JP3746145B2 - 金属−セラミックス複合材料の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、金属に強化材を複合させる金属−セラミックス複合材料の製造方法に関し、特に大気開放される一般の電気炉を用いて製造する金属−セラミックス複合材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス繊維または粒子で強化されたセラミックスと金属の複合材料は、セラミックスと金属の両方の特性を兼ね備えており、例えばこの複合材料は、高剛性、低熱膨張性、耐摩耗性等のセラミックスの優れた特性と、延性、高靱性、高熱伝導性等の金属の優れた特性を備えている。このように、従来から難しいとされていたセラミックスと金属の両方の特性を備えているため、機械装置メーカ等の業界から次世代の材料として注目されている。
【0003】
この複合材料、特に金属としてアルミニウムをマトリックスとする複合材料の製造方法は、粉末冶金法、高圧鋳造法、真空鋳造法等の方法が従来から知られている。しかし、これらの方法は、強化材であるセラミックスの含有量を多くできない、あるいは大型の加圧装置が必要である、もしくはニアネット成形が困難である、コストが極めて高いなどの理由により、いずれも満足できるものではなかった。
【0004】
そこで最近では、上記問題を解決する製造方法として、米国ランクサイド社が開発した非加圧金属浸透法が特に注目されている。この方法は、SiCやAl2O3などのセラミックス粉末で形成されたプリフォームに、Mgを含むアルミニウムインゴットを接触させ、これを窒素(N2)雰囲気中で700〜900℃に加熱して溶融したアルミニウム合金をプリフォームに浸透させる方法である。これは、MgとN2との化学反応を利用してセラミックス粉末への溶融金属の濡れ性を改善することにより、加圧しなくても金属をプリフォームに含浸できるようにした優れた方法である。
【0005】
また、この方法では、セラミックスの含有率を30〜85vol%と広く、かつ高い範囲まで変えることができ、しかも、この方法で形成されたプリフォームは、その形状の自由度が高いので、かなり複雑な形状をニアネットで作ることも可能である。このようにこの方法は、加圧装置が不要であり、セラミックスの含有率を高くすることができ、ニアネット成形も可能となる方法であるので、前記した問題が解決される優れた方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法では、窒素雰囲気が必要なので、雰囲気を可変できる真空炉を用いなければならないという問題があった。それは、第1には、真空炉は一般の電気炉に比べかなり高価であることである。非加圧金属浸透法の場合は、炉の占有時間を比較的長く必要とするため、その生産能力を左右するのは炉の所有台数によるところが大きく、真空炉しか使えないということになると、多額の設備投資を覚悟しないと生産能力の増強を図れないことになる。
【0007】
第2には、浸透の終わった浸透品の取り出しが高温ではできないことである。真空炉は装置自体が複雑なので、その構造上、高温で扉を開けると炉自体が変形する恐れがある。そのため、浸透品を炉から取り出すのは、室温まで冷却した後でなければならず、製造に長時間が必要となる。また、このような冷却があまりに遅いと、鬆のような欠陥が発生し易くなる。このように、真空炉を用いることは生産性の向上にネックとなる上に、品質上にも問題が生じ得る。
【0008】
本発明は、上述した金属−セラミックス複合材料の製造方法が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、真空炉でなくても金属を非加圧で浸透させることのできる金属−セラミックス複合材料の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、簡単な方法で密封した箱を使い、その箱の内部を窒素雰囲気にして金属を浸透させれば、一般の電気炉でも問題なく金属を浸透させることのできる金属−セラミックス複合材料が得られるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、外箱の中にその箱より一回り小さい内箱を入れ、その内箱の中に、セラミックス粉末で形成されたプリフォームもしくはセラミックス粉末が充填された容器を入れ、その上にアルミニウム合金のインゴットを載せ、その外箱と内箱との隙間にセラミックス粉末を敷き詰め、その内箱を窒素ガスの導入管を有する蓋で覆い、かつ蓋の側壁下部が埋まるように前記敷き詰めたセラミックス粉末に蓋を差し込んだ後、それを大気雰囲気で用いる電気炉内に挿入し、挿入した箱の内部に窒素ガスを流して内部を窒素雰囲気にした後、その箱内のインゴットを700〜1000℃の温度で溶融し、それをプリフォームまたは容器内の充填物に非加圧で浸透させることを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法(請求項1)とすることを要旨とする。以下さらに詳細に説明する。
【0011】
