JP3744488B2 - 冷陰極の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電界の作用によって電子を放出する冷陰極の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、冷陰極の電子放出部にレーザを照射して電子放出特性を向上させるものである。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブを含有する電子放出部を備えた冷陰極は、高輝度、広視野角、長寿命、高速応答などの特徴を有する薄型表示装置の実用化に向けて注目されている。従来の技術では、複数のカーボンナノチューブが集合して構成されたバンドルペーストからなる電子放出部のパターンを形成し、このパターン表面にレーザを照射することによって、パターン表面においてはバンドル以外の物質を選択的に除去し、バンドルの表面においてはカーボンナノチューブ以外の炭素成分を選択的に除去している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−36243号公報(第3−8頁、図1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術では、電子放出部のパターンを形成した状態でのカーボンナノチューブの傾斜角度が維持される。ここで、パターン形成時には横臥状のカーボンナノチューブも存在し、このようなカーボンナノチューブは電子放出部中に埋もれている。そのため、横臥状のカーボンナノチューブに対してその先端部を露出させることができない。よって、電子放出に十分に寄与できないカーボンナノチューブが存在するという問題がある。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、電子放出部のパターン形成時に電子放出部中に埋もれていた横臥状のカーボンナノチューブの先端部を露出させ、電子放出効率の向上を図った冷陰極の製造方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明における冷陰極の製造方法は、カーボンナノチューブとアモルファスカーボンとからなる炭素粒を含有する導電性ペーストを用いて、カソード電極上に電子放出部をパターニングする電子放出部形成工程と、電子放出部に0.5〜6J/mm2のレーザ照射密度のレーザを照射するレーザ照射工程と、電子放出部の周囲にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程とを備えるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明が適用される冷陰極の製造方法に関する実施の形態1を説明するための工程図である。図1(a)は電子放出部形成工程を説明するものであり、カーボンナノチューブ11とアモルファスカーボン12とからなる炭素粒1を含有する導電性ペーストを用いて、絶縁基板4に形成されたカソード電極3上に電子放出部2をスクリーン印刷法でパターニングする。パターニング後、120℃程度の大気雰囲気で乾燥し、さらに大気雰囲気中500℃〜550℃で焼成することにより導電性ペーストに含まれる有機系溶媒を除去する。このようにして電子放出部2を形成する。
【0008】
続いて図1(b)はレーザ照射工程を説明するものであり、電子放出部2の表面に図示矢印方向のレーザを照射して炭素粒1を小径化する。このとき、カーボンナノチューブ11の周囲のアモルファスカーボン12が粉砕もしくは部分的な昇華によって、カーボンナノチューブ11が露出される。炭素粒1の粉砕によって発生した細かな粉砕物13はカーボンナノチューブ11の図示下端側に堆積し、この粉砕物13がカーボンナノチューブを起立状に支持している。このため、電子放出部2のパターン形成時に起立状であったカーボンナノチューブ11に加えて横臥状であったカーボンナノチューブ11も露出でき、しかも横臥状であったカーボンナノチューブ11も起立状の姿勢となる。ここで起立状とは、例えばこの冷陰極を表示装置に搭載した際に、蛍光体の発光のために電子放出するのに十分な傾斜角度までを含むものとする。なお、レーザとして例えばYAGレーザを用い、パルス照射することができる。また、周波数変調したレーザを用いることもできる。レーザ照射方式は、スキャン方式、スポット方式のいずれでもかまわない。
【0009】
続いて図1(c)はゲート電極形成工程を説明するものであり、電子放出部2の周囲にゲート絶縁層5を形成し、ゲート絶縁層5上にゲート電極6を形成する。ゲート絶縁層5として例えば酸化珪素系ガラスやPPSQ(polyphenylenesilsesquioxane)を用いることができ、ゲート電極6として例えばアルミニウムを用いることができる。なお、電子放出部2のパターンを部分的にゲート絶縁層5が覆っていてもかまわなく、この場合はゲート絶縁層5に覆われていない部分が電子放出部2として機能する。
【0010】
冷陰極は、カソード電極とゲート電極との間に電界を印加するとカーボンナノチューブの先端部に高い電界が発生し、この電界の作用によって電子放出部から電子を放出する。図2は、レーザ照射工程における電子放出部表面へのレーザ照射密度と冷陰極の電子放出電流密度との関係を示す電子放出特性図である。ここで、カソード電極とゲート電極との間隔は50μmとし、両電極間の電位差は400Vとした。図2より、レーザ照射密度がこのときのレーザ照射密度は、炭素粒を十分に小径化してカーボンナノチューブを露出させて電子放出効率を向上させる観点から0.5〜6J/mm2が好ましく、さらに起立状のカーボンナノチューブを多く存在させて安定した電子放出電流密度が得られるように1〜5J/mm2が一段と好ましい。
【0011】
したがって、この実施の形態のように冷陰極を製造すると、電子放出部のパターン形成時に横臥状だったカーボンナノチューブの先端部を露出させることができ、そのため冷陰極の電子放出効率の向上を図ることができる。
【0012】
実施の形態2.
