JP3741787B2 - 分波器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信機等に用いられる分波器に関する。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信機用等に用いられる分波器用のフィルタとしては誘電体フィルタを用いる方式が一般的であり、例えば特公平6−52843号公報に示されているものは誘電体フィルタのみによって分波器を実現している。
【0003】
一方、移動体端末の小型化に伴い、分波器に弾性表面波(SAW)フィルタの使用が検討されていて、例えば、特開昭62−171327号公報には、SAWフィルタによって分波器を構成することが提案されている。
【0004】
SAWフィルタは誘電体フィルタに比較すると帯域外減衰量、帯域内挿入損の点で劣っているが、誘電体フィルタに比べて小型であり、さらに、通過帯近傍の特性が急峻であるという特徴がある。しかし、SAWフィルタを送信側用として用いることは耐電力性の問題で実現されていない。一方、SAWフィルタの耐電力特性を向上させると挿入損失が低下する。
【0005】
図15に国内デジタル携帯電話用分波器に誘電体フィルタを用いて構成した従来の例を示す。
【0006】
図15に示す受信側フィルタは誘電体フィルタ401、402とチップコンデンサ406とにより構成している。空心コイル409は受信側のインピーダンス整合のための空心コイルであり、チップコンデンサ405および空心コイル408はアンテナ側のインピーダンスを整合するための整合回路を構成している。
【0007】
上記した受信側フィルタでは受信周波数帯818±8MHzで挿入損失2.5dB以下、局部発振周波数帯域で30dB以上、イメージ周波数帯で40dB以上が要求されるため、2.5mm角誘電体フィルタを2素子用いてバンドパスフィルタを構成している。
【0008】
また、端子付誘電体フィルタ403によって送信側フィルタを構成しており、空心コイル407およびチップコンデンサ405はアンテナ側のインピーダンスを整合するための整合回路を構成している。
【0009】
なお、図15において、符号410は送信側端子、符号411は受信側端子、符号412はアンテナ端子、符号417はモジュール基板、符号418は共通グランド、斜線部分は非導体部分をそれぞれ示している。
【0010】
図15に示す受信側フィルタおよび送信側フィルタの2つのフィルタからなる分波器では、図16に示す電気的接続図のように受信側フィルタおよび送信側フィルタは4端子並列接続されている。
【0011】
なお、図16において符号430は誘電体フィルタ401、402およびチップコンデンサ406からなる受信側の誘電体フィルタを、符号420は受信側ジャイレータを、符号403は送信側のフィルタを構成する端子付誘電体フィルタ、符号421は送信側ジャイレータをそれぞれ示し、コンデンサ422、423は誘電体フィルタ401、403のアンテナ側にあるコンデンサをそれぞれ示している。
【0012】
上記送信側のフィルタでは送信周波数帯948±8MHzで0.7dB以下、受信帯域で20dB以上の減衰量、送信周波数の2倍、3倍の周波数帯で25dB以上の減衰量が必要になる。端子付誘電体フィルタ403は2.5mm角誘電体フィルタでバンドエリミネーションフィルタを構成し、上記の要求を満足する周波数特性を得ている。
【0013】
受信側、送信側の各々のフィルタのアンテナ側のインピーダンスは空心コイル407、408、チップコンデンサ405により変換され、各々の通過周波数帯域で逆側のフィルタのアンテナ側インピーダンスがスミス図上実軸オープンの位置になるよう設計されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、誘電体フィルタは低挿入損失、高減衰量が得られ、周波数温度特性もよいため、移動体通信用フィルタとして多く用いられてきた。しかし、誘電体フィルタは大きな容積を必要とするという問題点がある。
【0015】
また、誘電体フィルタを小型化すると共振器の無負荷Q値が下がり、結果的にフィルタ挿入損失が悪化するという問題点がある。
【0016】
