JP3743850B2 - 脱水機のアンバランス量検出方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は脱水機の惰性回転時の回転検出により、脱水槽内における脱水衣類のアンバランス量を検出する脱水機のアンバランス検出方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の全自動洗濯機の脱水機は、脱水工程時に被洗濯物(以下、「負荷」と呼ぶ)の偏りによって脱水槽の振動が生じ、その負荷に大きな偏りがあると脱水槽の振動は異常振動となる。そこで、負荷の大きな偏りによって生じる異常振動による弊害を防止するために、異常振動を検出することを目的として幾つかの手段が脱水機に施されている。
【0003】
一般的には、脱水機のアンバランス検出装置は、脱水回転の初期に生じる脱水槽の揺れを検出するため、外箱の内側に機械的なレバーを設け、脱水槽の大きな揺れの場合にそのレバーが脱水槽を内装した外槽に接触することにより検出するもので、そのレバーの外槽への接触情報により脱水工程を停止する構成としていた。
【0004】
また、前記のようなレバーの接触方式とは異なる方式として、特開平3−215291号公報には感震器を用いて、また特開平8−66563号公報には赤外光の発光・受光素子を用いて各々脱水槽の振動を検出するものがある。
さらに、特開平9−10469号公報に開示されたものは、モータによる脱水槽の回転立ち上がり時において、回転検出手段によって脱水槽の回転数の変動度合いを検出し、検出した変動度合いに応じて適正な脱水運転を行うようにしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の脱水機のアンバランス検出装置は以上のように構成されているので、以下のような課題があった。
まず、機械的なレバーを用いるものは、レバーの取り付け箇所が概ね一カ所であるため、同位置のアンバランス量でもレバー取付け位置により、外槽へレバーが当たる場合と当たらない場合があって検出が不安定であった。また、外槽とレバーの隙間、位置等が検出精度に与える影響が大きいため、機種対応の設計精度、組立精度に対する要求が過大であった。さらに、レバーに駆動される機械的なスイッチを用いているため、洗濯時の水かかり等によるスイッチの動作不良対策の課題があった。
【0006】
また、振動検出用センサとして、感震器や赤外線素子を用いたものでは、当然のことながら部品点数が増え、コスト高になると共に構成が大きくなるものであった。また、振動検出用センサが増えた分だけ精度調整や故障要因への対応処理が複雑となると共に組み立て作業性が悪くなり、具体的には赤外線素子の場合、埃や水等に対する対策手段を講じる必要がある等の課題があった。
【0007】
また、特開平9−10469号公報のものは、モータによる脱水槽の回転立ち上がり時に、回転数の変動度合いを検出する方式のため、電源電圧の変動による回転トルクの違いにより回転立ち上がり特性が異なる。
従って、回転数変動度合いも当然異なるため、適正なアンバランス量としての検出が不可能であった。さらに、電源電圧検出による補正も考えられるが、検出手段と補正手段を必要とするために構成が複雑になるという課題もあった。
【0008】
さらに、特開平9−10469号公報のものにおいては、洗濯物の量を判定するための回転数検出手段と、回転数変動度合いを検出する回転数検出手段とが各々別々なセンサを使用していること、又予め無負荷にて変動度合いを検出し、その値を不揮発生メモリに記憶し、実使用時には記憶した値を差し引いて変動度合いを導く等の構成であり、部品点数が増え、コスト高になると共に構成が複雑になるという課題があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題点を解消するためになされたものであり、モータ断電後の脱水槽の惰性回転の脈動量を検出することにより、簡単な構成で低コスト化が図れ、検出精度、信頼性、作業性の向上が図れる脱水機のアンバランス量検出方法及び装置を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る脱水機のアンバランス検出方法は、脱水槽を駆動するモータに通電し、脱水槽が所定回転速度まで上昇したらモータへの通電を断電し、その断電した時から脱水槽が慣性運転により回転している間に、回転速度検出手段が脱水槽の回転速度を検出した回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求め、その脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を求めるようにしたものである。
【0011】
