JP3747333B2 - 新規3−イミノクロルアゼチジノン誘導体及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般式(1)で示される新規化合物3−イミノクロルアゼチジノン誘導体とその製造方法に関するものである。
本発明で示される一般式(1)の新規化合物3−イミノクロルアゼチジノン誘導体は、各種セファロスポリン系抗生物質の合成中間体となり得る重要な化合物であり、医薬製造産業上の利用価値は極めて高い。
【0002】
【従来の技術】
本発明に係る一般式(1)で表される誘導体の既知類似化合物としては、例えば特公平5−65515号公報及び特公平6−39474号公報に示されている。
それらの化合物は下記一般式(4):
【0003】
【化5】
【0004】
(式中、R1 、R2 は前記と同義であり、XはClまたはBrを示す)
または下記一般式(5)
【0005】
【化6】
【0006】
(式中、R1 、R2 、R3 は前記と同義であり、XはH又は/及びハロゲン、Yはハロゲンを示す)で示されるものである。
上記化合物のうち、化合物(4)はイミノハロ体構造を有するが、骨格はセファロスポリンである。また、化合物(5)は構造的に良く似ているが、アミド構造を取っており、本発明の化合物とは異なる。しかも、反応経路も異なるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、セファロスポリン系医薬中間体として重要な化合物であるアゼチジノン誘導体と、それを簡単な工程で製造する方法について鋭意研究を続けた結果、上記一般式(1)で表される3−イミノクロルアゼチジノン誘導体が、この目的に適合する新規化合物であることを確認したものである。
またその新規化合物は、一般式(2)で表されるアゼチジノン誘導体に、有機溶媒中、塩化水素捕集剤の存在下で五塩化リンを反応させた後、塩素化剤と反応させて製造することができることを見いだし、本発明を完成させた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記の一般式(1)
【0009】
【化7】
【0010】
(式中、R1 は、置換又は置換基を有しないアリール基を示し、R2 はカルボキシル基の保護基を示し、R3 は置換又は置換基を有しないアリール基を示す)
で表される新規化合物を提供するものである。
さらに本発明は、下記の一般式(2)
【0011】
【化8】
【0012】
(式中、R1 、R2 、R3 は前記と同義である)で表されるアゼチジノン誘導体を有機溶媒中塩化水素捕集剤の存在下、五塩化リンと反応させて、下記の一般式(3)
【0013】
【化9】
【0014】
(式中、R1 、R2 、R3 は前記と同義である)で表されるイミノクロル体を生成させた後、次いで該イミノクロル体を有機溶媒中塩素化剤と0℃以下の温度で反応させてなる製造方法を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、一般式(1)に示す新規化合物のうちR1の具体例としては、例えばフェニル基、トリル基、p−クロロフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−メトキシフェニル基等の置換もしくは置換基を有しないアリール基を挙げることができる。
R2 のカルボン酸保護基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、2,2,2,−トリクロロエチル基、2−クロロエチル基等のハロゲンを含むことのある低級アルキル基、ベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−メトキシベンジル基、3,4,5−トリメトキシベンジル基、ジフェニルメチル基等の置換もしくは置換基を有しないアリールメチル基、フェニル基、p−メトキシフェニル基等の置換もしくは置換基を有しないアリール基を挙げることができる。
R3 の具体例としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−クロロフェニル基等の置換もしくは置換基を有しないアリール基を挙げることができる。
本発明の化合物は、イミノクロル体構造を有する。通常、この種のイミノハロ体は不安定な化合物であり、アルコール、次いで水で処理すると、下記反応式(A)のような経路で、
【0016】
【化10】
【0017】
(ここに、R4 はメチル、エチル等の低級アルキル基)
のアミノ体になるが、本発明の化合物は常温付近での上記反応処理では、立体的な理由でアミノ体になることはなく、安定な化合物であることにその特徴を有する。
このような本発明に係る新規3−イミノクロルアセチジノン系化合物は、セファロスポリン系抗生物質の合成中間体として有用であるが、上記一般式(1)において、R1 がフェニル、R2 p−メトキシベンジル及びR3 がフェニルのものがとくに有効であろうと思われる。
【0018】
本発明の製造方法は、2つの反応工程からなっており、第1の反応工程で使用される出発原料として用いられる一般式(2)のアゼチジノン誘導体は、例えば特開昭50−129590号公報、特開昭59−164771号公報及び特開平5−51361号公報に示され、各種セファロスポリン系抗生物質の重要な合成中間体として既に既知の化合物である。
本発明の第1の反応工程は、一般式(2)で表されるアゼチジノン誘導体を有機溶媒中塩化水素捕集剤の存在下、五塩化リンと反応させて、一般式(3)で表されるイミノクロル体を生成させるものである。
【0019】