従来例で示したように、2つのフィルタに誘電体フルタを用いて構成すると、特性は満足するがフィルタに要する容積が大きくなる。SAWフィルタで構成すると、容積は小さいが送信フィルタの通過帯挿入損失特性がよくないという問題点がある。
【0017】
しかるに、移動体通信機の小型化に伴い分波器の小型化が要求されるが、従来の誘電体フィルタのみで構成するときは十分に小型化することができず、SAWフィルタのみで構成するときは小型にはなるが通過帯域挿入損失特性がよくないという問題点がある。
【0018】
本発明は、誘電体フィルタとSAWフィルタとを用いて、小型化と電気的特性との両方を満足させる分波器を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる分波器は、基板に配置された弾性表面波フィルタと誘電体フィルタを電気的に直列接続し、受信側フィルタに弾性表面波フィルタを用い、送信側フィルタに誘電体フィルタを用いて、一入力複数出力の構成とした分波器であって、前記基板には、前記弾性表面波フィルタの入力側と前記誘電体フィルタの入力側とを電気的に接続するインダクタンス素子または伝送線路が形成され、前記誘電体フィルタは、内導体が形成された誘電体部材と、該誘電体部材の外表面に形成され、かつ前記インダクタンス素子または伝送線路と電気的に接続された入出力端子と、該誘電体部材の外表面に形成され、かつ前記入出力端子と電気的に絶縁されたグランド端子とを有し、前記入出力端子と前記内導体との間には第1静電容量が形成され、前記入出力端子と前記グランド端子との間には第2静電容量が形成され、前記内導体と前記グランド端子とによって共振器が形成され、受信周波数の帯域において、前記誘電体フィルタの入力インピーダンスは、前記第1静電容量と前記共振器との共振によってショート状態となる一方で、前記弾性表面波フィルタは励振状態となり、送信周波数の帯域において、前記誘電体フィルタの入力インピーダンスは、前記第2静電容量と前記共振器との共振によって整合状態となる一方で、前記弾性表面波フィルタの入力インピーダンスは、前記インダクタンス素子または伝送線路のインピーダンス変換によってショート状態となることを特徴とする。
【0022】
本発明にかかる分波器は、上記の分波器において、弾性表面波フィルタは多電極フィルタであることを特徴とする。
【0024】
本発明にかかる分波器は、上記の分波器において、誘電体フィルタはリアクタンス素子で結合した複数の誘電体フィルタであることを特徴とする。
【0026】
本発明にかかる分波器は、上記の分波器において、弾性表面波フィルタは多電極フィルタであり、かつ誘電体フィルタはリアクタンス素子で結合した複数の誘電体フィルタであることを特徴とする。
【0027】
本発明にかかる分波器は、SAWフィルタを用いているため、誘電体フィルタのみで構成した分波器に比較して必要容積が少なくて済み、通信機を小型化することができる。
【0028】
また、本発明にかかる分波器はSAWフィルタを受信側フィルタに用いているために、分波器の周波数特性として従来のものと同等の周波数特性が得られ、かつ小型化できることになる。
【0029】
また、SAWフィルタを受信側フィルタに用いているために、耐電力性能が問題にならず、送信側フィルタには耐電力性能に優れた誘電体フィルタを用いているために必要な耐電力性能も確保することができる。通信時、大電力がSAWフィルタを通過するが送信周波数ではSAWフィルタは励振状態でないため、単なるインタデジタルコンデンサとして作用し、耐電力性能を確保することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる分波器を実施の一形態によって説明する。図1は本発明の実施の一形態にかかる分波器の斜視図であり、図2は図1に示した本発明の実施の一形態にかかる分波器の電気的接続図である。
【0031】
図1および図2に示した本発明の実施の一形態にかかる分波器100はSAWフィルタを受信側フィルタとし、誘電体フィルタを送信側フィルタとして、受信側フィルタと送信側フィルタとを4端子直列接続した場合の例である。
【0032】
図1に示す分波器100は、モジュール基板110上にSAWフィルタ120および端子付誘電体フィルタ(誘電体共振器)130が装着してあり、モジュール基板110上に形成した導体パターンによって電気的に接続してある。図1において斜線部分は非導体部分を示している。