また、もう一つの脱水機のアンバランス検出方法は、脱水槽を駆動するモータに通電し、脱水槽が第1の所定回転速度まで上昇したらモータへの通電を断電し、その断電した時から脱水槽が慣性運転により回転して第2の所定回転速度まで下降する間に、回転速度検出手段が脱水槽の回転速度を検出した回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求め、その脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を求めるようにしたものである。
【0012】
また、第1の所定回転速度は脱水機の二次共振点領域を通過した後の回転速度であり、第2の所定の回転速度は、断電により回転速度が低下して再び脱水機の二次共振点領域を通過した後の回転速度としている。
【0013】
更に、アンバランス量は脈動量から所定の式に基づいて演算して求めるようにしている。
【0014】
また、アンバランス量は各種の脈動量とそれらにそれぞれ対応するアンバランス量とを記載したテーブルから検出した脈動量に対応するアンバランス量を読み込みことによってアンバランス量を求めるようにしている。
【0015】
更に、アンバランス量を求めることを複数回実施し、実施して得られたアンバランス量の平均値を求めるようにしている。
【0016】
この発明に係る脱水機のアンバランス検出装置は、脱水槽を回転駆動するためのモータと、脱水槽の回転速度を検出して回転速度信号を出力する回転速度検出手段と、モータを駆動すると共に回転速度検出手段の回転速度信号に基づき演算した所定回転速度で電源供給を断つ運転制御手段と、回転速度検出手段が検出している回転速度信号をモータへの断電後から脱水槽が慣性運転により回転している間にサンプリングし、そのサンプリングした回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求めて出力する脈動量検出手段と、脈動量検出手段が求めた脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を求めるアンバランス量検出手段とを備えて構成されている。
【0017】
またもう一つの脱水機のアンバランス検出装置は、脱水槽を回転駆動するためのモータと、脱水槽の回転速度を検出して回転速度信号を出力する回転速度検出手段と、モータを駆動すると共に回転速度検出手段の回転速度信号に基づき演算した第1の所定回転速度で電源供給を断つ運転制御手段と、回転速度検出手段が検出している回転速度信号をモータへの断電後から脱水槽が慣性運転における第2の所定回転速度までの間にサンプリングし、そのサンプリングした回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求めて出力する脈動量検出手段と、脈動量検出手段が求めた脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を求めるアンバランス量検出手段とを備えて構成されている。
【0018】
また、回転速度検出手段は、脱水槽の回転を検出し、脱水槽の1回転当たり複数のパルス信号を発生する回転センサと、回転センサが出力するパルス信号のパルス長を計測するパルス長計測手段とからなり、パルス長計測手段は回転センサが出力するパルス信号の複数パルス長を所定パルスづつずらして移動計測し、複数パルス長の平均値を演算し、その平均値を回転速度信号として出力するようにしている。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1である全自動洗濯機の脱水機のアンバランス量検出装置のブロック図、図2は同アンバランス量検出装置の回転センサを示す斜視図、図3は図2の回転センサの回路図、図4は図2の回転センサの出力波形図、図5は同アンバランス量検出装置のパルス長計測手段の計測波形図、図6は洗濯時に使用される負荷量検出手段の計測波形図、図7は脱水槽の一次共振,二次共振の振動振幅の波形図、図8は理想状態と傾き振動発生時の脱水槽の回転状態を示す説明図、図9は断電時の回転数をパラメータとしたパルス長計測手段の計測波形図、図10はアンバランス量をパラメータとしたパルス長計測手段の計測波形図、図11は同アンバランス量検出装置のパルス長計測手段と脈動量計測手段の計測波形図、図12は同アンバランス量検出装置のアンバランス量検出手段の出力を示すグラフ、図13は同アンバランス量検出装置の動作を説明するフローチャート、図14は同アンバランス量検出装置の複数の検出領域を示す回転速度の波形図である。
【0020】
図1において1は外箱,2は防振バネ等3aを有する弾性支持機構3を介して外箱1に弾性的に吊下支持された受水槽、4はこの受水槽2内に回転自在に配置された洗濯兼脱水槽で、その中心底部に回転翼5,側壁には複数の脱水孔4aが設けられている。6は洗濯兼脱水槽4の下部中央に連結した中空の脱水槽軸で、受水槽2の下部中央孔縁周に設けられたブラケット7に嵌挿されている。
【0021】
