14に供給される燃焼空気量が全体の約20%、上部ノズル15nから炉本体10の燃焼部15に供給される燃焼空気量が全体の約70%になるように、調節弁3v,4v,5vが調節される。
さらに、排気装置18の排気ファン18dの働きで、炉本体10の炉内圧力はガス化部14及び燃焼部15において約−10mmAq、底部13で約+5mmAqとなる。このため、傾斜部材42の小孔44hを通過して燃焼空気が下から上(底部13からガス化部14)に抜けるようになる。
【0027】
次に、燃料供給フィーダ30によって固形燃料Rが燃料投入口12mから連続的に炉本体10の内部に投入される。炉本体10に投入された固形燃料Rは水冷式ストーカ40の傾斜部材42によって受けられ、その傾斜部材42の上面に形成された溝Mに沿ってゆっくりと灰溜室13hの方向に移動する。このとき、傾斜部材42の小孔44hを通って下から上に抜ける燃焼空気によって、傾斜部材42上の固形燃料Rが押上げられるため、固形燃料Rが移動し易くなる。また、傾斜部材42が振動するため、固形燃料Rが集合して塊になったり、ブリッヂ状になることもない。さらに、振動により傾斜部材42の水冷管43とその水冷管43を流れる冷却水との熱交換効率が向上する。なお、傾斜部材42が振動しても溝Mの働きで固形燃料Rが傾斜部材42の幅方向に移動することはない。
【0028】
傾斜部材42上を灰溜室13hの方向(後方)に移動する固形燃料Rは、燃焼部15の炉壁からの輻射熱を受けて加熱(約300℃から約450℃程度)され、低い空気比の下で熱分解されて、ガス化する。固形燃料Rのガス化には、中部ノズル14nからガス化部14に供給される燃焼空気と、下部ノズル13nから底部13に供給され、傾斜部材42の小孔44hを通って上方に抜ける燃焼空気とが使用される。
【0029】
中部ノズル14n及び小孔44hから炉本体10のガス化部14に供給される燃焼空気量は小量(全体の約30%程度)であるため、傾斜部材42の近傍では空気比が小さくなる。このため、固形燃料Rのガス化成分は、傾斜部材42の近傍で激しく燃焼することがなく、傾斜部材42に高熱が加わることがない。さらに、傾斜部材42は水冷管43を流れるボイラ本体20の缶水によって冷却されているため、傾斜部材42の温度は通常400℃以下になる。このため、傾斜部材42の上面に灰の溶融物(クリンカ)が付着するようなことがない。
【0030】
固形燃料Rが熱分解することにより発生したガス化成分は燃焼部15まで上昇し、この位置で上部ノズル15nから供給された燃焼空気と混合されて火炎燃焼する。通常、燃焼部15内の平均温度は約800℃以上となり、滞留時間は2秒以上となる。熱分解により発生したガス化成分には微粒子も含まれるが、傾斜部材42の振動によりそのガス化成分と燃焼空気とが良好に混合して、ガス化成分が燃焼し易くなる。
燃焼部15で固形燃料Rのガス化成分が火炎燃焼することにより発生した排気ガスは、燃焼部出口15d、下部煙道16d、ボイラ本体20の第1煙管25、ガス室29及び第2煙管27を通過して上部煙道16uから排気装置18の排気管18aに吸引される。そして、排気ガスがボイラ本体20の第1煙管25及び第2煙管27を通過する過程で、排気ガスと缶水との間で熱交換が行われる。
【0031】
水冷式ストーカ40の傾斜部材42上でガス化成分が除去された固形燃料Rは、その傾斜部材42上を移動する過程で燃焼し、最後に残った灰分だけが傾斜部材42の後端から灰溜室13hに落下する。そして、灰溜室13hに落された灰分が幅方向灰出部材13pによって炉本体10の外部に排出される。
即ち、灰溜室13hが本発明の焼却炉奥に相当する。
【0032】
上記したように焼却炉1で使用される水冷式ストーカ40は、振動昇降装置48により傾斜部材42を振動させ、重力を利用して固形燃料Rを傾斜部材42により斜め下方の灰溜室13hまで導く方式のため、固形燃料Rを機械的に搬送する可動部材等が不要になり、水冷式ストーカ40の構造が簡単になる。また、可動部材等が存在しないため、傾斜部材42の水冷が容易になり、その傾斜部材42の温度上昇を効率的に抑えることができる。このため、水冷式ストーカ40の耐久性が向上する。なお、振動昇降装置48は炉本体10の外部に設置されているため、熱による損傷を受けることがない。
【0033】
また、振動昇降装置48で傾斜部材42の傾斜角度を調整できるため、傾斜部材42の傾斜角度を固形燃料Rの形状やサイズあるいは重量に応じた適正角度に設定することが可能になる。このため、固形燃料Rの種類を適宜変更することが可能である。