【0033】
アンテナ端子140にSAWフィルタ120の入力端子aが接続してあり、SAWフィルタ120の入力側のグランド端子cはパターンL素子190を経て、端子付誘電体フィルタ130の入出力端子e、fに接続してある。SAWフィルタ120の出力端子bは受信側端子150に、出力側グランド端子dは共通グランド160に接続してある。
【0034】
端子付誘電体フィルタ130のグランド端子g、hは共通グランド160に接続してある。
【0035】
SAWフィルタ120は多電極型の構成であって、図3に示すように圧電基板121上に、入力側電極指で形成された入力側すだれ電極122a、122b、122cと、入力側すだれ電極122aと122bとの間に出力側電極指で形成された出力側すだれ電極123aと、入力側すだれ電極122bと122cとの間に出力側電極指で形成された出力側すだれ電極123bとが形成されて構成され、入力側すだれ電極122a、122b、122cの一方の電極指は共通に入力端子aに接続され、入力側すだれ電極122a、122b、122cの他方の電極指は入力側のグランド端子cに接続され、出力側すだれ電極123a、123bの一方の電極指は共通に出力端子bに接続され、出力側すだれ電極123a、123bの他方の電極指は出力側のグランド端子dに接続されている。
【0036】
SAWフィルタ120において、通過帯では入力側すだれ電極122a〜122cの電極指で励振された表面波は出力側に伝送される。また、減衰帯域では表面波は励振されず、信号は伝達されない。図4(a)は、SAWフィルタ120の通過特性を示している。図4(a)において横軸は周波数であり、縦軸は減衰量である。
【0037】
SAWフィルタ120は多電極方式であるため、急峻な周波数選択性が得られる。また、フィルタ帯幅は電極指対数によって決定される。多電極のSAWフィルタ120のアンテナ側(端子a、c)から見たインピーダンス特性は、分散行列の要素S11の特性図である図4(b)に示すごとくである。
【0038】
SAWフィルタ120は圧電基板121上にすだれ電極が微細加工されているため、表面波の励振しない減衰帯域では電極指間の容量が支配的となり、インピーダンスは容量性を示す。送信周波数帯域の入力側インピーダンスは図4(b)中におけるAの位置でスミス図上容量性領域のショート付近にある。
【0039】
図1に示したようにSAWフィルタ120の入力端子aはアンテナ端子140に直接接続されており、SAWフィルタ120の入力側グランド端子cはパターンL素子190を経て、端子付誘電体フィルタ130の入出力端子e、fに接続されている。また、SAWフィルタ120の出力端子bは受信側端子150に接続されており、出力側グランド端子dは共通グランド160に接続されている。
【0040】
ここで、図1のパターンL素子190は受信側のSAWフィルタ120と送信側の端子付誘電体フィルタ130とを4端子直列接続するために挿入されている。パターンL素子190はスミス図上実軸ショートの位置に、すなわち図4(b)中のA位置をA″位置にインピーダンス変換する。この変換により送信波の受信側への回り込みが防止され送信波は効率よくアンテナ側に伝送される。パターンL素子190は少ないリアクタンス値で済むため、通過帯域におけるインピーダンスはほとんど変化することもない。
【0041】
図1におけるパターンL素子190は図8に示すようにアンテナ端子140とSAWフィルタ120の入力端子aとの間に接続しても同じ効果が得られる。またモジュール基板110上の導体パターンを工夫して、図9の一点鎖線の内部部分に模式的に示すようにアンテナ端子140からSAWフィルタ120の入力端子aまでの伝送線路とSAWフィルタ120の入力側グランド端子cから端子付誘電体フィルタ130の入力端子eまでの伝送線路を接近させることにより50Ωに整合させることができる。このように伝送線路でインピーダンス整合を実現すれば、通過帯域のインピーダンスは全く変化しないため、より好都合である。
【0042】