8は脱水槽軸6内に嵌挿された回転翼5の回転翼軸、9はこの回転翼軸8及び脱水槽軸6の下端部に連結された槽側プーリ、10は脱水槽軸6の略中央部に設けられ、槽側プーリ9の回転を洗濯脱水槽4へ断続するためのクラッチ機構、11は回転翼軸8の略中央部に設けられ、槽軸プーリ9の回転を減速させる減速機構、12はモータ側プーリ13及びベルト14を介して槽側プーリ9へ回転を与えるモータで、受水槽2の下面に設置される。15は受水槽2の底面に設けられた排水口、16はこの排水口15の排水弁である。
【0022】
17はモータ12への給電、脱水槽4の回転速度に応じて断電を行う運転制御手段、18は脱水槽軸6の周縁に設けられた回転センサ19のパルス信号を受け、パルス信号のパルス長を計測するパルス長計測手段である。このパルス長計測手段18と回転センサ19とで脱水槽4の回転速度を検出する回転速度検出手段が構成されている。20はパルス長計測手段18の計測値に基づいて負荷量を検出する負荷量検出手段、21はパルス長計測手段18の計測値に基づいて脈動量を検出する脈動量検出手段、22は脈動量検出手段21の脈動量に基づいて洗濯兼脱水槽4内の負荷のアンバランス量を検出するアンバランス量検出手段である。23は洗濯工程、脱水工程等の各種の工程を選択する操作盤である。
【0023】
図2に示す回転センサ19は脱水槽軸6に固着されたN極とS極が例えば18分割で均等配列されたマグネット19aと、マグネット19aに近接するホールIC19bとを組み合せて構成されている。
この回転センサ19は図3に示す回路構成であり、マグネット19aが1/18回転で図4に示す1サイクルの矩形パルス信号をホールIC19bから発生させるように構成されている。
【0024】
図5はモータ12をオンしたときの回転翼5又は脱水槽4の回転を検出した回転センサ19のパルス信号からパルス長計測手段18が3パルス長の計測を1パルスづつずらして移動計測する状態を示している。
図6は洗濯時に使用される負荷量計測手段の計測波形図を示し、モータ12をオンしてからオフした後の回転翼5の回転を検出した回転センサ19のパルス長が負荷量の違いによって所定の値に達するまでの時間が相違し、負荷量が大きいほど早く減速されてパルス長が所定の値に達することが分かる。従って、負荷量計測手段20がパルス長を計測することで負荷量を検出することができる。
【0025】
以下、本発明の脱水機のアンバランス検出原理及び検出方法について説明する。
まず、脱水工程時に洗濯兼脱水槽4を脱水槽として使用した場合に、脱水槽4の回転速度から脱水槽4のアンバランス量が検出できる原理について説明する。
アンバランスが存在した状態で脱水槽4を回転させ、回転速度を上昇させると、回転初期域で、受水槽2の水平振動の固有振動数と脱水槽の回転周波数との一致点(これを一次共振点と呼ぶ)で共振が発生して振動幅が大きくなる。これを図7に示す一次共振の振幅という。
さらに、一次共振が生じる回転領域を通過し、更に回転速度を上昇させると、受水槽2の傾き振動の固有周波数と脱水槽4の回転周波数との一致点(これを二次共振点と呼ぶ)で共振がが発生し振動幅が大きくなる。これを図7に示す二次共振の振幅という。
【0026】
本説明では一次共振周波数を1Hz前後(60rpm),二次共振周波数を3Hz(180rpm)とした場合を例に説明する。
図8の(a)はアンバランスが無い状態での理想状態での脱水槽4の回転状態を示し、図8の(b)は二次共振における傾き振動発生時の脱水槽4の回転状態を示す。
ここで、傾き振動とは、図8の(b)のように回転軸の向きが変化しながら脱水槽4が回転している状態である。例えると、独楽の回転軸が傾きながら円を描いて回転する歳差運動(みそすり運動とも言う)と似た動作が発生する。言い換えると回転軸歳差運動は公転、脱水槽4はその軸を中心とした自転で回転する。
【0027】
この状態では回転軸は垂直ではなく常に傾いている為に、アンバランス部は高い位置から低い位置に回転する時の重力による加速と、逆に低い位置から高い位置に回転する時の減速が発生し、脱水槽4の1回転中で加速と減速を繰り返すため回転速度の脈動成分が発生する。
歳差運動による軸の傾きが最も大きい状態で脱水槽4が回転する時はこの脈動成分も大きくなる。また、歳差運動はアンバランス量が多い程軸の傾きが大きくなるため、アンバランス量が多い程脈動量が大きい。
このような脱水槽4の1回転中に発生する回転速度の脈動成分は、脱水槽4の回転を検出する回転センサ19のパルス信号が脱水槽4の1回転で18個出力されることから、そのパルス信号の回転速度を示すパルス長に表れることになる。
【0028】
図9は脱水槽内に例えば1.0Kg程度のアンバランスウエイトを取り付け、断電時の回転数をパラメータとしたパルス長計測手段の計測波形図を示す。この計測波形図に示すパルス長は3パルスのパルス長を合計したもので、脈動をパルス長の変化として捉えている。