図3は、冷陰極の製造方法に関する実施の形態2を説明するための工程図である。まず図3(a)の電子放出部形成工程では実施の形態1と同様に、カーボンナノチューブ11とアモルファスカーボン12とからなる炭素粒1を含有する導電性ペーストを用いて、絶縁基板4に形成されたカソード電極3上に電子放出部2をパターニングする。パターニング後、乾燥して焼成することにより電子放出部2を形成する。
【0013】
続いて図3(b)のゲート電極形成工程では、電子放出部2の周囲にゲート絶縁層5を形成し、ゲート絶縁層5上にゲート電極6を形成する。ここで実施の形態1と異なるのは、レーザ照射工程より先にゲート電極形成工程を行ってマイクロキャビティ構造を形成することである。
【0014】
続いて図3(c)のレーザ照射工程では、電子放出部2の表面に図示矢印方向のレーザを照射して炭素粒1を小径化する。このとき、ゲート電極6は例えば金からなる耐レーザ膜によって保護されていることが好ましい。実施の形態1のレーザ照射工程と同様に、カーボンナノチューブ11が露出される。炭素粒1の粉砕によって発生した細かな粉砕物13は、カーボンナノチューブ11を起立状に支持している。このため、電子放出部のパターン形成時には横臥状であったカーボンナノチューブ11が露出されて起立状の姿勢となる。実施の形態1と同様に、レーザ照射密度は0.5〜6J/mm2が好ましく、さらに1〜5J/mm2が一段と好ましい。
【0015】
したがって、この実施の形態のようにマイクロキャビティ構造を形成してからレーザを照射しても、電子放出部のパターン形成時に横臥状だったカーボンナノチューブの先端部を露出させることができ、そのため冷陰極の電子放出効率の向上を図ることができる。
【0016】
実施の形態3.
この実施の形態は、実施の形態1の変形例であり、導電性ペーストにエチルセルロースを加えたものを用い、レーザ照射工程が炭素粒の小径化に加えて電子放出部の焼成に寄与するものである。
【0017】
図1(a)のように電子放出部2をパターニングしたのち乾燥させる。続いて図1(b)のようにレーザを照射する。このとき、レーザ照射密度は0.5〜6J/mmが好ましいが、電子放出部2が未焼成のためレーザ照射密度が低めであっても炭素粒1の小径化が可能になる。また、レーザの照射によって電子放出部2の焼成が進行する。さらに、レーザ照射後に完全に焼成させてもよい。
【0018】
実施の形態4.
この実施の形態は、実施の形態1〜3において得られたマイクロキャビティ構造の冷陰極に対して、電子放出部にプラズマを曝露させるものである。図4は、実施の形態4を説明するためのプラズマ処理図である。
【0019】
図4のプラズマ処理工程では、カソード電極3に正電位、ゲート電極6に負電位を与えるとマイクロキャビティ内には電界が発生する。この状態で、電子放出部2を図示矢印方向のプラズマに曝露する。このとき、正帯電しているプラズマ粒子は、電子放出部2の電位とプラズマ電位とが均衡する等電位面7よりカソード電極3側に進入できない。そのため、起立状に支持されたカーボンナノチューブのうち、この等電位面7よりもゲート電極6側にある部分だけが除去される。プラズマとしては、炭素との反応性の観点から酸素プラズマが好ましい。
【0020】
したがって、起立状のカーボンナノチューブ11の高さを揃えることができ、電子放出部2における電子放出領域の均一化が図られる。また、この実施の形態は図5に示すような湾曲状のカーボンナノチューブ11に対して、電子放出を可能にする効果がある。カーボンナノチューブ11は、非常に高いアスペクト比を有するために、図5(a)のような湾曲状の姿勢となる場合がある。これを図示矢印方向のプラズマに曝露させると、図5(b)のように湾曲部が除去されて、ゲート電極6側に先端部を向けた複数のカーボンナノチューブ11が生成されることになり、電子放出が可能になる。
【0021】
【発明の効果】
この発明によれば、電子放出部のパターン形成時に電子放出部中に埋もれた横臥状のカーボンナノチューブの先端部を露出させることができ、よって電子放出効率の向上を図った冷陰極の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1を説明するための工程図である。
【図2】 実施の形態1を説明するための電子放出特性図である。
【図3】 実施の形態2を説明するための工程図である。
【図4】 実施の形態4を説明するためのプラズマ処理図である。
【図5】 実施の形態4の変形例を説明するためのプラズマ処理図である。
【符号の説明】
1 炭素粒、11 カーボンナノチューブ、12 アモルファスカーボン、13 粉砕物、2 電子放出部、3 カソード電極、4 絶縁基板、5 ゲート絶縁層、6 ゲート電極、7 等電位面。

Claims (4)

  1. 電界の作用によって電子を放出するカーボンナノチューブを含有する電子放出部を備えた冷陰極の製造方法において、
    カーボンナノチューブとアモルファスカーボンとからなる炭素粒を含有する導電性ペーストを用いて、カソード電極上に電子放出部をパターニングする電子放出部形成工程と、
    電子放出部に0.5〜6J/mm2のレーザ照射密度のレーザを照射するレーザ照射工程と、
    電子放出部の周囲にゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層上にゲート電極を形成するゲート電極形成工程とを備えることを特徴とする冷陰極の製造方法。
  2. 前記レーザ照射工程において、炭素粒の粉砕によって発生した粉砕物がカーボンナノチューブを起立状に支持することを特徴とする請求項1記載の冷陰極の製造方法。
  3. カソード電極に正電位、ゲート電極に負電位を与えるとともに、電子放出部をプラズマに曝露するプラズマ処理工程を備えることを特徴とする請求項1記載の冷陰極の製造方法。
  4. プラズマ処理工程は、電子放出部の電位とプラズマ電位とが均衡する等電位面よりもゲート電極側にあるカーボンナノチューブ部分を除去することを特徴とする請求項3記載の冷陰極の製造方法。
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