JP3743787B2 - 高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂及びそれよりなる高純度薬品容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置産業分野、精密工業部品分野及び医薬品等に使用される高純度薬品用容器の製造に好適で、高純度薬品を充填した場合に、薬品への微粒子の発生および金属溶出の極めて少ないポリエチレン容器用樹脂及び高純度薬品容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子工業分野の著しい発達に伴って、高純度薬品の需要が高まっている。高純度薬品は、例えば、大規模化、集積化されたLSI等の電子回路の製造に不可欠の薬品として使用されている。具体的には、ウエハー洗浄・エッチング用、配線・絶縁膜エッチング用、治具洗浄用、現像液、レジスト希釈液、レジスト剥離液、乾燥用等の用途として、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、過酸化水素水、イソプロピルアルコール、キシレン、TMAH、メタノール、酢酸、リン酸、アンモニア水、PGMEA、DMSO、NMP、ECA、乳酸エチル等が用いられている。従来、これらの高純度薬品用容器材料として、耐薬品性、耐衝撃性、価格等の点から、ポリエチレン樹脂が使用されている。しかしながら、従来のポリエチレン樹脂製の容器では、薬品による該樹脂の溶出物や劣化物等の汚染物質による内容物への汚染問題があり、高純度薬品容器用として限界があった。すなわち、超LSIの微細化に伴い、従来では金属不純物濃度が1PPBであったものが、現在では0.1PPB以下が要求されている。また、従来、0.5μm以上の微粒子が問題であったものが、0.2μm以上の微粒子が100個/ml以下と厳しい品質が要求されるようになり、さらに、最近では0.1μmレベルの微粒子が問題となり0.1μm以上の微粒子が100個/ml以下とより厳しい品質が要求されている。そのため、金属不純物濃度と微粒子レベルを満足するよりクリーンな高純度薬品容器用のポリエチレン樹脂の出現が待たれている。
【0003】
ここで、特公平5−41502号公報はメルトインデックスが0.1〜8g/10分で密度が0.94g/cm3以上の高密度ポリエチレン(HDPE)をフッ化水素酸容器に用いる提案であるが、汚染物質となる可能性のある樹脂添加物に関する記載がない。また、特公平6−51399号公報は遮光剤含むポリエチレンを外層にし、最内層に密度0.958g/cm3以上で数平均分子量が5,000〜12,000かつMw/Mnが15以上で脂肪酸金属塩とヒンダードフェノール系酸化防止剤の濃度を特定した硫酸等の容器の提案であるが、微粒子のレベルが0.5μm以上と低い。さらに、特開平7−62161号公報および特開平7−257540号公報はポリエチレン樹脂の、炭化水素系溶媒抽出量や低分子成分の含有量を抑え、酸化防止剤、中和剤並びに耐光剤の添加量を制限した容器の提案であるが、ポリエチレン樹脂に残存する触媒成分による灰分の影響に対する改良が不十分であり、薬品に溶出する金属不純物濃度に対する対策が未完成である。また、微粒子のレベルが0.2μm以上と十分でない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂であって、該ポリエチレン樹脂を高純度薬品容器として使用した場合に、薬品による該樹脂の溶出物や劣化物等の汚染物質の溶出を極力抑え、樹脂の変色が少なく長期間の使用が可能な高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂及びそれよりなる高純度薬品容器の提供を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の性状を有するポリエチレン樹脂を使用することによって上記の問題を解決できることを見い出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)の性状を有する高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂及びそれよりなる高純度薬品容器に関するものである。
【0007】
(1)密度(JIS K6760−1981)が0.94〜0.97g/cm3、
(2)190℃、21.6kg荷重のメルトフローレート(JIS K7210−1976、条件7)が2〜50g/10分、
