JP3747762B2 - トーションビーム式サスペンション - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、トーションビーム式サスペンションに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のトーションビーム式サスペンションとして、例えば実開昭63−70412号公報に記載の先行技術が知られている。
この先行技術は、図6に示すように、前輪2及び後輪4を備えた車両6において後輪4を懸架するトーションビーム式サスペンション8であり、このトーションビーム式サスペンション8は、トーションビーム10、トレーリングアーム12、パナールロッド14、緩衝機等を備えている。
【0003】
トーションビーム10は、図7に示すように、車幅方向に延在するビーム部材16と、ビーム部材16の両側に取り付けたスティフナ18とで構成されている。
ビーム部材16は、図8に示すように、前壁16aと後壁16bと、これらの壁を接続する湾曲状の上壁16cとからなり、断面が逆U字状を呈している。ビーム部材16と同様に断面が逆U字状をなしているスティフナ18は、ビーム部材16の前壁16aと後壁16bの外面に合わせて溶着されている。トレーリングアーム12は、後端をスティフナ18の上面に溶着している。
【0004】
符号20は、スティフナ18の外側寄り(スピンドル22側)の上部で車両前後方向に貫通している連結ロッドであり(図8参照)、符号24、26は、トレーリングアーム12の後端が、スティフナ18に溶着している位置より内側寄りでスティフナ18及びビーム部材16の両者に貫通している連結ロッドである。ここで、連結ロッド26は、パナールロッド14の取り付け用軸として使用されている。
【0005】
そして、スピンドル22に車両前後方向の荷重が作用すると、スピンドル22を基準に考えると、トーションビーム10は比較的大きな撓み角をもって変位し、スピンドル22とトーションビーム10との取付け部に大きな応力が発生する。
また、左右の後輪4、4の車両上下方向のストロークに位相差が生じた場合には、スピンドル22に上下方向への荷重が作用することでトーションビーム10に曲げ及び捩れ荷重が作用し、トレーリングアーム12を基準に考えると、捩れ、曲げによりトーションビーム10は比較的大きな撓み角、捩れ角をもって変位し、トレーリングアーム12とトーションビーム10との取付け部にも大きな応力が発生する。
【0006】
このような大きな応力が発生しても、上述した先行技術は、車両前後方向の荷重に対しては、トーションビーム10の断面を逆U字状として軽量化を図りつつ、連結ロッド20がスティフナ18を貫通し、連結ロッド24がスティフナ18及びビーム部材16を貫通してトーションビーム10の車両前後方向の曲げ剛性を高めているので、スピンドル22及びビーム部材16の取り付け部と、トレーリングアーム12及びビーム部材16の固着部に生じる応力を緩和することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の先行技術は、左右の後輪4、4の車両上下方向のストロークに位相差が生じた場合に、トーションビーム10が捩りによって後輪4、4の左右の位相差を吸収するという捩じり性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
すなわち、左右の後輪4、4の位相差を即座に吸収するような最適な捩じり剛性を有するトーションビームとするには、トレーリングアーム12との取り付け部より車幅方向の内側に位置するトーションビームの端部側の捩じり剛性をできるだけ小さく設定しなければならない。ところが、先行技術のトーションビーム10は、トレーリングアーム12の後端がスティフナ18に溶着している位置より内側に連結ロッド24が貫通しているので、この連結ロッド24ではビーム部材16の端部側の捩じり変形(前壁16a及び後壁16bが逆方向に移動するねじり変形)を抑制することになり、捩じり剛性が大きい。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、トーションビームの最適な捩じり剛性を確保した上で軽量化を図りつつ、トーションビームの最適な車両前後方向の曲げ剛性を付与することができるトーションビーム式サスペンションを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、車幅方向に延在して左右の車輪を連結し、車両前後方向の前方に位置する前壁及び後方に位置する後壁を有して横断面逆U字状をなすトーションビームと、このトーションビームから車両前後方向の前方に延在しており、前端部を車体側部材に揺動自在に連結し、後端部を前記トーションビームの車幅方向の両端側に固着した一対のトレーリングアームとを備えたトーションビーム式サスペンションにおいて、前記トーションビームの前記前壁及び前記後壁の間に、前記トーションビームの車幅方向の端部と接しないように前記端部との間に隙間を設けながら、前記トレーリングアームの前記後端部が固着している位置と車幅方向で同一位置に、車両前後方向に延在するビーム補強部材を局部的に固着した。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のトーションビーム式サスペンションにおいて、前記ビーム補強部材を、前記トーションビームの前壁及び後壁の下面に固着した板状部材で構成した。