上述した本発明以外の方法として、密封した箱を用意し、その箱の内部を窒素雰囲気にして金属を浸透させれば、大気開放されている一般的な電気炉内でも、問題なく金属が浸透される。その箱の密封方法としては、窒素ガスの導入管と排出管を有する箱を用意し、その箱にセラミックス粉末で形成されたプリフォームもしくはセラミックス粉末が充填された容器を入れ、その上にアルミニウム合金のインゴットを載せ、箱に蓋をする。蓋による密封は、ビスなどでパッキングを介して締めれば申し分ないが、重い蓋を載せるだけでも十分密封することができる。窒素ガスの導入は、箱の内部に内圧がかかっていないと大気が漏入してくる恐れがあるので、窒素ガスの導入と排出の圧力バランスを調整して若干の加圧状態にする必要がある。
【0012】
本発明では、上記以外の別の密封方法として、箱の構造を2重構造の入れ子構造とし、その内箱に前記したプリフォームまたは容器を入れ、その上にアルミニウム合金のインゴットを載せ、内箱と外箱の隙間にセラミックス粉末を適当な高さに敷き詰め、そのセラミックス粉末に蓋の側壁下部が埋まるようにして蓋を差し込み覆うことによって密封することとした(請求項1)。内箱と外箱の隙間にセラミックス粉末を敷き詰めるのは、窒素ガスを導入した時、若干の加圧状態とすることで箱外部からの大気の漏入を防止するためであり、この場合、排出ガスがセラミックス粉末で遮られていて常に圧力がかかっているので、圧力バランスを調整する必要がない。また、このような2重壁とする理由は、金属の浸透時に流す窒素ガスの加熱による膨張により、箱内部の圧力が上昇し、それがために生じるセラミックス粉末の箱からの吹き出しを防ぐためである。但し、2重壁の構造は、あまり厳密なのもでなくてもよく、例えば、大きな箱の中にそれより小さな箱を置き、大きな箱と小さな箱の隙間に蓋の側壁が入るような簡単な構造で十分である。箱に用いる材質としては、金属の浸透温度に耐えるものであれば何でもよいが、価格、入手し易さを考慮すれば一般的なSUS材で構わない。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法をさらに詳しく述べると、先ず強化材としてSiC、Al2O3、AlN等のセラミックス粉末を用意する。これら粉末からプリフォームを形成する場合には、それらに無機バインダー、溶媒を加えて混合する。混合方法は均一に混合できればどんな方法でも構わない。
【0014】
得られた混合物を成形する。成形方法は、沈降成形、射出成形、CIP成形などがあるが、いずれの方法でも構わない。要は非加圧で金属を浸透するのにプリフォームの形態を保つことができ、かつ浸透を阻害しない方法であれば何でもよい。得られた成形体を、900〜1500℃の温度で焼成してプリフォームを形成する。
【0015】
一方、粉末を容器に充填する場合には、前記した粉末を再分離しないように乾式で混合する。その混合物をグラフォイルなどで作られた容器に充填する。このようにして得られたプリフォームまたは容器を前記した本発明の製造方法の場合には、SUS等で作られた2重構造の内箱に入れ、その上にアルミニウム合金のインゴットを載せた後、その外箱と内箱の隙間にAl2 O3 等のセラミックス粉末を適量敷き詰め、それに蓋の側壁を差し込み、必要があればさらに外箱と蓋との隙間にセラミックス粉末を敷き詰めることで密閉する。セラミックス粉末の代わりに同じように密封できれば、セラミックス繊維でも構わない。
【0016】
それらを大気開放された電気炉中に挿入し、昇温前にその箱内に窒素ガスを流す。本発明では、金属の浸透時には、箱内が完全に窒素雰囲気になっていなくてはならないため、昇温を開始する前に窒素ガスを流し続け箱内の大気を十分にパージする必要がある。この時間を省略するために、例えば真空ポンプなどを用いて箱全体を減圧し、それに窒素ガスを導入してもよい。これは、脱気置換することで雰囲気はより完璧なものになるので、未浸透などの欠陥を少なくなることが期待できる。この場合に要求される真空度はそれほど高くする必要はなく、0.1気圧程度まで減圧すれば十分である。
【0017】
以上のように窒素雰囲気にしても、セラミックス粒子に吸着した微量の大気や有機分、あるいはH2Oなどは除去できず、またセラミックス粒子の細孔内にある大気なども除去困難なので、その部分が浸透後に欠陥として残る恐れがある。そのため、それをさらに100〜350℃の温度で8〜36時間加熱しながら窒素ガスを流し続けることにより、吸着水分などを極力除去する、いわゆるベーキング操作を行うのがよい。それをさらに窒素気流中で加熱して700〜1000℃の温度でインゴットを溶融し、その溶融金属を非加圧でプリフォームまたは容器内の充填物に浸透させ、それを700℃前後まで冷却して炉外に取り出し、放冷することにより複合材料が作製される。
【0018】
以上の方法で金属−セラミックス複合材料を作製すれば、大気開放された一般的な電気炉でも問題なく金属を浸透させることのできる金属−セラミックス複合材料を作製することができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と共に具体的に挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