次に端子付誘電体フィルタ130について説明する。端子付誘電体フィルタ130は図5に示すように、ほぼ直方体の誘電体部材131によって形成され、誘電体部材131のほぼ中心部に断面円形状の貫通した中空部132を有し、該中空部132表面に内導体が形成され、かつ誘電体部材131の表面には一方の側面を除き外導体が形成されている。端子付誘電体フィルタ130の端子構造を3角図法に基づき図5に示している。図5において面α、β、γ、δ、εはそれぞれ平面図、正面図、底面図、左側面図、右側面図を示し、斜線部は非導体部133を示している。
【0043】
端子付誘電体フィルタ130の非導体部133によって外導体の一部に誘電体の外導体と電気的に絶縁する島状の端子Gが形成してあり、端子Gが入出力端子e、fとなり、島状の端子Gと非導体部133により絶縁されて形成された端子Hがグランド端子g、hとなる。
【0044】
島状の端子Gと端子付誘電体フィルタ130の内導体間に静電容量C1が形成される。内導体は外導体と1/4波長共振器D1を形成する。1/4波長共振器D1が誘導性を示す周波数で静電容量C1と1/4波長共振器D1とは直列共振し、直列共振周波数fpの信号波を減衰させ、誘電体バンドエリミネーションフィルタとなる。
【0045】
また、1/4波長共振器D1が共振する周波数fsではインピーダンスは整合状態となり信号波は通過する。一方、島状の端子Gと端子Hとの間には静電容量C2が形成され、周波数fsは静電容量C2によって周波数の低い方向にシフトする。
【0046】
そこで、端子付誘電体フィルタ130の電気的等価回路は図6(a)に示す如くであり、通過特性は図6(b)に示すごとくである。
【0047】
端子付誘電体フィルタ130の通過特性は図4(d)に示すごとくであり、インピーダンス特性は分散行列の要素S11の特性図である図4(e)に示すごとくである。なお、図4(d)は図6(b)を再記したものである。
【0048】
端子付誘電体フィルタ130において、受信周波数帯域では1/4波長共振器D1と静電容量C1が直列共振し、端子付誘電体フィルタ130の入力側から見たインピーダンスはスミス図上ショートとなり、受信信号の送信側への回り込みを防ぎ受信信号を効率よく受信側へ送る。また、端子付誘電体フィルタ130において、送信周波数帯域では1/4波長共振器D1および静電容量C2が並列共振するため整合状態となり、送信信号は効率よく送信される。
【0049】
なお、端子付誘電体フィルタ130の端子、すなわち入出力端子e、fはパターンL素子190に接続され、さらに送信側端子170に接続されている。また、端子付誘電体フィルタ130の端子H、すなわちグランド端子g、hはモジュール基板110上の共通グランド160に接続されている。
【0050】
なお、モジュール基板110の裏側パターンは全てグランドであり、共通グランド160とスルーホールを介し接続されている。
【0051】
上記のように構成された本発明の実施の一形態にかかる分波器100の作用について受信周波数帯、送信周波数帯域、その他の帯域での作用について説明する。
【0052】
まず、受信周波数(818±8MHz)での動作を説明する。
【0053】
送信側フィルタである端子付誘電体フィルタ130は内部で一体化された直列共振用の静電容量C1と1/4波長共振器D1を有する。
【0054】
受信周波数帯では静電容量C1と1/4波長共振器D1が直列共振するため、端子付誘電体フィルタ130の入力端子eとグランド端子gとからみたインピーダンスは図4(e)で示すスミス図上ショートの位置Cとなる。
【0055】
一方、SAWフィルタ120は励振状態となり、通過インピーダンスは非常に低くなる(図4(b)においてBの位置)。つまり、アンテナ端子140から入力された受信波はSAWフィルタ120を通過し、受信側端子150を経て受信回路に伝送される。また、送信側フィルタである端子付誘電体フィルタ130の入力端子eとグランド端子gとから見たインピーダンスがショートであるため、受信波の送信側への漏洩は極力抑えられる。
【0056】
さらに、パターンL素子190が分波器100に付加されている。パターンL素子190のリアクタンス値は小さいため、通過帯域のインピーダンスを大きく変化させることはない。
【0057】
したがって、アンテナ端子140からの受信波は効率よく受信側へ伝送され、送信側へは伝送されない。
【0058】
次に、送信周波数(948±8MHz)での動作を説明する。
【0059】
