JP3743181B2 - パルスドップラレーダ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は飛しょう体に搭載されるレーダ装置、特に移動目標と搭載母機との相対速度差によって生じるドップラ周波数を検知、追尾するパルスドップラレーダ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来この種のパルスドップラレーダ装置の例として以下に示すものがあった。図8は例えばMcGraw Hill Inc刊、Fred E.Nathanson著、“Radar Design Principles,2nd Edition”p487,Section11.5 Block Diagramfor Pulse Doppler Receiver、あるいはIEEETransactions on Aerospace and Electronic Systems,vol.AES−20,No3,May 1984,pp292−302“The Development of Airborne Pulse Doppler Radar”Fig4に記載のパルスドップラレーダ装置の基本構成を応用したパルスドップラレーダ装置のブロック図である。図において1は各種RF信号を生成する励振器であり、1aは送信RF信号源、1bは送信RF信号にパルス変調信号をかけるミキサ、1cは第1局発信号源、1dは第2局発信号源、1eはドップラ補償信号源、1fは基準信号源である。2は上記送信RFパルス変調原信号を増幅し、送信RFパルス変調信号として送出する送信機、3はRF信号の送受分離を行うサーキュレータ、4は送信RFパルス変調信号を空間に放射し、また目標からの反射信号を受信し受信RF和信号と受信RF差信号を出力するモノパルスアンテナである。5は上記モノパルスアンテナ4で受信され、サーキュレータ3を通った受信RF和信号を増幅し、第1局発信号源1cからの第1局発信号と混合して第1中間周波数和信号を生成し、またモノパルスアンテナ4から出力された受信RF差信号の方位角と高低角をフレーム毎にピンスイッチで切換えることにより差信号を1チャンネル化し、その受信RF差信号を増幅し、第1局発信号源1cから第1局発信号と混合して第1中間周波数差信号を生成するフロントエンドであり、5aは和信号の低雑音増幅器、5bは第1の和信号のミキサ、5cはピンスイッチ、5dは差信号の低雑音増幅器、5eは第1の差信号のミキサである。6は受信機であり、上記フロントエンド5から送出される第1中間周波数和信号と第2局発信号源1dからの第2局発信号とを混合して第2中間周波数和信号を生成する第2の和信号のミキサ6a、上記第2中間周波数和信号に対して捜索するドップラ周波数の範囲をカバーする帯域幅を有する和信号の帯域通過フィルタ6b、上記第2中間周波数和信号と基準信号源1fからの基準信号を混合してビデオ信号を生成する第3の和信号のミキサ6c、和信号と同様に第1中間周波数差信号と第2局発信号源1dからの第2局発信号とを混合して第2中間周波数差信号を生成する第2の差信号のミキサ6d、上記第2中間周波数差信号に対して捜索するドップラ周波数の範囲をカバーする帯域幅を有する差信号の帯域通過フィルタ6e、上記第2中間周波数差信号と基準信号源1fからの基準信号を混合してビデオ信号を生成する第3の差信号のミキサ6fとから成る。7は慣性装置であり、初期捜索ドップラ周波数及び初期相対距離を送出する。8は信号処理器であり、内部の周波数追尾処理部8aでは上記受信機6からの和のビデオ信号からドップラ周波数を算出し、ドップラ補償制御信号を生成し、これをドップラ補償信号源1eに送出する。また内部の角度追尾処理部8bでは上記受信機6からの差のビデオ信号からアンテナ首振角を算出しアンテナ制御信号をモノパルスアンテナ4に送出する。9は変調信号発生器であり、送信RF原信号にパルス変調をかけるためのパルス変調信号を発生するためのパルス変調信号発生器9aを有する。
【0003】
図9は信号処理器8の周波数追尾処理部8a及び角度追尾処理部8bにおける機能系統図であり、8a1はA/D変換部、8a2はFFT処理部、8a3は周波数追尾誤差計算部、8a4は周波数追尾フィルタ、8a5はドップラ補償制御計算部、8b1はA/D変換部、8b2はFFT処理部、8b3は角度追尾誤差計算部、8b4は角度追尾フィルタである。