さらに、請求項3記載の発明は、請求項2記載のトーションビーム式サスペンションにおいて、前記ビーム補強部材の車両前後方向の板幅を、前記前壁及び前記後壁に固着する板部の板幅を大きく、これら板部の間に位置する板幅を小さく設定した。
【0012】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載のトーションビーム式サスペンションによると、トレーリングアームの後端部が固着している位置と車幅方向で同一位置となるトーションビームの前壁及び後壁の間に車両前後方向に延在するビーム補強部材を局部的に固着しているので、トーションビームの車両前後方向の曲げ剛性が高まるとともに、左右の車輪の上下方向のストロークに位相差が生じた場合でも、ビーム補強部材によってトーションビームの捩じり変形を抑制することがなく、トーションビームに最適な捩じり剛性を付与することができる。したがって、トーションビームの最適な捩じり剛性を確保した上で軽量化を図りつつ、トーションビームの最適な車両前後方向の曲げ剛性を付与することができる。
【0013】
また、請求項2記載のトーションビーム式サスペンションによると、ビーム補強部材を安価な板状部材で構成したので、トーションビーム式サスペンションのコスト低減を図ることができる。
【0014】
さらに、請求項3記載のトーションビーム式サスペンションによると、ビーム補強部材は、トーションビームの前壁に固着する部分及び後壁に固着する部分の間の板幅を、前壁及び後壁より小さく設定したので、自身の捩じり変形量も容易に設定することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明のトーションビーム式サスペンションの実施形態を図面を参照しつつ説明する。
先ず構成を説明すると、本実施形態のトーションビーム式サスペンションは、図1に示すように、トーションビーム30が車体幅方向に延び、そのトーションビーム30の左右両端にそれぞれ、アクスル32を介して左右の後輪(図示せず)が回転自在に支持されている。
【0016】
そのトーションビーム30の車幅方向の左右両端側に、車幅方向に互いに平行に離間して車両前後方向に延在している2本のトレーリングアーム34の後端部が固着している。なお、各トレーリングアーム34の前端部は、図示しないが車体側部材に揺動可能に連結している。
また、トーションビーム30よりも車体前後方向の後方に、ラテラルリンク36が配置されている。
【0017】
このラテラルリンク36は、トーションビーム30に固定した取付けブラケット38から車体前後方向の後方に向けて取付けピン40を突設し、その取付けピン40の先端部でビーム側取付け部42を揺動可能に支持しており、このビーム側取付け部42の外筒がラテラルリンク36の本体に固定されている。
また、ラテラルリンク36の本体はコントロールロッド44を配置するために内部が中空となった部材であり、コントロールロッド44は、コントロールロッド本体44aと、そのコントロールロッド本体44aの一方の端部に固定される取付け部44b、コントロールロッド本体44aの他方の端部に固定される取付け部(図示せず)とからなっている。
【0018】
そして、ラテラルリンク36の車体側取付け部46は、車体側取付けブラケット48を介して図示しないクロスメンバ及びサイドメンバに取り付けられている。
さらに、トーションビーム30の車幅方向の両端部には、それぞれショックアブソーバ50の下端部50aが取り付けられており、各ショックアブソーバ50は、上方に延びて、その上端部を車体側部材に連結している。
【0019】
ここで、図2から図5は、トーションビーム式サスペンションのトレーリングアーム34の接合部付近の具体的な構造を示すものである。図2は前記端部側の斜視図、図3は端部側を車幅方向から示した図、図4は後述するビーム補強部材60の外観を示す平面図、図5は端部側を平面視で示した図である。
端部側の構造は、断面が逆U字形状のビーム部材52と、ビーム部材52の車幅方向の端部の上面で重なるように溶着によって固着した湾曲形状のリーンフォース部材54とでトーションビーム30が構成されており、これらビーム部材52及びリーンフォース部材54の車幅方向の端部に、スピンドル56を一体化した連結プレート58が固着されているとともに、リーンフォース部材54の上面に、トレーリングアーム34の車両前後方向の後端部が固着している。
【0020】
ビーム部材52は、図3に示すように、車両前後方向の前方に位置する前壁52aと、車両前後方向の後方に位置する後壁52bと、これらの壁を接続する湾曲状の上壁52cとからなり、上壁52cの上面を覆い、前壁52a及び後壁52bを下部側を残して覆うようにリーンフォース部材54が固着されている。
ビーム部材52と同様に断面が逆U字状をなしているリーンフォース部材54は、ビーム部材52の前壁52aと後壁52bの外面に合わせて溶着されている。トレーリングアーム34は、後端をリーンフォース部材54の上面に溶着している。
【0021】
ここで、ビーム部材52の下部には、車両前後方向に延在する板状のビーム補強部材60が前壁52a及び後壁52bの間を局部的に補強するように固着されている。
このビーム補強部材60は、図4に示すように、前壁52aの下面に固着する第1の固着面60aと、後壁52bの下面に固着する第2の固着面60bと、この第2の固着面60から直角に立ち上がって後壁52bの下部側面に固着する立ち上がり固着部60cとを備え、第1の固着面60a及び第2の固着面60bの間の板幅は、車両前後方向の中央部に向かうに従い徐々に小さな幅となるように設定している。
【0022】