また、脱水槽4を二次共振が生じる領域を超えた回転速度まで上昇させ、その後に脱水槽4の回転駆動を断電により停止させると、脱水槽4の回転が減少し、二次共振が生じる領域を通過することになり、その二次共振が生じる領域でパルス長に大きな脈動成分が発生する。パルス長に発生する脈動が脱水槽4の回転数が異なる場合にどのようになるかを図9は示している。
【0029】
図9を見ると、断電回転数が大(例えば、200rpm)の場合、累積回転数が約5.5回の時に断電することを示し、慣性時のパルス長が160前後のときに大きな脈動が生じていることが分かる。また、断電回転数が中(例えば、180rpm)の場合、累積回転数が約4回の時に断電することを示し、慣性時のパルス長が160前後のときに大きな脈動が生じていることが分かる。さらに、断電回転数が小(例えば、160rpm)の場合、累積回転数が約3回の時に断電することを示し、これもパルス長が160付近のときに大きな脈動が生じていることが分かる。即ち、脱水槽4の断電を行う回転数が異っていても、結局二次共振が生じる回転数において大きな脈動が発生することが分かる。
【0030】
次に、今度は回転数が中の場合について、脱水槽4にそれぞれ大(1.75Kg)、中(1.25Kg)、無し(0kg)のアンバランスウエイトを取り付けときにどのように脈動が生じているか説明する。
図10は上記のように大、中、無しのアンバランス量をパラメータとしたパルス長計測手段の計測波形図を示す。この図に示すパルス長は3パルスのパルス長を合計したものである。
図10を見ると、アンバランス量が大と中の場合に、パルス長が160前後のときに大きな脈動が生じ、かつアンバランス量が中よりも大の方が脈動量が大きいことが分かる。また、アンバランス量が無しの場合には、脈動が生じていないことが分かる。即ち、脱水槽4にアンバランス量を生じさせる負荷があるときには脱水槽1回転あたりに同期した脈動が生じることが分かる。
【0031】
図11はパルス長計測手段と脈動量検出手段の計測波形図で、図11の(a)は大、中、小のアンバランス量をパラメータとしたパルス長計測手段の計測波形図である。図11において、アンバランス大、中は図10と同様であるが、アンバランス小は0.75Kg程度のアンバランスウエイトである。この計測波形図に示すパルス長は3パルスのパルス長を平均したものである。図11の(b)は脈動量検出手段の計測波形図で、脈動量検出手段がパルス長計測手段が検出したパルス長データから速度成分を除去して検出した脈動量の計測波形図、図11の(c)は脈動量の積分量の計測波形図である。
図11の(b)を見ると、累積回転数が6回辺たりで、脈動が増加と減少を示す大きな脈動量が生じ、アンバランス量が大から小になるにつれて脈動量も大から小になっていることが分かる。
図11の(c)を見ると、アンバランス量が大、中、小の場合に、それぞれの脈動量の積分量に違いがあり、アンバランス量に応じてアンバランス量が大は脈動量の積分値が40程度、アンバランス量が中は脈動量の積分値が30程度、アンバランス量が小は脈動量の積分値が20程度の値になっていることが分かる。
【0032】
図12は同アンバランス量検出装置のアンバランス量検出手段の出力を示すグラフである。このグラフは各種のアンバランス量について、それぞれの脈動量の積分量を横軸に取り、投入したアンバランスウエイトの重量を縦軸にプロットしたものである。このグラフを見ると、脈動量の積分量に対してアンバランス量が一定の比例関係にあることが分かる。従って、脈動量の移動積分量が分かれば、近似式を用いてアンバランス量を求めることができる。その近似式は以下に示される。
y=0.0409x−0.155
ここで、yはアンバランス量、xは脈動量の移動積分量である。
【0033】
従って、本発明の脱水機のアンバランス量検出方法は以下の如き工程で構成されることになる。
本発明の脱水機のアンバランス量検出方法は、脱水工程時に脱水槽4を駆動するモータ12に通電し、脱水槽4が脱水機の二次共振点を通過する第1の所定回転速度まで上昇したらモータ12への通電を断電するモータ断電工程と、モータ断電工程によりモータ12への通電を断電した時から脱水槽が慣性運転により回転して回転速度が低下して再び脱水機の二次共振点領域を通過した後の回転速度である第2の所定回転速度まで下降する間に、回転センサ19とパルス長計測手段18とで構成される回転速度検出手段が検出している脱水槽4の回転速度信号をサンプリングするサンプリング工程と、サンプリング工程でサンプリングした回転速度検出手段の回転速度信号における脱水槽4の1回転当たりの速度揺れにより生じる脈動から脈動量検出手段21が速度成分を除去して脈動量を求め、その脈動量の積分値を演算してアンバランス量検出手段に出力する脈動量検出工程と、脈動量検出工程で脈動量検出手段20が出力した脈動量の積分値からアンバランス量検出手段22が所定の式に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を演算するアンバランス量検出工程とからなる。そして、これらの工程を実施することにより、脱水槽4内の負荷のアンバランス量を求めることができる。