送信周波数では、送信側フィルタである端子付誘電体フィルタ130の内部の1/4波長共振器D1は静電容量C2と共に並列共振状態になり、端子付誘電体フィルタ130の出力端子fおよびグランド端子h側、入力端子eおよびグランド端子g側からみたインピーダンスは整合状態になり、図4(e)においてDの位置となる。
【0060】
一方、SAWフィルタ120は送信周波数において入力端子aとグランド端子c側からみたインピーダンスは図4(b)に示すようにスミス図上のAの位置にあるが、パターンL素子190により位相回転させられ、スミス図上ショートの位置A″となる。Aがスミス図上ショートに非常に近いため、パターンL素子190は極く短いパターンでインピーダンス変換ができる。パターンL素子190のリアクタンス値は小さいため、通過帯のインピーダンスを変化させることはない。
【0061】
SAWフィルタ120の送信帯でのインピーダンスA″は略ショートであるため、パターンL素子190から入力され端子付誘電体フィルタ130を通過した送信信号はアンテナ端子140に効率よく伝送され、出力される。
【0062】
そのときのSAWフィルタ120の入力側すだれ電極122a〜122cおよび出力側すだれ電極123a〜123bの電極指は励振状態ではなく、SAWフィルタ120の入力端子aとグランド端子cとの間のインピーダンスは非常に高くなり、送信波は受信側へ伝送されない。
【0063】
次に、受信周波数帯域および送信周波数帯域の他の周波数領域における動作について説明する。
【0064】
まず、受信周波数帯より低い周波数領域において、端子付誘電体フィルタ130の入力端子eとグランド端子g側から端子付誘電体フィルタ130をみると容量性であり、SAWフィルタ120の入力端子aと入力側グランド端子cとからSAWフィルタ120を見ると容量性または誘導性となって、あるインピーダンスを持っている。しかし、通信機の内部からこの周波数が送信されることはないため、これらは問題にならない。アンテナ端子140から受信側は、SAWフィルタ120は電極指が励振しない状態であり、受信側へ信号は通過せず、減衰する。
【0065】
次に送信周波数帯域より高い周波数領域においてアンテナ端子140側から送信側を見ると、SAWフィルタ120の入力端子aと入力側グランド端子cとの間のインピーダンスは誘導性となり、さらに端子付誘電体フィルタ130は容量性となるため、ローパスフィルタが形成される。つまり、送信波の周波数の2倍波、3倍波は減衰させることができ都合がよい。アンテナ端子140から受信側は、SAWフィルタ120は電極指が励振しない状態であり、受信側へ信号は通過せず、減衰する。
【0066】
以上のように本発明の実施の一形態にかかる分波器100は良好な分波器として作用し、図7に本発明の実施の一形態にかかる分波器100の周波数特性を示す。
【0067】
以上のように端子付誘電体フィルタ130を送信側フィルタとし、SAWフィルタ120を受信側フィルタとして各々を4端子直列接続して構成することにより、周波数特性を劣化させることなく、非常に小型な分波器100が実現できることになる。
【0068】
ここで、従来例の場合と比較する。部品点数は図15に示す誘電体フィルタのみで構成した場合、誘電体フィルタ(2.5mm角×長さ9mm)が3個(401、402、403)、空心コイル(3.6mm×1.0mm×厚さ1.6mm)が3個(407、408、409)、チップコンデンサ(1.6mm×0.8mm)が2個(405、406)で合計8個を必要とする。これに対して、図1に示す分波器100の場合では、SAWフィルタ(3.2mm×2.5mm×厚さ0.9mm)が1個(120)と端子付誘電体フィルタ(2.5mm角×長さ9mm)が1個(130)の合計2個のみで済む。
【0069】
また、部品実装面積は部品のみの占有面積で図15に示した誘電体フィルタ構成の場合、81mm2 必要であるが、これに対して、図1に示す分波器100では34mm2 で済み、1/2以上の小型化がなされる。
【0070】
受信側には小型であるSAWフィルタ120を用い、送信側には耐電力性能に優れた端子付誘電体フィルタ130を用いて分波器100を構成することにより、特性は従来のもののままで容積を従来のものの半分程度まで小型化できることになる。