(3)ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が8〜15、
(4)沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.1重量%以下、
(5)含有塩素量がポリエチレン樹脂に対して15PPM以下
さらに、該ポリエチレン樹脂に含有されている灰分量が樹脂に対して50PPM以下であるポリエチレン樹脂が好ましい。また、本発明のポリエチレン樹脂は、該ポリエチレン樹脂に添加する添加物と添加量を特定することが好ましい。即ち、該樹脂に対して(A)中和剤として脂肪酸金属塩類を150PPM以下として添加してなること、および/又は(B)酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を800PPM以下として添加してなることが好ましい。
【0008】
本発明に用いられる高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂は、チーグラー系触媒又はメタロセン系触媒等の高活性触媒により製造できる。例えばチタン、ジルコニウム等の遷移金属化合物、マグネシウムの化合物、及び有機アルミニウム化合物から成る高活性チーグラー系触媒を重合用触媒として用い、エチレンもしくは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを所望の密度となる割合にして共重合することにより、好適に製造することができる。
【0009】
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンなどを挙げることが出来る。
【0010】
該ポリエチレン樹脂の製造における重合方法はスラリー重合、気相重合、溶液重合など例示することが出来る。なかでも、薬品に溶出する金属不純物濃度を低く抑え、また、微粒子の発生の原因となる低分子重合体の樹脂への取り込みを制限するため、炭素数が6以上かつ10以下の重合媒体、例えば、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等を用いるスラリー重合において、多段重合法を採用すると良い。この多段重合法として、密度が0.94〜0.98g/cm3の低分子量成分と、密度が0.92〜0.95g/cm3で該低分子量より密度の低い高分子量成分の二成分とからなり、該二成分の重合生成量比が、低分子量成分:高分子量成分=20:80〜80:20である、二段重合法が例示できる。
【0011】
また、該ポリエチレン樹脂は以下に示すように密度、メルトフローレート、分子量分布(Mw/Mn)、沸騰ノルマルヘキサン抽出量および含有塩素量を特定するものである。
【0012】
即ち、該ポリエチレン樹脂の密度(JIS K6760−1981)は0.94〜0.97g/cm3であり、0.94g/cm3未満では容器内の高純度薬品への溶出ポリマー成分が増加し、微粒子の発生原因となる。また、密度が0.97g/cm3を超えると耐薬品性の低下により容器の強度が低下する。
【0013】
該ポリエチレン樹脂の190℃、21.6kg荷重のメルトフローレート(JIS K7210−1976、条件7)は2〜50g/10分であり、2g/10分未満では流動性が低下する。また、該メルトフローレートが50g/10分を超えると溶融張力が低下しブロー成形し難くなる。
【0014】
該ポリエチレン樹脂のゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは8〜15であり、8未満では分子量分布が狭くて流動性が劣り、また、樹脂の劣化を促進させる。該Mw/Mnが15を超えると、分子量分布が拡大して微粒子の発生原因となる低分子量成分が増加する。また、Mw/Mnが15を超えると、パリソン結合部のピンチオフ部の形状が劣るようになり落下強度が低下する。
【0015】
該ポリエチレン樹脂の沸騰ノルマルヘキサン抽出量は0.1重量%以下であり、0.1重量%を超えると、薬品への溶出ポリマー成分が増加し、微粒子の発生原因となる。
【0016】
該ポリエチレン樹脂の、蛍光X線装置で測定される含有塩素量は、全ポリエチレン樹脂に対して15PPM以下である。全ポリエチレン樹脂に対して15PPMを超えると、塩素が成形機及び金型の金属を腐食させ、また、成形品の変色の原因となるため塩素を補足する中和剤が必要となり、止むを得ず使用した中和剤が金属不純物の原因となる。
【0017】