また、傾斜部材42は、複数本の水冷管43と、各々の水冷管43の間を塞ぐように配置された板材44とから構成されており、その板材44に複数の小孔44hが設けられているため、それらの小孔44hを通って燃焼空気が下方から上方に抜けるようになる。これによって、固形燃料R及び灰等が燃焼空気によって押上げられ、その固形燃料R及び灰等が傾斜部材42上をスムーズに移動できるようになる。さらに、傾斜部材42が振動するので小孔44hの目詰まりが発生し難い。なお、小孔44hの寸法は固形燃料Rが落下しない寸法に設定されているため、未燃焼の固形燃料Rが炉本体10の底部13に落下するような不都合はない。
また、傾斜部材42の振動はボイラ本体20にまで伝わるため、その振動の影響でボイラ本体20の煙管25,27等に飛灰や煤等が堆積し難くなる。
【0034】
なお、本実施形態では、傾斜部材42の第1ヘッダ45とボイラ本体20の上昇管22とを伸縮管21によって接続する例を示したが、図2(B)に示すように、折り曲げ可能なリンク状の連結管49を使用して接続することも可能である。
また、本実施形態では、各々の水冷管43の間にそれぞれ帯状の板材44を配置して溶接する例を示したが、各々の水冷管43の上に溝Mを有する一枚の板材を被せて固定する構造でも可能である。
また、振動昇降装置48で傾斜部材42を上下方向に振動させる例を示したが、上下左右に振動させる構造にすることも可能である。
【0035】
また、炉本体10の底部13、ガス化分14、燃焼部15に供給する燃焼空気量を調節弁3v,4v,5vで調節する例を示したが、調節弁3v,4v,5vを使用せずに配管径を変えたり、ノズル本数を変えることで燃焼空気量を調節することも可能である。
また、炉本体10の底部13に下部ノズル13nから燃焼空気を供給する例を示したが、温風等を供給することも可能である。
【0036】
なお、実施形態1により把握される発明であって特許請求の範囲に記載されていない発明を以下に追記する。
1)請求項1記載の水冷式ストーカであって、
振動手段には、振動数を調整する振動数調整手段が設けられていることを特徴とする水冷式ストーカ。
2)請求項1から請求項4のいずれかに記載の水冷式ストーカを備える焼却炉。
【0037】
【発明の効果】
本発明によると、固形燃料を機械的に搬送する可動部材等が不要になるため、水冷式ストーカの構造が簡単になるとともに、水冷が容易になって水冷式ストーカの温度上昇を効率的に抑えることができる。このため、水冷式ストーカの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係る水冷式ストーカにおける傾斜部材の一部破断斜視図(A図)及びその傾斜部材の変更例を表す一部破断斜視図(B図)である。
【図2】水冷式ストーカの側面図(A図)及び水冷式ストーカの傾斜部材とボイラ本体の上昇管との接続部材を表す側面図(B図)である。
【図3】水冷式ストーカを備える焼却炉の縦断面図である。
【図4】図3のIV -IV矢視断面図である。
【図5】従来の水冷式ストーカを備える焼却炉の縦断面図である。
【符号の説明】
R 固形燃料
1 焼却炉
10 炉本体
13h 灰溜室(焼却炉奥)
20 ボイラ本体
40 水冷式ストーカ
42 傾斜部材
43 水冷管
44 板材
44h 小孔(開口)
44s スリット(開口)
M 溝
48 振動昇降装置(振動手段、角度調整手段)
Claims (3)
- 焼却炉内で固形燃料を燃焼させる際に、その固形燃料を焼却炉前部の投入位置から後部の焼却炉奥まで搬送する水冷式ストーカであって、
前記焼却炉の前部側壁に形成された前部開口から前端部が外側に突出しており、前記焼却炉内で前側が高く、後側が低くなるように傾斜した状態で、前記投入位置から前記焼却炉奥に至るまで配置されている板状の傾斜部材と、
前記焼却炉の外部に設置されており、前部開口から外側に突出した前記傾斜部材の前端部を昇降させてその傾斜部材の傾斜角度を調整するとともに、所定の振動周波数で前記傾斜部材の前端部を上下方向に振動させる振動昇降装置とを有しており、
前記振動昇降装置で前記傾斜部材を所定の振動周波数で上下振動させることにより、前記焼却炉内に投入されてその傾斜部材の上面で受けられた前記固形燃料を前記投入位置から斜め下方の前記焼却炉奥まで重力を利用して搬送する構成であることを特徴とする水冷式ストーカ。 - 請求項1記載の水冷式ストーカであって、
傾斜部材は、
複数本の水冷管と、
各々の水冷管の間を塞ぐように配置された板材と、
前記板材に形成された複数の開口とを有しており、
前記開口の寸法は、固形燃料が落下しない寸法に設定されていることを特徴とする水冷式ストーカ。 - 請求項2に記載の水冷式ストーカであって、
傾斜部材の上面には、固形燃料の投入位置から焼却炉奥の方向に延びる複数の溝が、隣り合う水冷管と、それらの水冷管の間に設けられた板材とにより形成されていることを特徴とする水冷式ストーカ。
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