【0071】
従来の誘電体フィルタのみを用いたときは、誘電体フィルタを4端子直列接続で構成することは入力側と出力側のグランドを独立化することが構造上困難であり、フィルタ特性上も不利となる。
【0072】
これに対して、SAWフィルタ120のすだれ電極は入力側、出力側を独立化することができるため、4端子直列接続ができることになる。さらに多電極型のSAWフィルタ120は電極間容量が大きくなるため、減衰帯のインピーダンスがショートに近くなり、4端子直列的に接続し易いという効果もある。
【0073】
また、端子付誘電体フィルタ130に島状の端子Gを設け、バンドエリミネーションフィルタを構成することができる。このフィルタは伝送線路に対し、並列腕に接続することで直列共振時はスミス図上ショート、並列共振時は50Ω整合と4端子直列接続構成に適しているものとなる。
【0074】
多電極型のSAWフィルタ120と島状の端子G付の端子付誘電体フィルタ130とを組み合わせることより、インピーダンス変換回路を大幅に簡略化した分波器100となる。
【0075】
次に本発明の実施の一形態の第1変形例にかかる分波器について説明する。
【0076】
図10は本発明の実施の一形態の第1変形例にかかる分波器の斜視図であり、図11は本発明の実施の一形態の第1変形例にかかる分波器の電気的接続図である。
【0077】
本発明の実施の一形態の第1変形例にかかる分波器200において、本発明の実施の一形態にかかる分波器100と同一の構成要素には同一の符号を付して重複を避けるためその説明は省略する。なお、斜線部は非導体部を示している。
【0078】
本発明の実施の一形態の第1変形例にかかる分波器200は、受信側フィルタとしてSAWフィルタ120を用い、送信側フィルタとして端子付誘電体フィルタ130を用いて、SAWフィルタ120と端子付誘電体フィルタ130とを4端子並列接続して、分波器200を構成した場合の例である。
【0079】
分波器200においては、端子付誘電体フィルタ130は送信周波数帯域でインピーダンス整合し、受信周波数帯域で入力インピーダンスはスミス図上実軸オープンの位置にあり、SAWフィルタ120は受信周波数帯域でインピーダンス整合し、送信周波数帯域でスミス図上実軸オープンの位置にあるような特性にする必要がある。このために、アンテナ端子140と、SAWフィルタ120の入力端子a、グランド端子cとの間にチップコンデンサ221、222および空心コイル223からなる受信周波数帯域でジャイレータ回路225が接続してあり、アンテナ端子140と、端子付誘電体フィルタ130の入力端子e、グランド端子gとの間にチップコンデンサ222と空心コイル224を有するジャイレータ回路226が接続してある。なお、ジャイレータ回路226を構成するコンデンサ227は端子付誘電体フィルタ130の入力端子eとグランド端子g間の静電容量である。
【0080】
本発明の実施の一形態の第1変形例にかかる分波器200の作用を説明する。
【0081】
SAWフィルタ120は圧電基板121上にすだれ電極122a〜122c、123a、123bが微細加工されているため、表面波の励振しない減衰帯では電極指間の静電容量が支配的となり、インピーダンスは容量性を示す。送信周波数帯域の入力側インピーダンスは図4(b)におけるAの位置でスミス図上容量性領域のショート付近にある。
【0082】
送信側フィルタである端子付誘電体フィルタ130と4端子並列接続するためには、SAWフィルタ120のアンテナ側にジャイレータ回路225で示すπ型回路を付加し、スミス図上実軸オープンの位置にインピーダンス変換する。π型回路を用いることにより、通過帯のインピーダンスが変化することはない。送信周波数帯域におけるインピーダンスをスミス図上オープンの位置にすることにより送信波の受信側への回り込みが防がれて送信波が効率よくアンテナ端子140側に伝送される。
【0083】
図4(c)はインピーダンス変換後のSAWフィルタ120の入力端子aとグランド端子cとから見たSAWフィルタ120のインピーダンスを示す。
【0084】
端子付誘電体フィルタ130の通過特性とインピーダンス特性は図4(d)と図4(e)に示したとおりである。受信周波数帯では1/4波長共振器D1と静電容量C1が直列共振し、入力側から見たインピーダンスはスミス図上ショート、送信周波数帯域では1/4波長共振器D1および静電容量C2が並列共振するため、整合状態となる。
