JP4239047B2 - マグネシウム基複合材料の製造方法及びマグネシウム基複合材料 - Google Patents

マグネシウム基複合材料の製造方法及びマグネシウム基複合材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金の母相を強化繊維によって補強して成るマグネシウム基複合材料の製造方法及びマグネシウム基複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、特に機械的強度や耐摩耗性を要求される機械部品に、セラミックス等の強化繊維よって補強して成る繊維強化金属の適用が進んでおり、このような繊維強化金属として、マグネシウム合金を母相としたものも考えられている。
【0003】
繊維強化金属の製造方法としては、従来より、高圧鋳造法や粉末法が知られている。
【0004】
高圧鋳造法は、強化繊維によって形成されたプリフォームに、油圧プレス等によって溶融金属を100気圧以上の高い圧力で含浸・浸透させるものであり、粉末法は金属粉末とセラミックスを混合して熱間静水圧プレス(HIP)等によって高温・高圧で成形するものである。
【0005】
また、マグネシウム合金を母相とするマグネシウム基複合材料では、セラミックス成形体のプリフォームにマグネシウム溶湯と反応し易い酸化ケイ素(SiO2 )を混合することによって低い圧力で含浸させる自発的浸透法も試みられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高圧鋳造法はプリフォームに溶融金属を高い圧力で含浸・浸透させるものであるためにプリフォームの変形や割れを誘発し易く、複雑形状の部品への適用が困難であるという問題があった。
【0007】
また、粉末法は高価な金属粉末を用いると共に高温高圧での処理が必要であるために製造コストが高いという問題がある。
【0008】
更に、自発的浸透法はSiO2 を含浸圧力の低下を目的として添加するものであって粒子径が大きく量も多く、強度増加に寄与するものではなかった。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、低圧でマグネシウム溶湯をプリフォームへ含浸・浸透させることができ、複雑な形状の成形を低コストで可能とすると共に、高い強度を得ることのできるマグネシウム基複合材料の製造方法及びマグネシウム基複合材料を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明のマグネシウム基複合材料の製造方法は、強化繊維によって形成されたプリフォームに、組成が、Al:8.1〜10.5%,Zn:0.4〜1.0%,Mn:0.13〜0.35%,Si:0.30%以下,Cu:0.10%以下,Ni:0.01%以下,Mg:残部,である溶融したマグネシウム合金を不活性ガスの圧力によって含浸・浸透させるガス圧浸透法を用い、前記含浸・浸透時の複合化温度を680〜720℃の範囲として前記マグネシウム合金の母相を強化繊維によって補強した複合材料を形成することを特徴とする。
【0011】
また、上記不活性ガスの圧力は2気圧以上であることを特徴とする
【0012】
また、上記プリフォーム中にSiO2 又はSi粒子を容積比で4%以下混合することを特徴とする。
【0013】
また、上記SiO2 又はSi粒子の粒径は、5μm以下であることを特徴とする。
【0014】
また、粒径が5μmの上記Si粒子が容積比で2%添加されていることを特徴とする。
【0015】
更に、強化繊維によって形成されたプリフォームに、溶融したマグネシウム合金を不活性ガスの圧力によって含浸・浸透させて、当該含浸・浸透時の複合化温度を680〜720℃の範囲として、マグネシウム合金の母相を前記プリフォームによって補強して成るマグネシウム基複合材料であって、前記母相を形成するマグネシウム合金の組成が、Al:8.1〜10.5%,Zn:0.4〜1.0%,Mn:0.13〜0.35%,Si:0.30%以下,Cu:0.10%以下,Ni:0.01%以下,Mg:残部,であることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本願発明の実施の形態について説明する。
【0017】
本願発明によるマグネシウム基複合材料の製造方法では、図1に概念図を示す気密的に密閉可能なチャンバー11を備える電気炉10中に配設した坩堝12内に、強化材によるプリフォーム1とマグネシウム合金のインゴットを挿置し、チャンバー11内を真空化しつつ加熱すると共にチャンバー11内を所定圧力の不活性ガスで満たしてインゴットを溶融させ、溶融したマグネシウム合金の溶湯2をプリフォーム1に含浸・浸透させる低圧鋳造法によって、マグネシウム合金の母相をプリフォーム1で補強した複合材を形成するものである。