そして、このビーム補強部材60は、図5に示すように、平面視においてトレーリングアーム34の後端部に重なり、しかも、トレーリングアーム34より車幅方向の外側に延在するように配置されている。つまり、図5の符号Aで示す範囲であるトレーリングアーム34の後端部に重なる位置には必ず存在し、図5の符号Bで示す範囲の何れかの位置に配置されている。
【0023】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
スピンドル56に車両前後方向の荷重が作用すると、スピンドル56を基準に考えた場合、スピンドル56とトーションビーム30との間の連結プレート58に大きな応力が発生する。また、左右の後輪の上下方向のストロークに位相差が生じた場合には、スピンドル56に、上下方向への荷重が作用することで、トーションビーム30に曲げ及び捩れ荷重が作用し、トレーリングアーム34を基準に考えると、捩れ、曲げによりトーションビーム30が大きな撓み角、捩れ角をもって変位することで、トレーリングアーム34とトーションビーム30との取付け部に大きな応力が発生する。
【0024】
ところが、このような大きな応力が発生しても、本実施形態では、トーションビーム30の構成部材としてのビーム部材52の断面を逆U字状として軽量化を図りつつ、ビーム部材52の下部の前壁52a及び後壁52bの間において車両前後方向に延在するようにビーム補強部材60を固着しているのでトーションビーム30の車両前後方向の曲げ剛性が高まり、スピンドル56及びビーム部材52の取り付け部と、トレーリングアーム30及びビーム部材52の固着部に生じる応力を緩和することができる。
【0025】
しかも、本実施形態では、平面視においてトレーリングアーム34の後端部に重なり、しかも、トレーリングアーム34より車幅方向の外側に延在するように、ビーム補強部材60をビーム部材52の前壁52a及び後壁52bの間に固着したので、左右の後輪に車両の上下方向のストロークの位相差が生じた場合に、ビーム補強部材60でビーム部材52の端部側の捩じり変形(前壁52a及び後壁52bが逆方向に移動するねじり変形)を抑制することなく、最適な捩じり剛性に設定することができる。
【0026】
そして、トーションビーム30の捩じり剛性に影響が出ないように、ビーム補強部材60の車幅方向の外側への範囲(図5のBの範囲)を広げることで、車両前後方向の曲げ剛性を更に高めることができる。なお、図5の符号Cは、従来技術(実開昭63−70412号公報)において捩じり剛性が小さくなってしまう連結ロッド24、26を貫通した位置である。
【0027】
また、ビーム補強部材60は、ビーム部材52の前壁52aに固着する第1の固着面60a及び後壁52bの第2の固着面60bの間の板幅を、車両前後方向の中央部に向かうに従い徐々に小さな幅となるように設定しているので、自身の捩じり変形量も容易に設定することができる。
さらに、ビーム補強部材60を安価な板状部材で構成しているので、トーションビーム式サスペンションのさらなるコスト低減を図ることができる。
【0028】
したがって、本実施形態は、トーションビーム30の最適な捩じり剛性を確保した上で軽量化を図りつつ、トーションビーム30の最適な車両前後方向の曲げ剛性を付与することができるトーションビーム式サスペンションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトーションビーム式サスペンションの一実施形態を示す斜視である。
【図2】一実施形態の車幅方向の端部側の構造を示す斜視図である。
【図3】端部側を車幅方向から示した図である。
【図4】本発明に係るビーム補強部材を示す平面図である。
【図5】一実施形態の車幅方向の端部側を平面視で示した図である。
【図6】従来のトーションビーム式サスペンションの概略を示す図である。
【図7】従来のトーションビーム式サスペンションを車両前後方向から示した図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7のIX−IX線断面図である。
【符号の説明】
30 トーションビーム
34 トレーリングアーム
52 ビーム部材
52a 前壁
52b 後壁
54 リーンフォース部材
60 ビーム補強部材
Claims (3)
- 車幅方向に延在して左右の車輪を連結し、車両前後方向の前方に位置する前壁及び後方に位置する後壁を有して横断面逆U字状をなすトーションビームと、このトーションビームから車両前後方向の前方に延在しており、前端部を車体側部材に揺動自在に連結し、後端部を前記トーションビームの車幅方向の両端側に固着した一対のトレーリングアームとを備えたトーションビーム式サスペンションにおいて、
前記トーションビームの前記前壁及び前記後壁の間に、前記トーションビームの車幅方向の端部と接しないように前記端部との間に隙間を設けながら、前記トレーリングアームの前記後端部が固着している位置と車幅方向で同一位置に、車両前後方向に延在するビーム補強部材を局部的に固着したことを特徴とするトーションビーム式サスペンション。 - 前記ビーム補強部材を、前記トーションビームの前壁及び後壁の下面に固着した板状部材で構成したことを特徴とする請求項1記載のトーションビーム式サスペンション。
- 前記ビーム補強部材の車両前後方向の板幅を、前記前壁及び前記後壁に固着する板部の板幅を大きく、これら板部の間に位置する板幅を小さく設定したことを特徴とする請求項2記載のトーションビーム式サスペンション。
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