JP3741914B2 - 消臭用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は家庭内で発生する悪臭を取り除く効果に優れ、且つ使用時までの製剤安定性ならびに使用環境における着色性の問題が解決された消臭用組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、口臭の除去、一般家庭や工場などで発生する悪臭に対する消臭剤としては、消臭有効成分として消臭力を有する植物の抽出物を配合した消臭剤(特開昭57−204278、同61−240960号公報)、過ホウ素酸ナトリウム、過酸化水素等の化学薬品を使用した消臭剤、更にはキノンの消臭力に着目した消臭剤(特公昭51−33974号公報、同53−45372号公報)等が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの消臭剤は、消臭力が弱く効果が不十分であった。また、化学剤を使用した消臭剤は、比較的消臭効果は強いが、人体への安全面で問題が残されていた。そこで、消臭力が強く、かつ安全に使用できるなど、優れた特性を有する消臭剤の開発の試みがなされてきた。
【0004】
その1つの試みとして、消臭有効成分と酸化還元酵素とを併用する消臭剤が提案されている。そのような例としては、植物抽出物と酸化還元酵素とを併用するもの(特公平7−53174号公報、特開平10−212221号公報)、フェノール性化合物と酸化酵素とを併用するもの(特開平9−38183号公報)等が知られている。これらの酸化還元酵素のうち、ラッカーゼは、活性発現に酸素を必要とするので、一剤式の形態で保存できることが期待でき特に有効である。
【0005】
しかしながら、消臭有効成分と酵素を組み合わせた消臭剤は効果的には優れているものの、効果を発揮する際に消臭有効成分の重合化反応が酸化酵素により進行し、使用時に使用者の衣服を汚すなど家庭内で消臭処理を施す時点での不具合点があった。またカテコール等の消臭有効成分は製剤を調製した後、保存期間中に着色を起こす場合があり、実用的な面でも問題があった。
【0006】
従って、本発明の消臭用組成物は消臭有効成分の着色に伴う問題を解決し、かつラッカーゼと組み合わせることによって家庭内から発生する悪臭を有効に消臭することのできる消臭用組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明者は、有益な消臭有効成分を求めて鋭意検討を行った結果、フェノール性化合物の配糖体を用いることにより、上記の着色の問題が軽減され、かつラッカーゼと組み合わせることによる消臭作用が高いことを見出し本発明をなすに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は消臭有効成分としてフェノール性化合物の配糖体と酸化酵素の1種であるラッカーゼを含むことを特徴とする消臭用組成物を提供する。
以下、本発明を詳しく説明すると、本発明の消臭用組成物は、消臭有効成分とラッカーゼを配合してなるものであり、口内のニンニク臭、口臭、タバコ臭等、人体の体臭や生理臭、家屋内のタバコヤニ臭、トイレの汚水臭や糞臭、ゴミの生ゴミ臭や腐敗臭、ペット臭、更には車の排ガスや車内臭等、人体、家屋、環境等で発生する悪臭に対する消臭剤として広く利用される。特に生ゴミ臭や口臭の消臭剤として高い効果を発揮する。
【0009】
本発明の消臭用組成物は、酸化還元酵素としてラッカーゼを使用する。ここで、本発明において用いられるラッカーゼは、E.C.1.10.3.2に分類される酵素である。代表的な反応例として、漆樹液中のラッカーゼによってウルシオールが酸化され、漆が形成されることが知られている。ラッカーゼは、漆以外にも多くの植物、微生物中に広く存在し、芳香族化合物の酸化反応を触媒する酵素であり、本発明においてはその起源に関わりなく使用することができる。
【0010】
本発明において用いられるラッカーゼの組成物中への配合量としては、組成物の形態、使用頻度、処理時間、酵素剤の力価にもよるが、通常は0.0005重量%(以下、%と略す)以上、好ましくは0.005%以上配合するのがよい。0.0005%未満では十分な効果が得られない。また、1%を超えて配合しても添加量の増加に見合った効果の上昇が見られないため、1%以下、特に0.5%以下とすることが好ましい。
【0011】
次に本発明の消臭組成物には消臭基質を配合する。本発明の消臭組成物で用いる消臭基質としてはフェノール性化合物の配糖体を用いるのを特徴とする。フェノール性化合物の配糖体としては、上記の酵素により構造中の水酸基が酸化される化合物の配糖体ならば特に限定されることなく用いることが出来る。
【0012】
このような化合物の具体例としては、フラボノイドの配糖体であるスウェルティジャポニン、ロビニン、ビテキシカルピンや、フラボノールやフラバノンの配糖体であるクェルシトリン、ミリシトリン、ヘスペリジン、ルチン及びその誘導体が挙げられる。ルチンの誘導体としてはフラボノイド部分に結合しているグルコースに更にグルコースが1つあるいは複数個結合した化合物が誘導体として挙げられる。これらの化合物は工業的に利用可能である(東洋精糖社製、商品名Gルチン)。この場合、水溶性が他の配糖体に比べて特に高いため好適である。また、フラボノイド類以外のフェノール性化合物の配糖体としてはヒドロキノングルコシド、没食子酸グルコシド、シアニンが挙げられる。
【0013】
さらに好ましくはルチン及びその誘導体、例えばフラボノイド部分に結合しているグルコースに更にグルコースが1つあるいは複数個結合した化合物、没食子酸グルコシド、シアニン等が挙げられる。