(実施例1)
(1)箱の作製
SUSからなる内容量が0.1m3の外箱内に、同じSUSからなる内箱を図1、2の如く入れ、その隙間に#90のAl2O3粉末を敷き詰めた。別に#800の市販SiC粉末100重量部にMg粉末2重量部添加し、V型混合機で乾式混合した後、200×200×高さ200mmのグラフォイル容器に軽く充填した。その容器を内箱内に図1、2の如く置き、その上にAl−10Si組成のインゴットを載せ、その上部に図1に示す如く蓋をかぶせてその側壁をAl2O3粉末に差し込み、外箱と蓋の隙間にさらに前記のAl2O3粉末を敷き詰めた。
【0021】
(2)複合材料の作製
得られた箱を大気に開放されている一般的な電気炉に挿入し、昇温前に窒素ガスを1分当たり0.025m3の流速で3時間流して箱内の大気をパージした後、200℃まで昇温し8時間ベーキングした。それを800℃まで昇温し、その温度で10時間保持し、金属を浸透させた後、700℃まで徐冷し、電気炉を開け、箱を取り出し放冷し、金属−セラミックス複合材料を作製した。
【0022】
(3)評価
得られた複合材料を切断し、切断面を目視で観察して金属の浸透状態を調べた。その結果、金属は鬆などの欠陥もなく完全に浸透されていた。
【0023】
(実施例2)
昇温前に窒素ガスを流す代わりに真空ボックスにて箱全体を真空ポンプで0.1気圧で5分間減圧し、その真空ボックス内に窒素ガスを流し込んで箱内を窒素ガスに置き換えた後、箱を真空ボックスから取り出し、窒素ガスを1分当たり0.025m3の窒素ガスを流し、昇温を開始した他は実施例1と同様にして複合材料を作製し、評価した。その結果、実施例1と同様金属は欠陥もなく完全に浸透されていた。
【0024】
(比較例1)
比較として実施例1と同じ容器を図3に示す如く内箱なしでセットし、それを実施例1と同様に複合材料を作製し、評価した。その結果、金属の浸透は全く不十分であった。これは、遮蔽に用いた#90のAl2O3粉末が箱から吹き出ているのが観察された(図4)ことから、原因は遮蔽が不完全となり、大気が箱内に混じったためと推定される。このことは、一般的な電気炉であっても箱の密封をよくすれば、その箱内で問題なく、しかも短時間で複合材料を作製できることを示している。
【0025】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の金属−セラミックス複合材料の製造方法であれば、一般の電気炉でも問題なく金属を浸透することができ、しかも従来より短時間で製造することができる金属−セラミックス複合材料が得られるようになった。このことにより、従来欠点であった高い製造コストを大幅に低減できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の箱を示す横から見た側面断面図である。
【図2】実施例1の箱を示す上から見た平面断面図である。
【図3】比較例1の箱を示す横から見た側面断面図である。
【図4】比較例1の箱内のガスが吹き出た状態の横から見た側面断面図である。
Claims (1)
- 外箱の中にその箱より一回り小さい内箱を入れ、その内箱の中に、セラミックス粉末で形成されたプリフォームもしくはセラミックス粉末が充填された容器を入れ、その上にアルミニウム合金のインゴットを載せ、その外箱と内箱との隙間にセラミックス粉末を敷き詰め、その内箱を窒素ガスの導入管を有する蓋で覆い、かつ蓋の側壁下部が埋まるように前記敷き詰めたセラミックス粉末に蓋を差し込んだ後、それを大気雰囲気で用いる電気炉内に挿入し、挿入した箱の内部に窒素ガスを流して内部を窒素雰囲気にした後、その箱内のインゴットを700〜1000℃の温度で溶融し、それをプリフォームまたは容器内の充填物に非加圧で浸透させることを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法。
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JP01318098A JP3746145B2 (ja) | 1998-01-08 | 1998-01-08 | 金属−セラミックス複合材料の製造方法 |
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JP01318098A JP3746145B2 (ja) | 1998-01-08 | 1998-01-08 | 金属−セラミックス複合材料の製造方法 |
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JPH11197818A JPH11197818A (ja) | 1999-07-27 |
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- 1998-01-08 JP JP01318098A patent/JP3746145B2/ja not_active Expired - Fee Related
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