【0034】
次に、本発明の脱水機のアンバランス量検出方法を実施する装置の動作について図13のフローチャートに基づいて説明する。
まず、操作盤23を操作して脱水工程をスタートさせると(S1)、クラッチ機構10が槽側プーリ9を脱水槽4へ接続する。次に、排水弁16を開いて脱水槽4内の洗濯水を排水する(S2)。
排水が完了した後に運転制御手段17は、モータ12に通電し(S3)、モータ12の回転力はモータ側プーリ13及びベルト14を介して槽側プーリ9へ伝えられ、槽側プーリ9に接続された脱水槽4が回転を始める。
【0035】
この脱水槽4の回転は、回転センサ19のパルス信号に基づいてパルス長計測手段18が計測しており、その計測値を運転制御手段17に出力している。そして、運転制御手段17ではパルス長計測手段18の計測値に基づいて回転速度を算出し、その回転速度が例えば二次共振領域を超える回転速度である第1の所定回転速度まで上昇したら(S4)、モータ12への通電を断電する(S5)。
また、断電されたら、脈動量検出手段21がパルス長計測手段18の計測値のサンプリングを開始する(S6)。
【0036】
そして、洗濯脱水槽4の回転が再び二次共振領域を通過した回転速度である第2の所定回転速度まで下降したら(S7)、脈動量検出手段21はパルス長計測手段18の計測値のサンプリングを停止する(S8)。
このように、脱水槽4の回転のサンプリングを脱水槽4の回転が例えば二次共振領域を超える回転速度である第1の所定回転速度で断電してから二次共振領域を通過した回転速度である第2の所定回転速度までとしたのは、慣性運転において脈動検出を二次共振点の脈動量が大きく、かつ安定したところで捉えることにより、高い分解能で検出精度の向上を図ることができるからである。
【0037】
脈動量検出手段21がパルス長計測手段18の計測値をサンプリングするが、パルス長計測手段18では、回転センサ19からパルス信号の出力波形が入力されると、3パルス長を1パルスづつずらして移動計測し、3パルス長の平均値を演算して出力していく。
このようにパルス長計測手段18が回転センサ19のパルス信号の3パルス長を1パルスづつずらして移動計測し、3パルス長の平均値を演算して出力していくようにしたのは、回転センサ19のマグネット19aの着磁ピッチのばらつきによる誤差を平均化し、検出精度の向上を図るためである。
その3パルス長の平均値のパルス長は、サンプリングの開始時から脱水槽4の回転速度が次第に減少していくことにより長くなるが、回転速度が二次共振領域を通過するときに大きな脈動を生じさせる。
【0038】
そこで、脈動量検出手段21ではパルス長計測手段18が計測した3パルス長の平均値のパルス長の脈動から速度成分を除去して脈動量を求め、(S9)、その脈動量の積分値を演算し(S10)、アンバランス量検出手段22に出力する。
脈動量検出手段21の脈動量の積分値が入力されたアンバランス量検出手段22では、脈動量の積分値からアンバランス量に算出する所定の実験式に基づいて演算して脈動量の積分値をアンバランス量に変換する(S11)。そのアンバランス量を所定の基準値と比較して大か、小かを判定し(S12)、アンバランス量が小であれば、脱水を開始して(S13)、脱水工程は終了する(S14)。また、アンバランス量が大であれば、ほぐしを行い(S15)、ステップS1に戻る。
【0039】
このように、洗濯脱水槽4のアンバランスを検出するために用いる回転センサ19には、洗濯脱水槽4の負荷量を検出するために用いていた既設の回転センサを利用し、機械式スイッチや特別の検出センサを用いないために、装置全体が安価となり、回転センサは機械的接触部がないために安全性、耐久性、組立作業性の向上を図ることが出来る。
また、洗濯脱水槽4の慣性回転時に発生する回転速度の脈動量からアンバランス量を導いているため、従来の脱水槽の回転立ち上がり時に、回転数の変動度合いを検出する方式のように電源電圧の変動により影響されることなく、検出精度の向上を図ることが出来る。
【0040】
なお、上記の説明では、脈動量検出手段21がパルス長計測手段18の計測値をサンプリングするのは、脱水槽4の回転が例えば二次共振領域を超える回転速度である第1の所定回転速度まで上昇してモータ12への通電を断電した時から、再び二次共振領域を通過した回転速度である第2の所定回転速度2まで下降した時までの間の1回であるが、これを例えば図14に示すようにもう一度通電、断電を行うことにより2回のサンプリングを行って、得られた脈動量検出手段22の脈動量の積分値の平均値を求め、その平均値からアンバランス量検出手段23でアンバランス量を演算して求めることにより、より高精度なアンバランス量を検出することができる。
以上はサンプリングが2回について説明したが、複数回であってもよいことは勿論である。
【0041】
実施の形態2.