【0004】
ここでパルスドップラレーダ装置の信号処理について簡単に説明する。送信機2から送出され、モノパルスアンテナ4によって空間に放射され、目標を照射する送信RFパルス変調信号の波形は図10に示すように周波数f0 のRF原信号を搬送波とし、これにパルス幅τ、パルス繰り返し周期PRIのパルス変調をかけたものである。この周波数スペクトラムは図11に示すように搬送波周波数を中心にパルス繰り返し周波数1/PRI毎の多数の線スペクトラムとなる。
【0005】
ここで図12に示すように飛しょう体に搭載されるパルスドップラレーダ装置が移動目標を探知するためにアンテナビームを下方に向けて捜索を行う場合を考える。図において10は機軸の対地角度をθに取り、機軸速度Vm で飛しょうするパルスドップラレーダ装置搭載母機、11は対地速度Vt で飛行する探知対象の移動目標、12は大地であり、λp はパルスドップラレーダ装置搭載母機の高低角方向のアンテナ首振角、αは捜索ドップラ周波数となるドップラ周波数領域で反射するサイドローブ方向の機軸となす角度、RT はパルスドップラレーダ装置搭載母機10と移動目標11との間の距離、Rc はパルスドップラレーダ装置搭載母機10と捜索ドップラ周波数となるドップラ周波数領域で反射するサイドローブ角度方向の大地12との距離、h0 はパルスドップラレーダ装置搭載母機10の高度である。
【0006】
送信RF原信号がコヒーレント信号である場合、移動目標11等からの反射信号である受信RF信号はパルスドップラレーダ装置搭載母機10と移動目標11の相対速度に比例したドップラ周波数の偏移を受ける。パルスドップラレーダ装置搭載母機10と移動目標11のラジアル方向の相対速度Vr は数1で与えられる。
【0007】
【数1】
Figure 0003743181
【0008】
またドップラ周波数fd は数2で与えられる。ここで、λは波長である。
【0009】
【数2】
Figure 0003743181
【0010】
パルスドップラレーダ装置搭載母機10と移動目標11が接近する場合にはドップラ周波数は正値、パルスドップラレーダ装置搭載母機10と移動目標11が離遠する場合にはドップラ周波数は負値を示す。ここで図12のようにパルスドップラレーダ装置搭載母機10がアンテナビームを下方に向けて移動目標11の探知を行う場合、アンテナメインビームは移動目標11を照射すると同時に大地12も照射し、さらにアンテナサイドローブは広範囲に大地12を照射する。したがってアンテナメインビーム及びアンテナサイドローブが照射された大地12から反射された信号はクラッタとなって移動目標11からのレーダ反射エコーと共に受信されることになる。高PRFのパルスドップラレーダ装置におけるクラッタスペクトラムと移動目標11からのレーダ反射エコーを図示したものが図13である。図13(a)が対向接近(ヘッドオン)目標の場合、図13(b)が追跡接近(テイルチェイス)目標の場合である。図において13はアンテナメインビームの大地12照射によるレーダ反射エコーを表わすメインビームクラッタ、14がアンテナサイドローブの大地12照射によるレーダ反射エコーを表わすサイドローブクラッタ、15がパルスドップラレーダ装置搭載母機10の直下の大地12照射によるレーダ反射エコーを表わす直下クラッタである。一般的に直下クラッタ15は大地12に対して照射角度が直角となるため反射係数の絶対値が大きく、かつひとつのレンジゲート内に含まれる大地12の面積が大きくなるため、他の方向のサイドローブクラッタ14より大きな値を示す。16は移動目標11からの反射によって生じるレーダ反射エコーである。
【0011】
送信RF周波数をf0 とすると直下クラッタ15の受信周波数はドップラ偏移を受けないので受信周波数はf0 である。メインビームクラッタ13のドップラ周波数偏移fmbc は数3に示される。
【0012】
【数3】
Figure 0003743181
【0013】
サイドローブクラッタ13の受信周波数偏移の幅はf0 ±fcmaxの範囲となりfcmaxは数4で与えられる。
【0014】
【数4】
Figure 0003743181
【0015】
また移動目標のレーダ反射エコー16のドップラ周波数偏移ft は数5で与えられる。