【0014】
本発明の消臭有効成分の配合量は、消臭剤の種類などによって相違するが、消臭剤全成分量に対して固形分量で0.0005〜5%、特に0.001〜1%とすることが好ましい。0.001%未満では十分な効果が得られず、1%を超えて配合しても添加量の増加に見合った効果の上昇が見られない。なお、上記のフェノール性化合物の配糖体は1種を単独で又は2種以上の混合物として使用してもよい。
【0015】
また、本発明の組成物は、界面活性剤を配合し、泡状形態の製剤とすることもできる。ラッカーゼは空気中の酸素を取り込んで反応が進行する。従って、泡状形態とした場合、効率的に酸素が取り込まれ本発明の消臭組成物の高い反応性が見込まれる。
【0016】
ここで用いる界面活性剤は、ノニオンタイプ、特にポリオキシエチレンアルキルエーテルや脂肪酸アルキロールアミド、又はアシルグルタミン酸タイプの界面活性剤を1種又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0017】
具体的に例示すると、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としてはポリオキシエチレンステアリルやポリオキシエチレン硬化ひまし油、脂肪酸アルキロールアミドの例としてはヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドが挙げられる。アシルグルタミン酸タイプの界面活性剤としてはC12〜C18の飽和及び不飽和脂肪酸のほか、これらの混合物であるヤシ油脂肪酸、硬化ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸などのグルタミン酸エステルが挙げられる。具体的に例示すると、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸・硬化牛脂脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸カリウムが挙げられる。
【0018】
この中でアシルグルタミン酸タイプの界面活性剤が特に好ましく、これらを用いた場合には、通常用いられる濃度でラッカーゼの酵素活性が低下することが殆ど見られない。具体的に例示すると、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールミン、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムが挙げられる。
【0019】
本発明において用いられる界面活性剤の組成物への配合濃度としては、通常は0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%配合するのがよい。0.05重量%未満であると充分な起泡力が得られず、5重量%を越えるとラッカーゼの酵素活性に影響を与える可能性がある。
【0020】
このように界面活性剤を用いる場合、調製時は液状とし、使用時に発泡させて泡状で使用することがよい。この場合、組成物を泡状にする手段としては公知の方法が採用され、例えば、組成物を容器内のメッシュを通すことにより泡状の製剤とする方法を挙げることが出来る。
【0021】
また本発明の消臭用組成物では組成物中の酸素濃度を0.00015重量%程度まで低くし、酸素透過性の低い容器を採用して保存期間中の酸素濃度の上昇を抑えることも出来る。この場合、ラッカーゼの活性を維持することが可能であり極めて好適である。このような組成物を調整する方法としては公知の方法が採用される。酸素濃度を低くする方法としては、脱気により溶存酸素濃度を低くする方法、あるいは窒素ガスやアルゴンガスを通気する事により可能となる。酸素透過性の低い容器としては、このような容器を構成する素材の酸素透過度が10×1010cc・mm/sec・cm2・cmHg未満であり、具体的にはガラス、アルミ、アセタル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂などが例示される。さらに通常の噴射剤、炭酸ガス、LPGなどと併用し、耐圧容器に充填し、泡状の製剤とする方法などを採用することができる。
【0022】
本発明の組成物には、上記成分の他に、油分、低級アルコール、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、香料等の原料も配合可能である。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、使用時までの製剤の着色性、および使用環境への悪影響が低減され、且つ悪臭を有効に消臭することの出来る消臭用組成物が提供される。
【0024】
【実施例】
以下、実験例及び実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0025】
1.消臭機能の評価(実施例1〜5、比較例1〜6)
本発明品の消臭効果を明らかにするため、代表的な悪臭物質であるメルカプタンを用いて評価した。
すなわち、100ppmエチルメルカプタン溶液を1ml含む1.8リッターマヨネーズ瓶の中に、予め上部に付けておいたシリコン栓の入り口から表1に示す組成物を添加して反応を開始した。室温で20分間反応を行い、所定時間後のヘッドスペース中のエチルメルカプタン量をガスクロマトグラフィーで測定した。尚、消臭率(%)は以下に示す式により算出した。結果を表1に示した。