【0085】
送信側フィルタである端子付誘電体フィルタ130も受信側フィルタであるSAWフィルタ120と並列接続するため、端子付誘電体フィルタ130のアンテナ側にジャイレータ回路226に示すπ型回路を付加し、送信周波数帯域のインピーダンスはそのままに受信周波数帯のインピーダンスをスミス図上実軸オープンの位置に変換する。この変換により受信波の送信側への漏洩が防がれて受信波は効率よく受信側に伝送されることになる。図4(f)にインピーダンス変換後の端子付誘電体フィルタ130のインピーダンス特性を示す。
【0086】
上記したように4端子並列接続の場合もSAWフィルタ120と端子付誘電体フィルタ130とπ型インピーダンス変換回路とによって、受信波の送信側への回り込みがなく、送信信号の受信側への回り込みのない分波器200を構成することができる。この分波器200の周波数特性は図12に示すごとくである。
【0087】
以上のように端子付誘電体フィルタ130を送信側フィルタとし、SAWフィルタ120を受信側フィルタとして各々を4端子並列接続して構成することにより、周波数特性を従来よりも劣化させることなく、非常に小型な分波器200が実現されることになる。
【0088】
次に本発明の実施の一形態の第2変形例にかかる分波器について説明する。
【0089】
図13は本発明の実施の一形態の第2変形例にかかる分波器の斜視図であり、図14は本発明の実施の一形態の第2変形例にかかる分波器の電気的接続図である。
【0090】
本発明の実施の一形態の第2変形例にかかる分波器300において、本発明の実施の一形態にかかる分波器100と同一の構成要素には同一の符号を付して重複を避けるためその説明は省略する。なお、斜線部は非導体部を示している。
【0091】
本発明の実施の一形態の第2変形例にかかる分波器300は、受信側フィルタとしてSAWフィルタ120a、120bを直列接続して用い、送信側フィルタとして端子付誘電体フィルタ130a、130bを空心コイル331で結合して用い、直列接続されたSAWフィルタ120a、120bと空心コイル331にて結合された端子付誘電体フィルタ130a、130bとを4端子並列接続して、分波器300を構成した場合の例である。
【0092】
ここで、SAWフィルタ120aはSAWフィルタ120と同一の特性に設定し、SAWフィルタ120bはSAWフィルタ120と略同様の特性に設定してあり、端子付誘電体フィルタ130aおよび130bは端子付誘電体フィルタ130と同一の特性に設定してある。
【0093】
分波器300においても送信側、受信側共に広帯域なフィルタ特性が得られる。
【0094】
この場合も同等の分波器を誘電体フィルタで構成でした場合に比較して容積が小さく、また、同等の分波器をSAWフィルタで構成した場合に比較して周波数特性をよくすることができる。また、SAWフィルタ120a、120b、端子付誘電体フィルタ130a、130bのように2つずつ直列接続して構成したため、フィルタ設計の自由度が増大することになる。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の分波器によれば、送信側フィルタを誘電体フィルタで構成し、受信側フィルタをSAWフィルタで構成することによって、分波器に必要とされる容積が大幅に減少する効果が得られる。
【0096】
また、本発明の分波器によれば、SAWフィルタと誘電体フィルタを直列接続することで両フィルタのアンテナ側におけるインピーダンス変換回路を簡略化することができ、部品点数を減らすことができるという効果が得られ、この結果、フィルタの挿入損失は減少するという効果も得られる。
【0097】
さらに、本発明の分波器によれば、SAWフィルタを多電極SAWフィルタとし、誘電体フィルタをバンドエリミネーションフィルタとすることによりインピーダンス変換回路をほぼなくすことができ、フィルタの挿入損失が減少すると共に、大幅な小型化が可能となる。
【0098】