【0018】
図示電気炉10は、気密的に密閉可能なチャンバー11の内部にカーボン製の坩堝12が配設され、チャンバー11には給排気通路13が接続されて構成されている。給排気通路13は、真空吸引通路13Aとアルゴンガス供給通路13Bの二通路に分岐し、真空吸引通路13Aが図示しない真空ポンプに接続されると共にアルゴンガス供給通路13Bが図示しないアルゴンガス供給源に接続され、各通路(真空吸引通路13A,アルゴンガス供給通路13B)にはそれぞれ当該通路13A,13Bを開閉するバルブ(真空吸引バルブ13a,アルゴンガス供給バルブ13b)が介設されている。尚、14は溶湯温度を計測する熱電対である。
【0019】
このような電気炉10を用い、下記のごとき工程でプリフォーム1にマグネシウム合金の浸透・含浸を行う。
【0020】
即ち、チャンバー11内の坩堝12内に、プリフォーム1を置いてその上にマグネシウム合金のインゴットを載置した後、アルゴンガス供給バルブ13bを閉止状態とすると共に真空吸引バルブ13aを開放し、真空吸引通路13Aを介してチャンバー11内を真空に引きながら加熱する。
【0021】
次いで、所定温度でアルゴンガス供給バルブ13bを開いて所定圧力のアルゴンガスをチャンバー11内に導入し、複合化温度まで加熱する。
【0022】
そして、複合化温度で20分間保持した後、アルゴンガスの圧力を所定の含浸圧力に設定し、そのまま5分間保持した後、冷却するものである。
【0023】
上記のごときプロセスで、含浸圧力,複合化温度,プリフォーム中に添加するSiO2 又はSi粒子の径及び量,を変化させて実験した結果を下記に示す。
【0024】
尚、強化材としてのプリフォームは、平均径0.5μm、平均長さ34μmのSiCウイスカと反応材を溶媒中に分散させた後吸引濾過しつつプレスして形成したものを用い、SiCウイスカの体積含有率は20%,反応材の体積含有率は0〜4%である。また、マグネシウム合金の組成は、Al(アルミニウム):8.1〜9.8%,Zn(亜鉛):0.4〜1.0%,Mn(マンガン):0.13〜0.35%,Si(ケイ素):0.30%以下,Cu(銅):0.10%以下,Ni(ニッケル):0.01%以下,Mg(マグネシウム):残部である。
【0025】
図2は、含浸圧力を変化させて形成した成形品の引っ張り強さを測定した結果である。その他の条件は、複合化温度:700℃,SiO2 粒子径:0.8μm,SiO2 粒子添加量:2%に固定したものである。これにより、2気圧という極めて低圧から高い引っ張り強度が得られることが解る。また、組織観察によっても未含浸部分は観察されず、低い圧力によっても健全な複合材料を得ることが確認された。これにより、タービンインペラのように三次元複雑形状の部品の成形も可能となるものである。
【0026】
次に、複合化温度を変化させて形成した成形品の引っ張り強さを測定した結果を図3に示す。その結果、680〜720℃の範囲とすることで高い引っ張り強度を得ることができた。これは、反応生成物であるMg2 Siの粗大化を防ぐことができるためと考えられる。
【0027】
図4にプリフォーム中に混合するSiO2 又はSi粒子の混合量を変化させて形成した成形品の引っ張り強さを測定した結果を示す。その結果、プリフォーム中にSiO2 又はSi粒子を容積比で4%以下の範囲で混合することで高い引っ張り強度を得ることができた。
【0028】
また、図5にプリフォーム中に混合するSiO2 又はSi粒子の径を変化させて形成した成形品の引っ張り強さを測定した結果を示す。その結果、プリフォーム中に5μm以下の粒径のSiO2 又はSi粒子を混合することで高い引っ張り強度を得ることができた。これは、マグネシウム溶湯とSiO2 又はSiの反応生成物であるMg2 Siが適当な大きさで適当な量分散することで、強度増強に寄与しているものと考えられる。
【0029】
更に、図4及び図5とから、粒径が5μmのSi粒子を容積比で2%添加することで特に高い引っ張り強度を得ることができることが解る。
【0030】
ここで、マグネシウム合金母相の組成は前述のごとくであるが、インゴット溶け落ち前のガス圧が低いとマグネシウムが蒸発してしまうために組成が変化し、アルミニウム成分が増加していると考えられ、その影響を調べるべく組成中のアルミニウム成分を増加させて実験した結果、強度増加傾向が見られ、10.3%で最大約8%の強度増加が確認できたものである。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係るマグネシウム基複合材料の製造方法によれば、強化繊維によって形成されたプリフォームに、組成が、Al:8.1〜10.5%,Zn:0.4〜1.0%,Mn:0.13〜0.35%,Si:0.30%以下,Cu:0.10%以下,Ni:0.01%以下,Mg:残部,である溶融したマグネシウム合金を不活性ガスの圧力によって含浸・浸透させるガス圧浸透法を用い、前記含浸・浸透時の複合化温度を680〜720℃の範囲として前記マグネシウム合金の母相を強化繊維によって補強した複合材料を形成することにより、2気圧以上という低い圧力によっても健全な複合材料を得ることでき、これにより、タービンインペラのように三次元複雑形状の部品の成形も可能となるものである。