また、該ポリエチレン樹脂に含有されている灰分量は該樹脂に対して50PPM以下であることが好ましい。該ポリエチレン樹脂に含有されている灰分量が50PPMを超えて含有すると、薬品に灰分が溶出するため、薬品中の金属不純物濃度を増加させる。灰分量は、全樹脂に対する完全灰化物の割合を重量PPMで示すものである。完全灰化物は電気炉で完全灰化して得られるもので、Al,Mg,Ti,Si等の重合触媒の残存物、中和剤等の金属含有の添加物及びポリエチレン樹脂の製造時の不純物・付着物の金属酸化物である。
【0018】
さらに、本発明に用いられる高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂は、酸化防止剤、耐光安定剤、及び中和剤等の全ての添加剤及び添加物が無添加であることが好ましい。ここで、中和剤とはステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛に代表される脂肪酸金属塩とハイドロタルサイト類であって、何れも薬品中に溶出して金属汚染物質となるものであり、無添加であることが好ましい。また、本来無添加が好ましいが、内容物の薬品の種類によっては、(A)中和剤として脂肪酸金属塩類を150PPM以下として添加すること、および/又は(B)酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を800PPM以下として添加することにより、樹脂の薬品による酸化劣化を防止し、微粒子の発生及び容器の変色を抑える。従って、本発明のポリエチレン樹脂に対して、(A)中和剤として脂肪酸金属塩類を150PPM以下として添加すること、および/又は(B)酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を800PPM以下として添加することも好ましい。中和剤としてはハイドロタルサイト類よりも金属分が少ない脂肪酸金属塩類が好ましい。脂肪酸金属塩類がポリエチレン樹脂に対し150PPMを超えて添加すると、薬品中に金属分が溶出して金属不純物の発生原因となる。フェノール系酸化防止剤がポリエチレン樹脂に対し800PPMを越えると、薬品中に溶出して微粒子の発生原因となる。フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤と2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)のビスフェノール系酸化防止剤のものが挙げられる。
【0019】
本発明の高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂はブロー成形、射出成形、押出成形、回転成形、押出成形等既知の成形方法により容器状に成型することにより高純度薬品容器となる。特に、クリーンルーム内に設置したブロー成形機を使用し、フィルターで微粒子を取り除いたエアーをブローエアーに用いたブロー成形方法はクリーンな容器を製造するのに好ましい。容器形状および容器の容量は特定しないが、内容物のバリアー性や容器の強度を補強するために、該樹脂を内層に使用し、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、およびポリアミド樹脂等を中間層に使用したり、FRP等を外層にして補強容器にしてもかまわない。
【0020】
薬品の種類によっては遮光性容器にする必要があり、本発明のポリエチレン樹脂を内層とし、有機顔料あるいは無機顔料等の遮光性材料を含む層を少なくとも一層含む多層容器としても、また、クリーン度を保てる範囲内で有機顔料あるいは無機顔料を本発明のポリエチレン樹脂に添加してもかまわない。
【0021】
【実施例】
以下、本発明について実施例により説明するが、これら実施例に限定されるものではない。
【0022】
試験方法は以下の方法に従った。
【0023】
▲1▼密度:JIS K6760−1981に従って、100℃の熱水に1時間浸漬した後、室温に徐冷した試験片を、23℃に保った密度勾配管で測定した。
▲2▼Mw/Mn:ウオーターズ社製150C ALC/GPC(カラム;東ソー製GMHHR−H(S)、溶媒;1,2,4−トリクロロベンゼン)を使用して、GPC法により、Mwおよび、Mw/Mnを算出した。なお、東ソー製標準ポリスチレンを用いて、ユニバーサルキャリブレーション法によりカラム溶出体積は校正した。
▲3▼沸騰ノルマルヘキサン抽出量(n−C6):ソックスレー抽出器を用い、樹脂2gをノルマルヘキサン溶媒400mlで2時間抽出した。全樹脂に対する抽出分の重量%で示す。
【0024】