【0016】
【数5】
Figure 0003743181
【0017】
即ち移動目標11が対向して接近して来る場合(ヘッドオン接近の場合)は移動目標のレーダ反射エコー16の受信周波数はサイドローブクラッタ14の受信周波数最大値よりも高くなり、図13(a)に示すように、クラッタフリーの領域に移動目標のレーダ反射エコー16が現われる。一方パルスドップラレーダ装置搭載母機10が移動目標11に対して追跡接近する場合(テイルチェイスの場合)には図13(b)に示すように移動目標のレーダ反射エコー16はその受信周波数がサイドローブクラッタ14の受信周波数の範囲内に入ることとなり、クラッタと競合して検出されなければならない。
【0018】
次にこのような高PRFのパルスドップラレーダ装置における受信時の周波数追尾動作原理について図8を用いて説明する。モノパルスアンテナ4で受信され、受信RF和信号となった目標からの反射信号はフロントエンド5内の第1の和のミキサ5bで第1局発信号と混合されて第1中間周波数和信号となり受信機6に送られる。受信機6の内部では、第2の和のミキサ6aで第2局発信号と混合されて第2中間周波数和信号となる。このとき第2局発信号はドップラ周波数追尾信号処理の結果得られるドップラ周波数の経時変化分だけ偏移を加えられて周波数制御されたものとなる。この周波数制御はドップラ補償信号源1eからのスピードゲート信号を第2局発信号源1dに加えることにより行われる。またパルスドップラレーダ装置の捜索するドップラ周波数の範囲をカバーする帯域幅で第2中間周波数和信号の帯域幅も決まる。したがって上記帯域幅を持つ第2中間周波数和信号のみを通過させるための帯域通過フィルタ6bを第3の和のミキサ6cで基準信号源1fからの基準信号と混合されてドップラ周波数誤差相当の信号周波数を持つビデオ信号となり信号処理器8に入力される。
【0019】
信号処理器8内での処理の流れは図9の機能ブロック図に従って説明する。入力されたビデオ信号はA/D変換部8a1でデジタル信号に変換された後、FFT処理部8a2で高速フーリエ変換され、さらに周波数追尾誤差計算部8a3で追尾誤差計算された後、周波数追尾フィルタ8a4で時間積分され、ドップラ周波数情報となり、ドップラ補償制御計算部8a7でドップラ補償信号源1eの補正制御値が求められ、ドップラ補償制御信号として励振器1にフィードバックされる。ドップラ補償信号源1eでは上記ドップラ補償制御信号に基づいてスピードゲート信号を励振器1内の第2局発信号源に送出し、第2局発信号の周波数を制御する。
【0020】
また、角度追尾動作原理について図8を用いて説明する。モノパルスアンテナ4で受信され、受信RF差信号となった目標からの反射信号はフロントエンド5内のピンスイッチ5cで信号処理フレーム毎に方位角と高低角を切換え1チャンネル化し、第1の差のミキサ5eで第1局発信号と混合されて第1中間周波数差信号となり受信機6に送られる。受信機6の内部では、第2の差のミキサ6dで第2局発信号と混合されて第2中間周波数差信号となる。このとき第2局発信号はドップラ周波数追尾信号処理の結果得られるドップラ周波数の経時変化分だけ偏移を加えられて周波数制御されたものとなる。この周波数制御はドップラ補償信号源1eからのスピードゲート信号を第2局発信号源1dに加えることにより行われる。またパルスドップラレーダ装置の捜索するドップラ周波数の範囲をカバーする帯域幅で第2中間周波数和信号の帯域幅も決まる。したがって上記帯域幅を持つ第2中間周波数差信号のみを通過させるための帯域通過フィルタ6eを第3のミキサ6fで基準信号源1fからの基準信号と混合されてドップラ周波数誤差相当の信号周波数を持ち角度誤差信号に相当する振幅をもつビデオ信号となり信号処理器8に入力される。
【0021】
信号処理器8内での処理の流れは図9の機能ブロック図に従って説明する。入力されたビデオ信号はA/D変換部8b1でデジタル信号に変換された後、FFT処理部8b2で高速フーリエ変換され、さらに角度追尾誤差計算部8b3で追尾誤差計算された後、角度追尾フィルタ8b4で時間積分され、角度情報となり、モノパルスアンテナ4を制御する。
【0022】