また、上記含浸・浸透時の複合化温度は680〜720℃の範囲であることにより、反応生成物であるMg2 Siの粗大化を防ぐことができ、高い引っ張り強度を得ることができる。
【0033】
また、プリフォーム中にSiO2 又はSi粒子を容積比で4%以下混合することにより、高い引っ張り強度を得ることができる。
【0034】
また、SiO2 又はSi粒子の粒径は、5μm以下であることにより、マグネシウム溶湯とSiO2 又はSiの反応生成物であるMg2 Siが適当な大きさで適当な量分散することで強度増強に寄与し、高い引っ張り強度を得ることができる。特に、粒径が5μmの上記Si粒子が容積比で2%添加されていることにより、高い引っ張り強度を得ることができる。
また、強化繊維によって形成されたプリフォームに、溶融したマグネシウム合金を不活性ガスの圧力によって含浸・浸透させて、マグネシウム合金の母相を前記プリフォームによって補強して成るマグネシウム基複合材料として、母相を形成するマグネシウム合金の組成が、Al:8.1〜10.5%,Zn:0.4〜1.0%,Mn:0.13〜0.35%,Si:0.30%以下,Cu:0.10%以下,Ni:0.01%以下,Mg:残部であることにより、高い引っ張り強度を得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明によるマグネシウム基複合材料の製造方法に用いる電気炉の概念図である。
【図2】含浸圧力を変化させて形成した成形品の引っ張り強さを測定した結果を示すグラフである。
【図3】複合化温度を変化させて形成した成形品の引っ張り強さを測定した結果を示すグラフである。
【図4】プリフォーム中に混合するSiO2 又はSi粒子の混合量を変化させて形成した成形品の引っ張り強さを測定した結果を示すグラフである。
【図5】プリフォーム中に混合するSiO2 又はSi粒子の径を変化させて形成した成形品の引っ張り強さを測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 プリフォーム
2 マグネシウム合金の溶湯
10 電気炉
11 チャンバー
12 坩堝
13 給排気通路

Claims (6)

  1. 強化繊維によって形成されたプリフォームに、組成が、Al:8.1〜10.5%,Zn:0.4〜1.0%,Mn:0.13〜0.35%,Si:0.30%以下,Cu:0.10%以下,Ni:0.01%以下,Mg:残部,である溶融したマグネシウム合金を不活性ガスの圧力によって含浸・浸透させるガス圧浸透法を用い、前記含浸・浸透時の複合化温度を680〜720℃の範囲として前記マグネシウム合金の母相を強化繊維によって補強した複合材料を形成することを特徴とするマグネシウム基複合材料の製造方法。
  2. 上記不活性ガスの圧力は2気圧以上であることを特徴とする請求項1に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
  3. 上記プリフォーム中にSiO2 又はSi粒子を容積比で4%以下混合することを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
  4. 上記SiO2 又はSi粒子の粒径は、5μm以下であることを特徴とする請求項3に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
  5. 粒径が5μmの上記Si粒子が容積比で2%添加されていることを特徴とする請求項4に記載のマグネシウム基複合材料の製造方法。
  6. 強化繊維によって形成されたプリフォームに、溶融したマグネシウム合金を不活性ガスの圧力によって含浸・浸透させて、当該含浸・浸透時の複合化温度を680〜720℃の範囲として、マグネシウム合金の母相を前記プリフォームによって補強して成るマグネシウム基複合材料であって、前記母相を形成するマグネシウム合金の組成が、Al:8.1〜10.5%,Zn:0.4〜1.0%,Mn:0.13〜0.35%,Si:0.30%以下,Cu:0.10%以下,Ni:0.01%以下,Mg:残部,であることを特徴とするマグネシウム基複合材料。
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