▲4▼含有塩素量:約10gのポリエチレン樹脂を加熱プレスを使用して試験片とし、蛍光X線装置で定性定量した。全樹脂に対する塩素の割合を重量PPMで示す。
【0025】
▲5▼灰分量:JIS K2272−1985に準拠し、秤量した白金蒸発皿上にポリエチレン樹脂25gを置き、ガラス蓋で上部を覆いバーナーで徐々に灰化し、次いで775±25℃の電気炉で完全灰化し、灰化後に重量測定した。全樹脂に対する完全灰化物の割合を重量PPMで示す。
【0026】
▲6▼耐薬品性試験:ポリエチレン樹脂をブロー成形することで得られた内容積500mlの容器に、特級試薬硫酸(98%;和光純薬社製)を充填後、50℃で一定期間静置(3週間、4週間及び5週間)した後、目視により容器の黄変・黒変等の変色の度合いを1〜4の4段階で評価した。
【0027】
▲7▼微粒子数:ポリエチレン樹脂をブロー成形することで得られた内容積500mlの容器を使用した。クリーンルーム内で、容器に250mlの超純水を入れ15秒間振とうする洗浄を5回繰り返した後、容器に250mlの超純水を入れ30分間静置して、0.1μm以上の微粒子の数をリヨン株式会社製KL−25型液体微粒子カウンターで測定した。また、同様に超純水で5回洗浄後、容器に250mlの超純水を入れ50℃にて1ヶ月間静置した後、0.1μm以上の微粒子の数を同液体微粒子カウンターで測定した。水中の微粒子数は個/mlで示す。
【0028】
▲8▼金属不純物濃度:ポリエチレン樹脂をブロー成形することで得られた内容積500mlの容器を超純水で5回洗浄後、容器に超純水を充填し、50℃で1ヶ月間静置した後、ICP−MS装置又はフレームレス原子吸光光度計(検出下限界0.01PPB)で測定した。測定金属はAl,Ca,Cr,Mg,Ti,Zr,Na,K,Fe,Mn,Zn、Niの12種類。
【0029】
実施例1
(1)固体触媒成分(A)の調製
特開昭60−262802号公報に従い、Al,Ti,Mg及びClを主成分とするチーグラー系触媒(固体触媒成分(A))を調製した。すなわち、窒素で充分に置換された3リットルガラスフラスコに金属マグネシウム粉末40g(1.65モル)およびチタンテトラブトキシド224g(0.66モル)を加えた。滴下ロートにヨウ素2.0gを溶解したi−プロパノール108g(1.8モル)とn−ブタノール135g(1.8モル)の混合物を入れた。この混合物を先の3リットルフラスコへ80〜95℃の温度範囲で2時間かけて滴下した。反応を完結させるため、さらに120℃まで昇温し1時間撹拌した。その後にヘキサン2.1リットルを加え均一溶液を得た。次いで、この均一溶液を撹拌装置を備えた10リットルのステンレス製オートクレーブに入れ、オートクレーブの内温を45℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロライドの30%ヘキサン溶液1.32kg(3.3モル)を1時間かけて加え、さらに60℃で1時間撹拌した。次にメチルヒドロポリシロキサン(25℃における粘度約30センチストークス)197g(ケイ素3.3グラム原子)を加え、68〜70℃で1時間撹拌した。45℃に冷却後i−ブチルアルミニウムジクロライドの50%ヘキサン溶液2.8kg(9.1モル)を2時間かけて加えた。すべてを加えた後、70℃で1時間撹拌を行い固体触媒成分(A)を得た。得られた固体触媒成分(A)はヘキサンを用いて残存する未反応物および副生成物を除去した後、ヘキサンスラリーとしてポリエチレン樹脂の製造に用いた。
【0030】
(2)ポリエチレン樹脂の製造
内容積370リットルの連続式重合器に脱水精製したヘキサン110リットル/時間、有機アルミニウム化合物(B)としてトリイソブチルアルミニウムを120ミリモル/時間、上記固体触媒成分(A)を0.5g/時間、エチレン25.4kg/時間、水素を対エチレン濃度比0.35モル/モルになるようにそれぞれを供給しながら、85℃、全圧30kg/cm2、平均滞留時間を3.4時間の条件下で連続的に第1段目の重合を行った。第1段目のエチレン単独重合体(低分子量成分)は、190℃、2.16Kg荷重のメルトフローレート(JIS K7210−1976、条件4)は16g/10分で、密度0.974g/cm3であった。
【0031】