以上のパルスドップラレーダ方式は母機と目標との速度差によって生じるドップラ効果を利用して目標を速度情報として探知する方式であり、速度差に応じて送信信号と受信信号との間に周波数偏移が生じることを利用して大地からの反射(クラッタ)を除き、移動目標のみを抽出しようとするものである。目標が対向接近する目標である場合にはクラッタのない領域での信号検出ができるので、下方にアンテナビームを向けての捜索時にも良好な探知性能が得られやすいが、目標に対する追跡接近の場合にはサイドローブクラッタとの競合状態下での目標探知が必要となるため、下方捜索時の目標探知性能が劣化する。
【0023】
追跡目標に対しても良好な探知性能を得るためには、サイドローブクラッタの受信レベルを下げることが必要で、そのためには広い角度範囲にわたってサイドローブレベルの低いアンテナが要求される。アンテナのサイドローブレベルを低減するには開口面上の振幅分布を制御し振幅テーパを設けるのが一般的であるが、パルスドップラレーダ装置の搭載母機10がミサイルシーカである場合等のようにモノパルスアンテナ4が小口径のものとならざるを得ない場合には、十分な低サイドローブ性が得られるように開口面上の振幅テーパを制御することが難しいという問題がある。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように従来のパルスドップラレーダ装置は、その搭載母体がミサイル等のように小口径のアンテナしか装備が許容されない場合には広い角度範囲にわたってのアンテナの低サイドローブ化が困難であり、追跡接近目標の探知に際してはサイドローブクラッタとの競合となって探知が困難を極めるため、その使用目的が専ら対向接近目標の探知に限定されてしまうという問題点があった。
【0025】
この発明に係わるパルスドップラレーダ装置は上記のような問題点を解決するためになされたもので、小口径のアンテナを用いた場合でも、追跡接近目標に対し良好な探知能力を持つパルスドップラレーダ装置を得ることを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
第1の発明によるパルスドップラレーダ装置は、飛しょう体に搭載され、追尾対象の移動目標と飛しょう体との速度差によって生じるドップラ周波数を検知することによりクラッタから移動目標を抽出して移動目標を追尾するパルスドップラレーダ装置において、送信RFパルス変調信号を二位相変調する変調手段と、変調手段で変調された送信信号が目標に反射して戻ってきた受信信号を復調するための二位相復調手段と、移動目標との相対距離を算出する目標距離算出手段と、飛しょう体の速度方向の角度とサイドローブ角度より目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタの慣性空間上のグレージング角を求め、グレージング角と高度情報とを用いて、飛しょう体と目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタまでの距離を算出するサイドローブクラッタ距離算出手段と、相対距離とサイドローブクラッタ距離に基づき、パルス繰り返し周期及び二位相復調信号を出力するタイミングを計算するタイミング計算手段とを具備したものである。
【0027】
また第2の発明によるパルスドップラレーダ装置は、第1の発明において、飛しょう体の速度をドップラ周波数に変換するミサイルドップラ周波数計算手段と、目標捜索ドップラ周波数とミサイルドップラ周波数の関係より、目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタの飛しょう体の速度方向からの角度を算出するサイドローブ角度計算手段とを具備したものである。
【0028】
また、第3の発明によるパルスドップラレーダ装置は、第2の発明において、目標捜索ドップラ周波数とミサイルドップラ周波数の関係より、パルス繰り返し周波数の選択に制限を設けるパルス繰り返し周波数選択手段を具備したものである。
【0029】
また、第4の発明によるパルスドップラレーダ装置は、第3の発明において、目標相対距離の領域を観測し目標検出ができない場合に、この目標相対距離の周辺を捜索できるように、目標相対距離とサイドローブクラッタ距離よりランダム二位相復調信号のタイミングを計算するランダム二位相復調タイミング計算部を制御する目標距離捜索手段を具備したものである。