この反応で使用される有機溶媒は、低級ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ジ低級アルキルエーテル、環状エーテル、低級ジアルコキシエタン、脂肪族アミド等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上の混合溶媒として用いられる。例えばクロロホルム、ジクロルメタン、ジクロルエタン、四塩化炭素等の低級ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のジ低級アルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,2−ジベンジルオキシエタン等の低級ジアルコキシエタン、ジメチルホルムアミド等の脂肪族アミド等が挙げられる。
【0020】
塩化水素捕集剤としては、例えばピリジン、ピコリン、トリエチルアミン等の第三級アミン、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のエポキシド類、炭酸ソーダ、炭酸カルシウム、重炭酸ソーダ等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
【0021】
この第1反応工程における条件は、原料の物性、溶媒の種類および塩化水素捕集剤によって異なるが、反応温度は通常−30〜10℃、好ましくは−2〜4℃であり、反応時間は通常0.5〜10時間、好ましくは1〜3時間である。
化合物(2)のアゼチジノン誘導体に対する五塩化リンと塩化水素捕集剤の使用量は特に制限されないが、通常、化合物(2)に対して五塩化リンが1〜5倍モル、好ましくは1〜3倍モル、塩化水素捕集剤が1〜10倍モル、好ましくは1〜3倍モルが適当である。
【0022】
次に、第2反応工程では、上記で得られたイミノクロル体の反応液を有機溶媒中塩素化剤を反応させて、本発明の新規化合物を生成させる。
塩素化剤としては、例えば塩素ガス、t−BuOCl、Cl2O等を挙げることができる。塩素ガスは、ガス状または不活性有機溶媒、例えば四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム等の低級ハロゲン化炭化水素の溶媒として反応させることもできる。
塩素化剤の使用量は特に制限されないが、通常、化合物(2)に対して1〜5倍モル、好ましくは2〜3倍モルが適当である。
なお、本反応の塩素化は、前段の反応で使用している五塩化リンではこの塩素化が進まない。
この反応では、下記に示す有機溶媒を用いることにより、一般式(3)に示されるイミノクロル体を更に塩化水素捕集剤を用いることなく、容易に塩素化を行うことができる。
【0023】
この反応で使用される有機溶媒は前記で挙げたものと同様であるが、低級ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ジ低級アルキルエーテル、環状エーテル、脂肪族アミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上の有機溶媒が好ましく、特に、低級ハロゲン化炭化水素と環状エーテルの混合溶媒が好ましく、通常ジクロロメタン1(容)に対してジオキサン1〜3(容)、好ましくはジオキサン2(容)の混合溶媒が適当である。
【0024】
この反応での反応温度は0℃以下であって、通常、−20〜0℃、好ましくは−5〜0℃である。
このようにして製造される本発明の化合物は、通常の分離精製手段により容易に単離することができる。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
[p−メトキシベンジル−2−(3−(1−クロロ−2,2−ジクロロ−2−フェニルエチリデンアミノ)−4−ベンゼンスルホニルチオ−2−アゼチジノン−1−イル)−3−クロロメチル−3−ブテノエート]の製造
撹拌器付き300ml4つ口フラスコを十分に窒素置換して、五塩化リン3.5g(0.017モル)とジクロロメタン50mlを仕込み、30〜35℃で撹拌、溶解させた。次に、−5〜−10℃まで冷却し、白色スラリーにビリジン1.35g(0.017モル)をゆっくり滴下した。同温度で20分間撹拌した。
次に、p−メトキシベンジル−2−(3−フェニルアセトアミド−4−ベンゼンスルホニルチオ−2−アゼチジノン−1−イル)−3−メチル−3−ブテノエート5.0g(0.0084モル)を加え、0℃で1時間撹拌した。
次に、反応液を冷却しつつ100mlのジオキサンを加え、0℃にて42gの5.7%Cl2 含有ジクロロメタン(Cl2 =0.034モル)を滴下した。
反応終了後、該反応液に冷却水を添加して、ジクロロメタンを抽出した後、濃縮しオイル状の物質を得た。
該オイル状の物質をジリカゲルカラム(WAKOGEL C-3,300g)/n-ヘキサンに吸着させ、n-ヘキサン:エチルエーテル=2:3の混合溶媒にて流出したものを集め、該溶媒を濃縮し、本発明の化合物(A)1.3gの白色固体を得た。収率は22%であった。
【0026】
【化11】
【0027】
NMR、MS、IR等による分析結果を以下に示す。
【0028】
【0029】
▲3▼MS(FAB):714 m/Z(M+)
▲4▼IR(KBr):ν2950,1785,1740,1665,1608,1515,1440,1325,1240,1140, 590 cm-1
【0030】
【発明の効果】
本発明の新規3−イミノクロルアゼチジノン誘導体は、各種セファロスポリン系抗生物質の合成中間体となり得る重要な化合物であり、医薬製造産業上の利用価値は極めて高い。また、本発明の方法により、新規3−イミノクロルアゼチジノン誘導体を、簡便な反応工程で製造することができる。
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