第1段目の重合体を含むヘキサンスラリーは、フラッシュタンクにて未反応の水素およびエチレンを除去した後、内容積545リットルの別の連続式重合器に導入した。この重合器に追加のヘキサンを45リットル/時間供給しながら、エチレン17.7kg/時間、1−ブテンを0.8kg/時間、水素を対エチレン濃度比0.14モル/モル、80℃、全圧20kg/cm2、平均滞留時間を3.3時間の条件下に第2段目の重合を行った。第2段重合器からの排出物はフラッシュタンクにて未反応の水素、エチレン、1−ブテンを除去した後、50リットル/時間のヘキサンにて洗浄した後、乾燥工程を経てエチレン系共重合体(低分子量成分と高分子量成分の混合物パウダー)を得た。低分子量成分の重合割合は45重量%で、高分子量成分の重合割合は55重量%であった。
【0032】
上記した二段重合法により得たパウダーのみを、中和剤及び酸化防止剤等を一切使用せずに、50mmφ造粒機でペレット化しポリエチレン樹脂を得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.956g/cm3であり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが28g/10分であり、GPCより求められるMw/Mnが9.2であり、沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.08%であり、含有塩素量が10PPMであり、灰分量が35PPMであった。
【0033】
(3)容器の評価
上記のポリエチレン樹脂を、ブロー成形し、得られた容器を用いて上記した耐薬品性試験及び微粒子数と金属不純物濃度の測定を行った。
【0034】
表1に示すように、耐薬品性試験では3週間で容器に変色はない。また、金属不純物濃度は0.01PPB以上の濃度となる金属がなく、保存中の微粒子の増加も少なかった。
【0035】
実施例2
第2段目の重合器の水素を対エチレン濃度比0.06モル/モルとして供給した以外は、実施例1と同様に、ヘキサン中でエチレンとブテン−1を共重合して、二段重合法により重合パウダーを得てた。該パウダーのみを、中和剤及び酸化防止剤等を一切使用せずに50mmφ造粒機でペレット化し、ポリエチレン樹脂を得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.955g/cm3であり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが8.5g/10分であり、GPCより求められるMw/Mnが13.5であり、沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.08%であり、含有塩素量が9PPMであり、灰分量が20PPMであった。該ポリエチレン樹脂をブロー成形し、得られた容器を用いて上記した耐薬品性試験及び微粒子数と金属不純物濃度の測定を行った。
【0036】
表1に示すように、耐薬品性試験では3週間で容器に変色はない。金属不純物濃度は0.01PPB以上の濃度となる金属がなく、保存中の微粒子の増加も少なかった。
【0037】
比較例1
Cr及びSiO2を主成分とするフィリップス系触媒を用いて、ヘキサン中でエチレンと1−ヘキセンを共重合し、重合パウダーを得た。該重合パウダーのみを、中和剤及び酸化防止剤を使用せずに50mmφ造粒機でペレット化し、ポリエチレン樹脂を得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.954g/cm3であり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが25g/10分であり、GPCより求められるMw/Mnが7.2であり、沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.11%であり、含有塩素量が3PPM未満であり、灰分量が180PPMある。該ポリエチレン樹脂をブロー成形し、得られた容器を用いて上記した耐薬品性試験及び微粒子数と金属不純物濃度の測定を行った。
【0038】
表1に示すように、耐薬品性試験では4週間で変色が認められた。また、金属不純物濃度はクロム(Cr)が0.04PPBと増加し、微粒子数の増加がかなりあった。
【0039】
比較例2
第1段目の重合器の平均滞留時間を1.2時間に、また、第2段目の重合器の平均滞留時間を1.1時間にし、さらに、第2段重合器からの排出物をヘキサンにて洗浄しないこと以外は、実施例1と同様に、ヘキサン中でエチレンとブテン−1を共重合して、二段重合法により重合パウダーを得た。該パウダーのみを中和剤及び酸化防止剤等を一切使用せずに50mmφ造粒機でペレット化し、ポリエチレン樹脂を得た。該ポリエチレン樹脂は、密度が0.956g/cm3であり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが28g/10分であり、GPCより求められるMw/Mnが10.3であり、沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.08%であり、含有塩素量が20PPMであり、灰分量が60PPMであった。該ポリエチレン樹脂をブロー成形して得られた容器を用いて上記した耐薬品性試験及び微粒子数と金属不純物濃度の測定を行った。