【0030】
また、第5の発明によるパルスドップラレーダ装置は、第4の発明において、目標のドップラ周波数と同じドップラ周波数に相当するサイドローブクラッタまでの距離を求め、目標の距離では相関がとれ、サイドローブクラッタの距離では相関のとれないタイミングとなるパルス繰り返し周波数を選択し、ランダム二位相復調信号タイミングを計算する処理を信号処理の処理フレーム毎に実施する様にしたものである。
【0031】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1を示すパルスドップラレーダ装置のブロック図であり9bはランダム二位相変調信号発生器で、送信RFパルス変調信号を1gのミキサで二位相変調する。二位相変調をかけられた送信RF信号を送信機2で増幅し、モノパルスアンテナ4から照射し、目標及びクラッタからの受信波をモノパルスアンテナ4で受信する。モノパルスアンテナ4からの受信信号をフロントエンド5で第1中間周波数信号として受信機6へ出力する。受信機6では、二位相変調された信号を復調するためのランダム二位相復調信号発生器9cの信号により第1中間周波数信号の相関をとる和信号相関器6g、差信号相関器6hを備える。8cは飛しょう体の速度をドップラ周波数に変換するミサイルドップラ周波数計算部、8dは目標捜索ドップラ周波数とミサイルドップラ周波数より目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタのミサイル速度方向からの角度を算出するサイドローブ角度計算部、ミサイル速度方向の角度とサイドローブ角度より目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタの慣性空間上のグレージング角と慣性装置7からの高度情報より飛しょう体と目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタまでの距離を計算するサイドローブクラッタ距離計算部8eと慣性装置7からの目標までの相対距離とサイドローブクラッタ距離よりランダム二位相復調信号のタイミングを計算するランダム二位相復調信号タイミング計算部8fを備える。
【0032】
次に動作について説明する。図4は4ビット(0,π,0,0)でパルス送信波毎に二位相変調された送信RF信号と受信RF信号のタイミングについて示した図である。送信信号に対して受信信号は、送信波が目標に反射してかえってくる時間Δt遅れて受信される。Δtは、数6で示される。
【0033】
【数6】
Figure 0003743181
【0034】
ここで、cは光速である。図に示す通り、二位相変調に4ビットを使用する。この場合、目標に反射してかえってきた受信信号に対して、図4(a)のように復調信号のコードがぴったりとあうタイミング(復調信号ケース1)で復調すると図4(b)に示す通り振幅は4の大きさとなるが、図4(c)のように受信信号のコードと復調信号のコードがずれたタイミング(復調信号ケース2−1〜2−3)で復調すると図4(d)に示す通り振幅の大きさは0となる。上記の通り、二位相変調に4ビットを使用した場合、送信パルス4回に1回しか相関がとれないことになる。従って、復調信号のタイミングを目標からの受信エコーでは相関がとれ、目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタの反射エコーでは、相関のとれないタイミングとなるパルス繰り返し周期を選択するように制御する。
【0035】
上記復調信号タイミングの制御について説明する。図12において、ミサイルドップラ周波数fcmaxは、ミサイルドップラ周波数計算部8cで数4を実施する。このとき、捜索ドップラ周波数となるドップラ周波数領域で反射するサイドローブ角度αは、サイドローブ角度計算部8dで数7を実施する。
【0036】
【数7】
Figure 0003743181
【0037】
このとき、目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタまでの距離Rc は、サイドローブクラッタ距離計算部8eで数8を実施する。
【0038】
【数8】
Figure 0003743181
【0039】