さらにまた、本発明の分波器をアンテナ共用器モジュールというような形態ではなく、無線機の基板にSAWフィルタと誘電体フィルタを直接実装して、分波器を構成することが可能となる。このように、モジュールという形で構成せずに済むため、分波器を安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態にかかる分波器の斜視図である。
【図2】本発明の実施の一形態にかかる分波器の電気的接続図である。
【図3】本発明の実施の一形態にかかる分波器に用いるSAWフィルタの電極パターンを示す模式図である。
【図4】本発明の実施の一形態にかかる分波器の作用の説明に供する特性図である。
【図5】本発明の実施の一形態にかかる分波器に用いる端子付誘電体フィルタの構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の一形態にかかる分波器に用いる端子付誘電体フィルタの電気的等価回路図および周波数特性図である。
【図7】本発明の実施の一形態にかかる分波器の周波数特性図である。
【図8】本発明の実施の一形態にかかる分波器におけるパターンL素子の位置を変更したときの電気的接続図である。
【図9】本発明の実施の一形態にかかる分波器におけるパターンL素子に代わって伝送線路によったときの電気的接続図である。
【図10】本発明の実施の一形態の第1変形例にかかる分波器の斜視図である。
【図11】本発明の実施の一形態の第1変形例にかかる分波器の電気的接続図である。
【図12】本発明の実施の一形態の第1変形例にかかる分波器の周波数特性図である。
【図13】本発明の実施の一形態の第2変形例にかかる分波器の斜視図である。
【図14】本発明の実施の一形態の第2変形例にかかる分波器の電気的接続図である。
【図15】従来例の分波器の斜視図である。
【図16】従来例の分波器の電気的接続図である。
【符号の説明】
100、200、300 分波器
110 モジュール基板
120、120a、120b SAWフィルタ
130、130a、130b 端子付誘電体フィルタ
140 アンテナ端子
150 受信側端子
160 共通グランド
170 送信側端子
190 パターンL素子
221、222 チップコンデンサ
223、224、331 空心コイル
225、226 ジャイレータ回路

Claims (4)

  1. 基板に配置された弾性表面波フィルタと誘電体フィルタを電気的に直列接続し、受信側フィルタに弾性表面波フィルタを用い、送信側フィルタに誘電体フィルタを用いて、一入力複数出力の構成とした分波器であって、
    前記基板には、前記弾性表面波フィルタの入力側と前記誘電体フィルタの入力側とを電気的に接続するインダクタンス素子または伝送線路が形成され、
    前記誘電体フィルタは、内導体が形成された誘電体部材と、該誘電体部材の外表面に形成され、かつ前記インダクタンス素子または伝送線路と電気的に接続された入出力端子と、該誘電体部材の外表面に形成され、かつ前記入出力端子と電気的に絶縁されたグランド端子とを有し、
    前記入出力端子と前記内導体との間には第1静電容量が形成され、前記入出力端子と前記グランド端子との間には第2静電容量が形成され、前記内導体と前記グランド端子とによって共振器が形成され、
    受信周波数の帯域において、前記誘電体フィルタの入力インピーダンスは、前記第1静電容量と前記共振器との共振によってショート状態となる一方で、前記弾性表面波フィルタは励振状態となり、
    送信周波数の帯域において、前記誘電体フィルタの入力インピーダンスは、前記第2静電容量と前記共振器との共振によって整合状態となる一方で、前記弾性表面波フィルタの入力インピーダンスは、前記インダクタンス素子または伝送線路のインピーダンス変換によってショート状態とな
    ことを特徴とする分波器。
  2. 請求項1記載の分波器において、弾性表面波フィルタは多電極フィルタであることを特徴とする分波器。
  3. 請求項1記載の分波器において、誘電体フィルタはリアクタンス素子で結合した複数の誘電体フィルタであることを特徴とする分波器。
  4. 請求項1記載の分波器において、弾性表面波フィルタは多電極フィルタであり、かつ誘電体フィルタはリアクタンス素子で結合した複数の誘電体フィルタであることを特徴とする分波器。
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