【0040】
表1に示すように、金属不純物濃度はアルミニウム(Al)が0.2PPBなり、0.1PPBを超えた。
【0041】
比較例3
第1段目のエチレン単独重合体(低分子量成分)の190℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(JIS K7210−1976、条件4)を100g/10分で、密度0.979g/cm3、また、第1段目の重合器の水素を対エチレン濃度比0.12モル/モルで供給した以外は、実施例1と同様に、ヘキサン中でエチレンとブテン−1を共重合して、二段重合法により重合パウダーを得てた。該パウダーのみを、中和剤及び酸化防止剤等を一切使用せずに50mmφ造粒機でペレット化し、ポリエチレン樹脂を得た。該ポリエチレン樹脂は密度が0.964g/cm3であり、190℃、21.6kg荷重のメルトフローレートが41g/10分であり、GPCより求められるMw/Mnが16.0であり、沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.09%であり、含有塩素量が12PPMであり、灰分量が20PPMであった。該ポリエチレン樹脂をブロー成形し、得られた容器を用いて上記した耐薬品性試験及び微粒子数と金属不純物濃度の測定を行った。
【0042】
表1に示すように、耐薬品性試験では変色は少なく、また、金属不純物濃度は0.01PPB以上となる金属がなかった。しかし、保存中の微粒子数の増加がかなりあった。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
高純度薬品容器として本発明のポリエチレン樹脂を使用した場合に、薬品による該樹脂の溶出物や劣化物及び金属不純物等の汚染物質を極力抑えるため、超LSIの微細化に対応できるクリーンな容器を提供できる。さらに、樹脂の変色が少なく長期間の使用が可能となる。
【0045】
Claims (4)
- 炭素数が6以上かつ10以下の重合媒体を用いるスラリー重合において、二段重合法により製造された、密度が0.94〜0.98cm 3 の低分子量成分と、密度が0.92〜0.95cm 3 で該低分子量より密度の低い高分子量成分の2成分とからなり、該二成分の重合生成量比が、低分子量成分:高分子量成分=20:80〜80:20であり、以下の(1)〜(5)の性状を有する高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂。
(1)密度(JIS K6760−1981)が0.94〜0.97g/cm3、
(2)190℃、21.6kg荷重のメルトフローレート(JIS K7210−1976、条件7)が2〜50g/10分、
(3)ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)より求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が8〜15、
(4)沸騰ノルマルヘキサン抽出量が0.1重量%以下、
(5)含有塩素量がポリエチレン樹脂に対して15PPM以下 - ポリエチレン樹脂に含有されている灰分量が該樹脂に対して50PPM以下である請求項第1項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂。
- ポリエチレン樹脂に対して、(A)中和剤として脂肪酸金属塩類を150PPM以下として添加してなること、および/又は(B)酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤を800PPM以下として添加してなることを特徴とする請求項第1項又は第2項に記載の高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂。
- 請求項第1項〜第4項に記載のポリエチレン樹脂からなる高純度薬品容器。
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