図15はこの発明の実施の形態2である全自動洗濯機の脱水機のアンバランス量検出装置のブロック図、図16は同アンバランス量検出装置のメモリの内容を示す説明図である。
図において、図1の発明の実施の形態1と同様の構成は同一符号を付して重複した構成の説明を省略する。24はアンバランス量と脈動量の移動積分量との関係を示すテーブル内容を記憶したメモリである。
この実施の形態2では、実施の形態1の脱水工程スタート(S1)〜パルス長計測手段18が計測した3パルス長の平均値のパルス長の脈動量から速度成分を除去した脈動量の積分値を演算する(S10)のステップまでは同じであるが、それ以降のステップが異なる。
【0042】
アンバランス量検出手段22では、脈動量検出手段21の脈動量の積分値が入力されたら、メモリ24が記憶したテーブルの内容を読み出し、脈動量検出手段22の脈動量の積分値に対応するアンバランス量を読み込むことによって、アンバランス量を求めるようにしたものである。
例えば、脈動量検出手段22の脈動量の積分値が0〜10とすると、それに対応するアンバランス量は0Kgとし、積分値が11〜22とすると、それに対応するアンバランス量は0.5Kgとし、積分値が23〜34とすると、それに対応するアンバランス量は1.0Kgとし、積分値が35〜46とすると、それに対応するアンバランス量は1.5Kgとし、積分値が47〜とすると、それに対応するアンバランス量は2.0Kgとし、アンバランス量が1.5Kg以下であれば脱水に影響無しと判断して脱水を開始し、またアンバランス量が2.0Kg以上であれば脱水に影響有りと判断してほぐしを行う。
【0043】
このように、アンバランス量検出手段22で、脈動量検出手段21の脈動量の積分値が入力されたら、メモリ24のテーブル内容を読み出し、脈動量検出手段21の脈動量の積分値に対応するアンバランス量を読み込むことによって、アンバランス量を求めるようにしたことにより、簡単にアンバランス量を求めることができ、アンバランス量に応じて脱水工程以外の工程を決定でき、省時間、省電気、モータの耐久性向上を図ることができる。
【0044】
【発明の効果】
以上のようにこの発明の脱水機のアンバランス検出方法によれば、脱水槽を駆動するモータに通電し、脱水槽が所定回転速度まで上昇したらモータへの通電を断電し、その断電した時から脱水槽が慣性運転により回転している間に、回転速度検出手段が脱水槽の回転速度を検出した回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求め、その脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を計算して求めるようにしているので、従来の脱水槽の回転立ち上がり時に、回転数の変動度合いを検出する方式のように電源電圧の変動に影響されることなく、検出精度の向上を図ることができるという効果がある。
【0045】
また、もう一つの脱水機のアンバランス検出方法によれば、脱水槽を駆動するモータに通電し、脱水槽が第1の所定回転速度まで上昇したらモータへの通電を断電し、その断電した時から脱水槽が慣性運転により回転して第2の所定回転速度まで下降する間に、回転速度検出手段が脱水槽の回転速度を検出した回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求め、その脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を計算して求めるようにしているので、従来の脱水槽の回転立ち上がり時に、回転数の変動度合いを検出する方式のように電源電圧の変動に影響されることなく、検出精度の向上を図ることができるという効果がある。
【0046】
更に、慣性回転時の脱水槽の回転数の検出は、二次共振領域を超える回転速度である第1の所定回転速度で断電した時から断電により回転速度が低下して再び二次共振領域を通過した後の回転速度である第2の所定回転速度までとしたので、慣性運転において脈動検出を二次共振点の脈動量が大きく、かつ安定したところで捉えることができるため、高い分解能で検出精度の向上を図ることができるという効果がある。
【0047】
更にまた、アンバランス量は脈動量から所定の式に基づいて演算して求めるようにしたので、連続的にアンバランス量を求めることができ、求めたアンバランス量に応じて脱水工程以外の工程を決定でき、省時間、省電気、モータの耐久性向上を図ることができるという効果がある。
【0048】
また、アンバランス量は各種の脈動量とそれらにそれぞれ対応するアンバランス量とを記載したテーブルから検出した脈動量に対応するアンバランス量を読み込むことによってアンバランス量を求めるようにしたので、簡単にアンバランス量を求めることができ、求めたアンバランス量に応じて脱水工程以外の工程を決定でき、省時間、省電気、モータの耐久性向上を図ることができるという効果がある。