ランダム二位相復調タイミング信号は、数9、数10、数11を満足するパルス繰り返し周期を選択する。まず、目標からの受信エコーでは、相関がとれるように目標との相対距離RTによる遅れ時間を考慮する。数9に送信信号のコードと復調信号のコードのタイミング遅れ時間Δttを示す。
【0040】
【数9】
Figure 0003743181
【0041】
また、数7で求めた目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタまでの距離Rcでは、相関がとれない図4(c)復調信号ケース2−2の位置になるように上記Rcと目標との相対距離RTによる受信エコーがもどってくる時間差が数10となるようなパルス繰り返し周期を選択する。
【0042】
【数10】
Figure 0003743181
【0043】
ここで、PRIはパルス繰り返し周期、Kは正の整数である。また、目標からの受信エコーが送信区間とならないように数11となるパルス繰り返し周期を選択する。
【0044】
【数11】
Figure 0003743181
【0045】
上記数9を満足することにより、目標信号は復調信号ケース1の位置となり復調することにより振幅が表れ、数10を満足することによりクラッタは、復調信号ケース2−2の位置となり復調することにより振幅がゼロとなりクラッタを抑圧でき、さらに数11を満足することにより、受信エコーが送信区間と重なり受信できなくなることを防ぎ、S/C(信号対クラッタ)比の改善を得ることができる。この効果を概念的に示したものが図5である。図5(a)は、従来のパルスドップラレーダ装置において、追跡接近目標に対する目標とクラッタの関係を示したもので、サイドローブクラッタ領域内に信号が表われるため、目標検出するために必要なS/Cが確保されるまで目標を探知・追尾することができない。図5(b)は、発明のパルスドップラレーダ装置においての追跡接近目標に対する目標とクラッタの関係を示したもので、目標検出領域付近のクラッタを抑圧するため、図5(a)と比較して目標の探知・追尾性能の向上が図れる。
【0046】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2を示すパルスドップラレーダ装置のブロック図であり、実施の形態1にパルス繰り返し周波数選択部8gを付加したものである。パルス繰り返し周波数は、パルス繰り返し周期の逆数に比例するため、メインローブクラッタ周波数と目標ドップラ周波数の関係によっては図6(a)のように目標検出にメインローブクラッタ周波数が悪影響を及ぼすことになる。従って、ミサイルドップラ周波数計算部8cからミサイルドップラ周波数をもらい、パルス繰り返し周波数の選択に数12の制限を設ける。
【0047】
【数12】
Figure 0003743181
【0048】
数12の制限をランダム二位相復調タイミング計算部8fに加えることにより、図6(b)のようにメインローブクラッタの影響を受けることなく、追跡接近目標に対し良好な探知能力を持つパルスドップラレーダ装置を得ることができる。
【0049】
実施の形態3.
図3はこの発明の実施の形態3を示すパルスドップラレーダ装置のブロック図であり、実施の形態2に目標距離捜索部8hを付加したものである。慣性装置7からの初期目標相対距離の領域を観測し目標検出ができない場合には、初期目標相対距離の周辺を捜索できるように目標距離捜索部8hを備えランダム二位相復調タイミング計算部8fを制御することにより、初期目標の精度が悪い搭載母機に対しても追跡接近目標に対し良好な探知能力を持つパルスドップラレーダ装置を得ることができる。具体例を図7に示す。図7において、初期捜索(距離捜索1)においては、慣性装置7の初期距離情報より、数9の時間遅れをもたせて、復調信号タイミングを設定する。距離捜索1の結果目標検出ができない場合は、初期目標相対距離の距離捜索ステップΔRを考慮した距離で復調タイミングΔtsを設定する。復調信号タイミングを数13に示す。
【0050】
【数13】
Figure 0003743181
【0051】
図7においては、数13のようにステップ上に復調タイミング信号を変えていき、距離捜索4において、目標を検出したため、追尾に移行した例である。
【0052】
実施の形態4.