消臭率(%)=〔1−(反応20分後のエチルメルカプタン量/反応開始直後のエチルメルカプタン量)〕×100
【0026】
【表1】
【0027】
表1より、本発明の組成物はラッカーゼと組み合わせることにより、高い消臭効果を発揮することが明らかである。
【0028】
2.製剤安定性、使用環境への染着性(実施例6〜8、比較例7〜8)
使用状況における本発明品の安定性を明らかにするために、消臭組成物を調製した後の使用時までの着色性、消臭反応後の着色性を調べた。さらには使用環境への、染着性を調べるため、プラスチック表面への着色性を調べた。
すなわち、表2に示す本発明品、および比較例の組成物を調製し、室温で3日間放置後の着色の程度を下記に示す判断基準により目視判定した。これにラッカーゼを0.005重量%となるように加え、擬似的に消臭反応後の組成物に変換した。この時点における着色性を下記に示す判断基準により目視判定し反応後の着色性とした。この反応後の組成物の内、0.5mlをプラスチック製の容器に滴下した。室温に放置し乾燥した後、流水下スポンジでこすり落とした。プラスチックへの染着性を染着性の判断基準により目視判定した。結果を表2に示した。
【0029】
<着色性の判断基準>
◎:色の変化が全くない
○:色の変化がほどんどみられない
△:やや褐色に変色する
×:黒色に変色する
<染着性の判断基準>
○:色素の残存が全く認められない
×:色素が残存し、変色する
【0030】
【表2】
【0031】
表2から明らかなように、本発明品は従来知られていた消臭基質であるカテコールに比べ、保存中での着色性、反応後の着色性、さらには使用環境への染着性の面で問題が無く優れていることが判明した。また比較例8は本発明で用いるフェノール性化合物配糖体の糖部分を除いたアグリコンを用いた結果であり、これとの比較からも配糖体になることで反応後の着色性、さらには使用環境への染着性の面で問題が無く優れていることが判明した。
【0032】
3.消臭性能総合評価(実施例9〜10、比較例9)
実際の消臭環境における本発明品の有用性を明らかにするために表3に示す本発明品の消臭組成物および比較例の組成物を調製して専門パネラー10名により評価を行った。
市販の三角コーナーにキャベツ40gおよびサンマ20gを入れ、これを上部にシリコン栓を取り付けた40リッターデシケーターに入れ、35℃で2日間保温して腐敗させた。これに本発明品あるいは比較例の消臭組成物をデシケーター上部のシリコン栓から滴下し、消臭反応を行った。反応1時間後の臭いサンプルに対する官能評価(臭気強度および快・不快度)を行い、これを消臭効果の指標とし以下の判断基準から判定した。また、消臭効果の判定後、三角コーナーを取り出し、染着性を上記に示した、染着性の判断基準に従って目視判定した。結果を表3に合わせ示した。
【0033】
<消臭効果の判断基準>
(i)臭気強度 (ii)快・不快度
点数 臭いの強度 点数 快・不快の程度
0 無臭 0 快でも不快でもない
1 やっと感知できるにおい −1 やや不快
2 何のにおいかわかる弱いにおい −2 不快
3 楽に感知できるにおい −3 非常に不快
4 強いにおい −4 極端に不快
5 強烈なにおい
【0034】
【表3】
【0035】
表3より、本発明品は実際の生ゴミ臭に対しても有効な消臭作用を発揮していることが明らかである。また、従来却られていた消臭基質であるカテコールも消臭作用の面では有効であったが、反応後の着色、あるいは使用環境への染着性の特性から通常生ゴミの容器に用いる三角コーナーが変色することが判明し使用環境への悪影響が示された。この点においても本発明品は問題が無く、優れていることが判明した。
【0036】
【0037】
ラッカーゼを除く上記組成物を調製し、アルミコーティングした耐圧容器(酸素透過度 5.0×1010cc.mm/sec.cm2.cmHg未満)に入れ、窒素ガスを通して組成物中の酸素濃度を0.00015重量%以下とした。さらに、ラッカーゼを上記に示した濃度で加えた後、すばやくアルミキャップで密封した。内部ガスを液化石油ガスで置換してエアゾール製剤を調製した。
【0038】
【0039】
ラッカーゼを除く上記組成物を調製し、アルゴンガスを通して組成物中の酸素濃度を0.0001重量%以下とした。さらにラッカーゼを上記の濃度となるように加え、不織布(コットン100%不織布:目付100g/m2、含浸量はシート1重量部に含浸液3重量部)に含浸した。これをアルミ製のチャック袋に入れ、内部ガスをアルゴンガスで置換し密封した。
【0040】
(処方例3) 粉末状製剤
クエン酸1.0g、リン酸水素二ナトリウム1.8g、ルチン誘導体(糖鎖がラムノースの代わりにグルコースとなっているもの、商品名Gルチン、東洋精糖社製)40mgにラッカーゼ1mgを加え、粉砕混合してアルミ製のサンプル袋に入れた(酸素透過度5.0×1010cc・mm/sec・cm2・cmHg未満)。窒素ガスと通して酸素濃度を0.00015重量%以下に低下させた状態で密封して、粉末状製剤を得た。
Claims (1)
- 酸化酵素ラッカーゼを0.005〜0.5重量%と下記A群から選ばれる1種又は2種以上のフェノール性化合物の配糖体を0.001〜1重量%含んでなる消臭用組成物(但し、アルカリpH域の消臭用組成物を除く)。
A群:スウェルティジャポニン、ロビニン、ビデキシカルピン、クェルシトリン、ミリシトリン、ヘスペリジン、ルチン及びその誘導体、ヒドロキノングルコシド、没食子酸グルコシド、シアニン
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