【0049】
更に、アンバランス量を求めることを複数回実施し、実施して得られたアンバランス量の平均値を求めるようにしたので、より高精度なアンバランス量を検出することができるという効果がある。
【0050】
また、この発明の脱水機のアンバランス検出装置によれば、運転制御手段が脱水槽を回転駆動するモータへの電源供給の断電をし、脈動量検出手段は回転速度検出手段が検出している回転速度信号をモータへの断電後から脱水槽が慣性運転により回転している間にサンプリングし、そのサンプリングした回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求め、アンバランス量検出手段は脈動量検出手段が求めた脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を演算するので、従来の脱水槽の回転立ち上がり時に、回転数の変動度合いを検出する方式のように電源電圧の変動に影響されることなく、検出精度の向上を図ることができ、その回転速度検出手段は負荷量検出に用いる既設のものを利用し、機械式スイッチや特別の検出センサを用いていないために、装置全体が安価となり、回転センサは機械的接触部がないために安全性、耐久性、組立作業性の向上を図ることができるという効果がある。
【0051】
また、もう一つの脱水機のアンバランス検出装置によれば、運転制御手段が脱水槽を回転駆動するモータへの電源供給の断電を回転速度検出手段の回転速度信号に基づき演算した第1の所定回転速度でし、脈動量検出手段は回転速度検出手段が検出している回転速度信号をモータへの断電後から脱水槽が慣性運転時における第2の所定回転数までの間にサンプリングし、そのサンプリングした回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求め、アンバランス量検出手段は脈動量検出手段が求めた脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を演算するので、従来の脱水槽の回転立ち上がり時に、回転数の変動度合いを検出する方式のように電源電圧の変動に影響されることなく、検出精度の向上を図ることができ、その回転速度検出手段は負荷量検出に用いる既設のものを利用し、機械式スイッチや特別の検出センサを用いていないために、装置全体が安価となり、回転センサは機械的接触部がないために安全性、耐久性、組立作業性の向上を図ることができるという効果がある。
【0052】
また、回転速度検出手段は脱水槽の回転を検出し、脱水槽の1回転当たり複数のパルス信号を発生する回転センサと、回転センサが出力するパルス信号のパルス長を計測するパルス長計測手段とからなり、パルス長計測手段は、回転センサが出力するパルス信号の複数パルス長を所定パルスづつずらして移動計測し、複数パルス長の平均値を演算し、その平均値を回転速度信号として出力するので、回転センサのマグネットの着磁ピッチのばらつきによる誤差を平均化し、検出精度の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1である全自動洗濯機の脱水機のアンバランス量検出装置のブロック図である。
【図2】 同アンバランス量検出装置の回転センサを示す斜視図である。
【図3】 図2の回転センサの回路図である。
【図4】 図2の回転センサの出力波形図である。
【図5】 同アンバランス量検出装置のパルス長計測手段の計測波形図である。
【図6】 洗濯時に使用される負荷量検出手段の計測波形図である。
【図7】 脱水槽の一次共振,二次共振の振動振幅の波形図である。
【図8】 理想状態と傾き振動発生時の脱水槽の回転状態を示す説明図である。
【図9】 断電時の回転数をパラメータとしたパルス長計測手段の計測波形図である。
【図10】 アンバランス量をパラメータとしたパルス長計測手段の計測波形図である。
【図11】 同アンバランス量検出装置のパルス長計測手段と脈動量検出手段の計測波形図である。
【図12】 同アンバランス量検出装置のアンバランス量検出手段の出力を示すグラフである。
【図13】 同アンバランス量検出装置の動作を説明するフローチャートである。
【図14】 同アンバランス量検出装置の複数の検出領域を示す回転速度の波形図である。
【図15】 この発明の実施の形態2である全自動洗濯機の脱水機のアンバランス量検出装置のブロック図である。
【図16】 同アンバランス量検出装置のメモリの内容を示す説明図である。
【符号の説明】