実施の形態4は、実施の形態3のブロック図において、ミサイルドップラ周波数計算、サイドローブ角度計算、サイドローブクラッタ距離計算、ランダム二位相復調タイミング計算を信号処理の処理フレームで実施し情報を更新することにより、搭載母機と移動目標の相対運動に伴って時々刻々変化に対応できるようにしたパルスドップラレーダ装置である。
【0053】
【発明の効果】
この発明は以上に説明したように構成されているので、以下に記載される効果がある。
【0054】
第1,2の発明によれば、目標の距離では相関がとれ、目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタまでの距離では相関がとれないパルス繰り返し周期を選択することにより、搭載母機が追跡接近状態にある場合は、目標からのレーダ反射エコーの存在するドップラ周波数軸上の位置にあってこれと競合するサイドローブクラッタ受信レベルを低減することにより目標検出のS/C比を向上させて、目標に対する追跡接近状態においても探知距離が確保できるパルスドップラレーダ装置を得ることができるという効果がある。
【0055】
また第3の発明によれば、目標の距離では相関がとれ、目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタまでの距離では相関がとれないパルス繰り返し周期を選択することにより、搭載母機が追跡接近状態にある場合は、目標からのレーダ反射エコーの存在するドップラ周波数軸上の位置にあってこれと競合するサイドローブクラッタ受信レベルを低減することにより目標検出のS/C比を向上させかつ、パルス繰り返し周波数の選択により、メインローブクラッタ周波数の折り返し成分が目標検出に影響を与えないパルスドップラレーダ装置を得ることができるという効果がある。
【0056】
また第4の発明によれば、目標の距離では相関がとれ、目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタまでの距離では相関がとれないパルス繰り返し周期を選択することにより、搭載母機が追跡接近状態にある場合は、目標からのレーダ反射エコーの存在するドップラ周波数軸上の位置にあってこれと競合するサイドローブクラッタ受信レベルを低減することにより目標検出のS/C比を向上させかつ、目標までの距離精度が悪い場合は、距離ゲートをずらし距離捜索することが可能であるパルスドップラレーダ装置を得ることができるという効果がある。
【0057】
また第5の発明によれば、目標の距離では相関がとれ、目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタまでの距離では相関がとれないパルス繰り返し周期を選択することにより、搭載母機が追跡接近状態にある場合は、目標からのレーダ反射エコーの存在するドップラ周波数軸上の位置にあってこれと競合するサイドローブクラッタ受信レベルを低減するという処理を信号処理フレーム毎の時間周期で実施して情報を更新し、搭載母機と移動目標の相対運動に伴って時々刻々変化する制御信号としてランダム二位相復調タイミング制御を行わせるようにしたので、遭遇し得る全ての状況下で良好な目標探知、追尾性能を得ることが可能な、適用用途範囲の広いパルスドップラレーダ装置を得るとができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1のパルスドップラレーダ装置を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態2のパルスドップラレーダ装置を示すブロック図である。
【図3】 この発明の実施の形態3のパルスドップラレーダ装置を示すブロック図である。
【図4】 この発明の実施の形態1の二位相変調をかけた場合の説明図である。
【図5】 この発明の実施の形態1のパルスドップラレーダ装置における限定範囲内サイドローブクラッタレベル低減による目標検出S/C比改善の効果を示す概念図である。
【図6】 この発明の実施の形態2のメインローブクラッタと目標の関係を示す図である。