4 洗濯脱水槽、17 運転制御手段、18 パルス長計測手段(回転速度検出手段)、19 回転センサ(回転速度検出手段)、21 脈動量検出手段、22 アンバランス量検出手段。
Claims (9)
- 脱水槽を駆動するモータに通電し、脱水槽が所定回転速度まで上昇したらモータへの通電を断電し、その断電した時から脱水槽が慣性運転により回転している間に、回転速度検出手段が脱水槽の回転速度を検出した回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求め、その脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を求めるようにしたことを特徴とする脱水機のアンバランス量検出方法。
- 脱水槽を駆動するモータに通電し、脱水槽が第1の所定回転速度まで上昇したらモータへの通電を断電し、その断電した時から脱水槽が慣性運転により回転して第2の所定回転速度まで下降する間に、回転速度検出手段が脱水槽の回転速度を検出した回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求め、その脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を求めるようにしたことを特徴とする脱水機のアンバランス量検出方法。
- 前記第1の所定回転速度は脱水機の二次共振点領域を通過した後の回転速度であり、前記第2の所定回転速度は、断電により回転速度が低下して再び脱水機の二次共振点を通過した後の回転速度であることを特徴とする請求項2記載の脱水機のアンバランス量検出方法。
- 前記アンバランス量は前記脈動量から所定の式に基づいて演算して求めるようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の脱水機のアンバランス量検出方法。
- 前記アンバランス量は各種の脈動量とそれらにそれぞれ対応するアンバランス量とを記載したテーブルから検出した脈動量に対応するアンバランス量を読み込むことによってアンバランス量を求めるようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の脱水機のアンバランス量検出方法。
- 前記アンバランス量を求めることを複数回実施し、実施して得られたアンバランス量の平均値を求めることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の脱水機のアンバランス量検出方法。
- 脱水槽を回転駆動するためのモータと、
脱水槽の回転速度を検出して回転速度信号を出力する回転速度検出手段と、
モータを駆動すると共に回転速度検出手段の回転速度信号に基づき演算した所定回転速度で電源供給を断つ運転制御手段と、
回転速度検出手段が検出している回転速度信号をモータへの断電後から脱水槽が慣性運転により回転している間にサンプリングし、そのサンプリングした回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求めて出力する脈動量検出手段と、
脈動量検出手段が求めた脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を求めるアンバランス量検出手段と
を備えたことを特徴とする脱水機のアンバランス量検出装置。 - 脱水槽を回転駆動するためのモータと、
脱水槽の回転速度を検出して回転速度信号を出力する回転速度検出手段と、
モータを駆動すると共に回転速度検出手段の回転速度信号に基づき演算した第1の所定回転速度で電源供給を断つ運転制御手段と、
回転速度検出手段が検出している回転速度信号をモータへの断電後から脱水槽が慣性運転における第2の所定回転速度までの間にサンプリングし、そのサンプリングした回転速度信号における脱水槽の1回転当たりの速度揺れにより生じる回転速度の脈動量を求めて出力する脈動量検出手段と、
脈動量検出手段が求めた脈動量に基づいて脱水槽内の負荷偏り度合いを示すアンバランス量を求めるアンバランス量検出手段と
を備えたことを特徴とする脱水機のアンバランス量検出装置。 - 前記回転速度検出手段は、脱水槽の回転速度を検出し、脱水槽の1回転当たり複数のパルス信号を発生する回転センサと、回転センサが出力するパルス信号のパルス長を計測するパルス長計測手段とからなり、パルス長計測手段は回転センサが出力するパルス信号の複数のパルス長を所定パルスづつずらして移動計測し、複数パルス長の平均値を演算し、その平均値を回転速度信号として出力することを特徴とする請求項7又は8記載の脱水機のアンバランス量検出装置。
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