【図7】 この発明の実施の形態3の距離の捜索を示す図である。
【図8】 従来のパルスドップラレーダ装置を示すブロック図である。
【図9】 パルスドップラレーダ装置の周波数追尾ループ及び角度追尾ループの機能系統図である。
【図10】 パルスドップラレーダ装置の送信RF信号の波形を示す図である。
【図11】 パルスドップラレーダ装置に用いられるパルス変調波のスペクトラムを示す図である。
【図12】 パルスドップラレーダ装置と目標の幾何学的関係を示す図である。
【図13】 従来のパルスドップラレーダ装置におけるクラッタスペクトラムと移動目標からのレーダ反射エコーの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 励振器、1a 送信RF信号源、1b ミキサ、1c 第1局発信号源、1d 第2局発信号源、1e ドップラ補償信号源、1f 基準信号源、1g ミキサ、2 送信機、3 サーキュレータ、4 モノパルスアンテナ、5 フロントエンド、5a 低雑音増幅器、5b ミキサ、5c ピンスイッチ、5d 低雑音増幅器、5e ミキサ、6 受信機、6a ミキサ、6b 帯域通過フィルタ、6c ミキサ、6d ミキサ、6e 帯域通過フィルタ、6f ミキサ、6g 和信号相関器、6h 差信号相関器、7 慣性装置、8 信号処理器、8a 周波数追尾処理部、8a1 A/D変換部、8a2 FFT処理部、8a3周波数追尾誤差計算部、8a4 周波数追尾フィルタ、8a5 ドップラ補償制御計算部、8b 角度追尾処理部、8b1 A/D変換部、8b2 FFT処理部、8b3 角度追尾誤差計算部、8b4 角度追尾フィルタ、8c ミサイルドップラ周波数計算部、8d サイドローブ角度計算部、8e サイドローブクラッタ距離計算部、8f ランダム二位相復調タイミング計算部、8g パルス繰り返し周波数選択部、8h 目標距離捜索部、9 変調信号発生部、9a パルス変調信号発生器、9b ランダム二位相変調信号発生器、9c ランダム二位相変調信号発生器、10 パルスドップラレーダ装置搭載母機、11 移動目標。

Claims (2)

  1. 飛しょう体に搭載され、追尾対象の移動目標と上記飛しょう体との速度差によって生じるドップラ周波数を検知することにより、クラッタから上記移動目標を抽出して移動目標を追尾するパルスドップラレーダ装置において、
    送信RFパルス変調信号を二位相変調する変調手段と、
    上記変調手段で変調された送信信号が目標に反射して戻ってきた受信信号を復調するための二位相復調手段と、
    上記移動目標との相対距離を算出する目標距離算出手段と、
    上記飛しょう体の機軸の対地角度捜索ドップラ周波数となるドップラ周波数領域で反射するサイドローブ方向の機軸となす角度より、上記飛しょう体の機軸の対地角度と前記捜索ドップラ周波数となるドップラ周波数領域で反射するサイドローブ方向の機軸となす角度との和の角度である目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタの慣性空間上の角を求め、前記サイドローブクラッタの慣性空間上の角度飛しょう体の高度とを用いて、上記飛しょう体と目標捜索ドップラ周波数に影響を及ぼすサイドローブクラッタまでの距離を算出するサイドローブクラッタ距離算出手段と、
    上記相対距離とサイドローブクラッタ距離に基づき、パルス繰り返し周期及び上記二位相復調信号を出力するタイミングを計算するタイミング計算手段と、
    を具備したことを特徴とするパルスドップラレーダ装置。
  2. 飛しょう体の速度をドップラ周波数に変換するミサイルドップラ周波数計算手段と、
    上記目標捜索ドップラ周波数と上記ミサイルドップラ周波数の関係より、捜索ドップラ周波数となるドップラ周波数領域で反射するサイドローブ方向の機軸となす角度を算出するサイドローブ角度計算手段と、
    を具備したことを特徴とする、請求項1記載のパルスドップラレーダ装置。
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